1 .はじめに
めっき排水は,酸・アルカリ,重金属イオン,シアン,ク ロムなど環境負荷の高い物質を含む。これに加えて,最近は 難分解有機物,キレート剤,成分不詳の添加剤など , 内容の 把握しにくい物質が増加し排水処理を難しくしている。 我が国のめっき排水処理は 1968 年(昭和 43 年)以来,経済 産業省の主導のもと産業界と学会が一体となった環境対策を 行い,関連法の施行と浄化技術開発に務め多くの課題を克服 してきた歴史がある1)。 近年,めっき排水は規制強化の傾向にあり,従来より進化 した処理技術が要求されている。環境負荷の高いめっき排水 でも再利用を想定した高度処理を施せば捨てることなくリサ イクルできる2)。水のリサイクルでは排水の分別と化学薬品 を使わないで処理するのがポイントである。 本稿では最近のめっき排水規制の動向とめっきプラントか ら出る排水の処理およびリサイクルについて要約する。2 .最近の排水規制の動向
最近の排水規制の動向を図 1 に示す。 2006 年 12 月,亜鉛の排水基準はそれまでの 5 mg/L から 2 mg/L へと大幅に引き下げられた。その際,一律基準を技 術的・経済的に達成するのが困難な業種に対し緩やかな基準, いわゆる暫定排水基準が設定された。その後,亜鉛は 5 年ご とに暫定排水基準適用業種の見直しが行われた。電気めっき 業に対しては 2016 年 12 月まで暫定排水基準(5 mg/L)が適用 される。亜鉛規制の強化では人よりも水生生物の保護を優先 している点が注目される。 2001 年 7 月,環境省は水質汚濁防止法における,フッ素, ホウ素,硝酸性窒素,亜硝酸性窒素の一律排水基準を設定し た。亜鉛の場合と同様,ここでは 3 年ごとに適用業種の見直 しが行われ,直近では 2013 年 7 月 1 日より 3 年間,電気めっ き業を含む暫定排水基準適用業種は 13(経済産業省所管業種: 10 業種)となった。 2013 年 10 月,カドミウムの環境基準は 0.01 mg/L 以下か ら 0.003 mg/L 以下へと見直された。これを受けて 2014 年度 にカドミウムの排水基準は 0.03 mg/L への強化が想定される。 カドミウムは 3 業種(溶融亜鉛鍍金業,金属鉱業,非鉄金属 第一次精錬・精製業)に暫定排水基準が設定されている。 2014 年 5 月,一律排水基準(0.5 mg/L)が新設された 1,4 ジ オキサンは 5 業種(経済産業省所管業種:4 業種)に対して暫 定排水基準が設定されている。 こうした規制強化に対応して,環境省と経済産業省は水処 理技術の有識者らで構成する「排水処理技術検討会」を設け, 暫定基準クリアーに向けた支援体制をとっている。3 .めっき排水処理のポイント
めっき排水は用水と違って,生産工程によって組成が異な るので処理方法も複雑になる。したがって,めっき排水処理 では発生工程を調査して予め組成を知ることが重要である。 組成が異なる排水を処理するには「分別」と「濃度の均一化 を図る」ことが大切である。排水処理設備では連続式が多く 採用されている。連続式では「原水濃度の均一化」が重要で ある。そのために少なくとも 1 日分の排水を貯留できる「流 量調整槽」を設けると定常水質の原水が反応槽に流れ込むの で処理水質が安定する。めっきプラント(工場)からの排水処理とリサイクル
和 田 洋 六
a a日本ワコン㈱(〒 254︲0082 神奈川県平塚市東豊田 594︲32)Recycling and Treatment of Waste Water in the Plating Factory
Hiromutsu WADA
aa Nihon Wacon Co., Ltd.(94-32, Higashitoyoda, Hiratsuka-shi, Kanagawa 254-32)
Keywords : Wastewater Treatment, Water Recycling, Plating Factory
