ボ ル ト の 増 し 締 め の 基 礎 的 研 究
真 友武 一一*
B a s i c Study o f B o l t R e ‑ f a s t e n i n g under Employment
by
Tomokazu
MATAKE (Department of Mechanical Engineering)C U
lt has often occured that bolts have broken at the re‑fastening under employment. ln this paper, the basic aspect of this phenomenon is studied by following experimental procedure using the notched specimen with circumferential half circular groove, and a criterion on the combined damage of fatigue pre‑strain is proposed.
The notch specimen is pulled to logarithmic plastic strain,εp=1.3%, then is app1ied by direct stressσ=11.0kg/mm2 for several ratios of repetitions, ndN1, in which N1 is fatigue 1ife and n1 is number of repetitions at σ=11.0 kg/mm2 • After this procedure, this specimen is pulled again to ep=1.3% and is applied by σ=11.0 kg/mm2.
ln the case of the second experiment, stress level is different the first stage from the second stage of above mentioned procedure, that is, the first app1ied stress is σ1 =9.5 kg/mm2 and the second isσ2=11.0 kg/mm2.
According to the results of these experiments, in the case of the small ratio of repetitions the specimen is strengthened, but in other cases are weakened, compared with the fatigue life of the pre‑strained materials of ep =2.6% ,which is the same total plastic strain of the specimen, 1.3% plus 1.3%.
This phenomenon is complicated by multiple plastic strains and stress repetitions and by characteristics of materials on work hardening and fatigue. Therefore, the author wil1 propose that we use the two S‑N curves,εp=1.3% and ep=2.6%, and apply the Miner's damage rule. By this eriterion, the strength of bolt at the re‑fastening shall be clear.
1. 患者 E司
最近は鋼材質の向上によってボルト結合による機械 ならびに構造物が増加している.そしてボルトによっ て締結された部材は使用中に緩みを生じるか,または 緩まないように増し締めをすることがある.この際ボ ルトが破壊することがしばしばみられる.この原因と 考えられるのはあるいは高温によるレラキシェーショ ンであり,あるいは応力の繰返しによる疲労である.
これらの原因によって材質の劣化が起こると考えられ キ機械工学科
ているが,その詳細な挙動についてはまだ明らかにな ってはいない.
本論文では,ボルトに似た形状として半円切込みを もっ炭素鋼を用いて, 1次の引張り予加工 (1次締付 け〉後に引張圧縮の疲労試験を行ない,所定の繰返数 ののち2次引張り (2次締付け〉を加えて2次の疲労 試験を行なう.このときの破断寿命が所期の繰返数を 越すか否かによって,最適の締付力あるいは最適の 1 次繰返数を求めて適性なボルト締結状態を調査し,併 せて劣化の原因を研究するものである.
著者は前に予加工を施した鋼材の疲労強度について 報告した1)2)3)4)が,予加工の程度によっては強度が 低下することもあるが,一般には予加工量が増加すれ ぽ強度も上昇する傾向にある。切欠材についても全く 同様であるが,この場合は切欠底にひずみの集中が起 こるため,予加工の与え方や解析が難しく,その研究 も少ない5)6)が,大体加工量とともに強度も増加の状 態を示している.
このように,1回の予加工によって強化されるなら ば2回目の加工によって疲労強度は一層増加するよう に考えられるが,強化されるとすれば,その機構はど のようになっているのか,また疲労被害の立場から解 釈できるのかに関心がもたれる.本論文ではこのよう なことがらについて調査研究した結果,巨視的に観測 される最小の予加工量を基準にした場合,1次繰返数 が少ない場合には2次の寿命は延びるが,繰返数が増 せばかえって低下することが明らかになった.なお,
疲労被害の立場から新しいクライテリオンを提唱し,
この現象を説明しよう.
引張加工は島津製の10tonのオートグラフを用い,
所定のひずみになるまで引張荷重を与えた.引張圧縮 の疲労試験には島津製の2tonのボールドウィン型万 能疲労試験機(2700cpm)を用いた.
実験方法はまず残留塑性ひずみがεp=1.3%になる
Table l Chemical composition and Mechanical properties
Chemical composition(%)
C 017
Sε
025
Mη P
047 0008
S
0004
N,
004
C,
002
M∩
001
Mecilallical p朕)聖)erties(k9/mm2,%)
E
217×101 σSl1
204
σB
381
σ1
849
φ
398
ψ
698 E=Modulus of elasticity σsu=Lower yield point σB=Tensi】e strength
σT=True tensile stress at fracture 9 =Tensile e】ongation
ψ =Area contraction at fracture.
