• 検索結果がありません。

字幕制作を使った語学学習(中国語)の 構想と実践

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "字幕制作を使った語学学習(中国語)の 構想と実践"

Copied!
28
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

字幕制作を使った語学学習(中国語)の 構想と実践

間 ふ さ 子 甲 斐 勝 二

"

王 毓

!

はじめに

平成23年度5月に出された『私立大学教員の授業改善白書−平成23年度の 調査結果』(公益社団法人私立大学情報教育協会)によれば、授業で直面して いる問題点として、学生側には「基礎学力の不足」「自発性の不足」「学習意 欲の低下」が指摘され、その原因として「学びの動機付けが十分に機能してい ないことも考えられる」とし、教員自身側からは、「学習意欲を高める工夫が ほしい」「予習・復習の習慣づけが難しい」とのため息が記され、その問題解 決の努力として「学習意欲を高める授業設計・運営の工夫」「授業中の理解度 把握」「対話型授業の徹底」が挙げられている。さらに、個別の教科を越えて、

大学全体の課題として、「自律・自立を促す教育指導の強化」「教育・学習支 援体制の充実」「人材育成に対する意識改革」などの必要性が示されている。

福岡大学では、エクステンションセンターや就職支援センターなど学部教育と は別の組織でも「大学としての課題」の解決に取り組んでいるが、「大学」と

間ふさ子:人文学部准教授 甲斐勝二:人文学部教授

張":言語教育研究センター講師 王毓!:言語教育研究センター講師 1

(2)

いう教育の場を考えれば、これらの課題も本来授業の中で解決されねばならな いもののはずだ。

本学人文学部東アジア地域言語学科の専門課程では、有志教員により2 年より中国や韓国の映画に日本語字幕をつける作業を授業や課外授業に利用 し、各種の教育実験を行ってきた。その成果の一部は本学所在の福岡市が主催 する文化活動であるアジアフォーカス・福岡国際映画祭で公開し、また報告書 も作成している*1

この字幕制作作業は、学習への導入の仕方によっては、各種の効果が見込ま れ、先掲の『白書』に挙げられたいくつかの課題の解決にも効果があるばかり でなく、さらに近年大学に求められる地域貢献にも結びつく作業でもあると思 われる。よって、何かの参考にされる方もあろうと、機会があるたびにその内 容紹介や資料を掲載してきた*2。20年度秋には字幕制作を使った教育効果を 巡って、主に映画への字幕作成の観点から語学力の向上と地域貢献という面に 重点を置いた報告をし*3、21年度夏には語学力向上のためにおこなっている 授業実践(中国語)についての報告もしている*4。地域貢献としては、アジア フォーカス・福岡国際映画祭へ参加を継続する他、過去に制作した字幕作品を

*1課外授業を利用した映画の字幕の上映会として,福岡国際映画祭に29年より参加。

現在に至るまで3年間、学生と教員が作成した字幕をつけた中国映画・韓国映画の上映 会を学外のホールで催し、好評を得ている。後述部分参照。

*2たとえば、間ふさ子「中国映画『五朶金花』の字幕翻訳:新しい語学教育法を考える」

(福岡大学研究部論集A:人文科学編Vol.No.3平成20年12月)同「第2回福大生に よる東アジア映画字幕制作・成果発表会について」(研究部論集A:人文科学編Vol. No.2平成23年11月発行)。李秀!・甲斐勝二・間ふさ子・熊木勉「映画字幕作成作業 を通じた学生への語学教育の試みについて−第2回東アジア地域言語学科学生有志によ る字幕制作成果上映会を中心に−」(福岡大学言語教育研究センター紀要第9号 2 年12月)。また報告書として『地域共生 地域貢献』(20・3)等々。

*3間ふさ子「映画字幕制作による教育と地域貢献の結合の試み」(平成22年度教育改革 ICT戦略大会 主催私学情報教育協会 20年9月3日)

*4甲斐勝二「アニメーション映画の字幕付けによるグループ型総合学習」(平成23年度 ICT利用による教育改善研究発表会 主催同上 20年8月10日)

2

(3)

まとめて地域住民向けに公開する活動も始めた(七隈映画祭、これについては 後述)。字幕制作作業の成果の蓄積が進めば、公開の機会もさらに増加すると思 われる。

字幕作成を授業に取り入れ始めて既に5年が経過し、当初は手探りで始めた 教育実験も、次第にその可能性や効果について大まかながら見通しも出て来た。

この小論では、主に筆者らが関わる中国語教育の立場から、字幕作成の語学学 習への効果と地域貢献について、現在までに気づいた教育効果や今後の可能性 などを提示し、現段階のまとめを試み、ご批判やご教示を賜ろうと考える。

論述の手順として、初めに字幕制作の利用による教育効果とその地域貢献の 可能性についてのべる。これは「構想」としての位置づけとみなしていただき たい。次に、教育効果検証の「実践」となる中国語教育のうち20年後期及 び21年後期に行った授業の様子を紹介し、最後には、構想のもう一つの視 点である地域貢献について報告する*1

字幕制作による語学教育と地域貢献の結合の試み

まず字幕制作を語学教育の授業に導入する目的を述べ、続けてその教育効果 及び地域への貢献へと進みたい。

*1以上の内容は、平成22年度・23年度に開催された私学情報教育協会主催の各研究発 表会での間と甲斐の報告に基づくが、幾つか新しい視点や資料を加えており、現在の時 点での新版と言えるものである。構想や理論に基づいて実践がおこなわれ、それらの実 践から再度構想や理論が生まれるというのが、実際の関係であり、かかるフィードバッ クを繰り返しながら今後も進むものと考えている。なお、この字幕作業の各種の発案や 企画、資料収集などは共同研究者の間がチームの主体となって進め、張・王は各種作業 資料の作成を、甲斐は作業の全体的な調整を行っている。この論説は主に間の仕事を甲 斐がまとめたものである。

