Exploring an Ideal Rural Social
Entrepreneurship Model: A Case Study in Rural Java and Flores Islands, Indonesia
著者 ディエンティア アンダニ ジュアンダ
著者別表示 Dhientia Andani Juanda journal or
publication title
博士論文要旨Abstract 学位授与番号 13301甲第5102号
学位名 博士(学術)
学位授与年月日 2020‑03‑22
URL http://hdl.handle.net/2297/00058755
doi: http://doi.org/10.24517/00056735
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
様式 7(Form 7)
学 位 論 文 要 旨
Dissertation Abstract
学位請求論文題名 Dissertation Title
Exploring an Ideal Rural Entrepreneurship Model: A Case Study in Rural Java and Flores Islands, Indonesia
(和訳または英訳)Japanese or English Translation
社会的起業家精神による理想的な農村部開発モデルの探求:インドネシ ア・ジャワ島およびフローレス島の事例研究から
人間社会環境学 専 攻(Division)
氏 名(Name) Dhientia Andani Juanda
主 任 指 導 教 員 氏 名(Primary Supervisor) 鏡味治也
(注)学位論文要旨の表紙 Note: This is the cover page of the dissertation abstract.
ABSTRACT
Awareness of how social entrepreneurship (SE) can be used as a viable practice for rural development has grown significantly over the past 20 years. Yet, there is a paucity of literature in the area to guide policy- and decisionmakers and other stakeholders. In the available studies, rural development is typically regarded as the outcome of SE activities in rural areas, though these activities are not necessarily initiated using rural development practices. Given these considerations, this study explores the ideal rural SE model as an approach to rural development. Specifically, I investigate three sample cases of social enterprises in Indonesia by integrating the shifting paradigm of the rural development model with the three stages of the social entrepreneurship process.
This study has several findings. First, with some adjustment, the adoption of the rural development model can be a used to examine the SE process as a rural development practice.
Second, the rural context and the external actors’ background and capacities have significantly influenced rural SE in Indonesia. Third, the SE approach is a combination of several rural development models with both advantages and disadvantages. Last, this study presents a dominant SE model for rural development in Indonesia and suggests the conditions to support its better implementation.
Overall, this study demonstrates that there is no single SE approach that can be the best for all situations due to the significant influence of the rural context, the uniqueness of each business model, and entrepreneurs’ different capacities. Social entrepreneurship should be viewed holistically as a practice of rural development in which each stage influences the final result.
This study offers findings that rural development practitioners and social entrepreneurs can use to design proper social entrepreneurship programs. It also integrates a framework between social entrepreneurship discourse and rural development theory.
Keywords: social entrepreneurship, rural development, Indonesia, creative industry
論文要旨
社会的起業家の精神が農村の発展のための実行可能な実践として使用することが で
きるという認識は、過去 20 年間で大幅に成長してきた。しかし、この分野には、 政 策立案者や意思決定者、その他の利害関係者を導くための文献が不足している。 こ れまでの研究によると、農村の発展は典型的には農村地域における社会的企業活 動 の結果とみなされるが、必ずしもこの活動は従来の農村開発の慣行でもって始め ら れるわけではない。この研究では社会的企業の動機、起業プロセス、および農村 発 展の契機としての社会的起業の成果について議論する。とくに時代によって変化 し てきた農村発展モデルのパラダイムを概観したうえで、それを上記社会的起業の 3 段階と統合させ、それをインドネシアの 3 つの事例で検証する。
