著者 剣持 信夫
雑誌名 大手前女子短期大学・大手前栄養文化学院・大手前
ビジネス学院研究集録
巻 9
ページ 101‑111
発行年 1989‑12‑01
URL http://id.nii.ac.jp/1160/00001695/
体 験 的 企 業 論(H)
企業成長の態様 を探 る
AnEssayonEnterprize(PartH)
剣 持 信 夫
NobuoKEMMOCHI
1.ア サ ヒ ビ ー ル の 変 身 序 文 に か え て
ア サ ヒ ビ ー ル の89年6.月 中 間 決 算 は 、 経 常 利 益 が113億86百 万 円 と 、 前 年 同 期 比97%増 え た 。 主 力 の 「ス ー パ ー ド ラ イ 」 の 販 売 数 量 が 同 じ く 前 年 同 期 比70%増 え た ほ か 、 金 融 収 支 黒 字 が68億 円 と 三 倍 近 く に 膨 み 、 利 益 を 押 し上 げ た の で あ る 。
こ の 中 間 期 の 売 上 高 は 、2,871億 円 と 、 前 年 同 期 比25.8%増 と な っ た 。 酒 税 減 税 に よ る 目 減 りが あ る た め 、 実 質31%の 増 収 。 ド ラ イ タ イ プ に 占 め る 「ス ー パ ー ド ラ イ 」 の シ ェ ア は68%と 、21ポ イ ン ト上 昇 、 他 社 の ド ラ イ ビ ー ル を 食 う 形 で 売 り上 げ を 伸 ば し た 。 一 方 、 問 題 点 と し て は 、 ビ ー ル 業 界 の 競 争 激 化 に 伴 い 、 販 売 奨 励 金 ・広 告 宣 伝 費 等 が 急 増 し 、 一 般 管 理 販 売 費 の 合 計 が 、33%も 増 加 、 売 上 高 の 伸 び25.8%を 大 き く上 回 っ た 結 果 、 営 業 利 益 は3,288百 万 円 と 、1.8%の 伸 び に と ど ま っ た こ と ぐ ら い で あ ろ う 。
「ド ラ イ が 変 え た ビ ー ル の 流 れ は
、 も は や 、 二 度 と 逆 戻 り す る こ と は な い 」 と 言 う社 長 の 判 断 で 、1988年(昭 和63年)6月 、 同 社 は ラ ガ ー の 生 産 を 打 ち 切 っ た 。事 実 、 ア サ ヒ ビ ー ル は 、 ス ー パ ー ドラ イ の 開 発 に よ り 、 ブ ラ ン ド イ メ ー ジ を 一 新 し 、 販 売 力 は 著 し く 強 化 さ れ 、 遂 に は 業 界2位 の 座 を サ ッ ポ ロ ビ ー ル か ら 奪 回 す る な ど 、 驚 異 的 な 「ド ラ イ 旋 風 」 を 巻 き 起 こ し た の は 周 知 の 通 り で あ る 。(表1表2参 照)
表1ビ ー ル3社 業 容 ・業 績 の 推 移(単 位 億 円 〉
売 上 高88年 度(86年 度 比%)
5,449(㊦110%)
※11,788() 4,897(∈)12%)
経 常 利 益
86年 度87年 度88∠
ア サ ヒ2,5943,451 キ リ ン12,21812,663※
サ ッ ポ ロ4,3604,670
、
86年 度 87年 度 88年 度(86年 度 比%)
ア サ ヒ 53 94 150(㊦183%)
キ リ ン 793 808 ※647(一 一)
サ ッ ポ ロ 124 131 135(①9%)
※ キ リ ン88年 度 は 決 算 期 変 更 で11ヶ 月 決 算 の た め 年 度 間 比 較
は せ ず(各 社 決 算 概 況 よ り集 計)
体 験 的 企 業 論(H)
然 し 乍 ら
(1)ド ラ イ で 水 を あ け ら れ た 同 業 他 社 が 、 い つ 迄 も 手 を こ ま ね い て い る 筈 は な く 、 反 撃 の 体 制 に 移 る と 思 わ れ る こ と 。
(2)一 般 大 衆 の 味 覚 が 、 い つ ま で ド ラ イ に 味 方 す る か が 疑 問 で あ る こ と 。
(3)次 の 図 に 見 ら れ る 様 に 、1989年 中 に は 、 ビ ー ル 商 品 の 中 の ド ラ イ ビ ー ル に 占 め る 割 合 が50%に 達 す る で あ ろ う こ と か ら み て 、 こ れ 以 上 の シ ェ ア を 拡 大 す る こ と は 、 相 当 困 難 で は な い か と 思 わ れ る こ と 。
な ど か ら 、 ド ラ イ ブ ー ム が 去 っ た あ と も 、 果 た し て 同 社 が 、 拡 大 路 線 を 続 け ら れ る か ど う か の 疑 問 が 一 応 は 浮 か ん で く る 。
100%表2ビ ー ル4社 の シ ェ ア(%)
90
80
70
60
50
40
30
20
10
ラ㌃
% ラ㌔
%
ラカ郵 ラ㌦
%
生18%
生25%
笏
生43%
♪
フ ィ イ% タ2ドノ ラ 劉縣 勧 ー
笏
轍 箸
1撫1987年1講 欝 予想
89/6 (88/6)
キ リ ン 49.0 (52.3)
ア サ ヒ 23.7 (18.6)
サ ッ ポ ロ 18.3 (19.8)
サ ン ト リ ー 9.0 (9.3)
(各 社89年6月 中 間 決 算 概 況 よ り集 計)
図1ビ ー ル 商 品構 成 の 変 化
