家事労働のエネルギー代謝に関する研究
(第2報)
一一f理作業における料理別エネルギー代謝について一
家政研究室 大 森 和 子
1 緒 言
家事労働の中で最も多くの時間をしめる調理作業について,料理別にその作業に要する 時間やエネルギー消費量を知ることは,日常調理作業を計画的,能率的に行う上にも,ま た,主婦の生活を検討する上にも必要であると考える。調理作業について既に研究された
(1)②
ものもあるが,調理における食品の調理学的研究に比して,エネルギー・時間の面の研究 は非常に少ない。筆者は,都市における一般家庭の設備を用い,主婦を被検者とし,日常 食の料理別に調理作業の時間研究を行い,第1報で発表した家事労働のエネルギー代謝率
を用いて,都市5人家族を想定した料理別の所要時間とエネルギー消費量とを算出し,調 理作業の計画等に応用し得ると考えられる結果を得たので報告する。
皿 実 験 条 件
A 実験時間
昭和37年11月上,中旬 昭和38年3月上旬
B 被 検者
主婦として相当の経験を有するK.H.及びM.0.を被検者とした。
第1表 被 検 者
被検者1年令1身長・ml体重kg
K. H, 34 155.5 56.0 M. 0. 42 154.0 57.0
C 施設・設備, 調理用具
実験に用いた台所は,都市(大宮市)の一般住宅のものである。分譲住宅の台所で,施 設・設備がよく似ている家二軒のを用いた。都市ガス・水道があり,設備配置は第1図の
ようである。作業台の高さは80cmである。いつれもガスコンロ2個使用,釜は, Aはガ ス自動炊飯器,Bは電気自動炊飯器を用いた。
A
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食器と
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90cm 食器とだな
第1図 台 所
調理用具のうち,エネルギー消費,所要時間に特に影響のあるものについて示すと次の ようであるQ
なペ……アルマイト製直径22cmと18cm フライパン・・一鉄製直径22cm 中華なべ……鉄製直径39cm 訓量カツプ……200cc 言1量スプーン……5cc,15cc D 料理名及び材料
料理名及び材料は,第2表の通りで材料は5人分である。
第2表 料理名及び材料(5人分)
料理 名 材 料 料理判材料 料 理 名 料 材
米 飯米 6009 てんぷら こあじ 5尾 チャーハン 米飯 15009 み そ 汁 じゃがいも200 だいこんおろ にんじん 1009 豚肉 200
わかめ 15 し ごぼう 100 干ししいたけ10
みそ 80 えんどう 50 ねぎ 100
魚のてりやき生さけ(5切)4009 小麦粉 150 にんじん 100 だいこんおろ だいこん 200 卵 1個 卵 3個
し だいこん 1509
ちらしずし 米 6009 ほうれんそう ほうれんそう300 オムレツ 卵 5個 にんじん 100
ごまあえ ごま 大さじ5 ひき肉 50g かんぴよう 15 茶わんむし卵 3個 たまねぎ 50 干ししいたけ15
鶏肉 1009 キャベツ 250 卵 5個 かまぼこ 50
アししいたけ5個 ルうれんそう509
カレーライス米 6009 リ肉 200
カゃがいも250
さやえんどう509 フり 2枚 gしょうが 209
カ ツ レ ツ 豚肉(5枚)4009 にんじん 100
キャペツせん キャベツ 250 たまねぎ 150
切り 卵 1個 小麦粉大さじ5 水 1000cc 註*エネルギー代謝に特に関係のない材料は表から省いた。
E 時間研究
時間調査の方法は,ストップウオッチ時間調査法を用いた。調理の主な材料は用意して おき,米以外の材料の計量は時間測定から除いた。これは一般の家庭では,日常食の調理 の際,殆んど主材料の計量はしないことが多いからである。調理は,でき上つて器にもり つけるまでの時間を測定した。この際の時問単位は,R.M.R.測定単位を考慮して記入し たQ
