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学位論文題名Evaluation of demand−supply relation of water in agriculture under changing climate using continental―scale water cycle model

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 石 郷 岡 康 史

     学位論文題名

Evaluation of demand −supply relation of water in     agriculture under changing climate using     continental ― scale water cycle model

(広域水循環モデルを使用した変動する気候条件下における      農業水需給関係の評価)

学位論 文内容の要旨

  近年、地球温暖化の進行とともに、変動する気候条件下における水資源量の評価、とりわけ農 業用水の需給関係評価に対する関心が高まっている。現在、利用可能な水資源の約70%が農業 に利用されており,また農作物の約40%は灌漑により栽培されている。そのため、過剰灌漑による 地下水位の低下や河川の断流が各地で発生しており、作物生産や人間生活に深刻な影響をもた らしている地域もある。水資源については、気候変化によりその量と分布が変化し、需要量はさら に増大すると予測されるため、農業への水利用が逼迫する可能性がある。しかし、農業における広 域的な水需給関係はまだ正確に評価されておらず、その現在と将来の評価が重要な課題になっ ている。このような問題に対処するためには,グローバルスケールの水循環モデルを利用したアプ ロ ー チ が 効 果 的 で あ る が 、 そ の 有 効 な 手 法 は ま だ 確 立 さ れ て い な い 。   そこで本研究では,農業の水需給を広域的にかっより正確に評価することを目的に、農業にお ける水利用過程を考慮した流域べース型の「流域流出サブモデル」と「河道流下サブモデル」を考 案し、それらを組み合わせて大陸スケールの水循環モデルを構築した。またそのモデルを使用し て 、ユ ーラ シア 大陸 東部における農業水需給関係の時空間分布を明らかに し、評価した。

1.モデルの概要と使用したデータ

  一般に,広域を対象とした水循環モデルには,領域を格子で区切るグリッドベース型と,流域境 界で区切る流域べース型の2種類に大別される。気候モデルとの結合を前提とした例ではグリッド ベース型が主流であるが、水循環は本来地形に依存するため、水循環過程の再現を重視する場 合は流域べース型が望ましい。そのため,本研究では流域べース型を採用した。本モデルは,小 流域内の鉛直方向の水移動を計算する「流域流出サブモデル」と,流域間の水平方向の水移動 を計算する「河道流下サブモデル1の2っにより構成される。農耕地での作物の水利用と,そのた めの河道からの取水という一連の農耕地水利用の過程が,このモデルの中に組み込まれている。

これjこより,.広域での水循環とその過程での農耕地水利用の相互作用の再現が可能になる。

  モデルのフレームワ ークを構成する流域境界および河道網データは,USGS‑HYDROIKより入 手した。モデルヘの入力値となる日別気象データ,植生指数データ,土壌データは,オリジナルの グリッド形式から流域単位のデータセットとして再構築した。気象データは,流域流出モデル検証 用のISLSCP‑Iデータ(1987‑1988)と,農業水需給関係のシミュレーション用のCRU‑TS2.0データ

(1901‑2000)の2種類を整備して使用した。

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2.流域流 出サブモデルの構築と検証

  流 域 流 出 サ ブ モ デ ル は ,HYDRO‑1Kの 小 流 域 に 基 づ き 土 地 利 用 毎 の 鉛 直 方 向 の 水 収 支 を 計 算 する モデ ル であ る。 すな わち 降 水量 を入 カと して 、 蒸発 散量 ,流 出 量, 貯留 変化 量を日単位で 計 算す る。 地 表面 は, 積雪 層, 植 生層 ,土 壌層 (6層) ,地 下水層で構成さ れ,各眉間あるいは層 内 の 水 移 動 は 物 理 的 プ ロ セ ス に よ り 計 算 さ れ る 。 蒸 発 散 量 は ,FAOの 蒸 発 散 係 数 と 植 生 指 数 (NDVI)を 組 み 合 わ せ た 新 し い 手 法 で 計 算し た。 その 際 ,植 物の 蒸散 量は 、 水循 環プ ロセ スの 中 で 作 物 生 産 に 直 接 関 わ る 水 と し て 明 確 にす るた め、 地 表面 から の蒸 発量 と 区別 して 産出 した 。   モ デ ル の 検 証 は , 出 力 値 で あ る 流 出 量を 既存 のモ デ ルの 計算 値お よび 河 川流 量実 測値 と比 較 し て 行 っ た 。 既 存 の モ デ ル の 計 算 値 は ,GSWP‑Iで 実 施 さ れ た11の 陸 面 過 程 モ デ ル の 結 果を 使 用 した 。本 モ デル は上 記モ デル と 同一 条件 で計 算し 、1987年を スピ ン アッ プ期 間と して1988年の 計 算値 と比 較 した 。そ の結 果、 本 モデ ルの 再現 性は 十 分優 れて いる こ とが 判明 し, 水循環を適切 に表現でき ることが確認された。また ,流域べースで計算していることにより,グリッドベース型と比 較 し て 各 流 量 観 測 地 点 の 集 水 域 を よ り 正 確 に 定 義 で き る こ と も 確 認 で き た 。 3.作物水 分不足量CWDの定義とその広 域推定結果の検討

