• 検索結果がありません。

及ぼす影響についての検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "及ぼす影響についての検討"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

及ぼす影響についての検討

著者 糸井 尚子

雑誌名 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系

巻 57

ページ 83‑91

発行年 2006‑02

その他の言語のタイ トル

Effects of assortative mating on the

distribution of population through generations

URL http://hdl.handle.net/2309/1420

(2)

* 東京学芸大学(184-8501 小金井市貫井北町4–1–1)

東京学芸大学紀要 総合教育科学系 57

pp.83〜91,2006

問 題

行動遺伝学の発展に伴って,多くの研究がなされる ようになってきた(安藤,1992)。これは、共分散構造 モデルの発達によるところが大きい(豊田,1997)。特 に,心理学では,従来から,知能の遺伝要因と環境要 因についての関心が強くもたれてきた。行動遺伝学で は,さまざまな量的形質が取り上げられるが,知能に 関しては,遺伝的関係のない配偶者間の相関が高いこ とが知られている。このことが,分布の世代変化にど のような影響を及ぼすのか,分布に影響を及ぼすとす れば,遺伝要因と環境要因の見積もりに何らかの考慮 が必要となるのかを検討しなければならないであろう。

知能の遺伝については,人間の身長などのように連 続変異を示す形質と同様に,非常に多くの遺伝子が関 与するポリジーン・システムが仮定されている(Crow

& kimura, 1970)

。この分析に使用される方法は,特定

の遺伝子を仮定して,質的遺伝を分析するアプローチ は異なっている。前者はパラメトリックであり,後者 はノン・パラメトリックである。これは,集団遺伝学,

あるいは,統計学の中で,違った起源をもっているこ とによる。

19世紀後半から 20

世紀にかけて,Galton, Pearson は,生物の大きさ,人間の身長などに対する遺伝の影 響を記述統計学の手法で研究し,それを生物測定学と よんでいた(Pearson,

1936)

。一方,Mendelの遺伝法則 の研究は20世紀にはいってようやく染色体と言う概念 と出会い,遺伝学Geneticsとして発展し始めた。

Fisher

は,複数の遺伝子が独立して結合した場合の

分布の問題として正規分布をとらえ,正規性からの離 反を遺伝子の重畳の問題としてとらえた(Fisher, 1978)

これが集団遺伝学の基礎となる。

量的遺伝の解析にはこの方法を土台とするのである が,このとき仮定される遺伝子はモデルとしてのもの であり,質的遺伝の研究で用いられる主遺伝子(メイ ジャージーン)の概念とは必ずしも同一とは考えられ ない(石和・五條,1989)。また,量的遺伝には,一般 に環境要因が働くとされている。

したがって,量的遺伝については,環境要因と遺伝 要因の相対的比率を示す指標として,遺伝率と言う概 念が導入されることとなる(Crow,

1976)

。しかし,こ の遺伝率の求め方についても,心理学,あるいは,行 動遺伝学で用いられる指標は,他の研究領域で用いら れる指標とは異なっている。心理学等で用いられる,

いわゆる広義の遺伝率は,集団内の個体間の形質の違 いが遺伝子型による度合いを表す。個体間の相違に寄 与する遺伝要因と環境要因の相対的な影響を決めるの に用いる。これに対して,狭義の遺伝率は,表現型の 違いが親から子へ伝達される程度を示す指標であり,

近縁個体間の相関係数の観察値をその理論値で割った ものが用いられる。選抜育種によってもたらすことの できる改良の予測に使用される。心理学では,広義の 遺伝率として,独立な環境で育てられた一卵性双生児 の相関値が用いられてきた。しかし,狭義の遺伝率で 半同胞を使用することによって,注意深く避けられて いる胎児期の環境要因が考慮されていない,などの問 題もあった。特に重要なことは,遺伝率は全集団に一 様に働く環境の影響を予測することはできない(Crow,

1976)ということである。

行動遺伝学ではこの点を明確にし,遺伝要因の相対 的な見積もりをしようと試みてきた(Plomin, 1988)

