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児童ポルノ排除対策公開シンポジウム(第5回)パネルディスカッション 2

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(1)

【司会】 

  藤原様、どうもありがとうございました。 

続きまして 3 人目のパネリストは白川美也子様でございます。 

白川様は、浜松医科大学卒業後、独立行政法人天竜病院精神科医長、浜松市精神保健 福祉センター所長、国立精神・神経センター臨床研究基盤研究員、昭和大学精神医学教 室特任助教を経て、こころとからだ・光の花クリニック院長をされていらっしゃいます。 

虐待・DV 等、対人暴力被害によるトラウマを専門とされており、トラウマの連鎖を防 ぐために成人だけではなく乳児院、児童養護施設、出産を伴う婦人保護施設等、社会福 祉施設での活動にも力を入れていらっしゃいます。 

本日は「児童ポルノの問題性と被害児童のケア〜臨床医の立場から〜」ということで 発表いただきます。それでは白川先生、お願いいたします。 

                                     

(2)

   

  皆さん、こんにちは。御紹介に預かりました白川と申します。精神科医・臨床心理士 です。 

                                         

こころとからだ・光の花クリニック/スペース白い花 西(白川) 美也子 2014.11.25

児童ポルノ排除対策公開シンポジウム

児童ポルノの問題性と被害児童のケア

ー臨床医の立場からー こころとからだ・光の花クリニック/スペース白い花 西(白川) 美也子

(3)

   

今、御説明いただきました通り、私の経歴はこのように、1998 年に静岡県警の被害者 対策アドヴァイザーになってから県警との連携を深めてまいりました。 

特に今日、問題になっている子供の性暴力及び性虐待被害に関しては、被害直後にす ぐに教えていただいて、事例化する前に家族の支援に入ったりという連携をしてまいり ましたので、とりわけ私にとって重要な領域です。 

                 

経歴

1989年浜松医科大学卒業

大学病院思春期外来臨床に従事しながら各種精神科医療機関に勤務

1994-95年フランスパリ市児童で児童デイケア病院で研修

1998年より静岡県警被害者対策アドヴァイザーとして警察との恊働を開始、

小西聖子先生らに師事し、PTSD臨床、複雑PTSDの研修をつむ

2000〜:国立天竜病院小児神経科・精神科医長として勤務。小児成人のトラ ウマ病棟を運営、警察、児童相談所、学校、各種福祉施設との連携を展開

2006年:浜松市行政に転じ、浜松市精神保健福祉センター初代所長を務める

2008年:国立精神神経医療研究センター治験管理室・臨床研究推進室に勤務、

臨床研究を学ぶ

2009年:米国でトラウマフォーカスト認知行動療法の研修を正式にうける。

被災地、社会福祉施設群でのフリーランスでの臨床および研究活動の継続。

2013年:こころとからだ・光の花クリニック院長、スペース白い花を主宰

(4)

   

今日、山本先生のお話し、高橋理事官、藤原代表のお話しと続いて私に伝えられるこ とというのはどんなことなんだろうと考えておりました。 

ポルノ周辺の話題が出たときに「表現の自由」という言葉がございます。私は実際に ポルノ映像を撮影のためにその中で被害を受けた方に出会ってきました。どういうこと かというと、その方たちの出演した、例えば「映像」、あるいは「画像」とかを実際に 見る経験を重ねてまいりました。 

そこにおいて多くのいわゆる暴力ポルノ・児童ポルノの背景に女性や子供の人権の非 尊重、加虐的・被虐的な性嗜好、暴力の容認、他者の苦痛に対する非共感というのが延々 と流れていることを実際にこの目で確かめました。 

ある子供が本当に被害に遭ったんだということを認めていただけないために児童ポ ルノのサイトに入って探し、発見し、それを実際に手にしたこともあります。手にしち ゃいけないものを手にしましたので、すぐにいわゆる法律家の方にお渡ししましたけれ ども。 

