Willmore 曲面と平坦エンドをもつ極小曲面,
およびその可視化
永井 博之
(首都大学東京 数理情報科学専攻)
2014/1/29
概 要
n次元ユークリッド空間En内の曲面に対し,その平均曲率ベクトル場のノルムの2乗の積 分を対応させたものをWillmore汎関数 といい,その汎関数の停留曲面をWillmore曲面 とい う.Willmore曲面はある
::::::::::::::::::::
Euler-Lagrange方程式1 を満たし,特に極小曲面はその方程式を満 たす.Willmore汎関数には
::::::::共形変換2を施しても値が等しくなるという共形不変性があるので,
極小曲面Mのある反転σによる像のコンパクト化はWillmore曲面となる.実際,Kusnerは E3内のある種の連結かつ完備な極小曲面M のある反転σによる像のコンパクト化を考える ことにより,Willmore射影平面を発見した([4] [5]).ただし,一般には反転の中心において特 異点ができてしまい,滑らかな曲面になるとは限らない.
そこで本稿では,コンパクトなWillmore曲面が得られる条件[6]である「σ(M)のコンパ クト化が滑らかな曲面である」とき,すなわち, 「Mは全曲率が有限であり,任意のエンドが うめこまれていて,かつ各エンドが平坦である」場合について述べていき,実際に各エンドが 平坦である 平坦型極小曲面,ならびにそれを反転して得られるWillmore曲面をMathematica を用いて可視化した.
1汎関数の停留値を与える関数を求める微分方程式.
2リーマン多様体のある1点で交わった2曲線の接戦のなす角度が保存される変換あり,等角写像ともいわれる.
Enの共形変換は等長変換,相似変換,および反転の有限積によって表される.
目 次
1 Willmore予想とWillmore曲面 2
1.1 Willmore
予想. . . . 2
1.2 Willmore
汎関数. . . . 2
1.3 Willmore
曲面とEuler-Lagrange
方程式. . . . 19
2 Willmore曲面と平坦エンドをもつ極小曲面,およびその可視化 25
2.1
E3内の極小曲面とWillmore
曲面. . . . 25
2.2
平坦型極小曲面のエンドの数. . . . 27
2.3
平坦型極小曲面,およびWillmore
曲面の可視化. . . . 34
2.4
随伴極小曲面と平坦型極小曲面. . . . 44
参考文献 48
謝辞
本稿を執筆するにあたって,
Willmore
曲面に関する集中講義を行ってくださった熊本大学の安 藤直也先生,極小曲面の可視化にアドバイスをしてくださった岡山大学の藤森祥一先生に謝意を 表すとともに,約4
年間,不勉強な私を懇切丁寧に指導していただいた指導教員の酒井高司先生 に深く感謝したい.
2014
年1
月1 Willmore 予想と Willmore 曲面
本章は安藤 直也先生(熊本大学大学院自然科学研究科)が
2013/7/1
〜7/5
の5
日間に渡り,首 都大学東京で行った集中講義と,そこで扱った講義録[10]
を大きく参考にしている.1.1 Willmore 予想
Enの曲面に対し,その平均曲率の::::::::::::::
2
乗3 の積分を対応させたものをWillmore
汎関数 という.Willmore
予想 とは,(i) 3
次元Euclid
空間E3にはめこまれたトーラスに対するWillmore
汎関数の値は2π
2 以上.(ii) (i)
において等号が成り立つことと,はめこまれたトーラスが
3
次元球面S
3 内の::::::::::::::::Clifford
トーラス4の立体射影による像とE3の 共形変換によって移り合うことは同値.というもので,今まで様々なアプローチで研究されてきたが,
2012
年にF. C. Marques
とA. Neves
によって,この予想に対する新たなアプローチが示されたことで,この予想は解決された.1.2 Willmore 汎関数
本節では
Willmore
汎関数の定義を与え,具体例の計算やWillmore
汎関数の性質を述べていく.定義
1.1
(Willmore
汎関数)
M
:コンパクト,かつ向き付け可能な2
次元可微分多様体ι
:M −→
E3のはめこみH
:ι
に関するM
の平均曲率このとき,
W (ι)
によってι
に関するM
の全平均曲率を表す: W (ι) =
∫
M
H
2dA (1.1)
ただし,
dA
はι
によって導かれた計量に関するM
の面積要素である.W
はM
のE3 への各はめこみに実数を一つ対応させる汎関数であり,この汎関数W
をWillmore
汎関数 とよぶ.
