30秒法クレペリン検査の因子分析 : 交叉相面的確 認的因子分析法による30秒法と標準法の比較検討
その他のタイトル A factorial structure of the Kraepelin
psychodiagnostic test (30 seconds method) by the cross‑modal confirmatory factor analysis
著者 東村 高良
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 12
号 2
ページ 147‑161
発行年 1981‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/10112/00022866
30
秒法クレペリン検査の因子分析
—交叉相面的確認的因子分析法による 30秒法と標準法の比較検討—
東 村 高 良
〔 問 題 )
内田・クレペリン検査
30分法(ここではこれを標準法または
1分法とよぶ)は周知のように広 く本邦の産業界・教育界に普及定着しており,また本検査に対する因子分析法をはじめとする多 変量解析法による理論的解明も,辻岡
(1968),辻岡・東村
(1975),東村
(1976),柏木
(1975),中塚・奥本
(1975),小笠原
(1979)らによって詳細に検討が進められてきた。 これらの所謂標 準法に対する研究とは別に,検査施行時間の節約や作業曲線部分の特徴的な出現を期待した特殊 的な目的のためにいくつかの変法も考案されている。たとえば, 阿部
(1972),柏木
(1975)な どの考案がその代表的なものであろう。ところで,そのような変法についての妥当性の検討はそ れぞれの個別的な目的に即して行われているものの,標準法との妥当性についてはいまだ充分に は究明されていないように思われる。そこで本論文では,各行の作業時間を標準法の
1分間に対 してその半分の3 0秒に短縮した検査(ここではこれを3 0秒法とよぶ)を考え,標準法とこの3 0秒 法のそれぞれの検査のもつ内部情報の相互関係に対して清水・辻岡
(1981)の交叉相面的確認的 因子分析法
(cross‑modalconfirmatory factor analysis)を適用し, この両者の関係を操作 的に解明検討することを目的とした。
およそ,内容や施行条件の異なる
2種類の検査を比較検討する場合に,次のようないくつかの 比較のレベルが考えられる。その第一は平均値による比較であり,その二は分散の比較であり,
その三は因子分析にもとづく因子負荷量あるいは因子パターンによる比較がある。そして第四水 準として因子得点による比較が考えられる。因子負荷量や因子パターンの間の一致度を知るため には因子の一致性係数
(coefficientsof factor congruence)を算出したり,視覚的には因子布 置図や因子負荷量の推移グラフが用いられる。一方,因子得点間の比較評価のためには因子得点 間の相関係数が重要な情報を提供してくれる。さらに,積極的な比較法として
2種類の検査の因 子得点間にある種の目的関数を考えその最大化(あるいは最小化)を図ることによって
2種の検 査間の因子構造の変換を考え,その結果によって両者を比較するような方法論もいくつか展開さ れている(辻岡•清水・柴田 1979, 清水・辻岡
1981など)。また,ある集団に施行された検査バッテリ ーの因子負荷量をクーゲットとして,別の集団に施行された同一バッテリーの因子負荷量を最も よく近似させる方法は一般にプロクラステス回転法としてよく知られている
(Evans1971, Hakstian 1975, Hurley and Cattell 1962, Korth and Tucker 1976,清水・辻岡
1977な ど)。同一集団に施行された異種の検査の因子得点間の相関係数の最大化を図る方法は清水・辻
‑147‑
関西大学『社会学部紀要』第
12巻第
2号
岡
(1981)の交叉相面的確認的因子分析法として本誌本号にもその方法論が展開されている。本 論文ではこの交叉相面的確認的因子分析法を用いて,標準法の因子得点体系に
30秒法の因子得点 体系をできるだけ近くなるように変換することにより,
30秒法の情報によってどれだけ標準法の 因子得点判定法が再現されうるかを検討してみた。
( 方 法 〕 (1)
2種類の使用検査
使用検査は検査実施形態(各行作業時間)の違いにより次のような
2種類のものを使用する。
〇内田・クレペリン検査
30分法(標準法):各行作業時間
1分
前半
15行作業・休憩
5分・後半
15行作業
0 30
秒法クレペリン検査
(30秒法) :各行作業時間