そういう経験の中からこの問題というのは、やはり人間の生命の流れそのものに大き な影響を及ぼしているのではないかというふうに考えるようになりました。 

                 

多くのポルノおよび児童ポルノの背景に…

女性や子どもへの非尊敬

女性や子どもの人権への非尊重

加虐的・被虐的な性嗜好

暴力の容認

他者の苦痛に対する非共感

が延々と流れている

(5)

   

  これが私の今日のお話しです。児童ポルノの問題性というのはまず被写体になること による被害者。とりわけ映像の中でレイプされるというのは当然の被害です。そして未 だ性を知らない子供にとっては、先ほどの藤原さんのお話しにもありました通り、撮影 に暴力が伴っていなかったり、強制力がなくても、性的なものに出たこと自体がもう性 虐待の被害を受けたことと同等です。 

あと、少年の加害のケースを通して、ポルノ視聴における広範な行動への影響につい てもお話ししたいと思います。 

また、いわゆる「小児性加害」。「ペドフィリア(小児性愛)」という言葉がございま すが、小児にとって性愛というものはございませんので「小児性加害」という言葉を使 います。小児性加害業界の拡大による性虐待加害があったのではないかというケースも お話しさせていただきたいと思います。 

全てのケースにおいて私は、論証で同意を頂いておりますけども、いくつもの事例を さらに混ぜたり、変えたりして変更しておりますことを最初にお話ししておきます。 

 

臨床体験による問題意識

児童ポ ルノの 問題性

被写体になるこ とによる被害者

(ケース1)

ポルノ視聴にお ける広範な行

動への影響

(少年加害ケー ス2)

ペドフィリア業界 の拡大による性

虐待加害

DVと性虐待 ケース3)

その他広範なメ ディアへの影響

(6)

   

 私の専門である「ストレス」と「トラウマ」の説明です。トラウマとは何かというと、

通常のストレスは「時間が経てば消え去るもの、自然に良くなるもの」、トラウマとい うのは「出来事が終わっても影響が残ってしまうもの」なんです。 

                                         

ストレスとトラウマの違い

ストレッサー

もとに戻る(レジリエンス)

トラウマティックストレッサー

できごとが 終わっても 影響が残る ストレスの場合

トラウマの場合

(7)

   

なぜそういうふうにして影響が残ってしまうかというと、出来事の時の五感・感情・

認知・思考がまるで冷凍保存されたかのように残ってしまうんです。特殊なメモリーネ ットワークができるのです。これを「トラウマ記憶」と呼びます。 

時間が経っても色あせないとか非常に想起に苦痛な感情を伴う、言葉になりにくいと いう特徴を持ち、ただ単に強い記憶というよりは本当にきちんと解除されないと半永久 的な影響を及ぼしてしまうような生々しい記憶でございます。 

               

トラウマ記憶は冷凍保存記憶

圧倒的な体験によって、トラウマ記憶という特殊なメモリーネットワークが生 じる。出来事のときの五感、感情、認知、思考がまるで冷凍保存されたように 残ってしまう。

1) 無時間性、鮮明性 2) 想起に苦痛な記憶を伴う

3) 言葉になりにくい、という特徴をもつ

→フラッシュバック中に右脳を中心に神経の興奮が遍在して脳梁を 超えないことがPETで確認

「人間の精神にとっての圧倒的な体験(個人の対処能力をこえた)が、心的メカニ ズムに半ば不可逆的な変化を被らせることの証」

(8)

   

  なぜ性虐待がトラウマになるのかをお話しします。先にも述べたように、子供は性を 知りません。例えばなでさすりから始まってだんだん子供が喜んで触られたというよう な体験があったとします。それが暴力や外傷を伴わなくても、発達的に不適切な性体験 というのは全てトラウマになるということが分かっており、子供を対象にしたどのよう な性行為も発達的に不適切でトラウマとなることになります。 

