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増殖糖尿病網膜症に対する術

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増殖糖尿病網膜症に対する術

1

日前

0.16 mg/0.05 ml Bevacizumab

硝子体内注射 に関する無作為前向き二重盲検化比較検討試験

(要約)

日本大学大学院医学研究科博士課程 外科系眼科学専攻

眞鍋 歩 修了年

2015

指導教員 湯澤 美都子

(2)

1. 研究の背景と目的

増殖糖尿病網膜症 proliferative diabetic retinopathy: PDR)は、網膜 新 生 血 管 (neovascularization elsewhere; NVE) 、 乳 頭 上 新 生 血 管 (neovascularization disc; NVD)、硝子体出血、繊維血管増殖膜、牽引性網 膜剥離を特徴とし、糖尿病網膜症において最も病期の進行した状態である。

PDR に対する硝子体手術後の硝子体出血は、術中止血の難しさ、強膜切 開に伴う新生血管の形成、残存硝子体への新生血管の形成や硝子体の再収 縮など様々な要因により生じやすく 1-3)75 %の患者が術後早期の再出血を 来たしたという報告もある 4)PDR に対する硝子体術後再出血を予防する 方法として、VEGF 阻害薬である bevacizumab 1.25 mg/0.05 ml を硝子体 内注射 (intravitreal bevacizumab; IVB)し、新生血管の活動性を低下させ 120 日後に硝子体手術を行う方法が普及している 5-14)。一方、動物眼 では IVB 注射 (1.25 mg)による光受容体内層のミトコンドリア障害や脈絡 膜毛細管板の変化が報告されている 15-17)。臨床的にも、IVB注射 (1.02.5 mg)に 伴う眼合併症として牽引性 網膜剥離の発症や悪化が報告されてお り

14,18)、さらに抗 VEGF 薬硝子体内注射に伴う全身的な合併症として死亡や

脳血管障害の報告がされている 19)

IVB 注射による全身および眼組織への影響を少なくするためには、低容

量の bevacizumabを硝子体内注射し、注射後早期に硝子体手術を行う方法

が有用と考える。我々は、PDR に対する硝子体手術前 IVB 注射において、

最少で0.16 mg/0.05 mlbevacizumabが硝子体中のVEGFをブロックし、

術中コアグレーターの使用頻度を減らせることを報告した 20)

そこで今回我々はこの研究に基づき、PDR に対する硝子体手術 1 日前 0.16 mg/0.05 ml bevacizumab 硝子体内注射が、術後再硝子体出血による再 手術の頻度を低下させることを無作為前向き二重盲検化比較試験によって 明らかにする。

2. 対象と方法

こ の 研 究 は 、Clinical Trial registration ( NCT01854593)UMIN

UMIN000007482)に登録した後に開始した。また日本大学医学部倫理委

員会の承認(#110903)のもと、書面によるインフォームドコンセントを 全ての患者に対して行い、利益と危険性に対して同意を得られた患者のみ を対象とした。

対象は、2012 6 月から 2013 8 月の間に駿河台日本大学病院にて初 回硝子体手術の適応となった、PDRによる 3か月以上遷延する硝子体出血、

牽引性網膜剥離、虹彩新生血管および新生血管緑内障患者 62 66 眼であ る。内眼手術歴のある患者、3 か月以内に網膜光凝固術の既往のある患者、

(3)

3 か月以内の硝子体内注射、もしくはステロイドテノン嚢下注射歴のある患 者は除外した。3か月以内に脳血管イベント、もしくは心筋梗塞の既往のあ る患者は除外した。

試験に同意が得られた 62 66眼を、1人の試験者(A. M.)が単純ランダ ム化(封筒法)を用いて無作為に 2郡に割り付けた(コントロール群、IVB 射群)。術 1 日前に、0.16 mg/0.05 ml IVB注射と sham注射をそれぞれ行 なった。盲検化を向上させるために、コントロール群には針を外した注射 器を投与部位に押し当て注射するふりをし、患者にはどちらが注射された か分からないようにした 21)。注射翌日に、割り付けを盲検化された 3 人の 硝子体術者(S.H, T.H, N.H; 割り付けを行なった A.M.以外の医師)によって 硝子体手術を行った (二重盲検化)3 人の術者は硝子体手術に十分に熟練 した術者であり、周辺部硝子体は強膜圧迫により切除し、新生血管からの 出血や網膜裂孔の辺縁はコアグレーターを用いて凝固、止血した。

