スポーツ競技のジェンダーイメージが競技選択に及ぼす影響に関する研究
工藤由依
*
・三輪壽二**
(2020 年 8 月 31 日受理)
A study on Effects of gender image for selecting sports to play
Yui K
UDO* and Syuji M
IWA**
(Accepted August 31, 2020)
*茨城大学大学院教育学研究科(〒 310-8512 水戸市文京 2-1-1; Graduate School of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).
**茨城大学教育学部(〒 310-8512 水戸市文京 2-1-1;College of Education, Ibaraki University, Mito 310- 8512 Japan).
はじめに
私たちは生まれる前からジェンダーという「性別」に左右されている。生まれてからも「男であ るか,女であるか」を常に意識し,社会に期待された「男らしさ,女らしさ」を内在化していく。ジェ ンダーによる観念は無意識のうちに行動や振る舞いに影響を与える。私たちは常にジェンダーとい う性別による社会通念に晒されている。特に,スポーツに対するジェンダーステレオタイプは多く 見られ,ジェンダー的表現のみならず競技人口やスポーツの参与に大きく影響していると考えられ る。そのため,本研究ではスポーツにおけるジェンダーに注目し,ジェンダーイメージが競技選択 にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的とし,調査を行った。
問題と目的
ジェンダーとは「生物学的性別とは異なり,社会のなかで作られた男性像・女性像といった『社 会的・文化的に形成された性別』」と定義されている(内閣府男女共同参画局)。ジェンダーは社会 や文化によって異なり,ジェンダーが取り扱われる領域は様々で,その分野は幅広く多くの研究が なされている。そのなかでも,スポーツは元来より強さやたくましさを示す手段として用いられて おり,男性らしさの象徴と捉えられてきた。そうした観念は根強く,現代でも多くの競技・種目が 男性向けであると認識されている。笹沼(
2005
)は,「スポーツは男性を主体とし,女性を従属さ せるという社会の性役割を確認し,それを再生産する装置となっている」と述べている。このよう に,スポーツの分野はジェンダーの再生産装置と呼ばれるほどジェンダーバイアスがかかりやすい 領域であると考えられている。スポーツ競技者のジェンダー観に関する先行研究において,森(
2006
)は,性別分業システム,男女の能力差,スポーツ実践時の女性への手加減の有無の
3
項目の調査において,男子選手は一般 男子学生や女子選手と比べて,男性優位な性差別的ジェンダー観を持つ傾向が高く,反対に女子選 手はその傾向が最も低いとしている。男性は性別分業的価値観を持つ傾向が高く,女性はスポーツ などを行なっている人ほどこの価値観を持つ傾向は低くなっている。この研究から,ジェンダーバ イアスや女性差別の強いスポーツにおいて,スポーツを行う男性にとってはこうしたジェンダーが 優位に働き,利点が多かったため,ジェンダーステレオタイプを強める要因となったと考えられる。またその一方で,スポーツを行う女性はこうしたジェンダーバイアスにさらされ不利益を被ること が多いために,反発心や不快感が強く働き性差別的ジェンダー観が低くなると考えられる。しかし,
この研究で用いられた質問項目は
3
項目のみで,正確にジェンダー観を測っているとはいえない。また,中村(
2007
)は,女子学生において体育会系女子学生とそれ以外の女子学生を比較した 調査で「体育会系女子学生は従来の性別役割分業的意識が高く保守的なジェンダー観を持っている」としている。この研究では,体育会系女子学生の結婚観や家族観が保守的であるとされたが,スポー ツにおけるジェンダー観との関連が認められなかった。この研究は,個人の家族観や結婚観,社会 に対する意識におけるジェンダー観,すなわち,ジェンダーに対する考え方をもとにした調査であっ た。そのため,ジェンダーに対する意識を測るものではなく,日常の事柄をどの程度性別に当ては めて考える傾向にあるかまでは明らかにされなかった。しかし,性別による違いの感じ方,すなわ ち,性差観は,無意識のうちに個人の行動やふるまいに多く現れるものである。このことから,ジェ ンダーに関してどういった考えを持っているかという意識的な側面だけでなく,実際に個人が持っ ている性差観を見ることで個人のジェンダー観が分かると考えられる。したがって,日常において 性別による差をどの程度感じているか,また,考えや行動をどの程度性別に関連させているかを測 定することができる尺度を用いて調査をする必要があると考えられる。そこで,本研究では,大学 生を対象に競技者と非競技者の性差観に差があることを明らかにすることを一つの目的とする。