そして、山本先生が非常にきちんとお話しをしてくださったところですが、親密さと 性ということが混じってしまう。親密さと暴力が混じってしまうということで、その後 のその子供も性行動の発展に大きな影響を及ぼすということになります。 

そして、性の領域というのは、本能、情動、衝動、睡眠とか食べるとかいろんなとこ ろに密接に関係しているので、ありとあらゆる様々な精神障害の培地となっていると私 は考えております。 

                         

性的なるもの、の子どもにとっての意味、違和感→思春期等に問題行動の開花、スリー パーエフェクト

• DSM-IVの心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder:以下PTSD)の診断的特徴 のなかに。外傷的な出来事として「暴力や外傷の現実を伴わない発達的に不適切な性体 験」が含まれている。

主体的な性関係とは,身体的,精神的,社会的自立という発達課題の達成の後に成り立つ高度な コミュニケーション

「子ども」を対象にしたどのような性行為も発達的に不適切でありトラウマとなりうる

• .子どもは性を知らず,性的な働きかけを予期できない。

• 力関係をもつ人からの行為は強制力をもつ.

• 遊びやなでさすりのような「可愛がる行為soothing」から移行し暴行を伴わないこともあるため親密 さと性行動が混同されやすい。

• その後も再被害や再演行動を重ねやすい.

• 大脳生理学的にも,性の領域は本能や衝動や情動と密接に関係している.

性虐待はトラウマになるか?

(9)

   

これが Standng Committee on Sexually Abused Childern というところの性虐待と は何かという定義です。子供に対して通常の社会的責任を無視し大人の性的満足に至る 行為を持つこと、他者が持つことを許可すること。強制的かどうか、性器及び身体の接 触を伴ったかどうかは問わないという内容です。例えば子供の陰部を洗うときに、その 時に清潔にしてあげるという意図で触れるのと、性的満足を感じながら触れるのと、全 く異なるわけです。前者は子供のケアですが、後者は性的虐待となるという意識でお考 えになってみてください。 

             

• Standng Committee on Sexually Abused Children

• 「同意可能な年齢以下の子どもに対し、性的に成熟した大人が子ど

もに対して通常の社会的責任を無視し、大人の性的満足に至る行 為を持つこと、もしくは他者がもつことを許可すること。強制的かどう

か、性器および身体の接触を伴ったかどうかは問わない」

• たとえばお風呂で性器を洗うという同じ行為が、その行為の意図が

「大人の性的満足に至る」ことであれば、すなわち性的虐待になる。

• すなわち子どもが、児童ポルノに出演させられること、児童ポルノを 見せられるたり、さらされたりすることは性虐待になる

どこまでが性的虐待なの?

SCOSACによる性的虐待の包括的な定義

(10)

   

こういうふうなトラウマ記憶があると、「PTSD」という状態になりますが、それには三 つの主要症状があります。 

氷が何度も溶けると再体験症状。通常は恐怖や恥の感覚、被害を受けた時の辛い体験 が想起されますが、子供が性的虐待を受けた際に例えば快感を覚えたとすると、その内 容の再体験症状が起きてきます。 

特に授業中にボーっとしていたとき、眠る前など、そういう時に何度も何度も快感を 伴うフラッシュバックが起き、本人としては被害を受けたという感覚がなかったとする と、とても醜いエッチな自分だという意識に結びついてしまったりします。 

また、回避・麻痺症状というのがあって、苦痛を回避するため出来事を想起させるこ とを避けるために自分が悪かったんだとか。あの人は悪くないんだとか、否認をしてし まったりもします。感情が麻痺してしまって「知らない、分かんない、どうでもいい、

私が私の体を売るのがなぜ悪いの」、こういう言葉を何度も聞いたことがあります。こ れがまさに麻痺の現れだと思っております。 

過覚醒症状です。性的虐待を受けながらリラックスする人はいないですね。一方で、

がくっと睡眠に入ってしまう方もいるんですけれども、とにかく眠れない、焦燥感、驚 愕反射、集中困難等、過覚醒の症状が起きやすくイライラして焦燥感で攻撃的になるこ とも多々あります。 

 

このように児童ポルノがなんらかの形で関与することで臨床例としてあがってきたケー スについて報告します(本報告では省略)。

被写体となることへの被害

ポルノ視聴による青少年へのネガティブな影響と加害行動

ポルノ文化の成人への性虐待加害行動としての影響

PTSDになるとどうなるの?

