知的障害特別支援学校高等部におけ る軽度知的障害及び発達障害生徒への
「生徒指導」 に関す る文献検討
Review on “Guidance and Counselling” for Students with M ild Intellectual
Disability and Developmental Disorders in Special High School for Intellectual
Disability
井 澤 信 三*
原
康 行**
永 井 孝 行** *
ISAWA Shinzo
HARA Yasuyuki
NAGAI Takayuki
西 田 裕 明***
山 本 真 也****
岡 村 章 司*****
NISHIDA Hiroaki
YAM AMOT0 Shinya
OKAMURA Shoji
本論文は、 知的障害特別支援学校高等部におけ る軽度知的障害及び発達障害のあ る生徒への 「生徒指導」 に関す る先行 研究 を概観す るこ と を目的 と す る。 まず、 知的障害特別支援学校高等部におけ る軽度知的障害及び発達障害のあ る生徒の 在籍状況、 ま たそ のよ う な障害のあ る生徒への指導 ・ 支援 に求め ら れる ニ ーズ、 特 に 「生徒指導」 に関連す る現状 につい て整理 し た。 その結果、 そのよ う な障害のあ る生徒は増加傾向にあ り 、 そ れに伴い 「生徒指導」 的な指導 ・ 支援内容に対 す る必要性の高ま り が示唆 さ れた。 次に、 軽度知的障害及 び発達障害のあ る生徒の指導におい て、 「不登校」 と 「性的 な 問題」 に関す る先行研究 を取 り 上げ、 その指導 ・ 支援ニ ーズ と 、 どのよ う な実際的 な指導 ・ 支援が求めら れてい るかを整 理 し た。 最後に、 今後、 PBs/PBIs のよ う な階層性のあ る指導 ・ 支援の必要性 を提案 し た。 キーワ ー ド : 軽度知的障害, 発達障害, 知的障害特別支援学校高等部, 生徒指導
Key words : mild intellectual disability, developmental disorders, special high school for intellectual disability, guidance and counselling
1 . 知的障害特別支援学校高等部に おけ る軽度知 的障害 ・ 発達障害等のある生徒への 「生徒指導」 の現状 近年、 特別支援学校 (知的障害) 高等部におい ては生 徒の増加が著 し く 、 その中で も軽度知的障害の生徒が増 え、 高等部全体の中で占 め る その割合 も多 く な っ て き て い る (国立特別支援教育総合研究所, 2012) 。 軽度知的 障害 と は、 軽度域の知的能力 を有す る こ と を意味 し、 一 般的には知能指数 (IQ) が50~ 70未満の範疇 と な るが、 そ れは固定的 な ラ イ ンでは ない。 そ れには、 適応状況が 大き く 影響す る ため、 生活上の困難 を照 ら し合わせ総合 的 に判断 さ れる も の で あ る。 ま た、 国立特別支援教育総合研究所 (2012) の知的障 害特別支援学校高等部設置校 を対象 と し た調査では、 軽 度知的障害 のあ る生徒 に特 に必要 な指導内容 と し て、 「対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン能力」 が343件 と 最 も多 く 、 「 社会生活のルール」 が303件、 「基本的な生活習慣」 が 172件、 「 職業能力の育成」 が160件 と 続い た。 ま た、 軽 度知的障害のあ る生徒の生徒指導上の課題 と し ては、 「不登校」 が178件 と 最も多 く 、 「異性と の不健全 な交遊」 が153件、 「 精神症状」 が130件 と 続い た。 その他の回答 には 「携帯電話の ト ラ ブル」 に関連す る記述が多 かっ た。 