性差観は社会のなかでジェンダー規範や,ジェンダーバイアスが存在していることから,性別に よる傾向の違いがあると考えられる。ジェンダーは,しばしば男性優位の考え方が多いことから,
女性よりも男性のほうが固定的性差観が強いと考えられる。これを仮説
1
とする。次に,「スポーツはジェンダーの再生産装置」と言われることから,スポーツに関わるものほど 性差観が強いと考えられる。したがって競技経験がある者のほうが,競技経験がない者よりも性差 観が強いと考えられる。これを仮説
2
とする。また,競技経験がある者でも競技年数が長い者のほうが性差観が強いと考えられる。これを仮説
3
とする。最後に,身体的性別(セックス)と競技のジェンダーイメージが不一致の者は競技を選ぶ際や行 うときに,「女の子でサッカー」「男の子でフィギュアスケート」といった固定的ジェンダー観にさ らされると考えられる。にもかかわらず,その競技を選択するのであるから,競技のジェンダーイ メージと性別(セックス)が不一致な者は,性別(セックス)とイメージが一致している者よりも 性差観が低いと考えられる。これを仮説
4
とする。仮説
1
:男性のほうが女性より性差観が強い仮説
2
:競技経験がある者のほうが競技経験がない者よりも性差観が強い 仮説3
:競技経験がある者でも競技年数が長い者のほうが性差観が強い仮説
4
:競技のジェンダーイメージと性別(セックス)が不一致な者は,性別(セックス)と イメージが一致している者よりも性差観が低いまた,山本(
2009
)はジェンダー適性を尋ねたジェンダーイメージの研究で,「男性に適したス ポーツ」は「体闘系(ボクシング,サッカー,野球など)」,「投擲種目(円盤投げなど)」,「野外種 目(ボートなど)」,「武道種目(空手道など)」,「個人種目(走り幅跳びなど)」であり,「女性に適 したスポーツ」に「ネット型球技種目(卓球など)」,「表現採点種目(フィギュアスケート,シン クロナイズドスイミングなど)」であると示した。つまり,パワーや身体接触を必要とする競技は 男性向き,美や芸術性を伴うものは女性向きという認識があるといえる。かつて,女性は見られる 対象として,女性らしさを強調する競技や,女性の魅力を損なわない競技が女性のスポーツとされ てきた。女性の身体に負担が大きすぎるという理由で禁止されていた競技や,激しい接触を伴う競 技は男性のスポーツとして考えられていた。現在もこうした競技ごとのジェンダーイメージが変わ らずに保たれていると考えることができる。近年は,女性がスポーツを行うことに対するジェンダー バイアスは少なくなっており,プロの女子選手の活躍もあって,ジェンダーイメージがなくなって いる競技もあるが,サッカーや野球,ラグビー,新体操,フィギュアスケートなどジェンダーバイ アスによって作られた競技のジェンダーイメージは根強いと考えられる。こうした競技やスポーツ のジェンダーイメージは,女性が競技主体者として積極的に参加することやスポーツを始める際の 競技選択に大きな影響を与えていると考えられる。そして,こうした競技のジェンダーイメージは 競技人口の男女比率にも影響しており,特に女性にとって大きな障害となっているのではないかと 予測される。男女の区別なく個人が行いたい競技を自由に選択できるように,こうしたジェンダー イメージは取り払われるべきである。しかし,ジェンダーとスポーツに関する先行研究では,競技 選択にジェンダーイメージがどのように影響しているか,また,そうした競技のジェンダーイメー ジがどのようにして獲得されるのかに関する研究は行なわれていないようである。したがって,本 研究ではスポーツにおけるジェンダーイメージをどこから学び獲得するのかについて,また,その ジェンダーイメージが競技選択の際にどのような影響を与えるのかについて明らかにしたい。これ が本研究の二つ目の目的である。方 法
1.調査方法
本研究では質問紙法及び面接法を用いた。本調査は競技者と非競技者の性差観の傾向とスポーツ のジェンダーイメージとの関連を明らかにするため,四つの仮説を立て質問紙調査を用いて検証を 行った。さらに,競技選択のきっかけや理由,影響したものなどについて質問項目を設定し,スポー
ツにおけるジェンダーイメージが競技選択に及ぼす影響について明らかにするために半構造化面接 を行った。質問紙の構成は
1.
フェイスシート(性別,年齢),2.
競技経験の有無と競技歴(小学校 から現在までに経験した競技とその年数),3
.性差観尺度(伊藤,1997
)の3
項目からなる。1.