  作 物 の 生 育 に 必 要 な 水 分 量 の う ち , 自 然 降 水 だ け で は 不 足 す る 量 を 作 物 水 分 不 足 量CWD (Crop Water Deficit)とし ,2種類 のCWDを 新た な指 標 とし て定 義し た 。ひ とっ は, 可能蒸散量と 実 蒸散 量の 差 を水 分不 足量 とし たCWDt(Theoretical Crop Water Deficit)で 、もうひとっは,圃場 容 水 量 を 基 準 に 土壌 水分 か ら計 算し た水 分不 足 量CWDp (Practical Crop Water Deficit: CWDp) で あ る 。 こ れ ら は, 流域 流 出サ ブモ デル の中 で 算出 され る。 なお こ こで 定義 したCWDは作 物生 育 に 使 用 さ れ る 水 分 の み を 考 慮 し て い る ため ,水 損失 量 等を 考慮 した 従来 の 指標 (灌 漑用 水量 な ど)よりも 、より理論的な水需要量を 表していを

  1901年 か ら2000年 ま で モ デ ル を 実 行 し , 年 間 お よ ぴ 月 別 のCWDtの 空 間 分 布 特 性 を 調 べ た 結 果, 乾燥 地 ,半 乾燥 地で ある 中 央アジア、パ キスタン,インド西部,中国 華北等で高い値が算出 さ れ た 。 ま た 流 域 内 の 流 出 量 合 計 値(RO)を 供 給 可 能 な 水 資 源 量 と し て ,CWDtのROに 対 する 比 を 水 需 給 関 係 の 指標 とし て 算出 し, その 分布 を 調べ た結 果、 上記 の 一部 の地 域で こ の比 が1を 越 え , 流 域 全 体 の 水 資 源 を 全 て 使 用 し て もCWDを 満 た す こ と が 出 来 な い こ と が 判 明 し た 。   理 論 的 な 指 標 で あ るCWDを 実 測 値 と の 比 較 で 検 証 す る の は 困 難で ある た め, 既往 の研 究結 果 や 統 計 資 料 と の 比 較 に よ りCWDに よ る 水 需 要 量 の 評 価 の 妥 当 性 を検 証し た 。そ の結 果、 本モ デ ル で 計 算 し たCWDは こ れ ら と 矛 盾 せ ず , 水 需 要 量 を 適 切 に 評 価 し て い る こ と が 確 認 さ れ た 。 4.河道流 下サブモデルと大陸スケール の水循環

  河道 流下 サ ブモ デル は, 既存 の モデ ルを 参照 して 構 築し ,流 域流 出 サブ モデ ルと 結合した。こ の 結 合 モ デ ル を 、CRUデ ー タ を 入 力 値 と して , 河川 から 取水 を行 う 場合 と行 わな ぃ 場合 の2つ の 条 件 で 実 行 し た 。 そ の 結 果 、CWDの 河 川 流 量 へ の 影 響 は , 季 節 によ り特 定 の地 域で 非常 に大 き くなること が判明した。また,河川流 量の供給のみでは水不足にな る地域があることが明らかになっ た。さらに ,農耕地を(1)降水のみで 水需要が充足,(2)取水す ることで供給が充足,取水しても 不足、の3地域に分類した。(2)、(3)の地域は,中国華北やイ ンド西部からパキスタン,中央アジ ア に分 布し て おり ,流 量の 比較 的 多い 河川 に沿 った 一 部の 地域 では 河 川か らの 取水 により充足が 可能である ことが判明した。また、中 国において(2)、(3)に分 類された地域の集計を、既存の統 計 資料 によ る 干害 を受 けた 面積 と 比較 した 結果 ,年 々 変動 がほ ば一 致 し, 本手 法に より,渇水に よる作物生 産ーの影響が適切に評価で きることが示唆された。

  以上 より , 本モ デル によ り、 ユ ーラ シア 大陸 東部 の 作物 生育 にお け る水 需給 関係 の時空間的特 性 が定 量的 に 評価 する こと がで き た。 また 本モ デル は ,将 来予 測さ れ る気 候変 化に 対しても適用 可 能 で 、 農 業 水 需 給 関 係 の 予 測 と 評 価 に 大 き く 貢 献 で き る と 考 え ら れ る 。

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(3)

学位論 文審査の要旨

     学位論文題名

Evaluation of demand ―supply relation of water in     agriculture under changing climate using     continental ― scale water cycle model

( 広域 水 循 環モ デ ルを 使用 した変動 する気候 条件下にお ける

    

農 業水 需 給関 係 の 評価 )

  

本論文は

6

章からなり、図

43

、表

4

、引用文献85 を含む129 頁の英文論文で、他に参 考論文4 編が添えられている。

  近年、水資源の需要量が増大するなかで、地球温暖化の進行とともに、変動する気候条件下 における農業用水の需給関係評価に対する関心が高まっている。しかし、農業における広域的 な水需給関係はまだ正確に評価されておらず、現在と将来の評価が重要な課題になっている。