一方、 発達障害 (学習障害 / LD、 注意欠陥多動性障 害 / ADHD、 自閉スペ ク ト ラ ム症 / ASD) のある、 また はそのよ う な特性 を有す る生徒の存在が、 特別支援学校 高等部 におい て も 顕著 に な っ て き てい る。 熊 地 ・ 佐藤 ・ 斎藤 ・ 武田 (2012) では、 全国の知的障害 を主と す る特 別支援学校 と知肢併設の特別支援学校の合計600校 を対 象と し、 発達障害者支援法第 2 条に基づ く 発達障害に従っ た上で、 ①医師の診断 を受け た も の、 ②医師の診断はな い も のの、 教師が状態像か ら明 ら かに疑い があ る も のの 在籍者数等 を調査 し てい る。 ただ し、 知能指数70以上の 発達障害 と し てい る。 その結果、 313校中、 発達障害の あ る生徒が在籍 し てい る学校は141校 (45.0%) と 半数 近 く を占め、 313校の児童生徒総数39,813人に占める発 達障害のあ る生徒数は689人 (1.7%) であ っ たこ と を報 * 兵庫教育大学大学院特別支援教育専攻障害科学 コ ース 教授 * * 兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科先端課題実践開発講座 (博士課程) * * * 兵庫教育大学大学院特別支援教育専攻障害科学コ ース (修士課程) * * * * 兵庫教育大学大学院教育実践高度化専攻生徒指導実践開発 コ ース 助教 * * * * * 兵庫教育大学大学院特別支援教育専攻発達障害支援実践 コ ース 教授 平成30年10月25 日受理
告 し てい る。 ま た、 調査結果よ り 、 指導上の困難と し て、 「自閉症 を中心 と し た特有の問題 (対人関係の ト ラ ブル、 こ だわり 、 感覚過敏)」 と 「二次障害 (暴力 と 情緒不安 定、 不登校、 集団参加が困難、 無気力 ・ 無関心、 自己理 解が困 難、 自尊感情の低 さ 、 その他) 」 と に整理 し てい る o さ ら に、 熊地 ・ 佐藤 ・ 藤井 ・ 斎藤 ・ 武田 (2014) では、 知的障害特別支援学校11校の生徒指導主事 を対象に、 平 成23年度と24年度 (平成24年度については平成25年 1 月 ま で) に発達障害のあ る生徒が引 き起こ し た生徒指導上 の問題 につい て調査 し てい る。 その結果、 発達障害 のあ る生徒が引 き 起こ す生徒指導上の課題 と し て、 「暴力 な ど不適応行動」 「不登校、 その他」 「福祉機関と の連携」 「医療機関と の連携」 「警察等 と の連携」 の 5 つに整理 し てい る。 ま た、 生徒指導上の困難点 と し て、 1 ) 障害特 性 (非常に偏 っ た豊富 な知識 ・ 強い こ だわり 、 独特 な感 性 ・ 認知、 共有感の難 し さ 、 活動場面の設定の難 し さ ) 、 2 ) 社会性の障害 (集団行動上の不適応、 ルール遵守や 指導の拒否) 、 3 ) 二次障害の併発 (暴力行為、 低い自 己肯定感、 成功体験の乏 し さ ) 、 4 ) 触法行為及び ぐ犯 への対応 (非行やそのおそ れがあ り 教育の場での解決が 困難) の 4 点 にま と めてい る。 以上のこ と から、 知的障害特別支援学校高等部におけ る生徒の実態 と し て、 軽度知的障害又は発達障害 を呈す る数が一定数在籍 し てお り 、 そ れは増加傾向 にあ る と い え る。 さ ら に、 軽度知的障害及び発達障害等のあ る生徒 への指導 ・ 支援の内容 と し て、 こ れま での知的障害特別 支援学校では少 ない と さ れてい た 「暴言 ・ 暴力」 「 不登 校」 「 異性 と の不健全 な交遊」 等の生徒指導上の課題へ の対応が求 め ら れてい る こ と が分 か る。 