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パーキンソン病の姿勢異常 : 病態解明および治療法の確立 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 古澤 嘉彦 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 医 学 ) 学 位 記 番 号 医工博4甲 第 150 号 学 位 授 与 年 月 日 平成26年6月19日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 先進医療科学専攻

学 位 論 文 題 名 A study to investigate the pathophysiology and treatment of

postural deformities in Parkinson’s disease パーキンソン病の姿勢異常 ―病態解明および治療法の確立― 論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 波呂 浩孝 委 員 客員教授 和田 圭司 委 員 講 師 大森 正幸

学位論文内容の要旨

( 研 究 の 目 的 ) パーキンソン病では腰曲がりや体幹の側屈、首下がりなどの様々な姿勢異常を合併する。患者の ADL や QOL を著しく低下させるが、その病態や治療法は確立していない。本研究では、パーキンソン病に 合併する腰曲がり、首下がりの病態の検討および治療法の確立を目的とする。 (方法) 腰曲がりまたは体幹側屈、首下がりを呈したパーキンソン病患者を対象とした。立位や歩行で出現 し、臥位で消失する体幹の異常姿勢のうち、前屈成分が目立つものを腰曲がり、側方成分が目立つも のを体幹側屈と定義した。腰曲がりはその変曲点の違いから、上腹部型(変曲点が胸腰椎移行部に存 在)と腰部型(変曲点が股関節に存在)に分類した。首下がりは下位頸椎から上位胸椎に変曲点をもつ 頸部の前屈姿勢と定義した。 1) 上腹部型腰曲がり 上腹部型腰曲がりに対して、リドカインを外腹斜筋、内腹斜筋、腹直筋へ単回投与して腰曲がりの 変化を観察した。外腹斜筋へ連続投与と体幹伸展トレーニング指導を行い、改善効果の持続の有無 を観察した。上腹部型腰曲がりに対する外腹斜筋へのリドカイン投与の有効性を確認するために、 クロスオーバーを用いた二重盲検ランダム化比較試験を行った。電気生理学的検討として、通常の 筋電図では評価困難であったために、起立台を用いて患者を臥位姿勢から立位姿勢へ変化させた際 の筋電図を記録し、責任筋を明らかにした。同様の検査を、股関節で体幹が屈曲する腰部型腰曲が りがある患者および腰曲がりがない患者でも施行し、上腹部型腰曲がり患者での結果と比較した。 上腹部型腰曲がり患者で責任筋に対しリドカイン連続投与を行い改善効果を観察した。 2) 体幹側屈 体幹の側屈を呈する患者において、筋 CT で傍脊柱筋の筋量を評価した。また表面筋電図で同筋の

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活動を評価した。 3) 腰部型腰曲がり 腰部型腰曲がり患者において、起立台を用いた表面筋電図を施行した。また腸腰筋へリドカイン連 続投与を行い、腰曲がりの改善効果を観察した。 4) 首下がり 首下がり患者において、静止時と頚部伸展位にて頸部伸筋群および屈筋群の針筋電図を記録し、責 任筋を明らかにした。対象筋にリドカイン連続投与を行い改善効果および効果持続期間を観察した。 連続投与後はコルセットを併用した。 (結果) 1) 上腹型腰曲がり 上腹部型腰曲がり患者 5 人に対する腹筋群へのリドカイン単回投与では、外腹斜筋のみ全員で腰曲 がりが改善した。リドカイン連続投与では、12 人中 9 人で腰曲がりが改善し、内 8 人で 3 か月間効 果が持続した。上腹部型腰曲がり患者 10 人を対象としたクロスオーバーを用いたランダム化比較試 験では、腰曲がり角度は実薬(リドカイン)投与により 3.9±6.4 度の改善をみとめ、偽薬(生理食塩水) 投与による改善(1.4±3.8 度)よりも大きかったが有意差はなかった。起立台を用いた表面筋電図で は、上腹部型腰曲がり患者 14 人全員で立位姿勢となる前に腰曲がり姿勢を呈し、内 13 人で腰曲がり 姿勢出現前に両側または片側外腹斜筋に放電をみとめ、腰部型腰曲がり患者および腰曲がりがない患 者よりも外腹斜筋の放電の頻度が有意に高かった。前屈が高度な患者は両側に、軽度な患者は側屈と 対側の外腹斜筋に放電がみられる傾向があった。筋電図を施行した 14 人中 12 人で両側または片側外 腹斜筋へリドカイン連続投与を行い、内 11 人で腰曲がり姿勢の改善をみとめた。 2) 体幹側屈 体幹側屈を呈した患者 9 人および腰曲がりがない患者 9 人で筋 CT および表面筋電図を施行し、体 幹側屈がある患者全員で側屈と対側の傍脊柱筋の肥大および過活動がみられた。体幹側屈の経過と肥 大の程度には正の相関がみられた。 3) 腰部型腰曲がり 腰 部 型 腰曲 が り患 者 12人 で 起 立台 を 用い た 表面 筋 電 図を 行 い、12人 全 員 で 腸腰 筋 に放 電 を み と め た。 上 腹部 型 腰曲 り 患 者お よ び腰 曲 がり が な い患 者 でも ほ ぼ全 員 に 同筋 に 放電 を み と め て おり 、 有意 差 はな か っ た。 腸 腰筋 へ のリ ド カ イン 連 続投 与 を行 い 、 12人 中 10人 で 統 計 学 的 有意 差 をも っ て腰 曲 が りが 改 善し た 。 4) 首下がり 首 下 が りを 呈 した 6人 の患 者 に おけ る 針筋 電 図で は 、安静 座 位で 頸 部伸 筋 群 (頭 板状 筋 、肩 甲 挙 筋 )に 持続 放 電を みと め た 。屈 筋 群 (斜角 筋、胸 鎖 乳突 筋 )で は放 電は み と めな か った が、 他 動 的 に頸 部 を伸 展 させ る と 、斜角 筋 では 全員 で 、胸 鎖乳 突 筋で は 4人 で 持 続放 電 をみ と め た 。両 側 斜角 筋 へリ ドカ イ ン 投与 を 行い 、6人全 員 で 改善 を みと め た。治 療 後 頸部 コ ルセ ッ ト を 併 用し 、 6人 中 5人で 3か 月 間 効果 が 持続 した 。 (考察) 上腹部型腰曲がりでは外腹斜筋、首下がりでは斜角筋へのリドカイン投与により姿勢の改善をみと めており、各筋がそれぞれの病態に関与している可能性が示された。上腹部型腰曲がりでは起立台を

