液膜式気流噴射弁の設計パラメータ・作動条件が 噴霧特性に与える影響
―第二報 気流・液膜の旋回及び噴射弁出口形状の影響―
鈴木 俊介,須田 充,松浦 一哲,林 茂
2009 年 2 月
宇宙航空研究開発機構
Japan Aerospace Exploration Agency
目 次
1.はじめに ……… 2
2.試験概要 ……… 2
2.1 試験用噴射弁の概要 ……… 2
2.2 試験条件 ……… 3
2.3 試験方法 ……… 4
3.結果と考察 ……… 4
3.1 気流旋回角の影響 ……… 4
3.2 霧化空気差圧の影響 ……… 6
3.3 気液流量比の影響 ……… 7
3.4 気流と液膜の旋回方向組合せの影響 ……… 7
3.5 噴射弁出口形状の影響 ……… 7
4.まとめ ……… 8
参考文献 ……… 9
付録A 燃料流路形状の影響 ……… 10
A.1 各燃料流路形状の概要 ……… 10
A.2 試験結果 ……… 10
A.2.1 燃料スリット部の設計の影響:Type AとType Bの比較 ……… 10
A.2.2 燃料流路幅の影響:Type AとType Cの比較 ……… 11
A.2.3 プレフィルミングの有無の影響:Type AとType Dの比較 ……… 11
付録B データ集 ……… 12
B.1 気流旋回角の影響 ……… 12
B.2 霧化空気差圧の影響 ……… 12
B.3 気液流量比の影響 ……… 12
B.4 噴射弁出口形状の影響 ……… 12
B.5 気流と液膜の旋回方向組合せの影響 ……… 12
B.6 燃料スリット部の設計の影響:Type AとType Bの比較 ……… 12
図表 ……… 13
Characteristics of Annular-Liquid-Film-Type Airblast Atomizers*
– Second Report: Effects of Air Swirl, Liquid Swirl and Shape of Atomizer Exit –
Syunsuke SUZUKI*1, Mitsuru SUDA*2, Kazuaki MATSUURA*3and Shigeru HAYASHI*3 ABSTRACT
The effects of design parameters and operating conditions on spray characteristics of annular-liquid-film-type airblast atomizers are currently under investigation to obtain insights into the development of high-perfor- mance aero-engine fuel injectors. This second report discusses the effects of air swirl, liquid swirl and shape of atomizer exit. A double-air-swirl airblast atomizer designed for research purposes was utilized, whose com- ponents were replaceable so that the effects of atomizer design could be easily investigated. The combinations of air swirl directions reported here were limited to “counter-swirl” cases. For quick data acquisitions to cope with many test conditions and atomizer configurations, simple time-average laser sheet imaging and laser dif- fraction droplet sizing technique were employed for spray evaluation. For fixed air pressure drop and air to fuel mass flow rate ratio, with increasing the outer swirl angle (OSA), the spray angle (SA) increased. For inner swirl angles ISA= –45 and 60 deg., SAshowed a rapid increase against OSAafter it exceeded a thresh- old value. The Sauter mean diameter (SMD) decreased with increasing OSAat first, but no further for large OSAvalues. The SMDincreased with increasing OSAafterwards for ISA= –45 and 60 deg., showing its min- imum roughly around the threshold value mentioned above, though such tendency was not so clear for ISA= –20 deg. Regarding the effects of liquid swirl direction, the SMDwas slightly smaller when its direction was the same as the outer air swirl than the counterpart case. The results on the atomizer attached with a flared outer shroud at its exit are also presented showing the effects of shapes of atomizer exit, which showed a dis- continuous increase of the SAfor the OSAlarger than a critical angle for ISA= –45 deg. This report also includes two appendices, one of which presents the results of some preliminary investigation on the effects of design of annular liquid flow passage, whereas the other contains extensive experimental datasets for various operating conditions for future reconsideration for better understandings.
Keywords: Aero Engine Fuel Injector Design, Fuel Atomization, Spray Dispersion, Air Swirl, Liquid Swirl, Swirl Combination
* 平成21年2月3日受付(Received 3 February, 2009)
*1 法政大学大学院,JAXA技術研修生(現 本田技研工業株式会社)
*2 法政大学大学院,JAXA技術研修生(現 国際石油開発帝石ホールディングス株式会社)
*3 航空プログラムグループ 環境適応エンジンチーム(Clean Engine Team, Aviation Program Group)
1.はじめに
航空エンジン用燃焼器においては,燃焼の安定性,高 空での再着火性能等の安全上の性能が第一に重要である ことは言うまでもないが,燃料消費量の低減,排気中の 有害物質の削減等,環境面での性能も同時に求められる.
これらの燃焼器性能に関する要求は,石油枯渇問題や近 年の排気規制強化の動きに伴ってさらに厳しいものとな っている.これらの各性能を同時にバランスよく満たす には,燃焼器内の燃料と空気の混合分布を最適化する必 要があり,このため,燃焼器内に燃料を微粒化して供給 すると同時に初期の燃料空気混合場の形成を担う燃料噴 射弁の性能向上が重要となる.