3

(4)

1、目的

この取り組みは、人文学部東アジア地域言語学科で有志が正課の科目及び課 外活動として行っているものである。本学科は中国コースと韓国コースという 二つのコースを持つ。この活動は、中国・韓国映画に日本語字幕を付けるとい う方法で、本学科各コース学生の語学学習意欲を向上させつつ、映像を通して 東アジアに対する理解をより深めることによって、まずその教育の成果をあげ、

次に完成した日本語字幕付き映画を市民向けに上映することで、本学の所在す る北部九州市民の東アジア理解促進の一助とし、以て本学科の社会的責任であ る地域貢献を果たそうという内外二つの目的を持つ取り組みである。

2 学生への教育的効果について

これまでの実験的な取り組みの結果、字幕制作の教育的効果は以下の5点に まとめることができる。

(1)新しい形態の語学学習に学生が興味や意欲を感じ学習意欲が向上する。

(2)外国語のリスニング力・解釈力が総合的に鍛錬される。

(3)中国・韓国の社会、歴史、文化に対する具体的な理解が深められる。

(4)外国語解釈の基礎となる日本語の表現力が向上する。

(5)共同で字幕制作をすることにより自律性や責任感を持たせ他者との協 働の訓練ができる。

ほぼ単一言語を話すと言って良い日本で、外国語を学ぶ際にしばしば指摘さ れることの一つに、言語使用の環境の問題がある。学習する外国語が日常的に 使われる環境に身を置きにくいという問題だ。外国語映画は学習者にそれを一 時的に提供してくれるメディアである。その外国語映画に日本語字幕を制作す る作業は、学習者に映像の中の発話場面に触れながら繰り返し台詞を聞き、そ

4

(5)

の場面を踏まえて要点を理解し解釈することを促す。従って、上記のうち(1)

から(3)の効果は、外国語映画を利用するならば、その取り組みを行う前から 当然予想されるものである。

わざわざ字幕制作を授業に導入するその教育効果としてとりわけ注目したい のは(4)の日本語表現力の向上であり、次に(5)の他者との協働の訓練である。

1)日本語力の向上について

日本語力の向上にここで注目するのは、外国語理解の基礎は日本語力であり、

初学者にあっては特にそうだと考えるからである*1。近年の本学の調査では、

学生の日本語力の低下が危惧されていた*2。本学の学生だけがそうだというわ けではないだろう。先掲の『白書』にある学生の「基礎学力の低下」もここか ら来ると考えられる。日本語力の向上は現在の多くの大学で喫緊の課題なのだ。

一方、外国語学習で解釈に使われる日本語は、通常の講読学習やリスニング 学習であれば、そこに現れる文献や発話を正しく解釈するものであればよい。

その時その日本語は多少稚拙でも内容の理解が確認されればそれでよいし、そ の解釈の長短は問われない。厳密な翻訳を課題としたものでない限り、多少も たもたしていても、或いは重複があっても、内容の理解ができていれば、おそ らく許される。

しかし、日本語での字幕制作の場合は、日本語としての洗練が必要となる。

なぜならば、字数に制限があるからだ。つまり、役者やナレーター等の映像に 付された発話の長さに沿った表現にせねばならないのだ。通常1秒4文字前後 に収めて字幕をつける時*3、そこで使える文字数は映像の発話の内容に比べて

*1以前英語教育の講演で甲斐は、「留学して外国語を学ぶ場合、1年2年程度の留学では 国語力を越えられない」という説明を聞いたことがある。経験的には正しく思われるが その検証についてはまだ確認していない。

*2本学が実施した平成23年度日本語力テストでは、22年度に比べて成績上位者が減っ ており、中学生以下の実力の学生の存在も一定度いることが示唆された。

*3我々が利用している字幕付けソフトSSTG1は、1秒の箱割り(発話部分)に4文字を 5

(6)

短すぎるのが一般的である。よって、如何にして発話の内容を字数制限の中で しっかりと伝えるかという日本語力が求められることになる。しかも、字幕は 単純な会話文ではない。「文字は読むもの」という立場になれた我々には、む しろ書き言葉的な表現でないと読みづらいのである。そこで字幕作成の作業は、

その映像場面を正確に把握し、映像で分かる事柄は極力省き、発話の要点を発 話時間にふさわしい字数に切り詰めて表現する作業となる。この作業に日本語 の語彙力や表現力を鍛える作用があることは論を待たない。辞書に書いてある 日本語の語彙や紋切り型の訳語をそのまま持ってくるわけにはいかないからで ある。このような作業は、外国語学習能力の底上げに必要な日本語力の向上に 大きな作用をもたらすと我々は見ている。また、これは現在心配されている学 生の基礎学力の底上げにもつながるはずである。

2)学習者の自律と他者との協働について

次に学習者の自律と他者との協働について述べよう。字幕というのは1人の 作業者が最初から最後まで自分の文体で一貫して作るのが筋が通ってよい。こ れは事実であろう。私たちも当初はそう考えていた。しかしながら、実際の授 業では、使用するソフトのライセンスの数量が、予算の関係で限られてしまっ たため、数名一班の協働作業を選ぶことになった。これはやむを得ない事だっ た。この協働作業は予算の制約から生まれた窮余の一策だったのである*1。と ころがこれに予期せぬ効果が見つかった。それが学習者の自律と他者との協働 の訓練の可能性である。