上 の 図 に み ら れ る 様 に 、確 か に ド ラ イ タ イ プ の 伸 び は 著 し い も の の 、こ こ で 敢 え て ラ ガ ー の 生 産 を 打 ち 切 っ た こ と は 、 同 社 に は そ れ な り の 思 惑 と 、 自 信 が あ る か ら に 相 違 な い 。 折 し も 、 パ リ の 数 少 な い 三 ツ 星 レ ス トラ ン の 一 つ 「ル キ ャ ・キ ャ ル ト ン 」 の ア サ ヒ ビ ー ル に よ る 買 収 の 記 事 を 読 み 、 ま た 、 医 家 向 け 医 薬 品 メ ー カ ー 鳥 居 薬 品 の 株 式 を50%強 取 得 し 傘 下 に 収 め た の を 見 る 時 、 ビ ー ル を 軸 と し た 同 社 の 経 営 多 角 化 戦 略 の 一 環 を う か が い 知 る こ
と が 出 来 、 先 行 き の 一 段 の 成 長 が 期 待 さ れ る と こ ろ で あ る 。
で は 、 同 社 の 急 成 長 の 要 因 は 何 で あ っ た の で あ ろ う か 。 数 項 目 に 整 理 す る と 、 (1)経 営 者(社 長)の 卓 抜 し た 決 断 力 と 行 動 力 。
(2)消 費 者 好 み の 品 質 を 追 及 し て 成 功 し た こ と 。 (3)CIを 導 入 し 、 企 業 イ メ ー ジ を 一 新 し た こ と 。
(4)外 債 を 含 め た 社 債 を 積 極 的 に 発 行 し 、 金 融 収 支 を 大 幅 に 改 善 す る と 共 に 、 企 業 買 収
大 手 前 女 子 学 園(大 手前 女 短 大研 集)「 研 究集 録 」 第9号(1989年)
等 の 資 金 に 当 て 、 業 容 を 拡 大 し た こ と 。
(5)落 合 信 彦 を 起 用 し た メ デ ィ ア の 有 効 な 利 用 は 、 国 際 的 な イ メ ー ジ を も 、 消 費 者 に 与 え た こ と 。
等 が 挙 げ ら れ る が 、 中 で も(2)の 品 質 の 追 求 に よ る 成 功 こ そ が 、 消 費 者 直 結 の 業 種 と し て は 最 も 重 要 で あ る 。 更 に 、 今 後 の 成 長 の ポ イ ン トは 、 ビ ー ル 偏 重 か ら 脱 皮 し た 経 営 の 多 角 化 で あ ろ う 。
尚 、 同 社 は 、89年 月4月 よ り 、 「ス ー パ ー ド ラ イ 」 と 並 行 し て 、 新 製 品 「ス ー パ ー イ ー ス ト」 を 発 売 し て い る が 、 こ れ ま で の ビ ー ル が 、 ビ ン 詰 め し た あ と の 酵 母 の 動 き を 熱 処 理 や フ ィ ル タ ー に よ っ て と め て い た の に 対 し て 、 「ス ー パ ー イ ー ス ト」 は 、 ビ ン の 中 で も醗 酵 を 続 け る と 言 う 全 く新 し い タ イ プ の ビ ー ル で あ り 、 こ れ の 売 行 き を 注 目 し た い 。
2.日 立 製 作 所 の ケ ー ス
過 去30年 間 税 引 後 利 益 ラ ン キ ン グ で 、 常 に10位 以 内 の ラ ン ク を 維 持 して き た の は 、 ト ヨ タ 自 動 車 ・松 下 電 器 産 業 、 日 立 製 作 所 ・ 日 産 自 動 車 に す ぎ な い が(前 稿 ・大 手 前 女 子 短 期 大 学 外2学 院 研 究 集 録P.12)、 こ の う ち 、 日 立 製 作 所 に つ い て 、 そ の 成 長 の ポ イ ン トを 考 え て み た い 。
・ 日立 製 作 所 の 概 要 設 立1920年2月
資 本 金2,229億81百 万 円 従 業 員76千 人
業 種 総 合 電 機 メ ー カ ー
内 訳(%)通 信 ・電 子44重 電20家 電17産 業 機 器 ・プ ラ ン ト9 交 通 機 器 他10
業 績89年3月 期(単 位 億 円) (前 年 比) 売 上 高32,320((∋3,125) 経 営 利 益1,911(①582) 糸屯 不U益1,003(㊥352)
日 立 金 属 、 日立 化 成 工 業 を は じ め 数 多 く の 関 連 会 社 を 有 し 、2位 の 東 芝 を 年 間 売 上 高 で 3,100億 円 引 離 す 総 合 電 機 の ト ッ プ メ ー カ ー で 、 技 術 に は 定 評 が あ り 、 財 務 体 質 も優 良 で
あ る 。(因 み に 、89年3月 期 の 金 融 収 支 は449億 円 の 黒 字)
巨 大 企 業 に は 、 大 企 業 病 が つ き ま と っ て 、 そ の 成 長 を 阻 害 す る 場 合 が 多 い が 、 同 社 の 場
体験的企業論(且)
合 は 、 時 代 を 先 取 りす る 姿 勢 、 即 ち 、 目 先 の 利 益 よ り も 、 将 来 の 成 長 力 や 収 益 力 に 重 点 を 置 い た 経 営 が み ら れ 、 こ れ が 業 界 ト ッ プ の 座 を 維 持 出 来 る 原 動 力 な の で あ ろ う 。 そ の 経 営 哲 学 は 、 「和 の 精 神 」 ・ 「誠 の 精 神 」 ・ 「開 拓 者 精 神 」 の 三 本 柱 か ら な り 、 そ の 中 の 「誠 の 精 神 」 と は 、 ユ ー ザ ー の ニ ー ズ を 十 分 に 満 足 さ せ る よ う な 高 性 能 で 、 耐 久 性 の よ い 製 品