燃焼器・燃料噴射弁の開発上困難な点は,上記の各要 求性能によって最適な燃料空気混合状態が異なることで ある.例えば,現在,航空エンジン用燃焼器の開発にお いては,燃料消費量の低減(CO2削減),すなわち高効率 化のために燃焼条件の高温高圧化が進んでいるが,これ により窒素酸化物(NOx)の排出量が増加することが予想 される.NOxの排出量は1800 Kを超えると著しく増加す ることが知られており1),従って,NOx排出抑制のために は,局所的に温度の高い領域ができないように,燃料の 微粒化や噴霧分散の促進により混合状態をできる限り均 一化することが必要である.しかし,同時に満足される べき高空再着火性能や燃焼の安定性,燃焼効率等につい ては,必ずしも均一な混合が望ましいとは限らない.こ のように様々な要求を満たすためには,燃焼器の設計の 最適化と共に,燃料噴射弁の設計の最適化が必要である.
一方,航空エンジン用燃焼器に多用されている燃料噴 射弁として,圧力噴射弁(渦巻き噴射弁)と液膜式気流 噴射弁があげられる.このうち後者は,円環状の燃料液 膜を内側と外側から気流(近年の設計では旋回を伴う場 合が多い)で挟み込んで微粒化する方式を採用しており,
噴射弁を通って燃焼器へ流入する気流のエネルギーで燃 料を微粒化するため,圧力噴射弁と比較して空気と燃料 の混合が促進される,微粒化性能に優れているなどの利 点があり2),すすやNOxの排出抑制が期待できる.この 他にも,液膜式気流噴射弁は,大きなポンプ圧を必要と せず,さらに,実用上用いられる気液流量比の範囲にお いては,微粒化性能の燃料流量依存性が比較的小さいた めに,容易に大きなターンダウン比をとることができる 等の特徴がある.
以上から,様々な利点をもち,排気中の有害成分抑制 に有望と考えられる液膜式気流噴射弁について,その設 計パラメータや作動条件が噴霧特性に与える影響を理解 することは,先述のような様々な要求性能をバランスよ く満たす燃料噴射弁の開発に重要であると考えられる.
このような研究の第一段階として,第一報3)において は,宇宙航空研究開発機構の推進する「クリーンエンジ ン技術の研究開発計画(TechCLEAN)4,5)」において2004
〜2006年度の間に行われた複数の液膜式気流噴射弁に関 する研究結果を再度見直して総括することにより,今後 の噴射弁開発上有用と思われる共通の傾向(あるいは共 通しない傾向)を見出す試みがなされた.これにより,
液膜を挟み込む気流の旋回方向の組合せが噴霧液滴分布 に与える影響,噴霧粒径の霧化空気差圧・気液流量比に 対する依存性などが報告された.一方で,第一報では,
特定の気流旋回角において内外旋回気流の旋回方向の組 合せを変えた結果(同方向旋回,逆方向旋回)は報告さ れたものの,気流旋回角の大きさを変化させた際の噴霧 特性への影響については議論がなされなかった.さらに,
研究の第二段階として,一つの噴射弁について設計パラ メータを系統的に変化させた際の噴霧特性への影響につ いて調査する必要があると考えられる.
そこで本報(第二報)においては,液膜式気流噴射弁 における気流の旋回角が噴霧に与える影響を明らかにす ることを主目的とし,気流旋回翼(スワーラ)や燃料旋 回スリットを組替えることができる試験用の噴射弁(本 噴射弁は第一報における噴射弁Cである)によりこれを 調べた.また,これに加え,限られたケースではあるが,
気流と液膜の旋回方向の組合せ,さらには噴射弁出口形 状が噴霧特性に与える影響についても合わせて調査した.
本報では,これらの試験よりに得られた主な結果・知見 について報告する.
なお,本研究の過程において,燃料流路についても,
設計の異なる数パターンを製作し,予備的に試験を行っ た.これらの試験は一部の作動条件のみで行われており,
必ずしも系統立った実験が行われているわけではないが,
その中でも今後の設計の際の参考資料としての価値が認 められるものについては付録Aにその結果を示す.
また,本研究においては,多くの設計パラメータ・作 動条件において試験を行い,本論中(以下「付録以外の 部分」を指す)ではその中でも議論のために必要な代表 的な結果のみを示しているが,それ以外の個々の試験結 果も,今後別の観点からのデータ見直しに役立てるため に,付録Bにこれを掲載する.
2.試験概要
2.1 試験用噴射弁の概要
本研究において使用した試験用噴射弁は,先の第一報3)
における噴射弁Cである.噴射弁空気流路の有効開口面 積(後述)がスワーラ部ではなく噴射弁出口近傍の最も 流路が絞られている部分となるように,スワーラからの 宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-08-015
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に示される通り,リップ部において同時に内外双方の気 流と干渉を始めるノンプレフィルミングタイプとなって いる3).燃料流路出口での流路幅は0.5 mmである.
なお,先に述べた通り,一部の作動条件においては,
他の設計の異なる数パターンの燃料流路についても試験 を行っているが,これについては付録Aを参照されたい.