このような問題に対処するためには、グローバルスケールの水循環モデルを利用したアプローチ が効果的であるが、その有効な手法はまだ確立されていない。本研究では、農業の水需給を広 域的にかつ正確に評価することを目的に、農業における水利用過程を考慮した流域べース型の

「流域流出サブモデル」と「河道流下サブモデル」を考案し、それらを組み合わせて大陸スケー ルの水循環モデルを構築した。またそのモデルを使用して、ユーラシア大陸東部における農業 水需給関係の時空間的分布を明らかにし、評価した。

1.モデルの概要と使用したデータ

  気候モデルと結合した水循環モデルは、グリッドベース型が主流であるが、本研究では水循 環過程の再現を重視した流域べース型を採用した。本モデルは「流域流出サブモデル」と「河道 流下サブモデル」の2っで構成され、農地での作物の水利用と河道からの取水という一連の水 利用過程をモデルに組み込んだ。これにより、広域での水循環とその過程での農地水利用の相 互作用の再現が可能になる。流域界およぴ河道網データは、USGS‑HYDROIKより入手し、気     ―83ー

慎 徹

周 高

野 澤

川 野

   

   

(4)

象、 植 生、 土壌 等の デー タ は、ISLSCP‑Iデー タ(1987‑1988)とCRU‑TS2.0デ ータ(1901‑2000)を 流域 単 位の デー タセ ット に 再構 築し て使 用し た 。

2. 流域 流 出サ ブモ デル の構 築 と検 証

  流域 流出 サブ モ デル は、 降水 量を 入 カし て土 地利 用毎 の 蒸発 散量 、流 出 量等を計 算し、小 流 域の 水収支を計算するモデ ルである。地表面は積雪層、 植生層、土壌層(6層)、地 下水層に 区 分さ れ、各層間の水移動を 物理的プロセスにより計算し た。蒸発散量は、FAOの蒸発 散係数と 植 生 指 数(NDVDを 組み 合わ せた 新 しい 手法 を開 発し 、 作物 の蒸 散量 と 地表 面か らの 蒸発 量 を 区 別し て計 算し た 。モ デル の検 証は 、 流出 量を 既存 の11の モデ ルの 計算 値 および河 川流量実 測 値と 比較 して 行 った 。そ の結 果、本モデルの再現性は 十分優れており、水循環を流 域ベース で 適切 に表 現で き るこ とが 確認 され た 。

3.作物 水分不足量CWDの定義とその 広域分布

  灌漑 要水 量 など より 理論 的 な水 需要 量を 求めるため 、作物の生育において降水量 だけでは不 足 する 水分 量 を作 物水 分不 足 量CWD (Crop Water Deficit)とし、可能蒸散量と実蒸 散量の差で あ るCWDt(Theoretical Crop Water Deficit)と 圃 場 容 水 量 と 土 壌 水 分 量 の 差 で あ るCWDp (Practical Crop Water De6cit冫のニつのCWDを定義し た。これらは、流域流出サブ モデルの中 で 算 出 さ れ る 。1901年 か ら2000年 まで モ デル を実 行し 、 ユー ラシ ア大 陸東 部 のCWnの 空間 分 布特性を 調べた結果、中央アジア、 パキスタン、インド西部、中国華北等で高い値が算出された。

ま た 流 出 量 合 計 値 (R0) を水 資源 量と し て、CWnのROに対 する 比を 水 需給 関係 の指 標 とし て 評 価し た結 果 、上 記の 一部 の 地域 で水 資源 を全 て 使用 して もCWnを 満たすことが出 来ないこと が わか った 。CWDに よ る水 需要 量の 評価 の 妥当 性を 既往 の 研究 結果 等との比較によ り検証した 結 果 、 本 モ デ ル のCWDは 水 需 要 量 を 適 切 に 評 価 し て い る こ と が 確 認 さ れ た 。

4.河道流下サブモデ ルと大陸スケールの水循環

  河 道流 下 サブ モデ ルは 、既 存 のモデルを参照して構築し 、流域流出サブモデルと結 合した。

この 結合 モデルを、CRU‑TS2.0データを入力値として、河川 から取水を行う場合と行わ ない場合 の2つの 条件で実行した結果、 中央アジア、パキスタン、イ ンド西部、中国華北等の地 域では、

CWDに対 して 河川 か らの 取水 のみ では 水 不足 にな るこ とが わかった。この結果を中国 における 干害面積の統計資料と 比較した結果、年々変動が ほば一致することが確認され 、本手法により、

渇水による作物生産へ の影響が適切に評価できる ことが示唆された。

  以上 のよ うに 本研 究 は、 広域水循環モデ ルを構築し、ユーラシア大陸 東部の作物生育におけ る 水需 給関 係の 時空 間 的特 性を評価したも のである。また本モデルは、 将来予測される気候変 化 に対 して も適 用可 能 で、 その成果は学術 上、応用上高く評価される。 よって審査員一同は、

石 郷 岡 康 史 が 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る と 認 め た 。

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参照

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