フェ イスシートの性別欄は男性,女性,その他の選択肢を設定した。また,面接調査では,最初に男性イメージのスポーツ,中性イメージのスポーツ,女性イメージ のスポーツの欄を設けた表が書いてある紙とペンを渡して,面接協力者がその場で思い浮かべた競 技をジェンダーイメージごとに分類し記載するよう求めた。教示文は「あなた自身が考えるスポー ツで,男性が行なうスポーツ,女性が行なうスポーツ,男女どちらも行なうスポーツをそれぞれ書 いて下さい。」であった。競技がすぐに思い浮ばない者には
5
分後に競技一覧の書いてある紙を提 示して,分類分けを求めた。この作業終了後,ジェンダーイメージごとに分けた分類の基準や分類 方法について質問した。さらに,事前に用意していた10
個の質問項目(表1
)をもとに質問を行い,面接協力者の発言で気になる回答を深めていく半構造化面接を行なった。面接内容は面接協力者の 同意の下,録音とメモを取り記録した。
2.被調査者
調査対象者は茨城大学の学生
1
~4
年生,計278
名。大学の講義前,及び講義後に質問紙を配布し,その場で回答を求め回収したものが
179
名,知人に依頼し後日回収したものが33
名,グーグル フォームアンケートのネット回答で回収したものが66
名である。被調査者の内訳は,男性105
名,女性
171
名,その他2
名で,平均年齢は19.6
歳(18
歳~24
歳)である。全回答者278
名のうち,無回答項目を含む回答者,
1
項目に複数の回答があった回答者16
名を除外した。最終的に,262
名が有効回答となった(男性99
名,女性162
名,その他1
名)。さらに,本調査の面接受諾者のうち小学校,中学校,高校,大学のうち
1
年以上の競技経験の ある26
名,競技経験のない者2
名の合計28
名に面接を実施した。面接協力者の内訳は男性9
名,女性
18
名,その他1
名で平均年齢は20.73
歳(19
~22
歳)である。面接調査者には面接調査の 前に面接内容と倫理的配慮の説明を行なった。1. 小学校にあったスポーツ少年団やクラブチームを覚えている限り教えてください 2. 中学校,高校にあった運動部をそれぞれ教えてください
3. 男子だけ,女子だけの部活動,と部活ごとの男女比を教えてください
4. ご自身の競技経験について,競技を選んだきっかけや経緯について教えてください 5. 競技を選ぶ際,ご自身に最も影響を与えたものは何ですか
6. 競技選択の際に,ご家族には相談しましたか
7. ご家族が行っていた,または現在行っている競技を教えてください
8. 競技によっては競技人口の男女比が大きく異なる競技もありますが,その理由や原因を考え
るとしたらどんなことが考えられると思いますか9. 競技のジェンダーイメージの分類は何を基準にしたか,またその理由を教えてください 10.
競技のジェンダーイメージはいつごろから持っていましたか表
1 面接調査の質問項目
3.調査時期と手続き
本調査は
2019
年11
月下旬から12
月中旬にかけて行われた。紙媒体とネット媒体の質問紙を作 成し,調査を実施した。紙媒体とネット媒体の内容はどちらも同じである。紙媒体の質問紙は大学 の2
クラスの講義後に,集合形式で実施した。また,知人や友人に個別配布し,配布した質問紙は 後日回収した。回答依頼時に口頭と文書で質問紙と倫理的配慮の説明を行なった。ネット媒体の質 問紙は,紙媒体と同じ内容の質問紙をグーグルフォームで作成し,友人や知人に配布,拡散し実施 された。回答依頼時の質問紙の説明は文書のみである。回答はいずれも無記名で,面接調査受諾者 のみ記名してもらった。回答の所要時間は5
~10
分程度であった。また,面接法については,面接時間を
30
分から1
時間と設定し,面接者1
人,被面接者1
人の 半構造化加面接を行なった。4.性差観尺度
ジェンダーを捉える認知的枠組みを測定する尺度(伊藤,
1997
)である。社会,家庭,職場な ど日常で想起される事柄を性別とどれくらい結び付けて考えるかを測定する尺度である。しかし,この尺度は
20
年前に作成されたものであるため,現代にそぐわない表現や回答者がイメージし難 い項目がいくつかあった。そのため,現代において表現が古いと思われる項目を,同程度の内容を 確保した上で,心理学研究者1
名,心理学専攻学部生2
名の合計3
名で検討し,表現と言い回し を変更して用いた。全30
項目それぞれについて「1
,そう思う」「2
,どちらかというとそう思う」「3
, どちらかというとそう思わない」「4
,そう思わない」の4
件法で回答を求めた。結 果
1.性差観尺度の分析
仮説
1
において,男性と女性それぞれについて性差観の尺度得点を算出し,平均値の差の検 定を行なった(表2
)。性差観の尺度得点は得点が低いほど性差観が強い。検定の結果,男性はM=75.55, SD=14.53
,女性はM=80.28, SD=13.87
であり男性のほうが尺度得点が低かった。有意水 準1
%で有意差が見られた(t=-2.63, df=259, p<.o1
)。したがって,男性は女性に比べて,性差観が 強かった。これにより,仮説1
は検証された。次に,仮説
2
において,競技経験がある者と無い者それぞれについて性差観の尺度得点を算出し,平均値の差の検定を行なった(表
3
)。検定の結果,競技経験がない者はM=75.81, SD=14.84
,競技 経験がある者はM=78.99, SD=14.34
で,競技経験がある者のほうが少し性差観尺度が低かったが,表
2 男性と女性の性差観の尺度得点の平均値と標準偏差
性別
M SD
男性(N=99)
女性(N=162)
75.55 80.28