「暴言 ・ 暴力」 は行動上の問題の タ ーゲ ッ ト と し て頻繁 に扱 われてい る た め ( た と え ば、 小 笠原 ・ 末永, 2013; 岡村 ・ 渡部, 2014) 、 以降では、 「不登校」 と 「異性 と のつ き あい、 性 的 な問題」 の 2 つ を取 り 上げ、 現状 と 課題 を整理 し てみ る 。 2 . 特別支援学校におけ る生徒指導上の課題 と そ の対応例 1 ) 不登校 発達障害のあ る児童生徒 と 不登校 と の関連は、 い く つ かの研究で指摘 さ れており (例 : 井上 ・ 窪島, 2008) 、 発達障害の特性に応 じ た支援の必要性が指摘 さ れてい る ( 加茂 ・ 東條, 2010) 。 発達障害 と 不登校の関連性は、 Kurita (1991) におい て も 、 知的障害 と 不登校の関連性 を示唆 し てい る。 し か し 、 知的障害 と 不登校 と の関連に つ い て直接的 に検討 し た研 究 はほ と ん ど な く (King, Tonge, Heyne, & 01lendick, 2000) 、 不登校児 の知的 レ ベルは平均 かそ れ以上であ る こ と を示 し た研究 さ え あ る
(Goldberg, 1953; Rodriguez, Rodriguez, & Eisenberg, 1959) 。 こ れら の研究か ら 、 軽度知的障害 も し く は発達 障害のあ る生徒がよ り 不登校のリ ス ク を多 く 持 つこ と を 示 し てい る可能性があ る。 そのこ と は、 前述 し たよ う に、 特別支援学校高等部 に おけ る軽度知的障害 ・ 発達障害のあ る児童生徒が増加傾 向にあ る と す る と 、 特別支援学校高等部におけ る不登校 の増加 と い つたこ と も 容易 に推定で き る。 ま た、 特別支 援学校高等部への進学者が、 地域におけ る中学校の通常 学級や特別支援学級に在籍 し てい た生徒は一定数おり 、 中学校段階におい て不登校、 も し く は不登校傾向 を有 し てい た ケ ー ス も 想定 さ れる。 小野川 ・ 高橋 (2013) では、 発達障害の子 ども が無理 解や支援の不十分 さ から、 学習や生活上の困難を抱え、 通常学校で不適応状態 と な っ て不登校 ・ 二次障害 を引 き 起こ し、 特別支援学校へ転入 し て く るケースが増え てい る。 そ う な れば、 不登校 ・ 二次障害 を伴 う 発達障害児 に 対す る教育は、 医療と の連携が不可欠と なり 、 病弱特別 支援学校は大き な役割 を果たすこ と にな る。 芦谷 ・ 岡 (2016) は、 滋賀県におけ る視覚障害 (盲学 校) ・ 聴覚障害 ( 学校) を除 く 特別支援学校におい て 不登校 に関す る調査 を行 っ てい る。 その結果、 不登校の 児 童生徒の出現率は、 小学部 では0.86 % 、 中学部で は 2.02%、 高等部では4.73% で あ っ た。 高等部 におけ る不 登校の生徒数の多 さ につい て、 小学校、 中学校から不登 校であ っ た可能性 も 高い こ と や、 適応が困難に な っ た生 徒が通常学校から高等部へ入学す る例への対応の困難 さ が指摘 さ れてい る。 ま た、 外部機関 と の連携の必要性 も 指摘 さ れており 、 岡 ・ 芦谷 (2016) では、 外部機関と の 連携 を通 し た支援事例が紹介 さ れてい る。 金子 ・ 熊田 ・ 神野 (2016) では、 知的障害特別支援学 校高等部におけ る不登校支援事例につい て、 小学校入学 以前から 高等部 1 年生への入学後ま でのプロ セスが丁寧 に記述 さ れてい る。 こ の事例では、 小中学校で自閉症 ・ 情緒障害特別支援学級に在籍 し ており 、 中学校 1 年生に おい て担任 と の ト ラ ブルか ら 不登校状態 に な っ てい る。 