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小特集:めっきプラントからの排水処理とリサイクル
2006年12月排水 規制値設定 亜 鉛 フッ素 亜硝酸性窒素 硝酸性窒素 ホウ素 カドミウム 2014年規制強化検討中 暫定排水基準適用 2016年7月まで(電気 めっき業、温泉旅館業、 畜産業等) 1,4ジオキサン 2014年5月排水 規制値設定 図 1 最近の排水規制の動向めっきプラント(工場)からの排水処理とリサイクル 3.1 重金属の処理 重金属を含む排水は一般に酸性の場合が多いので,水酸化 ナトリウム(NaOH)や水酸化カルシウム[Ca(OH)2]などの アルカリ薬剤を加えて pH 値を調整すると金属イオンが水酸 化物として析出するので金属が分離できる。 金属イオンの溶解度と pH の関係を図 2 に示す。いずれの 金属イオンも pH をあげると溶解度が低下する。ただし亜鉛 (Zn2+)とクロム(Cr3+)は pH 上昇により再溶解する。 銅イオン,有機キレート剤と pH の関係例を図 3 に示す3)。 ここで,EDTA-2Na 以外は pH 2 以下にすれば銅-有機キレー トの結合が切れることを示唆している。銅イオンに限らず, 重金属イオンを含む排水処理では,一旦 pH を 2 以下に下げ て金属イオンとキレート剤の結合を切ってから,アルカリ剤 を加え所定の pH に調整すると凝集処理がうまく進む。 3.2 シアン排水の処理 シアンの排水処理フローシート例を図 4 に示す。シアン排 水は一般にアルカリ塩素法で処理する。
NaCN + NaOCl → NaCNO + NaCl ………(1) 2NaCNO + 3NaOCl + H2O
→ 2CO2 + N2 + 2NaOH + 3NaCl ………(2)
(1)式×2 +(2)式 2NaCN + 5NaOCl + H2O
→ 2CO2 + N2 + 2NaOH + 5NaCl ………(3)
(1)式と(2)式を組み合わせた処理は 2 段処理法と呼ばれ, これまでに確立された方法である。(3)式より,2 モルの CN を酸化するには 5 モルの NaOCl が必要で,シアン(CN-)1 kg を酸化分解するのに必要な NaOCl 量は約 7.2 kg となる。 実際のシアン排水には銅,亜鉛,ニッケル,鉄などが含ま れている。鉄分がない場合は 2 段反応槽の後に還元槽を設け, 亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)で過剰塩素を除去すると銅, 亜鉛の処理が確実となる。 上記に加えてニッケル,鉄イオンが含まれていると凝集し にくいことがある。この場合は NaHSO3に替えて硫酸第一鉄 (FeSO4)を使った紺青法と呼ばれる方法で処理する。ここで の第一鉄イオン(Fe2+)の役割りは過剰の塩素除去と水に難溶 の鉄シアノ錯体生成による沈殿分離である。 処理のポイントは弱酸性(pH 5.5 ~ 6.0),ORP-100 mV 程 度で処理するところで,反応は下記(4)~(6)である。
フェロシアン:[Fe(CN)6]4−+2Fe2+ → Fe[Fe(CN)2 6]
………(4) フェロシアン:3[Fe(CN)6]4−+4Fe2+ → Fe[Fe(CN)4 6]3
………(5) フェリシアン:2[Fe(CN)6]3−+3Fe2+ → Fe[Fe(CN)3 6]2
………(6) 3.3 6 価クロムおよび 3 価クロム化成処理排水の処理 6 価クロム排水の処理フローシート例を図 5 に示す。これ 濃 度 ( m g / L ) 12 0 1 10 Fe3+ Cr3+ Cu2+ Zn2+ 7 9 11 4 2
pH