30秒
前半
15行作業・休憩
5分・後半
15行作業
(2)被 験 者 高 校 生
177名 。
(3)資 料
各同一被験者に約
10日間の間隔をおいて先に標準法,次に
30秒法の
2種類の検査を実施しその 検査結果のうち異常な突出や陥没など明らかに問題があると思われる作業曲線を示したものを除 外した
177名分の資料について分析を行った。
表
1標準法
(1分法)と
30秒法の各行平均作業量および標準偏差
(N=177)標準法
(1分法)
30秒 法
平 均 標 準 個 差 平 均 標 準 偏 差
1 55.71 12.66 33.40 7 .72 2 51.83 13.06 30.55 8.23 3 51.78 12.93 31.38 8.27 4 51.07 12.51 30.00 7 .67月
5 6 550.08 1.03 1111..6815 30.11 30. 77 77..4465] 7 8 , 4551.64 91..4212 111.89 12.26 1.82 28.68 28.49 29.18 7 77 ...431241
l 10 51.24 11.75 28.76 7 .22
E‑< 11 52.02 12 .10 28.70 7 .52 12 51.81 12.30 28.99 7 .34 13 53.62 12.37 29.51 6.84 14 54.44 12.13 29.28 7 .12 15 53.99 12.06 29.20 6.73 1 60.90 15 .18 34.84 8.44 2 60.18 14.73 32.09 8.13 3 60.81 13.35 33.19 8.20 4 61.05 13.63 32.80 8.09
旦 . . . .
5 60.69 13.90 32.77 8.076 60.39 12.65 32.44 7 .65
]
1, 7 8 0 58.99 58.56 57.98 57.98 11113333 . . . .83014887 31.89 32.39 31.96 31.93 '7 87 7 ....06676242主
11 57.67 13.17 31.37 7.46 r‑' 12 58.49 13.00 31.58 7 .79 13 57 .68 13.19 30.!j1 8 7 .69 14 57 .57 13.07 31. 0 7 .36 15 57 .03 13.36 31.47 7 .83前半平均作業凪
52.06 29.80後半平均作業緻
59.06 32.17全
平 均
55.56 30.98休 憩 効 果 率
1.13 1.08‑148‑
30
秒法クレペリン検査の因子分析(東村)
(4)
分 析
I:標準法と
30秒法の個別的な因子分析による比較
( a )
標準法と
30秒法の検査ごとにその特徴を比較するために次のような手順に従って比較を行う。
各検査ごとに各行平均作業量ベクトル
ml(30次 ) ,
m2(30次)および各行作業量の標準 偏差ベクトル
81(30次),島
(30次)を算出する(表
1,図
1,図
2参照)。
ここで,添字
1は標準法,添字
2は
30秒法を表わす。この表示法は以後すべての場合について も同様である。
( b ) 標準法と
30秒法を組合せて相関係数を算出すると次のような超行列
(supermatrix)が 求められる。
( 1 )
R=(R"R21
︑ ¥ ' ー
1222
/
R R
ここで,左辺の
R (60 X60次)は右辺のような分割行列をもつ超行列を表わす。
(30 X3Q
次)は標準法についての内部相関行列,
R22(30X30次)は
30秒法の内部相関行列,
R12 (30 X3Q次)は
R21(30X30次)の転置行列であり, 標準法と
30秒法との相互相関を表わす相関
右辺の
Ru行列である。
( c ) 分析
Iではこの超行列
R(60X60次)のうちの
Ruと
R22について別個に, セントロイ ド法による直交因子分析モデルによる因子分析を行った。
一 社
一
‑
‑
‑ ・ • 一
f
― ― 丈
/ 骨 . 均
':'a:::
骨 < ' : ぐ ̲a''::o
、 .
髯•
,
*
c5, ;
o
-~. .o
骨,,
o..u...‑ ‑ " ; 、 r P .
50 *55 / 6 0 65
---♦ ---+---+---+---+---- 2
た
5 30., 32.5ー
‑035I •
・ 一
曇 、 と
` 、 ヽ
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I
憂 , ,
c1::,.. ,l:>
' : ' C l
✓:
イ
̲,,.. ,....0
I
曇I
*唸.