3平均曲率をH,ガウス曲率をKと表すとき,H2−KをWillmore汎関数の被積分関数とする場合もある.
これは主曲率をκ1,κ2と表すときに,H2−K=14(κ1−κ2)2となることが理由である.
4{(x1, x2, x3, x4)∈E4|x12
+x22
= 12, x32
+x42
= 12}で与えられたS3にうめこまれたトーラス.
例
1.2
M
として種数が1
のものを考え,はめこみι :
R2−→
E3を以下で定める.ι(u, v) := ((a + b cos u) cos v
,(a + b cos u) cos v
,b sin u)) (a > b > 0)
ここで,
(2π, 0)
,(0, 2π)
によって生成されるR2の格子をΓ
とし,M :=
R2/Γ
とおくと,ι
をM
からE3へのうめこみとみなすことができる.ここで,T
a,b:= ι(M)
とおく.さて,ι
に関するT
a,b の全平均曲率を計算してみよう.そのために,T
a,bの第一基本量E
,F
,G
,および単位法ベクトルn
と第二基本量l
,m
,n
を求める.ι
u= (−b sin u cos v
,− b sin u sin v
,b cos u) ι
v= ( − (a + b cos u) sin v
,(a + b cos u) cos v
,0)
ι
u× ι
v= − b(a + b cos u)
cos u cos v cos u sin v
sin u
,| ι
u× ι
v| = b(a + b cos u)
よって,単位法ベクトル
n
は,以下のようになる.n = ι
u× ι
v| ι
u× ι
v| = −
cos u cos v cos u sin v
sin u
ι
uu= − b(cos u cos v
,cos u sin v
,sin u) ι
uv= b sin u(sin v
,− cos v
,0)
ι
vv= −(a + b cos u)(cos v
,sin v
,0)
以上より,E =
ι
u· ι
u= b
2F =
ι
u· ι
v= 0
G =
ι
v· ι
v= (a + b cos u)
2l =
ι
uu· n = b
m =
ι
uv· n = 0
n =
ι
vv· n = (a + b cos u) cos u
よって,
T
a,bの平均曲率H
は,H = En − 2F m + Gl
2(EG − F
2) = a + 2b cos u 2b(a + b cos u)
= 1 2
( cos u a + b cos u
::::::::::
+ 1 b
:)
※破線部はそれぞれ主曲率.
と表されるので,
dA = √
EG − F
2dudv = b(a + b cos u) dudv
であることに注意して,∫
Ta,b
H
2dA = 1 4
∫
2π0
∫
2π0
( b cos
2u
a + b cos u + 2 cos u + a + b cos u b
) dudv
= π 2
∫
2π0
b cos
2u
a + b cos u du + 0 + 2πa b
最右辺の第一項に注目すると,b cos
2u
a + b cos u = cos u(a + b cos u) − a cos u a + b cos u
= cos u − a
b (a + b cos u) − a
2b a + b cos u
= cos u − a b + a
2b · 1
a + b cos u
よって,以下のようになり,∫
Ta,b
H
2dA = πa
22b
∫
2π0
du a + b cos u
= πa
2b
∫
π0
du a + b cos u
T
a,bの全平均曲率が上の式の最右辺の定積分に等しいことがわかる.ここで,tan u
2 = t
とおくと,∫
Ta,b
H
2dA = πa
2b
∫
∞0
1 a + b · 1 − t
21 + t
2· 2 1 + t
2dt
= 2πa
2b
∫
∞0
dt
(a − b)t
2+ a + b
= 2πa
2b √
a
2− b
2[ tan
−1t ]
∞0
= π
2a
2b √
a
2− b
2= I (a, b) > 0
さらに,
I(a, b)
の最小値を求めてみよう.( I π
2)
2= a
4b
2(a
2− b
2)
= 1
− ( b
a )
4+ ( b
a )
2= 1
− {( b
a )
2− 1 2
}
2+ 1 4
従って,
( b
a )
2= 1
2
のとき,I(a, b)
は最小になるので,a > b > 0
より,W (ι) =
∫
Ta,b
H
2dA ≥ I (a, b)
= I ( √ 2b, b)
= 2π
2b
2b √
2b
2− b
2= 2π
2この例
1.2
をより一般的にしたものが次の定理である.定理
1.3
(塩濱−高木の定理)[9]
C
はE3内の閉曲線とし,T
CはC
の:::::::::::開管状近傍 の境界であり,はめこまれた曲面を形成する と仮定する.このとき,T
Cの全平均曲率は2π
2以上である:
∫
TC
H
2dA ≥ 2π
2(1.2)
さらに,この式において等号が成り立つことと,
T
Cがある正数b
に対しT
√2b,bと合同である ことは同値である.Nϵ(p)はRn内の多様体Mm(m < n)の点pにおける接平面に垂直な大きさϵ(>0)以下のベクトルの集合.