配偶者間では,知能に関する多くの調査研究で,

アソータティブ・メイティングが分布の 世代変化に及ぼす影響についての検討

糸 井 尚 子 学校心理学

(2005年9月

30

日受理)

(3)

0.45

程度の高い相関が得られている。Eckland(1967)

は学歴等知能に関連した要素が重視される社会では,

社会の教育システムや職業構造によって,ある偏りを 持った配偶者選択が生じるとしている。

一方,知能の分布の世代間変化について,Jensen

(1969, 1978, 1981)は,集団差が生じるメカニズムとし て,配偶者間の相関の高さをあげている。配偶者間に 高い相関がある場合,かつ,そのことが,世代間で繰 り返される場合,集団の分散が大きくなり,結果的に,

知能の高い方へも,分布が広がることを推論している。

配偶者間である特性に関する相似がある時,集団遺 伝学ではアソータティブ・メイティングと言う。一般 に,正のアソータティブ・メイティングでは,遺伝子 のヘテロ接合体(異型の遺伝子からなる接合体:例え ばAa)の割合の減少,ホモ接合体(同型の遺伝子から なる接合体:例えば

AA, aa)の割合の増加が予測され,

これにより遺伝的な分布が変化する。この割合の変化 は,同義遺伝子の個数,配偶者間の相関の値などによ って違ってくると考えられてくる(Wright, 1921)

アソータティブ・メイティングについては,共分散 を 使 用 し て 算 出 す る 方 法 が ,Fisher, Wright以 降 ,

Jencks(1972)

,Eaves et al.(1978),Young et al(1980)

Fulker(1982)により発展され,Neale & Cardon(1992)

にまとめられている。この,逆回帰モデルを使用した アソータティブ・メイティングの分析につては,豊田

(1997)に精しく述べられている。

ある時点での遺伝要因,共有環境要因,非共有環境 要因の相対的比率を求めることに対し,アソータティ ブ・メイティングが何世代にもわたって繰り返された ときには,それがないときに比べて,3者の比率が変 化すると考えられるが,これについては,共分散構造 分析による検討では,遺伝要因の比率がある均衡に到 達すると考えられている(Neale &

Cardon,1992)

知能には多くの同義遺伝子が関与するポリジーン・

システムが仮定されているが,環境要因も関与すると 考えられる。非遺伝的変異の原因となる環境要因は数 多く存在するので,その総合的な結果として現れる変 異も,やはり正規分布を示すことになるとされている

(大羽,1977)。環境要因もまた,環境要因と遺伝要因

がどのような割合でどのような関係にあるか,また,

同義遺伝子の個数をどのように仮定するか,配偶者間 の相関の値をどのように仮定するかによって遺伝的な 分布の世代変化がどのように変わるかを検討する必要 があると考えられている。共分散を使用して算出する 方法でなく,今回は,一対の遺伝子に対して,環境要 因を加えた場合についてアソータティブ・メイティン グに伴う分布の世代変化を直接計算する。

また,アソータティブ・メイティングによる分布の 世代変化について,直接的なシミュレーションを行う。

一組の親から子発生させる分布の標準偏差を変化させ て,どのような値を取ると子世代の分布と親世代の分 布の標準偏差が近くなるのかを調べ,その値を使用し て,アソータティブ・メイティングのシミュレーショ ンを行う。一組の親の値の差の絶対値をとり,その範 囲を制限して,そのとき得られる相関係数をアソータ ティブ・メイティングの強さとし子世代の標準偏差の 変化について調べる。そのことにより,アソータティ ブ・メイティングが次世代の分布に与える影響につい て検討する。