を 供 給 す る こ と を 意 味 し て い る 。
以 下 、 同 社 を 成 長 に 結 び つ け た 具 体 的 戦 略 に つ い て 、 数 例 を 記 述 す る 。 (1)先 行 投 資 に つ い て
1961年 、 ア メ リ カ の(RCA)と 技 術 提 携 す る こ と に よ っ て 、 大 型 コ ン ピ ュ ー タ ー の 企 業 化 を は か っ た 。 そ の 途 上 で(RCA)は 、 コ ン ピ ュ ー タ ー か ら 撤 退 し た 。 そ れ に も か か わ らず 、 そ れ ま で(RCA)か ら 吸 収 し た 技 術 と ノ ウ ハ ウ を 土 台 と し て 、 自 主 技 術 で コ ン ピ ュ ー タ ー の 企 業 化 を は か り 、 約15年 と い う 長 い 歳 月 を か け て 、 こ れ を も の に し た の で あ る 。
か つ て は 金 食 い 虫 で あ っ た コ ン ピ ュ ー タ ー 部 門 は 、 い ま や 同 社 の ド ル 箱 部 門 に ま で 成 長 し て い る 。 同 社 は 工 場 別 に 独 立 採 算 制 を と っ て い る に も か か わ ら ず 、 コ ン ピ ュ ー タ ー
を 生 産 し て い る 工 場 の 長 期 間 に 亘 る 赤 字 を 先 行 投 資 と 考 え た の で あ る 。
そ の 先 行 投 資 内 容 は 、 主 と し て 研 究 開 発 投 資 と 設 備 投 資 で あ っ た 。 金 の 卵 を 育 て る た め に は 、重 電 機 や 家 電 で 稼 い だ 収 益 を あ え て コ ン ピ ュ ー タ ー 部 門 に つ ぎ込 ん だ の で あ る 。
更 に 、 コ ン ピ ュ ー タ ー の 心 臓 部 と も 言 え る 半 導 体 部 門 に つ い て も 、1959年 以 降 、 研 究 開 発 と 設 備 投 資 と い う 先 行 投 資 を つ み 重 ね る こ と に よ っ て 、 コ ン ピ ュ ー タ ー と並 ぶ ドル 箱 部 門 へ と 育 成 す る こ と に 成 功 し て い る 。
(2)研 究 開 発 活 動 の ス ピ ー ド ・ア ッ プ に つ い て
同 社 で は 、 大 型 新 製 品 の ス ピ ー ド ・ア ッ プ の た め に 、100人 か ら150人 を 動 員 す る 大 型 プ ロ ジ ェ ク ト チ ー ム を 組 む 体 制 が 確 立 し て い る 。
例 え ば 、VTRで は 、 後 発 メ ー カ ー と し て 参 入 し た 。 先 発 メ ー カ ー に 追 い 付 く た め に は 、 ユ ニ ー ク な 機 能 を つ け 加 え る こ と が 必 要 で あ り 、 し か も研 究 開 発 の ス ピ ー ド ・ア ッ プ を は か る こ と が 緊 急 の 課 題 で あ っ た 。
そ こ で 、 ト ッ プ の リ ー ダ ー ・シ ッ プ の 下 に 各 地 の 研 究 所 か ら 最 適 の 人 材 を 動 員 し て 、 東 海 工 場(茨 城 県)に 集 め 、150人 に も 達 す る プ ロ ジ ェ ク トチ ー ム を つ く っ た 。
は じ め か ら 、 開 発 す る 内 容 の み で な く 開 発 期 限 を 定 め 、 週 単 位 の 綿 密 な ス ケ ジ ュ ー ル を た て 、 研 究 開 発 の ス ピ ー ド ア ッ プ に 全 力 を あ げ 、 普 通 な ら2〜3年 か か る と こ ろ を 、 わ ず か8ヶ 月 間 で 製 品 化 に 成 功 し た 。VTRを 「次 期 主 力 商 品 」 に 育 て る た め に 、 総 力 を 結 集 し た の で あ る 。 こ の 結 果 、 後 発 で あ り な が ら 、 現 在 は 業 界 第 二 位 に 躍 進 し 、 同 社 の 家 電 部 門 の 稼 ぎ 頭 に ま で 育 て あ げ る こ と に 成 功 し た の で あ る 。
大手 前 女 子学 園(大 手 前 女 短 大研 集)「 研 究集 録」 第9号(1989年)
(3)財 務 体 質 に つ い て
日本 の 企 業 は 、 い ま だ に 売 上 至 上 主 義 の 考 え 方 か ら抜 け切 っ て い な い 面 が あ る 。 そ れ が 過 当 競 争 を発 生 させ 、 海 外 で は輸 出 の 急 増 を招 き、 貿 易 摩 擦 を激 化 させ る 誘 因 と な っ
て い る の で あ る 。
売 上 指 向 の 考 え方 は 、 好 況 時 に は 副 作 用 を伴 わ ず に 企 業 を成 長 させ る上 で プ ラ ス に は な るが 、 景 気 が 停 滞 ま た は 後 退 し た 時 に は 、 乱 売 合 戦 の 泥 沼 に は ま り込 む と言 う リ ス ク が 表 面 化 す る 可 能 性 が 大 き い 。 そ れ に よ っ て 、 ブ ラ ン ドイ メ ー ジ や 企 業 イ メ ー ジ が 低 下
