食事づくり効力感に関連する要因の検討
著者名(日) 鎌田 久子, 相川 りゑ子
雑誌名 大妻女子大学家政系研究紀要
巻 49
ページ 17‑24
発行年 2013‑03‑03
URL http://id.nii.ac.jp/1114/00005770/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
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17食事づくり効力感に関連する要因の検討
鎌田久子・相川りゑ子
大妻女子大学短期大学部家政科
Factors Related to Meal-making Self-Efficacy Hisako Kamata and Rieko Aikawa
Key Words : 食事づくり効力感,調理スキル,食事調整力,日常生活スキル,食育経験
I. 諸言
日本では20世紀の社会、経済の急激な変化に 伴って1)、ライフスタイルが様々に変化し2-5)、現在 もなお環境に対応しながら変化し続けている。様々 な食情報が溢れ、多種多様な食品が出回っており、
食生活の変化も著しい。食事づくりは時間的、経済 的利便性などの追求により、素材を使って一から調 理するというスタイルから、半加工品や調理済み食 品の利用へとシフトし、昔は生活の中で何気なく身 につけることができた調理のコツなどは、家庭内で 継承することが難しい状況になっていると考えられ る。家庭で見慣れた行動は、モデリングの効果の1 つである観察学習効果6)により、今まで自分が行っ たことがない行動でも、どのようなことをすればよ いか想像して行動に移しやすいと考えられる。家庭 で食事づくりが行われており、直接見ることができ たり、手伝える家庭環境で育つことは、その後の食 事づくり行動やライフスキルの習得に影響する可能 性があると考えられる。食事づくりを簡便化あるい は外部化する傾向7)にあっても、できるだけ食事づ くり行動が家庭内で行われるよう、促進させる方法 を検討する必要がある。筆者らは食事づくり行動を 促進させる要因の1つとして食事づくり効力感に着 目し、「食事づくり行動は、喫食者のことを配慮し て献立を立て、必要な材料を用意し、手順を考えな がら調理し、盛り付けて提供することである」、「食 事づくり効力感は、食事づくり行動をどの程度適切 に行うことができるかという予期及び確信である」
と定義し、食事づくり効力感尺度を開発した8)。 WHOはライフスキルを「日常生活で生じるさま ざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対 処するために必要な能力である」と定義している9)。 家庭での食事および食事づくりは日常生活の一部で
あり、ライフスキルを身につける場面の一部ともい える。ライフスキルを測定する既存尺度では、島本・
石井(2006)がライフスキルの定義を「効果的に日 常生活を過ごすために必要な学習された行動や内面 的な心の働き」として、8下位尺度24項目からなる 日常生活スキル尺度・大学生版を作成した10)。本研 究ではこの尺度内容を確認し、日常生活スキルの中 の個人的スキルを食事づくり効力感に関連する要因 としてとりあげることにした。また、子どもの食習 慣や食行動が育てられる環境によって影響を受け
る11,12)ことなどから、子どもの時に家庭や学校で育
てられる環境によって食事づくり効力感に影響する のではないかと考えた。そこで、本研究では小学生 が家庭や学校を含めた地域生活の中で構成された
「食」に関する経験の骨格を探ることを目的に諸井・
小切間(2009)よって作成された食育経験尺度13,14)
に着目し、育てられる環境から得た食育経験を食事 づくり効力感に関連する要因としてとりあげること にした。
本研究では、日常生活スキルや食育経験等を要因 としてとりあげ、食事づくり効力感との関連を明ら かにし、食事づくり効力感を高めるための方法を検 討することを目的とした。
II. 方法
1. 対象者と手続き
調査対象者は、東京都内のA大学栄養士養成課 程の1年女子学生140名とした。教室で調査内容を 説明し、調査を依頼し同意を得た。自記式(無記 名)の質問紙を配布時に、回答方法などについて説 明を行い、回答後すぐに回収した。配布・回収数
140、最終的な有効回答は133(有効回答率95.0%)
であった。
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2. 調査期間
2011年11月中旬に実施した。
3. 調査項目
調査項目は年齢、居住状況、食事づくりの必要 性、食事づくりに対する意識、食事づくり行動、日 常生活スキル、食育経験、食情報の入手及び活用、
食事づくり効力感に関する項目などである。