Bevacizumab の 分 注 は、 当院 薬剤部 のバ イオク リーン ルーム を用 いて 100 mg/4 mlbevacizumabを、生理食塩水で 0.16 mg/0.05 ml に希釈し、

1.0 ml のシリンジに充填した。希釈した bevacizumab -70℃ で保管し、

分注後 2ヶ月以内を使用期限とした。分注直後と、2 ヶ月後にそれぞれ細菌 培養検査を行った。

Bevacizumab を投与した翌日に硝子体手術を行った。トロカールを角膜

輪部から 4mm の部位に挿入し、灌流を止めた状態で 25G 硝子体カッター を硝子体の中央部に挿入し、吸引ラインに接続した 2.5ml の注射器で硝子

体液を 0.5ml 採取し、その後に硝子体手術を行った。新生血管からの出血

は、25G straight bipolar pencil (Kirwan Surgical Products, Marshfield, MA, USA)25G straight laser probe (Synergetics, King of Prussia, Pa, USA)を用いて凝固した。

採 取 し た 硝 子 体 液 は 試 験 管 に 入 れ 、-70℃ で 保 管 し 、 酵 素 免 疫 吸 着 法 (enzyme-linked immunosorbent assay; ELISA)VEGF 濃度を測定した。

患者は、術後 17日、2週間、1か月後にそれぞれ診察をおこない、視 力は 1 か月後に測定した。全ての患者に眼科的診察(眼圧測定、細隙灯顕微 鏡検査、検眼鏡検査)をおこない、視力は盲検化された視能訓練士が測定し た。全ての術後診察は割り付けられたグループを隠しておこなわれた。

術中検討項目は硝子体の VEGF 濃度、術中コアグレーターの頻度、術中 レーザー数、医原性裂孔の有無、タンポナーデ物質の種類、手術時間とし た。術後検討項目は、術後早期 (4 週間以内)の再硝子体出血、術後再硝子 体出血による再硝子体手術、術後(4週間以内)の眼圧上昇、血管新生緑内障 の持続・悪化、術 1か月後の視力、視力改善値とした。

主要評価項目は、術後4週間以内の再硝子体出血による再硝子体手術の

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頻度とした。二次評価項目は術中コアグレーターの頻度、術後 4 週間以内 の再硝子体出血、手術開始時の硝子体中 VEGF濃度とした。

3. 結果と考案

62 66眼を、IVB (32 32 )とコントロール群(30 34)に無作 為に割り付けた。割り付けを受けた全ての患者が 1 か月間の経過観察を終 了し、最終的に IVB 32 32 眼、コントロール群 30 34 眼について検 討した。

2群間において、年齢、術前視力、眼圧、高血圧・脂質異常症・心筋梗塞・

脳梗塞の既往、HbA1c の値、抗血栓薬内服の有無、水晶体の状態、術前硝 子体出血、術前虹彩新生血管もしくは血管新生緑内障、牽引性網膜剥離、

汎網膜光凝固(Panretinal photo coagulation; PRP)の状態に有意差はなか った

術後早期(4週間以内)の再硝子体出血による再手術の頻度はコントロール 群が 20.6%(7/34)IVB群が3.1%(1/32)で、IVB群で有意に低かった (P

=0.033)

術中コアグレーターの頻度はコントロール群が1 (0-2)IVB群が0 (0-1)で、

IVB 群で有意に少なかった (P=0.025)。術後早期 (4 週間以内)の再硝子体出血 の頻度は、コントロール群が23.5% (8/34)IVB群が9.4% (3/32)で、IVB 群で有意に低かった(P=0.017)。このうちシリコーンオイル注入眼で術後再硝子 体出血をきたしたものは、コントロール群で2 (2/6, 33.3%)IVB群で0 (0/4, 0%)であった (P=0.467)

硝子体中 VEGF 濃度は、コントロール群が 1315.3±1153.4 pg/mlIVB 25.0±13.6 pg/mlで、IVB群で有意に低かった (P < 0.0001)

その他 2群間において、術中眼内レーザー数、医原性裂孔の頻度、ガス・

シリコーンオイルタンポナーデの使用頻度、手術時間に有意差を認めなか った。

術後1か月の視力、視力改善値は2群間で有意差を認めなかった(P=0.929,

0.445)。術後 4週間以内の眼圧上昇、血管新生緑内障の持続もしくは悪化に

有意差を認めなかった。術後の医原性網膜裂孔はコントロール群で 34 眼中 2 眼に、IVB群で 32眼中 1眼に認めたが、術後全症例において再復位を認 めた。また分注培養した bevacizumabから細菌は検出されなかった。

