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資料 * 終末期がん患者の予後予測項目の検討 ** 1) ** 2) 熊谷有記, 前川厚子, 阿部まゆみ ** 2), ** 3) ** 1) 国府浩子, 田渕康子 ** 1) 佐賀大学医学部看護学科 ** 2) 名古屋大学大学院医学系研究科 ** 3) 熊本大学大学院生命科学研究部 Key wor

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Ⅰ.はじめに

 終末期の生存期間を予測する指標を用いることによっ て,医療従事者はがん患者の予後を把握し,有効なケア を行うことが可能になる1)2).また,患者と家族は残さ れた時間の有効利用ならびに死の準備を行うことができ る3).そのため,1980 年代の後半にスコアリングシステ ムからなる終末期がん患者用予後予測指標が開発され, 各国で検証されてきた.しかし,既存の予後予測指標 は,構成項目として採血を要する項目や医療従事者の直 観に基づく項目を含んでいるだけでなく,陰性的中率が 低いことが指摘されている3)4).そこで,終末期患者に 対して侵襲がなく,正確で簡便に使用できる予後予測指 標の開発が不可欠と考える.  終末期在宅療養時期は大別して在宅療養開始時,平均 3~4 カ月の安定期,最期の 7~10 日間,最期の約 3 日 間に分けられる.これらの各時期に応じて患者やその家 族に関わっていくことが医療従事者には求められる5)6) 特に,医療行為によって症状を軽減することが難しい最 期の約 1 週間には,医療従事者が家族に対して意識的に 介入することが重要である7).そして,家族が臨終の場 を患者の側で過ごせるようなケアが必要である.これら のケアは,患者の療養の場所に関係なく医療従事者に求 められる.  看護師も,患者と家族の生活の質を高めるケアを提供 するうえで主体的に予後を予測することが必要不可欠で あると考える.Glaser ら8)も,看護師が予後を予測する ことによって患者や家族との関係性やケアの方向性など に影響を及ぼすことから,看護師の予後予測の必要性を 指摘している.近年,看護師の視点から予後予測項目が 明らかにされつつある9)10).山田ら10)は,看護師が患者 の予後を推定する際の症状とその期間について検討し, ある看護師が予後予測項目として適切だと考えた症状や 徴候を,ほかの看護師は適切ではないと考えたり,特定 の症状や徴候から予測した予後が異なることを報告して いる.  現在,最期の 10 日と 3 日を正確に判断する指標は確 立されていないので,まず指標の構成項目を明らかにす ることが課題であると考える.そこで本研究では,看護 師が終末期肺・胃・直腸結腸がん患者の予後 10 日と 3 日を予測するうえで有用な項目(症状や徴候)を明らか にすることを目的とした.その際,血液検査などの身体 侵襲を伴う処置を必要としない項目を抽出した. ■ 資 料

終末期がん患者の予後予測項目の検討

熊 谷 有 記

** 1)

,前 川 厚 子

** 2)

,阿 部 まゆみ

** 2)

国 府 浩 子

** 3)

,田 渕 康 子

** 1) ** 1)佐賀大学医学部看護学科 ** 2)名古屋大学大学院医学系研究科 ** 3)熊本大学大学院生命科学研究部 (受付日:2010 年 4 月 7 日,受理日:2011 年 12 月 19 日) 連絡先 熊谷有記/佐賀大学医学部看護学科 〒849⊖8501 佐賀県佐賀市鍋島 5⊖1⊖1 Phone:0952⊖34⊖2549/Fax:0952⊖34⊖2023/E⊖mail:[email protected]⊖u.ac.jp Key words: がん患者,終末期,予後予測項目

