長野大学紀要 第13巻第4号 333-347頁 1992
女性の社会進出に関す る考察
The Study on Women's Advance into lndustrial Society
1.女性の社会参加の高 まり
A.
男社会か ら男女平等社会への転換 男女 とい う性別は、人間 を区分す る際、最 も基 本的な分け方であろ う。「男は活動的であ り、女は 子 どもを産む」 こういった特質か ら、 この世の役 割分担が 自ら定 まって きた観がある。 どの国にお いて も、程度の差 こそあれ、社会の仕組みが男中 心 であることには、それな りの歴史的経緯があっ たように思われる。 わが国において も、男社会の壁は依然 として厚 い といえる。「男は外、女は内」とい う意識は男女 ともにあ り、外へ働 きに出たい女性が増えて きた 今 日で も、意外 にそれが根強い といわれている。 しか し、1970年代後半か ら、改革-の流れは着 実 に広がっていった。そ して、その流れ を加速 さ せ たのが 「国連婦人の10年」(1975-1985年)の世 界的な運動 であった といえよう。 これは、国連が 1975年 を国際婦人年 と定め、「平等、発展、平和」 を3大 テーマ として、各国お よび国際 レベ ルで婦 人問題 につ いての行動 を起 こす ように呼びかけた 運動である〔1
〕。 これによって、わが国において も、永 い間温存 されて きた男中心の社会 システム が、今 まさに大 きく揺れ動いている。女性に とっ て不利 な国籍法は改正 され、家庭科が男女共修の 方 向に動 き出 し、男女雇用機会均等法 も何 とか成 立 した (1985年5月成立、翌86年4月施行)。 ま た、女子差別撤廃条約の批准に もこぎつけた。「男 女平等」-の道がようや く開かれた といってよい であろ う。 『婦人労働 の実情 平成2年版』(婦人労働 自書) に よる と、増 え続ける女性の職場進出を反映 して、 平成元年の女子の労働力人 口 (就業者+完全失業 者)は、2,500万人を突破 し、労働力人口に 占め る所
正
文
Masabumi Tokoro
女子の割合 も40%を超 えている。因みに、 これは 昭和40年以降の最高水準 となっている。 また、週 間就業時間35時間未満の短時間雇用者が女子雇用 者の4分 の 1を超えていることも報告 されている。 さらに、40オ以上の女子雇用者の増加が 目立 ち、 高学歴化 も進行 しているとされる。 これが、近年 におけるわが国の婦人労働の重要な特徴 となって いる〔2
〕
。
一方、従来か らの特徴 としては、女子労働力率 を年齢階級別 にみた とき、典型的な「
M
型」 タイ プ を示 していることがあげ られ る。すなわち、「20 -24歳屑」 と「45歳∼49歳層」 を2つの山 とし、 「30-34歳層」 を谷 とす る労働力構成 となってい る。2つの山の前者の屑は、結婚前のいわゆる「華 のOL」 であ り、後者の方は、結婚、育 児等の理 由で一度専業主婦 を経験 した人 たちの いわゆ る 「中高年女性 の再就職組」 と考 えられ る。 また、 谷間の層は、未婚のまま、あるいは結婚 した後 も 仕事 を続けているいわゆる 「キャ リア ・ウーマ ン 的女性」であると考 えられ る。 平成元年において も、20-24歳層 (女子労働 力 率 は74.3%)と45-49歳層 (同70.7%)を左右 の 頂点 として、30-34歳層 (同51.1%)を底 とす る M字型になっている (図 1)〔3〕。因みに、10年 前の昭和54年 と比較す ると、15-19歳層 を除 く各 年齢階級で労働力率が上昇 してお り、特 に25-29 歳層 (l
l.4ポイン ト)、45-49歳層(6.6ポイン ト) での上昇が著 しくなっている。15-19歳屑の減少 は、高学歴化の進行 によるもの、25-29歳層の上 昇 は、晩婚化の影響 によるもの とみ られ る。B.
女子雇用者増大の背景 女子雇用者は急速 な増加傾向にあ り、平成元年長野大学紀要 第13巻第4号 1992 資料出所 総務庁 統計局 「労働力調査 」 図1 年齢階級別女子の労働力率 には10年前の1.3倍、20年前の1.6倍に増加 してい る。特に中高年女性の増加が著 しく、大 きな社会 変化 をもたらしている。本節では、 こうした女性 の社会進出の背景要因 を検討す る 〔2〕。 (1)サー ビス経済化 と情報化の進展 1970年代後半か ら80年代にかけて、わが国経済 が安定成長時代に入 る と、産業構造において第
3
次産業のシェアが高 ま り、サー ビス経済化が一段 と進行す ることになった。付加価値の高いサー ビ ス産業の各職種は、対 人関係 を中心 とした人間的 要素が大 きな役割 を果 たす といわれ る。すなわち、 職務 を遂行す るために求 め られる能力は、女性の 潜在能力 と一致す る ものが多い とされ る 〔4〕, 〔5〕。特に、サー ビス経済化の進展は、フルタイ ム労働者ばか りでな く、パー トタイム労働者に対 す るニーズも高いため、女性に とってはなおさら 好都合 となっている。 したがって、 これ らの分野 で働 く女性の数は増加 し、 とりわけパー トタイム 労働者の増加 は著 しい。 さらに、サー ビス経済化の進展に伴 う情報機器 の発達は、専 門的、技術 的な職業に従事す る女子 労働者 を生み出 し、今 後、女性の増加が最 も多 く 見込 まれる分野の1つ と考 えられてい る。因みに、 女性の情報処理技術者 は、昭和50年 (1975年)か ら60年 までの10年間に実 に6倍増 となっている。 特 に昭和55年か ら63年の間に、 システム ・エ ンジ ニアは約40倍 (男子は7倍)、プログラマーは約10 倍 (男子は5倍) となってお り、男子の増加率 と 比較す ると女子の激増ぶ りが よ くわか る〔6〕。今 後、情報機器 と電気通信 を利用 したネ ッ トワー ク が さらに進む と在宅勤務 なども可能になるため、 女性の活躍の場は一段 と拡大す る と考 えられ る。 (2) 深刻 な労働力不足 昭和63年 (1988年)以降、わが国は深刻 な労働 力不足に見舞われている。労働力不足は、 日本経 済の思わぬアキレス騰であるといわれている。