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1.序論

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(1)

長崎大学教育学部自然科学研究報告第27号33‑44 (1976)

CH3‑X‑H(X=O,S,Se,Te)のRaman,IRおよびNMR

浜田圭之助・森下浩史・筒井保之

(昭和50年10月31日受理)

33

The Raman, IR and NMR of CH3‑X‑H(X=O,S,Se,Te)

Keinosuke HAMADA, Hirofumi MORISHITA and Yasuyuki TUTUI Faculty of Education, Nagasaki University, Nagasaki 852

(Received October 31, 1975)

Abstract

The authors obtain the Raman, IR and NMR spectra of CH3‑X‑H(X=O, S, Se, Te).

The spectra have been analyzed on the basis of Cs symmetry, but the present observations show that the obtained spectra can be explained on the basis of C3v symmetry. Because it is in goood agreement with theoretical expectations for C3v model that four parallel type bands are polarized in Raman and have P, Q and R branches in infrared, the P‑R separations of which are observed to be 40, 30 and 24 cm‑1 for CH3OH, CH3SH and CH3SeH, and are estimated to be 43.2, 28.8 and 24.3 cm‑1 for them respectively, on the basis of the parameters for C3v model. The observed spectra of these molecules resemble closely those of CH3‑C≡N and CH3‑Br, whose symmetry is C3v. In addition, the NMR spectra strongly support a C3v model for CH3‑X‑H.

1.序論

メタノ‑ル(CHaOH)1‑",メタンチオ‑ル(CH3SH)7‑ll)およびメタンセレノール(CHc SeH)12‑14)メタンテルロ‑ル(CH3TeH)15)の振動スペクトルは,殆んどのものがCs対称 に基づいて解析されている。ところが帰属に食い違いがあるものや,あきらかに倍音であるも のを基準振動に帰属しているような誤りも見られる。そしてまた最少の慣性能率の軸がC‑Ⅹ

(2)

34

浜 田 圭之助・森 下 浩史・筒 井 保 之

軸に非常に接近し,近似的には対称こまの対称軸に一致すると述べている文献もある。*1・14・15)

しかしCR3−X一耳(X・=O,S,Se,Te)タイフ。分子について測定したスペクトルは,Cε選択則

〔8・4 (1〜,ρ;11〜)+4・4 (1〜1刀〜)〕よりもむしろ,C3・選択則〔4且1(R.か;11〜)+4E(1〜111〜)〕

に従っているように思えた。そこで著者はCH:3−X−Hタイプの構造を振動スペクトルおよび回 転一振動スペクト.〜レに基づき・また構造類似の臭化メ』チル(CH3恥)・アセトニトリル(CH3−

C≡N)のスペクトルとの比較研究により決定しようとした。

2.実

 メタンセレノールおよびメタンテルロール*2)は共に文献16)に従って合成した。CH3−Br,

CH:3−C≡N,CH3−O−H:およびCH:3−S−Hは市販品を購入して蒸留により精製した。

 ラマンスペクトルは目本電子JEOL JRS−SIBレーザラマン分光光度計(Ar+,4880A)によ り,赤外スペクトルは島津IR−450型赤外分光計(光学物質はκR5㌧5)により,:NMRは JEOL JNM PS−100型スペク1・ロメーターにより測定した。

3.結果およぴ考察

3−1 アセトニトリル(CH3CN)

 CH3CNがCH:3Brと同じくC3。構造を持つことは周知の事実である17)。CH:3−X−E(X=0,

S,Se,Te)タイプ分子がC3,構造を持つ場合,4つの全対称振動と4つの縮重振動を示すは ずである。一方,低対称の0・構造を持つ場合,12の基準振動を示すはずである。このことは 次の表1に示す既約表現により明白である。測定したCH3CNのスペクトルは*3),バンド数,

Table l Irreducible representations of C3ッand C3for CH3−X−H type molecule

CH3−X−H

CH:3−X

03ツ

C3

C3

4ん[R,1);π〜(D]+4E[R,吻IZR(⊥)]

8。4ノ[R,カ1刀〜]+4/1 [R,吻;∫1〜]

3・4.1[R,カ111〜(U)]+3E[R,吻;ZR(⊥)]

ラマンバンドのpolarization state,赤外バンドの包絡線など,すべてC3・構造について理論 的に予想されるところと完全に一致した。そして同じくC3。構造を持つCH3Brのスペクトル

と非常によく似ている(図1参照)。

*1) これはつまり 〜03 ということである。

*2)CH3TeHは極めて不安定で,室温においても純酸素と爆発的に反応する。

*3)文献1)の示す帰属と完全に一致したが,波数値は著者の実則値を示した。

(3)

CH3 ‑X‑H (X = O, S, Se, Te) 

(D Raman, 

IR   J  (  NMR 

3000  2500  2000  1500  l OOO 

500  cm 

Fig,l 

3000  Raman and inh'ared 

2500  spectla of CH3 

2000 

Br CH 

3C¥, and 

1500 

CH3 

lOOO 

‑X‑H(X =0. S, Se. 