「回復過程の障害」といわれるPTSDは、トラウマによるネガティブな影響の極 型。以下の3つが主要症状です。

(1) 再体験症状: 冷凍保存記憶が「トリガー(引き金)」などで融けて、出来事が

「今・ここ」のことのように解離を伴って再体験されることをフラッシュバック、夕刻や覚 醒水準が落ちているときに、まるで「入り込んでくるように」考えたり感じたりすることを 侵入症状、夜に再体験される悪夢など

(2) 回避・麻痺症状: 再体験とうらはらな症状であり、苦痛を回避するため出来事を想 起させる事物や行為や場所を避ける。「感じること」そのものを切り離すと麻痺が起きる。

麻痺は、微細な感覚、ポジティブな感情などから侵され、究極には無感情の状態になること もあるが、非常に苦痛を伴う感覚でもある。

(3) 過覚醒症状: 地震に遭いながら入眠したり、リラックスする人はいないように「ト ラウマをうけたときの心身の状況」そのものがそのまま残存していることから不眠、焦燥、

驚愕反射、集中困難などが起きやすい。

(4)出来事に関係する認知と気分の否定的変化

(11)

   

これらの背景にトラウマ学習という概念があります。トラウマになったことを何度も 繰り返す。加害被害をかえて繰り返すことや、トラウマを受けたことによって異常な性 ファンタジー、異常な性愛というのを発展させるというものです。 

                     

トラウマ学習理論 1  (Burgess, A)

子ども時代のトラウマによる一種の記憶への刷り込み

PTSDにおける記憶の特徴

1)再演(回想, 断片化、フラッシュバック、強烈な感覚的経験)

2)反復 (再被害化、攻撃者や被害者への同一化)

3)置き換え (トラウマの加工、 異常な性幻想、 異常性愛、 精神病様反応)

(12)

   

発達期のトラウマは、神経系に刻み込まれ、さまざまなタイプの障害を引き起こしま す。 

                                           

トラウマ学習理論 2  (Burgess, A)

PTSDの発症が遅延している状態

1) 回避(性行動回避、薬物依存[鎮静系薬剤]、身体化、抑うつ反応)

2) 攻撃(危険な行動、反社会的行為、薬物依存[刺激系薬剤]、性行動過多)

(13)

 

   

これは、子どものトラウマ後の反応の様々な現れです。男の子はどちらかというと加 害、女の子は被害という傾向があり、トラウマが癒されないことによって、被害の再生 産が起きていると考えることもできます(白川美也子:ジェンダーとトラウマ  子ども の PTSD とトラウマ反応の性差−トラウマ脆弱性形成の重要因子として  トラウマティ ック・ストレス   6(2) 173‑190   2008 年 9 月)。 

               

子どものトラウマ後の反応ーさまざまな表れ

トラウマ暴露

→固まる反応Freeze

→周トラウマ期解離など解離システムの関与

→迷走神経系の関与

→闘争か逃走か反応Fight or flight response

→過覚醒システムの感作(disorganizeということでは 脱愛着的でありこれも解離の一種)

→交感神経系の関与 愛着行動(ストレス

反応・情動制御シス テム)

適切に対処されな かったり、衝撃が大 きく対処できなけれ ば、脱愛着・解離へ

愛着障害・解離症 状(いわゆる中核症 状)

うつ・不安の素因 HPA-axisの調節異常(エストロゲ ン、オキシトシン、内因性オピオ イド)

