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平成24年度全国学力・学習状況調査の理科について

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はじめに

 平成17(2005)年 6 月21日の日本政府による「児 童生徒の学力状況の把握・分析,これに基づく指導 方法の改善・向上を図るため,全国的な学力調査の 実施など適切な方策について,速やかに検討を進め,

実施する」(内閣府のホームページ;経済財政運営 と構造改革に関する基本方針2005について,より抜 粋)との閣議決定により,全国的な学力テストが復 活されることになった.実際には,平成19(2007)

年度から全国学力・学習状況調査が実施されている.

この調査は,児童生徒の学力や学習状況の把握,学 校改善の支援,教育政策や指導の改善等に活用する ことを目的として,小学校 6 年生,中学校 3 年生を 対象に,文部科学省によって実施され続けている(文

部科学省のホームページ;教育振興基本計画(平成 20年 7 月 1 日閣議決定)および全国学力・学習状況 調査の概要).

 調査する教科は,基本は国語と算数・数学の 2 つ であるが,平成24(2012)年度の調査では,はじめ て理科が導入された.問題の内容は,A:主として

「知識」に関する問題と,B:主として「活用」に 関する問題,の 2 種類が出題されている.国語,算 数・数学では,A, Bがそれぞれ別々に出題されて きているが,理科では,A, Bが一体的に出題され た(文部科学省のホームページ;平成23年度以降の 全国的な学力調査の在り方に関する検討のまとめ

(平成23年 3 月31日).

 児童生徒に対する生活習慣や学習環境等に関する 調査質問紙の中には,「自然事象への関心意欲・態 度」が含まれていた(国立教育政策研究所のホーム ページ;小学校児童質問紙および中学校生徒質問 紙).

 国際的な教育調査である,国際教育到達度評 価 学 会(IEA) に よ る2003年 や2007年 の「 国 際

平成24年度全国学力・学習状況調査の理科について

-秋田県の結果を含めて-

石井 照久・佐藤彩弥佳*  秋田大学教育文化学部   全国学力・学習状況調査のうち,平成24年度に過去一度のみ出題された理科の問題を

主な対象に解析を行った結果,小学校の問題では 4 か所に(水溶液の均一性に関する出 題,虫めがねの使い方に関する出題,季節による植物の成長に関する出題,植物の受粉に 関する出題),中学校の問題では 2 か所に(動物の仲間に関する出題,花のつくりと働き に関する問題),それぞれ疑問点を検出した.具体的には,使用している教科書により説 明が異なるため正答率に影響が出るのではないかと思われるケース(3 件),現実の植物 ではあまり観察できない例を用いた出題ケース(1 件),正解が曖昧な出題ケース(1 件),

不適切な模範解答(1 件),であった.これらの出題には改善の必要があると考えられた.

また,秋田県が理科においても好成績を収めた理由についても,学習状況調査の結果等を 踏まえながら考察を試みた.

キーワード:全国学力・学習状況調査,理科,新学習指導要領,小学校教科書,中学校教 科書,実験・観察,秋田県,学力トップクラス

 2014年12月19日受理

 † Research on the national achievement test of science  for elementary school 6th grade students and junior  high  school  3rd  grade  students  in  Japan  in  2012,  including the results of Akita Prefecture

 * Teruhisa ISHII and Sayaka SATO, Faculty of Education  and Human Studies, Akita University, Akita

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数学・理科教育調査」(TIMSS調査)の結果から は(小学校 4 年生と中学校 2 年生が対象),日本国 の子どもたちの学力は全体としては国際的に上位 だが,読解力や記述式問題に課題があることが明 らかとなった(国立教育政策研究所のホームペー ジ;IEA国際数学・理科教育動向調査の2007年調 査(TIMSS2007)).もう一つの国際的な教育調査 である,経済協力開発機構(OECD)の2006年の生 徒の学習達成度調査(PISA調査)の結果では(高 校 1 年生が対象),「科学的証拠を用いること」は好 成績であるが,「現象を科学的に説明すること」に 課題がみられ,さらに「科学を学ぶことの楽しさを 感じている」割合が低水準であった(国立教育政策 研究所のホームページ;OECD生徒の学習到達度調 査(PISA)).これらのことから,科学に対する興味・

関心について日本には大きな課題があると言われて いて,“理科離れ”を食い止めることが国家的課題 でもある.

 科学技術立国日本の再建や先に述べた理科離れ現 象を見据え,さらには新学習指導要領(文部科学省,

2008a, b)において理数教育の充実が図られたこと,

などにより全国学力・学習状況調査に,平成24年度 のみ理科が導入された.詳細ないきさつは「全国的 な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議」

の「平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方に 関する検討のまとめ(平成23年 3 月31日)」(文部科 学省ホームページ)にあるので参照されたい.なお 同会議では,理科の調査を 3 年に一度程度の実施が 妥当としている.

 本研究では,平成24(2012)年度,唯一出題され た理科の問題を主な対象に解析を行った.解析の視 点は,問題内容の的確さ・難易度などである.これ らを複数の小中学校教科書との比較によって解析し た.また,秋田県が理科においても好成績を収めた 理由についても考察を試みた.あわせて学習状況調 査の結果も考察した.

解析方法:⑴平成24年度全国学力調査の理科の問題 の解析方法

 小学校,中学校の全国学力調査の理科の問題を吟 味し,問題内容の的確さ・難易度等を複数の教科書 の内容と照らし合わせながら解析を行った.