Cr(OH)3 8 10 5 6 3 [Zn(OH)4] 2-Zn(OH)2 水和 [Cr(OH)4] -水和 Ni2+ Cr再溶解 Zn再溶解 図 2 金属イオンの溶解度と pH の関係 pH C u 2 +/ C u -キ レ ー ト の 比 率 2 3 5 0 1.0 0.5 4 6 7 EDTA-2Na ロッセル塩 (酒石酸K-Na) クエン酸Na グルコン酸Na エチレン ジアミン トリエタノー ルアミン 図 3 銅-有機キレート剤と pH の関係例 高分子 凝集剤 凝集槽 M pH 原水槽 スラッジ 1段反応槽 pH調整槽 NaHSO3 NaOCl pH10以上 pH7.5~8.5 pH5.5~6.0 pH8.5~9.5ORP>300mV ORP>650mV ORP 0~-100mV
脱水機 M 沈殿槽 ORP M M M NaOH H2SO4 2段反応槽 M 還元槽 処理水 NaOH FeSO4 pHORP pHORP pH 図 4 シアン排水処理フローシート 高分子 凝集剤 凝集槽 M pH M pH M M 原水槽 スラッジ 処理水 還元槽 pH調整槽 H2SO4 NaHSO3 NaOH 沈殿槽 pH 2~3 pH8.5~9.5 ORP 250~300mV 脱水機 ORP 図 5 6 価クロム排水処理フローシート
総 説 もすでに確立された方法である。還元剤にはスラッジ副生の 懸念がない亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)が多く使われる。 4H2CrO4 + 6NaHSO3 + 3H2SO4 → 2Cr(SO2 4)3 + 3Na2SO4 + 10H2O ………(7) 図 6 に 3 価クロム化成処理排水と既設のめっき排水処理を 組み合わせたフローシート例を示す。3 価クロム化成処理液 の組成は単純な 6 価クロムめっき液と異なり 3 価クロムを主 成分にクロム(Ⅲ)錯体を形成するために必要なキレート剤, コバルト,塩類など,成分不詳の物質が配合されている4)。 コバルトを含む 3 価クロム化成処理廃液を処理して生成し た ス ラ ッ ジ と 6 価 ク ロ ム 廃 液 を 亜 硫 酸 水 素 ナ ト リ ウ ム (NaHSO3)で還元した処理液がアルカリ側で接触すると時間 の経過とともに 3 価クロムが 6 価クロムに変化することが知 られている。こうした不都合を除くために,別途,3 価クロ ム化成処理液の処理工程を設けるとよい。 図 6 の点線内上部は 3 価クロム化成処理排水の処理フロー シート例である。有機系 3 価クロム化成処理排水は①水酸化 カ ル シ ウ ム を 加 え て pH 6.5~7.0,ORP マ イ ナ ス 150~ 200 mV にて一度硫化物処理を行う。②次いで,水酸化カル シウムで pH 11~12 に調整すると有機キレート剤,3 価クロ ム,コバルトなどが析出する。③析出したスラッジは沈殿分 離または脱水機にて全量ろ過分離後,処理水を既設のめっき 排水処理装置(図 6 の点線内下部の No.1 pH 調整槽)に合流さ せる。これにより 3 価クロム化成処理液の処理が可能となる。 3.4 フッ素排水の処理 排水中のフッ素は水酸化カルシウムや塩化カルシウムなど を用いて処理すれば(8)式のようにフッ化カルシウム(CaF2 の溶解度 16 mg/L,F- として 7.8 mg/L)として分離できると されている。 2HF + Ca(OH)2 → CaF2 +2H2O ………(8) ところが実際のフッ素排水中にはフッ素以外にカルシウム 成分と反応する硫酸イオン,炭酸イオンなども含まれており, これらが競ってカルシウム分を消費しようとする。そのため, 実際のフッ素含有排水をカルシウムで処理しても 8 mg/L を 達成できる場合とそうでないことを経験する。 この場合は図 7 に示す 2 段処理が有効である。1 段処理で 水酸化カルシウムを用いてフッ素濃度を 15 mg/L 程度とし, 2 段処理で硫酸アルミニウムと水酸化カルシウムで処理すれ ば目標の 8 mg/L まで処理できる。 