我々の観察では、最近は人と深く関わることを避ける学生が多いように見受

基準とする。この基準の妥当性については、我々で検討したわけではないが、これまで 作成した字幕映画への市民の反応からすると、年齢差に関わらず理解されるには概ね妥 当な数字だと思われる。

*1字幕作成に利用するカンバス社のSSTG1は、ライセンス料を毎年更新するため、そ の予算の確保継続の必要がある。

6

(7)

けられる。とりわけ「批判されること」に対して非常に敏感或いは臆病で、し ばしば「人に批判されないために人を批判しない」という態度になる。この傾 向は、先掲の『白書』にも「自発的に質問・発言をしようとしない」学生の増 *1となって現れている。これでは大学生としては失格だし、3年4年になっ ての会社訪問で、あちこちから批評批判されてがっくり来ることも起こるだろ う。

例えば、本学科において学生たちにグループで調べものをさせた場合、各自 が分担して調べてはくるものの、それは羅列されるばかりで、グループでそれ らを有機的に結合して一つの整体にするという作業はほぼなされない。当初字 幕を作成したおりも同様で、各自が他の担当には気をかけず、自分の担当箇所 ばかりを作ってきた。

ところがこのように字幕をつけた映像を放映してみると、前後で話はつなが らず、同じ事柄も違う日本語となり、統一性の欠如、推敲の不足を目の当たり にすることになる。そして、一篇の作品として完成するには、どうしても改良 が必要だと知ることになる。つまり、グループ内で分担して各自がつけてきた としても、その字幕に対して、意見交換をして調整し改良しなければ、統一感 のあるものにはならないということが一目瞭然なのである。

その結果、いろいろな訳語のアイデアを出しながら、全員でその字幕が妥当 なものであるかどうかを逐一検討して行くことになる。その作業を通して一人 一人の批評眼が養われ、意見提示への勇気及び批判への耐性ができ、いっそう よいものに仕上げようとの意欲につながって行く。これが協働或いはチームプ レーのよさの原点であり、そのチームプレーのよさを成立させる各自の責任感 や自律性を導くものでもあろう。このことは学生に対して行ったアンケートに

*1『白書』にはアンケートの結果として、「3年前の設問では、「コミニュケーションを しようとしない」に対しては1割台であったのが、今回の「自発的に質問・発言をしよ うとしない」に対して4割台であり、指示待ちで消極的な学習態度に対する教員のもど かしさを表象している」とある。(p1)

7

(8)

よっても確認されている。*1

特に、どこまで自分の意見を主張するのか、相手の言い分をどこまで取り入 れるのか、その折り合いを互いに探ろうとする努力はこの作業で是非経験して おいてほしい。これは今の学生の最も苦手とするものの一つにみえるからだ。

このような「他者を生かしつつ自分を生かせる」力こそ外国学を学ぶ本学科の 学生には必要なものに思われる。なぜなら、将来国外に出て異文化と否応なく 接するとき、それは是非とも求められる力だからだ。語学力自体は個人的な力 量の領域だろうが、実際の社会ではその語学を使って仕事ができる事が求めら れるのだから、仕事の中で使えてこそ学習の価値も上がるはずだ。その協働の 訓練がはからずも字幕制作の場で行い得ることが分かったことになる。

3、地域貢献

この取り組みから次に導かれたのが、地域への貢献である。

本学が所在する福岡市は10年代より東アジアのゲートウェイとして文化 交流を積極的に推進しており、東アジアの社会や文化に対する市民の関心も非 常に高い。本学科が取り組んでいる映画の分野に於いては、新しいアジア映画 を紹介する国際映画祭が毎年開催され、多数の市民が参加している。福岡市総 合図書館のフィルムアーカイブには多くのアジア映画が収蔵され、特集上映・

回顧上映も頻繁に行われている。

*1当初から3度行った映画字幕制作では、いずれも参加した学生にアンケートを取った。

その際、他者との協働に関して、以下のような意見が主流を占めた。

「班ごとの作業は、一人称や口調の統一等、いろいろと大変な面もあったが『ただ単に 訳せばいいのではない』と気づけるよい機会になった。

「チームを作ってやることで、いろんな意見が出ていいものが出来上がって行くのがと ても面白かった。

また「みんなでやるので責任感が出た」という意見もよく見られた。

一方、以下のような意見があったことにも注意を払うべきであろう。

「個人的に『凄くよい訳ができた』と思えた所が、話し合っているうちに消されてし まったのが残念だった。

8

(9)

とはいえ10、60年代の作品となると、韓国映画は多少あるようだが、中 国映画はほとんど収蔵されていない。従って、これらの作品が日本語字幕付き で上映される機会は極めて少ないのが現状だ。これは敗戦から冷戦期にかけて の日本と東アジアの関係の影響だが、その結果私たち日本人の多くが、この時 代――中国や韓国が新しい国造りに力を入れていた10、60年代の理解に欠 ける、ということになってしまった。それを補うものの一つが本学科が現在字 幕をつけ続けている映画作品群ということになる。

初めて試みた29年の福岡映画祭参加による成果発表上映会には多くの市 民の来場を得た。そこで上映した学生の制作した字幕も概ね好評であったし、

これまで日本語字幕では見られなかった作品を見ることができてうれしかっ た と い う 意 見 も 多 か っ た。地 元 の 新 聞 や ニ ュ ー ス で も 取 り 上 げ ら れ て い る(図1)