各点pでNϵ(p)をとり,それらの和集合を管状近傍という.特にR3内のなめらかな曲線に関してはチュー ブ状になる.(※Nϵ(p)はRn−mに同相.)
定理
1.3
の証明の前に以下の2
つの補題を用意する.補題
1.4
(Frenet-Serret
の公式)
R3内の曲線
p(s) (s:
弧長パラメータ)
について,単位接ベクトルをt
,単位主法線ベクトル をn
,単位従法線ベクトルをb
とすると,以下が成り立つ.
t
′= κn n
′= τ b − κt b
′= − τ n (κ
,τ
はそれぞれ曲線p(s)
の曲率,捩率)
(
証明)
空間曲線
p(s) (s :
弧長パラメータ)
について,単位接ベクトルt
は,t = dp ds = p
′ また,t = p
′の両辺をs
で微分すると,曲率ベクトルk
は,k = t
′= p
′′次に,単位法ベクトル
n
は,n = k
| k | = k κ = t
′κ (κ :
曲線p(s)
の曲率)
よって,t
′= κn (1)
また,従法線ベクトル
b
について,b = t × n
の両辺をs
で微分し,(1)
を代入すると,b
′= t
′× n + t × n
′= κn × n + t × n
′= t × n
′ ゆえに,t · b
′= t · (t × n
′)
= n
′· (t × t)
= 0
すなわち,
t ⊥ b
′(2)
また,| b | = 1
より,b · b
′= 0
なので,b ⊥ b
′(3) (1)
,(2)
,(3)
より,n // b
′なので,b
′= αn (α ∈
R) (4)
ここで,捩率の定義:τ = − b
′· n
より,α = αn · n
= b
′· n
= − τ (5)
よって,(4)
,(5)
より,b
′= − τ n (6)
さらに,
n = b × t
なので,両辺をs
で微分して(1)
,(6)
を用いると,n
′= b
′× t + b × t
′= − τ n × t + b × κn
= τ b − κt (7)
従って,
(1)
,(6)
,(7)
より,Frenet-Serret
の公式を得る.(
終)
補題1.5
(Fenchel
の定理)[12]
R3内の閉曲線
p(s) (a ≤ s ≤ b
,p(a) = p(b))
の曲率をκ(s)
とすると,∫
ba
κ(s)ds ≥ 2π ( ∗ )
等号は
p(s)
が平面に含まれた:::::::卵形線のときのみに成り立つ.単純閉曲線上の任意の2点を結んだ線分が単純閉曲線の外部を含まないとき,その単純閉曲線を卵形線また は凸閉曲線という.