3.5 ホウ素排水の処理 水中のホウ素は,低 pH 域ではホウ酸(H3BO3)またはフル オロホウ酸(HBF4)になっていると考えられる。ホウ酸は pH 値によって形が変わり,アルカリ域では式(9)のようにテト ラヒドロキシホウ酸イオン[B(OH)4−]になるといわれている。 H3BO3 + H2O → B(OH)4− + H+ ………(9) 図 8 に表面処理で実際に使用したホウ素含有排水の凝集沈 澱処理例を示す。ホウ素の 30 倍量の Al3+または Mg2+を添 加して Ca(OH)2で pH 5 に調整後,NaOH で pH 10.2 にすれ ばホウ素濃度は 10 mg/L となる。この反応は pH 10 以上のア ルカリ下で,アルミニウムイオン,カルシウムイオン,硫酸 イオン,水酸化物イオンが結合してできる不溶性のカルシウ ムアルミニウムトリサルフェート[一般名:エトリンガイト: Ca6Al(SO2 4)(OH)3 12・26H2O]中の硫酸イオンとホウ素イオン
が置換した結果と考えられる5)。 図 9 にエトリンガイド中の硫酸イオンとホウ素イオン[B (OH)4−]が置換する模式を示す。エトリンガイト中の硫酸 イオン(SO42−)1 モルがホウ素イオン[B(OH)4−]2 モルと 置換されている。ホウ素排水は上記の方法で処理できるがス ラッジ発生量が多いので分別処理を心がけゆとりのある脱水 設備が必要である。 3.6 カドミウムの処理 カドミウムを排出する表面処理には①カドミウムめっきと ②溶融亜鉛めっきがある。カドミウムめっきは高張力鋼を多 酸・アルカ リ・重金属 No.1 pH 調整 凝 集 沈 殿 CN- 酸 化 No.2 pH 調整 処理水 pH 2~3 pH 9~10 有機系3価 クロム化成 処理排水 Ca2+添加 Na2S処理 pH 6.5~7.0 ORPマイナス150~200mV Ca(OH)2に よるpH調整 pH 11-12 凝集沈殿 スラッジ 処理水 Cr6+ 還 元 既設のめっき 排水処理設備 3価クロム化成処 理排水処理設備 スラッジ 図 6 3 価クロム化成処理排水と既設のめっき排水処理 フローシート例 原 水 F=60mg/L 反応槽 ① 凝集槽 沈殿槽 H2SO4 凝集剤 Ca(OH)2 処理水 反応槽 凝集槽 沈殿槽 処理水 Al2(SO4)3 反応槽 ② Ca(OH)2 凝集剤 H2SO4 返送スラッジ 脱水機 スラッジ 1段処理 2段処理 F = 15mg/L F= 8 mg/L 図 7 フッ素含有排水の 2 段処理フローシート Al3+/B-, Mg2+/B- 添加量 ホ ウ 素 濃 度 ( B -m g / L ) MgCl2・6H2O 0 20 40 60 0 10 50 100 Al(SO4)3・18H2O 原水 pH 2.4 T-Cr 700 mg/L Ni2+ 760 mg/L B- 80 mg/L Ca(OH)2で pH5.0 NaOH で pH10.2 図 8 ホウ素含有排水の凝集沈澱処理例
めっきプラント(工場)からの排水処理とリサイクル く使用する航空機部品などの表面処理に使われている。現在, カドミウムめっきを行う事業者は国内に数社ある。カドミウ ムめっきには①シアン浴,②ホウフッ化浴,③アミン浴など がある6)。 溶融亜鉛めっきは 440~460 ℃に加熱した液状亜鉛槽に鋼 材を浸漬する仕事の様態から俗に「ドブづけ」とも呼ばれる。 亜鉛とカドミウム(融点 320.9 ℃)は化学的性質がよく似てお り,亜鉛鉱石の中に常に含まれている。そのため,亜鉛精錬 工場で生産される蒸留亜鉛(純度 98.6%)には不純物としてカ ドミウム(0.3%)と鉛(1.0~1.3%)が含まれる。 溶融亜鉛めっき工程排水の主たる成分は亜鉛,鉄であるが, 原材料に蒸留亜鉛を使用している場合は排水中に少量のカド ミウムが含まれると予測される。 表 1 にカドミウム沈殿物の溶解度を示す。表 1 の値から, カドミウム含有排水は①水酸化物処理,②硫化物処理,③炭 酸塩処理のどれをとっても単独処理では新規制値に対応でき そうにない。 図 10 に上記①シアン浴,②ホウフッ化浴,③アミン浴排 水の前処理と硫化物処理を組み合わせたフローシート例を示 す。カドミウムは凝集処理だけでは 0.03 mg/L 以下になりに くい。そこで,硫化物処理をした後,無機系凝集助剤(Al3+ または Fe3+)と高分子凝集剤の併用をお勧めする。