2.試験片および実験方法
使用した材料はTable 1に示す化学成分と機械性 質およびFig,1の組織をもつ直径25mmのS15C構 造用炭素鋼である.これを910℃で60分間保持の焼鈍 を行なったのち,Fig.2のように切欠半径0.5mm の半円の円周溝をもつ切欠試験片(α=2.36)に機械 仕上げを行なう.さらにその後600℃で40分間真空焼 鈍ののち切欠面の表層を約20μ電解研磨によって除去
し,加工による影響を除いて実験に供した. Fig.1 Dimensions of notched specimen.
a) CrOSS Section
Fig.2 Micrograph of material used.
b) axial section
0.1mm
ように引張荷重を与えたのち,応力σ=11.Okg/mm2 で1次の疲労試験を行なう.εp=1.3%でσ1=11.O kg/mm2の寿命をN1とし,1次の応力繰返数をn1
として,1次の繰返i数比をn1/N1=0.125,0.25,0.4,
0.5および0.75の5通りに変化させる.ついで2次引 張りを行ない,この場合の塑性せずみ量εp=1.3%を 新に加えて2次の疲労試験を行なう.2次応力のレベ ルは1次と同様のσ2=11.Okg/mm2で疲労試験を行
なった.
次の実験では1次引張りεp=1.3%後に1次応力の σ1・=9.5kg/mm2を,2次引張りεp=1.3%後に2次 応力をσ2=11.Okg/mm2と1次応力と2次応力のレ ベルを変化させた.このようにして2次応力で破断ま での繰返数を求める.この場合1次の応力繰返数比は 前の実験の0.4を除く4通りである.
塑性ひずみ量:は切欠底における対数ひずみで,予備 実験であらかじめ対数ひずみと応力の関係を求めてお き,荷重の予定値を定めるが,最終的にはひずみを測 定した.
3.実験結果および考察
本材料の平滑試験片による引張圧縮試験のS−N線 図と,切欠試験片によるεp=0,1.3および2.6%の
S−N線図をFig.3に示した.
この線図によればσ=・11.Okg/mm2の寿命はN1=
6.02x105であるから,繰返数比n1/N1=0,125,
0.25,0,4,0.5および0.75の場合の1次応力繰返数 はそれぞれnユ=0.7525×105,1.505×105,2.408x 105,3.01×105および4.515×105となる,
1次試験を終ったものに,さらにεp=!.3%の塑性 ひずみを与えて,2次応力を1次と同じ応力σ・=11.O kg/mm2を加えた場合の破断繰返数をTable 2に示
Table 2 Results of Experiments (Values of n2/N2)
η1 π1
mTO「N■i i105)π2 趣≧m2 1一チ Σ暑
0,125 9.57 1.38 一〇.38 1.51
0.25 5.14 0.74 0.26 0.99
0.4 3.06 0.44 0.56 0.84
0.5 2.68 0.39 0.61 0.89
0.75 0.86 0.12 0.88 0.87
0,125 5.14 0.74 0.26 0.87
( 嘩■ 臣昌
m網細ヨ望 uゆ 08d目トL」廼
0.25 3.69 0.53 0.47 0.78
0.5 1.99 0.29 0.71 0.79
0.75 0.77 0.11 0.89 0.86
1)εp=1.3%,σ=9.5kg/mm2, No・=1.66×106 2)εp=1.3%,σ=11.Okg/mm2,N1=6.02×105 3)εp=2.6傷,σ=・11.Okg/mm2,N2諜6.92×105
碁
㌃ 邑
b
20
15
10
5
θ
● UrmQtclled specimen
鼈鼈鼈黹 テp=O Notclled specimen 潤@εP=1.3(%) ・
怐@ ε1, ==2.6 (%) ク
\ 、
@、
、 \@ \@ \
@ \
@ \
@ \
@ \
@ \
θ
\ 、
下意
o
、 \
@ 、 、
→い
黶@ 一 一 一 疇 馳 繭 葡 一 一
105 106 107 108
N(cycles)
Fig.3 S・NDiagram
した.この試験片については塑性ひずみの総量はεp=
2.6%であるから,これらの結果はεp=2.6%,σ=
11.O kg/mm2の寿命と比較されねばならない.すな わち,総ひずみ量εp=2.6%を2回に分けて,途中に 応力繰返しが入るのであるから,疲労現象と予加工の 関係すなわち疲労被害の状態が検知されるはずである.