(
証明) (Step1)
平面曲線における
Fenchel
の定理を証明する.つまり,平面閉曲線
p(s)
について,∫
ba
| κ(s) | ds ≥ 2π
( ∗∗ )
であることと,
( ∗∗ )
において等号が成り立つのはp(s)
が卵形線のときのみであることを示す.平 面曲線p(s) = (x(s)
,y(s)) (s
:弧長パラメータ)
について,単位接ベクトルt(s)
,単位接ベクトル から正方向にπ
回転させた単位法ベクトルn(s)
,曲率κ(s)
,:::::::全曲率5µ
を以下のように定められる.t(s) = p
′(s) = (x
′(s)
,y
′(s)) n(s) = ( − y
′(s)
,x
′(s)) p
′′(s) = κ(s)n(s) µ =
∫
ba
| κ(s) | ds
まず,単位接ベクトル
t(s) (a ≤ s ≤ b)
のガウス円周上での動く範囲がπ
以上であることを示す.t(s)
のガウス円周上で動く範囲がπ
より真に小さい(A)
と仮定すると,曲線p(s)
を回転して,t(s)
はガウス円周の上半円周に含まれるとしてよい.すなわち,∀ s
について,y
′(s) > 0
としてよ いので,y(b) − y(a) =
∫
ba
y
′(s) ds > 0
しかし,
p(s)
は閉曲線であり,y(a) = y(b)
より,矛盾するので,(A)
の仮定は正しくない.よって,t(s) (a ≤ s ≤ b)
のガウス円周上での動く範囲はπ
以上.ここで,閉曲線は始点をどこからとって もよいので,t(s) (a ≤ s ≤ s
1)
がちょうどガウス半円周を覆い,t(a) = − t(s
1)
となっているとし てよい.また,t(s) ⊥ n(s)
なので,n(a) = − n(s
1)
つまり,a ≤ s ≤ s
1のときも,s
1≤ s ≤ b
の ときも,n(s)
はガウス円周上をπ
以上の範囲で動き,κ
はn(s)
のS
1上の測度で,κ(s)
の絶対値 を積分すると,法ベクトルの移動総距離を表すので,∫
s1a
| κ(s) | ds ≥ π
,∫
bs1
| κ(s) | ds ≥ π
よって,以上の
2
式より,(∗∗)
が得られる.5平面曲線の曲率の正負は曲線の曲がる向きに依存するので,全曲率はκ(s)の絶対値の積分で定義する.曲率を絶 対値で扱うことにより,法ベクトルが行きつ戻りつした動き全てを含めた移動総距離を考える.絶対値をつけない 場合は,始点と終点のみに着目した距離となり,負の方向に動いたときは負の距離として扱う.
ここで,
(∗∗)
の等号が成り立つとき,すなわち,µ = 2π
とすると,単位法ベクトルn(s)
は無 駄なく動くので,κ(s)
について,以下の4
通り場合が考えられる.
(i) a ≤ s ≤ b
において,κ(s) ≥ 0 (ii) a ≤ s ≤ b
において,κ(s) ≤ 0
(iii) a ≤ s ≤ s
1において,κ(s) ≥ 0
,s
1≤ s ≤ b
において,κ(s) ≤ 0 (iv) a ≤ s ≤ s
1において,κ(s) ≤ 0
,s
1≤ s ≤ b
において,κ(s) ≥ 0
しかし,
p(s)
は平面閉曲線なので,(iii)
,(iv)
の場合は不適.また,(ii)
の場合は曲線の向きを逆 にすれば,κ(s) ≥ 0
となるので,以下,µ = 2π
,κ(s) ≥ 0
と仮定し,( ∗∗ )
の等号が成り立つとき,まずは,
p(s)
が単純閉曲線であることを背理法で示す.∃ s
0(a < s
0< b)
s.t.