し、 景 気 が 回 復 して も、 ま と も な価 格 で は売 れ な くな る と い う 後 遺 症 に 苦 しむ こ とに な る 。往 年 の 優 良 企 業 が ご く平 凡 な 会 社 に な り下 っ て し ま う原 因 は こ こ に あ る と云 え よ う。
89年3学 期 に 、 日立 は448億 円 の 黒 字 を 出 し、 経 常 利 益 の23.5%を 稼 ぎ だ し た 。 こ れ は 即 ち
(1)徹 底 した 、 工 場 別 独 立 採 算 制 に よ り、 収 益 重 視 の 方 針 を貫 い た こ と。
(2)毎 年 の 設 備 資 金 を収 益 の 内 部 留 保 と 、 減 価 償 却 費 で ま か な う こ と原 則 と し、 例 外 的 に 多 くの 資 金 を必 要 とす る と き は 、 時 価 発 行 増 資 や 、 転 換 社 債 の 発 行 等 、 自己 資 本 中 心 の 経 営 に転 換 した こ と。
(3>国 際 財 務 セ ン タ ー を有 し、 全 社 的 な 国 際 財 務 戦 略 を展 開 した こ と等 に 負 う と こ ろ が 大 き い 。
こ の 結 果 、 総 合 電 機 メ ー カ ー3社 の 業 績 を 比 較 して も、 次 の 通 り、 同社 の優位 性 が 際 立 っ て い る の で あ る。
表389年3月 期 電 機3社 業績 比 較(単 位 億 円)
売 上 高 経 常 利益(同 利 益 率)
日 立 32,320 1,911(5.9%)
東 芝 29,215 1,490(5.1%)
三 菱 22,301 931(4.2%)
純 利 益(同 利 益 率>
1,004(3.1%) 613(2.1%) 325(1.5%)
金 融 収 支 (+)449 (+)1 (+)60
(4)工 場 別 独 立 採 算 制 につ い て
同 社 の 経 営 組 織 は 、 日本 の 大 企 業 の 中 で も特 に ユ ニ ー ク で あ る 。ほ と ん ど の 企 業 で は 、 工 場 は コ ス トセ ン タ ー で あ る が 、 同 社 の 場 合 は 、 工 場 が プ ロ フ ィ ッ トセ ン タ ー な の で あ る 。 こ れ が 「収 益 を 生 み 出 す 源 泉 は生 産 の 現 場 に あ る」 と云 う創 業 以 来 の 経 営 哲 学 な の で あ る 。
具 体 的 に は 、 工 場 資 本 金 制 度 を 導 入 し、 工 場 ご と に バ ラ ン ス シ ー トと損 益 計 算 書 を作 成 して い る 。 工 場 の 中 に 営 業 部 門 は な い の で 、 生 産 の み に 専 念 す る 事 業 部 の よ う な も の な の だ が 、 各 工 場 が 挑 戦 的 な 高 い 目標 を揚 げ て コ ス トダ ウ ン に成 功 す れ ば 、 そ の ま ま各 工 場 の 利 益 の 増 加 とな っ て ハ ネ 返 っ て く る の で あ る 、,性能 の よ い 製 品 を安 くつ く る こ と
に よ っ て 、 各 工 場 の 利 益 が 増 加 す る わ け だ か ら、 コ ス ト ダ ウ ンへ の イ ンセ ン テ ィ ヴ は そ
体 験 的 企 業 論(II)
れ だ け 強 く作 用 す る こ と に な る 。
こ の 様 な 組 織 体 制 の も とで は 、 工 場 長 は 、 松 下 電 器 産 業 の 事 業 部 長 と同 様 に 、 そ れ ぞ れ が 中 堅 企 業 の社 長 の よ う な権 限 と責 任 を持 ち 、 経 営 の 一 貫 を担 っ て い る の で あ る 。 し か も工 場 長 の 大 部 分 は エ ン ジ ニ ア 出 身 だ が 、 売 上 げ 利 益 率 の 改 善 や 、 使 用 総 資 本 回 転 率 の 向 上 な ど 、 財 務 面 に も気 を 配 り、 経 営 者 と して の セ ン ス を 磨 くの で あ る。
前 掲 表3の 通 り、 総 合 電 機 メ ー カ ー3社 の う ち 、 利 益 率 が 最 も高 い の は 、 こ の 様 に工 場 独 立 採 算 制 が 徹 底 し、コ ス トダ ウ ン や 、省 力 化 が 他 の2社 に 先 行 して い る た め で あ ろ う。
3.マ ツ ダ(旧 東 洋 工 業)の ケ ー ス
こ れ まで 、 ア サ ヒ ビ ー ル 、 日立 製 作 所 に つ い て の 、 成 長 の 要 因 を明 ら か に して 来 た が 、 本 章 で は 、 昭 和50年 前 後 に経 営 が 悪 化 した 東 洋 工 業(現 在 マ ッ ダ に 社 名 変 更)に つ い て 、 そ の 経 営 悪 化 の 背 景 か ら 、 企 業 の 成 長 を 阻 害 す る 要 因 と な る もの を探 っ て み た い 。
以 下 、 住 友 銀 行 史 一 昭 和50年 代 の あ ゆ み 一 か ら ま とめ て み る 。
東 洋 工 業 の 危 機 は 、 根 本 的 に は 後 発 メ ー カ ー に あ りが ち な 経 営 基 盤 の 弱 さ に 起 因 す る と こ ろ が 大 きか っ た が 、 直 接 の き っ か け は 、 米 国 市 場 で の 販 売 不 振 と、 在 庫 の 急 増 、 需 要 環 境 の 変 化 に対 処 す る減 産 の 遅 れ な ど に よ る もの だ っ た 。