労 働力不足は、各業種、職種に浸透 し、産業界全体 の問題 となっているが、 とりわけパー トタイム労 働者の有効求人倍率が高 く、 4倍近 くになってい る。 したがって、労働力不足 を補 う新規労働力 と して、産業界全体が女性労働力に対 して期待す る 程度は極めて大 き くなっている。一方、女性側に も、積極的に社会進 出を行 いたい とす る意欲が強 いため、需要側 と供給側のニーズが合致する結果 となっている。因みに、平成元年度の労働力調査 特別調査 によれば、女子非労働力人 口に 占め る就 業希望者の割合 は、25-34歳層(56.3%)、35-44 歳層 (56.0%)、45-54歳屑 (45.1%)といずれの - 110-所 正 文 女 性 の社 会 進 出 に 関 す る考 察 年齢階級において も高 くなっている 〔7〕。 (3)女性のライフサ イクルの変化 女子労働者の増加の背景 には、女性の側におけ るライフサイクルの変化 も重要 な要 因 としてあげ られ る(図 2)。 そ して、 ライフサ イクルの変化 を もたらした要因 として3つが考 えられ る。 第1は、平均寿命の伸 びである。平成2年(1990 午)における女性の平均寿命は81.81歳 となってい る。 ライフタームが伸びれば、必然的に働 く機会 も増 えるといえよう。 第
2
は、晩婚化の進行 である。女性の初婚年齢 は、昭和35年 (1960年)には24.4歳であったが、 平成元年 には25.8歳 となってい る 〔8〕。晩婚化 は、出産年齢の引 き上げ、出生率の低下 ともリン クしている。そ して、女性の就業 との関係では、 M字型労働力率 のボ トムの年齢階級 を若干高め る 335 結果になっている。 第3は、女性の短大、大学への進学率の上昇で ある。高学歴化の進行 は、就業意欲の高 ま りに反 映 し、女性の社会進出を促進す る要 因になると考 えられ る。因みに、昭和30年 (1955年)には、女 性の高校進学率 は47.4%、短大へは2.6% 、大学-は2.4%であった。しか し、平成2年 には、高校95.6 %、短大22.2%、大学15.2%となっている 〔9〕。 なお、昭和63年 (1988年)には、女子の短大、大 学への進学率 を合計 した割合 (36.2%)が男子の それ (36.1%)を初めて上回 り、その後 も男子 を 上回る傾向が続いている。 こうした高学歴化の傾 向を反映 して、総理府の世論調査によれば、平成 元年 には、女性が職業 をもつ ことについて肯定的 な人が92.8%に達 し、逆に否定的な人はわずかに 1.9%となっている。 因みに、昭和47年 (1972年) 明治38年 昭和2年 生 ま れ 生 ま れ (1905年 ) (1927年 ) 昭和35年 生 ま れ (1960年 ) 81.8 学校卒業 結女昏 長子出産 末子出産 末子就学 末子高校卒業 末子大学卒業 末子結婚 夫死亡 本人死亡 資料出所 厚生省 「人 口動態統計」、「簡易生食表」、「出産力調査」 文部省 「学校基本調査」、なおこの図は労働省婦人局編 r婦人労働の実情(平成2年版)Jより引用 した。 注)このモデルの出生率は、昭和3年 、25年,60年の平均初婚年齢か ら逆算 して設定 した。学校卒業時は ・ 初婚年齢の人が実際進学す る年の進学率 をもちい、他 の ライフステー ジは婚姻時におけ る平均値 を基 に作成 した ものである。 図2 女性のライフサイクルの変化3
3
6
長 野大学紀要 第13巻 第4号 1992 に は、肯 定 派8
1.
9
%
、否 定 派7.
8
%
で あ っ た 〔10〕。 (4)家庭 内におけ る主婦の役割変化 女性の側の変化 として、家庭内におけ る主婦の 役割変化 も見逃せ ない要因である。 第1
は、出生率 の低下、家事の合理化等による 家事、育児負担の軽減である。 まず、出生率につ いてであるが、昭和2
5
年(
1
9
5
0
年)の合計特殊 出 生率 (1人の女性が生涯に出産す る子供の数)は3.
6
5
であったが、平成2
年(
1
9
9
0
年)には、1.
5
3
まで減少 している〔8〕。出生率の低下 は、同時に 育児負担の軽減に結びつ き、女性の社会進出に と ってプラス要因 となっていることは明 らかである。 これに加 えて、性能の良い家庭電化製品の普及 によ り、家事の合理化が進んでいるこ とも女性の 社会進出に とって見逃せ ない要 因である。電気掃 除機、電気洗濯機、電子 レンジ等の電化製品は、 今やほ とん どの家庭に普及 してお り、最近 では、 自動皿洗い機、食器乾燥機、洗濯物乾燥機 なども 徐々に普及 している。 さらに、惣菜品宅配などの 家事サー ビス代行業 も出現 し、主婦が家事 に要す る時間は大幅に減少 している。 第2
は、世帯主所得の伸びが鈍化す る中で、住 宅 ロー ン返済、子供の教育費の増大 などによ り、 追加所得の必要性が高 まっていることがあげ られ る。バブル経済によ り、首都圏 を中心 とした地域 で土地、住宅の価格が高騰 し、世帯主の所得のみ では一生かか って も家が もてないような状況がつ くりだされている。 また、受験教育の過熱によ り、 東京都 内では 5人中4人の児童が学習塾に通 って いるとい う事実 も指摘 されている。 したがって、 家計 を支 えるために、女性 も否応な く働かな くて はならな くなっている。 2.婦人労働の特性 とそれへの対応A.
女性の就業形態の特徴 平成元年の女子労働力人 口2,
5
3
3
万人の うち、ほぼ7
0
%
にあたる1,
7
4
9
万人が雇用者である(他 に家 族従業者、自営業主、完全失業者)。女子労働力人 口に 占め る雇用者の割合は年々高 まって きている。 本節では、女子雇用者の就業形態の特徴 を整理 し たい。 (1)業種別 ・職種別にみた女子雇用者 業種別に女子雇用者 をみると、「サー ビス業」が 最 も多 く、次いで 「卸売 ・小売業、飲食店」、「製 造業」 となっている。因みに、平成元年では、 こ れ ら3
業種に女子雇用者の8
3.
9
%
が就業 している。 次に、業種別 に女子比率 をみ る と、「サー ビス 業」、「金融 ・保険業,不動産業」、「卸売 ・小売業、 飲食店」の3業種において、当該業種雇用者総数 の約半数 を女子が 占めている。 また、職種別に女子比率 をみ ると、「事務従事者」 が最 も多 く、平成元年では5
7.