女児に多い

より不安、恐怖、主観的ストレ スが高い

より認知的な対応(回避など)、

情動的な動き

女児に多い 内在化症状

不安、抑うつ、身体化、心身症 状、PTSD

→対処行動としての物質依存

(飲酒、その他多くはダウ ナー)

→自傷、自殺企図

→境界性人格障害

外在化症状 ADHD, CD,ODD いわゆる非行

→対処行動としての物質依存

(薬物としてはアッパー)

→攻撃行動、他害行為

→反社会性人格障害 再演(被害者になるという形で)

再演(加害者になるという形で)

(実際は症状の混在)

適切に対処されな かったり、いやされ なかった場合、状態 は症状として固定

より身体的な防御反応 男児に多い

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  このような被害に対して簡単に済ませますけれども、トラウマフォーカスト認知行動 療法といって元々は性虐待被害を受けた子供とその加害をしていない養育者を対象に して開発された非常に有効な治療法というのが出てきています。 

                                       

エビデンスのある治療法の一例 トラウマフォーカスト認知行動療法

• Cohen, JA., Mannario, AP., Deblinger, E.:  Treating Trauma  and Traumatic Grief in Children and Adolescents , Guilford,  2006  「子どものトラウマと悲嘆の治療」(金剛出版)

• 同開発者ら編「トラウマフォーカスト認知行動療法」(岩崎学

術出版より発売予定)

• Slides: Child and Parent Trauma-Focused

Cognitive-Behavioral Therapy by Anthony P. Mannarino,  Ph.D, Judith A. Cohen, M.D, 2008

• 【TF-CBT Web】

• http://tfcbt.musc.edu/

(15)

   

PRACTICE という頭文字で表現される構成要素をこの順番でやっていくというのが非 常に有効であることが、科学的な手法で検証されています。この技法を使い始めてから 非常に治療期間が短くてすみようになり、そして終結するようになりました。 

                     

トラウマのコンポーネント: PRACTICE

Psychoeducation and Parenting 

skill 心理教育(特にここにおいてセックスと性虐待の違

い、被害のおきた社会的な背景などの教育が有益)

ペアレンティングスキル

Relaxation リラクセーション

Affective modulation 感情表現と調整

Cognitive coping and processing 認知対処と認知処理(認知のトライアングル)

Trauma narrative トラウマナラティブ

Cognitive coping and processing 認知対処と認知処理(トラウマ体験を処理する) In vivo mastery of trauma 

reminders 日常生活内の想起刺激の統制

Conjoint child-parent sessions 親子合同セッション Enhance future safety and 

development 将来の安全と発達の強化(特にここにおいて健康な

セクシュアリティの発達を促す教育が有益)

(16)

   

まとめです。子供が児童ポルノに参加することは、例えそれを暴力が伴わずに行われ たとしても確実に性虐待であり、発達的に不適切な性体験はトラウマになります。 

三つのケースについて報告しました。ポルノあるいは児童ポルノがそこから直接的に 被害を受ける人がいるだけの問題ではなく、視聴したことから派生する興味関心、形成 される性嗜好や性行動の中に先に述べた加害者としての対人関係パターンや性行動パ ターンをつくっている可能性があるということ、そして、それらの後遺症に対してエビ デンスのある治療法が広がることによって回復するということ、回復イコール予防にな りますので、被害の防止だけでなく、早期の介入も予防になるということをお伝えした く思います。 

           

まとめ

子どもが児童ポルノに参加することは、たとえそれが暴力を伴わずに行われ たとしても、成人の意図が性的満足を得るためであることは確実であり、そ れは性虐待である。発達的に不適切な性体験はトラウマになる。子どもがポ ルノビデオに出ることも、見ることもそれはトラウマになるのである。