高等部入学後、 4 月は受容的支援によ る学校への不信感 の軽減、 5 ~ 6 月は自家用車内での授業によ り 担任と の 二者関係づ く り と自家用車から校舎内への行動範囲の拡 大、 7 ~ 8 月は教室固定化によ る居場所づ く り 、 「全国 鉄道マ ッ プ」 作成 (本人の好 み) と い っ た学習活動、 9 ~ 3 月は 「全国鉄道マ ッ プづ く り」 に加え、 本人の特性 を活か し た 「 ス ト ロ ー入 れ」 づ く り な ど を通 し た人 と の 関係づ く り 、 と 展開 し てい る。 こ のよ う な現状 を鑑み、 知的障害特別支援学校高等部 におい て も、 不登校生徒への支援の必要性が高ま っ て く る こ と が想定 さ れる。 中学校時代 から の不登校 を示 し て い る タ イ プでは、 高等部入学直後から 登校行動 を強化 し
てい く ア プロ ーチ、 も し く はそのよ う な生徒が高等部入 学後は学校 を居場所 と し て登校 で き る よ う に促進す る ア プロ ーチが求め ら れる。 一方、 高等部入学後から 不登校 状態 を示 し て し ま いやすい タ イ プ (不登校リ ス ク が高い タ イ プ) には、 登校行動 を維持で き る よ う な予防的な ア プロ ーチ、 及び不登校状態に至 っ て し ま っ た後の復帰支 援 (再登校支援) が求めら れるであ ろ う 。 2 ) 異性 と のつ き あい、 性的 な問題 性教育 には 「 妊娠 ・ 出産等 に関す る性的 な事 柄」 と 「異性 と のつ き あい」 の 2 側面があ る と 考え ら れてい る。 Schaafsma, Kok, Stoffelen, Leopold, and Curfs. (2015) は 、 “intellectual disability” “sexuality” “education” の 3 つのキ ーワ ー ド に関連す る語によ り 、 知的障害者への性 教育 に関す る論文 の系 統的 レ ビ ュ ー を実施 し てい る (最 終的 には20論文) 。 こ の論文 では、 プロ グラ ムや資料の 目標は、 ほ と ん どの場合、 論文 には報告 さ れてい ない こ と 、 及 び性教育 プロ グラ ムが体系的 に、 あ るいは理論 と 証拠に基づい て開発 さ れたこ と を示す支援は見 ら れなかっ たこ と を指摘 し てい る。 小嶋 (2012) は、 日本におけ る性教育に関する研究動 向 を検討 し てい る。 特別支援学校高等部学習指導要領の 知的障害児の 「保健体育」 科の解説 (文部科学省, 2009) には、 「 一 人一 人の生徒の知的障害の状態等 を踏まえ 、 身体的成熟や心理的発達に合 わせて、 異性 と の交際の在 り 方、 身 だ し な みや服装、 態度 な ど社会生活への適応 を 図 る ための指導 を行 う 必要があ る。 性 に関す る指導 を行 う 場合は、 生徒個々の知的障害の状態等に応 じ て、 適切 な指導内容 を設定 し、 家庭 と の密接 な連携 ・ 協力 が必要 であ る。 ま た、 異性 と の交際 と 合 わせて、 結婚や妊娠 ・ 出産につい て も家庭科の指導 と 関連 し て取 り 扱 う こ と も 大切であ る」 と の記述 も あ り 、 性教育 に関連す る指導の 必要性 も指摘 さ れてい る。 児島 ・ 細渕 (2011) は、 知的障害特別支援学校におけ る性教育実践の全国調査 を行 っ てい る。 高等部の結果に 着目す る と 、 「性教育 を行 っ てい るか」 と い う 問い には、 「教育課程に位置づけ て実施」 が58.9 % 、 「教育課程に位 置づ け てい ない が実施」 が32.1% 、 「行 っ てい な い」 が 9 % で あ っ た。 「 性教育 を どの時間 に行 っ て い る か」 と いう 問いには、 「教科等の学習活動の時間」 が66.5% 、 「児童生徒別 に個別 に時間 を設定」 が約29.0% と な っ て い る。 