本研究において試験が行われたスワーラの組合せのリ ストを表1の試験条件一覧に,試験で用いた各スワーラ の写真を図2にそれぞれ示す.表中に示される旋回方向 の組合せに関するNPP, PPN等の表記については,第一報 同様である.即ち,噴射弁下流側から見たときの旋回の 方向が反時計周りの場合を旋回の正方向と定義した上で,
例えばNPPは,内側気流旋回,燃料旋回,外側気流旋回 の方向が順に負,正,正(N: Negative, P: Positive)である ことを示している.第一報においては,インナースワー ラとアウタースワーラについて,限られた旋回角の条件 のみの結果(0,±45 deg)を報告したが,本研究において は,旋回角の影響をより詳細に調べるために,インナー スワーラの旋回角度(Inner Swirl Angle, ISA)については –60, –45, –20, +45 degの4種類,アウタースワーラの旋回 角度(Outer Swirl Angle, OSA)については–60, –45, –20, +20, +30, +45, +47, +50, +55, +60 degの10種類を製作 し,試験を行った.ただし,事前の試験において,内側 気流と外側気流の旋回が同方向旋回(Co-Swirl)の場合に は,噴霧に燃料スリットもしくはスワーラのウェークに 起因すると思われる筋状のパターンが目視で確認された ため,本稿では,目視で判断する限り比較的周方向に滑 らかで一様な分布を持つ逆方向旋回(Counter-Swirl)の組 合せのみについて議論を行うこととする.スワーラはヘ リカルスワーラであり,上記の呼び角度は翼のスパン方 向中心位置における迎角である.スワーラの翼厚みは全
て0.6 mm,翼枚数はインナースワーラについては–20 deg
が5枚,±45 degが4枚,–60 degが3枚であり,アウタ ースワーラについては±20 degが20枚,+30 degが12 枚,±45, +47 degが8枚,+50, +55,±60 degが6枚で
以下に述べる通り,合わせて調査を行った.
燃料液膜の旋回が噴霧特性に与える影響については,
第一報同様,先述のNPP及びPPNの各組合せの結果を比 較することで,気流の旋回組合せが逆旋回の場合,液膜 の旋回を外側または内側のどちらの気流旋回方向に合わ せるかによって噴霧特性がどのように変化するかを調査 した.
一方,噴射弁出口形状が噴霧特性に与える影響を調べ るために,アウターシュラウドについては,図1に示す 基本型に加えて,噴射弁出口に流路を延長する形で拡大 流路(以下フレアと呼ぶ)を備えたタイプ(図3)を製作 し,その影響を調べた.このような拡大流路は,実用噴 射弁においても,噴射弁下流の一次燃焼領域における流 れ場に適切な拡がりを持たせるためにしばしば用いられ る.なお,本試験で用いたフレア部の曲率(R)は3 mm である.
本研究で試験を行った各旋回組合せ(気流)における 噴射弁有効開口面積を表2に,また流量係数を図4に示す.
ここで,有効開口面積は,実際の測定空気体積流量を噴 射弁霧化空気差圧(第2.2節参照)から計算されるポテン シャル速度で除した値であり,流量係数は上記有効開口 面積と噴射弁の幾何学的な出口開口面積の比で定義して いる.本試験結果を参照する際には,気流の旋回角の変 化によって,流量係数が変化する点に注意する必要があ る.即ち,以下では主に噴射弁霧化空気差圧を一定とし た条件における結果比較を行っているので,旋回角が異 なる条件では空気流量が異なっており(外側内側間の空 気流量比の変化にも注意),また,気液流量比固定での比 較を行うため,燃料流量は空気流量の変化に合わせて調 整しているので,これらの点に留意する必要がある.
2.2 試験条件
本研究における試験条件の一覧を表1に示す.噴霧試 験はすべて室温(293 K),大気圧(0.1 MPa)下で行い,
供試液体として灯油を用いた.気流条件の設定について
は,噴射弁上流全圧ptと噴射弁下流圧力paとの差圧∆pを 噴射弁上流全圧ptで無次元化した∆p/ptを霧化空気差圧と 定義し,∆p/pt=2, 2.5, 3, 4, 5%で試験を行った.ただし,
一部の試験においては∆p/pt=4%の基本条件のみでデー タ を 取 得 し て い る . 一 方 , 気 液 質 量 流 量 比 ( 空 燃 比 , AFR, Air to fuel mass flow rate ratio)については,AFR=15 を基本条件とし,多くのケースではAFR=5,15の2条件
もしくはAFR=3, 5, 15の3条件について試験を行った
が,条件によっては基本条件のみ,あるいはAFR=1.2
〜15の範囲でより細かくAFRを変化させて試験を行った.
なお,上記の試験条件の設定については,実機の作動 条件をある程度考慮して決めているが,気流圧力や温度 が実機とは異なるため,実機条件を完全に模擬している わけではない.また,一部の条件については,基礎研究 的な観点から設定しており,実機では起こり得ないよう なものも含まれている.ただし,本試験条件中のいくつ かの条件については,着火時やアイドル時などの低負荷 条件に近い条件も含まれており,これらの結果について は実用的観点からも有用であると考えられる.
2.3 試験方法
本研究で用いた試験装置は第一報同様であるので,そ の詳細,系統図等については第一報2)を参照されたい.
試験手法については,レーザシート照明による噴射弁 中心軸を含む噴霧の垂直断面画像撮影(zx断面:ここでx 方向は噴射弁半径方向,z方向は噴霧軸方向である.座標 の定義については図1参照)とレーザ回折法6-10)による粒 径測定により噴霧特性の評価を行った.