F エネルギー消費量の算定
家事労働のエネルギー代謝に関する研究(第1報)に発表したR.M. R.を本実験に応用 した。第1報に発表した作業以外のものについては,身体の使用部位,動作の速度や負荷 等を考慮して,それぞれ同程度とみられる作業のR.M.R.の中から選んで定めた。また,
同じ作業名であっても負荷重量を考慮して,R.M.R.は異なる場合もある。
各料理別調理作業のエネルギー消費量の計算は,次の式による。
消費熱量C・1−(Σ(R M書゜×t) +・・2)×・・8×T
t=各単位作業の時間的長さ (min)
T=調理作業の全時間(min)
1.2=安静代謝と基礎代謝の比
0.8=日本人女子の標準基礎代謝量*Cal/min
註*被検者のエネルギー消費量を算出するのが目的てなく,一般化するのが目的であるため,標準 基礎代謝量を用いた。
日本人女子の標準基礎代謝量(食糧審議会公認)
20〜29才……0.817Ca1/min
30〜39才……0.788 平均して4捨5入し0.8Calとした。
40〜49才……0.762
皿 実験結果及び考察
以上のような実験条件により,2人の被検者を用いて時間研究を行い,各料理別の所要 時間とエネルギー消費量を算出した。その結果を次に示す。
所要時間は,2人の被検者による時間調査結果の平均である。ごはん・みそ汁,魚のて りやき・だいこんおろし・ほうれんそうごまあえ,カツレツ・キャベツせん切り,チャー ハンの4組は作業工程図(第2図,第3図,第4図,第5図)により,他の料理は表(第
3,4,5,6,7,表)で示した。第8表に各料理別全所要時間,エネルギー消費量,
平均R.M.R.を示した。
所要時悶 40分
1.4 エネルギー一消費量 51Cal
電 平・始}R.M,R.. 0.4
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第2図 作業工程図,ごはん,みそ汁
所要時問 36分
エネルギー消費量 57C創
1.4 平均R.MR. O.8
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第3図作業工程図,魚のてりやき,だいこんおろし,ほうれんそう,ごまあえ
層 梶@ 要 日寺 問 32分
ユニネルギー消費量44CaI
1.4 平士勾R.M.R, 0.5
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第4図作業工程図,カツレツ,キャベツせん切り
.
梶@要 時 間 .35分 エネルギー消費量 51Cal
1.4 平‡勾R.M.R. 0.6 F
エ1.2
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第5図作業 工 程 図,チ ャ ー ハ ン
第3表茶 わ ん む し
作業順序IR溜糠時間 作業順序樋R・腰時間
1.椎茸洗って水につける 0.4 20 14.だし汁をとる 0.5 30 2.なべに水を入れ火にかける 0.6 40 15.だし汁に調味する 0.3 1 30 3.ほうれんそう洗う 0.4 35 16.むし器を火にかける 0.6 1 10 4.肉を切りしょうゆにつける 0.6 1 0 17・椎茸を切る 0.4 25
5.手待 0.2 25 18・椎茸を煮る準備 0.6 30
6・ o鱗節入れる 1.4
O.5 5 Q0
19,手待20・具を盛る 8:1 3/ 0
P 05
7.なべに水を入れ火にかける 0.6 1, 0 21・卵を割りほぐす 0.6 1 25 8. かまぼこを切る 0.5 35 22.だし汁とあわせる 0.6 2/ 0
9.手待 0.2 30 23.茶わんに入れる 0.5 2/25
10.ほうれんそうゆでる 0.4 30 24.むし器に入れる 0.8 25 11.手待(かたづけ) 0.5 35 25・手待(蒸す) 0.2 13/0 12.ほうれんそうをとりあげる 0.4 35 26・横歩き(置皿用意) 1.4 21