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The Prognostic Scale15),Reuben ら16),Bruera ら17) Kikuchiら18),Stone ら19)の調査と,山田ら10)の調査で 挙げられている予後予測項目の中で,症状や徴候には該 当しない経験に基づく予後予測4)と,身体侵襲を伴う血 液検査項目4)10)18)19)を削除した.さらに,測定が困難な 可能性が高い“体重減少”10)15)~17),抽象度が高く判断が 難しい可能性がある項目“バイタルサインの変動”10)“元 気に復活”10)を削除した. 4)前述の 3)で残った項目のうち,身体の機能状態を示 す“Karnofsky Performance Scale(KPS)”4)16)18)“Eastern Cooperative Oncology Group⊖Performance Status(ECOG⊖ PS)”15)19),“歩行レベル”13)14),“活動と疾患の根拠”13)14) “セルフケアレベル”13)14)を整理し,「歩行困難」,「座位 保持困難」,「ベッド(布団)から起き上がれない」に変 更した.程度によって判断が困難になる可能性がある “浮腫”10)13)15)を“末梢の浮腫”に,“やせ”10)を“顕著な 骨突出(剣状突起や頬骨など)”に修正した.そして意 味内容が重複する“反応なし”10)と“昏睡”15)を「昏睡」に, “混乱”15)と“せん妄”10)13)を「混乱/せん妄」に,“いつ もと様子が違う”10)と“昨日と違うという感覚”10)を「昨 日と違うという感覚」に整理した. 5)最終的に残った 32 項目の適切性と看護師の裁量の範 囲内で判断できる内容かどうかを共同研究者とともに確 認し,表面妥当性を確保した. 3.分析方法  統計ソフト SPSS for Windows 11.0J を用いて,基本統 計量を算出した.予後予測項目の適切性は,Polit ら20) の item⊖level content validity indices(I⊖CVIs) の 基 準 78 %以上と Landis ら21)が示した「almost perfect」の基 準κ≧0.81 を参考にして確認した.具体的には,対象者 の 81 %以上が「適切である」もしくは「まあまあ適切 である」ととらえた項目を,適切性ありとみなした.な お予後予測項目の適切性の分析には,がん患者を看取っ た経験があり,欠損値や不明回答が 4 つ以内の看護師の 回答を用いた.肺・胃・直腸結腸がんにおける適切率の 比較には,Fisher の正確確率検定を用いて検討した.統 計的有意水準については,5 %未満もしくは 1 %未満を 採択した.

Ⅲ.倫理的配慮

 本研究は,名古屋大学医学部生命倫理委員会保健学部 会の承認を得たのちに実施した.対象者には,研究の目 的と内容,研究協力は自由意思であること,研究に協力 しなくても不利益を被らないこと,無記名であること,

Ⅱ.研究方法

1.対象者  5 年以上のがん看護領域における臨床経験と,がん患 者の看取りの経験をもつ看護師 57 名を対象者とした. なお本研究では,がん患者の病状悪化や患者の問題を判 断できる看護師を対象者の条件とした.このような能力 を備えた看護師は,Benner11)が区分する「中堅看護師」 に該当すると考える.また多くの論文で中堅看護師は臨 床経験 5 年以上と定義されているので12),本研究の対象 者は臨床経験年数 5 年以上とした. 2.調査方法  調査は無記名式質問紙調査法で行った.この調査方法 を用いたのは,予後予測指標以外の尺度開発でも幅広く 活用されている項目の内容妥当性の検証法を応用するこ とで,予後 10 日と 3 日を予測する症状や徴候を明らか にできると考えたためである.  がん看護を専攻している大学院生と大学院修了者なら びに,がん患者に関わる病院看護師と訪問看護師に依頼 文書,質問紙,返信用封筒を配布した.  質問紙の内容は,属性と終末期に生じる症状や徴候 (肺・胃・直腸結腸がん用)である.属性は,性別,臨 床経験年数と領域,これまでに看取った患者のがんの種 類,訪問看護の経験の有無から構成した.  独自に作成した終末期に生じる症状や徴候 32 項目が, 肺・胃・直腸結腸がんの予後 10 日と 3 日の予測項目と して適切であるかを「1.全く適切ではない」から「4. 適切である」の 4 段階で確認した.なお,本研究で取り 上げた 32 項目は,以下に示した手順で作成した. 1)MEDLINE および CINAHL(~2008.12)で,キーワー ド が“terminal cancer”/“end⊖of⊖life”/“palliative”/ “advanced” and Mesh(Medical Subject headings)terms/ “Prognosis”/“Survival Analysis”/“Neoplasms mortality”,