噴霧断面画像撮影については,ヘリウム−ネオンレー ザ(NEC GLG 570,波長632.8 nm,25 mW,CW)のレー ザビームをレンズ系によりレーザシート光として噴霧に 照射し,噴霧液滴からのMie散乱光をデジタル一眼レフ カメラ(Nikon D 80,撮影レンズNikon Ai Nikkor 105 mm F 1.8 S 及び 接写リングNikon PK-12を使用)により撮影 した.露光時間については,時間的に十分平均された画 像を得るため,50 msとしている.シート光の厚みは噴射 弁中心軸(z軸)において1 mm,撮影視野は軸方向視野 z=0〜50 mm,半径方向視野x=–40〜40 mmである.
なお,表1に示す通り,噴霧断面画像撮影は,旋回方向 の組合せがNPPの場合のみについて行っており,本報告 では∆p/pt=4%,AFR=15の基本条件のみの結果につ いて掲載している.
一方,粒径測定試験については,レーザ回折粒度分布 測定装置(東日コンピュータアプリケーションズ㈱製 LDSA-1500 A,LDSA: Laser Diffraction Spray Analyzer)を 用いた.レーザ回折法はレーザ光路上に存在する液滴群 の前方散乱光を捉えることにより,その粒度分布,濃度
等を測定する方法である.本試験では,軸方向位置z= 10, 20, 30 mmにおける噴霧断面を最大x=–46〜46 mm の範囲において2 mm間隔でトラバース測定し,断面全体 の平均粒径により噴霧評価を行った.本試験で用いた光 学 系 設 定 は , レ ー ザ ビ ー ム 径5 m m, 受 光 レ ン ズ 口 径 100 mm(有効径95 mm),受光レンズ焦点距離300 mmで あり,粒径測定可能範囲は1.4〜1000µmである.なお,
本報告で示す試験結果については,いずれも3回以上の 計測を行いその再現性について確認を行っており,噴霧 の不安定性が目立った付録A.2.3で示す計測結果を除いて は,計測データのばらつきはザウタ平均粒径(Sauter mean diameter, SMD)で最大でも±3%以下であり,高い 再現性が確認できている.
3.結果と考察
3.1 気流旋回角の影響
はじめに,気流の旋回角が噴霧の拡がりに与える影響 についての議論を行う.気流微粒化式噴射弁の場合,噴 霧の拡がりが気流の状態に大きく影響されるため,噴射 弁近傍と下流域で噴霧の拡がり方が異なり,圧力噴射弁 で議論される噴霧角のような一つの代表的な値でこれを 評価することは難しい.本試験結果においても,条件に よっては噴射弁近傍と下流域で拡がり角が著しく違う場 合がある.そこで本報告では,図5に示すように噴射弁 近傍での噴霧角を鞘角(Sheath Angle, SA),下流での噴霧 の拡がり角を下流噴霧角(Spray Cone Angle, SCA)と定義 し,この二つの値で噴霧の拡がり角を整理することとし た.図6にMie散乱光によるzx断面の噴霧断面画像を示 す.試験条件は∆p/pt=4%,AFR=15,旋回方向の組合 せがNPPの基本条件である.また,図6より得られるSA とSCAに及ぼす気流の旋回角の影響を図7,8に示す.な お,図題中に見られる表記「Type A」は,本論中で議論 する燃料流路部品の呼称であり,付録Aにおいて他の燃 料流路形状についての結果と対比して議論する際の便宜 を考慮してつけたものである.
まず,SAとOSAの関係に着目すると,OSAの増加,即 ち外側旋回の増加に伴ってSAも増加するが,ISA=–45, –60 degにおいては,OSA≧+45 degの領域でグラフの傾 きが急峻となっている.このような噴霧角の変化は,流 れ場自体の構造の変化に大きく影響されると考えられる.
例えばOSA=+60 degの場合には,タフト等による簡単
な目視によっても,噴射弁中心軸付近の逆流が容易に確 認できるが,OSA=+20 degでは確認できず,流れ場の 構造が大きく異なっていることがわかる.一方,ISA= –20 degの場合においても,OSA≧+55 degにおいてグラ フの傾きが増す傾向が見られるが,その変化は前二者と 宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-08-015
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くなる理由については,上に述べた通り,中心軸付近に 軸方向運動量の大きな流れが存在するためと考えられる.
一方,ISA=–45 degよりも–60 degの方がSAが小さい理 由としては,–60 degの方が内側旋回強度は強いが,内側 流路に流れる空気流量が少ないため(図4参照),内側気 流が流れ場全体を拡げようとする効果が現れにくいこと,
気流旋回が逆方向旋回の組合せのため,内側気流の旋回 を極端に強くすると外側気流の旋回の減衰が強くなり,
外側気流が流れ場を拡げる効果も抑制されやすいこと等 があげられる.
一方,SCAとOSAの関係に着目すると,SAの場合と同 様,OSAの増加によりSCAが増加し,その傾向はISAに よらず一致している.次に,SAとISAの関係に着目する と,図に示される3ケースの中ではISA=–45 degの場合 にSAが最も大きい.一方,–20 deg,–60 degについては,
全体的傾向としては–20 degの場合のほうが若干大きい値 を示すものが多いが,その差は小さい.ここで,ISA= –20 degの場合に–45 degと比較してSCAが小さく理由に ついては,SAの場合と同様に説明できると考えられる.