0
%
に達 している。 〔3)。以下、保安職業 ・サー ビス職業従事者 (51.4 %)、専 門的 ・技術的職業従事者(
4
2.
8
%)
、労務 作業者(
4
1.
7
%)
が続いている (図3
)0(
2
)
女子雇用者の労働条件 (賃金 ・労働時間) ① 賃金 平成元年におけ る女子労働者の1人平均 月間現 金給与総額は2
1
万6,
4
2
6
円 となっている。因みに、 男子労働者の現金給与総額は4
2
万9,
9
11円であ り、 女子のほぼ 2倍になっている〔
1
1〕。 さらに、パー トタイム労働者 を除 く女子労働者の所定内給与額 をみ ると1
6
万6,
3
0
0
円 となってい る (表1)〔
1
2
〕。 そ して、女子の賃金 (所定内給与) を年齢階級別 にみ ると、3
0
歳代前半 までは年齢の上昇 とともに 増額す るが、その後は年齢が上が って もほ とん ど 賃金の上昇がみ られない。 また、男女間の格差は、各年齢階級においてみ られ るが、3
0
歳 を超 えるとその格差が一段 と大 き くなっているこ とがわか る。男女間の賃金格差は、 一般に職階、職務 内容、学歴、労働時間、勤続年 数等が男女間で異なることによって もらたされる と指摘 されている。 (卦 労働時間 平成元年に女子労働者1
人平均 月間総実労働時 間 は1
5
8.
9
時 間 で あ り、 うち所 定 内労 働 時 間 は1
5
1.
4
時間 となっている。一方、男子の総芙労働時 間 は1
8
1.
8
時 間 で あ り、 うち所 定 内労 働 時 間 は1
6
1
.
7
時間 となっている〔
1
1〕。絵美労働時間、所 定内、お よび所定外労働時間のいずれにおいて も、 男子の労働時間がかな り上 回っているこ とがわか る。 これは、高度経済成長時代 よ り一貫 して続い ている傾向である。 (3) パー トタイム労働の特徴 -112-337 %′し 0 0 0 0 0 0 6 5 4 3 2 1 0 所正文 女 性 の社 会 進 出 に 関 す る考 察 叩 短 職 業 窒 者 労 務 作 業 着 地 # H 管 事 者 運 輸 ・ 通 信 従 事 者 農 林 漁 業 従 事 者 販 売 従 事 者 事 務 従 事 者 管 理 的 職 業 従 事 者 鯛 錯 讐 従 事 者 ) 0 0 0 0 0 0 人 60 0 0 0 0 0 5 4 3 2 1 万 資料出所 総務庁統計局 「労働力調査」(平成元年 ) なお、この図は、労働 省婦人局編 r婦人労働の実情 (平成2年版 )) よ り引用 した。 図3 散 薬別女子雇用者数 および女子比 率 表1 年齢 階級別所定 内給 与額,年齢 間格差及び男女間格差 (産業計,企業規模 計,学歴計) 年 齢 所 定 内 給 与 額 年 齢 間 格 差(20-24歳-100) (男 女 格 差男子- 100) 女 男 女 男 計 16千円6.3 2千円76.1 - - 60.2 17歳 以 下 107ー3 119.3 73.7 71.8 89.9 18
-
19 125_3 137.2 86.1 82.6 91.3 20 - 24 145.6 166.2 100.0 100.0 87.6 25 - 29 168_2 205.0 115_5 123.3 82.0 30 - 34 178.5 250.7 122.6 150ー8 71.2 35 - 39 178.5 291_0 122.6 175.1 61ー3 40 - 44 182ー2 327.1 125.1 196.8 55.7 45-
49 180_4 352.5 123.9 212.1 51_2 50-
54 177.7 347.3 122.0 209.0 51ー2 55 - 59 179.6 302.2 123_4 181.8 59.4 資料出所 労働省 「賃金構造基本統計調査」 (平成元年6月) 注)計は60オ以上 を含む数値 である。3
3
8
長野大学紀要 第13巻第4号 1992 女子雇用者全体 に 占め るパー トタイム労働者の 割合 は年々増加 し、平成元年では2
5.
2
%
に達 して いる (図 4) 〔3〕。 また、パー トタイム労働者に 対す る業界のニー ズ も高 く、有効求人倍率 は、平 成2
年 (1-3
月期)において3.
8
3
倍 を示 してい る〔
1
3
〕。 ところで、パー トタイム労働者の定義はまちま ちであ り、各種統計調査において も、それぞれの 調査 目的に即 した異なった定義が立て られている。 したがって、パー トタイム労働者数 を正確に とら えることは困難であるとされ るが、一般的には、 総務庁統計局 『労働力調査』の定義 (週間就業時 間が35時間未満の非農林業の短時間雇用者)が採 用 されて議論がなされている。 また、パー トタイム労働者の タイプ も一律 でな いことに注意 したい。一般的には、専 門職型パー ト、 キャ リア型パー ト、お よび単純パー トの3つ に分類 されている。 そして、今後、 この分類パ タ ー ンが より鮮明になってい くであろ うと予想 され ている〔
1
4
〕。以下に各 タイプの特徴 を示す。 まず専門職型パー トとは、高度な専門的能力、 免許 ・資格 に基づ くパー トタイム労働者 を指す。 大学教師、作家、通訳などの 自由業的な職種が こ れに当た り、今後は、派遣労働者 とい う形態で顕 在化 してい くと考 えられている。 次にキャ リア型パー トとは、長期勤続志向であ るが、 しか し正社員にはな りた くない とい うパー トタイム労働者 を指す。産業社会においては、職 場で経験 を重ね ることによ り、職業能力が向上 し てい く職種が圧倒的に多いため、 このタイプの労 働者が最 も求め られている。 したが って、今後、 特に増加が見込 まれ る。 単純パー トとは、ほ とん どの人が即戦力 として 働け るようなパー トタイム労働者 を指す。スーパ ーの レジ係や工場における生産工程作業などが こ れに該 当す る職種 である。B.