p(a) = p(b)
(B)
と仮定すると,∫
s0a
|κ(s)| ds +
∫
bs0
|κ(s)| ds = 2π
∫
s0a
| κ(s) | ds ≤ π
または,∫
bs0
| κ(s) | ds ≤ π
ここで,仮に,
∫
s0a
| κ(s) | ds ≤ π
とすると,
t(s) (a ≤ s ≤ s
0)
の動く範囲がπ
以下となる.つまり,回転することで,t(s)
が上半円 周に含まれるようにできる.このとき,p(s)
は− y
方向に進まず,p(a) = p(s
0)
になり得ないの で,(B)
の仮定は正しくない.よって,( ∗∗ )
の等号が成り立つとき,p(s)
は単純閉曲線である.さらに,等号が成り立つとき,単純閉曲線
p(s)
は卵形線であることを背理法で示す.曲線p(s)
を回転し,ある点p(s
0)
での単位接ベクトルt(s
0)
を水平にしても一般性は失われない.ここで,単純閉曲線
p(s)
が卵形線ではない(C)
,すなわち,曲線p(s)
がp(s
0)
での接戦l
と交点をもつ と仮定すると,t(s
0)
:水平より,y(s
0)
は極大(
小)
または,変曲点であるが,最大または最小では ないので,∃
s
1,s
2s.t.
(y(s)
の最大値) = y (s
1)
,(y(s)
の最小値) = y(s
2)
つまり,
t(s
0)
,t(s
1)
,t(s
2)
:水平であり,n(s
0)
,n(s
1)
,n(s
2)
:垂直なので,n(s)
が無駄なく1
回転すること,すなわち,単純閉曲線であることに矛盾する.よって,(C)
の仮定は正しくなく,( ∗∗ )
の等号が成立するとき,単純閉曲線p(s)
は卵形線である.(Step2)
ここからのStep
は,本題となる「空間閉曲線に対するFenchel
の定理」の証明となる.弧長パラメータ
s
を用いて定義された空間曲線p(s)
の全曲率µ
を任意のパラメータt
で表す.曲線
q(t) (a ≤ t ≤ b
のとき,α ≤ s ≤ β)
について,単位速度ベクトルe = q ˙
| q ˙ |
をt
で微分す ると,˙
e = ( ˙ q · q) ˙
12q ¨ −
dtd{ ( ˙ q · q) ˙
12} q ˙ q ˙ · q ˙
= ( ˙ q · q) ¨ ˙ q − ( ˙ q · q) ˙ ¨ q ( ˙ q · q) ˙
32 よって,˙
e · e ˙ = ( ˙ q · q)( ¨ ˙ q · q)) ¨ − ( ˙ q · q)) ¨
2( ˙ q · q)) ˙
2(1)
一方,弧長パラメータs
を用いれば,q
の曲率κ
qは,κ
q=
√ de ds · de
ds
なので,(1)
を用いて,µ =
∫
βα
√ de ds · de
ds ds
=
∫
βα
√ de dt · de
dt dt ds ds
=
∫
ba
( ˙ e · e) ˙
12dt
=
∫
ba
{ ( ˙ q · q)( ¨ ˙ q · q) ¨ − ( ˙ q · q) ¨
2}
12
( ˙ q · q) ˙ dt
(2)
と表せ,この
(2)
は空間曲線,平面曲線どちらの場合にも用いることができる.(Step3)
R3の原点から出る単位ベクトル
n
を1
つとり,n
に原点で垂直な平面をΠ
とし,空間曲線p(s)
を平面Π
上に射影してできる平面曲線をq(s)
としたときに,全曲率µ
を(2)
を用いて,弧長 パラメータs
と単位ベクトルn
で表す.q(s) = p(s) − (p(s) · n)n
と表せる.p
′(s)
は単位ベクトルだが,dq(s)
ds
が単位ベクトルとは限らないことに注意して,::::::::
ここでは6,
dq
ds = q
s,dq
sds = q
ssとかくことにする.6q′とかくと,dq
dsが単位ベクトルであると誤解しやすいため.