 問題は国立教育政策研究所のホームページを閲覧 した(国立教育政策研究所平成24年度全国学力・学

習状況調査の調査問題について 調査問題の内容

【小学校】理科(ホームページ),国立教育政策研究 所平成24年度全国学力・学習状況調査の調査問題に ついて 調査問題の内容【中学校】理科(ホーム ページ).今回の解析で用いる教科書は,小学校で 平成21年(2009)度から23年(2011)度まで使用さ れた教科書,中学校で平成22年(2010)度から平成 23年(2011)度まで使用された教科書となる.これ は,理科の学力調査が平成24(2012)年度に実施さ れたからである.

 秋田県で使用されている教科書は,全県において 小学校では平成21年(2009)度から23年(2011)度 まで東京書籍の教科書「新しい理科」を使用してお り,中学校でも平成22年(2010)度から23年(2011)

度までは東京書籍「新しい科学」を使用していた.(た だし,中学校では平成24年(2012)度から湯沢・雄 勝地域のみ学校図書の教科書を使用している.)

解析方法:⑵秋田県の理科の結果についての解析方

 秋田県の理科について,結果を「国立教育政策研 究所平成24年度全国学力・学習状況調査【都道府県 別】集計結果 5.秋田県」(ホームページ)より入 手し,どの設問の正答率が高いのか,低いのか,を 全国平均と比較しながら解析を行った.また,秋田 県教育委員会のホームページ「平成24年度全国学 力・学習状況調査結果について」および「平成24年 度学校改善支援プラン~「全国学力・学習状況調査 結果の分析」と「学力向上のためのヒント」~」や,

国立教育政策研究所のホームページ「平成24年度全 国学力・学習状況調査 調査結果のポイント」も参 考にした.

解析結果:⑴平成24年度全国学力調査の理科の問題 の解析結果

1)小学校の問題解析結果

 小学校の理科の出題内容は,大問 1 が「物質に関 する問題」,大問 2 が「生命に関する問題」,大問 3 が「エネルギーに関する問題」,大問 4 が「地球に 関する問題」であった.

 小学校理科の問題を,教科書の記述内容と照らし 合わせてみたところ,大問 1 の物質に関する問題の

⑶「水溶液の均一性」についての問題,大問 2 の生 命に関する問題の⑴「虫めがねの使い方」について

(3)

の問題,⑵「季節による植物の成長」についての問 題,⑸「植物の受粉の仕方」について問う問題,の 計 4 か所に疑問を感じた.以下に疑問の内容をあげ ていきたい.

①大問 1 物質に関する問題 ⑶水溶液の均一性に ついて

 この問題は,第 5 学年で学習する「物の溶け方」

に関する出題であり,主に「活用」に関する問題で ある.出題の趣旨は,「物は,水に溶けると液全体 に広がることについて,実験結果を基に水に溶けて いる物の様子を図で表すことができるかどうかをみ る」ことであり,「科学的な概念やデータを基に考 察し,結論の根拠について明確にし,理由を説明で きる」かどうかを評価の観点としている.

≪疑問点≫

 出題では,溶けている氷砂糖の様子を表した 4 つ の図の中から正解を選択させ,さらに,選んだ理由 を記述させていた.以下にあげるように,教科書に は,水に溶けている物の様子の模式図がのっている ものとそうでないものがある.このように教科書に よって記載が異なるため,使用している教科書に よって正解率が左右されたことも考えられる.

◦学校図書(2006):「みんなと学ぶ 小学校理科 5 年」…模式図なし

◦学校図書(2011):「みんなと学ぶ 小学校理科 5 年」…模式図あり

◦教育出版(2005):「小学理科 5 下」…模式図あり

◦教育出版(2011):「地球となかよし 小学理科 5」…模式図あり

◦啓林館(2005):「わくわく理科 5 下」…模式図な

◦啓林館(2011):「わくわく理科 5」…予想の段階 で溶け方の模式図があり

◦信濃教育会出版部(2005):「楽しい理科 5 年下」

…模式図なし

◦信濃教育会出版部(2011):「新編 楽しい理科 5 年」…模式図あり

◦大日本図書(2005):「新版 たのしい理科 5 下」

…模式図なし

◦大日本図書(2011):「たのしい理科 5 年-2」…

模式図なし

◦東京書籍(2005):「新編 新しい理科 5 下」…模 式図なし

◦東京書籍(2011):「新しい理科 5」…模式図記入 欄あり

*上記のうち,2005(平成17)年と2006(平成18)

年に出版されている教科書は,すべて2004(平成 16)年 2 月10日に検定済みである.また,2011(平 成23)年に出版されている教科書は,すべて2010(平 成22)年 3 月16日に検定済みである.平成23年度の 小学校第 5 学年の授業には,2011年に出版された教 科書が多く用いられていたと考えられる.そうだと しても,依然模式図の記載のない教科書を使ってい た場合,不利になったと考えられる.

②大問 2 生命に関する問題 ⑴虫めがねの使い方 について

 この問題は,第 3 学年で学習する「昆虫と植物」

に関する出題であり,主として「知識」に関する問 題である.出題の趣旨は,「虫めがねの適切な操作 方法を身に付けているかをみる」ことである.

≪疑問点≫

 出題では,サクラの花を観察する場合として,動 かせないものを観察している 4 つの様子のうち,正 しいものを選ばせていた.すべての教科書がイラス トと文章を用いて,虫めがねの使い方を,観察対象 が手で持って動かせる場合とそうでない場合に分け て(一部を除く)説明している.その中で以下にあ げるように,1 つの教科書では不適切な表記がある.

それは,動かせない観察対象を観察する場合として

「体を近づけてみる」の文章説明の上のイラスト人 物の頭の右側に両矢印がついており,あたかも頭を 動かして観察しているように描かれていることであ る.一方,問題の解答選択肢の中には,正解ではな い「虫めがねを観察するものにつけ,頭を前後に動 かす」が含まれている.もちろんこの選択肢は正解 ではないが,頭を前後に動かすと解釈できるイラス ト表記のある教科書を使って学習をしている児童に とっては,正解とも取れる選択肢である.