婦人労働への配慮 (1) 男女雇用機会均等法の成立 女性 の社会進 出に対す る法的 な対 応 として、 1986年4月に男女雇用機会均等法 (正式名称 は「雇 用の分野におけ る男女の均等な機会及び待遇の確 保等女子労働者の福祉の増進 に関す る法律」
,以 下、均等法 と略す)が施行 された。同法施行の背 景には、働 く女性の雇用面での諸条件が、男性 と 比較 した場合、従来はか な り悪い ものであったた め、 多 くの働 く女性が、少な くとも男性 と均等に してほ しい とい う強い要望 をもっていたことがあ げ られ る。 したがって、均等法の底流 をなす考 え 方 として、同法第2条には、「女子労働者は、経済 及び社会の発展に寄与 しなが ら、 しか i)家庭の一 月 として次代 を担 う者の生育につ いて重要 な役割 を有 している。そのため、女子労働者の福祉の増 進は、母性 を尊重 されつつ、 しか も性差別 を受け ることな く、その能力 を有効 に発揮 して充実 した 職業生活 を営み、 さらにこれ と家庭生活 との調和 を図 るこ とにある。」 と明文化 されている。 均等法の中心的な事項は、次の5点であるとさ れ る 〔15〕。 (む 事業主に対 して、募集、採用、配置、および 昇進において、女子 を男子 と均等に扱 う努力義 務 を課す (第 7条,第 8条) (勤 労働省令 で定め る教育訓練、福利厚生、定年 退職、お よび解雇については、労働者が女子で あるこ とを理由 として、事業主が差別的な取 り 扱いをす ることを禁止す る (第9
条,第1
0
条, 第11条) ③ 男女の均等な取 り扱いに関 して、女子労働者 か ら苦情が出た ときには、企業 内で 自主的に解 決す ることを事業主の努力義務 とす る(第13条) ④ 都道府県婦人少年室長は、紛争の関係当事者 か ら解決の援助 を求め られた場合 には、必要 な 助言、指導、 または勧告 を行 うこ とがで きる。 また、必要な場合 には、機会均等調停委員会 (那 道府県 ごとに新設)に調停 を行 わせ るもの とす る (第7条,第8条) G) 妊娠、出産、 または育児 を理 由 として退職 し た女子の うち、再就職 を希望す る者に対 しては、 再雇用特別措置 をとることを事業主の努力義務 とす る (第2
5
条) 均等法は、施行以来、 日本企業の雇用管理にさ まざまな形で影響 を与えてい る。特に、従来か ら 大量の女性 を雇用 しているサー ビス業、金融 ・保 険業、百貨店 ・スーパー などでは、均等化の対応 が着実に進んでいる。業種間の対応にある程度の 差 はあるものの社会の認識はかな り深 まって きて - 114-所正文 女 性 の社 会 進 出 に 関 す る考 察 昭和35年 40 45 50 55 60 平 成元年 資料 出所 総務庁統計局 「労働力調査」、なお この図は r婦人労働の実情 (平成 2年版)J よ り引用 した。 注 ) 1.「雇用者」とは、雇われている者 (常雇、臨時雇及び 日雇 )及び全社、団休の役月 をい うOただ し、 休糞者は除 く0 2.「短時間雇用者」とは、週 間就業時間が35時間未満の者 をい う。 3.「一般雇用者」とは、週間就業時間が35時間以上の者 をい う。 4.( )内は、雇用者に 占め る短時間雇用者の割合 であ る。 5.昭和35、40年の数字は時系列接続用 に補正 していない。 図 4 女子短時間雇用者数の推移 (非農林業) お り、均等法の趣 旨は着実 に定着 して きた といえ よう。 しか し、均等法に盛 り込 まれた事項は、「努 力義 務規定」や 「罰則な しの禁止規定」によるものが 多いため、企業の対応において、法の形式的遵守 に とどまっているケースが多い といわれ る。例 え ば、募集、採用については、技術系 を中心にかな り 「男子のみ募集」がみ られる。 また、禁止規定 とされた部分 については、制度面の改善は確かに 進んでいて も、職場の暗黙の雰囲気がそれを認め ない とい う現実 も依然 として存在す るようである。 例 えば、結婚や出産によって、職場 にいず ら くな るとい うこ とは、各企業において相変わ らず根強 339 い といわれている。す なわち、形式的に制度が整 っていて も、それが現実に運用 されなければ、真 の雇用機会均等が確保 された とはいえない。 した が って、均等法の理念 を現実的な運用に結 びつけ るためには、現場の実態に即 した新 たな施策が必 要であ ると考 えられ る。
(
2
)
出産、育児、および老親介護に関す る休業制 度の確立 働 く女性に とって、仕事 と育児の両立 は深刻 な 問題 である。均等法の定着化に伴い、結婚退職 は はかな り減 って きたが、出産、育児 とな ると事情 は異な り、女子労働者が仕事 を続けてい く上 で大 きな障害 となっている。340 長野大学紀要 第13巻第4号 1992 出産後の一定期間育 児に専念 し、その後再 び職 場に戻れ るように保障す る、いわゆる 「育児休業 制度」の必要性 は、以前 より指摘 されていた。 因 みに、均等法では、 この制度の導入をうたってい るが、拘束力の弱い ものにとどまっていた。 こ う した現状 に鑑み、婦 人少年問題審議会において検 討が続け られていた 「育 児休業等に関す る法律案 要綱」は、1991年3月に労働大臣に答 申され、同 年5月に国会 で成立 し、翌92年4月よ り施行 され ることになっている (脱稿時)O同法の骨子は、次 の
4
点 とされ る〔
1
6
〕
,〔
1
7
〕。 (丑 労働者 (日雇い、期間を定めて雇用 され る者 は除 く)は、男女 いずれで も1歳に満 たない子 を養育す るために、 1年間の休業 をす ることが で きる。 (診 事業主は、労働 者が育児休業の申し出をした こと、あるいは育 児休業 をしたことを理由 とし て解雇す るこ とはで きない。 (診 1歳に満 たない子 を養育す る労働者の うち、 育児休業 をとらない人に対 しては、勤務時間の 短縮等の措置 を講ず るもの とす る。 ④ 育児休業終了後 も、子 どもが小学校就学の始 期 に達す るまでは、 当該労働者に対 して事業主 は、勤務時間の短縮 等の必要な措置 を講 じなけ ればならない。 育児休業制度の法的整備に関す る審議 は、労使、 および公益の各側委員 によって検討がなされ、現 時点においては妥当な結論 とされ る。 しか し、育 児休業 を義務化 した ものの罰則規定がないこと、 さらに休業中の所得保 障や職場復帰後の昇給、昇 進面での不利益 な取 り扱いの禁止が見送 られた点 については、労働側 に とって不満の残 る結果 とな った。そ して、従業員30人以下の小規模企業にお いては、代替要 因の確保が困難であるとい う使用 者側の主張が受け入れ られ、実施が3年間猶予 さ れ ることになった。 なお、今後適当な時期 に同法 を見直す ことが、国会審議の過程で決 まったこと も付記 してお きたい。 