500  Te) 

‑l 

CO1 

35 

(4)

36

浜田圭之助・森下浩史・筒井保之

Table2 Symmetry species,selection rules,band type,P−R separation and frequency     aSSignmentS

E

E

×

E

Species Form of Vibration

sX−H

sCH3

ツsC−X

δsCH3

asCH3

δasC且3

ρrCH3

ρrX−H

2×δasCH3

2×ρrCN

CH3Br

Raman

ni1

(P)2959vs

(P) 596vs

(P)1298m

(d)3050m

(d)1417m

(d)958w

ni1

(p)2840m

IR

ni1

(ll)2983vs

(D611vs

( )1309vs

(⊥)3075m

(⊥)1433s

(工)958s

ni1

(II)2856m

cm−1

PR

26

26

26

26

CH3CN Raman

(p)2250vs

(p)2950vs

(P) 916vs

(p)1373m

(d)3030m

(d)1445w

(d)1040w

(d)380m

(p)2876m

(P)745w IR

(il)2254m

(ll)2964m

(D920m

(II)1380m

(⊥)3038w

(⊥)1441s

(⊥)1052m

(P)360m

(ll)2876w

(1『)718m

cm−1

PR

(?)

24

24

(?)

24

(?)

CH30H

Raman

   れ 

(p)3330m

(p)2940vs

(p)1033vs

(P)1450m

(d)2993m

((1)1475w

(?)m4vw

(?) P

(p)2836vs

IR

   おつ

(目)3710m

(lI)2940vs

(目)1034vs

(II)1452m

(⊥)2993m

(⊥)1480w

(?)1105vw

(⊥)1347m

(ll)2852s

cm−1

4

PR

40

(?)

40

40

40

#1)The very considerable difference between Raman frequency in the liquid

and in#2)These band contours look like mixing(D type band with(⊥)

type#3)The polarization state of this band is against C3びas well as C,

selection

5−2 メタノール(CH30H)

 3−2−1平行タイプ赤外バンドおよび(P)ラマンバンド……CH3CNの2876㎝一1赤外バンドは 基準振動バンドとも考えられるが,2876cガ1と2964cグ1バンドはFermi共鳴18)によるダブレ

ットを形成し,それらの中央はCH3非対称変角振動(δ。。CH3)バンドの波数の2倍に大体一致

する。従ってCH3CNの2876㎝qバンドはδ4εCH3の倍音で,2964cパ1バンドがCH3対称伸

縮振動(〃、CH3)に帰属される。CH:30Hにおいては2940cガ1赤外バンドが〃3CH3に,2852㎝一1 バンドがδ、、CH:3の倍音に帰属されることは,CH:3CNのそれ等との比較により容易に判る。

また平行タイプ赤外バンドは図2に示すようにP Q R包絡線を示し,その.P−R分離は分子固 有の一定値を示すはずである。CE30Hの場合P−R分離値は40cガ1である。これに対応する

ラマンバンドは(カ)バンドであるはずであるが,何れも予想通りなっている。

 赤外の1452cガ1バンドは,ラマンの⑦)1450㎝一1バンドに対応するもので,CH:3Brの1309 cガ1赤外((カ)1298㎝一1ラマン)バンドおよびCH3CNの1380cパ1赤外((ク)1373cガ1ラマン)

バンドの比較から容易にCH3対称変角振動(δ、CH3)に帰属される。このバンドは強度が弱 く,1480㎝一1バンドとオーバーラップしているためP Q R構造ははっきりしない。1034㎝一1 赤外((汐)1033cガ1ラマン)バンドは典型的な(U)バンドを示し,対応するラマンバンドは

(5)

CH3−X−H:(X=O,S,Se,Te)のRaman,IRおよびNMR

37

CH3SH Raman

(p)2605vs

(p)2953vs

(p) 712vs

(P)1338m

(d)3020s

(d)1456w

(p)812vs骸3)

(d)1056m

(p)2870vs

IR

   の  

(II)2606s

( )2956vs

(11)712s

(II)1333vs

   わ  

(⊥)3028s

     

(⊥)1452s

(?)802w

(⊥)1058vs

(1[)2880s

cm−1

P刃

(?)