この映画の上映会で実施したアンケートの結果や評価により*1、10、60年 代の東アジア映画に日本語字幕をつけるという活動の意義は十分あると確認で きる。「おもしろかった」という意見が多かったし、次回を楽しみにしてくだ さる方もまた多かった。今後、作品をすこしでも増やすことで、より大きな貢 献も可能ではないかと思う。教育効果としてなにより貴重であったのは、学生 たちが自分たちで作成した字幕を一般公開し、会場では受け付けや案内などで 市民との接点を持ち、地域とのつながりを感じえた点であろう。

長編映画の他に試みているのが、子ども向け短編アニメーションへの字幕作 成である。これは主に時間に制限のある中国語の授業で取り入れることになる。

どこの文化でもそうだろうが、子ども向けの作品にはその文化で求められる人

*1間ふさ子編『地域共生・地域貢献』(平成21年度福岡大学「特色ある教育」「理論 的・実践的『地域』教育プログラムの総合的教育」報告書20 3.1)に29年度の 上映アンケートが、間ふさ子・熊木勉『第2回福大生による東アジア映画字幕制作・成 果発表会について』(福岡大学研究部論集A:人文科学編Vol..No.2 21.1)には第 2回のアンケートが掲載されている。

9

(10)

間観が具体的な行動を通して示されるものである。なぜならば、子どもとはそ の文化の継承者でもあるからだ。よって、物語の内容は単純でも、そこには子 どもが生きる当時の生活思想や社会思想に基づいた物語が進行する。それは学 習者にとっては当地の人々の基本的考え方を知るよい資料だろう。特に2年生 レベルで、半期15回の授業に字幕制作作業を導入しようとすれば、内容が複 雑な長編映画は扱い難く、言葉の明快な子ども向けの短編アニメーションなど が主とならざるを得ないのだが、それもなかなか侮れない。

(図1)西日本新聞29年9月23日21面 10

(11)

4、まとめ

字幕ソフトを使用した語学教育の試みは幾つかの大学で行われているが、本 学科では特に手間と時間のかかる映画の字幕制作にも取り組み続けている。そ れは、大学の教育研究の成果を単なる教室のなかで終わらせず、地域貢献に結 びつけようとの願いがあるからだ。とりわけ個人性が高く実用性に欠ける人文 科学の分野で地域貢献になりそうなものといえば語学講座とか教養講座以外に はなかなか難しく、このような学生も参加できる作業成果の公開は貴重な仕事 になるだろう。

もちろん情報機器を利用しながら行うこのような作業には、ソフトの確保か らハードの充実まで、予算を含めて今後解決すべき課題は多い。しかしながら、

中国や韓国の映画を対象として、いわば部品作りから始めて協働作業で一つの 字幕作品を作り、しかもその作品に市民の批評まで得られるというこのような 経験は、これに参加する学生たちに「東アジアをより深く知る」人材として育 つ機会を与えることができる。それは字幕作品提供にとどまらず、北部九州 という中国・韓国に隣接する東アジアの一地域での人材の育成というさらに大 きな貢献につながるはずだ。

授業実践 学生への教育効果を巡って

先掲の「試み」の二つの柱、「学生への教育効果」と「地域貢献」のうち、こ こでは前者について、20年及び21年の間と甲斐がおこなった中国語によ る具体的な実践例「アニメーション映画の字幕制作によるグループ型総合学習 の実践」として年度順に2例報告し、実際の授業で得た今後の検討課題を提示 する。

11

(12)

アニメーション映画の字幕制作によるグループ型総合学習の実践

1、実践例 A 20年度後期 1)授業の構成と進行

この授業は昨年後期本学東アジア地域言語学科中国コース2年生の専門科目 コミュニケーション中国語ⅠB(半年14回)の2クラスを使って行った。担 当は間・甲斐で、登録学生はそれぞれ25名・28名である。教材は「オタマジャ クシとお母さん(小蝌蚪找!!(上海美術電影制片厰10/15分)を利用、

迷子のオタマジャクシが母蛙を探す童話をアニメーション化したもので、小学 生低学年レベル、伝統中国画仕立ての彩色水墨画による映像に著名な女優のナ レーションがついた佳作である。総計で13の会話文があり、主に単文で構成 されている。

授業の前半は聞き取り及び解釈を中心とする。この期間は1人PC1台が利 用できる一般のPC教室を利用して映像を流し、学生各自で聞き取りをして、

配布したワークブックに記入、授業終了時に正解(ピンイン:中国語音のロー マ字表記)による自己修正、及びピンインに対応する漢字を当てはめて合理的 に理解する作業を課す。次回の授業ではそのピンインを漢字に改めた簡体字文 を確認して解釈及び発話練習を行い、そして次の聞き取りに進む、これを繰り 返した。このとき学生は各自ヘッドフォンを使って、個人のペースで進む。も し遅れれば、課外作業で次週までに追いつくようにさせる。後半は、3〜4名 のチームで、各自の解釈をチームで検討し制限字数のある字幕にふさわしい日 本語を練り上げて行く作業と朗読発表会である。この段階で各チーム毎にPC 1台、スピーカーを使って班員が共に映像を見聞きしながら作業ができるPC

教室に移った。字幕制作にはSSTG1(株式会社カンバス)のアカデミック版 を利用、授業時間で未終了の班はソフトを貸し出し課外に作業を行った。最後 の2回は、各班の字幕を上映しながら班員はその朗読を重ねて演じる鑑賞会を

12

(13)

開いた。鑑賞会では学生に各作品の相互評価を求め且つアンケートによる調査 を行った。最終日にワークブックを提出させ作業の確認をしている。期末の筆 記試験では長期欠席者以外ほとんど合格基準に達している。