13.ほうれんそうを切る 0.4 20 27・むし器からとり出す 0.8 1 30
所要時間37分 エネルギー消費量47Ca1
第4表 てんぷら・だいこんおろし
作業順序1R瓢晰要時間 作業順序画剣腰醐
1.野菜を洗う 0.4 1 10 11・油を入れ点火 0.8 30 2・ごぼうの皮こそげとる 0.4 1/45 12・あげもの準備 0.5 3 0
3.にんじんの皮汚ない所とる 0.4 30 13・野菜,魚あげもの 0.6 17 20 4.にんじんせん切り 0.6 2 35 手待なし
5.ごぼうせん切り 0.6 3 55 14.かたづけ 0.5 2 0
6.ごぼう水につける 0.4 15 15・だいこん洗う 0.4 20
7.えんどうのすじをとる 0.3 2 0 16.だいこんおろし 1.3 2 3011 8.流しのかたづけ
X・魚に塩をする
0.5 O.3
1/ 0
@10/1
・7・ o慌簾 1.4
O.6 21 S6
10.ころもつくり 0.6 2/50 18・もりつけ 0.4 3/15 所要時間46分 エネルギー消費量67Cal
第5表 オムレツ・キャベツせん切り
作 業 順 序 R.M.R.所要時間 作 業 順 序 RJ啄R」所要時間 1
一一
嫉1聯灘ぎ洗う}
0.4 3 21 1響1解認まぜる} 0.6 1/15P 24 3・ たまねぎみじん切り 0.6 2 0 11・皿準備(横歩き) 1.4 21
4。 フライパン火にかけ油入れ
@ る 0.5 11
12.フライパンで焼く P3.同 上
0.6 O.6
1/45 P/30
5・手待 0.2 8 14.卵とひき肉まぜる 0.6 1/52
a畠窪鶴まねぎいためる} 0.4 2 50
@39 15.フライパンで焼く 0.6 2 0
7. まないた洗う 0.5 7 16.同 上 0.6 1/25
8・ キャベツせん切り 0.6 4 51 17 同 上 0.6 1 29
9・ まないた洗う 0.5 10 18・もりつけ 0.5 2/05
所要時間30分 エネルギー消費量43Cal
第6表 カ レ ー ラ イ ス
作 業 順 序 R.M.R.所要時間 作 業 順 序 R瓢R!所要時間 「
1.米をはかる 1.1 35 10.フライパン用意 0.6 10 2・米をとぐ 0.7 1/50 11.手待 0.2 1/10 3・電気釜に入れる(横歩き) 1.4 21 12.たまねぎ肉をいためる 0.4 5/25
4.野菜洗う 0.4 1,10 13.なべに入れる 0.5 30 5。 じゃがいも皮むき 0.3 2/ 0 14。フライパン洗う 0.5 21 0
6.野菜を切る 0.4 5 14 15・ルー作り 0.4 5/50
7.肉を切る 0.6 45 16.ルーをなべに入れる 0.5 35 8. スイッチ入れる 1.4 05 17.かたづける 0.5 9/10 9. なべにじゃがいも,にんじ
@ ん水を入れ火にかける 0.6 50 18.手待 0.2 6 0 19・もりつけ 0.6 5,30
所要時間49分 エネルギー消費量67CaI
第7表 ち ら し ず し
作業順序IR漁鞭賄1 作業順序瞬R撫醐
1・米をはかる 1.1 35 28・卵焼き 2枚目 1/17
2・米をとぐ 0.7 1 50 〃 3 30
3・電気釜に入れる(横歩き) 1.4 40 〃 4 32
4・椎茸洗う 50 〃 5 30
5・かんぴよう洗う 0.4 1/56 〃 6 0.6 32
6.にんじんえんどう洗う 1!10 〃 7 30
7.にんじんせん切り 0.6 5/34 〃 8 36
8・にんじん煮る準備 0.6 1 35 〃 9 1/02
9・ まないた洗い 0.5 20 29・まないた準備 0.5 25
10.えんどうのすじをとる 0.3 3/19 30・薄焼卵を切る 3/10
.11・流しのかたづけ 0.5 51 31・まないた洗う 0.5 1/ 8
12・えんどうゆでる準備 0.6 1/50 32・えんどう切る 0.4 1/11
13.かたづけ 0.5 27 32・手待 0.2 35