実 験1

仮 定

一対の遺伝子の間で優劣関係はないと仮定し,対立 遺伝子の各々の頻度は

0.5ずつとし,環境要因と遺伝要

因は独立,つまり両者の間に相互作用がないとする場 合について計算する。配偶者間の相関は,1とする。

具体的には対立遺伝子を仮に

Aと a

とし,3種類の遺

伝子型の

AA,Aa,aA,aa

に対して表現型としての数

値に

2,1,1,0

を割り当てる。それぞれに独立に環境

要因の値を

2,1,0

とする。この遺伝子型4種と、環 境値3種をくみ合わせて,12パターンの表現型の値を 決める(Table1)。12パターンは仮定より,同じ頻度 で出現するとすることになる。

配偶者間の相関を1としたので,12パターンの間で,

表現型の同じものだけの間で次世代の子が発生すると なる。各メイティングから生じる子の個体数は同数と する。

Table1  Genotype, environmental value and phenotypical value (environmental 50 %)

(4)

ヘテロ接合体の割合の計算の結果

この次世代を求める作業に置いて,分布の変化をヘ テロ接合体の割合の変化に着目して検討する。

メインティングによる次世代の遺伝型のヘテロ接合 体の割合を配偶子の遺伝型の組み合わせごとに整理す る(Table2)。各,親世代でもホモ接合体とヘテロ接 合体の割合を

x

:yと置く。仮定から各親のパターンか らの子はどのパターンからも同数であるとすると,子 世代のホモ接合体とヘテロ接合体の割合は,各パター

ンごとに

Table

3になる。これより、子世代のホモ接合

対とヘテロ接合体の割合は,

(17x+ 12y) : (7x+ 12y)

となる。

世代をtとして,各世代における全体でのホモ接合体 とヘテロ接合体の相対数を

U(t)と V(t)と置くと,

U (t

+1)=17U (t)+12V (t)

V (t+ 1)=7U (t)+ 12V (t)

となる。この連立線形差分方程式を解き,全体の中で のヘテロ接合体の割合

(V (t) / (U (t) + V (t) ) )

を求めた。t→∞におけるこの割合は,

0.368421

となった。

第2世代以降について,上記の条件の下での計算結 果は,Table4のようになる。

同じ条件で環境要因を仮定せずに,遺伝要因のみの 場合での計算結果は,ずっと

1/2

ずつ減少していく

(Wright,1921)

今回の計算の結果,遺伝要因,環境要因をそれぞれ

50%

と仮定し,一対の遺伝子で配偶者間の相関を1と して,計算を行った結果,環境要因を仮定せずに遺伝 要因のみでの結果と比較したところ(Figure1),世代 変化に伴ってのヘテロ接合体の減少の速度は,ずっと 遅くなり,少ない世代変化で,平衡状態に達してそれ 以上は減少しないことがわかった。

同じ形質の発現に寄与する同義遺伝子の数が増える とヘテロ接合体の割合の減少のスピードは遅くなるこ とがわかっている(Crow

Kimura,1970)

。多くの遺 伝子を仮定したポリジーン・システムでかつ環境要因 を仮定するとアソータティブ・メイティングの影響は 小さいのではないかと推測される。

さらに,同義遺伝子の個数,配偶者間の相関の値,

環境要因の比率などの仮定を変えて分布の世代変化に ついて検討する必要がある。

糸井:アソータティブ・メイティングが分布の世代変化に及ぼす影響についての検討

Table2 Mating pattern and rario of heterozygosity in next generation

Table3 Ratio of homozygosity and heterozygosity in next generation (environmental 50 %)

Table4 ratio of heterozygosity

(5)

実 験2

先のシミュレーションでは,遺伝子型と環境値を設 定して,アソータティブ・メイティングが,次世代の ヘテロ接合体の割合をどう変化させるかということか ら,分布への影響についての推定を行った。

今度は,直接に分布の標準偏差の世代変化を推定す ることを行う。

親世代の分布から,1組の親を発生させる。このと き,この1組の親から生まれる子どもは,ポリジー ン・システムを仮定すれば,かつ,遺伝子間に連鎖が ないと仮定すれば,両親の平均値を平均とし,ある標 準偏差をもつ分布を生じると仮定できる。