先 に述べ た均等法施行後の実態 をみて も、法律 はあ くまで も基本的 な枠組みにす ぎないこ とがわ か る。 したがって、法律の効果 を高め、内容の充 実 を図 るためには、運用す る側の創意 と前向 きな 努力が重要 になって くる。行政側に対 して も、保 育施設等の整備、充実のための前向 きな施策 を是 非 とも望みたい ところである。 一方、育児休業制度 と並んで、老親介護のため の休業制度の問題について、最近関心が高 まって きている。 これは、高齢化の急速 な進展に伴い、 介護 を必要 とす る老人が増加 して きたこ とによっ て生 じた問題であ る。特に、介護 の負担は女性が 担 うことが多いため、介護は育児 と並んで、女子 労働者が仕事 を続けてい く上で大 きな障害 となっ ているo労働省では、 こうした介護 に携わ る者 を 援助す るため、平成2年度か ら企業 内福祉制度の 中で特にニー ズの高い 「介護休業制度」の普及促 進 を図っている。因みに、平成3年度には 「支 え たい家族 ・続けたい仕事一職場に介護休業制度 を -」 をキャッチフレー ズに、敬老の 日を中心に全 国的に広報活動 を展開 している〔18〕。 この ように 現時点では、制度導入に向けての社会的関心 を高 め るための啓蒙活動に とどまっているが、高齢化
時代に即 した新 しい動向であるため、注 E]す る必 要がある。(
3
)
パー トタイム労働対策 パー トタイム労働者が女性雇用者の4分 の 1を 占め ることは既に示 した とお りである。パー トタ イム労働 は、労働力の需要サ イ ドと供給サ イ ド双 方のニーズの合致 した就業形態であるため、今後 益々増 えて くるもの とみ られ る。 従来、パー トタイム労働者は未組織であ り、労 働条件において も使用者側の一方的都合で決め ら れ る場合が多 く、適切 な雇用管理がなされていな かった といえる。 しか し、今後人材編成の- イブ リッ ド化が進むにつれて、フロー労働力の拡大が 見込 まれ るため、パー トタイム労働者について も 労働基準法 をは じめ とした労働関係法令 を通用 し てい くこ とが求め られ る。因みに、1988年に改正 された労働基準法では、パー トタイム労働者に対 して も年次有給休暇 を付与す るこ とが義務づけ ら れている。 この他に、現在推進 されている施策 と して次のような ものがある 〔2〕。 (D パー トタイム労働者の労働条件の明確化 を図 る。具体的には、賃金、労働時間等 を明 らかに した書面 (雇人通知書) を普及 させ る。 (参 パー トタイム労働者に対 して も、中小企業退 職金共済制度への加入促進 を図 る。 - 116-所正文 女性 の社会進出に関す る考察 (診 パ- トタイム労働者に対 して も、雇用保険の 適用拡大 を図 る。 ④ パー トタイム労働者の就職紹介 を専 門に扱 う 「パー トバ ン ク」や、パー トタイム労働者に職 業教育 を行 う 「パー トタイマー職業教室」の設 置 を推進す る。 (9 パー トバ ン クにおいて、雇用労務相談に対 し て積極的に対応す る。 ⑥ 多 くのパー トタイム労働者の就業先は中小企 業であるため、特 に中小企業におけるパー トタ イム労働者の雇用管理の改善 を図ってい く。 3.女性の職業生活意識 女性の社会進 出をもたらしている経済社会的な 背景、そ して、 これ を受け入れ るための制度的な 枠組み も着々 と整備 されて きている。産業社会は、 こうして従来の男性一辺倒の社会か ら男女共存の 社会- と徐々に移 り変わって きているOそこで本 章 では、働 く女性の職業生活意識 を、 まず男性従 業員の職業生活意識 と比較 したO そ して次に、働 く女性間に も職業生活意識に大 きな格差があると 指摘 されているため、年齢、勤続年数、学歴、お よび生活形態 といったデモグラフィック要 因に着 目して分析 した。
A.
男性従業員 との比較 (1)新入社月 運輸業界の大手企業であるA
社 は、昭和5
7
年4
月にA
社 に入社 した新入社員 を対象 として 「職務 に関す る意識調査」 (昭和5
7
年1
0
月実施) を行 っ た。 同調査 では、男女間の職業生活意識の違いが 次の ように示 されている 〔19〕。 「次の4項 目 (仕事の内容、趣味 ・レジャー、 給料、地位 ・昇進)の うち、あなたが重視す る順 に番号 をつけて下 さい」 とい う質問があ り、その 結果 を男女別に まとめた ものが図5
である。 これ を見て気がつ くことは、男性が 「仕事 の内容」 を 最重要視 しているのに対 し、女性 は 「趣味 ・レジ ャー」に強い関心 を示 しているこ とである。 この結果は、次のように分析す ることができよ う。A社 に骨 を埋め る覚悟で、定年 まで勤め るつ もりで入社 した人が多い男性社員においては、彼3
4
1
らが仕事 を最優先す ることは当然のことであろう。 しか し、女性社員の場合、そのような人はむ しろ 少 な く、会社 に勤め るのは結婚 までの暫定期間 と い う人が一般的であるため、結婚、交遊関係、趣 味な どが職業生活の最大の関心事になっていると 考 え られる。 そ して、 この結果は、A社 のみに限 られ たことではな く、広 く日本企業一般 に認め ら れてい るようである。 因みに、働 く女性に関す る心理学的研究 を長年 続けている馬場房子氏は、2
0
歳代前半の働 く女性 を次の ように表現 している 〔5〕
。
「-仕事 をもっ ことは大変楽 しいことだ と思い、給料については 満足 もしていないが不満 もない。大企業志向で、 男女 の給料差 についてはちょっぴ り不満 をもち、 お茶 くみす ることに もあまり抵抗が な く、正社員 の方がパー トやアルバ イ トよりは良い と思 ってい る。 そ して、子 どもに手がかか らな くなったらま た働 きたい と思 い、一生 自分の仕事 をもちたい と 思 っている。 しか し、 キャ リア ・ウーマ ンにはな りたい とは思わない。総 じて、現在の仕事 には満 足 もしていないが、不満 もない-。」 (2)若年層社員 筆者は、若年層社月の職業生活意識に関す る男 女間比較 を行 うため、 2
種類の調査 を比較 した。 男性社局デー タは、1
9
8
5
年に行 われたA
社 の労働 組合員意識調査 (n-3,
8
1
5
)
を用いた〔
2
0
〕。一 方、女性社員デー タは、1
9
8
6
年に行 われたA
社の 東京都 内に勤務す る一般事務職女性意識調査 (n-5
1
3
)
を用いた 〔2
1〕。因みに、女性社月デー タ の方 も調査主体 は労働組合 である。比較 した調査 項 目は、「職業生活-の適応」に関す る次の4
項 目 である。 (》 今 の生活全体 に満足 しているか ② 自分の1
0
年後の生活は明 るいと思 うか ③ 全体 として現在の職場に満足 してい るか ④A
社の社月 として誇 りを感 じているか なお、女性社員デー タの8
3.
