学 位 論 文 題 名
博 士 ( 獣 医 学 ) 長 尾 慶 和
ウシ体外受精卵の体外培養に関する研究
学位論文内容の要旨
ウシの体外受精技術は、屠体卵巣を利用した品種改良や優良個 体の増殖を可能とする。この技術を効率的に活用するためには、
体外受精卵を受卵牛への移植の可能な胚盤胞期まで体外で発育さ せる必要がある。そこで本研究では、安定して高率に胚盤胞が得 られるウシ体外受精卵の体外培養系の確立を目的として、以下の 実験を行った・。
ウシ 体外受 精卵の 胚盤胞 への 発育に及ぼすウシ卵管上皮細胞 (BOEC) との共 培養と 血清添 加の 影響にっいて検討したところ、
BOEC との共培養はウシ体外受精卵の発育を促進し、その際に血清 の添加は必要ないことが明らかとなった。
培養気相中の酸素濃度と BOEC の影響を検討したところ、培養気 相中の酸素濃度を低下( 5%) させることにより、培養液への血清 や蛋白の添加あるいは共培養細胞による支持を必要とすることな く、ウシ体外受精卵の発育が可能であることが明らかとなった。
また、共培養における BOEC の有用な働きのーっが培養液中の酸素
分圧の低減であることが示唆された。
培養液の水質の影響について検討したところ、ウシ体外受精卵 は培養液作製に用いる水の純度に対して著しく鋭敏であり、その 発育は用いる水の精製方法および保存期間に強く影響されること が明らかとなった。
培養液の組成の影響にっいて検討したところ、ウシ体外受精卵 の培養には、高濃度のグルコースを含む修正 TCPJJ.99 よりも、低濃 度のグルコース( 1 .淵)を含む修正合成卵管液が適していること が明らかとなった。
以上により、培養気相中の酸素濃度を低下させ、高純度の水で
作製した低グルコース濃度の培養液を用いることで、BOEC との共
培養や蛋白添加を行うことなく、化学的組成が明らかな培養液を
用いて、ウシ体外受精卵を効率的に胚盤胞へ発育させる培養系が
確立された。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
ウシ体外受精卵の体外培養に関する研究
ウ シ の 体 外 受 精 技 術は 、 屠体 卵巣 を利 用し た品 種改 良や 優良 個体 の増 殖を 可能 と す る 。 こ の 技 術 を 効 率的 に 活用 する ため には 、体 外受 精卵 を受 卵牛 への 移植 の可 能 な 胚 盤 胞 期 ま で 体 外 で発 育 させ る必 要が ある 。そ こで 本研 究で は、 安定 して 高率 に 胚 盤 胞 が 得 ら れ る ウ シ体 外 受精 卵の 体外 培養 系の 確立 を目 的と して 、以 下の 実験 を 行 った 。
ウ シ 体 外 受 精 卵 の 胚 盤 胞 へ の 発 育 に 及 ぼ す ウ シ 卵 管 上 皮 細 胞 (BOEC) と の共 培 養 と 血 清 添 加 の 影 響 にっ い て検 討し たと ころ 、BOECと の共 培養 はウ シ体 外受 精卵 の 発 育 を 促 進 し 、 そ の 際 に 血 清 の 添 加 は 必 要 な い こ と を 明 ら か に し た 。 培 養 気 相 中 の 酸 素 濃度 とBOECの影 響を 検討 した とこ ろ、 培養 気相 中の 酸素 濃度 を 低 下 (596)さ せ る こ とに よ り、 培養 液へ の血 清や 蛋白 の添 加あ るい は共 培養 細胞 に よ る 支 持 を 必 要 と す るこ と なく 、ウ シ体 外受 精卵 の発 育が 可能 であ るこ とを 明ら か に し た 。 ま た 、 共 培 養 に お け るBOECの 有 用 な 働 きの1っが 培養 液中 の酸 素分 圧の 低 減 であ るこ とが 示唆 され た。
培 養 液 の 水 質 の 影 響に つ いて 検討 した とこ ろ、 ウシ 体外 受精 卵は 培養 液作 製に 用 い る 水 の 純 度 に 対 し て著 し く鋭 敏で あり 、そ の発 育は 用い る水 の精 製方 法お よび 保 存 期間 に強 く影 響さ れる こと を明 ら かに した 。
培 養 液 の 組 成 の 影 響に っ いて 検討 した とこ ろ、 ウシ 体外 受精 卵の 培養 には 、高 濃 度 のグ ルコ ース を含 む修 正TCM199よ りも 、低 濃度 のグ ルコ ース (1.5mM)を含む修正 合 成卵 管液 が適 して いる こと を明 ら かに した 。
以 上 に よ り 、 培 養 気相 中 の酸 素濃 度を 低下 させ 、高 純度 の水 で作 製し た低 グル コ ー ス濃 度の 培養 液を 用い るこ とで 、BOECとの 共培 養や蛋白添加を行うことなく、.化 学 的組 成が 明ら かな 培養 液を .用 い て、 ウシ 体外 受精卵を効率的に胚盤胞へ発育させ る 培 養 系 が 確 立 さ れ た。 こ れら の成 果は 、ウ シ体 外受 精技 術の 著し ぃ効 率化 を可 能 と し 、 畜 産 お よ び 発 生工 学 の発 展に 貢献 する とこ ろが 大き い。 よっ て、 審査 員一 同 は 、 長 尾 慶 和 氏 が 博 士 ( 獣 医 学 ) の 学 位 を 受 け る 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。
―183‑