配偶者間に相関がない,つまり,アソータティブ・

メイティングがない状態で,親の世代の分布を子世代 が再現するには,1組の親から生まれてくる子どもの 分布の標準偏差は,どんな値になるのかを,まず,検 討する。

さらに,その1組の親から生まれてくる子どもの分 布の標準偏差の値を使い,アソータティブ・メイティ ングを仮定して,シミュレーションを行い,子世代の 分布の標準偏差の変化を調べる。

これら2段階のシミュレーションを行って(Figure 2) アソータティブ・メイティングが分布に及ぼす影響に ついて検討する。

Figure1 Percentage of heterogyfosis 

Figure 2 The executed plan of the simulation

(6)

ステップ1

まず,親世代の平均を

100,分散を 10

とする正規分 布を仮定し,両親を親1,親2として,それぞれ2つ の正規分布から,ひとつずつの値をランダムに発生さ せる。そして,1組の親1,親2の算術平均を平均と して,標準偏差を探索的に変化させて,その正規分布 の中から,各1回ランダムに発生する値を子どもの値 とする。子どもを

500

回発生させて,1回のシミュレ ーションとして,これを10回実行した。

そこから,子ども世代の分布の平均と標準偏差,1 組の親1,親2とその子どもの値の3者間のそれぞれ の相関係数を求めた。

そして,1組の親から発生する子どもの分布の標準 偏差をどのように設定すれば,親世代と同じ標準偏差 をもつ子世代の分布を得られるかを調べた。

シミュレーションの結果,1組の親が子どもを発生 させる分布の標準偏差を

10

からスタートし,6,7,8 と探索的に変化させたところ,7とした時に,子世代 の分布の標準偏差が親世代の標準偏差として設定した

10にもっとも近くなることがわかった(Table5)

ステップ2

ステップ1の結果に基づき,1組の親から発生する 子どもの分布の標準偏差を7として,ステップ1と同 様の仮定に基づいて,さらに,アソータティブ・メイ ティングの大きさを変化させて,子世代の分布の標準

偏差の変化について推定する。

まず,親世代の平均を

100,分散を 10

とする正規分 布を仮定し,両親を親1,親2として,それぞれ2つ の正規分布から,ひとつずつの値をランダムに500 発生させる。このとき,発生した親1と親2の値の差 を散り,この絶対値をある範囲に指定することで,ア ソータティブ・ティテォングを模擬的に生じさせる。

つまり,親1,親2の差の絶対値が,指定した範囲内 に入る場合のみ子どもが発生することとする。親1,

親2の差の絶対値の範囲は,10,15,20とした。これ を10回繰り返して,発生した子どもの数,親1,親2,

子どもの平均と標準偏差,1組の親1,親2とその子 どもの値の3者間のそれぞれの相関係数を求め,それ らの平均を計算した。

結 果

ステップ1の結果から,1組の親から発生する子ど もの分布の標準偏差を7として,親1,親2の差の絶 対値の範囲を,10,15,20と変化させた。そのとき,

配偶者間の相関は順に,0.742,0.535,0.342となった。

子世代の標準偏差は,順に,10.136,10.117,10.094 あった。(Table6)

両親の値の差の絶対値の範囲を狭めることで, 両親 の相関値が高くなり,その結果,子世代の標準偏差が 増加することが確認された。しかし,子世代の標準偏 糸井:アソータティブ・メイティングが分布の世代変化に及ぼす影響についての検討

Table 6 Results of simulation of assortative mating

Tadle 5 Results of simulation to determine the SD of offspring

(7)

差の増加は微増であった。

配偶者間の実際の相関値は

0.45

前後であり,結果か ら両親の値の絶対値の差を

15と 20とに設定した間にあ

ると考えられるが,このときの親子間の相関係数は,

0.6

前後となっており,実測値に近いと考えられる。こ のことから,今回のシミュレーションには,ある程度 の蓋然性があるといえるだろう。

今回のシミュレーションは,表現型にのみ着目した 形で行ったと考えることもできるし,その時に遺伝要 因と環境要因をどのような比率で仮定するかと言うこ とに対して,全く自由である。全てを環境要因と仮定 したとみなすこともできれば,逆に非常に多くの同義 遺伝子からなる遺伝要因のみを仮定した場合と見るこ ともできるであろう。