臨床例としてあがってくることで体験された3ケースについて報告した

被写体となることへの被害

ポルノ視聴による青少年へのネガティブな影響と加害行動

ポルノ文化の成人への性虐待加害行動としての影響

ポルノあるいは児童ポルノは、そこから直接的に被害をうける人がいるだけ の問題でなく、それを視聴したことから派生する興味関心、形成される性嗜 好、性行動のなかに、先に述べた加害者としての対人関係パターンや性行動 パターンを作っている可能性が大いにある。

児童ポルノの関連の後遺症に対して、エビデンスのある治療法が広まること による、回復の可能性が高くなってきている

(17)

  それでは、発表を終わらせていただきたいと思います。児童ポルノの問題性を知るも のがこの問題に抵抗していくことで、加害や被害の連鎖が減り、より健やかな次世代が 育まれると考えております。御協力をよろしくお願いいたします。ご清聴ありがとうご ざいました。 

                     

(18)

【司会】 

  ありがとうございました。これよりパネルディスカッションを再開させていただきま す。これよりはコーディネーターの進行で自由討議にさせていただきまして、パネリス トの皆様のコメントを頂戴したいと存じます。本日、コーディネーターを務めていただ きますのは先ほど基調講演をお願いいたしました山本恒雄様でございます。それでは山 本様にマイクをお渡しします。お願いいたします。 

 

【山本氏】 

  山本です。私の方からいくつか質問したいと考ていたんですが、各パネリストの方に 会場からいろいろと御質問を頂き、かなり重複している部分もありましたのでそれを中 心にまずお答えいただけたらと考えました。それで進めたいと思います。 

  まず、高橋理事官に御質問、二つまとめてお伺いしたいと思います。1 つは「サイバ ー補導」。先ほどの御紹介にありましたが、サイバー補導の効果、実際の状況について まず教えてほしいです。もう一つは「児童ポルノの被害者と加害者は一体どんな関係が 多いのか」。 

そして、年齢は「ある程度分かっているのか」ということについての御質問がありまし た。どうぞよろしくお願いします。 

 

【高橋氏】 

  それでは今の質問にお答えしたいと思います。 

まず、サイバー補導の効果等についての御質問ですが、サイバー補導は、もともとは 平成 21 年から静岡県警察が単独で行っていたもので、その活動に着目し、昨年 4 月か ら 10 都道府県警察において試行実施したところ、成果がみられたことから、昨年 10 月 から全国で推進しているところです。サイバー補導のこれまでの効果としては、昨年は 試行期間中も含めて 158 人、今年上半期は 220 人の援助交際等の書き込みを行った児童 を補導しました。この 220 人のうち、約 6 割は非行・補導歴のない、いわゆる普通の高 校生等であり、保護者の知らないうちに、お小遣い欲しさ等からスマートフォン等を利 用して、安易に援助交際等の書き込みをしている実態が伺えました。 

補導した児童の保護者からは、「娘が援助交際をしていることを知ってショックです が今回、警察に補導されていなければと思うとぞっとします。本当にありがとうござい ました。」あるいは「娘が犯罪に巻き込まれたりする前に警察官に見つけてもらい、あ りがとうございました。」といった感謝の声が多く寄せられています。また、補導した 児童からも「今までずっとやめたかったけれども、なかなかきっかけがなかった。補導 してもらえて良かった。」といった声が寄せられています。 

このように、サイバー補導は、児童が犯罪被害に遭う前に、あるいは非行が深刻化す る前に、児童を発見・保護し、立ち直らせる上で、成果が上がっていると考えています。

引き続きサイバー補導を推進していきたいと考えています。 

  二つ目の御質問、児童ポルノ事犯の被疑者と被害児童の関係と年齢構成についてであ ります。 

この被疑者と被害児童の関係につきましては、手元に資料がないので今この場では申

(19)

し上げられませんが、被疑者の年齢構成については、平成 25 年中の統計では、被疑者 総数 1,252 人中、30 歳代が約 26%で最も多く、次いで 20 歳代が約 24%、10 歳代が約 23%、40 歳代が約 17%などとなっています。 