14.53
13.87
有意差は見られなかった(
t=-1.16, df=260, p>.05
)。したがって,仮説2
は棄却された。仮説
3
において,競技年数が1
~4
年のA
群,5
~8
年のB
群,9
~12
年のC
群それぞれの性 差観の尺度得点を算出し,平均の差の検定を行なった(表4
)。分散分析の結果,A
群はM=84.34, SD=14.88
,B
群はM
=82.79, SD=13.88
,C
群はM=75.65, SD=13.59
で,有意水準1
%で有意差が見 られた(F(2,227)=8.73, p<.01
)。性差観尺度得点はA>B>C
の順で,性差観はC
,B
,A
の順に強かっ た。つまり競技年数が長くなるほど性差観が強くなる。多重比較(Tukey HSD
)の結果,有意差1
% でA
群とB
群,A
群とC
群の間に有意差が見られ,A
群とB
群の間には有意な差は認められなかった。よって,
A>C
,B>C
から,競技年数が10
年前後と長い人のほうがそれより短い人に比べて性差観が強かった。この結果から,仮説
3
は検証された。この仮説
3
の検証結果から,競技年数が長いことが性差観に影響を与えることがわかった。し たがって,競技年数を10
年を基準にして,競技年数を9
年以下の群と10
年以上の群の二つの群 に分けてt
検定による平均値の差の検定を行なった(表5
)。検証の結果,9
年以下の群はM=81.52, SD=14.77
,10
年以上の群はM=76.39, SD=13.38
で,10
年以上の群のほうが性差観が強かった。有 意水準1
%で有意差が認められた(t=2.75, df=228, p<.01
)。仮説
4
において,群分けは,競技経験者230
名のうち競技歴不明の者1
名を除いた230
名を,性別と競技のジェンダーイメージが一致している,すなわち男性が男性イメージのある競技を,女
表
3 競技経験のある者とない者の性差観の尺度得点の平均と標準偏差
競技経験
M SD
なし(N=31)
あり(N=231)
75.81 78.99
14.84 14.34
表
4 1
~4
年,5~8
年,9~12
年3
群のそれぞれの性差観尺度得点の平均と標準偏差競技年数
M SD
A(N=32)
B(N=71)
C(N=230)
84.34 82.79 75.65
14.88 13.88 13.59
表
5 競技年数が 9
年以下の群と10
年以上の群の性差観の尺度得点の平均と標準偏差競技年数
M SD
9
年以下(N=120)10
年以上(N=110)81.52 76.39
14.77
13.38
性が女性イメージのある競技を行っていた者を一致群,性別と競技のジェンダーイメージが不一致 である,すなわち男性が女性イメージのある競技を,女性が男性イメージのある競技を行っていた 者を不一致群,中性的なイメージ,すなわち男性女性どちらのイメージもある競技を行っている者 を中性群とした。経験競技が複数ある者は,競技年数の一番長い競技のジェンダーイメージを採用 し,各群に分けた。また,男性イメージの競技,女性イメージの競技,中性的イメージの競技の分 類は,山本(
2009
)のスポーツのジェンダーイメージに関する研究を基準とした。それぞれの性 差観の尺度得点を算出し,3
群間の平均値の差の検定を行なった(表6
)。分散分析の結果,一致群 はM=77.36
,SD=14.57
,不一致群はM=82.3
,SD=12.43
,中性群はM=81.51
,SD
=14.52
,で一致群,中性群,不一致群の順に尺度得点が低かった。しかし,有意差は認められなかった(
F(2,227)=2.76, df=227, p>.05
)。したがって,仮説4
は棄却された。2.競技選択のきっかけと理由
小学校,中学校,高校,大学に分け,それぞれで新しく始められた競技のきっかけと理由から,
競技のジェンダーイメージが競技選択に与えた影響を調査した。
小学校で競技を始めた者は
26
名中22
名である。そのうち5
名が小学校で複数の競技を行って いたことから,小学校で行っていた競技の合計は28
個(全体の競技の種類数ではなく,行われて いた競技の合計数)であった。小学校で競技を始めたきっかけとして最も多かったものは,「親に 勧められた」「兄がやっていた」という家族の影響であり,28
個ののうち14
個が家族の影響で始め られていた。次に,「友人やコーチに誘われた」という家族以外の周りの人がきっかけとなって始 めた競技が7
個であった。それ以外のきっかけとして,「テレビで見て」「選手がかっこいい」といっ たメディアが2
個,環境がきっかけとなった競技が1
個であった。残りの4
個の競技はきっかけ を覚えていなかった。この結果から,28
個のうち21
個が家族や周りの身近にいる人から直接影響 を受けて始められたことが分かった。また,競技を実際に選んだ理由を見ると,15
個が家族と周 りをきっかけとし,そのまま流れで始めた,または親から半ば強制的に始めたという理由が最も多 かった。次に,興味があったからという理由が7
個であった。その他「やりたい競技があったから」「競 技の選択肢が少なかった」という環境が2
個,「かっこいい」「良いイメージがある」という憧れや イメージが2
個,きっかけも理由もわからないのが2
個であった。この結果から,競技を自ら「選 ぶ」というよりも,興味の有無に関わらず家族や身近にいる周りの影響から,言われたものや身近 にあったものを始めることが多かった。中学校では,競技を行っていた者は
26
名中24
名。そのうち小学校から同じ競技を継続した者 が7
名,中学校で新しく始めた者は17