1) 食事づくり効力感に関する項目
食事づくり効力感尺度(鎌田・相川、2012)の 10項目を使用し、先行研究と同様に「非常にそう 思う」6点から「まったくそう思わない」1点の6 件法で回答を求め、得点化した。
2) 日常生活スキルに関する項目
「日常生活スキル尺度・大学生版」(島本・石井、
2006)の8つの下位尺度のうち、個人的スキルで
ある「計画性」3項目、「情報要約力」3項目、「自 尊心」3項目、「前向きな思考」3項目、4尺度計12 項目を使用し、先行研究と同様に「とてもあてはま る」4点から「ぜんぜんあてはまらない」1点の4 件法で回答を求め、得点化した。
3) 小学校時代の食育経験に関する項目
「食育経験尺度」(諸井・小切間・荒木、2010 ; 諸 井・小切間、2009)の因子分析の結果より、両方に 共通して因子負荷量の高い項目を選択し、「伝統的 料理への接触」6項目、「食料生産への関与」6項 目、「料理経験」3項目、「選り好みのない食生活」
3項目、計18項目を抜粋して使用した。先行研究 と同様に「とてもあてはまる」4点から「ほとんど あてはまらない」1点の4件法で回答を求め、得点 化した。
4) 食情報の入手及び活用に関する項目 食材・栄養・健康・調理など食事づくりに関連す る情報の入手頻度及び活用頻度は各2項目で、「毎 日のように」5点、「週に何度か」4点、「月に何度 か」3点、「年に何度か」2点、「あてはまらない」1 点の5件法で回答を求め、得点化した。
5) 食事づくり行動に関する項目
食事づくり行動は、最近1か月間の朝、昼、夕の 3食を自分で作った頻度(以下、三食頻度と省略す る)3項目と、食事づくりにかかわる献立作成、食 材調達、手順などの各行動の頻度 (以下、関連行動 頻度と省略する)4項目について、「毎日」5点、
「週5〜6日」4点、「週3〜4日」3点、「週2日以 下」2点、「該当しない」1点の5件法で回答を求 め、得点化した。
4. 分析方法
分析には統計ソフトSPSSver.19.0を使用した。
III. 結果 1. 対象者の概要
対象者の平均年齢は18.68(SD 0.48)歳で、居住 状況では約8割が家族と同居していた。また、日常 の食事づくりの必要性が高いと回答した者は全体の 2割に満たなかった(表1)。
2. 食事づくり効力感について
食事づくり効力感尺度得点の平均値は36.58±
7.60、下位尺度の調理スキル得点の平均値は17.88
±4.09、食事調整力得点の平均値は18.70±3.93で、
理論的中間点(35、17.5、17.5)より高い数値で あった(表2)。
3. 日常生活スキルについて
日常生活スキルの4下位尺度の各得点の平均値は 表2の通りであった。4下位尺度得点をあわせた個 人的スキル得点の平均値は29.68±5.20で、同年代 の大学生の平均値30.39±5.2815)とほぼ同様の数値 であった。
4. 食育経験について
食育経験の4つの下位尺度のCronbachのα係数 は、「伝統的料理への接触」.91、「食料生産への関 与」.89、「選り好みのない食生活」.72、「料理経 験」.60であった。「料理経験」以外は諸井ら(2010)
表 1 対象者の概要
人数(人)割合(%)
居住状況
家族と同居 105 (78.9)
一人暮らし 17 (12.8)
その他 11 ( 8.3)
食事づくりの必要性
高い 25 (18.8)
どちらかというと高い 44 (33.1)
どちらかというと高く
ない 37 (27.8)
高くない 27 (20.3)
食事づくりに対する意識
作りたいと思う 96 (72.2)
どちらかというと作り
たいと思う 32 (24.1)
どちらかといえば作り
たいと思わない 5 ( 3.8)
思わない 0 ( 0.0)
合 計 133
・
19 と同様で、内的整合性が認められた。各得点の平均値は表2の通りであった。
5. 食情報の入手及び活用について
食情報の入手頻度得点の平均値は6.92±1.83、食 情報の活用頻度得点の平均値は6.74±2.15であっ た。
6. 食事づくり行動について
食事づくり行動(三食づくり頻度)の平均値は 5.63±2.76、食事づくり行動(関連行動頻度)の平
均値は7.68±3.79であった。食事づくり行動に関
するすべての項目で、7〜8割の学生が週2日以下 または該当しないと回答しており、理論的中間点で ある9点及び12点を大きく下回った。
7. 食事づくり効力感とその他の要因との関係につ いて
1) 各要因の相関関係
各要因間で中程度の有意な相関関係がみられたの は、調理スキルと情報要約力(r=.48,p<01)、食 事調整力と情報要約力(r=.43,p<01)であった。