30

30

30

30

CH3SeH

Raman

(p)2297vs

(p)2930vs

(p)575vs

(P)1272s

(d)3012m

(d)1425w

(P)711s難3)

(d)995w

(p)2822m

IR      

( )2342vs

( )2962s

   の  

)670vs

(Il)1289s

   お  

(⊥)3043m

    ラ

(⊥)1432m

     

(ll)731vw

(⊥)1032m

(D2872m cm−1

P疋

(?)

24

(?)

24

24

CH3TeH Raman

1984vs 2930m

521m 1224m 3016w

(P)

636w 857m

(P)

IR 1995vw

(?)

515m 1218m

(P)

(?)

610m

860s

(P)

cm−1

(P)

(P)

(?)

(?)

(?)

frared one in the gas is due to the (1ifference of hy(1rogen−bon(1ing in the both states.

   の

rules。 Aclearaccountisnotgivenoftheisviolationofselectionrules.

(〃)バンドを示しており,CE3CNのC−C対称伸縮振動(〃、C−C)バンドとの比較から,C−0対 称伸縮振動に帰属されることは明らかである。最後に残った3710㎝一1赤外バンドは( )タイプ バンドで,対応するラマンの(カ)3330cη一1バンドと共に,O−H伸縮振動(〃、0−E)に帰属される。

〃、OHが赤外とラマンとで波数の差が非常に大きいのは,赤外スペクトルが気体で測定されて いるのに対し,ラマンスペクトルは液体*4)で測定されていることによる,水素結合の影響の

相違のためである。*5・19・20)

 5−2−2垂直タイプ赤外バンドおよび(dp)ラマンバンド……CH:3非対称伸縮振動(〃、、CH3)

およびCH3非対称変角振動(δ、、CH:3)は,何れの分子においても,大体一定の波数領域に現 われることはよく知られた事実である。21・22)したがってCH30Hの(⊥)2993cガ1赤外((ゆ)

2993cガ1ラマン)バンドは〃、、CE3に,(⊥)1480㎝一1赤外((助)1475cガ1ラマン)バンドは δ。。CH3に帰属されることは,CH:3BrおよびCE3CNの対応バンドから容易に分る。O−H:横 ゆれ振動(ρ,OH:)は,H20の変角振動(δH−0−H)の振動波数に比較的近いはずで,(?)1105 cパ1バンドより(⊥)1347cガ1赤外バンドがより妥当と思われる。これに対応するラマンバンド は,強度が弱くて測定にかからなかったものと思われる。残るはCE3横ゆれ振動(ρ,CH3)で

(*4)気体状能でのラマンスペクトルの測定は室温で気体である物質を除いて一般に困難である。

(*5)液体の〃sOR赤外バンドでは,液体ラマン・バンドと略々同じ波数を示す。

(6)

38 

El   T  *"  :・ i   4    

Fig. 2 

The band shapes of infrared parallel( ff ) and perpendicular(1) type bands of  CH3Br, CH3CN and CH3‑X‑H(X=0, S, Se) 

(7)

CH3−X−H(X=O,S,Se,Te)のRaman,IRおよびNMR

39

あるが,1105cガ1赤外)(CP)1114㎝一1ラマン)バンドがこれに帰属される。

5−3 メタンチオール(CH3SH),メタンセレノール(CH3SeH〉およびメタンテルロール(CR3

TeH)*6・23)

 CH3伸縮振動(〃CH3)およびCH3変角振動(δCH3)は,どの分子を通じても大体一定の領・

域に現われるので,それらの帰属は波数領域,バンドの形,あるいはpolarization stateを考 慮することにより比較的容易に決められた(表2参照)。一方CH3−X−Hタイプ分子の特徴

あるスペクトルはC−X対称1申縮振動(〃,C−X),X−H対称伸縮振動(り、X−H)およびX−H横 ゆれ振動(ρ・X−H)である。C−X伸縮振動(〃、C一〉ζ) (X=0,S,Se,Te)についてはCH30H,