東 洋 工 業 は 、 わ が 国 で は ト ヨ タ 、 日産 に つ ぐ第 三 位 の 自動 車 メ ー カ ー で 、 輸 出 比 率 は5 割 強 に 達 して い た 。 同 社 は西 ドイ ツのNSU社 か ら ロ ー タ リ ー エ ン ジ ン(RE)の 特 許 実 施 権 を 得 て 、 昭 和42年 に 世 界 で は じめ て 実 用 化 に 成 功 して い た 。RE車 は 、 高 速 走 行 性 や 加 速 性 に す ぐれ 昭 和48年 に は 、同 社 の 乗 用 車 生 産47万 台 の うち 、RE車 は24万 台 に の ぼ り、
同 社 の 戦 略 商 品 に な っ て い た 。
と こ ろ が 、 同 年 秋 に お こ っ た 石 油 危 機 を き っ か け に 、 石 油 消 費 面 で 、 在 来 型 の レ シ プ ロ エ ン ジ ン車 に 比 べ50%余 計 に ガ ソ リ ン を 消 費 す る と言 う調 査 結 果 が 米 国 の 環 境 保 護 局 か ら 公 表 され る に 至 り、 マ ツ ダ車 の 売 れ 行 きは 減 激 し、 在 庫 が ふ え 続 け た 。
オ イ ル シ ョ ッ ク の 発 生 後 、 トヨ タ ・日産 の 両 大 手 は 、 需 要 減 を 見 越 して た だ ち に生 産 調 整 に は い っ た 。 こ れ に対 し東 洋 工 業 は 、 強 気 の 経 営 路 線 を 変 え な か っ た 。 当社 が15%の 大 幅 な 減 産 に踏 み き った の は 他 社 よ り約1年 も遅 い 昭 和51年1月 で あ っ た 。
こ の 様 に 、 米 国 市 場 で の 販 売 激 減 を き っ か け に 、 内外 市 場 で 、 需 給 の 大 幅 な ア ンバ ラ ン ス を生 じ た た め 、業 績 は 急 速 に悪 化 した 。そ して 遂 に は 、経 営 利 益 段 階 で173億 円 の 損 失(昭 和50年10月 期)を 計 上 し、 多 額 の 資 金 不 足 を生 じる に 至 っ て 、 住 友 銀 行 主 導 に よ る 東 洋 工 業 再 建 が 本 格 化 す る の で あ る 。
同社 の 経 営 悪 化 の 直 接 の き っ か け とな っ た の は 、 た しか に 、 上 記 の 通 りで あ ろ うが 、 企 業 に は 、 経 営 危 機 に見 舞 わ れ る に 至 る背 景 が 必 ず あ る。 そ れ は 、 企 業 の 奥 に ひ そ む 病 巣 と 言 え る部 分 で あ る 。
大 手 前 女 子 学 園(大 手前 女 短 大研 集)「 研 究 集 録 」 第9号(1989年)
で は東 洋 工 業 の場 合 は ど うで あ ろ うか 。
東 洋 工 業 は 大 正9年(1922年)、 松 田 重 次 郎 らが 、 広 島 市 に東 洋 コ ル ク工 業 を 創 立 した こ とに は じ ま る 。 昭 和2年(1926年)に 社 名 を東 洋 工 業 と改 め 、 工作 機械 な ど を製 造 した ほ か 、 昭 和6年(1931年)か ら三 輪 トラ ッ ク の 生 産 を 開 始 した 。
第2次 大 戦 後 は 、三 輪 トラ ック に加 え て 、小 型 四輪 トラ ッ ク に 進 出 、昭 和30年 代 後 半(1955 年 頃)に 入 る と 、 軽 乗 用 車 、 小 型 乗 用 車 な ど を あ い つ い で 発 売 した 。 こ う して しだ い に 上 級 車 種 へ の 転 換 を は か り、 トヨ タ ・日産 につ ぐ業 界 第 三 位 の 地 位 を 占 め る様 に な っ た の で あ る 。
しか し、 モ ー タ リゼ ー シ ョ ンの 主 流 で あ る乗 用 車 分 野 で 商 品 性 に す ぐれ た トヨ タ 、 日産 に 比 べ て 、 か つ て の トラ ッ ク メ ー カ ー の イ メ ー ジ が 抜 け きれ な い 東 洋 工 業 は 、 ど う して も 後 発 の 弱 み を まぬ が れ な か っ た 。 そ こ で 同 社 は 、 乗 用 車 の 分 野 で 特 色 を打 ち 出 す た め 、R
Eの 開 発 に と り組 み 、 前 述 の よ う に世 界 で 初 め て 実 用 化 に成 功 す る こ と が 出 来 た 。 そ れ以 来20年 以 上 経 っ た 現 在 で も、RE車 は ス ポ ー テ ィー な 車 種 を 中心 に 同社 の 独 占 商 品 に な っ て い る 。
だ が 、 昭 和40年 代(1965年 〜)に 推 進 さ れ たRE偏 重 の 経 営 戦 略 は 、 同社 の事 業展 開 に ひず み を もた ら した 。REの 研 究 開 発 と そ の 生 産 設 備 に 人 材 と資 金 を集 中 的 に 投 入 し た た め 、 そ の 他 の 技 術 開 発 や 製 品 の モ デ ル チ ェ ン ジ が 軽 視 さ れ 、ユ ーザ ーの 好 み に合 う車 づ く りの 努 力 が 不 足 した の で あ る 。