一方、被害児童の年齢構成は、被害児童総数 646 人中、中学生が約 42%で最も多く、

次いで高校生が約 40%、小学生が約 12%などとなっています。 

 

【山本氏】 

  ありがとうございました。サイバーパトロールが早期発見と深刻化防止に役立ってい るということがこれからもますます期待される、逆にいうと、見つかった子供たちを今 後どういうふうに守っていくのかということも大きな課題になるというふうに感じま した。 

それでは続きまして、藤原さんに御質問です。先ほどのお話しの中で LINE の話が出 てきました。これは全体で見ると加害・被害の両方の問題に係わる一つの接触点である というふうに見えますが、先ほど藤原さんのお話で LINE で相談を受けるという話しが あったのですが具体的にはどのように対応しているのか。もう少し詳しく教えてほしい という御質問がありました。よろしくお願いします。 

 

【藤原氏】 

  実は LINE については、アカウントを取ったのはつい最近で、まだ始めたばかりなん です。というのもこれまでにこの 4、5 年のインターネットの動きを見ても mixi があっ たり、Facebook や Twitter があったりと、子供たちが利用しているものってどんどん 変わってきました。そんな中で、私たち自身、どのツールを使えばより広く深くつなが れるか、検証を重ねて来たとも言えます。 

  例えば、Twitter だと、誰でも検索して探し出せるような中でメッセージをやり取り していますから、単にメッセージを受けるだけでも、被害者にとってはとても危ないこ とです。それに加えて、未成年者の間では 1 対 1 のコミュニケーションツールが最も活 用されていることもあり、その代表が LINE でしたので、私たちも最近なんですが、LINE のアカウントを取得して、そこから様々な相談を受けられるような体制を整えたところ です。 

とは言っても、ライトハウスの LINE の ID は、今のところ大きくプロモーションして

(20)

  そうなんです。 

 

【山本氏】 

  これからどんなふうに展開するか、また機会があればぜひ皆さんに教えていただけた らと思います。ありがとうございました。 

それでは次、白川さんに御質問です。いろんな御質問がありましたが、ここでは個別 の事例。プライバシーに関わること。それから法制度の判断。厳密な判断に関わること については、ちょっと時間と内容に無理があるので省かせていただきました。 

白川先生にもそのような御質問がいくつかあったんですが、ここでは「特に男の子の 性被害がどんなふうに理解されたり、我々として知っておくべきことがあるだろうか」

ということの御質問がいくつかありましたので、それについてちょっとお話しをいただ けたらと思います。よろしくお願いします。 

 

【白川氏】 

  どうしても子供の性被害というと、女の子が中心になりやすいですが、まずは私たち が覚えておかなければいけないのは「男の子の性被害というのはある」ということです。

しかも「結構多い」ということです。 

山本先生のお話しの中では明確に何人に 1 人と出ていませんでしたが、今まで日本で 一度調査がなされていて、その時には女の子が、例えば、痴漢なんかも含むと 4 人に 1 人。18 歳以下の子供が性被害に遭った経験があります。男の子も 6 人に 1 人とか。ほ かの調査でもだいたい女の子から 4 人から 8 人に 1 人、男の子が 6 人から 10 人に 1 人 ぐらいの子供たちが性被害に遭っています。これってものすごく大きいんですよね。と ても多いんです。 

その中には penile insertion  挿入も含むものからいわゆる見せられたというもの も含みますが、様々な形で子供の性虐待被害というのはあって、それは喘息とか ADHD とかよりも多いわけです。 

  その後遺症の多さということを考えた時にさらに山本先生のお話しにもありました けれども、poly−victimizatiom ということです。多重被害・累積被害ということに関 して、特に子供の頃の性虐待被害というのはその後の累積被害が非常に多いです。 