名であった。そのうち1
名が中学校で競技を2
個行っており,表
6 一致群と不一致群と中性群それぞれの性差観尺度得点の平均と標準偏差
イメージ
M SD
一 致(N=143)
不一致(N=40)
中 性(N=47)
77.36 82.3 81.51
14.57
12.43
14.52
17
名が中学校から始めた競技の合計は18
個であった。競技を始めたきっかけは,家族が7
個,家 族以外の周りの人が6
個,「かっこいい」という憧れ・イメージが1
個,特にないが4
個であった。また,競技を選んだ一番の理由として最も多くあげられたのは,「やりたい競技や小学校で行う環 境がない」あるいは「男子のみ女子のみのチームしかない」「部活の選択肢が少ない」という環境 であり,
17
名のうち10
名は環境がないことを理由として消去法で競技を選んでいた。小学校とは 異なり中学校では部活動があるため,部活動で競技を行うことが前提として考えられている。した がって,やりたい競技がある一方で,部活動としてその競技を行えない場合に「初心者でも行える もの」という経験の有無から,消去法で競技を選んでいた。また,環境を理由とした10
名のうち「や りたいと思っていた競技がなかった」とした2
名は,親をきっかけとしてその競技をやりたいと思っ ていた。その他「友達が多かったから」「先生から招集された」という周りの人を理由とした者が3
名,楽しそうといった興味で選んだ者が
3
名であった。「初心者が多い競技」や「初心者でもできそう な競技」といった経験の有無を理由として選んだ者が2
名であった。この結果から,小学校と同様に,家族と周りという身近にいる人がきっかけとして競技を選択していた。しかし,やりたい競技が部 活になかったことから,他の競技を家族や友達などの周りの人から勧められた,誘われたというこ とがきっかけとなっており,競技選択以前に環境がないという理由が大きく影響していた。
高校では,競技を行っていた者が
26
名中18
名。そのうち高校で新しく競技を始めたものが6
名で,複数の競技を始めたものはいなかった。きっかけとして
5
名が家族以外の周りの人(友人や先輩)をあげた。残り
1
名は中学校の授業で一度体験したことがあったという経験がきっかけであるとし た。競技を選んだ理由は中学校と同様に「やりたい競技の女子チーム,男子チームがない」「競技 のレベルが合わない」という環境であり,4
名が環境を理由に消去法として他の競技を選んでいた。また,
1
名は「先輩の姿がかっこいい」という憧れやイメージから,もう1
名は興味から競技を選 んでいた。小学校,中学校とは異なり,新しく競技を始める者よりも今まで行っている競技を高校 でも続ける者が増えた。この理由として,「経験者にはかなわない」「新しい競技ではついていけない」といった回答があった。また,進路や学業の面からスポーツ自体を行なわなくなる,あるいは辞め る者もいた。こうした理由から,高校で新しく競技を始める数は小学校,中学校に比べて減少した。
また,きっかけが友人ではなく先輩に変わっていた。
大学では,
26
名中15
名が競技を行っていた。そのうち6
名が大学で新しい競技を始め,7
個の 競技が新たに始められている。このうち6
個が,家族以外の周りの人(先輩)を,残り1
個がTV
を見たというメディアがきっかけであった。競技を選んだ理由は「楽しそう,新しいものをやりたい」という興味が
5
個に加え,「初心者でもできそうなもの」という経験の有無も理由として挙げられ た。また,かっこいいという憧れ・イメージが1
個だった。中学校や高校との違いとして環境が1
個で減り,競技への興味を持って始められているということがあげられた。以上の結果から,個人が競技を選択する際には,小学校においては家族や友人の周りの影響が,
中学校では環境が,高校では周りの影響が,大学では興味が大きく影響していた。
3.競技選択における環境的側面
面接調査の中で,男性と女性で異なった回答が見られたのがスポーツを行なう環境であった。主 に中学校の競技選択において,「選択肢が少なかった」「女子でできるものが限られていた」という
回答が見られた。特に,小学校や中学校で野球やサッカーを行なっていた女性は,身近に女子チー ムがないということや女子の競技人口が少ないということから,大多数が男性で構成されているス ポーツ少年団やクラブチームの中で体験した困難や,競技を続けることの環境的困難を経験してい た。女性が男性多数の中で競技を行うことに関して,「周りからどう見られているか」や「扱いの違い」
といった困難が伴っていた。また,特に男性の競技人口が多いサッカーや野球においては中学校や 高校で女子チームがないということや,男子だけのチームに入ることができないといった,続ける 環境がないことを理由に,学校外のチームを探す必要性が出る,競技を辞めざるを得ないというよ うに,競技の継続が困難となっていた。実際に面接協力者に行なった質問で,中学校,高校にあっ た部活動を尋ねたところ,
28
名のうち女子の野球部があったという回答はなかった。また,女子サッ カー部が中学校にあったと回答した者はおらず,高校は中学校よりも数は増えたが,通っていた高 校にあったと答えたものは4
名であった。4.競技のジェンダーイメージの形成
面接において,面接協力者にジェンダーイメージごとに競技を分類するよう依頼し,何を基準に 分けたかを尋ねた。面接協力者の回答から小学校,中学校時代と現在で競技のジェンダーイメージ が異なるものがあり,またそのイメージの獲得方法も異なっていた。小学生時代の競技のジェンダー イメージは,周りの友達が行なっている競技やクラブチームの男女比から,漠然と男の子のスポー ツ,女の子のスポーツをイメージしていた。