2) 食事づくり効力感とその他の要因について 各要因の得点について、平均値以上を高群、平均 値未満を低群の2群に分け、調理スキル得点および 食事調整力得点の平均値の差の検定を行った。日常 生活スキルではすべての下位尺度の低群より高群の 調理スキルおよび食事調整力の得点が有意に高かっ
た(表3)。食育経験ではすべての下位尺度の低群
より高群の調理スキルおよび食事調整力の得点が高 かったが、有意差が認められたのは伝統的料理への 接触と食料生産への関与の調理スキル得点であった 表 2 各尺度得点の平均値
n=133 尺度 下位尺度 平均値 標準偏差
食事づくり効力感
調理スキル 17.88 4.09 食事調整力 18.70 3.93 食事づくり効力感 36.58 7.60
日常生活スキル
情報要約力 7.25 1.49
自尊心 6.85 1.84
前向きな思考 7.76 2.03
計画性 7.83 1.90
食育経験
伝統的料理への接触 13.06 4.78 食料生産への関与 13.59 5.23 選り好みのない食生活 8.58 2.20
表 3 下位尺度 2 群別の食事づくり効力感得点の平均値 食事づくり効力感
尺度 群 調理スキル 食事調整力
n 平均 標準偏差 平均 標準偏差
日常生活スキル
情報要約力 低群 61 17.38 (3.34) ** 18.16 (3.30) **
高群 72 18.31 (4.61) 19.15 (4.37)
自尊心 低群 52 16.77 (3.71)
* 17.85 (3.41)
高群 81 18.59 (4.19) 19.25 (4.16) *
前向きな思考 低群 61 16.82 (3.88)
** 17.74 (4.04)
高群 72 18.78 (4.07) 19.51 (3.67) **
計画性 低群 58 16.69 (4.07) ** 17.48 (3.70) **
高群 75 18.80 (3.89) 19.64 (3.87)
食育経験
伝統的料理への接触 低群 79 17.05 (3.67)
** 18.15 (3.61)
高群 54 19.09 (4.41) 19.50 (4.26)
食料生産への関与 低群 68 17.09 (3.94) * 18.32 (3.65)
高群 65 18.71 (4.12) 19.09 (4.20)
選り好みのない食生活 低群 61 17.38 (3.34) 18.16 (3.30)
高群 72 18.31 (4.61) 19.15 (4.37)
**p<.01,*p<.05
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(表3)。食情報入手頻度と食情報活用頻度では、ど
ちらも低群より高群の調理スキルおよび食事調整力 の得点が高く、有意差が認められたのは食情報入手 頻度の食事調整力得点と、食情報活用頻度の調理ス キルおよび食事調整力の得点であった(表4)。
3) 食事づくり効力感と食事づくり行動について 食事づくり効力感の下位尺度得点の平均値±1/2 標準偏差を中群とし、平均値−1/2標準偏差より下 を低群、平均値+1/2標準偏差より上を高群として、
3群間の食事づくり行動得点平均値の差の検定を 行った。結果は表5の通りで、調理スキル3群で は、高群と中群は低群よりも食事づくり行動(関連 行動頻度)得点が有意に高かった。食事調整力3群 では、高群は中群よりも食事づくり行動(三食づく り頻度)得点および食事づくり行動(関連行動頻 度)得点が有意に高く、高群は低群より食事づくり 行動(関連行動頻度)得点が有意に高かった。
8. 分類別の食事づくり効力感と食事づくり行動に ついて
1) 食事づくりの必要性
食事づくりの必要性について「高い」「どちらか というと高い」を高群、「どちらかというと高くな い」「高くない」を低群に分け、各得点の平均値の 差の検定を行った。高群が有意に高かったのは、調 理スキル得点および食事調整力得点(表6)、食事 づくり行動得点(三食づくり頻度)および食事づく り行動得点(関連行動頻度)(表7)であった。
2) 食事づくりに対する意識
「食事をできるだけ作りたいと思うか」という項 目に「そう思う」と回答した者を食事づくり意識高 群、「どちらかというと思う」「どちらかといえば思 わない」「思わない」と回答した者を食事づくり意 識低群とし、各得点の平均値の差の検定を行った。
食事づくり意識高群が有意に高かったのは、調理ス キル得点および食事調整力得点で(表6)、食事づ くり行動得点では、有意差が認められなかった(表 7)。
表 4 食情報の入手及び活用 2 群別の食事づくり効力感得点の平均値 食事づくり効力感
分類 群 調理スキル 食事調整力
n 平均 標準偏差 平均 標準偏差
食情報の入手頻度 低群 42 16.93 (3.96) 17.64 (3.96)
高群 91 18.32 (4.10) 19.19 (3.84) *
食情報の活用頻度 低群 60 16.40 (3.74)