q
s= p
′− (p
′· n)n
,q
ss= p
′′− (p
′′· n)n
,p
′· p
′= 1
,p
′· p
′′= 0
より,
q
s· q
s= 1 − (p
′· n)
2q
s· q
ss= − (p
′· n)(p
′′· n) q
ss· q
ss= (p
′′· p
′′) − (p
′′· n)
2ここで,
(2)
は空間曲線,平面曲線どちらの場合にも用いることができるので,Frenet-Serret
の公 式より,p
′= t
,p
′′= t
′= κk
nとして代入すると,µ(n) =
∫
ba
{ (p
′′· p
′′) − (p
′′· n)
2− (p
′· n)
2(p
′′· p
′′) }
12
1 − (p
′· n)
2ds
=
∫
ba
κ {
1 − (t · n)
2− (k
n· n)
2}
12
1 − (t · n)
2ds
(3)
と表せる.また,
κ = 0
のとき,(3)
の被積分関数が0
になるだけなので,(3)
は用いることができ る.一方,q
s(s) ̸ =
0は常に成り立たないが,p
′(s
0)
:単位ベクトルより,q
s(s
0) =
0⇐⇒ p
′// n
であり,q
s(s
0) =
0⇐⇒ p
′(s
0) = ± n
しかし,(2)
はコンパクト集合上で定義されているので,空 間曲線p(s)
からS
:::::2/ ∼
7への写像は全射でないので,n
はほとんどいたるところで定義でき,測 度零集合で(3)
は積分可能.(Step4)
µ(n)
を単位球面上の関数と考え,平均をとると空間曲線p(s)
の全曲率になることを示す.すなわち,
(3)
を用いて,以下の式を示したい.1 4π
∫
S2
µ(n) dn =
∫
ba
κ(s) ds
(#)
ここで,1 4π
∫
S2
µ(n) dn = 1 4π
∫
S2
∫
ba
κ {
1 − (t · n)
2− (k
n· n)
2}
12
1 − (t · n)
2ds dn
= 1 4π
∫
ba
κ
∫
S2
{ 1 − (t · n)
2− (k
n· n)
2}
12
1 − (t · n)
2dn
ds
なので,
∫
S2
{ 1 − (t · n)
2− (k
n· n)
2}
12
1 − (t · n)
2dn = 4π
(4)
を示せばいい.
(4)
の左辺はs
を1
つ固定した積分で,曲線p(s)
に無関係な積分なので,t
,k
n,b
をそれぞれ(1, 0, 0)
,(0, 1, 0)
,(0, 0, 1)
としてよい.7∼はy=λx (0̸=λ∈R,x,y∈S2)という同値関係.
また,
n = (u, v, w)
とすると,u
2+ v
2+ w
2= 1
なので,{ 1 − (t · n)
2− (k
n· n)
2}
12
1 − (t · n)
2= (1 − u
2− v
2)
121 − u
2= | w | v
2+ w
2S
2をu ≥ 0
とu < 0
の半球に分けると,u ≥ 0
について,u = √
1 − v
2− w
2 であり,u = f (v, w)
とおくと,領域D
で定義されたu = f(v, w)
の曲面の面積A
は,A =
∫∫
D
√ 1 + f
v2+ f
w2dvdw
=
∫∫
D
√ dvdw
1 − v
2− w
2(D = (v, w) | v
2+ w
2≤ 1)
よって,S
2の面積要素dn = dvdw
√ 1 − v
2− w
2なので,(4)
より,2
∫∫
D
| w | dvdw (v
2+ w
2) √
1 − v
2− w
2= 4π
(4)
′D
をw ≥ 0
と w< 0
に分け,極座標変換をすると,( (4)
′の左辺)
= 4
∫
π0
∫
10
r sin θ r
2√
1 − r
2r dr dθ
= 4
∫
π0
sin θ dθ
∫
10
√ dr 1 − r
2= 4 [ − cos θ]
π0[
sin
−1θ ]
1 0= 4π
よって,(#)
は示された.(Step5)
(#)
を用いて( ∗ )
を示し,( ∗ )
の等号が成り立つのはp(s)
が平面曲線のときに限ることを示す.