εp=2.6%でσ=11.Okg/mm2の寿命をN2,および 2次応力の繰返し数をn2とすればMinerの直線被 害法則に従うならば
D一 +帯一・ (1)
となるはずであり,D≧1に従って予加工を2度に分 けたために寿命が延び,あるいは疲労のために弱化し たことになる.N2=6.915×105であるから, Table 2
より繰返数比n2/N2を求めて図示したのがFig.4
1.0
0.8
0.6
0.4
§陰
⊥o.2
0
一〇.2
γ0.4
一〇.5
●
Test 1
α 0.25 0.5 0.75 1.0
処 Nl
Fig.4 Relation of n1/NI to n2/N2 under σ1=σ2=11kg/mm2
である.斜めの直線は(1)式を示すもので,この直線よ り下側が寿命が延び強化されたことを示し,上側が弱 くなったことを示している.この図によれば,n1/N1
=0.125で著しく強化されている.すなわち繰返しの 初期に,さらに予加工を加えれば一一層効果的であるこ
とを示している.
このことについて少し考察してみよう.予加工によ る最終的なすべりの状態までを1度で行なった場合よ
りも,途中に応力すなわちすべりの繰返しを入れた方
が転位論的にも好結果となるためと考えられる.これ は引張りが一方向のすべりであるのに対し,応力繰返 しによるすべりの繰返しは近接するすべり面で行なわ れ,その後さらに行なわれる引張りは転位が安定した 状態で行なわれるためであろう.他方予加工として引 張りの代りに疲労試験をした予ひずみ材の疲労試験で は,予疲労試験は効果も被害もないという報告7)もあ るが,これは予加工として十分有効な応力,繰返しで あったかどうかに疑問があり,疲労被害の立場からは 2段2重の疲労試験とも考えられるのでむしろ弱化の 傾向さえあると考えられるのである.
n1/N1=0.25ではあまり影響はないが, n1/N1=
0.4,0.5および0.75では弱化の結果となった.これ は応力繰返数が多くてすでにslip band crackが結 晶粒内に発生し,これに2次引張りを与えた際この疲 労き裂が開口するのが観測された.すなわちこの繰返 数では転位の移動は安定の域を脱して微小き裂の発生 に寄与していることになる.
つぎに2次応力のレベルを変えて疲労被害の程度を 調査しよう.1次応力としてσ1=9.5kg/mm2,2次 応力としてσ2=11.Okg/mm2を選べば, S−N線図 上でεp=1.3%,σ1=9.5kg/mm2の寿命はNo=
16.62×105,εp=2.6%,σ2=11.Okg/mm2の場合の 破断寿命はN2=6.915×105である.この応力での繰 返数をn2とすればn1/No=0.125,0.25,0.5およ び0.75による破断までの繰返数比n2/NoをTable 2 より求めて図示すればFig.5のようになる.この実
1、0
0.8
0.6
ミ陰
∴ o.4
0.2 Test 2
00 0.25 0.5 0.75 1.0
ηL No
Fig.5 Relation of n1/:No to n2/N2 under σ1=・9.5kg/rnm2 andσ2=11 kg/mm2
験では一様に弱化の傾向を示している.1次の応力繰 返し後の光学顕微鏡による切欠底の観察および電解研
磨による約20μの表層除去後の観察によれば前述の σ=11.O kg/mm2のような疲労き裂の発生は見られ なかったが,材質的には被害を受けていたことになる.
本実験は予加工の繰返しと疲労試験とが重複してい るのであるから,予加工を半サイクルの応力繰返しと 見なせば重複荷重による一一種の被害試験ということが できる.したがって被害法則として一般的なMiner の直線被害法則との関係について考察してみよう.被 害試験として一般的で最も研究が進んでいるのは2段 2重試験であるが,確断・非破断による疲労試験では,
1次応力が過大あるいは過小応力によって材料は弱化 あるいは強化の傾向があり,また1次応力と2次応力
とが高から低へ,あるいは低から高に移行する場合に も結果は異なる.すなわち応力繰返しの履歴が影響す るのである.したがって一般にはMinerの法則は満 足されないし,そのたあいろいろの研究がなされてき た8)が,微小き裂の発生寿命N1あるいはN2を基準 寿命にとれば,Minerの法則は成立することがわか った9)10)11).しかし,これらはいずれもS−N線図 としては1本の線を基準にして判定されているのであ るが,本論文の場合にはεp=1.3%とεp=2,6%の2 本のS−N曲線を使用することになるため,その考え 方は甚だ複雑である.たとえ微小き裂発生を基準にと っても予加工につづく応力レベルや繰返数を含めての 疲労試験の影響,あるいは逆に予加工の程度が次の疲 労試験に与える影響などは材料の種類によってもその 程度が異なり,すべて不明である.しかしながら第1 近似としてはMinerの法則が成立するとして2本の
S−N曲線を用いての考察が必要となろう.