** 17.45 (3.95)
高群 73 19.10 (3.99) 19.73 (3.63) **
**p<.01,*p<.05
表 5 食事づくり効力感 3 群別食事づくり行動得点の平均値
食事づくり行動(三食づくり頻度) 食事づくり行動(関連行動頻度)
食事づくり効力感 n 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差
調理スキル
低群 31 4.97 (2.47) 5.87 (2.32)
*
中群 63 5.52 (2.53) 7.60 (3.46) **
高群 39 6.33 (3.23) 9.26 (4.58)
食事調整力
低群 37 5.73 (2.98) 6.46 (3.35)
中群 53 4.94 (2.01) **
* 7.21 (2.93)
高群 43 6.40 (3.19) 9.33 (4.54) *
合計 133 5.63 2.76 7.68 3.79
**p<.01,*p<.05
・
21 IV. 考察各要因の得点を高群と低群の2群に分けて食事づ くり効力感得点を分析した結果、日常生活スキルの 個人的スキルである情報要約力、自尊心、計画力、
前向きな思考の高群は、低群より調理スキル得点お よび食事調整力得点が有意に高かった。また、情報 要約力は調理スキルおよび食事調整力と中程度の相 関関係がみられた。手に入れた情報を使って、より 価値の高いものを生み出せて、数多くの情報の中か ら本当に自分に必要な情報を手に入れられ、多くの 情報をもとに自分の考えをまとめることができると いった情報要約力10)に優れた者は、食事づくり効 力感が高かった。食事づくりは単に料理を作るとい うことではなく、その時々の目的に合わせて、料理 や食材の組み合わせを考えたり、必要な食材を調達 し、調理して提供するまでを含み、計画から実行ま での複数の行動で成り立っている。さらに人、嗜 好、食材、時間、費用、労力、環境などの条件も関 わっている。食事づくりに関わる様々な情報をとり まとめて要約する力の高さと食事づくり効力感の高 さとの関連が示唆された。先を見通して計画を立て
ることができ、やるべきことをテキパキと片付ける ことができるといった計画力10)の高さと、食事づ くりに関わる複数の行動について先を見通して組み 立て、やるべきことを片付けていくことができると いう食事づくり効力感の高さとの関連が示唆され た。
食育経験の下位尺度である伝統的料理への接触と 食料生産への関与の高群は、低群より調理スキル得 点が有意に高かった。このことから、小学生の時に 家庭、学校給食、地域活動などで、伝統的な料理に ついて教えてもらったり、食べる経験をしたり、畑 で作物を育て収穫後に調理して食べたりする経験の 多いことと、青年期の食事づくり効力感の高さとの 関連が示唆された。
食情報の入手頻度高群は食事調整力得点が有意に 高く、食情報の活用頻度高群は調理スキル得点およ び食事調整力得点が有意に高かった。このことか ら、食情報の活用頻度の高さと調理や食材購入等の 食事づくりの基本的な行動の自己効力感の高さとの 関連が示唆された。食情報の入手頻度および食情報 の活用頻度の高さと、栄養を整えたり、見栄えよく 見せるといった工夫など食事づくりの応用に関わる 表 6 分類別の食事づくり効力感得点の平均値
食事づくり効力感
分類 群 調理スキル 食事調整力
n 平均 標準偏差 平均 標準偏差
食事づくりの必要性 低群 64 16.94 (3.87) ** 17.80 (3.61) **
高群 69 18.75 (4.12) 19.54 (4.06)
食事づくりに対する意識 低群 37 16.51 (3.88)
* 17.22 (3.90)
高群 96 18.41 (4.07) 19.27 (3.81) **
**p<.01,*p<.05
表 7 分類別の食事づくり行動得点の平均値 食事づくり行動
分類 群 食事づくり行動
(三食づくり頻度) 食事づくり行動
(関連行動頻度)
n 平均 標準偏差 平均 標準偏差
食事づくりの必要性 低群 64 5.05 (2.13)
* 6.55 (2.26)
高群 69 6.17 (3.16) 8.74 (4.57) **
食事づくりに対する意識 低群 37 5.24 (2.22) 7.00 (2.81)
高群 96 5.78 (2.95) 7.95 (4.09)
**p<.01,*p<.05
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行動の自己効力感の高さとの関連が示唆された。