CH3SH,CH3SeHおよびCH3TeHに対しては,赤外1034㎝d(ラマン(カ)1033cガ1)712cガ1

((カ)712㎝一1),670cガ1((♪)574cガ1):および515cパ1((カ)521cバ1)*6)バンドがそれぞれ

帰属される。赤外バンドは典型的な(Dタイプバンドで.P Q R枝を示し,ラマンバンドは

(カ)バンドであることを示している。なお波数はX(=O,S,Se,Te)の原子量の増加に従って 次第に減少している。

 X−H伸縮振動(〃、X−H)については,CH3Brにはこれらのバンドが現われないところか ら,スペクトルを比較することにより容易に帰属が行なわれる。CH3CN,CH301{,CH3SH,

CH3SeEおよびC且3TeHの〃,X−Hに2254cパ1((カ)2250㎝一1),3710cη一1((ρ)3330㎝一1)*5,

2606cガ1((カ)2605㎝一1),2342㎝一1((カ)2297cパ1)および1995㎝一1((ρ)1984cη一1)*6バン

ドが帰属されることは明白である。これらラマンバンドは,すべて(ヵ)バンドであって理論的 に予想されるところと一致するが,赤外バンドにおいては,CE3C:NとCH30Hでは予想通り P Q R枝を示しているが,CHl3SHの〃、SH赤外バンドはむしろ(⊥)タイプのものに近い形を

しており,CH3SeHの〃sSeH赤外バンドは(ll)タイプと(⊥)タイプの混合したような形をして いる(図2)。波数は〃,C−Xの場合と同様にXの原子量の増加と共に減少している。

 X−H横ゆれ振動(ρ,XH)に帰属されるバンドとして,CH30Hに対しては1347cガ1と1105

㎝一1赤外バンド,CH3SH:に対しては1058cガ1と802㎝一1,CH3SeHに対しては1032cガ1と731

㎝一1が残っているが,CH30Hのρ,OHの帰属との対比から(3−2−2参照),高波数側の1058㎝一工

((4)1056cガ1)バンド,1032cガ1((4)995cガ1)*7)バンドをそれぞれρrSH,ρ,SeH:に帰属し た。C}13TeHのρfTeHには860㎝一1((4)857㎝一1)*6)バンドが帰属される。Xの原子量の増 加に伴いρ,XHの波数は漸減している。

 CH3横ゆれ振動(ρ・CH3)には,最後に残ったバンドを帰属した。すなわちCH30E,CH3SH,

CH3SeH:およびCH3TeHにそれぞれ1105㎝一1((?)1104cパ1),802cズ1((ρ)812㎝一1),

731cパ1((ρ)711㎝一1)および610cゾ1((?)636cズ1)をそれぞれ帰属した。ここで問題になる のはρ,CH3バンドは赤外では(⊥)タイプバンド,ラマンでは(吻)バンドであるはずであるの

*6)固体で測定したのでラマンスペクトルのpolarization stateは不明であるが,文献 (Eより(カ)で   あることが分る。不安定物質であるため赤外の回転一振動スペクトルは得られなかった。

*7) (⊥)タイプバンドは鞍型をしており,あたかも二つのバンド塑ら構成されているかのように見え実

  際にも,複数の基準え振動に誤って帰属されている例をよく見る。たとば図2のCH3Brのδ、、CH3   バンドは,典型的な強,弱,弱の強度の繰り返えしを示し,3回回転軸を持つ分子の1つの基準振

  動バンドであるが分解能の悪い分光器では鞍型の包絡線を示し,2つのバン・ドの如く見られる。

*8)03びとしたのでバンドの形,polarization stateに矛盾があるのであればC3ではないかということ

(8)

40

浜田圭之助・森下浩史・筒井保之

に,CH3SHおよびCH3SeHでは,赤外では(Il)タイプバンドをラマンでは(ρ)バンドを示し ている。CH3TeHのρ,CH3の(カ)*6?の意味も,ρ,CH3バンドが(カ)バンドであるのはおか しいということであろう。これ等バンドの型とpolarization stateにおける矛盾は,今後の 研究課題である。*8)

5嘱 赤外バンドの形

 5−5−1P−R分離*6)……平行タイプバンドは.PQR枝より成り,そのP−1〜分離値(∠〃PR)