ま た 、 会 社 自体 の 経 営 体 質 に も問 題 を は らん で い た 。 同社 は 、 同族 的 な色 彩 が 強 く、組 織 的 な 企 業 運 営 や 、 合 理 的 な 経 営 管 理 の 機 能 が 脆 弱 で 、 近 代 的 体 質 へ の 切 換 え を必 要 と し て い た の で あ る 。
住 友 銀 行 主 導 に よ る再 建 と 、フ ォ ー ドとの 提 携 強 化 に よ り、経 営 は軌 道 に乗 っ た も の の 、 ラ イ バ ル2社 が あ ま りに も強 力 で あ り、 本 田 技 研 ・三 菱 自動 車 と の3位 グ ル ー プ 内 で の 競 争 も、 今 後 熾 烈 を極 め る こ と で あ ろ う。
4表 自動 車3社 業 績 比 較(単 位 億 円)
売上 高 経 常 利益(同 利 益 率) 純利 益(同 利 益 率)
ト ヨ タ(88/6期 〉 66,913 5,217(7.8%) 2,380(3.6%)
日 産(89/3期) 35,810 1,548(4.3%) 636(1.8%)
マ ツ ダ(88/10期) 18,443 313(1.7%) 152(0.8%)
4.味 の 素 の ケ ー ス
前 掲 の ア サ ヒ ビ ー ル は 、 ビ ー ル を軸 と した 総 合 食 品 メ ー カ ー を 目指 し、 日立 製 作 所 は 、 重 電 機 メ ー カ ー か ら 、 電 子 部 門 を 主 とす る 成 長 性 の あ る分 野 に主 力 を移 した 。何 れ も経営
の 多 角 化 で あ る 。 何 れ にせ よ優 良 企 業 で あ り続 け る た め に は
(1)現 在 の 主 力 商 品 の み に 依 存 して い た の で は 、 将 来 の 成 長 は お ぼ つ か な い 。例 え ば合
体 験 的企 業 論(II)
繊 ・食 品 ・鉄 鋼 ・家 電 な ど につ い て つ い て み る と 、 こ れ か ら21世 紀 に か け て 成 熟 期 を 向 か え 、 需 要 の 伸 び が 鈍 化 す る こ とが 予 想 さ れ る 。 多 角 化 戦 略 を展 開 し な い とす れ ば 、 企 業 の 成 長 力 は低 下 す る 。
(2)技 術 革 新 の 進 展 に よ っ て 業 界 間 の 垣 根 が 低 くな り、 競 争 が 激 化 して 、 商 品 の ラ イ フ サ イ ク ル が 短 くな って い る こ と に あ る。 例 え ば 、1980年 代 の 成 長 商 品 とみ な さ れ て い たVTRや パ ソ コ ン、産 業 用 ロ ボ ッ トな どは 、さ ま ざ ま な業 界 か ら の 参 入 が あ り、
改 良 商 品 が 相 次 い で 開 発 され 、 競 争 激 化 が 商 品 の ラ イ フサ イ ク ル を短 く して い る。
(3)円 高 の 定 着 に よ っ て 日本 の 賃 金 レベ ル が ドル ・ベ ー ス で み て 世 界 最 高 と な っ た こ と で あ る。 日本 の 優 良 企 業 と い え ど も、 付 加 価 値 の低 い 商 品 は 、 も は や 日本 国 内 で 生 産 して は 採 算 に 合 わ な い 時 代 を迎 え て い る 。
な ど か ら、 常 に 成 長 性 が あ り、 付 加 価 値 の 高 い 分 野 へ の 多 角 化 が 要 請 さ れ る の で あ る 。 昭 和31年(1956年)協 和 発 酵 工 業 が 発 酵 法 と言 う画 期 的 な グ ル タ ミ ン酸 ソ ー ダ の 新 製 法 を開 発 し た 。 当 時 「味 の 素 」 は 、 自 ら市 場 開 発 し た わ が 国 の グ ル タ ミ ン酸 ソ ー ダ市 場 に お い て 独 占 的 な地 位 を長 く 占 め て お り、 グ ル タ ミ ン酸 ソ ー ダ と言 え ば 「味 の 素 」 と言 わ れ る ほ どで 、 い わ ば 、 「味 の 素 」 と言 う言 葉 が 普 通 名 詞 化 され て い た ほ ど で あ っ た 。
然 し、 協 和 発 酵 が 開 発 した 発 酵 法 と言 う製 法 は 、 そ れ まで 「味 の 素 」 が 独 自 に 開発 し た 抽 出 法 と言 う製 法 の 優 位 性 を 崩 壊 し、 小 規 模 投 資 に よ る 競 争 参 入 を誘 発 す る こ と に な る 。 更 に 、 グ ル タ ミ ン酸 ソ ー ダが も と も と化 学 合 成 品 で あ る こ とか ら考 え て 、 製 法 さ え確 保 出 来 れ ば 、誰 で も同 質 の 製 品 を生 産 出 来 る も の で あ っ た 。 ま さ に 、 経 営 の 危 機 で あ った 。
協 和 発 酵 の 新 製 法 開 発 に 対 す る 味 の 素 の 対 応 は 、 現 実 的 か つ 思 い切 っ た も の で あ っ た 。 同社 は まず 、 協 和 の 動 き に 対 して,い ち 早 く製 品 購 入 契 約 を結 び 、協 和 製 の グ ル タ ミ ン酸 ソ ー ダが 化 学 合 成 品 で あ る と言 う こ と を 、 逆 に 利 点 と して 活 用 した もの で あ った 。 同社 は また 、 製 品 の 購 入 販 売 と い う方 法 に よ っ て 、 リ ー ド ・タ イ ム を 稼 ぐ 問 に 、 大 規 模 な研 究 開 発 投 資 と、 製 法 の転 換 を 成 し遂 げ 、 創 業 以 来 の 経 営 危 機 を乗 り越 え た の で あ る。 そ の 後 、 味 の 素 は 、 旭 化 成 そ の 他 の 企 業 が 相 次 ぐな か で も市 場 シ ェ ア を大 幅 に 落 とす こ と な く、 わ が 国 の グ ル タ ミ ン酸 ソ ー ダ市 場 で 大 き な 発 展 を遂 げ た の で あ る 。
