ひので ・ IRIS 共同観測による太陽黒点ライトブリッジの磁気対流 ・ 磁気リコネクションの研究 (P-018)
鳥海 森 1 、 勝川行雄 1 、 Mark C. M. Cheung 2 1: 国立天文台、 2: ロッキードマーチン太陽天体物理学研究所 宇宙科学シンポジウム (2016/1/6-7)
1. イントロダクション
背景 :
黒点を含む太陽活動領域ではフレアやジェットなど様々なスケールの活動現象が観測される。 特に 「ライトブリッジ」 と呼ば れる黒点内部の磁場構造 (図 1) では彩層増光やジェット噴出などが観測される [e.g., Asai+ 2001, Shimizu+ 2009]。
目的 :
ライトブリッジにおける活動現象の発生メカニズムを、 太陽内部から上空にわたって 3 次元的に解明する。
手法 :
「ひので」 による光球磁場観測、 「IRIS」 による彩層分光観測とともに、 黒点形成シミュレーションの解析を組み合わせる。
2. 観測データ解析
活動領域 : NOAA 11974 (2014 年 2 月 13-14 日)
データ : ひので /SOT、 IRIS (位置合わせ等には SDO データを用いた)
200 300 400 500 600 Solar-x [arcsec]
-200 -150 -100 -50 0
Solar-y [arcsec]
100 arcsec
ライトブリッジ 彩層増光
低温ジェット
SDO/HMI 2014-Feb-14 01:00 UT SDO/HMI SDO/AIA 1600 Å SDO/AIA 335 Å
2.1. 光球磁場観測 (「ひので」 衛星)
図 2) (左) 活動領域 NOAA 11974。 (右) ライトブリッジ周辺のマグネトグラムと UV、 EUV 画像。 ライトブリッジの上空には彩 層増光が見られ、 低温のジェットがコロナへと繰り返し噴出している。 以下では、 ライトブリッジの磁場構造と増光現象について 解析を行う。
図 3) ひので /SOT によるライトブ リッジのベクトル磁場観測。 (a) 垂 直磁場 Bz、 (b) 水平磁場 Bx、
(c) 電流強度 |jz|、 (d) 磁場傾き角、
(e) ドップラー速度 V
D、 (f) 紫外線 輝度。 ライトブリッジ内部に存在 する弱い水平磁場が、 周囲の強 い垂直磁場に囲まれ、 境界面に は磁気シアによる電流が生じてい る。 ライトブリッジ内部には上昇 流が存在する。 ライトブリッジ上 空には彩層増光が見られる。
2.2. 彩層分光観測 (「IRIS」 衛星)
図 4) IRIS による彩層増光の紫外線分光観測。 (左) ライトブリッジ内部の増光部分 (図 3e の A 点) における Mg II h&k スペクトルの波長 - 時間プロット。 10-20 分の時間スケー ルで増光が繰り返し発生している。 (右) Mg II h&k、 C II、 Si IV の各スペクトル。 増光時
(赤) は静穏時 (黒) と比べて輝度や輝線幅が増大している。 これらは通常、 磁気リコネ クションにともなう局所加熱や双方向流出流と解釈される [Peter+ 2015, Vissers+ 2015]。
3. 数値シミュレーション
データ : 黒点形成 MHD シミュレーション [Chueng+ 2010]
領域 92×49×8.2 Mm 3 、 グリッド数 1920×1024×256
3.1. 光球磁場構造
図 6) 光球におけるライトブリッジの構造。 「ひので」 観測と同様に、 弱い水平磁場が垂直な 強い黒点磁場に挟まれている。 ライトブリッジ内部の上昇流は ±x 方向への発散流となる。
3.2. 磁力線 3 次元構造
4. 議論 5. まとめ
本研究では黒点形成時に出現するライトブリッジに着 目し、 磁場構造 ・ 形成過程や多様な活動現象との関 連性を調べた。
「ひので」 「IRIS」 衛星による共同観測データを解析し、
数値シミュレーションの結果と組み合わせたところ、 ラ イトブリッジ内部では磁気対流によって磁束が繰り返し 表面へ輸送され、 周囲の黒点磁場と磁気リコネクショ ンすることで、 周期的に彩層増光や低温ジェットなどを 生じていることが明らかになった。
図 1) 黒点とライトブリッジ。 ライトブリッジは形成中 や崩壊中の黒点において、 暗部に挟まれた相対的
に明るい構造として観測される。
ライトブリッジ
x 軸
x 軸
|j|
0 5 10 15 20 25 30 35
x [arcsec] x [arcsec]
y [arcsec]
1000
-1000
V
D[km s
-1] |j
z| [mA m
-2] B
z[G] AIA 1600 Å [DN] Inclination [deg] B
x[G] 0
0 5 10
15 (a) B
z(b) B
x(e) V
