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(三笠昌樹)論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(三笠昌樹)論文内容の要旨

主 論 文

Regulation of Tcf7 by Runx2 in chondrocyte maturation and proliferation.

(軟骨細胞の成熟と増殖における Runx2 によるTcf7の調節)

(三笠昌樹、六反田賢、小守寿人、伊藤公成、曾影詩、伊達悠貴、吉田カロリーナ、

小守壽文)

(Journal of Bone and Mineral Metabolism・ Oct 2010 )

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:小守壽文 教授)

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1. 研究の背景

Runx2 は、骨芽細胞、軟骨細胞、筋芽細胞、脂肪細胞の共通の起源である多能性間葉系細胞を骨芽細 胞系列に向かわせる分化決定因子であるとともに、骨格の発生において多くの機能を持つ転写因子で ある。Runx2 ノックアウト (Runx2-/-) マウスは、骨芽細胞が存在しないために完全に骨形成が欠損し ており、正常な呼吸ができずに出生後間もなく死亡する。Runx2-/- マウスは、軟骨細胞の成熟障害を示 すが、軟骨細胞におけるRunx2 の過剰発現は軟骨細胞の成熟を加速する。また、軟骨細胞における Runx2 のドミナントネガティブ型の発現は、軟骨細胞の成熟を阻害する。Runx2/Runx3 ダブルノックアウト マウスは、完全に肥大軟骨細胞を欠く。すなわち、Runx2 と Runx3 は軟骨細胞の後期分化に必須な転写 因子であり、Runx2 が主な役割を果たしている。一方、古典的 Wnt シグナリングは、骨格の発生にとっ て重要な役割を果たすことが知られている。古典的 Wnt シグナリングでは、Tcf/Lef がβ-catenin と の相互作用を通して転写因子としての機能を獲得し、標的遺伝子の転写を活性化する。このシグナリ ングを惹起するのは、軟骨分化を調節する分泌性因子としても知られている Wnt であり、過剰発現、

あるいはその抑制により軟骨形成に異常を生ずることが報告されている。我々は、Runx2-/-マウスの軟 骨細胞にアデノウィルスを用いて Runx2 を導入、DNA マイクロアレイ解析を行い、Runx2 の軟骨細胞に おける標的遺伝子の探索を行った。その結果、Tcf/Lef ファミリーの一つ、Tcf7 の発現上昇が観察さ れ、軟骨細胞における Runx2 によるTcf7 の発現調節について検討することにした。

2.研究の方法

Tcf7 の発現量が Runx2 の発現量依存的であることを mRNA 及びタンパク質レベルで評価、そしてプロ モーター解析により Runx2 によるTcf7 の転写活性化能を評価した。同時に dn-Tcf7 トランスジェニッ クマウスを作製し、軟骨組織における Tcf7の生理機能について調べた。

4. 研究の成果

Tcf7 の発現量が Runx2 の発現量依存的であることについては、幾つかの系で確認している。まず、

Runx2-/- マウスの胎児軟骨に由来する初代培養軟骨細胞に Runx2 を過剰発現すると、Tcf7 の発現が顕 著に上昇することをリアルタイム PCR で確認した。また、Runx2-/- マウスの胎児骨格とRunx2+/-のマウ ス胎児骨格より得られた RNA を用いてリアルタイム PCR で比較すると、Runx2-/- マウスにおいてTcf7 の発現量が低下していた。更に、発生段階における Runx2 と Tcf7 の骨格における発現を経時的に測定 すると、両者の発現パターンは完全に一致した。したがって、生体内においても、Tcf7 は、Runx2 に よって発現調節されていることが示唆された。

レポーターアッセイでは、胎生 15.5 日の野生型の軟骨細胞において Runx2 を過剰発現させると、8.6 kb と 1.8 kb のTcf7 プロモーターは、どちらも活性が軽度に誘導された。この 1.8 kb プロモーターを 欠失させた 0.3 kb のTcf7 プロモーターにおいても、Runx2 依存的な転写活性化が見られ、この領域に 存在する Runx 結合モチーフが重要であると考えられた。そこで ChIP アッセイを行ったが、コアプロ モーター中の GC-rich 配列のため、色々な策を講じたものの定量的な PCR 増幅を得ることはできず、

この領域での Runx2 の結合を証明することはできなかった。一方、-1092〜-901 の間で PCR を行うと Runx2 抗体で沈降されたサンプルで特異的な増幅が見られ、この領域の欠失では Runx2 による転写活性 の軽度の低下が見られた。この領域には Runx2 の結合配列が 1 つ存在し、Runx2 による転写活性化に一 部関与しているかもしれない。

一方、軟骨特異的 II 型コラーゲンプロモーター制御下でドミナントネガティブ型 Tcf7(dn-Tcf7) を発現させたトランスジェニックマウスを作製し、軟骨組織における Tcf7の生理機能について調べた。

dn-Tcf7 トランスジェニックマウスは野生型マウスに比べ、椎体における石灰化が見られなくなり、四 肢の長管骨においても石灰化の遅延が観察された。In situ hybridization で軟骨細胞分化マーカーを 調べた結果、軟骨細胞の成熟が遅延していることが明らかとなった。また、マウスのサイズもトラン スジェニックマウスの方が小さく、軟骨細胞における BrdU の取り込みを調べたところ、トランスジェ ニックマウスにおいて有意に減少していた。したがって、dn-Tcf7 トランスジェニックマウスでは、軟 骨細胞の成熟と軟骨細胞の増殖がともに抑制されていた。

5. 研究に対する評価

Runx2 は軟骨細胞の成熟および増殖を正に制御しており、Runx2 は一部 Tcf7 の発現誘導を介して、

その機能を発揮していることが示唆された。本研究は、骨格形成において Runx2 がTcf7 の発現調節し ていることを示した初めての論文であり、Wnt シグナルが Runx2 の発現誘導するというこれまでの報告 とあわせ、Runx2 と Wnt シグナルの相互作用が骨格形成に重要な役割を果たしていることを示している。

参照

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