◦学校図書(2006):「みんなと学ぶ 小学校理科 3 年」…適切な説明とイラスト

◦教育出版(2006):「小学理科 3」…適切な説明と イラスト

(4)

◦啓林館(2006):「わくわく理科 3」…「見たいも のがうごかせないときは,体を近づけて見る」の 文章説明の上のイラスト人物の頭の右側に両矢印 がついており,不適切な説明

◦信濃教育会出版部(2006):「たのしい理科 3 年」

…「見たいものを,近づけたり遠ざけたりする.

虫めがねを,近づけたり遠ざけたりする.」だけ の文章説明であり,観察対象が動かせるものかど うかの区別がないため,やや不完全な説明

◦大日本図書(2006):「新版 たのしい理科 3」…

適切な説明とイラスト

◦東京書籍(2006):「新編 新しい理科 3」…適切 な説明とイラスト

*上記の2006(平成18)年に出版されている教科書 は,すべて2004(平成16)年 2 月10日に検定済みで ある.虫めがねの使い方について,不適切な説明の ある教科書や不完全な説明である教科書を使ってい た場合,不利になったと考えられる.なお,2010(平 成22)年 3 月16日に検定済みの教科書でも不適切な 説明の教科書の記載はほぼ同じ不適切なままであ る.

③大問 2 生命に関する問題 ⑵季節による植物の 成長について

 この問題は,第 3 学年で学習する「身近な自然の 観察」に関する出題であり,主として「活用」に関 する問題である.出題の趣旨は,「学習した植物の 成長の規則性を,他の対象であるサクラに適用した り,季節や気温の変化とサクラの成長とを関係付け て分析したりできるかどうかをみる」ことであり,

「植物の育ち方には一定の順序があることを理解し,

学習した植物の成長の規則性を,他の対象であるサ クラに適用して考察すること」を評価の観点として いる.

≪疑問点≫

 出題中にサクラの実が実っている 2 つの挿絵が描 かれている部分に疑問を感じた.多くの場合,身近 で観察できるサクラの花は,ソメイヨシノである.

ソメイヨシノの場合,普通は結実しないことのほう が多い.この問題自体の設定がおかしいのではない だろうか.

④大問 2 生命に関する問題 ⑸植物の受粉につい

 この問題は,第 5 学年で学習する「植物の発芽,

成長,結実」に関する出題であり,主に「活用」に 関する問題である.出題の趣旨は,「植物の受粉と 結実の関係を調べる実験について,結果を基に方法 を改善して,その理由を記述できるかどうかをみる」

ことであり,「条件制御の観点から実験を改善でき る」かどうか「科学的な思考・表現」ができるかど うかを評価の観点としている.

≪疑問点≫

 出題では,スイカの雌花と雄花を使い,一方には 花粉をつけ,他方には花粉をつけない,という実験 を行ったものの,両方とも実が出来てしまったので,

どのように実験を改善すればいいかを,4 つの選択 肢から選ばせるというものであった.さらに,その 選択肢を選んだ理由も記述させていた.正解の選 択肢は,「つぼみのときからふくろをかぶせておく」

であり,その理由としては「風やこん虫,鳥などに よって花粉が運ばれ,おしべの花粉がめしべの先に つき,受粉してしまうことがあるから」が解答例で あった.しかし,以下にあげるように,各教科書で は,花粉の運ばれ方の説明には相違があるため,使 用している教科書により正解率が異なってしまった ことも考えられる.

◦ 学校図書(2006):「みんなと学ぶ 小学校理科 5 年」…虫,風,鳥,水の説明

◦学校図書(2011):「みんなと学ぶ 小学校理科 5 年」…虫,風,鳥,水の説明

◦ 教育出版(2006):「小学理科 5 上」…虫,風の説

◦教育出版(2011):「地球となかよし 小学理科  5」…虫,風の説明

◦啓林館(2006):「わくわく理科 5 上」…虫,風の 説明

◦ 啓林館(2011):「わくわく理科 5」…虫,風の説

◦信濃教育会出版部(2006):「楽しい理科 5 年上」

…虫,風,人の説明

◦信濃教育会出版部(2011):「新編 楽しい理科  5 年」…虫,風,人の説明

◦大日本図書(2006):「新版 たのしい理科 5 上」

…虫,風の説明

(5)

◦大日本図書(2011)「たのしい理科 5 年-2」…虫,

風,鳥の説明

◦東京書籍(2006)「新編 新しい理科 5 上」…虫,

風の説明

◦東京書籍(2011):「新しい理科 5」…虫,風,鳥 の説明

*上記のうち2006(平成18)年に出版されている教 科書は,すべて2004(平成16)年 2 月10日に検定済 みである.また,2011(平成23)年に出版されてい る教科書は,すべて2010(平成22)年 3 月16日に検 定済みである.平成23年度の小学校第 5 学年の授業 には,2011年に出版された教科書が多く用いられて いたと考えられる.花粉が運ばれる理由を,虫と風 だけで説明している教科書を使っていた場合は不利 になったのではないだろうか.

2)中学校の問題解析結果

 中学校の理科の出題内容は,大問 1 が第 2 分野(生 物領域),大問 2 が第 1 分野(物理領域),大問 3 が 第 2 分野(地学領域),大問 4 が第 1 分野(化学領域)

であった.

 理科の問題では,大問 1 第 2 分野(生物領域)の 設問⑵「植物の生活と種類」についての問題,同じ く大問 1 第 2 分野(生物領域)に関する問題の設問

⑸「動物の生活と生物の変遷」についての問題,の 計 2 か所に疑問を感じた.