および adult で検索し,英語で記述された論文に該当す るものと,抽出された論文の引用文献から,予後 1 カ月 以内を推定する予測項目を抜粋した. 2)医学中央雑誌(~2008.12)で,キーワードが予後, 終末期,末期,ターミナル,ホスピス,緩和,エンドス テージ,腫瘍,がんおよび成人と高齢者で,論文のタイ プが原著もしくは総説に該当する論文のうち,予後 1 カ 月以内を推定する予測項目を抜粋した. 3)予後 1 カ月以内を推定する終末期予後予測指標を 1) 2)を通して抽出した.そして,The Palliative Prognos-tic(PaP)Score4),The Palliative Prognostic Index (PPI)13),The Palliative Performance Scale(PPS)14)

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 (2)適切性が認められた予後 3 日の予測項目  肺がんでは 21 項目の適切性が認められた.そのうち, 呼吸器症状 5 項目すべてが適切であると判断されたが, 消化器症状には適切性を示す項目はみられなかった.  胃がんでは 24 項目,直腸結腸がんでは 23 項目で適切 性が認められた.  (3)3 種類のがんに共通する予後予測項目  予後 10 日では,全身状態「倦怠感」,「生気・活気の なさ」と消化器症状「食欲不振」の 3 項目が,肺・胃・ 直腸結腸がんに共通していた.予後 3 日では呼吸器症状 3項目,循環器症状 4 項目,意識レベル 2 項目,全身状 態 5 項目,日常生活動作レベル 3 項目,そのほか 1 項目 の計 17 項目が共通していた.  (4)2 種類のがんに共通する予後予測項目  肺・胃・直腸結腸がんの中で 2 種類のがんに共通して 適切性を認め,かつ有意差があった項目を下記に示す.  予後 10 日では,胃がんと直腸結腸がんに共通する予 測項目として,「末梢の浮腫」,「腹水貯留」が認められた. 予後 3 日では,肺がんと胃がんに共通する予測項目とし て「安静時の呼吸困難」,胃がんと直腸結腸がんに共通 する予測項目として「腹水貯留」が認められた.  (5)1 種類のがんのみに適切性を認めた予後予測項目  肺・胃・直腸結腸がんの中で 1 種類のがんのみに適切 性を認め,かつ有意差があった項目を下記に示す.  予後 10 日では,肺がんで「安静時の呼吸困難」,胃が んで「口臭」,「嘔気/嘔吐」が,予後 3 日では,直腸結 腸がんで「嘔気/嘔吐」が認められた. 2)適切性が認められなかった予後予測項目  3 種類のがんにおいて,予後 10 日と 3 日のいずれに 得られたデータは統計的に処理し本研究の目的以外に使 用しないことなどを文書にて説明し,協力を求めた.対 象者からの質問紙の返送をもって,研究への同意とみな した.