今後は ① 情報要約力、計画力の低い者に対する 情報要約力得点または計画力得点を高める教育、② 食情報の入手頻度及び食情報活用頻度の低い者に対 する食情報の入手方法、得た情報の整理方法、得た 情報を適切な場面で活用する方法、情報を活用する 場面を増やすなどの食情報の入手頻度や活用頻度を 高める教育が、食事づくり効力感の高さにどのよう に影響するかを検討していきたい。また、情報活用 能力と自己効力感に関する研究では判断力、処理 力、想像力、発信・伝達力に自己効力感との関連が 認められており16)、食情報活用頻度だけでなく食情 報の活用能力も、食事づくりという特定行動の自己 効力感を高める可能性のある要因として今後検討し たい。
食事づくり効力感下位尺度得点を高群、中群、低 群の3群に分けて食事づくり行動得点を分析した結 果、調理スキル低群よりも高群と中群の食事づくり 行動(関連行動頻度)得点が有意に高かった。ま た、食事調整力中群よりも高群の食事づくり行動
(三食づくり頻度)得点および食事づくり行動(関 連行動頻度)得点が有意に高く、食事調整力低群よ り高群の食事づくり行動(関連行動頻度)得点が有 意に高かった。このことから、食事づくり効力感の 高さと食事づくり行動の頻度の高さとの関連が示唆 された。今後は、調理スキル得点の低い者および食 事調整力得点の低い者に対する各得点を高める介入 が、食事づくり行動(関連行動頻度)得点にどのよ うに影響するかを検討したい。
食事づくりの必要性高群と食事づくりに対する意 識高群は、食事づくり効力感の2つの下位尺度得点 が有意に高かった。しかし、食事づくり行動の2つ の得点の分析では、食事づくりの必要性高群は低群 より有意に高かったが、食事づくりに対する意識高 群は有意差が認められなかった。食事を作りたいと 思っているだけでは食事づくり行動の頻度は高くな いが、食事をつくる必要性が高ければ食事づくり行 動の頻度が高いことが示唆された。食事づくりの必 要性や食事づくりに対する意識は、食事づくり行動 の動機に関わる内容である。たとえば、食事づくり の必要性が高いということは、家庭内で食事をつく る役割があり、「食事をつくらなければならない」
「食事づくりを任された」「誰も作らないから自分が やるしかない」などの自分をとり巻く周りの事情に 関わる動機が考えられる。また、食事をできるだけ 作りたいと思っているということは、「家族に喜ん
でもらいたい」「自分や家族の健康のために」「食事 づくりが好き」など個人としての思いに関わる動機 が考えられる。このような食事づくり動機が、食事 づくり効力感や食事づくり行動に及ぼす影響につい ては今後検討したい。
本研究では食事づくり行動を日常の朝食、昼食、
夕食を作るという行動の頻度、および献立作成や食 料調達など食事づくりの一部分である行動の頻度で とらえることを試みた。しかし、対象者のうち食事 づくりの必要性が高い者は2割弱であった。また、
食事づくり行動に関するすべての項目で、7〜8割 の学生が週2日以下または該当しないと回答した。
これは、居住状況で家族と同居が多数という生活環 境が大きな要因となっていることが推察できる。学 生という対象者では、現在の生活の中で食事づくり 行動そのものに目を向けるよりも、いずれ家庭で食 事づくりを担う環境におかれたときに食事づくり行 動を積極的に行えるように、準備要因を明らかにす ることが望ましいと考える。今後は社会的認知理論 の統合的モデル17)から行動を起こすプロセスとし て食事づくり行動前の規範、態度、意思などと食事 づくり効力感の関係や、食事づくり行動との関係を 検討していきたい。
V. 要約
本研究では、食事づくり効力感に関連する可能性 のある要因として日常生活スキル、食育経験等をと りあげ、食事づくり効力感との関連を明らかにする ことを目的として、女子学生に質問紙調査を実施 し、以下の結果を得た。
1) 対象者133名の平均年齢は18.68(SD 0.48)
歳で、約8割が家族と同居していた。
2) 日常生活スキル尺度・大学生版の4つの下位 尺度の高群は、食事づくり効力感尺度の2つの下位 尺度得点が有意に高かった。食育経験尺度の下位尺 度の伝統的料理への接触および食料生産への関与の 高群は調理スキル得点が有意に高かった。食情報の 入手頻度高群は食事調整力得点が有意に高く、食情 報の活用頻度高群は食事づくり効力感尺度の2つの 下位尺度得点が有意に高かった。
3) 食事づくり効力感尺度の下位尺度の調理スキ ルの高群と中群は、低群より食事づくり行動(関連 行動頻度)得点が有意に高く、食事調整力高群は中 群より食事づくり行動(三食づくり頻度)得点およ び食事づくり行動(関連行動頻度)得点が、高群は
・
23 低群より食事づくり行動(関連行動頻度)得点が有意に高かった。
4) 食事づくりの必要性高群は、食事づくり効力 感尺度の2つの下位尺度得点および2つの食事づく り行動得点が有意に高かった。
5) 食事づくりに対する意識高群は食事づくり効 力感尺度の2つの下位尺度得点が有意に高かった。
しかし、2つの食事づくり行動得点に有意差が認め られなかった。