①大問 1 第 2 分野(生物領域)設問⑵

 この問題は,「両生類のからだのつくりと働き,

両生類の生活場所」についての主として「活用」に 関する問題であり,出題の趣旨は,「動物を飼育す る場面において,両生類の子と親の体のつくりと働 きや生活場所に関する知識を活用して,カエルの特 徴や成長に応じて飼育の環境を整えた理由を説明す ることができるかどうかをみる」ことであり,「科 学的な思考・表現について」を評価の観点としてい る.

≪疑問点≫

 出題では,アマガエルの子に足が生えてきたので,

水槽に石を入れ,陸地になる部分を作った理由を記 述させるものであった.その解答例が「アマガエル の子はえら呼吸をして水中で生活するが,アマガエ ルの親は肺呼吸をして(主に)陸上で生活するから.」

となっており,この解答例に疑問を感じた.それは,

以下すべての教科書(平成18(2006)年度発行)の アマガエルなどの両生類の呼吸の仕方の説明では,

肺呼吸だけでなく,皮膚呼吸についても触れられて いるからである.これは出題に関する疑問ではなく,

解答例に関するものであるが,アマガエルの親が肺 呼吸だけではなく,皮膚呼吸していることも解答例 にいれておかないと,その後の学校現場での指導に 影響が出るのではないだろうか.

◦学校図書(2006):「中学校科学 2 分野上 生命と 地球編」

◦教育出版(2006):「理科 2 分野上~観察から自然 のしくみを見つける~」

◦啓林館(2006):「未来へ広がるサイエンス第 2 分 野(上)」

◦大日本図書(2006)「新版 中学校理科 2 分野上」

◦東京書籍(2006):「新編 新しい科学 2 分野上」

*上記の2006(平成18)年に出版されている教科書 は,すべて2005(平成17)年 2 月10日に検定済みで ある.なお,2011(平成23)年 2 月 4 日に検定済み の各教科書の記載も同様である.

②大問 1 第 2 分野(生物領域)設問⑸

 この問題は,「花のつくりと働き」についての主 として「活用」に関する問題であり,出題の趣旨は,

「チューリップの花が開くには,温度が関係してい る,という考察を導くために,実験結果を分析し解 釈して,比較する実験結果の組合せを指摘すること ができるかどうかをみる」ことであり,「科学的な 思考・表現について」を評価の観点としている.

≪疑問点≫

 室温が20℃の状態ではチューリップは咲いてい て,室温が10℃の状態ではチューリップは閉じてい たので,何℃でチューリップの花が開きはじめるか を調べるためにどのように 4 つの温度を設定すれば よいか,温度を整数で 4 つ答えなさい,という出題 であった.その解答例が「11℃から19℃の間の 4 つ の温度」であれば「12℃,14℃,16℃,18℃」など,

どれでも正解である,となっていた.これではあま りにも曖昧な正解である.正解が曖昧であるのは,

そもそも出題自体が不適切だと考えられる.

(6)

解析結果:⑵秋田県の理科の結果についての解析結

 秋田県教育委員会のホームページ「平成24年度全 国学力・学習状況調査結果について」および「平成 24年度学校改善支援プラン~「全国学力・学習状況 調査結果の分析」と「学力向上のためのヒント」~」

などにより,秋田県の状況や結果を調べた.また,

国立教育政策研究所のホームページ「平成24年度全 国学力・学習状況調査【都道府県別】集計結果 .石 川県」「平成24年度全国学力・学習状況調査【都道 府県別】集計結果 .富山県」および「平成24年度全 国学力・学習状況調査【都道府県別】集計結果 .福 井県」も参考にした.

 全国学力テストの理科の平均正答率上位都道府 県の順位(図 1)では,小学校では秋田県が 1 位,

中学校では 1 位福井県,2 位富山県,3 位石川県,

4 位秋田県であった(学力テスト(全国学力・学習 状況調査)小学校2012年(平成24年度)都道府県ラ ンキングのホームページ,学力テスト(全国学力・

学習状況調査)中学校2012年(平成24年度)都道府 県ランキングのホームページ).全体的な秋田県の

結果の平均正答率は全国平均を大きく上回り,きわ めて良好であった(抽出調査のため,中間の値であ る).

 秋田県の小学校におけるそれぞれの出題問題ごと の課題としては,物理の分野の出題では,「ゴムを ねじる回数についてグラフから分析して,予測する こと」,「電磁石の強さを変える要因について確かめ る実験を,条件を制御しながら構想すること」,「水 は,温度によって状態が変化する性質を,物を動か す「エネルギーの見方」として適応すること」に課 題があった.

 生物の分野の出題では,「学習した植物の成長の 規則性を,他の植物に適用して考える」問題につい ては,相当数の児童ができていたが,「植物の受粉 と結実の関係を調べる実験について,結果を基に方 法を改善して,その理由を記述する」問題に課題が あった.

 地学の分野の出題では,「方位磁針の名称の理解」

を問う問題については,相当数の児童ができていた.

課題がある出題内容としては,「方位磁針の適切な 操作の技能に関する知識の定着」,「天気の様子と気 温の変化との関係についてデータを基に分析し,そ の理由を記述する」問題であった.

 国立教育政策研究所のホームページ「平成24年度 全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント」お よび「平成24年度全国学力・学習状況調査の結果に ついて(概要)」によると,中学校理科の全国の結 果の全体的な傾向として,「観察・実験などにおい て,定量的な取り扱いをすること」,「日常生活や社 会の特定の場面において,理科に関する基礎的・基 本的な知識や技能を活用すること」,「基礎的・基本 的な知識や技能を活用して,観察・実験の結果の分 析解釈,仮説の検証のための観察・実験の計画,他 者の計画や考察を検討し改善する」ことに課題が見 られた.