Ⅳ.結 果

1.対象者の特性   対 象 者 57 名 に 質 問 紙 を 配 布 し,44 名( 回 収 率 77.2 %)の協力が得られた.回答者はすべて女性で,臨 床経験年数は平均 21.3±8.8(範囲 5~40)年,訪問看護 経験者は 27 名であった.臨床経験領域および看取った 患者のがんの種類を表 1,表 2 に示す. 2.肺・胃・直腸結腸がんの予後予測項目(表 3) 1)適切性が認められた予後予測項目  肺・胃・直腸結腸がんのいずれのがんにおいても,予 後 10 日の予測項目は,予後 3 日の予測項目に比べて極 めて少なかった.  (1)適切性が認められた予後 10 日の予測項目  肺がんでは,呼吸器症状の「安静時の呼吸困難」,全 身状態の「倦怠感」,「生気・活気のなさ」,「口内乾燥」, 消化器症状の「食欲不振」に適切性が認められた.  胃がんでは,循環器症状の「末梢の浮腫」,全身状態 の「倦怠感」,「生気・活気のなさ」,「口内乾燥」,「口臭」, 「腹水貯留」,消化器症状の「食欲不振」,「嘔気/嘔吐」 に適切性が認められた.  直腸結腸がんでは,循環器症状の「末梢の浮腫」,全 身状態の「倦怠感」,「生気・活気のなさ」,「腹水貯留」, 消化器症状の「食欲不振」に適切性が認められた. 表 1 臨床看護の経験領域 n=44 領域 あり なし 領域 あり なし 呼吸器外科 11 33 皮膚科 9 35 消化器外科 34 10 形成外科 5 39 乳腺外科 13 31 呼吸器内科 13 31 婦人科 13 31 消化器内科 20 24 泌尿器科 17 27 血液内科 9 35 眼科 5 39 緩和医療科(ホスピス) 5 39 表 2 看取った患者のがんの種類 n=44 種類 あり なし 種類 あり なし 胃 41 3 肺 39 5 食道 35 9 前立腺 27 17 直腸結腸 40 4 乳房 33 11 肝臓/胆管 36 8 子宮 26 18 膵臓 36 8 卵巣 22 21

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Ⅴ.考 察

1.予後 10 日と 3 日の予測項目  今回,肺・胃・直腸結腸がんの予後 10 日の予測項目 として適切性が認められた項目は,予後 3 日の予測項目 に比べて極めて少なかった.台湾の緩和ケア病棟で開発 も適切性が認められなかった項目は,循環器症状の「不 整脈の出現」,意識レベルの「混乱/せん妄」,全身状態 の「発熱」,「褥瘡」,その他の「感謝の言葉を述べる」 の 5 項目であった. 表 3 がんの種類と適切な予後予測項目との関連 単位:% がんの種類 患者の症状と徴候 予後 10 日 予後 3 日 肺 胃 直腸結腸 p 肺 胃 直腸結腸 p n=38 n=39 n=40 n=38 n=39 n=39 呼吸器症状 安静時の呼吸困難 97 49 48 ** 100 85 79 * 肩呼吸/下顎呼吸 74 41 38 ** 97 87 90 喘鳴 79 46 33 ** 92 79 74 呼吸リズムの変化 74 41 38 ** 100 90 90 無呼吸 61 31 28 ** 92 92 82 循環器症状 不整脈の出現 53 31 38 79 77 79 脈の緊張 47 41 45 82 82 82 血圧低下 55 51 50 89 92 95 末梢の浮腫 66 87 90 * 87 95 97 尿量減少/無尿 61 69 78 92 100 100 意識レベル 傾眠 68 54 60 95 97 95 混乱/せん妄 53 46 50 79 74 72 昏睡 37 38 45 84 85 87 全身状態 倦怠感 92 92 90 89 92 87 生気・活気のなさ 82 87 85 84 92 90 目がうつろになる 66 64 65 89 85 90 発語減少 68 69 60 89 87 90 顕著な骨突出 74 79 70 79 82 79 口内乾燥 84 87 78 87 90 90 口臭 55 85 68 * 76 87 82 発熱 53 64 60 58 72 79 褥瘡 45 51 43 63 62 64 便失禁/尿失禁 47 56 63 82 79 82 腹水貯留 29 90 85 ** 47 90 92 ** 消化器症状 食欲不振 84 90 85 79 85 85 嘔気/嘔吐 34 90 80 ** 37 79 82 ** 嚥下困難 58 77 70 74 85 77 日常生活動作 レベル 歩行困難 79 67 68 82 82 87 座位保持が困難 68 72 65 87 90 92 ベッドから起き上がれない 63 64 65 89 90 90 その他 感謝の言葉を述べる 55 59 60 74 67 62 昨日とは違うという感覚 68 67 63 84 87 87 Fisherの正確確率検定,*p<0.05,**p<0.01(3 種類のがんにおける適切率の比較). 注)数字は適切性ありと評価した人の %, は適切性があった項目(回答者の 81 %以上が適切性を認めた項目)を示す.