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用いた表面筋電図で、首下がりは頸部伸展時の針筋電図で責任筋の異常放電をみとめており、責任筋 の病態への関与を電気生理学的に証明することができたと考えた。リドカイン自体の半減期は 1 時間 程度であるが、リドカイン連続投与による各姿勢異常の改善効果は長期間持続した。頸部コルセット や体幹伸展トレーニングにより良姿勢を保持したことが影響した可能性を考えた。 リドカイン投与の結果から、腰部型腰曲がりには腸腰筋の過剰収縮の関与が疑われたが、筋電図に おける腸腰筋の放電は上腹部型腰曲がりや腰曲がりがない患者でも高頻度にみられており、特異的で はなかった。腸腰筋は姿勢保持筋としても働くが、現時点で起立台を用いた筋電図では生理的作用と 病的作用を判別する方法は確立していない。今後筋電図の波形分析を含めたより詳細な検討が必要で ある。 (結論) パーキンソン病の姿勢異常である首下がり、腰曲がりについて、リドカイン投与の反応および電気 生理検査の結果からその病態を検討した。各責任筋へのリドカイン投与および良姿勢の保持はパーキ ンソン病の腰曲がりおよび首下がりの治療法の一つになりえることが示された。

論文審査結果の要旨

パーキンソン病は脳内のドーパミン欠損に基づく多くの神経症状を呈し、進行性の疾患である。ま た、本邦では高齢化の著進に伴って患者数が増加している。多くは薬剤治療が行われているが、脊柱 後側弯変形を伴う姿勢異常は治療に難渋する。 申請者は神経内科医師の立場から姿勢異常を上腹部腰曲がり、腰部腰曲がり、体幹側屈、頚下がり に分類した。次に、局所麻酔剤であるリドカインを用いてエコー下に選択的に筋に注入し、姿勢異常 の変化や改善について検討した。さらに、起立台を用いて患者を臥位から立位にし、筋電図検査を実 施して責任筋の同定を行った。 結果は、上腹部腰曲がり型では、外腹斜筋へのリドカイン注入で全例(n=5)に姿勢異常の改善を みた。また、リドカイン連続投与により 67%(8/12)で 3 か月効果が持続した。筋電図検査では、 姿勢異常の出現直前に外腹斜筋の放電が確認されている。同様に、腰部型腰曲がりでは腸腰筋が、頚 下がりでは斜角筋が責任筋であった。 以上から、申請者はリドカインの責任筋への投与とその後の良肢位の保持によってパーキンソン病 の姿勢異常の新規治療となりうると結論した。 一方で、リドカインの作用機序や効果時間から、局所麻酔剤の作用のみとは考えづらいこと、なぜ 上腹部腰曲がり型が外腹斜筋、腰部腰曲がり型が腸腰筋、頚下がり型が斜角筋であるのかという実証 がないこと、筋以外の軟部組織が姿勢異常に関与している可能性、スライドや論文での図に動画がな く一時的な姿勢のみを示しており歩行解析などが必要であること、ジストニアとの病態の違いについ ての説明、パーキンソン病治療薬の血中濃度と姿勢異常の変化との関係、傍脊柱筋の筋萎縮のメカニ ズムについて、臨床検査のサンプル数の妥当性、などについて疑問が残る。

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Disorders (2012 年 IF:3.274)に発表している。本研究も今後継続して投稿を目指している。 以上より、本学の博士(医学)の学位論文に相応しい研究であると審査委員全員一致で判断した。 今後の研究のさらなる発展が期待できる。

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