私、大人も子供も全部診ますが、本当にたくさんの被害そのものを受け続けるという ことがあります。男の子の性被害の特徴ですけれども、例えば大人の性被害。PTSD の発 症率ですけど、男の子と女の子でどっち多いと思いますか。発症率です。レイプされた 時。 

日本の警察的なレイプというのは、いわゆる膣への拷問を含むものではないといけな いのでレイプとは言えませんが、肛門への挿入も含むことをレイプとすると男の人の方 が 80%、PTSD 発症率。女の人が 60%なんです。 

ですから、ジェンダーということが話題になりますけれども、ある意味でレイプとい うのは女性にとってはジェンダーにむしろあっている、男性にとってよりショックな体 験なんだということがあります。一方で男の子の性被害の特徴として、それが否認され やすいです。例えば、年上のお姉さんに性虐待被害に遭った時に「いい体験しちゃった

(21)

ね」みたいなことでというふうにして山本先生のお話しでもありましたけれども「平気、

平気。大丈夫」みたいな形です。 

しかし、それが後々に残り続けるという大きな問題があります。それで私、たくさん 性虐待を受けた男の子ももっていて、それで実は性加害に転じる子供、性加害をした子 供の中に性虐待被害というのが半数ぐらいいました。ですから、そこのところに気をつ けて診ていたんですけれども、早期に介入できて本当に数歳から思春期の子供までずっ と 10 年以上もっているケースの中できちんと治療ができたケースに関してはそういう ふうな性的な行動、問題行動とか性嗜好とか社会性に関する問題は全く残っていないと いうことです。 

ですから、早期介入・早期治療で、発達的な軌道に及ぼす影響というのは回避される というふうに考えています。男の子にも性虐待があり、もちろん女の子にも性虐待があ るということです。 

「それは相談をして然るべきなんだ」、特に「家庭内のことというのは誰も教えてく れない、学校で教えてほしかった」「誰にも言えなかった。学校で教えてくれれば自分 はおかしいと言えたはずなのに」ということで、そこのところの、いわゆる学校との連 携をしていくことがとても大事になりますし、なかなか見えてこない領域で少しタブー 化している部分もあります。「社会福祉施設における性虐待被害の連鎖」です。 

加害児が子供に加害をする。あるいは施設内虐待というのも本当にあります。しっか りそこも直視していかないといけないですけれども、子供たちのそういう被害について いち早く発見して治療をするということが望まれます。 

  あと、「セクシャル・マイノリティ」の問題ですが、セクシャル・マイノリティであ るということ自体が非常に慢性・複雑的な複雑性の性的なトラウマを受けたような状態 になるということを伝えておきます。そこを理解した、より LGBT の方たち、全体への 啓発。そういうことが必要になると思います。そして、被害歴も実はとても多いという ふうに考えております。以上です。 

 

【山本氏】 

  私に対する御質問があります。一つだけお答えします。 

さっきの話しで、「おばちゃんもセックスするん?」と何で子供はニヤニヤしながら 言うのか、被害に遭うのにどうしてニヤニヤしているのか、ということですが、多くの

(22)

が、まだまだこれからもっと訊きたかったことがたくさんあるかと思いますが、今後の また別な機会に任せたいと思います。 

児童ポルノ、流通させてはいけないとか、そういう加害・被害の摘発・防止というこ とは非常に大事なんですが、何よりも子供を被害に遭わせない、予防するということは 非常に大事なこと。プラス、一旦被害に遭った子供、生涯に渡る被害との向き合いとい うことが必要なので、そのサポートをどんなふうにシステム化していくかということが 我々の当分の課題ではないかなというふうに感じました。一旦、コーディネート終わり ます。ありがとうございました。 

 

【司会】 

  山本様、ありがとうございました。そして、パネリストの皆様ありがとうございます。

以上をもちまして「児童ポルノは絶対に許されない !  児童ポルノ排除対策公開シンポ ジウム」の全てのプログラムを終了させていただきます。 

参照

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