一方,ISA=–60 degの場合にSCAが小さい値を示す理由 についても,SAの場合と同様に説明できるが,噴射弁出 口付近での内側気流が強い旋回成分を持つこと,内側気 流の流量が少ないこと(極端に言えば中心にブラフボデ ィが存在するような効果を示すと考えられる),外側気流 との強い干渉で内側気流の旋回が早い段階で減衰するこ と等を考えると,ISA=–60 degの場合には,噴射弁出口 直後の中心軸付近に内側気流の効果によるコンパクトな 低速領域あるいは再循環領域が形成され,これが下流側 で閉じる領域の周辺では,外側気流もこれに誘引される ように内側に流れ込むような流れになっていると予想さ れ る . こ の 下 流 に お け る 気 流 の 内 側 へ の 誘 引 効 果 が , ISA=–60 degにおいてSCAが小さい値を示す原因になっ ていると考えられる.これらの考察については,流れ場 や噴霧液滴の運動の流れ場に対する応答を詳細に計測し て今後検証する必要があろう.
図9において,まずSMDとOSAの関係に着目すると,
OSAの増加に伴いSMDは当初減少する.この理由として は,内側と外側の逆方向旋回気流が形成するせん断層の 乱れ強度の増加が考えられる11).さらにOSAを増加させ ると,特にISA=–45, –60 degの場合,SMDは一旦極小値 をとった後再び増加に転ずる傾向が確認できる.ISA= –20 degの場合には,OSA=+55 degとOSA=+60 degの SMDの差は小さいが,この場合でも,OSAがある程度以 上大きくなると,それ以上OSAを増してもSMDの減少傾 向が見られなくなる方向であることは,前二者と共通し た傾向であると言える.これについては,OSA増加によ る気流の拡大にともない噴射弁出口下流での気流速度や せん断強度が減衰すること,旋回翼のウェークの影響が 大きくなること,外側流路内の気流が強い旋回により流 路外側に偏ることにより,液膜出口付近で液膜外側に作 用する気流の効果が減少すること等が理由として考えら れる.なお,上記の考察については,第一報2)の噴射弁 Aに関して報告した同方向旋回と逆方向旋回の違いに関 する考察,Aignerら11)の報告を合わせて参考にしている.
Aignerらは,内側と外側の気流の旋回角が同じケースに
ついて,同方向旋回と逆方向旋回の場合の試験を行い,
いずれの場合もSMDが極小となる旋回角が存在するこ と,逆方向旋回の方が同方向旋回の場合と比較して噴霧 粒径が小さくなる傾向があること,噴霧粒径が液膜出口 における内側・外側の壁面せん断応力と相関があること 等を指摘している.
ここで,SMDが極小値となるOSAの値(あるいはそれ 以上OSAを増してもSMDの減少傾向が見られなくなる OSAの値)が,図6,7においてSAの増加が急峻になり はじめる角度とほぼ一致していることは興味深い.これ は,SAの増加が急峻になりはじめるOSAにおいて,噴射 弁下流の気流の拡大が大きくなり,先に述べた噴射弁出 口下流での気流速度やせん断強度の減衰により微粒化が 進まなくなることが一因として考えられる.一方,流れ 場構造(例えば逆旋回気流せん断層)と液相の存在する
領域の相対位置関係自体が変化する効果にも着目する必 要があるが,これについては気相流れ場の計測を別途行 って調査する必要がある.
次に,SMDとISAの関係に着目すると,グラフ左側の OSAの小さい領域では,ISA=–45 degの場合が最もSMD が小さく,OSAの大きな領域ではISA=–20 degの場合が 最もSMDが小さくなっている.この理由については,
O S Aの 小 さ い 領 域 で はI S A=–4 5 d e gの 場 合 の 方 が
–20 degと比較してせん断層の乱れ強度が強いことがあげ
られる.これに対し,OSAの大きな領域では,ISA= –45 degの方が–20 degと比較してより小さいOSAから SMDが増大に転じ,これによりSMDの大小の逆転が生じ ている.一方,ISA=–45 degとISA=–60 degを比較する と,グラフの傾向は類似しているがISA=–45 degの場合 の方が常にSMDが小さい値を示している.この原因とし ては,旋回翼のウェークや強い旋回による内側流路の流 れ損失に伴い,液膜に作用する流れの速度が遅くなって いることが予想されるが,これについても流れ場の状態 を調査して検討する必要がある.