4 .排水のリサイクル
4.1 イオン交換樹脂法によるめっき排水のリサイクル めっき工程から排出される排水には塩類をはじめ,銅,ニッ ケル,クロムなどの重金属が含まれている。めっき排水は塩 分濃度が 1,000 mg/L 以下であればイオン交換樹脂によるリ サイクル化の可能性がある。イオン交換処理法は処理水全部 が脱塩水として使用できるという長所があるが,樹脂が飽和 に達したら再生しなければならない。したがって,イオン交 換樹脂法は塩分濃度の低い水を処理するのに適している。塩 分濃度 1,000 mg/L 以上の排水については,処理コストの面 から逆浸透膜法を検討したほうがよい。 図 11 にイオン交換樹脂による表面処理排水のリサイクル フローシート例を示す。飽和に達したイオン交換樹脂の再生 は製造現場では行わず,ここでは再生専門の工場で再生する 委託再生方式が工場規模で行われている。図のリサイクルシ ステムは多くのめっき工場で採用されている7)。 4.2 促進酸化法による 1,4 ジオキサン排水のリサイクル 1,4 ジオキサンは洗浄剤,塩素系有機溶剤の安定剤,塗料, 医薬品の原料などに用いられる有機溶剤である。1,4 ジオキ サンは界面活性剤の製造工程で非意図的に不純物として副生 する8)。その結果,非イオン系界面活性剤,シャンプー,台 所用洗剤などの製品にも含まれる。1,4 ジオキサンは水と任 意に混ざり,化学的に安定なことから従来法の活性汚泥,凝 集沈殿,加圧浮上などでは処理できない。促進酸化法(AOP:Advanced Oxidation Process)は紫外線, オゾン,過酸化水素などを組み合わせて酸化力の強いヒドロ キシルラジカル(OH・)を生成させて有機物や還元性物質を酸 化分解する方法である。水中のオゾン(O3)に紫外線(UV)を 照射すると OH ラジカルが発生する。 O3 + UV →[O]+ O2 ………(10) [O]+ H2O → 2OH・ ………(11) AOP は塩素酸化と違って有機塩素化合物やスラッジの副
エトリンガイト:Ca6Al2(SO4)3(OH)12・26H2O
2B(OH)4 -Al Ca Al Ca Al Ca SO4 2-Al Ca Al Ca Al Ca SO4 2-Ca Al Al Ca Al Ca Al Ca SO42- + SO4 2-Al Ca Al Ca Al Ca SO4 2-Al Ca Al Ca Al Ca SO4 2-Ca Al Al Ca Al Ca Al Ca 2B(OH)4 -ホウ素イオン 硫酸イオンとホウ素 イオンが置換する 図 9 エトリンガイド中の硫酸イオンとホウ素イオンの置換 物質名 (mg/L)溶解度 水酸化カドミウム Cd(OH)2 2.6 硫化カドミウム CdS 1.3 炭酸カドミウム CdCO3 0.39 表 1 カドミウム沈殿物の溶解度 シアン系 ホウフッ化物系 アミン系 シアンの分解(アルカリ塩素法) ホウフッ化物の分解 pH調整 (硫酸にてpH2以下) 水酸化カルシウムにて pH2→5 硫化ナトリウムにて凝集(pH5~7) 炭酸ナトリウムにて pH9.5~10.5 無機凝集剤 ポリ硫酸鉄(Fe3+)または 硫酸アルミニウム(Al3+) 高分子凝集剤 沈殿分離 処理水 スラッジ 図 10 カドミウム排水の処理フローシート No.2水洗 槽 No.3水洗 槽 No.1水洗 槽 脱イオン水 陽イオン 交換塔 処理槽 フィルター 活性炭塔 原水槽 Material in Material out 陰イオン 交換塔 委託再生工場で再生 飽和樹脂塔 再生樹脂塔 排水 図 11 イオン交換樹脂による表面処理排水のリサイクル