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 そして「嘔気/嘔吐」が胃がんの予後 3 日の予測項目 とならなかったのは,「傾眠」や「昏睡」によって「嘔気」 を看護師が判断できないだけでなく,食事摂取量の低下 または無摂取によって「嘔吐」が生じないことが考えら れる.しかしながら,これらのメカニズムは直腸結腸が んにおいても生じる可能性があるが,直腸結腸がんでは 予後 3 日のみに適切な予後予測項目として認められてお り,今後の検討の余地が残る.  Yasuda ら24)は,胃がんと直腸結腸がんを消化器がん として扱うことによって,両がんの終末期予後予測項目 を標準化できると指摘している.本研究では,胃がんと 直腸結腸がんのみに共通する予後予測項目として,予後 10日では「末梢の浮腫」,「腹水貯留」が,予後 3 日で は「腹水貯留」が認められた.そのため,消化器がんと しての予後予測項目が存在すると考える.  その理由として,胃がんと直腸結腸がんに特異的な予 後 10 日の予測項目として適切性が認められた「末梢の 浮腫」は,鼠径リンパ節への転移によるリンパ管圧迫や 郭清によるリンパ管の流通障害,低アルブミン血症に よって出現しやすい.予後 10 日と 3 日の予測項目とし て適切性が認められた「腹水貯留」は,がん性腹膜炎や 低アルブミン血症によって生じやすい.これらの項目 は,肺がんでは予後 10 日の予測項目として適切性を示 さなかった点から,胃がんと直腸結腸がんに特異的予後 予測項目として妥当性があると考える.  なお,「末梢の浮腫」は,肺がんの予後 3 日の予測項 目として適切性が認められた.循環器症状の「血圧低下」 と「尿量減少/無尿」が肺がんの予後 3 日の項目として 適切性が認められたことから,循環動態の低下に伴って 「末梢の浮腫」が生じた可能性が高い. 5. 予後予測項目として適切性が認められなかった 項目  予後 10 日と 3 日の予測項目として適切性が認められ なかった 5 項目のうち,「混乱/せん妄」は予後 10 日以 降に必ず生じる症状ではなく,また「褥瘡」はケアの程 度に左右される.さらに「発熱」はがんの増大に伴う炎 症反応によって生じるが,細菌感染でも生じる.「感謝 の言葉を述べる」は,対象者のパーソナリティにも左右 される項目である.死にゆく過程で徐脈に加え,リズム 不整などが生じるため,循環器症状の「不整脈の出現」 が,終末期がん患者の予後予測項目となり得るかどうか を検討していく必要がある. された予後 7 日を予測する項目は,予後 2 週間も予測で きるスコアリングシステムとなっており,生存期間が短 くなるにつれて症状や徴候が増えることを示唆してい る15).また,予後「数時間以内」の予測は可能であると いわれている22).つまり,短期の予後予測は,予測項目 が多いことからより容易にできる可能性が高いと考え る. 2. 肺・胃・直腸結腸がん全てに共通した予後予測 項目の妥当性  予後 10 日および 3 日ともに,肺・胃・直腸結腸がん に共通する予後予測項目が認められた.たとえば,「食 欲不振」や「倦怠感」は,局所のがんの進行/転移だけ ではなく,合併症などによる代謝障害・全臓器の機能低 下などに伴って生じるので,肺・胃・直腸結腸がんに共 通して適切性が認められたと考える. 3.肺がんの予後予測項目の妥当性  肺がんの予後 10 日の予測項目として「安静時の呼吸 困難」の適切性が認められた.この安静時の呼吸困難 は,腫瘍増大に伴う肺胞面積の減少,ヘーリング・ブロ イヤー反射,細気管支の圧迫に加え,がん性胸膜炎によ る胸水貯留で生じる肺の伸展性の減少などによって生じ ることが考えられる.このことから,「安静時の呼吸困 難」は,肺がんに特異的な予後予測項目となる可能性が 高いと考える.  しかしながら,呼吸困難は肺疾患以外にも心疾患や全 身状態の悪化に伴って生じることが報告されている23) そのため,「安静時の呼吸困難」が肺がんの予後 3 日を 予測する特異的な項目にはならず,胃がんの予後 3 日の 項目としても適切性が認められたのかもしれない.一 方,直腸結腸がんでは適切性を示さなかったので検討の 余地がある. 4.胃がんと直腸結腸がんの予後予測項目の妥当性  胃がんの予後 10 日の予測項目として「口臭」と「嘔 気/嘔吐」の適切性が認められた.胃がんに伴う「口臭」 は,腫瘍の増大による通過障害や消化機能低下から食物 が胃に停滞することによる腐酸臭や,肝転移に伴うアン モニア臭が原因と考えられる.「嘔気/嘔吐」は,消化器 腫瘍の増大による迷走神経系と交感神経系刺激に伴う嘔 吐中枢刺激や,代謝や電解質異常に伴う Chemoreceptor trigger zone(CTZ)の刺激,胃の圧迫やイレウスなど でも起きる.また腹水貯留によって,神経系刺激に伴う 嘔吐中枢刺激や胃の圧迫によって「嘔気/嘔吐」が助長 される可能性もある.そのため,胃がんにおいて予後 10日を予測する項目として適切性が認められたと考え る.