 秋田県の中学校における各分野の状況は,第 1 分 野の物理的領域では,「電力に関する知識を活用し て,LED電球の省エネ効果を考える」問題につい ては,相当数の生徒が理解しているのに対し,「豆 電球と発光ダイオードを用いた電流回路をつくる実 験の方法を検討し改善して,科学的な根拠を基に正 しい実験方法を説明する設問」や「電力量の理解」

問題に課題があった.

 第 1 分野の化学的領域の出題では,「『いくらでも 図 1 平成24年度全国学力調査上位都道府県

小学校順位

順位 国語 A 国語 B 算数 A 算数 B 理科

秋田 秋田 秋田 秋田 秋田

福井 富山 石川

福井

石川 福井

石川 石川 福井 石川

青森 福井 青森 東京 青森

香川 香川 富山

京都 京都 富山

中学校順位

順位 国語 A 国語 B 数学 A 数学 B 理科

秋田 秋田 福井 秋田 福井

福井 福井 秋田 福井 富山

富山 富山 富山 石川 石川

山形 山形 石川 富山 秋田

群馬 石川 静岡 岐阜

群馬 群馬

(7)

食塩水を濃くできるわけではない』という他者から の指摘を分析・解釈しながら,他者の考えの根拠を 説明する」こと,「『水槽の中の液体が食塩水の 1 層 なのか,上層が水,下層が食塩水の 2 層なのか』を 検証する実験の計画」に課題があった.

 第 2 分野の生物的領域では,「両生類であるカエ ルの呼吸の仕方と生活場所の理解」と,「理科に関 する知識や技能を日常生活に活用する」問題,「実 験の目的に合わせて予想を基に観察・実験を計画す る」という問題に課題があった.

 第 2 分野の地学的領域での出題では,「地層観察 の技能」を問う問題については,相当数の生徒がで きていたのに対し,「地層の広がり方について,観 察地の図と観察結果から分析・解釈する」問題,「過 去の火山活動が活発だった時期の回数についての他 者の考察を検討する場面において,地層のつながり について認識することと,他者の考えを検討し,改 善すること」に課題があった.

考察

 平成24年度に,過去一度だけ出題された全国学力 テストの理科の問題を解析したところ,6 か所に強 く疑問をもった.以下にそれぞれについて考察する とともに,秋田県の理科の結果についても考察する.

さらに,理科教育の問題とされる点について,改善 策を考えてみたい.

⑴ 平成24年度全国学力調査の理科の問題の考察 1)小学校の問題解析について

①大問 1 物質に関する問題 ⑶水溶液の均一性に ついて

 この問題は全国的に課題のある主に「活用」に関 する問題で,全国正答率54.4%,秋田の正答率65.9%

(国立教育政策研究所のホームページ;平成24年度 全国学力・学習状況調査【都道府県別】集計結果  5.秋田県)であった.

 使用していた教科書によって記載が異なるため,

水に溶けている物の様子の模式図を児童が見たこと があるか,ないかによって正答率は変化してくると 考えられる.秋田県では東京書籍の教科書「新しい 理科」を使用しており,この教科書には模式図を記 入する欄もあったため,正答率も比較的高かったと 考えられる.指導する教師が,教科書の内容をよく 吟味し,児童の理解に必要な図があれば教科書に記

載されていなくても追加して示すなどをしながら授 業を展開する必要があると考えられる.さらに,出 題においては,各教科書の記載を十分に吟味するこ とも必要だと考えられる.

②大問 2 生命に関する問題 ⑴虫めがねの使い方 について

 この問題の全国正答率は65.0%,秋田の正答率は 76.2%(国立教育政策研究所のホームページ;平成 24年度全国学力・学習状況調査【都道府県別】集計 結果 5.秋田県)であった.秋田県内のすべての 小学校では東京書籍の教科書を使っていたため,解 答の際に問題となる,動かせないものを観察すると きの「頭を前後に動かす」の説明は教科書になかっ たため,児童の多くが正解していたのだと思われる.

 この出題も,使用している教科書によって差が生 じると思われる.また,誤答を導くような教科書の 記載は,すみやかに改めるべきだと考えている.

③大問 2 生命に関する問題 ⑵季節による植物の 成長について

 全国正答率はア 73.0%,イ 88.4%であり,秋田 の正答率はア 76.3%,イ 90.6%(国立教育政策研究 所のホームページ;平成24年度全国学力・学習状況 調査【都道府県別】集計結果 5.秋田県)であった.

 この問題の目的である,植物の成長の規則性を,

他の対象に適応することについては,全国では相当 数の児童ができているということであったが,設問 の中にあるの「サクラ」についてどうしても納得が いかない.

 「サクラ」といえば,「ソメイヨシノ」を連想する のが普通である.しかし,ソメイヨシノ(染井吉野)

学名:Prunus×yedoensis Matsumuraは,日本原 産種のエドヒガン系の桜とオオシマザクラの交配で 生まれたサクラであり,ほぼすべてがクローンから なるサクラである.そのため,ソメイヨシノ同士は 通常結実しない.まれに,実をつけることはあるが,

それは他のサクラの間との受粉によるものであり,

その場合でも種子はできないと言われている.実際 に日本全国の小学校で見られるサクラは,多くがソ メイヨシノなのが一般であろう.そうなるとサクラ の実がたわわにできているのを日常生活の中で児童 が観察することは少ないと思われる.たしかに,ソ メイヨシノでも花が散った 3 ~ 4 週間後に,注意深

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く観察するとほんのわずか小さな実がぽつりぽつり できているのを発見できる.しかし,それは普通に 生活していたのでは気付く事は難しい.そのため,

ソメイヨシノだろうサクラの木で,実が実っている 2 つの挿絵(実り始めの挿絵とかなり大きく実って いる挿絵)は不自然なのではないだろうか.出題の 改善方法としては,ヒマワリやタンポポなど,身近 にある植物を対象とした問題にすることが考えられ る.