この こ とで 味 の 素 が 学 ん だ こ と は 、
(1)常 に 、 製 品 差 別 化 力 を持 た な け れ ば な らな い こ と。
(2)い か に 強 い リ ー ダ ー の 立 場 に あ って も 、 技 術 革 新 に よ っ て 、 そ の 力 は 瞬 時 に して 失 わ れ て し ま う こ と 。
(3)一 つ の 事 業 の み に 固 執 して い る と企 業 経 営 の 危 機 が 表 面 化 す る こ と。
な どで あ る 。 味 の 素 の こ れ ら の教 訓 に対 す る答 え の 一 つ が 、 経 営 の 多 角 化 で あ っ た 。 即 ち 、(1)調 味 料 系 の 多 角 化(ほ ん だ し ・中華 あ じ等)
(2)油 脂 系 統(マ ヨ ネ ー ズ等)
大 手 前 女 子 学 園(大 手前 女 短 大研 集)「 研 究 集 録 」 第9号(1989年)
(3)加 工 食 品 系(ケ ロ ッ グ コ ー ン フ レ ー ク 等)
(4)ア ミ ノ 酸 技 術 を ベ ー ス と し た フ ァ イ ン ケ ミ カ ル 系
の4つ の 領 域 で 多 角 化 を 推 進 し た 。 し か も 、 味 の 素 と 言 う ブ ラ ン ドイ メ ー ジ が ユ ー ザ ー の 信 用 を 得 て 成 果 を 挙 げ た も の が 多 か っ た の で あ る 。
た だ 、 不 本 意 な 結 果 に な っ て い る も の も あ る 。 そ れ は 、 「ア ル ギ ンZ」 に よ る ド リ ン ク 剤 業 界(清 涼 飲 料)へ の 参 入 で あ る 。 本 業 界 は(1)す で に 、 オ ロ ナ ミ ンC(大 塚 製 薬)が 、 圧 倒 的 シ ェ ア を 有 し て い た こ と 。(2)食 品 と 流 通 経 路 が 相 違 し て い る こ と 。(3)従 っ て 、 味 の 素 と 言 う ブ ラ ン ド イ メ ー ジ が 通 用 し て い な い こ と 、 な ど の 結 果 で あ ろ う 。 然 し、 総 合 的 に み れ ば 、 多 角 化 成 功 の 好 事 例 と み て 間 違 い な か ろ う 。
5.ま と め 一 企 業 文 化 の 時 代 へ
89年 の 夏 に 、 神 戸 青 年 会 議 所 主 催 の 会 議 サ マ ー フ ォ ー ラ ム ・イ ン ・コ ウベ に 出 席 して 、堀 場 製 作 所 の 堀 場 雅 夫 会 長 と、劇 作 家 で も あ る 山 崎 正 和 大 阪 大 学 教 授 との 、「新 ・
日本 人 へ の 提 言 」 と題 す る 対 談 を聞 い た 。席 上 、堀 場 会 長 は 、現 在 の 会 社 を設 立 して か ら、
学 位 を と る た め に 医 学 を研 究 して きた 頃 、 そ の 医 学 の 研 究 を通 じて 、 人 間(生 命)の 素 晴 ら し さ に 出 会 っ た と言 わ れ た 。 山 崎 教 授 は 、 こ れ か ら の 社 会 は 、 ます ま す コ ン ピ ュ ー タ ー 万 能 の 時 代 と な る で あ ろ うが 、 テ ク ノ ロ ジ ー 中 心 の 社 会 に於 い て は 、 人 間 の 物 事 に対 す る 感 激 性 を 薄 れ させ る。 結 局 私 達 に 残 され た 最 後 の 価 値 感 は 、 「人 間 の 生 命 」 で あ り、 こ れ が 世 界 共 通 の モ ラ ル で あ る と発 言 され た 。 物 中 心 の 社 会 に あ っ て 、 極 め て 示 唆 に 富 む話 で あ っ た 。
成 長 を 続 け る た め に 、 日 本 の 企 業 が 変 身 す る様 相 は 、 本 稿 で の 例 を含 め 、 い ろ い ろ な 領 域 で 見 出 す こ とが 出 来 る。
例 え ば
(1)エ ネ ル ギ ー と 原 材 料 の 刷 新 をす す め 、 併 せ て 、 優 れ た 新 素 材 を次 々 に 開 発 。 (2)エ レ ク トロ ニ ク ス 革 命 を 軸 に 、 技 術 の 高 度 化 、 先端 技 術 を 開 発 。
(3)経 営 多 角 化 の 推 進 。
(4)ベ ンチ ャ ー ・ビ ジ ネ ス の ク ロ ー ズ ・ア ッ プ。
(5)借 入 依 存 型 の 企 業 経 営 か ら脱 却 し、 金 融 収 益 を金 融 機 関 並 み に あ げ る 。 (6)異 業 種 との 提 携 ・交 流 を す す め る。
(7)CIを 導 入 し、 社 名 変 更 や シ ン ボ ル マ ー ク を刷 新 す る。
な ど な ど が 挙 げ ら れ よ う。