D(d) Inclination (c) |j
z|
(f) AIA 1600 Å
200
0 100
3
-3 0
y [arcsec] y [arcsec]
0 5 10 15
0 5 10 15
1000
-1000 0
180
0 90
650
0 5 10 15 20 25 30 35 30
A
0 20 40 60 80
(a) 0 s
0 10 20 30 40
y [Mm]
0 5 10 15
(b) 1591 s
x [Mm]
x [Mm]
0 2 4 6 8
ライトブリッジ
3 4 5 6 7
4 6 8 10 12 14 16 x [Mm]
y [Mm]
1000
-1000
V
z[km s
-1] |j| [mA m
-2] B
z[G] V
x[km s
-1] Inclination [deg] B
x[G]
(a) B
z(b) B
x(c) |j| (d) Inclination
(e) V
z(f) V
x0
3 4 5 6 7
y [Mm]
3 4 5 6 7
y [Mm]
800
0 400
3
-3 0
4 6 8 10 12 14 16 x [Mm]
1000
-1000 0
180
0 90
6
-6 0
2795 2800 2805 22:20
22:40 23:00 23:20 23:40 00:00 00:20
00:40 -500 0 500 1000
Wavelength [Å]
Doppler shift [km s
-1]
Time from 2014-Feb-13 22:14:23 UT
0 500 1000 1500
1400 1402 1404 Wavelength [Å]
-800 -400 0 400 Doppler shift [km s
-1]
2795 2800 2805 Wavelength [Å]
0 500 1000 1500
2000 -500 0 500 1000 Doppler shift [km s
-1]
100 0 200 300 400 500 600
1334 1336 Wavelength [Å]
-200 0 200 400 Doppler shift [km s
-1]
Data number
Mg II h&k C II Si IV
図 7) ライトブリッジ周辺の磁力線プロット。 ライトブリッジの内部 (黄矢印) には上昇流が 存在し、 水平磁場を太陽表面へ 10-20 分の周期で繰り返し輸送している。 水平磁場は周 囲の強力な黒点磁場との間に電流層を形成している。
図 5) シミュレーション結果を表した光球マグネトグラム。 (左) 形成中の双極型黒点。
(右) 負極黒点の内部にライトブリッジが出現している。
半暗部 暗部
x z y
観測 ・ シミュレーション結果のまとめ
・ ライトブリッジ内部には弱い水平磁場が存在し、 強い垂直な 黒点磁場に囲まれている
・ ライトブリッジ上空では磁気リコネクションが周期 10-20 分で 繰り返し発生している
・ 低温ジェットがコロナへと繰り返し噴出している
・ ライトブリッジには対流が存在し、 上昇流によって水平磁場 が太陽内部から表面へと、 周期 10-20 分で繰り返し輸送され ている
議論
ライトブリッジは細長い一つの対流セルとして捉えられる。 ライ トブリッジ上空に見られる周期的な増光 ・ ジェット噴出は、 ライ トブリッジ内部の磁気対流によって繰り返し表面へ輸送される 磁束が、 彩層で黒点磁場と周期的に磁気リコネクションするこ とで発生した結果と考えられる。
「対流に駆動された磁気リコネクション」 は成長中の活動領域 や黒点半暗部でも示唆されており、 磁気流体に普遍的な現象 である可能性がある。 「ひので」 の光球磁場観測、 「IRIS」 の 彩層分光観測や数値シミュレーションを組み合わせることで、
磁場に起因する諸現象の解明に寄与することが可能となる。
図 8) ライトブリッジの概念図。 青 ・ 赤は上昇流 ・ 下降流を示し、
星型は磁気リコネクション、 橙矢印は低温ジェットを表す。
z
y
本研究は以下の出版論文として公表されている
・ Toriumi et al. 2015, ApJ, 811, 137
・ Toriumi et al. 2015, ApJ, 811, 138 その他の引用文献
・ Asai et al. 2001, ApJL, 555, L65
・ Shimizu et al. 2009, ApJL, 696, L66
・ Cheung et al. 2010, ApJ, 720, 233
・ Peter et al. 2014, Sci, 346, 315
・ Vissers et al. 2015, ApJ, 812, 11
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