総 説 生がない。したがって,用水処理,排水のリサイクル分野で 広く使用されている。 図 12 に AOP 処理の実験フローシート例を示す。図 13 は 図 12 の装置を用いて 1,4 ジオキサン 100 mg/L 含有排水を AOP 処理した結果例である9)。 循環タンク内の試料水(6 L)は循環ポンプを用いて 1.2 L/min の流量で UV 反応槽(4 L)に送り,全量または一部が循環タ ンクに戻るか全量が処理水槽に送れるように配管した。循環 タンクにはオゾンを 1.0 g/h,流量 2 L/min で送入した。オゾ ン発生器には PSA(Pressure Swing Adsorption)装置が装備さ れており,酸素濃度 92%にできるので発生オゾンの純度が 高い点に特長がある。UV 反応槽には 187 nm と 254 nm の紫 外線を発生する低圧水銀ランプ(25 W)が設けてある。 実験経過を以下に要約する。 1,4 ジオキサンは 100 mg/L に調整すると TOC 値は 60 mg/L を示すが,難分解性のためマンガン COD(Mn)では約 3 mg/L しか示さない。ところが,AOP 1.5 時間処理で COD(Mn)は 55 mg/L に増え,TOC は 45 mg/L に低下,1,4 ジオキサンは ゼロとなる。pH は 6.2 から 3.8 に下がった。6 時間処理後の COD(Mn)と TOC はゼロとなり pH は 4.7 に上昇した。これは, 1,4 ジオキサンがグリコール類,低分子の有機酸を経て二酸 化炭素と水に変化した結果と推察される。 図 14 に AOP による 1,4 ジオキサンの分解経路を示す。1,4 ジオキサンは UV と OH ラジカルにより酸化分解し,グリ コール類,有機酸を経て二酸化炭素と水に変わる。こうして 処理した水はそのまま公共水域に放流することもできるが, 図 15 に示すように陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂に 通水すると捨てないで脱イオン水としてリサイクルできる。 この方法は排水量の少ない(50 m3 /day 以下)工場の 1,4 ジオキ サン含有排水の処理に適している。 4.3 有機物を含む酸・アルカリ系排水の減圧蒸留と膜 処理によるリサイクル めっき工場における酸・アルカリ系排水の原水組成例を 表 2 に示す。酸・アルカリ系排水は一般に酸性で,銅,ニッ ケル,亜鉛などの金属イオンが 20~50 mg/L 含まれる。これ 以外に有機酸,界面活性剤,有機溶剤などに由来する COD 成分が 2,000 mg/L 含まれる。塩分が多いので EC(Electric Conductivity:電気伝導率)は 10,000 μS/cm にもなる。 ここでは上記の酸・アルカリ系排水を原水として①中和凝 集処理,②減圧蒸留,③ UF 膜ろ過,④ RO 膜脱塩,⑤ AOP 循環タン ク オゾン 発生器 冷却空気 処理水槽 循環ポンプ UV反応槽 UVランプ 10L 2L/min 4L 25W オゾン量 1g/h 2L/min 流量計 1L/min 流量計 10L 図 12 AOP 処理フローシート例 1 , 4 ジ オ キ サ ン , T O C , C O D(M n ) ( m g / L ) 処理時間(h) 2 4 6 0 20 40 60 80 100 0 2 3 4 5 6 7 1 3 5 COD:UV+O3 pH:UV+O3 ジオキサン:UV+O3 p H 1,4ジオキサン TOC pH COD TOC:UV+O3 図 13 AOP による 1,4 ジオキサンの分解 O OH OH CO2 + H2O 