はGerhard等により次のように計算されている。

      ∠〃PR−S(β)/πゾ左丁/劫

ただし,S(β)は分離関数で次式で表わされる。

      10910S(β)=0.721/(β+4)1・13,このとき  β=(Z8/為)一1

       塩:こま軸に関する慣性能率

       1β:こま軸に垂直な軸に関する慣性能率

Table3 Parameters24),P−1〜sePa「ation and「otational constant β

X−H(or C≡N),A C−X(or C−C) ,A

C−H ,A

∠CHC

∠CXH

IA;×10}409.cm2 IB l×10}409.cm2

∠〃PR(obs.),cm−1

∠〃PR(ca1C,),cm一■

β(obs.), cm−1

.8(calC.), cm−1

CH3Br

1.942

1.10 109。

5.328 85.347

26 24.5

0.33

CH3CN

1.157 1.458

1.10 109。

180Q

5.328 73。448

24 26.7

0.38

CH30H

0.960 1.427

1.10 109。

180Q

5.328 32.132

40 43.2

0.94 0.87

CH3SH

1.329 1,818

1.10 109。

180。

5.328 64.016

30 28.8

0.44

CH3SeH

1.470 1.942

1.10 109。

180。

5.328 86.887

24 24.3

0.32

表3に記載したところの構造パラメーター24)を使用し,C−X−Hを直線(C3・)として,上式よ り∠〃盟を計算し,実測値(図2参照)と比較した。p−R分離の実測値と計算値は大体よく一致

している。

 5−5−2回転微細構造……平行タイプ赤外バンドはPQR枝より成るが,好条件*9での測

  になるが,C・ではスペクトルの帰属は全くできないし,第一,(ll)タイプとか(⊥)タイプとかの別

  も見られないはずである。したがってC3〃,C・何れの選択則より予想されるバンド形,あるいは   polarization stateにも矛盾する。

*9)測定分子の室温での蒸気圧が高いこと,、高分解能分光器が使用できるなどの他,分子自身の慣性能

  率あが小さいことなどである。

*1Q)3−3−4に述べた2×δasCH3を基準振動に帰属したものが見られる。

(9)

CE3X−R(X=0,S,Se,Te)のRaman,IRおよびNMR

41

定ではPとR枝に回転微細構造が見られる。その微細構造の線間隔は近似的に2β25・26)(β は回転定数)である。一方回転定数βは次式より求めることができる・

β=h/8π201β

回転定数βの実測値は,図3に示すようにCH30Hの場合にしか得られなかったが,計算値と よい一致を示している(表3参照)。

        一1   」γ  諾40cm    PR−

R   Q   P 1034

  ξ3

il

→ト

       ー12B=1.88cm

llOO 1050 1000 950

Fig.3The rotation−vibrational spectrum of〃sC−O of CH30E

 図2に示すようにCH3SHの〃,S−H,およびCH3Se}1の〃sSe−Hの赤外バンドの形は,あた かも回転微細構造を示しているかの如き感があるが,その構造の線間隔は2β値よりはるかに 大きく,むしろ(⊥)タイプの連続したQ枝に似ている(3−2参照)。

 3略一5連続Q枝*6……垂直タイプバンドはQ枝の連続したものから成っている。特に3回 回転軸を持つ分子においては,この連続したQ枝の強度が強,弱,弱の繰り返えしとなること が大きな特徴である27)。CH3BrおよびCH3CNでは(⊥)タイプバンドに強,弱,弱の繰り返 えしがはっきりと見られる。これは3回回転軸を持つ分子として当然のことである。CH30Hの 場合,(⊥)タイプバンドの強度が弱くはっきりしないが一部で辛うじてそれが見られる。CH3 SHおよびCH3SeHでは,(li)タイプと(⊥)タイプのバンドが混り合ったように見えるものも あり,純粋に(⊥)タイプバンドの特徴を示すものでもはっきりした強,弱,弱の強度の繰り返 えしは見られない(3−2参照)。

 3−3−4Fεr肌ε共鳴……〜2850cη一1および〜2950cヅ1領域では,赤外の(U)バンド,ラマン の(カ)バンドは,〃、CH3と2×δ、、CH:3のFermiダブレット17)であることは周知の事実である。

一般に倍音,結合音は強度が中程度以下であるが,2×δ。,CH3バンドの強度の強いものは,強 いFermi共鳴によるものである。またδasCH3の波数の2倍が上記ダブレットの略々中央の値 となることもFermi共鳴の裏付けとなる。各分子の2×δ、、CH3の帰属は表2に示している。