④大問 2 生命に関する問題 ⑸植物の受粉につい

 全国正答率は32.1%,秋田の正答率は40.3%(国 立教育政策研究所のホームページ;平成24年度全国 学力・学習状況調査【都道府県別】集計結果 5.

秋田県)であった.この問題は,正答率が特に低かっ た問題でもある.

 教科書により,花粉の運ばれ方の説明に違いがあ るため,指導する教師は足りない部分を補って授業 する必要があるだろう.また,問題の出し方も,「ど こで育ったのか?」などの実験の条件を明確に提示 すべきである.

2)中学校の問題解析について

①大問 1 第 2 分野(生物領域)設問⑵

 全国正答率37.4%,秋田の正答率48.3%(国立教育 政策研究所のホームページ;平成24年度全国学力・

学習状況調査【都道府県別】集計結果 5.秋田県)

であった.

 解答例は「アマガエルの子はえら呼吸をして水中 で生活するが,アマガエルの親は肺呼吸をして(主 に)陸上で生活するから」であるが,全ての教科書 の両生類の呼吸方法の説明は,「肺呼吸と皮膚呼吸」

の 2 つについて触れている.そのため,解答例に「肺 呼吸」だけではなく,「皮膚呼吸」についても入れ ていいのではないだろうか.しかし,この問題の全 国正答率は,37.4%と決して高くはない.改善方法 として,「日常生活の中で知識を活用すること」に 課題があると考えられるため,授業の中で,実際に カエルを飼育する,見せるなどをして,興味を持た せ,活用できるような力をつけさせる工夫をするこ とが必要であると考える.

②大問 1 第 2 分野(生物領域)設問⑸

 全国正答率は33.9%,秋田の正答率は36.3%(国 立教育政策研究所のホームページ;平成24年度全国 学力・学習状況調査【都道府県別】集計結果 5.

秋田県)であった.この問題は,正答率が特に低かっ た問題でもある.

 問題の改善方法として考えられることは,「4 つ の温度」と限定するのではなく,「あなたなら何度 に設定するか」や,花が開いている温度と閉じてい る温度の幅を狭くするように改変した出題にした方 が,生徒自身も答えやすくなるのではないだろうか.

3)使用教科書と正答率の関係について

 教科書で不足している内容は教師が埋め合わせる ことにより影響を抑えている部分が多いのではない かと考えている.教科書に明記されている内容で あっても,正答率が低い問題もあるので,教師の指 導の内容が重要である.しかし,中学校であれば,

専門の教師が指導するが,小学校であると必ずしも 理科が専門の教師が理科を教えるとは限らない.さ らに,すべての出版社の教科書の内容に精通すると いうのは難しい部分もあるのではないだろうか.そ のため,理科に強い教科の教師を中心に,学校全体 で協力しながら,学力向上に努めていく必要がある のではないだろうか.

 今後も,使用している教科書によって差が出てし まうのは避けなければならない.それには,教師側 と教科書出版会社,双方の努力が必要と思われる.

4)出題に際して注意されるべき事と実験・観察重 視の姿勢から

 技術社会立国日本の再建,理科離れの防止,など を背景に学習指導要領(文部省,1998a, b)から新 学習指導要領(文部科学省,2008a, b)へと移行し,

小中での理科の授業時間・内容ともに強化された.

新学習指導要領施行後,理科教育に関するすべての 問題が解決されたわけではなく,たとえば知識を問 う問題に対する正答率は高いものの,活用を問う問 題に対する正答率は依然低いままである.理科を学 ぶ意欲や学んで楽しいといった満足感もあまり高く ないことが学習状況調査から判明している.

 これらの背景を受けて,初めて理科が出題された わけだが,その出題には,これまでに述べてきたよ うに,教科書による記載の違い(3 件),現実の植 物ではあまり観察できない例を用いた出題(1 件),

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正解が曖昧な出題(1 件),不適切な模範解答(1 件),

と問題点が散見された.模範解答が不適切だと思 われるものを除くと 5 か所の難点があったことにな る.もちろん,出題不適切が 5 か所だけ,という肯 定的な見方もあり得ると思うが,日本全国一斉で行 うテストなので,もっと精度をあげてほしいもので ある.

 理科のテストは 3 年に 1 度くらい,が目安のよう であるので,近い将来,また出題されるのだと思う.

出題者側には,その際には,教科書を十二分に吟味 して出題してほしい.

 理科での出題の形式として,知識を問う問題と活 用を問う問題を一体化して出題した平成24年度のス タイルは,問題を解く児童生徒にとっては受けやす かったと考えている.調査時間については,小学校 理科では40分,中学校理科では45分であり,これに ついての児童生徒の反応は,解答時間が「やや足り なかった」または「全く足りなかった」と回答した 児童生徒の割合は,小学校理科では18.7%,中学校理 科では20.9%であった(国立教育政策研究所のホー ムページ;平成24年度全国学力・学習状況調査 調 査結果のポイント).このデータを見ると概ね調査 問題量は適切であったようである.今回の出題は,

多少の問題点はあったものの,教育現場でどのよう なことに留意して指導を行っていけばよいのかの指 標ともなっている(国立教育政策研究所のホーム ページ;平成24年度全国学力・学習状況調査の結果 について(概要)).

 平成24年度に出題された理科の問題では,全てが,

実験・観察に沿った出題となっており,理科教育で 実験・観察が重要なことを再確認できる出題であっ た.では実際の現場では,スムーズに実験が実施さ れているのだろうか?