今回の研究を通して、IVB 注射による血栓塞栓性疾患や眼内炎などの全 身的、及び眼合併症は認めなかった。

今回の無作為前向き試験において、PDRに対する術 1日前 0.16 mg /0.05 ml (1/8容量) IVB 注射が硝子体中の VEGFをブロックし、術後再硝子体出 血に対する再手術の頻度を有意に低下させることを明確にできた。

(5)

我々は、通常濃度の 1/8 0.16 mg /0.05 ml IVB注射でも、術後再硝子 体出血による再手術の頻度を減らすことを明確にした。硝子体手術を注射 翌日に行なうと、硝子体内に注射された bevacizumabは直ちに除去されて しまうが、術1日前に注射した 0.16 mg /0.05 ml bevacizumab は網膜内に 浸透し、術後再出血を予防したことを示している。実際に、近年の報告で は硝子体内注射されたbevacizumabは投与後1日以内に網膜内へ浸透し 23,

24)、さらに血流により全身へ移行すると報告されている 25, 26)。術前 IVB 射による術中の出血の抑制、術中止血の頻度の低下は、手術手技を容易に し、合併症の減少にもつながると考えられる。また、術後再硝子体出血の 頻度、術後再硝子体出血に対する再手術の頻度を有意に低下できるため、

患者にとっては有益な治療法である。今回の研究では、術後 1 か月の視力 は両群ともに大幅に改善したが、術後視力、視力改善値には 2 群間に有意 差は認められなかった。

加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、糖尿病黄斑浮腫では、硝子体内注射し た薬剤が 12か月間効果を持続できるように、高濃度の VEGF 阻害薬が注 射されている。しかし全身の VEGF 阻害に関連すると考えられている、死 亡や心血管イベントや脳血管障害などの重大な合併症が報告されている 19)

これまで PDRに対する術後早期の再出血を予防する方法として、VEGF 阻害薬である bevacizumab 1.252.5 mg を硝子体内注射し、新生血管の活 動性を低下させた 120 日後に硝子体手術を行う方法が行われてきた。硝 子体内注射された bevacizumab 1.25 mgは、有意に血液中の VEGF濃度を 抑制すると報告されている 27-29)。全身の VEGF阻害に関するリスクの観点 から、これまで脳梗塞や心筋梗塞の既往のある PDR 患者に対する IVB 射は適応とならなかった 20)。今回我々は、通常の 1/8容量の IVB 注射を用 い、注射翌日に硝子体内に残存する bevacizumab を硝子体手術で除去する 方法を行なった。この方法は全身に移行する VEGF 阻害薬の量を少なくす るという点において、従来の方法に比べより安全である可能性がある。今 回の研究では、3か月より以前の脳梗塞、心筋梗塞の既往のある患者を適応 に含めたが、全身的な有害事象はみられなかったことより、適応の拡大と いう点においても有用であると考える。

術前 IVB注射に伴う眼合併症の点において、Oshima 14) IVB注射後 に牽引性網膜剥離の進行を認め、Arevalo 18) IVB 注射を行なった 211 眼中 11 (5.2%)において、平均で 13 日後に牽引性網膜剥離の発症がみら れたと報告している。注射から手術までの期間が長くなると、牽引性網膜 剥離の発症や悪化を生じるリスクが高くなると考える。術1日前の IVB 射は、牽引性網膜剥離の発症や悪化のリスクを軽減できるものと考える。

今回の研究は単施設で行なった術後 4 週以内の結果である。観察期間が

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短いため、より長期的な予後も検討する必要がある。また、再出血の決定 に関して、網膜症の程度、術後体位のコンプライアンス、術者間による手 技の細かい違いなど、様々な要因が絡んでいる可能性があるため、症例数 を増やしたより大規模な研究も考慮すべきである。

今回の結果から、0.16 mg/o.05 ml bevacizumabは術後硝子体出血の 抑制効果を示したといえる。PDR に罹患している糖尿病患者では、心筋梗 塞などの心血管イベントのリスクが増加するため 30)、抗 VEGF 薬の使用に は全身の VEGF阻害による予期せぬ合併症に対し注意を要する。今後、0.16 mg/0.05 ml IVB 注射が、血漿中の VEGF 濃度を抑制するか否か、検討する 必要がある。

4. 結語

1日前の 1/8容量(0.16 mg/0.05 ml) IVB注射は、硝子体中の VEGF ブロックし、術後早期の再硝子体出血による再手術の頻度を低下させた。

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