なお,本結果の解釈にあたり指摘しておくべき点とし て,第2.1節で指摘したとおり,霧化空気差圧を固定して 気流旋回角を変えることによる空気流量の変化(図4参 照)があげられる.燃焼器の設計変更の際に噴射弁の旋 回翼を角度の異なるものに入れ替える場合等を考慮する と,霧化空気差圧一定での比較が実用性の観点からは適 切であると考えられるが,基礎的な観点からは,旋回角 が変わっても,霧化空気差圧を適宜調整して,空気流量 一定の状態で比較するという方法も考えられる.乱暴な 解釈ではあるが,損失や噴射弁出口速度の空間的非一様 性を無視すれば,前者はポテンシャル速度(あるいは速 度の絶対値),後者は軸方向速度を固定した場合の比較と 考えることもできる.参考までに,空気流量12 g/s一定 で 比 較 を 行 っ た 結 果 を 図1 0に 示 す . な お , 空 気 流 量
12 g/sを得るために必要な霧化空気差圧は,図4において
流量係数が最も大きいISA=–20 deg, OSA=+20 degの場 合で2.1%,最も小さいISA=–60 deg, OSA=+60 degの 場合で4.7%である.図10によれば,内側,外側いずれ についても旋回角の増加によりSMDは減少している.た だし,ISA=–45, –60 degについては,OSA≧+50 degの 領域において,それより小さなOSAの領域と比較して SMDの減少幅が小さくなる傾向にあり,OSAがある程度 以上の値となると,微粒化改善の効果は(霧化空気差圧 一定条件,空気流量一定条件ともに)あまり期待できな くなると言える.
一方,燃料流量については,同じ噴射弁に対して霧化 空気差圧を変えた場合の影響を比較する際等に文献等2)
で使用される慣例に従って,気液流量比を固定した試験
を行っているため,気流旋回角の効果の比較も,この気 液流量比固定のデータに基づいて行っている.実際の燃 焼器設計において,「旋回翼を角度の異なるものに入れ替 えた場合に同量の燃料をどれだけ細かくできるか」とい う視点からは,霧化空気差圧固定で旋回角を変える際に 液体流量固定で結果比較を行うのが適当であろう.ただ し,本報告で後述するように,少なくともAFR≧5の範 囲においては,気液流量比の噴霧粒径への影響は小さい ため,液体流量固定条件と気液流量比固定条件で結論が 大きく変わることはないと推測できる.
3.2 霧化空気差圧の影響
はじめに,ISA=–45 deg, OSA=+45 deg, AFR=15の 場合について, 噴霧角(SA, SCA)に対する霧化空気差圧
∆p/ptの影響を調べた結果を図11,12に示す.これらの図 より,噴霧角への霧化空気差圧の影響は小さいといえる.
第一報3)において粒径別の噴霧分散パターンについて詳 細な調査を行った際には,霧化空気差圧の影響が確認さ れたが,その際も全粒径を考慮した場合の噴霧液滴分散 パターンの変化は小さかった.他の旋回組合せやAFRに ついても検討する必要があるが,AFRが大きく,噴霧角 に対する気流の影響が液相の運動量の効果に対して卓越 している噴霧条件では,霧化空気差圧即ちレイノルズ数 の効果によって流れ場の構造自体が大きく変化しない限 り,ここで試験された霧化空気差圧範囲における微粒化 特性や流れの時間スケールの変化が,最終的に噴霧角と いう「詳細構造を問わずに噴霧の拡がりを粗く捉える」た めの評価量に与える影響は現れにくいと考えられる.
次に,霧化空気差圧∆p/ptのSMDへの影響についての 結果を図13に示す.図から明らかなように,霧化空気差 圧の増加に伴い,SMDは減少する.ここでSMDの霧化空 気差圧依存性を示すために,Aignerら11)に習って,以下 の式で整理してみる.
SMD∝(∆p/pt)n (1)
ここでnはSMDの霧化空気差圧依存指数であり,∆p/ptと SMDの関係(例えば図13のグラフ)を式(1)でフィッ ティングすることにより求める.表3,図14に各条件に おける霧化空気差圧依存指数nを示す.Lefebvre12)による と,低粘性液体を用いた場合のSMDの霧化空気差圧への 依存指数は–0.5〜–0.6程度(空気速度に対して–1.0〜 –1.2程度)であるとされ,一方,Aignerら11)の結果につ いては–0.5,第一報では噴射弁Bについて–0.45とされて
いるが3,13),本噴射弁(第一報の噴射弁C)に関しては,
第一報,本研究共に–0.7〜–1.1程度の値となっており,
比較的大きな依存性を示している.
宇宙航空研究開発機構研究開発資料 JAXA-RM-08-015 6
する依存指数を求めると0.72となった.
他の旋回角の場合については,主にAFR=5と15の2 ケースで試験を行ったため,関数フィットにより依存指 数を算出することが困難であったことから,両者のザウ タ平均粒径の比により気液流量比の影響を評価した.図 16にその結果を示す.両者の比(縦軸)が1から離れる ほど気液流量比依存度が大きいことになる.参考までに,
ザウタ平均粒径が(1+1/AFR)の0.5乗及び1乗に比例す ると仮定した場合の縦軸の値を合わせて示す.図によれ ば,OSAの小さい領域では,概ねその増加と共に気液流 量比依存度が大きくなっている.また,OSA≦+30 deg の場合は,Lefebvre12)が示した値と比較して気液流量比 依存度が低めの値を示す傾向にある.一方,OSA≧+45 degの場合には,気液流量比依存度のOSAへの依存性は ISAによってその傾向が異なっている.