゜
図
1標準法(*. . . *)と 30秒法 (0-•-0) の
各行平均作業量
( 注 )
30秒法は
2倍のスケールで描かれている
一 一 5
怜ー
+
一
怜‑ 9
し1f*1伶ー仕
9*
'廿ヽ谷
ー ' 忙
' メ ︑ そ ー
︑ 甚
︐ 一
︐
︑
心 曇 ヽ
* 一 曇
心'
t t
心'朴一
一
' f
曇1心It'
什 ヤ
一 ‑
+ ゜一 一 一
O•OI
O•O•O•O•O
, 0 o ・
·o•
0 . .
0.-.o.0'O•O•O•O•
0 . o
06•C•O•O
0 , . 0
‑
. o
0.o‑
5+ 一 一
図
2標準法(*…*)と
30秒
法 (0-•-0) の各行作
業最の標準偏差
関西大学「社会学部紀要」第
12巻第
2号
内部相関行列
Ru( 3 0 X30次 ) ,
R22( 3 0 X30次)について, 辻岡
(1968),東村
(1976)の一 連の研究においてすでに確立している内田・クレペリン検査の因子分析の手順に従って分析を進 める。まず,因子数はスクリーテスト (辻岡・東村
1975)および辻岡
(1968)の内田・クレペリ
ン検査の分析結果を参考にそれぞれ
6因子に決定し,次にセントロイド法による繰返し推定法に より共通性を推定し,その推定された共通性を用いてセントロイド因子負荷量行列
A1(30X 6 次)および
A2(30X
6次)を算出する(表
2・表 3参照)。
( d ) 標準法と 3 0秒法との因子負荷量間の類似性を評価するため次の公式により因子の一致性係 数
(coefficientsof factor congruence)を算出する(表
10参照, ここでは紙面の節約のため 辻岡
(1968),されている)。
本研究標準法, 本研究3 0秒法の三組の対応する
6因子間についての値のみが表示
( 2 )
30
Lflip"aiq
Cpq= i=l
心が・勾
1 j=lここで,左辺
Cpqは一般に第
p因子と第
q因子間の因子負荷量間の一致性係数を表わす。右辺の
a;p, Gjqは第
p因子あるいは第
q因子の第
j変量についての因子負荷量を表わしてい る。添字
jは第
1から第3 0までの変量を示している。すなわち本研究では標準法でも 30秒法で も各 1行を 1変量としてとりあつかった。
また,標準法と 3 0秒法の因子負荷量の推移プロフィールは図 3に示されている(図 3参照)。
( e ) 標準法と 3 0秒法の因子推定値とその相関
標準法と 3 0秒法の因子得点(因子推定値)は次のように定義され,算出される。
( 3 )
1F14 =Z1B1 =Z1R11‑1 A1 (A1R11→ A1)―百 ( 4 )
2F14=Z2B2=Z2R22‑IA2(A2R22‑IA2)―百
ここで,左辺
1F14,2F14は芝
(1972)の
F14形式の標準法, 3 0秒法の因子推定値行列を表わし 本研究での次数は
177X6次の行列となる。右辺
Z1,Z2は標準法と 3 0秒法のそれぞれの平均作業 量とその標準偏差を用いて粗点データを標準得点に変換した標準得点行列で当然その次数は
177X30次である。
B1,B2は因子得点(推定値)算出のための標準重み行列であり具体的には ( 3 )式 および ( 4 ) 式の右辺に表現されている(表 4 ・表 5 参照)。 なお, 本研究では
A1,A2はセントロ イド因子負荷量行列そのものである。
標準法と 3 0秒法の因子推定値間の相関行列
C12を算出するためには,
Biと
B2は標準重み行 列であるから
( 5 )
C12=Bi'R12B2により, これを求めることができる(表
6参照)。
(5)
分 析 n: 交叉相面的確認的因子分析法による標準法と 30秒法の比較
30
秒法クレペリン検査の因子分析(東村)
表
2標準法
(1分法)のセントロイド因子負荷量行列 (小数点省略)
1 2 3 4 5 6
h '
1 907 ‑158 097 ‑154 076 102 898 2 957 ‑156 056 ‑010 035 ‑034 946 3 944 ‑150 074 ‑043 ‑051 ‑069 921 4 955 ‑149 031 ‑038 ‑049 ‑040 941
一
且
出
5 942 ‑151 063 019 ‑025 ‑051 919 6 952 ‑152 ‑027 027 020 004 931 7 958 ‑105 018 058 ‑056 ‑078 942