「今後、 性教育 を行 う 時間 を増や し たいか」 と い う 問い には、 33.3% が増や し たい、 66.3% が維持 し たい と 回答 し てお り 、 その増や し たい理由 と し ては、 「今の 時間 では足 り ないから」 が約80% を占めてい た。 山田 ・ 水内 (2010) は、 国立大学法人の附属特別支援 学校 を対象に、 性教育に対す る意識 と 実態につい て調査 し てい る。 どのよ う な性教育の内容が必要 と 考え てい る か、 性教育 に必要だ と 思われる指導内容につい ての結果、 高等部の結果 に着日 す る と 、 「体の清潔」 が86.4% と 最 も 高 く 、 次い で 「 こ こ ろの発達」 が81.9%、 「男女の違 い」 と 「 人間関係 ・ 社会性につい て」 が同 じ く 81.8% で あ っ た。 ま た、 性教育 の授業 と し ての実施者は、 「 養護 教論」 が40.9% と 最も高 く 、 次いで 「学部の全教員」 が 31.8%、 「担任」 が13.6%であ っ た。 性教育上の課題の内 容に関 し て、 性教育上の課題への教員 の回答は、 高等部 では 「 不潔 な排泄処理」 が27件 (100%) と 最 も多 く 、 次いで 「異性への関心」 が25件 (92.6%) 、 「性器い じ り ・ 自慰」 が15件 (55.6%) 、 「性的被害に関 し て」 が13件 (48.1%) 、 「排泄処理に関し て」 が11件 (40.7%) と なっ てい た。 高等部 では、 性犯罪 に つい て重点 が置かれた性 教育 の必要 を感 じ てい る と いえ る。 ま た卒業 後、 地域社 会に出 てか ら の こ と も 考慮 さ れてい てい る こ と を示唆 し て い る o 阿部 ・ 阿部 (2014) は、 富山県総合教育セ ンタ ー教育 情報室が収集 し た富山県高等学校生徒指導参考資料のう ち、 特別支援教育がス タ ー ト し た平成19年度から最新資 料である平成25年度ま での 7 年間分よ り 、 特別支援学校 におけ る実践報告 を抽出 し、 特別支援学校の独自的な内 容 と し て 「携帯電話 ・ イ ン タ ーネ ッ ト の適切 な利用」 や 「 不健全 な異性交遊に関す る取 り 扱い内容」 の 2 つ を指 摘 し てい る。 性教育では、 妊娠 ・ 出産等に関す る性的 な事柄、 及び 異性 と のつ き あい方 と い っ た幅広 い ソ ー シ ヤルス キ ルズ に関す る事柄、 加え て、 最近の社会状況 に関す る携帯電 話 ・ イ ン タ ーネ ッ ト 等の利用 も含 めた事柄 も教え るべ き 学習内容 と 考え ら れる。 高等部段階と い っ た実年齢に求 め ら れる 喫緊 の課題 で も あ り 、 そ れは、 生徒 がそ のよ う 事柄に課題 を有す る と い っ た差 し 迫 っ た問題への対応 だ け では な く 、 3 年間におけ る学習 プロ グラ ムを考え てい く 必要 も あ る だ ろ う 。 特別支援学校高等部におけ る後者 (異性と のつき あい 方) へのア プロ ーチ と し て、 綿引 ・ 村瀬 ・ 北潟 (2011) の実践 があ る。 そ れで は 「 恋愛 を肯定的 に受 け 止 め る ( 人 を好 き に な っ て も い い の だ と い う 安心感 を も つ) 」 「自分 の こ と が認 め ら れ る こ と か ら自己肯定感 を持 つ」 「話す一聞 く 」 コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン を重視す る」 「自分の 気持 ち を こ と ばで 表現す る ア ピ ールで き る」 「 マ ナ ー を 知 る (言葉遺い、 合意、 失恋、 あ き ら め る な ど)」 「性犯 罪の被害者 に な ら ない ( プ ラ イ ベ ー ト ゾー ン を大切 にす る ・ 守 る、 ノ ーと 言え る、 被害にあ っ た ら相談す るな ど)」 「性犯罪の加害者 にな ら ない ( ス ト ーカ ー、 不適切な メ ー ル、 抱 き つ く な ど)」 「恋愛 には正解が 1 つあ る わけ で は ない。 何歳 に な っ て も 悩 みなが ら 生 き てい る こ と がわか る」 と い つた ね ら い を設定 し てい る。 ま た、 実際に起 き う る よ う な場面 を想定 し 、 そ の シナ リ オ を作 成 し 、 そ れ