3.4 気流と液膜の旋回方向組合せの影響
図17,18に気流と液膜の旋回方向の組合せが噴霧粒径
に 与 え る 影 響 を 示 す . ま た , 噴 霧 体 積 濃 度
(Concentration:CNC,単位はArbitrary Unit)分布14)の 比較を図19に示す.ここでCNC分布は,レーザ光路上の 全ての噴霧液滴の情報を積算した値であり,zx断面上の 点情報をプロットしたものではないことに注意が必要で ある.第2.1節に述べたように,気流と燃料の液膜旋回方 向の表記(NPP,PPN)は内側気流,燃料液膜,外側気流 の順番に並べたものなので,NPPは外側気流の旋回と液 膜の旋回方向が同じ組合せ,PPNは内側気流の旋回と液 膜の旋回方向が同じ組合せである.図19の噴霧濃度分布 については両者はよく一致しているが,図17,18によれ ば,全体的にNPPの方がPPNよりも噴霧粒径が小さくな る傾向にある.両者の差は小さいが,10%程度となるケ ースもある.このような傾向は第一報2)でも報告したが,
その際には限られた試験条件のみの結果であった.本研 究では試験条件を増やし,|ISA|=45 deg, |OSA|=20, 45, 60 deg, ∆p/pt=2, 2.5, 3, 4, 5%,AFR=3, 5, 15の場合につ
今回試験を行ったケースの大半についてNPPの方が PPNよりも粒径が小さくなる傾向を示し,逆にPPNの方 が小さくなる傾向を示すケースは見られなかった理由に ついてはよく検討する必要があるが,ここで指摘してお くべき点として,気流と液膜の旋回方向の組合せによる 液膜の一様性への影響があげられる.図20の噴霧写真
(第一報3)より引用)によれば,NPPの場合の方がPPNと 比較して噴霧の周方向一様性が相対的に優れているよう に見える.特に,PPNの場合には噴霧に筋状の部分が比 較的はっきりと確認でき,このような部分は大きな液滴 生成の要因になると予測される.但し,この液膜の一様 性がNPPとPPNの粒径差の主要因かどうかについては,
今後よく検討する必要がある.なお,これらの写真は短 い露光時間(125µs)で撮影されているが,露光時間の長 い撮影や目視で確認する限りでは,噴霧は周方向に一様 であり,NPP,PPNともに筋状の部分は観察されなかった.
3.5 噴射弁出口形状の影響
図21に噴射弁出口にフレアをつけた場合のMie散乱光 に よ るz x断 面 の 噴 霧 断 面 画 像 を 示 す . 試 験 条 件 は
∆p/pt=4%,AFR=15であり,またISA=–45 deg,旋 回組合せはNPPである.これらの画像から得られた,SA とSCAに及ぼすOSAの影響を,フレア無しの場合の結果
と共に図22,23に示す.
図22,23によると,まずOSA< +50 degの領域におい ては,フレアを設けたことによりSAが増加しているが,
SCAについてはフレア無しの場合と比べて差が小さい.
一方,OSA> +50 degでは,噴霧形状はフレアに添うよう に大きく拡がるようになる.この2つのモードの遷移領 域であるOSA=+50 deg付近においては,SA並びにSCA が不連続に変化し,拡がりの大きなモードにおいては,
SA,SCA共にフレアなしの場合と比較して大きな値を示
す.この遷移の理由は,流れ場構造の変化によるもので ある.OSAが小さい領域では気流の遠心力の効果が弱い ため,フレアによる半径方向の急拡大に気流が追従でき
ずに,フレア壁において剥離を生じるのに対し,OSAが 大きくなると,気流がフレア壁に沿って流れるようにな るため,この流れ場の不連続変化にともなって噴霧パタ ーンが変化する.遷移領域であるOSA=+50 degでは,
噴霧が拡がらない場合と拡がる場合の二つのモードが観 察された.これらのモードは,試験中に不意に変化する ことはなく,噴霧の安定性は良好であったが,一方,障 害物などの大きな外的擾乱を強制的に与えるとモード間 の遷移が起こった(例えば,本試験では空気を流し始め た当初は拡がらないモードを呈したが,噴霧試験中にフ レア部分に半径方向から障害物を近づけると突如として 拡がるモードに変化した.その後,今度は噴射弁下流方 向から障害物を近づけると拡がらないモードに再び戻っ た.).なお,拡がらないモードから拡がるモードに遷移 する際には∆p/ptの若干の減少(4%→3.9%)が確認さ れたが,これは気流がフレア壁に付着することによって,
フレア拡大部での圧力回復が大きくためと考えられる.
次に,ISA=–20 degの場合の結果を図24に示す.また,
これらの画像から得られた,SAとSCAに及ぼすOSAの影 響を,フレア無しの場合の結果と共に図25,26に示す.
これらの図によれば,試験を行ったOSA≧+45 degの範 囲で,フレアを設けたことによりSA, SCAは共に大きくな っている.また,フレア有りの場合,OSA≧+50 degに おいて,OSA増加に対するSAの増加の度合いが急峻とな っている.OSA=+60 degにおいては,フレア有りと無 しでSA, SCAともに大きな差を示しているが,このケース では,フレア無しの場合と同様の,拡がらない中心軸付 近の流れと,フレアに沿って半径方向に大きく拡がる外 側の流れの二つに分離し,両者の間に速度が遅い領域が 形成されており(タフトによる簡易的な観察による),こ の 領 域 に 噴 霧 が 幅 広 く 分 布 し て い る . な お ,I S A=
–20 degにおいては,今回試験した旋回組合せの中では,
ISA=–45 deg, OSA=+50 degの場合のように,1つの OSAにおいて外的擾乱によって噴霧形態が著しく変化す るようなケースは観察されなかった.