] , 8 995449 ‑119 ‑072 ‑032 021 ‑041 037 ‑055 011 ‑039 046 9910 32
已
1101 996553 ‑048 ‑104 ‑066 ‑066 002696 001227 ‑036 040 99431012 967 ‑072 ‑047 ‑012 021 087 951 13 965 ‑059 ‑075 069 018 ‑008 946 14 960 ‑044 ‑048 ‑008 016 074 931 15 959 007 ‑016 103 063 ‑058 938 1 923 169 147 102 053 170 945 2 923 153 094 084 ‑023 035 892 3 938 224 054 034 ‑042 034 937 4 955 158 058 ‑007 000 ‑017 940
. .. 一
且
5 960 097 ‑015 034 ‑021 017 932 6 961 100 066 029 029 ‑056 943l
1 8 , 999566015 000454793 ‑011 ‑007 013 ‑034 ‑034 ‑016 ‑041 004334 ‑077 ‑043 ‑064 99939 1333且
1101 996651 005631 ‑060 ‑076 ‑040 ‑073 ‑052 042 ‑020 ‑034 994431E‑< 12 954 089 ‑043 ‑030 ‑063 034 925 13 955 098 ‑060 ‑045 ‑042 022 930 14 955 109 ‑054 ‑059 ‑033 063 935 15 954 073 ‑089 ‑049 ・oss ‑006 929
' I : k '
27 .213 0.389 0.112 0.094 0.051 0.104 27 .963表
3 30秒法のセントロイド因子負荷量行列 (小数点省略)
1 2 3 4 ・5 6 h•
1 888 ‑136 200 ‑032 ‑057 158 876 2 914 ‑176 143 ‑164 083 ‑021 921 3 918 ‑110 118 ‑091 ‑013 047 879 4 925 ‑136 027 ‑014 071 ‑055 883
― 且
出
5 935 ‑127 063 ‑068 ‑051 ‑022 902 6 929 ‑112 ‑028 ‑040 056 ‑085 889
屯
7 8 993372 ‑105 ‑119 ‑006 061 ‑.008132 ‑009 ‑046 ‑007 ‑045 889971•
. . . . 一
, 917 ‑072 ‑105 108 ‑108 ‑069 885已 1110 994250 ‑028 ‑185 ‑022 ‑123 006557 ‑050 ‑092 ‑052 ‑019 899158 12 934 ‑065 ‑056 008 ‑047 044 883 13 925 ‑055 ‑026 093 108 ‑024 880 14 931 ‑087 ‑136 034 ‑018 042 896 15 916 ‑066 ‑110 115 174 108 910 1 907 084 183 051 089 072 879 2 923 090 163 123 008 009 901 3 917 112 101 104 048 ‑020 878 4 937 082 013 061 ‑048 ‑091 900
団
5 6 992290 110164 ‑024 057 100259 ‑056 056 ‑032 112 9806551
1, 7 8 0 999911228667 101118663863 ‑120 ‑095 005116 ‑045 ‑060 ‑040 ‑066 ‑010 ‑110 ‑021 099 ‑048 ‑062 ‑044 080 889976009601已 1112 992410 103855 ‑003 ‑103 ‑026 ‑056 ‑076 014 002223 896171 13 930 102 002 013 ‑017 ‑034 876 14 925 070 ‑145 ‑142 034 089 910 15 918 070 ‑098 ‑052 ‑009 ‑075 866
Lk" 25.617 ‑0.372 0.287 0.174 0.139 0.122 26. 711