9
%
が2
9
歳 以下の年 齢階級に属す るため、比較す る男性社員 デー タは「
2
9
歳以下」 と「
3
0
歳∼3
4
歳」の2
つの年齢階級 に限定 した。分析 は3*
4の クロス表に基 くx2検 定によ り行 った。統計的分析の結果は次 の とお り である (表2)〔
2
2
〕。 女性の 「現在の生活満足度」は、2
9
歳 以下の男342 仕 事 の 内 容 趣 味 ・レ ジ ャー 給 料 地 位 ・昇 進 長野大学紀要 第13巻第4号 1992 1位 2位
3
位4
位 3.55 3.95 ●-● 男性 (N-400) 0--10女性 (N-160) 注)A杜社内報発表資料 より筆者が作成 した ものである。 図5 新入社員が職業生活において重視するもの (平均順位) 性群、お よび3
0-3
4
歳の男性群の満足度 よ りとも に高い。 また、女性の「
10年後の生活の明るさ」、 お よび 「現在の職務満足度」について も、両男性 群 よ りともに高 くなっている。一方、女性の 「社 員 として誇 りの強さ」は、両男性群 よ りも弱 くな っている。 この結果は、次の ように考察 され よう。 これは、 心的飽和(psychicalsatiation)とい う心理学的概 念によって説明で きる。す なわち、職業生活に対 す る関わ り方において、女性は心的飽和が起 こ り に くい条件 を備 えている。一方、男性は起 こ りや すい条件 を備 えているといえる。心的飽和は、あ る行動に対 して、その個人の 自我関与皮が高けれ ば高いほ ど起 こ りやす くなる。 したが って、職業 上の行動が 自分 の生活全体 において、 自我に対 し て周辺 的 (peripheral)に行 わ れ る副 次 的行 動 (secondarybehaviors)として位置づけ られてい る女性に とっては,L心的飽和は起 こ りに くい とい える。 しか し、 自我の中心層に関わる重要な行動 として位 置づけ られている男性 に とっては、逆に 起 こ りやすい といえる。す なわち、現在の生活満 足度、10年後の生活希望度、および現在の職務満 足度は、心的飽和 を媒介 とした職業生活に対す る 自我関与度か ら説明で きると考 えられ る。 一方、社員 としての誇 りの強 さについて も、職 業生活に対す る自我関与度か ら説明できる。すな わち、男性 に比べ て自我関与度が低 い女性は、社 月 としての誇 りの強さも相対的 に低 くなっている。 これに加 えて、女性社員調査か ら 「全国要員 コー スを選 びた くない」 とい う回答傾向 も示 されたが、 これ も自我関与皮の低 さと密接 な関連 をもってい ると考 えられる。 ところで、 ここで考察すべ きことは、なぜ女性 は職業生活に対す る自我関与度が低 いか とい うこ とである。 その理由のひ とつ として、現行の社会 システムに根強 く残 る伝統的な性役割 (sexrole) 観があげ られ る。すなわち、「女性 は補助労働力」 とい う意識が男女 ともにあ り、職業 をもっている 女性において も、職業上の行動が 自我の中心層に 関わる重要 な行動 として位置づ け られていない と い うことである。 したがって、各企業において、 均等法施行後 も女性の雇用管理施策に急激な変化 のみ られない原因のひ とつが ここにあるように思 われ る。B.
デモグラフィック要 因間の比較 (1)年齢、勤続年数による比較 一般企業において正社員 として働 く女性社員は、 多 くの場合未婚者であることが 多い。 これは、20 歳代前半の若年層については もちろんのこと、20 - 118-所正文 女性の社会進出に関する考察 表2 凝集生活 への適応 に関 す る男女間比較 ① 現在の生活満足度 343 満 足 いえば満足どちらか と いえば不満どち らか と 不 満 計 女 性 61 257 125 47 490 (25.9) (172.4) (202.9) (88.8) 29歳 以 下 14 239 370 173 796 男 性 (42.0) (280.1) (329.6) (144.3) 30- 34歳 15 104 211 89 419 男 性 (22.1) (147ー5) (173.5) (75_9) x2-199.63(P<.001) ② 10年後の生活の明 るさ 明 る
い
いえば明 るいど ち ら か と いえば暗いどちらか と 暗い
計 女 性 151 178 20 33 382 (58.1) (100.2) (116.3) (107.4) 29歳 以 下 47 143 236 215 641 男 性 (97.6) (168ー1) (195.1) (180.2) 30- 34歳 12 41 164 140 357 男 性 (54.3) (93.7) (108.6) (100.4) x2-491.66(P<.001) ③ 現在の職務満足度 満 足 いえば満足どちらか と いえば不満どちらか と 不 満 計 女 性 (44.439) (1283.207) (1193.351) (69.933) 491 29歳 以 下 78 291 345 108 822 男 性 (75.3) (307.6) (323.2) (115.9) 30- 34歳 38 139 203 44 424 男 性 (38.8) (158.7) (166.7) (59.8) x2