また,幼い頃からテレビや漫画などに触れる機会が多かった者や小学校で競技を行っていなかっ た者はメディアからも競技のジェンダーイメージを形成することが分かった。中学生になると,部 活動の男女比や男子だけ女子だけの部活動が存在することから,競技のジェンダーイメージを持っ ていた。中学校の部活動は男女の区別があることから,小学校で漠然と持っていたイメージをより 意識するようになったという回答があった。中学生ではこれまで知らなかった競技のジェンダーイ メージが新しく加えられるのみで,イメージの変化はなかった。さらに,小学生の頃に持っていた 競技のジェンダーイメージと比較すると,イメージが増えており,変化している者もいた。面接協 力者が現在持っている競技のジェンダーイメージは,これまでの経験に加えて,主にテレビという メディアから競技の情報を得ることで増える,プロ選手の活躍や報道でジェンダーイメージが変わ るということがわかった。小中学生と異なるのはジェンダーイメージが変化した競技があったとい うことであった。
これらの結果から,競技経験者は小中学生では友人や部活動といった身近にある環境や実体験か ら競技のジェンダーイメージが形成され,高校,大学に上がるにつれてメディアなどの情報からイ メージが強化される,あるいは変化していく傾向があることが分かった。また,競技の経験がない 者や競技年数の少ない者,テレビのスポーツ中継や番組をよく見ていた者は,早い時期からメディ アによるジェンダーイメージの形成が行なわれていた。また,特に違いがはっきりと出たのが野球 とサッカーであった。小中学生時代の競技のジェンダーイメージは,ほとんどの者がサッカーと野 球を男性のイメージに分類していた。しかし,
2011
年のワールドカップで女子サッカーが優勝し て以来,「なでしこジャパン」という愛称でメディアに取り上げられることやテレビ中継されるこ とが増えた。そのため,サッカーのジェンダーイメージは小中学生時代の男性のイメージから,現在ではどちらも行なう中性のイメージへと変化していた。一方で,野球は女子野球の存在を知らな い者だけでなく知っている者も,高校野球やプロ野球などテレビで目にするのは男性が多いという 理由から,現在においても野球が男性のスポーツというイメージは変わらなかった。こうしたサッ カーと野球の違いを見ると,メディアによって競技のジェンダーイメージが強化されたり,変化し たりすることがわかった。
考 察
1.質問紙調査の仮説検討
本研究において,質問紙調査から二つの仮説が支持された。一つは「性差観に男女差があること」
である。これは,男性優位な社会のなかで男性がその利益を得ることが多くある一方で,女性はこ うした社会の不利益をこうむることが多くあり,また,ジェンダーバイアスやジェンダーステレオ タイプに対抗する立場に立つことが多くあることから,男性は性差やジェンダーに対して女性より も関心を抱く機会が少ないことが要因であると考えられる。このため,男性のほうが女性よりも性 差観が強い傾向にあったと考えられる。
二つ目は「競技年数が性差観に影響を与えること」が明らかとなった。これは,競技年数が長い ほど,筋力や体力という面において男性と女性の身体的な力の差を目の当たりにする機会が多くな るために,男女の違いを意識するようになることが考えられる。このため,競技が
10
年以上と長 い人のほうが性差観が強くなることが明らかになった。一方で,競技経験の有無に性差観の有意差は見られず,競技経験の有無は性差観に影響しないこ とが本調査で検証された。しかし,本調査では小学校,中学校,高等学校,大学の期間を合わせて
1
年以上の競技経験がある者を競技経験のある群に,それ以外のものは競技経験がない群に分けた。その結果,競技経験のない群が
31
名と予想以上にデータ数が少なかった。さらに,競技のレベル や実施頻度についても個人差があるため,競技経験者といってもどれほど競技に深く関わっていた かにも個人差が見られた。このことから,競技経験のない群のデータ数を増やし,また競技年数に 加え競技のレベルと実施頻度についても再考した上で,競技者と非競技者の群分けを行って再度検 証する必要があると考えられる。また,競技のジェンダーイメージは性差観には影響しないことがわかった。調査の問題として小 学校から始めた競技を大学まで続けた者もいれば,小学校,中学校,高等学校,大学それぞれで異 なる競技を行っていた者もいた。そのため,競技のジェンダーイメージをはっきりと明確に分ける ことができなかったことと,不一致群の割合が少なかったことが挙げられる。したがって,競技の ジェンダーイメージの分ける基準について再考すると共に,不一致の群のデータ数を増やして再度 検証する必要があると考えられる。
しかし,調査の結果として,そもそも性別とジェンダーイメージが不一致の競技を行っている者 の割合が
230
名中40
名と少なく,一致群と中性群は合わせて190
名と全体の8
割以上を占めていた。このデータから競技のジェンダーイメージと性差観に関連は見られなかったが,競技のジェンダー イメージと競技選択には何らかの関係があると考えられる。
2.競技選択のきっかけと理由
本調査の結果から,小学校で始める競技は親や兄妹といった家族や,友人やその親など周りにい る人が競技を始めるきっかけとして多かった。その中には,本人の意志がなくそのままなんとなく 始めたという回答もあった。また,興味を持ったものなど,本人が「やりたい」と思ったものを始 めたという回答も見られたことから,小学生の頃に始める競技には,本人が持っている競技のジェ ンダーイメージはほとんど影響しないと考えられる。一方で,こうした家族や周りの影響から,小 学校ではスポーツ少年団やクラブチームに所属する,スクールに通うといった形で競技を行うため,