 3−3−5 0E3−X一π(X=0,S,Sθ,Tε)の亙MRスペクトル……図4に測定したNMRスペク トルを示す。CH3のシグナルの化学シフトはCH30H:を除いて,それぞれの分子において大 きな変化は見られないが,XHのシグナルの化学シフトはそれぞれの分子において,非常に特 徴がある。まずCH30HのOHの化学シフトが低磁場側に大きくずれているのは水素結合に原

(10)

42

浜田圭之助・森下浩史・筒井保之

CH30H

   OH

CH3

       TMS

500   400    500    200    100     0HZ  IOO      300   400 200一

CH5SH

      SH

CH3 TMS

500400 300200 100 0Hz IOO200 300400 CH5SeH

CH3

TMS

    SeH

2。ぎ

500   400   500      100    0HZ  IOO   200   300   400

CH3TeH

      CH3

TMS

         TeH

500   400   300   200   100    0Hrz  IO    500   600   700

Fig.4 NMR spectra of C亘3XH(X=O,S,Se,Te)

因がある。CH3TeHの場合TeH:のシグナルが,非常に高磁場側にシフトしていることは,

Te−H結合の脆弱であることを示すもので,CH3TeHが室温で純酸素と爆発的に反応すること をよく説明している。

(11)

CH3−X−H(X=0,S,Se,Te)のRaman,IRおよびNMR

43

4 結

 C3。構造であることがはっきりしているCH3BrおよびCH3CNの振動スペクトル,および回 転一振動スペクトルが,C3,構造に対して理論的に予態できる事項に完全に一致しているのは 当然であるが,CH3−X−H(X・=O,S,Se,Te)のスペクトルもこれらC3。構造を持つ分子のス ペクトルに非常に良く似ている。すなわち,バンドの数,赤外バンドの形,ラマンバンドの polarization state等,C3・選択則の示すところと良く一致している。これに加ふるに.P−R分 離,回転定数βの実測値は,CH3−X−Hの構造をC3。と仮定した計算値とよく一致した*6)。

 CH:3SHおよびCI{3SeH:の一部のバンド形,あるいはpolarization stateにおいて,C3σ選 択則では説明できない点もあるが,これ等はC、選択則(表1参照)では益々説明がつかなく なる。更に,これまでの文献はM4・16)C、構造を主張しているが,その中には帰属の食い違 っているものや,明らかに誤った帰属をしているものもあり*10),C、構造の根拠は薄弱であ る。 さらに一部文献14・15)では03 選択則に従ってスペクトルが完全に説明できるところか ら,CH3−X−1{分子は近似的にC3,であるとしているものもある*11)。

 これまでCH3−X−H:がC、である,すなわち一X一がまがっているとする根拠の中には「H20 分子の一〇一がまがっているので,直線形の一〇一はあり得ない」という先入観があったことは 否定できない*11)。しかしながら,第VI族元素においては,(n−1)s2ns2np4のns2の1電子 がnpに励起され,孤立電子を持ったnsとnp、の軌道混成により一X一が直線となりうること は周知の事実である28)。また実験的にも一X一が直線であることを支持する報告も多数なさ れている29陶37)。ところが他方では前記論文以外にマイクロ波分光から,CH3−X−HをC、と する主張もあるが38・39),NMRスペクトルはC3,構造を強く支持している。

 使用したレーザ・ラマン分光光度計は文部省科学研究費補助金により購入した。当局に深く 感謝するものである。

2)

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10)

11)

1) G。H:erzberg, 妬ol60%」σ7Sン)θo〃ασ刀4Molθo%1σ7S〃%o伽7θπ Van Nostrand.

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 H.W.Thompson and C.H.Miller,T7伽3.Fo〆θ吻ア300.,46,22(1950)

 1.F.Trotter and H.W。Thompson,∫Ch粥.Soo.,481(1946)

*11)C3.選択則に従うのであるからC3,構造を持つことは明らかであるが,

  ため近以的に03。であるという表現になったのであろう。

まがった一〇一の先入観の

(12)

44 

12) 

1 3) 

14) 

l 5) 

16)  17)  18)  19)  20)  21)  22)  23)  24)  25)  26)  27) 

28)  29)  30)  31)  32)  33)  34)  35)  36)  37)  38)  39) 

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p.52 

., 

Fig. 2  The band shapes of infrared parallel( ff ) and perpendicular(1) type bands of  CH3Br, CH3CN and CH3‑X‑H(X=0, S, Se) 

参照

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