14・にんじんのなべおろす 0.5 14 33・かんぴよう火からおろす 0.6 25
15・えんどう火にかける 0.5 3 34.かんぴよう切る 0.4 1/15 16.にんじん皿にとる 0.5 27 35.椎茸切る 0.5 3/05 1乳横歩き(ごはんのスイッチ) 1.4 5 36.紅しょうが切る 0.4 1/20 18・かんぴよう煮る準備 0.4 55 37.流しかたづけ 0.5 1/37 19・えんどう火からおろす 0.5 38 38・のりをやく 0.3 1/06 20.かんぴよう火にかける 0.5 53 39・のりをもむ 0.3 46
21・用具の準備 0.5 9 40・手待 0.2 34
22・あわせ酢作る 0.3 2/11 41・飯をおけに移し 3 3g 23・ボールをとり出す
Q4。卵をわりかきまぜる
1.1 O.6
56 Q 4g〃
あわせ酢まぜる ゥんぴよう
@ にんじんをまぜる
1.0
2149 25.フライパン火にかける
Q6・手待
0.5 O.2
381/
T2 砿朧嘉 1.4
O.6
21 P/26
27・卵焼き1枚目 0.6 42 43・もりつけ 0.6 9/48 所要時間 1時間13分 エネルギー消費量105Cal
第8表 料理別所要時間,エネルギー消費量,平均R.M.R.
料 理 名1所要時間 エネルギー消費料1平均R・砿R. *稼働時間の q.M.R.
! 米 飯
ンそ汁 一40分 51Ca1 0.4 0.6
魚のてりやき だいこんおろし
ルうれんそうごまあえ 36分 57Ca1 0.8 0.8
茶わんむし 37分 47Cal 0.4 0.5
カツレツ
キャベツせん切り 32分 44Ca1 0.5 0.5
てんぷら
セいこんおろし 46分 67Ca1 0.6 0.6
、
オムレツ
Lャベツせん切り 30分 43Cal 0.6 0.6
カレーライス 49分 67Ca1 0.5 0.5
チャーハン 35分 51Ca1 0.6 0.6
ちらしずし 1時間13分 105Cal 0.6 0.6
註*手待時間を除いた時間を稼働時間とした。
各料理の全所要時間については,都市で,施設・設備が本実験に用いた台所とよく似て いる台所を有する家庭の主婦3人に依頼し,5人分の料理を作るに要する時間を調査して 本実験と大差のない結果を得た。
第2図や第3表に示すように,みそ汁,茶わんむし等煮る,蒸すということが主な作業 の料理は,加熱器になべをかけている時間は,流しのかたづけ等はするが,手待時間がで
きる。そのため全所要時間の割には,エネルギー消費に少くない。手持時間を除いた R.M.R.は第8表のようになる。
カツレツ,てんぷらのようなあげものや,チャーハンなどのいためもの,オムレツ等短 時間で焼くもの,また,ごまをする,だいこんをおろすなどの作業は,その作業と同時に,
他の調理はできない。いつれを先にするかは手順を考えてすることになる。これらの料理 に,汁ものや煮もの,蒸しものを組み合わせることは容易である。
本実験の結果からみると,施設・設備が便利にできている家庭では,炊事に要するエネ ルギー消費は,一般に従来考えられていた程度より少なくなっている。ただし本実験では 料理を作り,もりつけをするまでであり,配膳やあとかたづけはのぞいてあるので,台所 と食事室が離れていれば,これらの作業では歩くということが多くなり,エネルギー消費 は比較的多くなる筈である。
近来,都市では一般に台所の施設・設備が改善され,能率的になってきており,本実験 と同じような家庭が多いと考えられるので,本実験で行った各料理別の所要時間,エネル ギー消費量は,都市における一般家庭の調理の計画や主婦の生活の研究等に広範囲に応用 し得るものと考える。
終りに,御懇切な御指導を賜わった労働科学研究所主任研究員沼尻幸吉博士に対して,
深く感謝の意を表する。
参 考文 献
(1)武 保 家政学雑誌11ハ瓶2(1960)
小杉みよ
(2)前川当子 栄養学雑誌19.〈h2(1961)
同 20ハ厄5(1962)