競技選択には環境も影響していると考えらえる。また,部活動とは異なり,親の承諾がないと始め られないということや,親の送り迎えなど家族のサポートも必要になるため,親の持つ競技のジェ ンダーイメージが競技選択に与える影響は大きいと考えられる。実際に,面接協力者の中に,半強 制的に競技を始めたという者もいれば,女の子だが父親がサッカーのコーチをしていたから競技を 始めたというケースもあった。このように,親がやって欲しいと望んでいる競技や,親がやってい た競技に関しては特に競技選択に影響を与えると推測される。
中学校では,小学校とは異なり部活動に変わるため,親の承諾やサポートは小学校と比べると必 要度が低くなったことに加え,自らの意志で決めることができるということから,家族ではなく友 人といった周りの影響から競技選択をすることが多くなったと考えられる。また,小学校でスポー ツを行っていなかった者や継続できない環境にある者にとっては,経験の有無が大きく影響し,初 心者でもできそうな競技を基準として選ぶ傾向があった。この点を考えると,友人と一緒の部活動 に入ることで,新しい競技,始めての競技を行うことへの不安が緩和されるのではないかと考えら れる。
一方で,中学校で競技を選んだ理由に関して,最も多かったのが消去法で選んだというものであっ た。競技選択が消去法であったと回答した者はみな,やりたい競技の「女子チームがない」「男子チー ムがない」といったもので,競技を行う環境がない,そもそも部活数が少なく「選べる競技の選択 肢がとても少なかった」と述べる者が多かった。そのため,実際に行っていた競技とやりたかった 競技が一致していない者も多く,納得した上で競技を選んだわけではなかった。そして,特に女性 でこうした回答が多かった。そのため,中学校で実際に行なっていた競技は環境として与えられた ものから選ぶため,環境が競技選択に与える影響が大きいと考えられる。しかし,面接協力者のう ち
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名の女性が,女子サッカーがないため消去法で部活を選んだが,その際の選ぶ基準として「テ ニスは女の子がやるイメージだからやりたくなかった」という競技のジェンダーイメージを理由に 選ばなかったと述べていた。このように競技を選ぶ際に,選ぶ理由としてではなく,選ばない理由 として競技のジェンダーイメージが用いられることがあるのだ。したがって,競技選択の1
つの基 準として,競技のジェンダーイメージは影響していると推測することができる。高校では,競技を新しく始めるものが少ないため,初心者でもやれそうなものという理由が多く 見られた。また,中学校と異なり,競技選択のきっかけが友人ではなく先輩となっていることであっ た。特に,高校は進路や学業の成績などを考慮して,部活動には入らず勉学に専念するも増えるこ とから,高校でスポーツを行う人の数そのものが減るということが考えられる。そうした状況の中 で,特に人数を必要とするチームスポーツでは部活勧誘などが高校に比べて盛んに行なわれている。
そのため,友人よりも,そうした上級生からの勧誘をきっかけに競技を始めるという回答が見られ
たと考えられる。また,中学校と比べて高校では部活動の種類が多くなるということから,環境に よる影響は中学校に比べると少ないようである。しかし,サッカーと野球は中学校と異なり,体格 の面で男子の中で混ざって行なうということがより困難になることや,女子チームの少なさからよ りいっそう続けることが困難になっている。そのため,高校の競技選択においても中学校と同様に 環境や経験から選ばれており,競技選択において競技のジェンダーイメージ以前に環境が大きく影 響していると考えられる。
大学は,中学校高校に比べて,規模が多く人も多くなることから,競技も多くなる。また,大学 ではサークルや同好会などスポーツに限らず幅広い団体があるため,大学から新しいことを始める 人は多いと考えられる。そのため,「違う競技をやってみたいという興味から」新しい競技を始め る者が多かったのではないかと考えられる。また,高校同様に,競技を始めるきっかけは先輩がもっ とも多く,これも上級生による勧誘が大きいと考えられる。中学校高校の違いとして,消去法で選 ぶ者がおらず,興味や憧れを持って始めた者がほとんどであった。そのため,面接協力者のうち競 技選択にジェンダーイメージが影響している者はおらず,興味関心に基づき,自ら好んで選ぶとき には競技のジェンダーイメージはほとんど影響しないと考えられる。
3.競技選択とジェンダーイメージ
本調査の結果として,競技のジェンダーイメージは小学生では親や友達,自分の行っている競技 から漠然としたイメージを持っており,野球とサッカー以外ははっきりと意識化されたものではな かった。中学生になって部活動による男女の区別からはっきりと意識されるようになり,イメージ が確立された。しかし,このイメージは固定的なものではなく環境やメディアを情報源として変化 し強化されていた。競技のジェンダーイメージの形成過程と競技選択のきっかけや理由を見ていく と,小学校において競技選択に影響を与えたのは家族と周りの人であった。また,小学校ではクラ ブチームやスポーツ少年団に入るため,親の承諾が必要といったことから,小学生の頃の競技選択 においては,本人が漠然と持っている競技のジェンダーイメージが直接影響を与えるというよりも,