 たとえば,秋田県の小学校の教育現場では,秋田 大学教育文化学部わかる理科教育推進ワーキンググ ループ(2008)の報告にあるように,理科の実験に 不安をいただいている小学校教師が少なからず存在 する.また,石井ら(2012)の報告にあるように,

中学校理科や高校生物の現場で指導上難しい事項と して,実験の技術に関するものがとりあげられてい る.また,石井と松崎(2014)では,秋田県の高校 生物において,あまり実験が行われていない実態が 報告されている.このように,理科教育の現場では,

実験がスムーズに実施されてきている,とは言い難

い状況である.

 実験・観察は重要であることはもちろんだが,さ まざまな障害(たとえば時間・設備などの不足など)

によって,困難な場合は,櫻庭ら(2013)が示唆し ているように,実際に実験を行うものと,そうでな いもの(教科書を使って説明だけするもの)に大別 して指導するのも方法である.さらに,国,地方自 治体や大学が行ってきている出前授業や訪問授業を 活用する方法もある.後述するように,秋田県は,

出前授業や訪問授業を有効に活用してきている.ま た,大学等で開発された教材(三浦,2002;石井・

篠木,2009)や教材のシーズ(石井・菅原,2010)

を利活用するのも,現場での実験・観察の補てんと して効果があると考えられる.

⑵ 秋田県が理科においても好成績を収めた理由に ついての考察

 秋田県が好成績を収めた理由を学習状況調査の観 点から考察を行った.また,なぜ中学校のみ 4 位な のかという原因を,1 位 2 位 3 位の県と比較し検討 した.さらに使用教科書,生活状況調査とからめて 考え,何を強化すればよいかを 4 つの県の結果を比 較しながら考察した.

 また,今回 1 位であった小学校理科で強化すべき ところはどこかを考察した.

1)秋田県が好成績を収めた理由の考察~学習状況 調査の視点を含めて~

 学習状況調査の結果を石川県,富山県,福井県,

全国平均と秋田県で,それぞれ比較し,秋田県が好 成績を収めた理由について考察を行った.成績が良 かった原因の 1 つとして,秋田県教育委員会のホー ムページ「平成24年度全国学力・学習状況調査結果 について」および「平成24年度学校改善支援プラン

~「全国学力・学習状況調査結果の分析」と「学力 向上のためのヒント」~」にも述べられているよう に,児童・生徒共に「基本的な生活習慣のよさ」が 挙げられるのではないだろうか.上位 4 県はそれぞ れ,起床時間・寝る時間が決まっている確率が高い ことが分かった.1 日の生活のリズムを確立させる ことが,学習習慣を確立させることにもつながって いるのではないかと考える.

 「学習塾(家庭教師含む)で勉強しているか」「家 で自分で計画を立てて勉強しているか」「家で学校

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の復習をしているか」という質問に対して,秋田県 は小学校,中学校共に全国平均や前述の上位 3 県よ りも「している」と回答した児童・生徒が多いとい う結果であった.

 また,秋田県の特徴の 1 つとして,「普段の授業 では,自分の考えを発表する機会を与えられている と思うか」「普段の授業では学級の友達との間で話 し合う活動をよく行っていると思うか」「普段の授 業で本やインターネットを使ってグループで調べる 活動をよく行っているか」という質問に対して「し ている」と回答した児童・生徒も全国的に非常に高 い割合であった.これらの取り組みは,自分の考え を自分の言葉で表現する力をつけることにつなが り,科学的な思考力を身につけることにつながって いると考える.これらの活動を行っているためか,

「自分の考えを他の人に説明したり,文章に書いた りすることは難しいと思うか」という質問に対し,

「難しいと思う」と回答した児童・生徒の割合は低 くなっていた.

 また,秋田県の児童・生徒は「自然の中で自然観 察をしたことがあるか」という質問に対して「ある」

と回答した児童・生徒の割合が他県より非常に高い ことが分かった.秋田県における豊かな自然が子ど も達の学習の場になっていると言える.

 全国的に理科の正答率が高い児童・生徒の傾向と して,体験・学習・活用に関する質問での,「自然 の中であそんだことや自然観察をしたことがある」

「理科の授業で自分の考えをまわりの人に説明した り発表したりしている」と回答した児童・生徒の方 が理科の正答率が高い傾向が見られるように,秋田 県では以上のように回答した児童・生徒の割合が全 国的に見ても非常に高いことが今回の高得点につな がった一因になっていると考えられる.

 また学校に対する調査での「児童・生徒は熱意を もって勉強していると思いますか」という質問に対 して「していると思う」と回答した割合も小学校で は上位 4 県の中では最も高く,中学校でも 2 番目に 高い値であった.家庭学習に対する調査結果からも,

秋田県の児童・生徒は学習する意欲の高い児童や生 徒が多いことが分かる.これも,秋田県が好成績を 収めた理由であると考えられる.

 秋田県が全国学力・学習状況調査の結果でいつも 上位なのは,これまで述べてきたこと以外にも,県

内の先生達の日々のたゆまぬ努力を忘れることはで きない.秋田大学「あきたの学力と教員養成に関す る調査プロジェクト」の報告書(2009)が指摘する ように,教員研修による先生達の自己研鑽によるス キルアップは,県内の児童生徒の学力を着実に押し 上げている.秋田県教育委員会のホームページ「平 成24年度全国学力・学習状況調査結果について」で も「小学校では,理科の指導として補充的な学習の 指導を行った割合が全国に比べて高い」と報告され ていて,指導力の高さがうかがえる.さらには,秋 田県が行っているさまざまな教育プロジェクトの効 果も出ているのだと思われる.