( ∗∗ )
より,µ(n) ≥ 2π
であり,µ(n)
の平均である(#)
の左辺も少なくとも2π
となる.これに より,( ∗ )
の不等号は示された.次に,
p(s)
の全曲率を2π
と仮定すると,µ(n) ≥ 2π
であり,かつ,その平均が2π
であること は,µ(n) = 2π
を意味する.Step1
で平面上の閉曲線は全曲率が2π
になるとき,卵形線になるこ とを証明した.従って,空間閉曲線p(s)
をベクトルn
にそって平面Π
上に射影してできた平面閉 曲線q(s)
は,p(s)
の全曲率が2π
のとき,卵形線になっている.(
これは::::::::::::::::::::::::::n
の方向によらない.8)
さて,( ∗ )
の等号が成り立つとき,p(s)
は平面曲線であることを背理法で示す.つまり,( ∗ )
の等 号が成り立つとき,p(s)
は平面曲線でないと仮定する.平面曲線でない区間s
0≤ s ≤ s
1を考え,この区間内に
s
′(s
0< s
′< s
1)
を適当に選べば,p(s
0)
,p(s
′)
,p(s
1)
は一直線上にないから,こ の3
点を通る平面Π
0がただ1
つ定まる.次に,原点を通りΠ
0に直交する平面Π
をとり,Π
0とΠ
0の交線をl
として,p(s)
をΠ
に正射影すると,Π
上に卵形線q(s)
ができるが,q(s
0)
,q(s
′)
,q(s
1)
はl
上にある.q(s)
が卵形線であることから,q(s)
のs
0≤ s ≤ s
1部分はl
上になけねばな らない.これは,すなわちp(
∀s) (s
0≤ s ≤ s
1)
がΠ
0上にあることになり,仮定に矛盾.よって,( ∗ )
の等号が成り立つとき,p(s)
は平面曲線である.従って,以上の
Step1
〜5
によって,補題1.5
は示された.(
終)
さて,本題に戻り,補題
1.4
,補題1.5
を用いて,定理1.3
の証明に入るが,証明の前にもう一 度,定理1.3
を確認しておく.定理
1.3
(塩濱−高木の定理)
C
はE3内の閉曲線とし,T
C はC
の開管状近傍の境界であり,はめこまれた曲面を形成する と仮定する.このとき,T
Cの全平均曲率は2π
2以上である:
∫
TC
H
2dA ≥ 2π
2(1.2)
さらに,この式において等号が成り立つことと,
T
Cがある正数b
に対しT
√2b,bと合同である ことは同値である.
(
証明)
滑らかな写像
γ
:R−→
E3は| γ
′| ≡ 1
,γ (
R) = C
を満たし,γ
は周期的であり,最小の周期をL > 0
とすると,∀
s ∈
Rに対して,γ(s + L) = γ(s)
,各a ∈ (0, L)
に対して,∃s ∈
Rs.t. γ(s + a) ̸ = γ(s)
ここで,C
の曲率κ(s) ̸ = 0
と仮定し,単位接ベクトルをt (t = γ
′)
とおき,単位主法線ベクトル と単位従法線ベクトルをそれぞれn
,b
とおく.(t
,n
,b
はFrenet-Serret
の公式を満たす.)
8nが集合{±p(s)|a≤s≤b}に属するときは,それに属さない単位ベクトルの列niでnに近付けていき,niに 直交するΠi上にp(s)を射影してできた平面曲線をqi(s)とすると,qi(s)はq(s)に近付いていく.そうするこ とで,卵形線qi(s)の極限であるq(s)も卵形線となる.