を通 し て “ プロ ア ク テ ィ ブな” 学習機会 を設定 し てい る。 一方、 菊池 ・ 森田 ・ 武井 ・ 田上 (2012) では、 性問題 行動 を示す自閉症 スペ ク ト ラ ム障害の青年のための コ ー ピ ン グ ・ ス キ ル ・ ト レ ー ニ ン グ ・ プ ロ グ ラ ム開発 を 試 み てい る。 一 つの リ ア ク テ イ ブな ア プロ ーチ と 捉 え る こ と も でき る。 対象 と な っ た青年 7 名は、 年齢13~ 27歳、 IQ は40~ 86、 主な性的問題行動は、 た と え ば、 「男児の臀 部、 性器 を触 る」 「公衆の場での自慰行為」 「女児の胸 を 触 る」 な どが挙げ ら れてい る。 そのよ う な対象青年 に対
し て 、 M onti, Kadden, Rohsenow, Cooney, & Abrams
(2002) の CST (Coping Skill Training) を下敷 き に、
ASD の青年向け プロ グラ ム (Coping Skill Training for adolescent with ASD : CST for ASD) 作成 し てい る。 そ れは、 (a) 視覚的戦略 ( ゴールへの見通 し や、 構造化 さ れた プロ グラ ム) 、 (b) 字義通り の解釈あ るいは言葉の 理解 に誤解が生 じ てい ない か、 (c) 「性的 な関心」 を受 け止めつつ、 間違 っ た行動 に発展 さ せない ための巨視的 な ソ ー シ ャ ル ス ト ー リ ーの活用、 (d) 「性的 な関心」 の プロ グラ ム進行中の ア セ ス メ ン ト (性的欲求か、 関わり 欲求の誤学習か) 等 を支援 ・ 指導方法と し て重視し てお り 、 性的問題行動の頻度の減少な ど、 十分 ではないが、 一定の効果 を示すこ と ができ てい る。 以上のよ う に、 軽度知的障害 ・ 発達障害のあ る生徒の 増加 と 社会の変化 に対応す る ために、 性教育の必要性は 高ま る一方であるが、 知的障害特別支援学校高等部での 性教育 の シ ス テ ムと 内容 を どの よ う に し てい く かは、 検 討課題と考え ら れる。 こ こ で も、 予防的な支援 (一次支 援) と 問題解決型の支援 (二次支援) の両建てが必然的 に求 め ら れる状況に あ る と 言え る。
3 . 知的障害特別支援学校高等部におけ る 「 生従
指導」 的ア プロ ーチの階層性 こ のよ う に知的障害特別支援学校高等部におけ る軽度 知的障害 ・ 発達障害のあ る生徒の課題の多様性が示 さ れ て い る 。 こ の よ う な 現 状 に対 し 、 応 用 行 動 分 析 学 (Applied Behavior Analysis) に基づい た ア プロ ーチが有 効に機能す るこ と が考え ら れる。 対象 と な る児童生徒の 障害種や障害の有無にかかわら ず、 応用行動分析学に基 づい た ア プロ ーチ では、 行動 を個人 と 環境の相互作用 と 捉え、 三項随伴性 (弁別刺激 行動 強化) の整備 ・ 配 置 に よ り 、 行動の成立 を目指 し てい く 。 そ れは、 た と え ば 「不登校」 と い っ た 「登校行動が起き てい ない」 状態 に対 し、 登校行動 を促進し、 維持するための確立操作、 弁別刺激、 強化刺激 を生活環境 に配置 し てい く こ と と な る。 