図27にフレアの有無による噴霧粒径の比較を示す.な お,本図には,図21, 24の噴霧断面画像では結果が示され ている一部のOSAが大きい場合のデータがプロットされ ていないが,これは噴霧の拡がりが大きすぎて,噴霧液 滴が計測器のレンズに付着し,正確な計測が行えなかっ たためである.また,同様の理由により,ISA=–45 deg,
OSA=+50 degの場合のデータは,拡がらない方のモー
ドのデータのみを示している.図26によれば,ISA=
–20 degの場合においてはフレア有りの方がSMDは小さ
くなっている.一方,ISA=–45 degにおいてはOSA=
+30 degではフレアの有無によるSMDの差はほとんど無
く,OSA=+45, +50 degではフレア有りの方がSMDは大
きくなっている.これらの要因については,詳細な検討 が必要であるが,後者については,フレアの有無による SAの差がOSA=+45, +50 degにおいて特に大きいことか ら,フレアによる気流の拡大に起因する気流速度や逆旋 回せん断層の減衰がその可能性としてあげられる.
なお,フレアの有無によるSMDへの影響については,
第一報においても,フレアを設けることによりSMDが大 きくなる場合と小さくなる場合があることが報告されて
いる3,15).第一報の噴射弁B及びB 2の例では,霧化空気
差圧によってもフレアの効果が逆転することがあり,こ の場合には霧化空気差圧の低い条件ではフレアを設ける ことによりSMDは小さくなり,一方高い条件ではSMD が大きくなるという結果が示されている.この理由とし て,フレアのもつ流路延長の効果(少なくとも液膜リッ プ直後では,フレア無しの場合と比較して気流を高速の まま保つ効果がある)と,高霧化空気差圧条件で見られ るフレアへの液体付着(大液滴放出の要因となる)があ げられている.ただし,噴射弁B及びB 2のフレアは曲率 が5 mmであり,流路延長の効果が現れやすい一方で,噴 霧も付着しやすい.また,第一報のケースでは,流れがフ レアに沿った状態での噴霧を議論している.一方,ここで 議論している試験結果については,フレアは曲率が3 mm と短く,フレアに対して流れが剥離している.また,フレ ア壁への液滴付着も見られていないので,フレアのもたら す効果は第一報で見られたものとは異なると考えられる.
このため,フレアの有無によるSMDへの影響についても,
別の角度からその理由付けについて検討する必要がある.
4.まとめ
二重の同軸気流旋回翼をもち,出口部において空気流 路と燃料流路が噴射弁中心軸と平行となるような構造を もつ液膜式気流噴射弁の噴霧試験を行い,設計パラメー タと作動条件が噴霧特性に及ぼす影響について調査した.
本研究では内側と外側の気流が逆方向旋回の場合につい て試験を行い,気流・液膜の旋回,並びに噴射弁出口形 状の影響を中心に調べた.以下に本研究で得られた主な 結果をまとめる.
1)霧化空気差圧,気液流量比一定の条件において,外側 旋回翼の旋回角(以下外側旋回角)が大きくなるに従 い,噴霧鞘角(液膜出口近傍の噴霧拡がり角,本文中 図5参照)は増加する.外側旋回角に対する噴霧鞘角 の増加の傾きは,内側旋回角が大きい場合(–45 deg,
–60 deg)には,ある旋回角(+45 deg付近)から急峻
になる傾向がある.一方,内側旋回角の旋回が小さい
場合(–20 deg)には,外側旋回角による噴霧鞘角の変
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4)霧化空気差圧,気液流量比一定の条件において,外側 旋回角が大きくなると下流噴霧角(本文中図5参照)
は増加する.
5)内外の気流の旋回が逆方向である場合,外側気流と液 膜の旋回方向を同じにした方が,内側気流と液膜の旋 回方向を同じにするよりも,若干噴霧粒径が小さくな る傾向にある.
6)噴射弁出口に延長拡大流路(フレア)を設けた場合,
フレアが無い場合と比較して噴霧鞘角は大きくなる.
外側旋回角を大きくすると,それまで急拡大するフレ ア壁から剥離していた流れが付着するようになり,こ れに伴って噴霧形状も半径方向へ大きく拡がる形状へ と変化する.内側旋回角–45 degの場合,この形状の 遷移は外側旋回角+50 degを境に起こった.外側旋回
角+50 degにおいては,半径方向に大きく拡がるモー
ドと,比較的拡がらないモードの2つの噴霧モードが 観察され,それぞれのモードは安定であったが,流れ 中に障害物を与えるなど外的に擾乱を与えることによ り拡がるモードと拡がらないモードが切り替わった.
7)気流がフレア壁から剥離しているケース,即ち噴霧形 状が上記の「拡がらないモード」に属するケースにお いて,フレアの有無と噴霧粒径の関係を調べたところ,
内側旋回角が小さい場合(–20 deg)にはフレア有りの 方が小さく,内側旋回角が大きい場合(–45 deg)には,
外側旋回角の大きな領域でフレア有りの方が大きいと いう結果が得られた.
参考文献
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