授業の日程と各時間の内容、及び教室の割り振りは以下の通り。

授業内容 課外 作業 教室

1 作品鑑賞 原文聞き取り① 簡体字表記・翻訳 一般パソコン教室

1人1台の教室備え付けPC 利用。

学生はヘッドフォン持参

(忘れた学生には貸与)

映像資料は教員側のものを利用 聞き取った後に正答プリント を配布

書き込み用のワークブックの 作成

2 原文講読① 聞き取り② 訂正・入力・翻訳 3 原文講読② 聞き取り③ 訂正・入力・翻訳 4 原文講読③ 聞き取り④ 訂正・入力・翻訳 5 原文講読④ 聞き取り⑤ 訂正・入力・翻訳 6 原文講読⑤ 聞き取り⑥ 訂正・入力・翻訳 原文講読⑥ 班分け

スポッティング**(1) 訂正・入力・翻訳 8 スポッティング(2)

先進PC教室

貸し出したノートパソコンを 3人1組のテーブルで使用する教 室で、3人が同じ画面を見て検討 を加えながら字幕作成ができる 環境となる。(参考写真参照)

9 原文入力・字幕制作(1)

0 字幕制作(2) 随時班にて集合 1 字幕制作(3) 随時班にて集合 2 字幕制作(4) 完成ファイルの提出 3 相互評価(1) 朗読会

4 相互評価(2) 朗読会 ワークブック提出 5 試 試験問題使用***

「入力」:字幕ソフトを利用しやすくするために中国語の文を簡体字で入力しワー ドファイルを作らせる作業。簡体字を使ってPCに入力する経験をこの時初めてする 学生も多く、本学科では中国語入力によるPC利用指導のよい機会になっていること も指摘しておきたい。

**「スポッティング」:字幕の入る部分を指定する作業、いわゆる「箱割」のこと。

***定期試験6割、授業参加評価4割による総合評価。福岡大学では定期試験が主要な 成績評価の手段となっている。

13

(14)

2)アンケートによる授業評価

授業の最終日に行ったアンケートを使って、授業全体の作用と効果を確認し たい。アンケートの問1・3・4については記述部分を作り具体的にその内容を 尋ねている。アンケートの主な内容は以下の通り。(A班・B班はクラス区分、

総数はA+B)

問1:授業の各段階への評価

「聞き取りと読解」への評 価 が 高 く な っ て い る の は

(23:62.8%)、聞 き 取 り と読解に授業の半分を使って いるので当然だろう。これに 平行して問2「向上させられ る語学力」の部分も「聞き取 り」と「解釈力」への注目が 高くなっている(聞き取り33:69.8%;解釈力23:60.5%)

問1の学生の記述部分では、その評価として、「リスニングがよくなった」

(先進PC教室での授業風景 三人組で検討している姿が見える)

14

(15)

「聞き取りが鍛えられる」「リスニングが鍛えられるし、訳もできるから」な ど、聞き取りに関するものが多数あり、この作業が中国語のリスニング力をつ ける作業として一定の成果を上げてその実感を持たせ得たことが分かる。これ は、映像を使った授業であれば当然予想される効果である。

問2:向上させられる語学力の部分への評価

聞き取りや解釈への評価が高かったのは、問1を踏まえて必然だが、「日本 語の表現力」の向上への評価が高くなっていて(23:62.8%)、学生の意識 においては日本語力の向上という効果を認めることができる。母語に対する注 意力の向上は、外語学習においての基本であるので、この注意力を中国語に移 行可能になれば、「会話」力の向上も十分可能になるはずだ。この字幕制作作 業はそのための基礎的な作業とし得ることが確認できる。「コミュニケーショ ン中国語」科目を担当する我々は、経験上日本語によるコミュニケーション力 が外国語によるコミュニケーション学習の基礎であると考えている。発話力や 表現力への向上の意識が低かったのは(13:44.2%)、最後の朗読会がうま く行かなかったことによる。我々は暗唱を求めたのだが、そこまでしっかり やった学生が少なかった。字幕制作完了からの時間が足りなかったことがその 原因であるが、記述部分に「朗読がぐだってしまったので、必要ないのではな いかと思った。やる場合にはマイクを用意してほしいです」とあったので、こ ちら側の準備も足りなかったことは認める必要がある。

問3:グループ学習への評価

グループ学習は、多くの学生がその効果を認めている(33:76.7%)。そ の効果として連帯による責任感への指摘が数名いたほか、「さまざまな意見が 出てきて面白かった」とか、「同じ文でも解釈の違いが見られた」「みんなで意 見を出し合って、こんな考えがあるんだなと感じたから」などの意見が多く、

概ね肯定的だった。もちろん、マイナスとして、欠席者による迷惑、意見のま とまり難さなどの指摘もある。グループ分けを抽選で行ったため、組み合わせ

15

(16)

に心配もあったが、そのなかで対話による共同作業を進めることに効果を見い だしているのは、学生にとってはコミュニケーション力の向上を示すものだと 思われる。

問4:中国語学力の向上との関係

「大変そう思う」「そう思う」を合わせれば、8割を超える学生が語学力の 向上にこの授業を役立てられたと感じている(33:81.4%)。この問いの記 述式の部分では、特に問1・問2で示された「リスニング力」向上の意識が目 立つ。「大変そう思う」と答えた学生はその理由に「発音について確認できた し.ずっと作業に力を使うことで実力も上がったと思うから」「聞く力がつい たと思います.何度も聞くから耳に残ってニュアンスが覚えられます」と答え ている。懐疑的な意見として、「コミュニケーションという授業なのにコミュ ニケーション力は向上できなかった気がする。しかし聞き取りでは結構鍛えら れた」とあった。我々の考えるコミュニケーションの第1段階は相手を理解す ることだから、「聞き取りが鍛えられた」のであれば、それでもこの授業の目 的は果たしたことになる。