ま た、 「異性 と のつ き あい」 で も 、 その問題 と な る つき あい行動に代わる適切 と 考え ら れる行動 を標的 と し、 その標的行動が成立す るよ う な確立操作、 弁別刺激、 強 化 を生活環境に配置 し てい く こ と と な る。 さ ら には、 暴 言 ・ 暴力 な どの問題 と な る行動 につい ては、 機能的行動 ア セ ス メ ン ト に よ り 、 その問題行動 を三項随伴性か ら 機 能的関係 を推定 し てい き、 やはり 適切 と 考え ら れる標的 行動が成立す るよ う な確立操作、 弁別刺激、 強化 を生活 環境 に配置 し てい く こ と と な る。 こ のよ う な ア プロ ーチ の考え方は、 特 に、 特別支援教育の分野におい て、 実践 と 研究が積 み重 な っ て き てい る。 近年、 学校におけ る生徒指導や特別支援教育に関連 し て、 PBS (Positive Behavior Supports) や PBIS (PositiveBehavioral Interventions and Supports) の実 践 と そ の研
究 が行 われて き てい る。 PBS は、 予防 と 介入 の個々の 生徒への適用 モ デルから学校全体モ デルにま で拡大 し、
3 層 のサー ビス提供モ デル (Tire 1 , Tire 2 , Tire 3 ) に 組み込ま れてい る。 School w ide PBS は、 望 ま し く ない 問題行動 を予防 し、 近年登場 し た ポジテ ィ ブな行動 を促 進 す る ア プ ロ ー チ で あ る (Solomon, Klein, Hintze, Cressey, & Sarah. Pelter, 2012) 。 ま た、 SWPBS を適用
し てい る学校 では、 すべ ての生徒が一次的 な予防 レベル で ユ ニ バ ーサルな プロ グ ラ ム と 介入 を受 け る 二次的 な 予防 レベルでは、 軽度か ら 中等度の行動問題 を呈 し てい る生徒 の ための特別 な グルー プ シス テ ムが用 意 さ れ る。 最後に、 最 も 重症ま たは高 リ ス ク の行動問題 を提示す る 生徒 には、 個別 レベルでの第三次的 な予防サポー ト が提 供 さ れ る (Solomon, K lein, Hintze, Cressey, & Sarah.
Pelter, 2012) 。
枝廣 ・ 松山 (2016) では、 ア メ リ カ での第 1 層支援
(Tiro l ) 実践 と し て、 “The Praise Game (賞賛 ゲーム) ” “Praise Student Frequently (子 どもへの賞賛) ” “Rewards, Simple Reward Systems, & Incentives (行動への報酬 と
イ ン セ ン テ イ ブ) ” “Behavior M anagement Pocket Chart
( 行 動 マ ネ ジ メ ン ト チ ャ ー ト ) ” “M odel Appropriate Language (適切な言語のモ デル化) ” “Assign a Buddy or Partner ( バ デ イ ・ ペ アの割 り 当 て) ” を紹介 し て い る。 こ れは、 学校 ・ 学級全体 と い っ た規模での全体介入 と 位 置づけ ら れ、 主に、 仲間関係等 におけ る適切 な行動 の増 加 を目的 と し てい る。 佐々木 ・ 阿部 ・ 柘植 (2016) では、 他者と の仲間関係 を育 む た めの 「 グリ ー ン ポイ ン ト 」 と 、 自信 を も っ て主 体的 に学習 や活動 に向 かう 力 を育 て る ための 「 グ ッ ド ポ イ ン ト」 と い う シールを全教師が持 ち歩 き、 学部全体で 共通理解 し た学習評価 を行 っ てい る。 ま た、 授業 の後半 には振 り 返り の時間 を設定す るこ と で、 生徒が多様 な振 り 返 り の場面 でほめ ら れ、 他者 に認 め ら れる と い う 経験 を保障 し てい る。 仲間関係 を育 む評価 ツ ール 「 グリ ー ン ポイ ン ト」 に着目 し、 県立 x 特別支援学校中学部全員 (生徒数48名) に対 し て実際に使用 し てみる こ と で、 そ の成果 と 課題 を ま と めてい る。 こ の実践例は、 第 1 次支 援 に位置づけ ら れるで あ ろ う 。