(6)

る看護を.Community Care.10(13),12⊖15(2008) 8) Glaser BG, Strauss AL(木下康仁訳).死のアウェアネス理論

と看護─死の認識と終末期ケア.東京,医学書院,2003,19⊖ 26 9) 才木クレイグヒル滋子.最期の場を整える─看護技術として の子どもの死の時期の予測.日本看護科学会誌.21(3),50⊖ 60(2001) 10)山田雅子,井伊久美子,上野桂子,他.平成 19 年度老人保健 事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)高齢者の ターミナルケア・看取りの充実に関する調査研究事業報告書. 社団法人全国訪問看護事業協会,2008 11)Benner PE(井部俊子監訳).ベナー看護論─初心者から達人 へ.東京,医学書院,2005,23⊖26 12)嶋田聡子.中堅看護婦の概念の明確化─過去 10 年間の看護文 献から.神奈川県立看護教育大学校看護教育研究集録.24, 56⊖63(1999)

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14)Anderson F, Downing GM, Hill J, et al. Palliative performance scale (PPS):a new tool. J Palliat Care. 12(1),5⊖11(1996) 15)Chuang RB, Hu WY, Chiu TY, et al. Prediction of survival in

terminal cancer patients in Taiwan:constructing a prognostic scale. J Pain Symptom Manage. 28(2),115⊖122(2004)

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17)Bruera E, Miller MJ, Kuehn N, et al. Estimate of survival of patients admitted to a palliative care unit:a prospective study. J Pain Symptom Manage. 7(2),82⊖86(1992)

18)Kikuchi N, Ohmori K, Kuriyama S, et al. Survival prediction of patients with advanced cancer:the predictive accuracy of the model based on biological markers. J Pain Symptom Manage.