1,4-ジオキサン エチレングリコール ジフォルメート EGDF EGMF エチレングリコール モノフォルメート グリコー ル酸 O O O O O O O OH O COOH COOH HCOOH シュウ酸 ギ酸 OH グリコール アルデヒド O H OH OH エチレング リコール グリオキ シル酸 O OH COH 二酸化 炭素 + 水 紫外線 OHラジカル 図 14 AOP による 1,4 ジオキサンの分解経路 No.2水洗 槽 No.3水洗 槽 No.1水洗 槽 脱イオン水 陽イオン 交換塔 表面処 理槽 フィルター 原水槽 Material in Material out 陰イオン 交換塔 委託再生工場で再生 飽和樹 脂塔 再生樹 脂塔 排水 UVオゾン酸 化反応槽 UVランプ オゾン発生器 図 15 1,4 ジオキサン含有排水のリサイクルフローシート例 工程 pH EC (mg/L)COD (mg/L)Cu (mg/L)Ni (mg/L)Zn 原水 3.5 10,000 2,000 50 30 20 中和凝集処理 9.5 12,000 300 0.5 0.9 0.7 減圧蒸留 9.8 2,000 150 0 0 0 UF 膜ろ過 8.5 1,900 110 0 0 0 RO 膜脱塩 6.8 50 20 0 0 0 AOP 処理 6.5 30 5 0 0 0 表 2 酸・アルカリ系排水の減圧蒸留と膜処理結果例
めっきプラント(工場)からの排水処理とリサイクル 処理の順に処理して再利用する方法について要約する。 表 2 の原水は塩化カルシウム(CaCl2)を 200 mg/L 加えてか ら 10% NaOH 溶液で pH 9.5~10.0 に調整して金属イオンを 析出させた。次いで,アニオン系高分子凝集剤を 0.05 mg/L 加えて凝集させた後,全量を脱水機でろ過した。 中和凝集処理水は金属イオン濃度が規制値以下になるので pH を調整すれば下水道放流が可能である。しかし,この水 質まで処理するのに処理薬品を多く使うので塩分濃度の目安 となる電気伝導率が増加して 12,000 μS/cm にも達する。こ れでは水道水に代わる冷却水として使用できない。COD 値 は 300 mg/L もあり,界面活性剤,有機溶剤,難分解性有機 物などの残留が予測された。 図 16 に実際に稼動している有機物を含む酸・アルカリ系 排水の再利用装置フローシートを示す。中和凝集処理水はカ ルシウムイオン(Ca2+)を多量に含む。これをそのまま濃縮す ると蒸発缶内部や配管にカルシウムスケールとして付着する。 これを防止するためにここでは中和凝集処理水に 10%炭酸 ナトリウム(Na2CO3)溶液を加えて pH 10.5 とし Ca2+を溶解 度の低い CaCO3に変える方法を採用した。 Ca2++ Na 2CO3 → CaCO3 + 2Na+ ………(12) Na2CO3を添加した処理水は蒸発缶にそのまま注入して減 圧蒸留した。これにより,不溶化された Ca2+はスラリー状 の CaCO3として挙動するのでスケールとして付着すること なく安定した減圧蒸留が継続できた。 減圧蒸留装置では蒸留水と濃縮液に分ける。濃縮液はスラ グ化して建設骨材として再資源化する。蒸留水は UF 膜ろ過 後,RO 膜で脱塩して回収する。膜処理の濃縮水は回収して 減圧蒸留装置に返送した。RO 膜透過水は 2 時間の AOP 処 理により純度の高い精製水となり,減圧蒸留装置の冷却水や 別工程の水洗水としてリサイクルできる。 上記の処理による水質変化を表 2 に示す。これにより,重 金属,難分解性有機物,COD 成分などを含むめっき工程排 水の再利用システムが確立できた10)。 図 16 の処理システムはめっき排水のリサイクルに限らず, 産業廃棄物の酸・アルカリ系排水の処理など,従来法では処 理できなかった幅広い排水の処理と再利用に応用できる。 (Received August 28, 2014)