Minerの法則はじめ被害試験は応力レベルのみを 変えて被害を調査するのであるが,本研究においては ひずみ量を導入している.このことも現象を複雑にし ている.しかしボルトの締付けはトルクレンチによっ て行われているが,これはひずみによって制御される 方が望ましい.
このように実験における予加工としてはすべてひず み量を用いた.1回目εp=1.3%は処女材であるので 問題外として,2回目のεp=1.3%の引張りの際には 疲労による加工硬化あるいは軟化が生じる.この状態 を調査する目的で第2回引張りの応力を図示したのが Fig.6である.同じ塑性ひずみεp=1.3%を与える のに,低い応力から高い応力へと応力レベルを変えた 実験2の方が加工硬化していて処女材のεp=2.6%を 与える応力より高い荷重を必要としているにもかかわ らず疲労強度は低下している.また実験1のn1/N1=
0.5,0.75では荷重の低下が著しいのはすでに軟化が
宥 ミ 譜
b
32
30
28
26
24
22
鰯 一 一 軸 一 一 一 一 一 陶 }
● Test 1 O Test 2
0 0.25 0.5 0.75 1。(し
塑 Nl
Fig.6 Relation=of I11/NI to second working streSS to plaStic Strain。
Broken line indicates the stress at εP=2.6%.
起こっているためと考えられる.
このように予加工と応力繰返しの組合せは影響しあ う因子が多く,複雑で,明確な現象の解明には至らな かった.更にはεp=1.3%というひずみは切欠底最小 断面についての公称対数ひずみであるため,切欠きに よるひずみの集中を考えれば,このひずみは少し大き 過ぎたうらみがある.今後この点も検討の必要があろ
う.
4,結 論
ボルトの増し締めの問題を切欠試験片の予引張りと 疲労試験の組合せとして解析しようと実験を行なった.
またボルトの締付けはトルクレンチよりもボルトのひ ずみで制御される方が望ましいので,予引張りはひず みを一定とした.増し締めに相当する2回目の加工も 問題を簡単にするため1回目のひずみ量と同じとし,
総ひずみ量の加工をされた試料と疲労強度を比較検討
した.
この実験結果によれば,同一応力レベル(σ=11.O kg/mm2)で各ひずみ量をεp=1.3%としたものは,
1次の応力繰返数比が少ない場合(n1/N1=0.125)で は材料は強化され寿命は延びている.しかし繰返数比 の大ぎいところでは疲労による被害のために低下して いる.また各ひずみ量はεp=1.3%と同一で,応力レ ベルをσ1=9.5kg/mm2からσ2=11.O kg/mm2 とした場合には,すべて弱化の傾向を示している.こ のように2駿加工は1段加工に比してごく初期の場合 を除いて不利となっている.
本実験のようにひずみを考慮した重複試験では,一 般の被害試験のように1本のS−N曲線を用いるので はなく,2本以上のS−N曲線を使用することになる.
この2本目以上の線には加工硬化の影響が含まれてい るとすれば,疲労における被害がMinerの法則が成 立すると考えられることによって検出されることにな
る.
なお,1回目および2回目の加工量については今後 実用上の立場を含めて検討の必要がある.
終りに本研究を遂行するに当り,当時の学生山田雅 人,山田邦男(三菱重工)の両君は熱心に実験に尽力 された.ここに深く感謝したい.
参考文献
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2)真武;材料,16−168(昭42),732
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Conf. Fatigue of metals,(1956),235 9)西谷,吉川;日本機i械学会論文集.34(昭43)
10)真武,西谷;日本機械学会講演論文集 No.213
(昭44−10),129
11)真武,西谷;長崎大学工学部研究報告.第3号 (昭47−12),1