そして,十分小さい
r > 0
に対して,滑らかなι
:R2−→
E3をι(s, t) := γ(s) + r(cos t)n + r(sin t)b
と定義し,T
C= ι(
R2)
とおき,Frenet-Serret
の公式を用いると,ι
s= γ
′(s) + r(cos t)(τ b − κt) + r(sin t) · ( − τ n)
= (1 − rκ cos t)t − rτ(sin t)n + rτ (cos t)b ι
t= − r(sin t)n + r(cos t)b
ι
s× ι
t= − r(1 − rκ cos t)(sin t)b − r(1 − rκ cos t)(cos t)n
= − r(1 − rκ cos t)(cos t)n + (sin t)b
|ι
s× ι
t| = r(1 − rκ cos t)
= √
EG − F
2よって,
T
Cの単位法ベクトル場ν
は− (cos t)n − (sin t)b
で与えられ,ν
s= (κ cos t)t + (τ sin t)n − (τ cos t)b ν
t= (sin t)n − (cos t)b
以上より,E = ι
s· ι
s= (1 − rκ cos t)
2+ r
2τ
2F = ι
s· ι
t= r
2τ
G = ι
t· ι
t= r
2l = − ι
s· ν
s= − κ(1 − rκ cos t) cos t + r τ
2m = − ι
s· ν
t= r τ
n = −ι
t· ν
t= r
よって,T
Cの平均曲率H
は,H = En − 2F m + Gl
2(EG − F
2) = 1 − 2rκ cos t 2r(1 − rκ cos t)
ゆえに,∫
TC
H
2dA =
∫
2π0
∫
L0
(1 − 2rκ cos t)
24r
2(1 − rκ cos t)
2· r(1 − rκ cos t) ds dt
= 1 2r
∫
L0
∫
π0
1 − 4rκ cos t + 4r
2κ
2cos
2t 1 − rκ cos t dt ds
= 1
2r
∫
L0
∫
π0
1
1 − rκ cos t − 4rκ cos t
dt ds
= 1 2r
∫
L 0∫
∞0
1 1 − rκ · 1 − u
21 + u
2· 2
1 + u
2du ds
= 1 r
∫
L0
∫
∞0
du ds
(1 + rκ)u
2+ 1 − rκ
= π
2r
∫
L0
√ ds
1 − r
2κ
2= π
2
∫
L0
κ rκ √
1 − r
2κ
2ds
≥ π
∫
L0
κ ds
∵− (rκ)
4+ (rκ)
2= −
(rκ)
2− 1 2
2
+ 1 4
最後の不等式において等号が成り立つことと,
rκ ≡ 1
√ 2
であることは同値である.また,Fenchel
の定理より,(1.2)
を得ることができ,(1.2)
の等号が成り立つのはκ ≡ 1
√ 2r
,かつ閉曲線C
が卵形 線のとき,すなわち,C
がある平面上の半径√
2r
の円である.従って,T
Cがb > 0
に対しT
√2b,b と合同であることと,(1.2)
の等号成立は同値である.κ = 0
である場合もκ ̸ = 0
である集合上で の議論を行うことで同様の結果が得られる.(
終)
定義
1.6
(EnにおけるWillmore
汎関数)
M :
コンパクト,かつ向き付け可能な2
次元可微分多様体ι
:M −→
En(n ≥ 3)
のはめこみH : ι
に関するM
の平均曲率ベクトル場このとき,
W (ι)
によってι
に関するM
の全平均曲率を表す: W (ι) =
∫
M
| H |
2dA
ただし,
dA
はι
によって導かれた計量に関するM
の面積要素である.
定義
1.7
(Enにおける共形変換)
Enの共形変換をEnにおける等長変換,相似変換,反転の有限積と定義する.
このとき,次の定理が成り立つ.
定理
1.8
(Willmore
汎関数の共形不変性)[2]
X
はEnの共形変換で,X ◦ ι(M)
がコンパクトなとき,W (X ◦ ι) = W (ι) (1.3)
(
証明)
H
XをX ◦ ι
に関するM
の平均曲率ベクトル,dA
X をX ◦ ι
によって導かれた計量に関するM
の面積要素とする.共形変換は等長変換と相似変換と反転の有限積なので,それぞれの場合につ いて示せばよい.
X
:等長変換のとき,H
X= H
,dA
X= dA
なので,(1.3)
は満たされる.
X
:相似変換のとき,p ∈ ι(M ) ⊂
Enについて,X(p) = λ(p)
(R ∋ λ > 0)
とすると,H
X= 1
λ H
,dA
X= λ
2dA
なので,(1.3)
は満たされる.次に反転のとき,特に原点を中心とした半径
R
の球面に関する反転σ
とする.σ ◦ ι = R
2| ι |
2ι
( | ι |
2= ι(p) · ι(p)
p ∈ M ) d(σ ◦ ι) = R
2| ι |
2dι + R
2ι ·
− 2ι · dι
| ι |
2
= R
2| ι |
2dι − 2R
2| ι |
4(ι · dι)ι
ゆえに,