 また,秋田県は,大学教員等による出前授業や大 学に児童生徒を引率して受ける訪問体験授業を活発 に実施している県なのかもしれない.それは,小学 校,中学校,高校へ出前授業に行った報告書が沢山 出ていることからうかがえる(一部をあげると,出 前授業に関係する報告が秋田県教育庁義務教育課

(2008,2009,2010),秋田大学教育文化学部 大 学・学校パートナーシップ実施委員会(2007),秋 田大学教育文化学部わかる理科教育推進ワーキング グループ(2008),石井(2011),石井(2013b)お よび科学技術振興機構(2010)よりなされている).

2)中学校が第 4 位であった理由についての考察~

学習状況調査の視点を含めて~

 1)で記述したように,全国的に肯定的な回答が 目立つ秋田県であるが,全国的な結果と同様に小学 校から中学校になると肯定的な回答の割合が大きく 低下している質問内容が多い.特に,中学校で課題 であると考えられるものは以下の通りである.

 「家で学校の宿題をしているか」「理科の勉強は好 きか」「理科の勉強は良く分かるか」「理科の勉強は 大切だと思うか」という質問に対する答えは,小学 校から中学校にかけて大きく低下している.また「理 科の授業で学習したことは,将来社会に出た時に役 に立つと思うか」という質問への答えも低下し,中 学校では 4 県中 3 番目に低い結果となっている(平 成24年12月秋田県教育委員会 学力トップレベルの 子ども~全国学力・学習状況調査の結果から~の ホームページ).

 学習する意欲が小学校の時より中学校になると低 下してしまっていることが,4 位であった理由の 1 つではないだろうか.

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 また,「解答時間は充分であったか」という設問 に対して,「十分であった」と回答した生徒の割合 は全国平均を下回るという結果であった.時間内に 問題を解く力をつけさせる必要があると考えられ る.

 学校に対する調査では,「理科の指導として,前 年度までに家庭学習を与えたか」「理科の指導とし て,前年度までに長期休業期間中に自由研究などの 家庭学習を与えたか」という質問に対しての答えの 割合が,中学校で 1 位である福井県の約半分の割合 で留まっていた.秋田県は小学校,中学校共「学習 塾(家庭教師含む)で勉強しているか」「家で自分 で計画を立てて勉強しているか」「家で学校の復習 をしているか」という質問に対して「している」と 回答した児童・生徒が多いという結果であったため,

自主的に学習させることにプラスして,教師が身に 付けてほしい内容を意図的に課題として与えること を増やすことによって小学校,中学校それぞれの成 績を伸ばすことができるのではないだろうか.それ によって,中学校に上がると,小学校の時と比べ,

学習に対する意識が低下してしまうことも防ぐこと につながると考えられる.

3)中学校での使用教科書について

 前述の上位 3 位の,中学校で平成22年~平成23年 に使用していた教科書を調べたところ,福井県では 全域で東京書籍の教科書を使用しており(㈱福井県 教科書供給所のホームページ;平成22~23年度中学 校教科書採択地区別一覧),富山県では大日本図書 と東京書籍の教科書を使用しており(富山県のホー ムページ;使用教科書一覧),石川県では東京書籍 と啓林館の教科書を使用していた(石川県教育委員 会のホームページ;平成22~23年度使用中学校用教 科書採択結果一覧).

 東京書籍の教科書を使用している県や地域が多 く,富山県で大日本図書を使用していた地域でも平 成24年度から東京書籍を使用するようになってい る.

 秋田県では,平成24年度から,湯沢・雄勝地域で のみ,学校図書の教科書を使用するようになってい るが,それまではすべて東京書籍の教科書を使用し ていた(現在も湯沢・雄勝地域を除くとすべて東京 書籍の教科書を使用している).4 県の使用教科書 に差がないため,結果にはあまり影響を与えていな

いと考えられる.

⑶ 理科教育の課題の解決のために

 理科教育で重要視されている実験を,授業で沢山 しかも円滑安全に実施するためには,現職教師のス キルアップも重要な要素である.その目的のために は,普段の研修の他に,全国で実施されている教員 免許状更新講習を利用するのも一つの方法である.

 たとえば,秋田県では,秋田大学を中心に教員免 許状更新講習を毎年実施してきているが,その中 には,実験を実際に体験する講習,たとえば石井

(2013a)の報告にあるような講習,も数多く含まれ ている(秋田大学教員免許状更新講習推進センター

(2010,2011,2012,2013,2014).もちろん,免許 の更新は10年に一度なので,講習の義務は正規の教 員として勤務中に最大で 3 回(=3 年)だけである が,それでも最新の科学の実験や設備に触れること は,現職の教師にとってとても自信につながると考 えられる.

謝  辞

 秋田県内の小学校と中学校で使用されている理科 の教科書については,秋田大学教育文化学部の石橋 研一先生にいろいろとご教示いただきました,ここ に深く御礼申し上げます.

文  献

秋田県教育委員会「平成24年度学校改善支援プラン

~「全国学力・学習状況調査結果の分析」と「学 力向上のためのヒント」~」:http://www.pref.

akita.lg.jp/www/contents/1301033496254/files/

H24plan.pdf

秋田県教育委員会「平成24度全国学力・学習状況 調査結果について」:http://www.pref.akita.lg.jp/

www/contents/1390892985245/files/24gaikyou.

pdf

秋田県教育庁義務教育課(2008):平成19年度理科 支援員等派遣事業実施報告書.

秋田県教育庁義務教育課(2009):平成20年度理科 支援員等派遣事業実施報告書.

秋田県教育庁義務教育課(2010):平成21年度理科 支援員等派遣事業実施報告書.

秋田大学「あきたの学力と教員養成に関する調査プ ロジェクト」(2009):秋田大学教育フォーラム『秋

参照

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・A地点ともう一方の地点は,どちらも午前9時から午後2時まで気温が上がり続け

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指導する先生方へ 正答率 宮城県46% 全国51%