今回焦点 を当てた、 知的障害特別支援学校高等部にお
け る軽度知的障害及び発達障害のあ る生徒への現状 を鑑 みる と 、 こ の School wide PBS/PBIS の考え方は非常に
有益 な ア プロ ーチ と し て適用 で き る よ う に考え ら れる。 特 に、 生徒 に提示 し た支援 ・ 指導への リ ア ク シ ョ ンの状 況から 、 支援 ・ 指導の内容 を階層的 に し てい く こ と は現 状に適 し てい る と考え ら れる。 知的障害特別支援学校高 等部におけ る支援の階層性 を以下に考え てみる。 不登校 への支援の場合、 不登校のへの全体的 な予防的支援 (
-
次的支援 : たと えば、 学級や授業におけ る安定的な参加 の促 進、 ま たは登校行動 を強化す る よ う な シ ス テ ム) 、 不登校のリ ス ク が高い生徒への小集団におけ る予防的支 援 (二次的支援 : た と え ば、 リ ス ク の高い生徒に対す る 小集団 プロ グラ ム) 、 不登校 に至 っ て し ま っ た個別 ケ ー スに対する復帰支援 (三次的支援 : たと えば、 個別的な ア セ ス メ ン ト の基づ く 段階的 な再登校支援 な ど) が想定 で き る。 ま た、 異性 と のつ き あい等の性的 な問題 を考え た場合、 予防的支援 (一次的支援) と し て 「妊娠 ・ 出産 等に関す る性的な事柄に関す る授業 プロ グラ ム」 と 「異 性 と のつき あいの授業 プロ グラ ム (例 : 綿引 ・ 村瀬 ・ 北 潟, 2011)」、 個別的な問題を含めながら小集団におけ る 性教育プロ グラ ム (例 : 菊池 ・ 森田 ・ 武井 ・ 田上, 2012) 、 さ ら に性的 な問題が生 じ て し ま っ た場合の問題解決型支 援 (三次的支援) と い っ た階層が想定で き る。 つま り 、 一次的支援 (学校全体 ・ 学年全体での通常の 授業や日常的な関わり の中での支援 : 予防的支援) 、 二 次的支援 (個別的な課題に対応 し た小集団におけ る予防 的支援) 、 三次的支援 (個別的な喫緊の課題に対応 し た 個別的 な問題解決的支援) と い っ た三階層 を想定す る こ と ができ る。 こ のよ う な枠組みが知的障害特別支援学校 高等部におい て実行可能 な シス テ ムを検討 し てい く 必要 があ る と 考え ら れる。 その際に、 その三階層毎の支援 ・ 指導方法、 内容の吟味 と その階層性 を機能 さ せ るための 判断基準 を明確化 し てい く こ と が求めら れる。 本研究は、 科学研究費 (課題番号18K02790) 「知的障 害特別支援学校高等部におけ る行動問題への包括的 ・ 階 層的介入モ デルの開発」 によ り 実施 さ れた。4 . 文献
阿部正一 ・ 阿部美穂子 (2014) . 特別支援学校におけ る 生徒指導の実践動向 と今日的課題. 富山大学人間発達 科学研究実践総合 セ ン タ ー紀 要教育実践研究, 9 , pp 41-50. 芦谷道子 ・ 岡 ひろ み (2016) . 特別支援学校におけ る不 登校生徒の現状 と支援体制. 滋賀大学教育学部附属教 育実践総合セ ン タ ー紀要, 24, pp 67-72.枝廣和意 ・ 松山康成 (2016) . PBIS (Positive Behavioral
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