-50.38(P<.001) ① 社員 としての誇 りの強 さ ほ こ り を 感 じている どちらか といえば感 じている 感 じていないあ ま り 感 じていない 計 女 性 (84.759) (18140.78) (161.1784) (59.879) 487 29歳 以 下 152 328 258 83 821 男 性 (143.2) (304.8) (272.1) (101.0) 30- 34歳 75 168 138 43 424 男 性 (73.9) (157.4) (140.5) (52.1) x2-30.07(P<.001) 注)表中の数値は,上段は実測度数 を示 し,下段の ( )内は.期待度数 を示す。 資料 出所 所正文 「一般事務職女性の職業生活意識に関す る一考察」,経営行動科学 (1988)3
4
4
長 野 大 学 紀 要 第1
3
巻 第4
号1
9
9
2
歳代後半、あるいは3
0
歳以上の女性について もい えることである。そ して、後者の場合、結婚適齢 期 といわれ る時期に結婚相手が うまい具合に見つ か らなかったため、彼女たちの関心 も次第に結婚 か ら仕事- と移 り変わって くるとされている。 井下理氏は、1
3
社、1,
2
3
9
人の女性社員 に対 し て、仕事に対す る考 え方や行動 を中心 とした質問 紙調査 を行 い、年齢階級別、勤続年数別 に分析 し て、 この仮説 を検証 している〔
2
3
〕
,〔
2
4
〕。 それに よれば、4
0
歳 ぐらいまでは年齢が増すにつれて、 仕事への達成志向が確実に高 まってい き、職業生 活の中にアイデンティティを求め る傾向が強 まっ て くることが示 されている (図6
)0 ここで注 目すべ きことは、職業生活に高 く自我 関与 している彼女 たちが、本当にキャ ))ア ・ウー (1)年齢階級別 L 年 齢2
0-2
4
歳(
N-3
8
5)
2
5-2
9
歳(
N-2
9
5
)
3
0
-3
4
歳(
N-1
7
9
)
3
5-3
9
歳(
N-7
7)
4
0
歳 以上(
N-
1
1
3)
マ ンとしての 自分 に満足 しているか どうか とい う 問題である。現実は、必ず しもすべ てそ うである とはいえないように思われる。す なわち、彼女 た ちの中で、 もともとキャ リア ・ウーマ ンになるつ もりで特別 な勉強 をして きたような人は比較的少 な く、2
0
歳代前半 までは、趣味、 レジャー、交友 関係などに心的エネルギー を投射 していた人が多 い と考 えられ る。そ して、結婚適齢期 を超 えてか ら、 自分 の もつ価値観の変更 を余儀 な くされ、今 までは2次的で しかなか った仕事が、次第に重要 な もの として彼女 たちの内面に位置づ け られて き た と考 えられ る。 しか し、わが国企業では、女性の活用が未熟で あるため、 5
年以上勤務 したベ テランであって も、 相変わらず補助的な仕事 しか与 えられない場合が M H0
5
0
1
0
0%
(2)
勤続年数別 勤続年数 3年未満(
N-3
3
6)
5年以上 10年未満(
N-3
5
0)
1
0
年以上(
N-3
2
7) L M H0
5
0
1
0
0
%
注 )H一高達成志向群 M∼中達成志向群 L∼低達成志向群 資料出所 ) 井下理 、 日本応用心理学会第4
9
回大全(
1
9
8
2
)
報告資料 図6 仕事に対する達成志向の変化- 1
2
0
-所正文 女性の社会進出に関す る考察 多い。 したが って、30歳代の独 身女性が、仕事 に レゾン ・デー トル を求め、にわかにキャ リア ・ウ ーマ ンとして 自立 していこうと思 って も、仕事 に 誇 りをもっ ことができな く、や るせ ない 日々 を送 っている人 も少 な くない と思われ る。す なわち、 30歳代女性の仕事 に対す る高い達成志向は、「見せ かけの達成志 向」であるように思われ る。 そして、 40歳代になると、独 身女性 としての人生に対す る 新 たな価値観が生 まれ、仕事に対す る達成志向が 30歳代後半に比べて低下す るのではないか と考 え られ る 〔19)。 (2)生活形態、学歴による比重交 筆者は、A節で示 した女性社員調査 を生活形態、 学歴 ごとに分析 してみた。生活形態については、 自宅通勤未婚者 (親元か ら通 っている未婚者)、一 人 ぐらし未婚者、および既婚者に3分類 した。 ま た、学歴につ いては、高校卒、専 門学校卒、短大 卒、大学卒 に4分類 した。結果 を略述す ると次の ようになる 〔21〕, 〔22〕。 まず生活形態別に、仕事 に対す る積極的姿勢、 職場 における男女均等の意識、および均等法に対 す る関心度 といった側面に注 目してみ ると、 自宅 通勤未婚者 <一人 ぐらし未婚者 ≦既婚者 とい う結 果になる。す なわち、既婚者 、一人 ぐらし未婚者 の方が、 自宅通勤未婚者 よ りも職業生活に対 して 積極的態度 を示 している。 次に、学歴別に上記
3
側面の意識についてみる と、高校卒 ≦短大卒 <専門学校卒 ≦大学卒 とい う 結果 になる。すなわち、大学卒、専 門学校卒の方 が、高校卒、短大卒 よ りも職業生活に対 して積極 的態度 を示 している。 また、職業生活への適応度は、いずれのグルー プにおいて も高 く、生活形態別、学歴別 とも差は み られなか った。 これについては、A
節で詳 しく 解説 したように、各属性に共通 していえる女性の 自我関与度の低 さが原因であると示唆 され る。 こ れに加 えて、均等法の中に盛 り込 まれている 「全 国要 因コースを選 びたい」については、いずれの グループ も否定的回答傾 向を強 く示 し、属性問に 差はみ られなかった。C.