以上の結果より、食事づくり効力感に関連する要 因は、日常生活スキルの個人的スキル(情報要約 力、自尊心、計画力、前向きな思考)、食育経験の 伝統料理への接触と食量生産への関与、食情報の入 手および活用の頻度であることが示唆された。ま た、食事づくり効力感は食事づくり行動と関連する ことも示唆された。
謝辞
本研究を進めるにあたり、ご協力いただきました 本学特任講師森岡加代先生、関係各位に深く感謝申 し上げます。
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17) (監修)福田吉治・八幡裕一郎・今井博久: 一目
でわかるヘルスプロモーション: 理論と実践ガ イドブック,国立保健医療科学院,埼玉(2008)
大妻女子大学家政系研究紀要―第 49 号(2013.3)
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Summary
The purpose of this study was to elucidate the relationship between daily life skill/dietary education experience and meal- making self-efficacy. A written questionnaire was conducted with female students and the following results were obtained
(n=133).
The higher score group of four sub-scales of Daily Life Skills Scale for College Students was significantly high score in
‘cooking skills’ and ‘meal adjustability’. The higher score group of ‘experience of traditional dishes’ and ‘participation in pro- duction of food’ was significantly high score in ‘cooking skills’. The higher score group of ‘frequency of obtaining meal infor- mation’ was significantly high score in ‘meal adjustability’. The higher score group of ‘frequency of making use of meal infor- mation’ was significantly high score in ‘cooking skill’ and ‘meal adjustability’. The high and middle score group of ‘cooking skill’ was significantly high score in meal-making behavior (frequency of related behavior) comparing with the lower score group. The higher score group of ‘meal adjustability’ was significantly high score in meal-making behavior (the frequency of cooking three meals per day) and meal-making behavior (frequency of related behavior) comparing with the middle score group.
These results suggest that the factors related to meal-making self-efficacy are ‘intrapersonal skills’ of life skills, ‘experience of traditional dishes’, ‘participation in production of food’, ‘frequency of obtaining meal information’ and ‘frequency of making use of meal information’. And also the result suggests that there is the relation between meal-making self-efficacy and meal- making behavior.