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年夏季の有明海における貧酸素水塊と気象・海象の変動特性

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Academic year: 2021

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(1)

2005

年夏季の有明海における貧酸素水塊と気象・海象の変動特性

水環境技術

WG 矢北 孝一

1.

研究の目的 : 有明海の貧酸素水塊は,その年の気象・海象条件等によって海域での発生 分布が異なり,その発生も様々な環境要因が複雑に相互作用していると考えられる.本研究で は,貧酸素水塊の発生機構の解明を目的とし,有明海における

2005

年夏季の気象・海象と溶 存酸素(以下,DO)の経時変化について,離散ウェーブレット変換(以下,DWT)によって 低周波成分を抽出し,気象・海象と

DO

との周期等の関連性から,その発生機構について検討 した.

2.

研究内容 : 図-1 に示す

8

地点で

2005

年に観測されたデータ(表-1)を用い解析を 実施した.また,気象データは,沿岸域に位置するアメダス川副地点,潮位は大浦検潮所のデ ータを用いた.なお,DO が

3mg/

以下を貧酸素状態とした.筑後川からの

3000m3/s

を超え る出水は,7 月と

9

月上旬の

2

期記録されている(図-2) .大浦の潮位変化は,小潮期の振幅 が

6

月~9 月にかけて小さくなる傾向が確認できる(図-3) .この期間の気温は,6 月~8 月 中旬まで上昇期であり,風速は

7

月上旬で南風が卓越し,9 月上旬に台風の影響により急激に 風向が変化している(図-4) .また,底層付近の

DO

変化は,7 月上旬までの高濃度期,B3 と

P6

地点での

7

月下旬~8 月下旬の貧酸素状態と

9

月中旬以降の回復期の傾向を示す. (図-

5)

.しかし各変動には,ノイズ混入があり定量化が困難であると考え,DWT によって高周波 成分を分離し低周波成分の抽出を試みた.DWT の一例として,DO と川副地点の気温・風速 の低周波成分の経時変化を示す(図-6,図-7) .また

DO

等のスカラー量の低周波成分は,

流体の移流や鉛直混合的な運動に左右されるとし,気象要素等の外力についても低周波成分を 対象とした.そこで貧酸素状態となる前駆的な主要因と,その周期性を検討するため気象要素 等の低周波成分の自己相関を求めた(図-8) .つぎに貧酸素化に関連する主要素の作用時期を 求めるため,各要素の低周波成分を主成分分析し主成分得点の経時変化を検討した(表-2,

図-9) .その結果,主成分得点の経時変化と

DO

変動との関連が示唆され,z1,

z2

成分と

DO

変動の類似性を検討するため相互相関を求めた.ここで相関値は,各要因が

DO

に与える影響 度,波形のピーク部を応答時間と仮定した. (図-10,図-11)

3.

主要な結論 :

(1)DWT

よりノイズ等の高周波が除去され,

B3,P6

地点の

DO

が貧酸素 状態になる

7

月中旬に,干潟縁辺部の

T1,T3

地点では,その状態ではない(図-6) .気温は,

6

月~8 月上旬まで約

20

日の変動を繰り返しながら上昇し,8 月

10

日付近のピーク後,下降 傾向を示している.風速は,

9

月以降に東西・南北方向で周期性があることが分かる(図-7) .

(2)主成分分析より累積寄与率が0.8

を超える

z1~z3

成分を主成分とし,因子負荷量の最大値

より,各成分は,z1:降雨,z2:風速(N-S) ,z3:気温となった(表-2) .(3)気象要素の自 己相関より,各要素に

60~14

日の長・短期の周期が確認され,7 月中旬以前に第

2

ピークが ある降雨,風速,潮位等が貧酸素化に関連することが示唆される(図-8) .(4)主成分得点の 経時変化より,DO が低下傾向を示す

7

月上旬と回復傾向の

9

月上旬で支配的な要因は,z1,

z2

成分(降雨,風速)であることが分かり,諫早湾内の

B3

および有明海湾奥部西側の

P6

地 点が貧酸素状態となる

7

20

日以降は,z3 成分(気温)が連続して

1

以上を示し,他の要因 より影響が大きいことが分かる(図-9) .

(5)相互相関よりz1

成分マイナス,

z2

成分プラスの 値を示すことから,各地点の

DO

下降には降雨,上昇には風速が影響を与え,

z1

成分のピーク 部に注目すると,短期

6

日,長期

52

日の応答時間があることが分った(図-10,図-11) .

147

(2)

表-1 観測データ緒元

観測機関 九州農政局,水産庁,環境省

観測期間 2005610:00~9278:00 観測間隔 1時間

観測項目 溶存酸素,水温,塩分(表・底層)

気象・海象 降雨,気温,風向風速,潮位

-10 0 10 20 30

Temp E-W N-S

Temp(℃)

(day)

6/1 7/1 8/1 9/1

Wind(m/s)

図-4 川副地点の気温・風速の経時変化

0 0.5

1 Temp

Rain Discharge

WindEW WindNS Tide

(day)

6/1 7/1 8/1

図-8 気象・潮位の低周波成分の自己相関

図-7 気温・風速のウェーブレット変換(低周波)

-4 -2 0 2 4 6 15 20 25 30

Temp Wind-EW Wind-NS

Temp(℃)

(day)

6/1 7/1 8/1 9/1

Wind(m/s)

101 102 103

Q(m3 /sec)

(day)

6/1 7/1 8/1 9/1

Rain(mm/hr)

0 20 40

2005

図-2 筑後川のハイドログラフ

図-5 底層付近の

DO

経時変化の一例

0

5

10 B3 P6 T1 T3

DO(mg/l)

(day)

6/1 7/1 8/1

2005-Bottom

9/1

図-6

DO

のウェーブレット変換(低周波)

0 5

B3 P6 T1 T3

DO(mg/l)

(day)

6/1 7/1 8/1

2005-Bottom

9/1

図-9 気象・潮位の主成分得点の経時変化

-2

0 2

z1 z2 z3

(day)

6/1 7/1 8/1 9/1

表-2 主成分分析結果(累積寄与率と因子負荷量)

累積寄与率 気温 流量 降雨 E-W N-S 潮位 z1 0.355 0.17 0.754 0.856 -0.541 0.019 0.711 z2 0.650 0.145 0.421 0.386 0.723 0.851 -0.418 z3 0.852 0.916 -0.332 -0.208 -0.005 0.29 0.372

図-

3

大浦検潮所の潮位変化

-2

-1 0 1 2 3

Tide E.L(m)

(day)

6/1 7/1 8/1 9/1

E&S

W&N

E&S

W&N

図-10

z1

成分と

DO

の相互相関

-0.5

0

0.5 B3 P6 T1 T3

(day)

0 20

z1

40

図-11

z2

成分と

DO

の相互相関

0

0.5

B3 P6

T1 T3

(day) 0

z2

20 40

-5

-1 5 -30-25 -10

-20

B 3 P 1 P 6 T 1 4 T 1

T 2 T 3

T 4

0 5 1 0 k m

D ep th (m )

●筑後川

大浦■

川 副

図-1 観測地点位置

148

参照

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