まとめ (1)複線型雇用管理に対す る知見 345 生活形態別分類 に着 目した分析 では、既婚者、 一人 ぐらし未婚者の職業生活意識構造が類似 して お り、 自宅通勤未婚者に比べ、職業生活に対す る 自我関与皮が高いことが示 された。従来、一般事 務職女性の採用においては、 自宅通勤 を床別 とす る企業が多か ったが、基幹労働力 としての雇用 を 前提 とした場合、 自宅通勤者でない方がむ しろ好 ましい とい うことが示唆 され る。 また、学歴別分類に着 目した分析 では、大学卒、 専門学校卒 の職業生活意識構造が類似 してお り、 高校卒、短大卒に比べ、職業生活に対す る自我関 与度が高いことが示 されたo管理職 コー ス、専 門 職 コース としての雇用 を前提 とした場合、 この学 歴集団の積極的採用が望 まれ る。 女子労働力の雇用 タイプは、短期雇用型、長期 雇用型、お よび再雇用型の3タイプに分類 できる が、従来の社会 システムは、主 として短期勤続の 腰掛け型 を想定 してつ くられていた(「単線型雇用 管理」の採用)。す なわち、 さまざまな職業生活意 識 をもつすべての女子労働者に対 して、画一的、 統一的 な雇用管理がなされていたため、職業生活 に対 して 自我関与度の高い女性か らは不満が生 じ、 企業サ イ ドにおいて も生産性に対す るロスが生 じ ていた。 したがって、均等法下の今後の雇用管理 は、従来の集団画一型か ら、各人の能力 とニーズ を考慮 した 「複線型雇用管理」に転換 をす ること が求め られ る。すなわち、各 コー ス別 に募集、採 用か ら定年退職 までの一貫管理 を行 い、各人が ど の コー スを選択す るかについては、各人の能力 と ニー ズを考慮 した上で決定す るシステムが求め ら れる。因みに、デモグラフィ、てク要 因間の職業生 活意識の差 は、 システム作成の際にたい-ん有益 な知見であると思われ る。そ して、年齢、あるい は勤続年数の増加 に伴 って、仕事 に対す る達成志 向が高 まってい くといった井下氏の報告 を考慮す れば、複線型雇用管理 システムは、一定期間経過 した後、他 コースに移行す ることを可 とす る弾力 的なシステムであるこ とが重要であるといえる。 (2) 男女の意識変革の必要性 まず、当事者である女性の意識変革につ いて述 べ たい。デモグラティツタ要 因問に大 きな差が兄 いだせ、複線型雇用管理の展開に示唆 を与 えたこ とは重要 なことである。 しか し、女性の職業生活346 長野大学紀要 第13巻 第4号 1992 意識 の基底部分 は、伝 統 的な性役割観 に支配 され、 同世代 の男性 に比べ て、職業生活 に対す る自我関 与度 が低 い とい う結果 を女性側 は厳粛 に受 け とめ る必要 が あ ろ う。均 等 法 は、社会 的には婦 人参政 権 に匹敵す るほ どの大 きな意義 を もつ とされてい るが、各企業 において、均等法施行後 も雇用管理 上 の大 きな変化 はい ま りない といわれてい る。 そ の要 因が、 ここにあ る とい うこ とが で きよ う。 し たが って、均等法 を実 効 力のあ る もの とす るため には、 まず女性 自身が職 場 での甘 えを捨 て、能力 を中心 においた職業生 活へ と意識 を切 り替 えてい くこ とが最 も重要 で あ る。 そのためには、女性一 人ひ とりが、技術や ス キル を身につけ、 これな ら プ ロ とい え るほ どに な るこ とが たいせ つ であろ う。 次 は、女性 をサ ポー トしてい く立場 にあ る男性 の意識変革 につ いて で あ る。 まず、女性 の職 業生 活に対す る自我 関与度 を高め るためには、管理職 を中心 とした男性が、「補 助的業務 とされ る末端の 仕事 で も、決 して軽 い仕 事 では な く、組織 を維持 、 発展 させ てい く上 で た い- ん重要 な仕事 であ る。」 とい う意識 をもつ こ とが たいせつ であ る。 なぜ な らば、管理職 の態度 が、女性 の主観的 な役割認知 に影響 を及ぼ し、職 業 生 活に対す る自我関与度、 職業生活意識 とも密接 な関連 を もって くる と考 え られ るか らであ る。 そ して、家庭生活 にお いては、 お互 いの協 力体 制 をつ くってい く努 力 をす るこ とが重要 であ る。 今 まで女性 まかせ で あ った家事 や育 児に、 これか らは男の参加 が 当然視 されて くるよ うになるだ ろ う。 日本 では奇異 に とられてい る男の育 児休業 は、 欧米先進諸 国ではい まや 常識 にな ってい る といわ れ、 こ うした意味にお いて も仕事や職場 を優先 さ せ る男性 の考 え方 を変 え させ るこ とは、非常 にた いせ つ であ る。す なわ ち、女性 の変化 は同時 に男 の側 の変革 を迫 って い るのであ る。 (ところ まきぶみ 非常勤講 師) (1991.12.20受理) 文 献 〔1〕馬場房子 :"均等化-の組織の対応",三隅二不 二,山田雄一,南隆男編 :「 組織の行動科学」-所収,福村出版 (1988) 〔2〕労働省婦人局編 : 「婦人労働の実情 (平成 2年 版)」 (1990) 〔3〕総務庁統計局編 : 「労働力調査年報」 (1990) 〔4〕Durkin,J.J∴"The PotentialofW omen"in
Stead,B.A.(ed),Women in Management, Prentice-Hall(1978) 〔5〕馬場 房 子 : 「働 く女 性 の心理 学」, 白桃 書房 (1982) 〔6〕通商産業省編 : 「特定サー ビス産業実態調査」 (1989) 〔7〕総務庁編 : 「労働力調査特別調査」 (1989) 〔8〕厚生省大臣官房統計情報部編 :「人口動態統計
」
(1990) 〔9〕文部省大臣官房調査統計課編 : 「学校基本調査 報告」 (1989) 〔10〕総理府編 : 「女性 の就業 の関す る世 論調査」
(1989) 〔11〕労働省政策調査部編 :「毎月勤労統計調査年報」 (1990) 〔12〕労働省政策調査部編 : 「賃金構造基本統計調査 報告」 (1990) 〔13〕労働省職業安 定局編 : 「職業安定 業務 統計」 (1990) 〔14〕稲上毅 :「転換期の労働世界」,有信堂 (1989) 〔15〕 日本経営者団体連盟事務局編 : 「男女雇用機会 均等法早わか り」 (1986) 〔16〕労働法令協会 編 : "育 児休業 法案 を国会 に提 出",労務管理通信,Vo1.31,No.ll (1991) 〔17〕"「育 児 と仕事」-新 しい一歩一,読売新聞社説 (1991年5月 7日) 〔18〕労働法令協会編 : "介護休業制度の普及で啓発 活動",労務管理通信,Vol.31,No.27 (1991) 〔19〕所正文 : "働 く女性のポー トレー トー主に職業 生 活 意 識 の 観 点 か ら一一,輸 送 展 望,No. 197 (1986) 〔20〕全 日通労働組合編 : 「意識調査 の分析 と提言」 (1986) 〔21〕所正文 : "一般事務職女性のキャ リア意識に関 す る研究- デモグラフィック要 因に視点 をおい た分析-",組織学会昭和62年度研究発表大会報 告 (1987) 〔22〕所正文 : "一般事務職女性の職業生活意識に関 す る一考察",経営行動科学,Vol.3,No.1(1988) 〔23〕井下理 : "働 く女性の職業生活意識について", - 122-所正文 女性の社会進出に関す る考察 日本応用心理学会第49回大会報告 (1982) 〔24〕井 下理 : "働 く女 性 の職 業 生活 意 識",労務 研 究,Vol.37,No.9 (1982) - 12 3-347