家族,主に親が持っている競技のジェンダーイメージが競技選択に影響を与えていると考えられる。
そして,ジェンダーイメージの形成過程を見ていくと,現在の持っているジェンダーイメージは 自身の経験以外ではメディアによって変化することがほとんどであると考えられるため,親や大人 が持つ競技のジェンダーイメージはメディアによる影響を受けていると考えられる。このメディア によるジェンダーイメージは,テレビのスポーツ中継やメディアの注目度,活躍選手の性別,や露 出度,すなわち目に触れる機会が多いかどうかである。男女ともに目にすることが多い競技に関し ては男性や女性のどちらかにイメージが偏ることは少ないが,メディアの中継や報道などで取り上 げられている競技が男性,女性のどちらかであると,片方の性別に偏ったイメージが形成され,競 技のジェンダーイメージになってしまうと考えられる。
一方で,競技のジェンダーイメージは中学生の時期に意識化され確立されると考えられる。そし て,そのイメージの情報源となるのが部活動や友人という身の周りにある情報や環境がほとんどで ある。そのため,スポーツのジェンダーイメージは与えられた環境に大きく左右され,また,地域 や周りの人が持っている競技のジェンダーイメージが競技選択に影響を与えるということが考えら れる。また,中学校の部活動は男女によって分けられているものが多く,サッカーや野球のように,
男子にはあって女子にはない,女子にはあって男子にはない部活があるなど,スポーツを行うため に必要な環境自体が整っていない。この環境自体が,固定的なスポーツのジェンダーイメージによっ て作られたものであると考えることもできる。そのため,中学校においては,男性イメージのある 競技が女性に選ばれず,女性イメージのある競技が男性に選ばれないという,競技のジェンダーイ メージが競技選択に与える以前に,競技を選ばないのではなく選べないという環境が大きく関わっ ていると考えられる。そして,そもそもこの環境自体が固定的なジェンダーバイアスによって作ら れたものであり,それを受け入れざるを得ないというのが競技選択の現状であると考えることがで きる。つまり,ジェンダーイメージによって選択する以前に,私たちはジェンダーイメージによっ て形成されたスポーツという枠組みの中に組み込まれているために,無意識のうちにジェンダーイ メージに沿った選択をしている,あるいはジェンダーイメージに沿った選択をせざるを得ないので はないかと考えられる。
高校や大学では,メディアという大きな情報源を得ることによって,中学校で確立されたイメー ジが変化する,あるいはイメージどおりに強化されていく。経験によって確立されたイメージがメ ディアによって強化されると,男女ともに行なっていることを知ったとしても変化するのが難しい と考えられる。一方,メディアで知った競技は変わりやすく,また経験とメディアで得たイメージ が異なっている競技に関してもイメージは変わりやすくなる。すなわち,メディアは新しい競技の 発信源であると共に,すでに持っている競技のジェンダーイメージを強化,または弱化する役割を 果たしているといえる。
したがって,競技のジェンダーイメージは直接的には競技選択に影響を与えないが,親の持って いる競技のジェンダーイメージが間接的に影響していると考えられる。また,そうした親や大人の ジェンダーイメージはメディアから受けるジェンダーイメージが影響している。さらに,競技を選 ぶ際に大きな影響を与える環境自体がジェンダーイメージに基づいて作られていると考えると,競 技のジェンダーイメージが競技選択に与える影響はあると考えられる。
今後の課題
本研究の問題点および課題は以下の
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点である。第一に,質問紙調査の調査対象者のうち,競技経験がない者のデータ数が少なかったことが挙げ られる。そのため,競技経験者と競技経験のない者の性差観の差については課題が残った。したがっ て,競技経験のある者とない者のデータ数を同等数確保し,また競技経験の有無の基準を再検討し て群分けを行なう必要がある。
第二に,競技のジェンダーイメージによる群の分け方として,性別とイメージが不一致の群と中 性の群のデータ数が少なかったことが挙げられる。さらに,競技を最大で
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個経験していた,複数 競技の経験年数が同じであったなど,さまざまなケースが見られたため,最適な方法で群分けを行 なうことができなかった。さらに,この群分けは山本(2009
)を基にした競技のジェンダーイメー ジを基準に行なったが,競技のジェンダーイメージは変化するものであるということが面接調査で 明らかとなった。そのため,これを基準とした競技のジェンダーイメージが妥当であったのかを再 検討するとともに,様々なケースを再検討した上で群分けの基準を再設定することが必要である。第三に,面接調査において,競技のジェンダーイメージが競技を選ぶ際に直接影響を与えるもの ではないということが明らかとなった。その一方で,ある競技を選ばない理由として,競技のジェ ンダーイメージが用いられていることがあるということがわかった。したがって,ある競技を選ば ない基準として競技のジェンダーイメージがどのように影響するのかという側面から調査を行なう ことで,競技のジェンダーイメージと競技選択の関係についてさらに深めることができると考えら れる。
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