非常に単純な仮定のもとに,ある程度の蓋然性を持っ た結果がえられたのは,前提となる正規分布のもってい る規則性が反映されたと考えることができるだろう。

考 察

配偶者間にある特性に対して正の相関がある場合に は,つまり,正のアソータティブ・メイティングでは,

ヘテロ接合体の割合の減少が予想され,これにより遺 伝的分布が変化すると考えられている。

そこで,実験1で環境要因を仮定した場合ヘテロ接 合体の割合の減少がどうなるかについて,一対の遺伝 子のもとで,計算を行った。その結果,環境要因を仮 定した場合ヘテロ接合体の減少のスピードはずっと遅 くなり,少ない世代で平衡状態に達して,それ以上変 化しないことがわかった。

実験2では,アソータティブ・メイティングによる 分布の世代変化について,シミュレーションを行った。

1組の親から子を発生させる分布の標準偏差を変化さ せて,どのような値をとると子世代の分布と親世代の 分布の標準偏差が近くなるかを調べ,その値を使用し て,アソータティブ・メイティングのシミュレーショ ンを行った。一組の親の値の絶対値をとり,その範囲 を制限して,そのとき得られる相関係数をアソータテ ィブ・メイティングの強さとした。その結果,子世代 の標準偏差は増加することが確認されたが微増であっ た。

Jensen(1978)は,一対の遺伝子座において優劣が

なく遺伝子の頻度が

0.5ずつと仮定し,配偶者間の相関

0

とした場合と1とした場合で,1世代後の分布の 標準偏差を計算し,前者が

0.707,後者が 0.866

であり,

優劣を仮定した場合も配偶者間に相関を設定すると次

世代に分散が拡大することを示し,この傾向がポリジ ーン・システムにも一般化できるとした。

同じ形質の発現に寄与する同義遺伝子の数が増加に 伴うヘテロ接合体の割合の減少のスピードの鈍化につ いて検討されてきた。(Crow & Kimura, 1970)。今回は,

表現型の相似に基づいてアソータティブ・メイティン グが生じるとき,環境要因を仮定すると,それはヘテ ロ接合体の減少に対して,撹乱要因として働き,減少 のスピードを鈍化させることが示された。多数の同義 遺伝子を仮定し,環境要因の大きいポリジーン・シス テムにおいて,アソータティブ・メイティングが,分 布に及ぼす影響は,非常に小さいのではないかと考え られた。

ただし,同義遺伝子の数を増加させることによって も,環境要因を設定することによってもヘテロ接合体 の減少の減速が生じるのであるから,同義遺伝子を非 常に多く仮定することによって,遺伝要因と環境要因 の分離の必要性が少なくなることも考えられる。

つまり,一対の遺伝子に対して,ヘテロ接合体の割 合の変化を見るとき,環境要因を仮定すれば,加算モ デルにおいては,遺伝子体に対して,環境要因は独立 と考えるのであるから,環境要因は一対の遺伝子のヘ テロ接合体の割合の変化に撹乱要因として働く。遺伝 要因のみを仮定した場合で,二対の遺伝子を仮定した とき,遺伝子間に連鎖がないとすれば,一対の遺伝子 のヘテロ接合体の割合の変化に対しては,先と同じよ うに撹乱要因として働く。環境要因を設定した場合,

同義遺伝子の数を増やしたときと類似のヘテロ接合体 の減少の速度の減少と均衡への収束が得られたことは,

環境要因であれ,遺伝子要因であれ,独立の要因を加 算モデルでおくことに帰するとみなすことができるで あろう。

生物に対する集団遺伝学は環境要因と遺伝要因の分 離について,人間を対象とする心理学や行動遺伝学と は,異なる考え方をとってきた。そのため,環境要因 の働き方についての理論的な問題意識が違っており,