3.22年度授業のまとめ

アンケートによれば、インプットに当たる聞き取りと解釈については評価が あり効果も上がったように思われるが、字幕制作の主な作業のアウトプットが 日本語だったために、授業名となる中国語の発話・表現力向上の意識が薄く なったことは否めない。朗読発表に向けて「シャドーイングをすることで早い 発音ができるようになった」と発表会の効果を指摘する学生もいたが、実際の 発表会では、こちらのやり方も悪く、また映像に遅れずについて行けるほど練 習できた学生は少なく成功とは言い難い。この部分がしっかりすると、科目名 に沿った授業本来の中国語の発話・表現力の向上を意識させ得たはずだと次に 大きな課題が残った。

16

(17)

実践例 B 21年度後期

以上の授業結果を受けて、21年度の2年生では、各班の字幕の鑑賞会と、

及び役割分担を明確にした朗読劇の発表会を別々に行うことにした。21年 度前期は、「虎の弟子入り(老虎学芸)(上海美術電影制片厰・12 20分)

というアニメーションを取り上げ、後期では「路辺新事」いう人形アニメを教 材として取り上げた。ここでは先述の授業との比較上、後期の授業についてや はり学生へのアンケートに基づき検討する。

1 授業の内容と進行

授業科目及び学年は先に同じく2年生。間クラスの登録者が27名、甲斐ク ラスの登録者は33名だった。進行表及び教室は以下の表の通りである。ほぼ 前回と同様に、「聞き取りと解釈(個人)」→「3名1組での字幕制作と全体で の鑑賞」→「暗唱会話劇」の3段階としたが、暗唱会話劇の部分は鑑賞会の後 ろに置き、字幕制作が完了後すぐに練習を始められるようにしておいた。字幕 制作の完了は12回までに終わるので、14回目に置いた会話劇までは2週間以 上あることになる。授業ではこのほかに簡体中国語のファイル打ち込みの時間 も一定度確保してみた。これは、コンピュータを使って簡体字ファイルを作る 事で中国語の打ち込みに慣れるようにと考えてである。課外作業とするとやら ない学生も出てきていた。教材は「路辺新事」(上海美術電影制片厰・1 0分)で、その内容はお金を落とした老人とその捜索を助ける少年の物語で

ある。会話文は11句だが、場合によってはかなり長い発話部分もあって、「オ タマジャクシとお母さん」よりも会話の数や構文のレベルは上がっている。小 学校中高学年レベルとみている。先に「オタマジャクシとお母さん」を利用し た際には、その学年ではそれが初めての字幕制作の導入授業であったが、この 学年は前期「虎の弟子入り」を使って解釈練習と字幕制作作業を行っており、

すでに次のレベルに進んでいるとの認識による。授業の進行については以下の 17

(18)

表の通り。会話劇の練習をする時間は十分置いたつもりだし、物語も一篇をほ ぼ均等に4段に分け、各班をそれぞれに割り当てたので、一つの班の会話暗唱 部分は40会話前後となって、1人当たりの会話文は13〜14文となる。もちろ ん長い会話文もあるのだが、班としての負担はそれほど大きいとは思われな かった。しかし、実際に行ったところ、会話劇までちゃんと構成できたのはわ ずかで、個人的には暗唱できても班としては体をなさないところが多かった。

字幕の作成までは授業の中にあり一緒にやれるが、課外では集まってやれるほ どに班としての余裕がなかったためと見ている。自主的な課外学習で学習時間 を補う予定であったが、それも難しいということだろうか。作業時間の配分は、

作品の長さと関係するので、悩ましいところである。

(授業の進行表)

授業内容 課外 作業 教室 ほか

1 全体鑑賞 原文聞き取り① 簡体字表記・翻訳

一般パソコン教室

1人1台の教室備え付けPC

(学生はヘッドフォン持参)

映像資料は学生がVCDを購入 作業用のワークブックを作成 配布

清書中国語のファイル提出 2 ①翻訳確認 聞き取り② 訂正・入力・翻訳

3 ②翻訳確認 聞き取り③ 訂正・入力・翻訳 4 ③翻訳確認 聞き取り④ 訂正・入力・翻訳 5 ④翻訳確認 聞き取り⑤ 訂正・入力・翻訳 6 ⑤翻訳確認 全編鑑賞 班分け 訂正・入力・翻訳 7 スポッティング 字幕制作開始 訂正・入力・翻訳 8 字幕制作

先進PC教室

貸し出し用ノートパソコンを 3人1組のテーブルで使用。3人 が同じ画面を見て検討を加えな がら字幕作成を作る。

9 字幕制作

0 字幕制作) 随時班にて集合 1 字幕制作 随時班にて集合 2 作品上映 相互評価(1) 完成ファイルの提出 3 作品上映 相互評価(2)

4 暗唱朗読会 ワークブック提出

5 昨年度作品の鑑賞 福岡大学メディカルホール

最後の時間は、後に出てくる七隈映画祭を利用し、これまでの字幕作品の鑑賞会を行っ た。後文参照。

18

(19)

2 アンケートによる授業評価

授業の最後に採ったアンケートは総数47枚(間クラス登録者27名の内2 甲斐クラス登録者33名の内27名*1、項目は先に挙げたアンケートとほ ぼ同じなので、比較しながら見て行きたい*2

問1:授業の各段階への評価

ここでは「聞き取りと読解 の向上」への評価が昨年同様 やはり高かったがポイントは か な り 落 ち(27:46.