本研究にはいくつかの発見があります。第一に、ある程度の調整を行うこと で、農 村発展モデルの採用を活用して、農村開発の実践としての社会的起業プロセ スを検 証することができます。第二に、農村の状況と外部のアクターの背景と能力 は、イ ンドネシアの地方の社会的起業に大きな影響を与えています。第三に、社会 的起業 アプローチは、長所と短所の両方を備えたいくつかの農村開発モデルの組み 合わせ です。最後に、本研究はインドネシアの農村開発のための支配的な社会的起 業モデ
ルを提示し、そのより良い実施を支援するための条件を提案します。
全体として、本研究は、農村の状況、各ビジネスモデルの独自性、および起 業家ご
とにさまざまな能力があるために、あらゆる状況に最適な単一の社会的起業 アプロ ーチがないことを示しています。本研究は新内因性モデルが、必ずしもビジ ネスと しての発展にはつながらないかもしれないが、農村の発展の実践には理想的 だとい うことを実証する。社会的起業による発展は、売り上げだけから評価される もので
はなく、その始まりから展開過程の各段階が様々な結果をもたらす。本研究 は、農 村の発展に取り組む人々や社会起業家らが適切な社会起業プログラムの設計 に使用 できる調査結果を提供するものである。そして、社会的起業家にまつわる言 説と農 村発展の理論の統合を試みる。
キーワード: 社会的起業家精神、農村発展、新内因性
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学位論文審査報告書
令和2年 2月 7日
1 論文提出者
金沢大学大学院人間社会環境研究科 専 攻 人間社会環境学専攻 氏 名 Dhientia Andani Juanda
2 学位論文題目(外国語の場合は,和訳を付記すること。)
Exploring an Ideal Rural Entrepreneurship Model: A Case Study in Rural Java and Flores Islands, Indonesia
(社会的起業家精神による理想的な農村部開発モデルの探求:インドネシア・ジャワ島お よびフローレス島の事例研究から)
3 審査結果
判 定(いずれかに○印) 合 格 ・ 不合格
授与学位(いずれかに○印) 博士( 社会環境学・文学・法学・経済学・学術 )
4 学位論文審査委員 委員長 鏡味治也 委 員 西本陽一 委 員 正木 響 委 員 中島弘二 委 員 田村うらら 委 員
(学位論文審査委員全員の審査により判定した。)
5 論文審査の結果の要旨
本論文は、インドネシアの 3 つの事例を手掛かりに、社会的起業家による農村開発の理想的 なモデルを探求したものである。第二次大戦後の発展途上国の地域開発は、国や国際機関によ る外部からの開発事業に始まり、その地域事情をじゅうぶん考慮しない計画策定や資金援助の 時限性から、地域住民自身が主導する内発的開発の重要性が説かれ、しかしそれではじゅうぶ んな資金調達や事業の持続性がままならないことから、住民の主体性を尊重しつつ外部から資 金やアイデアを提供して双方が連携しながら開発を進めていく手立てが模索されている。社会 的起業家が関与する地域開発はそうした試みのひとつと言える。
論文は 1 章での問題提起のあと、2 章でこれまでの地域開発や社会的起業家に関連する研究 を概観し、自身の分析モデルを提示する。開発研究では上記の外発的(exogenous)アプロー チから内発的(endogenous)それを経て新内発的(neo-endogenous)モデルへという潮流が引 き出される。また社会的起業家に内容が重なる社会ビジネスはあくまでも利益目的のビジネス であるのに対して、社会的企業は地域住民の生活向上も活動目的に含んでいる点が違うとして、
Lumpkin 他の研究をもとに、社会的企業の基本プロセスとして準備(antecedents)・実践
(entrepreneurial orientation)・成果(outcomes)の三段階を想定し、先の開発の 3 つのモ デルと組み合わせて独自の分析の枠組みを構築する。それは社会的企業のうち農村開発に関連 する要素として、準備段階における事業の使命・意義、機運、資金や政府機関等へのアクセス の如何、実践段階における運営様態や革新性、効率性、働き手の主体性の如何、成果として経 済利益とともに農村社会や住民の向上の如何を抽出し、それぞれの項目が事例ごとに外発的・
内発的・新内発的のどのアプローチに近いか分類したうえで、企業的展開と持続可能性及びス テークホルダーの満足度から評価して、理想モデルを追求しようというものである。
3,4,5 章はインドネシアの三つの事例をひとつづつ具体的に紹介している。3 章はジャワ 島中部の農村で展開された竹の市を核とする事業である。まず木製ラジオや竹製自転車を作り 有名になったデザイナーが、中部ジャワのある村の竹林に注目し、地元の竹細工製品などを売 る市を村の中で開催することで村を活性化することを持ち掛けたのが発端だった。外部から NPO が入って催しを実施したが、村の一部の人にしか声をかけず、試みは 1 年で幕を閉じた。
しかしそれを見ていた近くの村の住民の一人が、似たような催しを自分の村で実施したいと NPO に申し出、こんどは村全体を巻き込んで竹市を開こうとした。村全体に呼びかけたことで、
製品や食べ物を売る市だけでなく、そこに至る道路も整備され、ゲストハウスを作って農村観 光も手掛けられるようになるなど、持続的な事業に発展している。
4 章はフローレス島の絣織布をカバンなどの小物に商品化し、世界市場向けにネット販売す る事業である。ジャカルタを拠点にするグラフィック・デザイナーがフローレス島でこの布を 伝統的な手法で制作する地元の女性グループに出会い、小物のデザインに使える布を注文する とともに、布の質管理からグループ運営までアドバイスし、販売事業も成功している。
5 章はジャカルタを拠点にインドネシア各地で事業を展開する社会的企業が、フローレス島 で展開する、特産のパルミラ椰子の葉や柳の枝を編んだ籠などを販売しつつ女性の地位向上を 目指す事業である。この場合は起業家が伝統市場で売られている編み籠に目をつけ、その作り 手の村を探し出し、そこで作り手の女性を募集してグループを組織し、制作と組織運営を指導 するとともにモダンなデザインの小間物の制作を注文し、ネットを通じて広く販売している。
以上三つの事例を、先に挙げた分析枠組みに沿って比較検討しているのが 6 章である。外部 主導はジャワ中部の竹市の最初のケースのみで、あとは外部からの働きかけと内部からの自発 的な動きが組み合わさって成立した場合に事業が持続されている。製品作りも、地元特産の素 材や伝統技術を生かした制作物をモダンなデザインで商品化した場合にビジネスが成り立っ ている。竹市では市での売り上げよりも村道の整備や住民の意識変化が主要な成果だが、フロ ーレス島のふたつの事業ではビジネスでも成功するとともに、地域の作り手の女性たちも収入 を得るだけでなく自立した働き手、さらには技術や組織運営のリーダーとして社会的自己形成 に寄与している。
7 章の結論では、前章での比較検討をまとめるとともに、商業的利益をあげつつ地域開発や 住民エンパワーメントにも寄与する社会的企業は、持続可能な農村開発の有力な手段であると 指摘している。
1997 年のアジア通貨危機で政府主導の大規模開発政策がとん挫し、より民間の力を取り入 れた経済開発にシフトするようになったインドネシアにおいて、農村開発はいぜん急務の課題 であり、社会的企業による事業は地域開発において大いに意義をもつ。とりあげられた三つの 例はいずれも成功例と言え、その成功の理由はそれぞれの事情に拠るところが多いものの、自 身で分析枠組みを組み立て、丹念に聞き取った事業の細部を比較検討して評価できる点を抽出 し、理想モデルを求めようとする著者の結論は実証的で説得力を持つ。博士論文としての内容 と基準をじゅうぶんに満たす論文と審査委員一同判断した。