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19)Stone GA, Tiernan E, Head R, et al. Prospective validation of the Palliative Prognostic Index in patients with cancer. J Pain Symptom Manage. 35(6),617⊖622(2008)

20)Polit DF, Beck CY, Owen SV. Is the CVI an acceptable indicator of content validity? Appraisal and recommendations. Res Nurs Health. 30(4),459⊖467(2007)

21)Landis JR, Koch CG. The measurement of observer agreement for categorical data. Biometrics. 33(1),159⊖174(1977)

22)Kuebler KK, Berry PH, Heidrich DE(鳥羽研二監訳).エンド オ ブ ラ イ フ・ ケ ア 終 末 期 の 臨 床 指 針. 東 京, 医 学 書 院, 2004,25⊖33

23)Reuben DB, Mor V. Dyspnea in terminally ill cancer patients. Chest. 89(2),234⊖246(1986)

24)Yasuda N, Nakashima O, Ohnaka T, et al. Novel clinical staging for patients with end⊖stage gastrointestinal carcinoma. Surg Today. 36(1),25⊖29(2006)

Ⅵ.おわりに

 本研究では,終末期の肺・胃・直腸結腸がん患者にお いて,1 種類のがんにのみ適切性を認める特異的な予後 予測項目と,2 種類のがんにのみ共通する予後予測項目, 3種類のがんに共通する予後予測項目があることを明ら かにした.これらの項目は,がんの種類を考慮した予後 予測に基づくアセスメントおよび患者の生活の質を高め るうえで有用であると考える.  しかし,本研究では患者のがんの転移の有無,治療 歴,患者に実施された治療内容などの臨床経過を加味せ ず,臨床経験がさまざまである看護師の認識だけで調査 を行ったこと,および対象者数が少ないという限界があ る.そのため,今回得られた予後 10 日と 3 日の予測項 目を患者の経過と照らし合わせながら,洗練させていく 予定である. 謝 辞  本研究にご協力いただきました看護師の皆様にお礼を申し上げ ます.  本研究は,平成 21 年度財団法人名古屋市高齢者療養サービス事 業団の研究助成金を受けて行ったものである. 文 献

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2) Gripp S, Moeller S, Bölke E, et al. Sur vival prediction in terminally ill cancer patients by clinical estimates, laboratory tests, and self⊖rated anxiety and depression. J Clin Oncol. 25 (22),3313⊖3320(2007)

3) Glare PA, Sinclair CT. Palliative medicine review: prognostication. J Palliat Med. 11(1),84⊖103(2008)

4) Maltoni M, Nanni O, Pirovano M, et al. Successful validation of the palliative prognostic score in terminally ill cancer patients. Italian Multicenter Study Group on Palliative Care. J Pain Symptom Manage. 17(4),240⊖247(1999) 5) 川越 厚.在宅ホスピスケアを始める人のために.東京,医 学書院,1996,24⊖30 6) 宮田和明,近藤克則,樋口京子.在宅高齢者の終末期ケア─ 全国訪問看護ステーション調査に学ぶ.東京,中央法規出版, 2007,29 7) 角田直枝.看取りの“最期の 1 週間”に利用者・家族を支え

Investigation on Prognostic Items for Patients with Terminally Ill Cancer*

Yuki Kumagai, Atsuko Maekawa, Mayumi Abe, Hiroko Kokufu, Yasuko Tabuchi Address reprint requests to :

Yuki Kumagai. Institute of Nursing, Faculty of Medicine, Saga University. 5⊖1⊖1 Nabeshima, Saga⊖shi, Saga 849⊖8501, JAPAN

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鈴木 則宏 慶應義塾大学医学部内科(神経) 教授 祖父江 元 名古屋大学大学院神経内科学 教授 高橋 良輔 京都大学大学院臨床神経学 教授 辻 省次 東京大学大学院神経内科学

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

学識経験者 品川 明 (しながわ あきら) 学習院女子大学 環境教育センター 教授 学識経験者 柳井 重人 (やない しげと) 千葉大学大学院