%)「グループ学習による字 幕制作」のほうに動いている

(17:40.4%)

記述式の部分を見ると、「自 分とは違った考え方の人の意 見を聞くことができ中国語の解釈力の幅が広がったから」というグループ検討 自体に対する意見もあったが、「限られた字数の中で如何にして分かりやすく するか考えるから」とか、「内容をしっかり把握していないといけないからで す、内容理解につながった」「一つ一つ聞きながらの作業でしかも限られた字 数に入れるという中でやったから字幕制作が一番だと思う」との意見があり、

字幕制作の効果に結びつく意見が目立つ。問2の「向上させられる語学力はど の部分か」の問い へ の 答 え と し て、「日 本 語 表 現 力」が 最 も 高 い(37:

3.8%)のはここから来るものと思われる。残念ながら、字幕発表と役割朗読

*1登録者の中には、出席しないままに終わるものもおり、授業参加の実数としては が23名、甲斐が28名であった。アンケートの結果はほぼクラスの意を尽くすものと考 える。

*2問2以外は単数回答だが、中には誤解して複数回答をしたものもいた。その場合でも ポイントとしたので、数字が総数を超える場合もある。

19

(20)

は昨年度よりは向上したものの、やはりあまり高い評価が出ていない(77:

4.9%)。ただし、熱心な学生もいて、この部分を選んだ学生は、「おぼえよう とすることで自然と中国語が頭に入ってきたから」とか「実際に覚えて言葉に することで身につくから」、というように、授業の目標は理解しており、今後 はこのような学生を如何にして増加させるかが課題となるだろう。

問2:向上させられる語学力の部分への評価

ここで聞き取り力(27:59.6%)/解釈力(27:61.7%)の向上への評 価が高いのは、授業の狙い通りであるが、日本語力の向上への注目が一番多い のは字幕作成を使う効果である。中国語の発音や表現力にポイントが劣るの は、問1の役割朗読に対する関心に対応する。授業では進行表を見れば分かる ように、主に聞き取りと解釈及び字幕作成に時間をかけたので、役割朗読練習 が課外の作業となった。先述のように、この部分を充実させるには、そこに一 定度の時間を与える必要があるだろう。アンケートには「一人一人暗唱に意欲 が沸くようにしないといけないと思う」「暗唱発表会はもう少し練習する時間 と発表する時間がほしかったです」といった意見もあった。こちら側の工夫不 足と環境作りを考えさせられる記述である。

問3:グループ学習への評価

グループ学習については、昨年同様に「よかった」との答えが多数を占め、

割合は昨年より上がっている(47:85.1%)。この作業が歓迎されているこ とが分かる。「日本語字幕をつける際いろんな意見を出せるし聞けるから」「友 達の意見を通して疑問が解決できたりしたから」という反応は狙い通りだった が、「良し悪しがあった」という回答も一定数おり(17:23.4%)、そこで はやはり欠席者やフリーライダーの問題も指摘されている。「グループ学習は よい面もあるが悪い面もあると思います。他で誰か1人に任せっきりになると ころがあったので」とか、「グループ作業では作業をする人とあまりしない人 と分かれるから」といった意見が記されていた。教員の観察では、無駄話ばか

20

(21)

りが多い班も見られた。実際の成績評価自体は個別のワークブックの提出や、

定期試験があるので、個人評価の面が大きいのだが、このような欠席者やフ リーライダー及び無駄話を如何にして減らすかは、協働作業の効果を上げよう という目標を持つこの授業では対策を考える必要がある。

問4では、多くの学生が中国語の向上にこの授業が「大変役立った・役立っ た」と考えている(47:87.3%)。その理由の記述ではとりわけ聞き取り力 の向上への意識が多数あった。「よく分からない」と答えた学生のなかにも

「聞き取りはよいけど、チームワークがないと難しいから」とその理由を記し た学生や、「自分がまじめにできていなかったから」と自己反省を書いている 学生もいて、こういった授業が語学力の向上に役立つことを否定する意見はな かった。協働作業を如何にして生かすかが問題であろう。

3 23年度のまとめと今後の課題

3年度も22年度同様、一定の教育効果はあげられたと考えている。しかし ながら、22年度の反省に基づき、教材の会話劇を試み、発話力の向上を目指 したものの、この部分は未だ成功したとはいえない。発話練習にまで持って行 く意識向上を目指す工夫が今後は必要だ。我々としては「最後には前に出て暗 唱の会話劇をさせますよ」と何度も告げたのだが、それだけではまだ足りず、

協働作業を生かすような形で盛り上げて行く工夫が求められている。また、発 話練習をする時間を確保することも考えねばならない。授業時間の確保のため には教材自体を短いものとし、聞き取りや字幕作成へかける時間を減らして、

授業時間内で会話練習を捻出する必要も出てくるだろう。我々としては、各班 が課外に集まって会話練習ができる時間は十分あったはずだと考えてはいるけ れども、実際は課外で学生が集まるのはなかなか難しそうである。場合によっ ては、この科目は聞き取りと解釈及び字幕制作に特化してしまい作業を単純化 して発話の方は別の授業に任すのもあり得るが、その場合、本学科のカリキュ

21

(22)

ラム上他の科目との役割分担調整が必要となる。中国コースで2年次に振り分 けてある会話系の科目はこの科目しかないからだ。

「字幕制作」の授業への応用は、以上の実践で学生の興味も高め且つ語学力 を向上の意識を持たせられる効果は確認できたので、今後も各種の実験を試み ながら進めて行こうと考えている。継続して行くなら、適切な教材の探索も常 日頃気にしておく必要もある。