遺伝要因と環境要因を加算的に仮定して,それがどの ように,分布に働いているかを考察することは重要な ことだと考えられる。

また,配偶者間の相関をどう扱うかも,重要な論点 となる。Jensen は,配偶者間の相関が,集団によって 異なることより集団間の差が生じてきたと推論した。

しかし,現在,行動遺伝学での関心事は,個人差の説 明 概 念 と し て の 遺 伝 要 因 の 相 対 的 な 分 離 に あ る

(Plomin, 1988)

Baker et al.(1996)は,オーストラリアの双生児の

(8)

学業成績に対するコホートな研究において,遺伝要因

57%と見積もったが,アソータティブ・メイティン

グが高いことから,共有環境要因の効果のほとんどが,

配偶者間の加算的遺伝要因の相関に帰することができ ると考え,Martin(1978)の修正方法を使用して,真 の遺伝要因を

82

%と計算している。知能,学力などに おいては,配偶者間の相関が高いので,この問題をど のように仮定するかさまざまな可能性について,検討 する必要があるであろう。

量的形質については,ひとつの量的形質に関与して いる遺伝子の数が一般に非常に多く,しかも遺伝子一 個の効果は,環境の影響に比べて小さいので,それだ けを独立に検出することは,困難とされてきた。その 遺伝子を特定する可能性についても研究がなされてい る。

量的形質の遺伝のモデルとしては,ポリジーン・シ ステム以外のオータナティブは,現時点ではないと言 えよう。しかし,知能など行動遺伝学が扱う概念は構 成概念であり(豊田,1997),さらにここで使われてい る,遺伝と言う概念それ自体も構成概念とみなすべき であろう。例えば,知能の下位因子の能力の遺伝率は 知能の遺伝率に比べて相対的に低い(安藤,1996)。ひ とつの能力として考えられる知覚速度のような能力も,

個人差を発生させる要因は多数あると考えられ,すで にこの能力にポリジーン・システムが仮定される。

ポリジーン・システムがどのようなモデルであるか を知るためにも,このようなシミュレーションは必要 であろう。

引用文献

安藤寿康 1992 人間行動遺伝学と教育 教育心理学 研究 40巻 96_107.

安藤寿康 1996 遺伝する知的能力と教育環境 日経 サイエンス8月号,40_50.

Baker, L. A., Treloar, S. A, Reynolds, C. A., Heath, A. C.

and Martin, N. G. 1996 Genetics of Educational Atteinment in Australian Twins: Sex differences and secular changes. Behavior Genetics, 26, 89_102.

Crow and Kimura 1970 An introduction to population genetics theory. Minneapolis: Alpha Editions.

Crow 1976 Genetics Notes. 7th ed. Minneapolis: Burgess Publishing.

Eaves, L. J., Last, K. A., Young, P. A. and Martin, N. G.

1978 Model-fitting approach to the analysis of human behavior. Heredity

41, 249_320.

Eckland, B. K.1967 Genetics and sociology: A reconsideration. American Sociolgical Review,

32,

173_194.

Fisher, J. B. 1978 R. A. Fisher: The Life of Scientist. New York: John Wiley & Sons.

Fulker, D. W. 1982 Extension of the classical twin method.

In Human genetics, part A: The unfording genomes.

New York: Alan R. Liss.

石和貞夫・五條堀孝 1989「集団遺伝学」培風館

Jencks, C. 1972 Inequality: A Reassessmant of the Effects of

Family and Schooling in America. New York: Basic Books.

Jensen, A. R. 1969 How much can we boost IQ and scholastic achievement? Harverd Educational Review,

39:1_123.

Jensen, A. R. 1978 Genetic and Behavioral effcts of nonrandom mating. In. Osborne, R. T., Noble C. E., and Weyl. N. (Eds.) Human Variation: The Biopsychology of Age, Race, and Sex. New York: Academic Press.

Jensen, A. R. 1981 Straight talk about mental tests. London:

Methuen.