こ れ ら は 確 か に 、 企 業 成 長 の 条 件 と な る も の で り、 日本 経 済 活 性 化 の た め に も重 要 な こ と で は あ る が 、 む しろ こ れ か ら は 、 企 業 の 文 化 度 物 万 能 で は な く、 心 とゆ と り を持 つ い き方 一 〜 が 、 優 良 企 業 の 条 件 と して 要 請 さ れ る 時 代 が 来 る の で は な か ろ うか 。企 業 文化
体験的企業論(H)
の 時 代 の 幕 開 け で あ る 。
本 稿 の しめ く く り と して 、 三 和 銀 行 の 川 勝 堅 二 会 長 が 、 週 刊 ダ イ ヤ モ ン ド(89年8月12 日号)に 、 「企 業 文 化 の 時 代 」 と題 さ れ た 意 見 を述 べ られ て い た が 、 これ か らの 企 業 の あ るべ き姿 に つ い て 大 変 示 唆 に 富 む もの で あ る の で 、 是 非 紹 介 して お きた い 。
「企 業 に 対 す る 評 価 の 基 準 が 変 わ りつ つ あ る。 人 間 や文化 を重視 す るハ イ タ ッチ な価値 観 が 浸 透 す る に伴 い 、 従 来 の"良 い 企 業"観 が ゆ らい で い る。 例 え ば 企 業 の ゆ と り度 で あ る。 … … 収 益 の 追 求 と言 う企 業 本 来 の 目的 を 追 い な が ら 、従 業 員 自 らの 夢 を 追 求 す る に 適 した 環 境 を用 意 す る こ とが 出 来 て 、 は じめ て 新 しい"良 い 企 業"と い え る の で は な い だ ろ う か 。 … … 企 業 とそ れ を取 り巻 く社 会 の 関 係 に も新 しい 変 化 が 見 ら れ る 。 こ れ まで は 、 大 量 に 標 準 化 され た 商 品 を早 く、消 費 者 に 効 率 的 に 供 給 す る こ と、そ して シ ェ ア の 拡 大 が"良 い 企 業"た る 条 件 で あ っ た 。 しか し国 民 が 物 質 的 に もあ る 程 度 の 豊 か さ を実 現 した 今 、 消 費 者 の 求 め る もの は 標 準 化 さ れ た もの で は な く、 他 人 が 持 っ て い な い 、 幾 分 文 化 的 な 味 付 け を され た 商 品 な の で あ る 。 … … 企 業 の 寿 命 は30年 と も い う。 生 き残 っ て い くた め に は 、 時 代 と と も に 旧 来 の 企 業 文 化 に修 正 を加 え て い か ざ る を得 な い の は 当 然 で あ る 。 しか し、
企 業 の 内 と外 で 起 こ っ て い る こ れ らの 変 化 の 底 流 に な る の は 、 これ ま で と全 く異 な る も の で あ る よ う な 気 が して な ら な い 。 す な わ ち 、"企 業 中心 の 論 理 か ら 、"人 間 ・文 化 中 心 の 論 理"へ の 大 き な 価 値 観 の 転 換 が 起 こ りつ つ あ る と は言 え な い だ ろ うか 。 … … 時 代 を先 取 り
した魅 力 あ る企 業 文 化 な しに 働 く人 も集 ま ら な い し、 消 費 者 を 引 き付 け る 企 業 イ メ ー ジ の 浸 透 、 商 品 の 開 発 も で きず 、 ひ い て は 企 業 自 身 の 発 展 も見 込 め な い 。 … … わ れ わ れ が 手 に 入 れ た 、 世 界 で も ト ップ ク ラ ス の 豊 か さ は 、 こ れ まで の 企 業 活 動 の 賜 物 で あ る。 しか し、
"人 間 ・文 化 中心 の 論理'へ の大 きな価値 観 転換 が 起 こ りつつ あ る とき、企 業 も積極 的 に 自 らの 役 割 や 考 え 方 を変 え て い く必 要 が あ る だ ろ う。 時 代 に合 っ た ハ イ タ ッチ か つ グ ロ ー バ ル な 新 しい 企 業 文 化 の 構 築 が 、 今 こ そ 求 め られ て い る とい え よ う。」
最 後 に 、89年2月 に 日本 経 済 新 聞 社 が 東 京 ・大 阪 の ビ ジ ネ ス マ ン、 一 般 消 費 者 数 千 名 を 対 象 に して 実 施 し た 「企 業 イ メ ー ジ 調 査 で 、 「21世紀 ま で に 飛 躍 的 に 伸 び る 企 業 」 に つ い て の ラ ンキ ン グ 表 を 、 企 業 文 化 度 の 高 揚 を 願 い つ つ 付 け加 え て お く。
大 手 前 女 子 学 園(大 手 前 女 短 大研 集)「 研 究 集 録 」 第9号(1989年)
以 上
〔主 要 参 考 文 献 〕
「住 友 銀 行 史 昭 和50年 代 の あ ゆ み
」(昭 和60年11月 住 友 銀 行)
オ ー ル ウ ェ イ ズ 研 究 会 編 「リ ー ダ ー 企 業 の 興 亡 」(平 成 元 年6月 ダ イ ヤ モ ン ド社) 上 野 明 著 「優 良 企 業 の 経 営 学 」(平 成 元 年5月 有 斐 閣)
横 田 澄 司 著 「有 力 企 業 に み る 戦 略 的 企 業 活 動 」(平 成 元 年4月 同 文 館) 梅 沢 正 著 「企 業 文 化 の 創 造 」(昭 和61年1月 有 斐 閣)
吉 田 春 樹(興 銀 産 業 調 査 部 長)著 「日 本 産 業 の 中 期 展 望 」(平 成 元 年6月 中 央 公 論 社)