来年度(22年度)の課題としては、現在のところ発話部分の充実を考え ること、及びチームワークをうまく導く工夫を考えることである。発話の充実 は、実際に練習できる時間を授業時間に組み入れることでその対策は可能だ。

字幕導入の目的でもある協働作業への工夫としては、これまでこの段階に入る と完成まで各班に任せていた作業に対し、彼らに必要な事項と日程を配分させ た作業計画表をつくらせることを考えている。学生にその進捗状況を毎時間報 告させて、各班が建てた作業工程にしたがって作業を進行させる、という計画 である。これによりチームに対しての個人の責任感の向上に加え、チーム作業 へのマネッジメントの視点を導き、学生が現在必要とされている自律性の向上 を促す作用も導びけると思っている。また、この科目が総合的な語学力の養成 に効果があるという視点から、別の授業で感じた講読力の弱さをここでも強化 できないかと考えた計画もある*1

*1字幕制作の効果については、受講者の意識を反映するアンケート以外に、その実力の 向上を計る客観的な検証をおこなう必要性があるのだが、本学科の学生はこの科目だけ で中国語を勉強しているわけではないので、その効果の直接の証明は難しい。正規の授 業での比較実験も現在の条件では実施し難いので、客観的な実力向上の検証方法は今後 の課題となるが、当面は実験を繰り返しながら解決可能な関門から越えて行きたい。

22

(23)

地域貢献の実践

ここでは、先掲の「構想」であげた市民への公開という地域貢献について現 在の実践を記しておく。

本学科で制作した字幕を添付する上映会は、中国映画も韓国映画も29年 より毎年アジア・フォーカス福岡国際映画祭(以下福岡国際映画祭と略称)に 参加するという形で行ってきた。これは福岡市が主導する「アジアマンス」企 画の一つでもあって、これまで3年続けて行っている。毎回観客も多く概ね好 評を維持していると言えよう。この活動は本学が所在する福岡市への地域貢献 の一つであると考えている。これまで公開した映画は、韓国映画を含めて、以 下の通り。

長編映画の場合は字幕作成に非常に時間がかかるので、主に課外授業とし希 望者を募って行っている。中国語の場合は曜日と時間を決め集合し、1年計画 で進めている。これについては以下に引く読売新聞の紹介記事を参照されたい。

2年1月には、本学科の「魅力ある学士教育課程」企画の一環として、本 学所属の研究所「福岡・東アジア・地域共生研究所」と共同で地域への貢献を 目指し、福岡国際映画祭に参加した字幕作品や、これまで授業に取り上げた作

中国映画 韓国映画

9年9月 3:00〜17:3

福岡市・天神 エルガーラホール

白毛女

監督:王濱・水華 9 96分

青春双曲線 監督;ハン・ヒョンモ 6 95分 0年9月

3:00〜17:3

福岡市・天神 エルガーラホール

李双双 監督:魯!

2 97分

3等課長 監督:李奉来 1 15分 1年9月

0:30〜17:3

福岡市・天神 エルガーラホール

白毛女 今天我休息

監督:魯!

9 9

運命の手

監督;ハン・ヒョンモ 4 95分

23

(24)

品を集めた上映会を行った*1。上述の授業で取り上げた中国語アニメーション への字幕制作成果もプログラムに組み込んでいる。授業で取り上げる作品や、

福岡国際映画祭参加字幕作品は、年ごとに蓄積されて行くのだから、これを死 蔵せず市民に公開するのは学部学科として可能な地域への貢献となるだろう。

この企画は「大学のある街作り・第1回七隈映画祭」と名を打ち、福岡大学 病院診療棟に新設された「福大メディカルホール」を利用して、近辺地域に住 む方々、及び病院の入院患者を主な対象とするものである。福岡大学病院の入 院患者の中には少年少女もいると聞き、授業で取り上げたアニメーションもプ ログラムに入れてみた。アニメーションは画面だけでも大体の内容は推測でき るので、大丈夫と考えたが、子どもにとって字幕は、吹き替えに比べて難し かったかも知れない。題名の「大学のある街作り」とは、地域住民に「七隈地 区に福岡大学が存在する効果や価値」を訴えられればと思い、「第1回」とい うのは、授業や課外授業で蓄積される作品を、市民に向けて公開し続けようと 考えてのことである。「七隈」の名は本学の所在する地名を利用し地域性を示 した。この企画は、読売新聞・朝日新聞・西日本新聞に取り上げられて、参加 した学生諸君も多いに意気が上がったと思われる。以下に読売新聞と朝日新聞 の当該の記事を上げておきたい。(読売新聞の記事の写真で、中央で見上げて いるのが、この企画を担当した間准教授、その周囲に坐るのが本学科の2年生 から4年生の学生である。手前の学生がノートパソコン上で字幕ソフトを使っ ているのが見える。この画像をスクリーンに投影し、それを見ながら検討を進 めているところ。

*1ここに挙げていない字幕作品として、「家」「南京春暖」「中州大観」「路辺新事」な どまだ幾篇かあるのだが、それについては今後公開の機会を待ちたい。

24

(25)

25

参照

関連したドキュメント

Ⅴ.考察

付けを行うことを意識した。漫画の世界や実際に

実践研究を行うことによる現場のカリキュラム更新過程を描いている。そして、最終的に

⑦教育委員会や学校との連携については,今のところ講演のみ。それ以上は余裕がない

「今」の実践を行っているわけであるが、その実践知のせいで「これは

生同士の検討会でも考察の視点になった。

清 水 康 也 66 である。もちろん,現代のような高度な情報社会における国際交流語としての

椿油作り実践の課題-児童の学びを教科学習にどう展開させるか- 次に、椿油作り実践の課題を考察してみよう。その課題について