Martin, N. G. 1978 Genetics of sexual and social attitudes in twins. In Twin Research: Psychology and Methodology.

New York: Alan R. Liss.

Neale, M.C. and Cardon, L. R. 1992 Methodology for Genetic Studies of Twins and Families. Dordrecht:

Kluwer Academic Publishers.

大羽滋 1977 集団の遺伝 東京大学出版会

Pearson, E. S. 1936 Karl Pearson: An Appeciation of some aspects of his Life and Works. Biometrika 28.

Plomin, R. 1988 The nature and nature of cognitive abilities.

In R. J. Sternberg (Ed.) Advances in the psychokogy of human intelligence. 4, Hilside, N.J.: Erlbaum.

豊田秀樹 1997 共分散構造分析による行動遺伝学モ デルの新展開 心理学研究 67巻6号 464_473.

Wright, S. 1921 Systems of mating. Ⅲ Asortative mating based on somatic resemblance. Genetics

6: 124_143.

Young, P. A., Eaves, L., J. and Eysenck, H. J. 1980 Intergenerational stability and change in the causes of variation in personality. Personality and Indiviidual Differences, 1, 192_217.

糸井:アソータティブ・メイティングが分布の世代変化に及ぼす影響についての検討

(9)

付 記

草稿の時点で,数値の検討を行ってくださった慶応 義塾大学安藤寿康教授にお礼申し上げます。

2つのシミュレーションについて貴重な意見を下さ ったロンドン大学精神医学研究所

R. Plomin

教授,シミ ュレーションの細部にわたり検討して助言くださった

P. Sham 教授に深く感謝申し上げます。

(10)

* Tokyo Gakugei University (4-1-1 Nukui-kita-machi, Koganei-shi, Tokyo, 184-8501, Japan)

This study aimed at making the estimation of effects of assortative mating on the distribution of population through generations.

Assuming that the enviromental factors is 50%, proportion of heterozigosity was calculated with two-allele. The decrease of heterozigosity was weakened comparing with the results under the model with no enviromental factors.

And the simulations were executed under the condition of some corelations between mates, to know the standard deviation of the next generation. As a first step of the simulations, the standard deviation of the children of a mate, which reproduce the closer standard deviation of the children's population to that of parents' population, was seeked. Secound step, using this standard deviation of the children of a mate, under the condition of some corelations between mates, the standard deviation of next generation was calculated. The results showed that the increase of standard deviation was very weak.

This can be interpreted that assortative mating may cause very little increase of phenotypic variance in the polygenic system with a tremendous number of gene loci and emvironmental factors.

Effects of assortative mating on the distribution of population through generations

Hisako Itoi Faculty of Education

Key words : assortative mating, polygenic systems, behavior genetics.

ITOI : Effects of assortative mating on the distribution of population through generations

(11)

参照

関連したドキュメント

The inclusion of the cell shedding mechanism leads to modification of the boundary conditions employed in the model of Ward and King (199910) and it will be

We show that a discrete fixed point theorem of Eilenberg is equivalent to the restriction of the contraction principle to the class of non-Archimedean bounded metric spaces.. We

Keywords: continuous time random walk, Brownian motion, collision time, skew Young tableaux, tandem queue.. AMS 2000 Subject Classification: Primary:

Answering a question of de la Harpe and Bridson in the Kourovka Notebook, we build the explicit embeddings of the additive group of rational numbers Q in a finitely generated group

It turns out that the symbol which is defined in a probabilistic way coincides with the analytic (in the sense of pseudo-differential operators) symbol for the class of Feller

Then it follows immediately from a suitable version of “Hensel’s Lemma” [cf., e.g., the argument of [4], Lemma 2.1] that S may be obtained, as the notation suggests, as the m A

In our previous paper [Ban1], we explicitly calculated the p-adic polylogarithm sheaf on the projective line minus three points, and calculated its specializa- tions to the d-th

We give a Dehn–Nielsen type theorem for the homology cobordism group of homol- ogy cylinders by considering its action on the acyclic closure, which was defined by Levine in [12]