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気体大流速標準の設定に関する調査研究

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気体大流速標準の設定に関する調査研究

岩井 彩

(平成 25 年 12 月 25 日受理,平成 27 年 6 月 26 日再受理)

A survey on the setup of the high air speed standard

Aya IWAI

Abstract

 In order to setup the high air speed standard at National Metrology Institute of Japan (NMIJ), this survey

describes air velocity measurement techniques, needs of industry field and calibration capabilities of overseas national metrology institutes. In Japan, the air speed range for standard is needed from 40 m/s to 90 m/s and its expanded uncertainty(k=2) is expected to be about 1.0 % . NMIJ proposes a high air speed standard setup plan based on volumetric flowrates by comparing the integral value of measured velocity distribution with the standard volumetric flowrate. This standard is expected to play an important role not only in reliability improve- ment of wind velocity measurement in the meteorology field, but also in the related industry field and in under- standing of meteorological phenomena.

第 1 章 はじめに

気体流速は,トンネルや鉱山などの閉鎖空間における 作業環境のモニタリングや空調設備の性能評価に加え,

飛行機など高速移動体の空力特性評価やビル風などの耐 風設計,台風など気象現象の予測や定量的理解のための 指標として非常に重要である.わが国では,これまでに 0.05 m/sから 40 m/sまでの気体流速標準 1)-4)における 整備と供給が行われてきたが,近年の新たな流速測定方 法の普及や科学技術の進歩により,40 m/s以上の流速 域における信頼性と整合性の確保が求められている.ま た,気象観測分野では 90 m/sまでの風速範囲における 風速計の検定が行われており 5),40 m/s以上の流速域に おける標準設定は必要不可欠である.さらに海外に目を 向けると,40 m/s以上の気体流速標準を持つ国家計量 標準機関(NMI)は 5 機関 6)あり,国際的な整合性を確 保するためにも,100 m/s程度までの流速標準を設定す ることが求められている.

本調査報告では,各種気体流速計の原理および各

NMI

が整備する気体流速標準設備の調査を行い,これ に基づき,わが国で設定すべき気体大流速標準の設定案 とその設備について概説する.

第 2 章 気体流速の測定原理と測定方法

本章では気体流速測定に用いる代表的な測定器を原理 と共に示し,これら測定器の性能評価を行うための風洞 についても紹介する.

2. 1 ピトー管

ピトー管とは,流れ方向に対向して開いた全圧孔での 圧力(全圧)と垂直に開いた静圧孔の圧力(静圧)との 差圧から流速を求める測定器である 7).流れに平行な鼻 管と垂直な茎管から構成され,全圧孔と静圧孔は鼻管壁 面に設置されている.全圧孔のみを設けたピトー管を全 圧管,静圧孔のみを設けたピトー管を静圧管と呼び,両 孔を設けたピトー静圧管と区別する.ピトー管は製作が 容易であり,振動や温度変化の激しい環境でも流速測定

*計測標準研究部門流量計測科気体流量標準研究室

(2)

可能なことから,産業界では航空機など高速移動体の流 速測定や人工的に整った風を発生させる風洞測定部での 流速測定に用いられることが多い.一方,測定にはピ トー管を流れ場に挿入する必要があるため,ピトー管挿 入による流れ場の乱れを最小限に抑える形状や設置方法 の検討が必要である.

ピトー管の測定原理はベルヌーイの定理に基づいてお り,非圧縮かつ非粘性流体の一様流れの中では,全圧孔 での流速は 0 m/sのよどみ点となることから,全圧と 静圧は式(2.1)で関係づけられる.

(2.1)

ここで,νは一様流の流速,p1は全圧孔で測定した圧力,

p

2は静圧孔で測定した圧力,ρは流体の密度である.式

(2.1)式を流速について整理すると,式(2.2)が得られ る.

(2.2)

実際の流速測定では測定対象である空気の粘性などを考 慮する必要があるため,式(2.2)にピトー係数と呼ば れる補正係数

C

を乗算する.

(2.3)

ピトー係数は一般的に,流速が大きな領域では 1 近傍 となる.しかし,全圧孔のある鼻管先端の形状と静圧孔 の位置によって,あるいはピトー管を流れ方向に対して 傾くように設置することによって,全圧孔と静圧孔で本 来の圧力が測定できない場合がある.このとき,ピトー 係数は本来の値からずれる可能性がある.先行研究とし て,ピトー静圧管の鼻管先端形状を半球型及び矩形型と したときの,レイノルズ数に対するピトー係数を図 1 に 示す.なお,レイノルズ数とは流体の持つ慣性力と粘性 力の比で表される無次元数で,式(2.4)で表される.

(2.4)

ここで,Reはレイノルズ数,ρは流体の密度,Uは代表 速度(その流れ場で代表的な速度,あるいは測定対象物 周りの流速),Lは代表長さ(図 1 ではピトー管の直径,

一般には測定対象物の長さ),μは流体の粘度である.レ イノルズ数は流れ場の状態を表す指標であり,円管内部 の流れでは一般的に

R

e

≤ 2300 で層流,R

e

≥ 2300 で乱流

となる.また,自由噴流や管内流などの流れ場の幾何学 的形状が同じであれば,代表長さや粘度が異なる場合で も,レイノルズ数を揃えることで同じ流れ場の状態を再 現できる.ピトー静圧管を大気中で用いる場合には密度 と粘度がほぼ一定であるため,図 1 において横軸のレイ ノルズ数はほぼ流速の関数である.図 1 よりレイノルズ 数(流速)が下がるとピトー係数は上昇し,矩形型より 半球型のほうがピトー係数の変動幅が大きいことがわか る.

静圧孔で本来の静圧を測定するためには,鼻管先端に よる静圧減少と茎管による静圧増加を考慮する必要があ る.静圧減少は,鼻管先端部を通過する流れがピトー管 の曲面に沿ってよどみ点から加速することで,局所の表 面圧力が急速に減少するために発生する.この効果から 静圧孔では本来より低い静圧になるが,鼻管表面の圧力 は先端から離れるほど本来の値に回復する.一方静圧増 加は,茎管の上流側に全圧孔と同じくよどみ領域が生じ ることで,鼻管での表面圧力が増加するためと考えられ る.この効果から静圧孔では本来より高い静圧になる が,鼻管表面の圧力は茎管から離れるほど本来の値に回 復する.これらより,静圧孔の位置は鼻管および茎管か らある程度の距離を持たせることが必要である.

現在は,上記のようなピトー管形状に由来する圧力場 変動を考慮した,様々な仕様のピトー管が用いられてい る.わが国の産業分野で広く使用されるピトー管は

JIS

型ピトー管と呼ばれ,図 2 に示すような

JIS B 8330

 8)で 規定される構造である.この形状は 1937 年 4 月発行の 送風機試験規格 9)に基づいており,NPL標準型ピトー静 圧管を改良したものである.NPL標準型の鼻管先端は 円錐状で構造的に脆弱であったため,NPL標準型と測 定値が同じになるように考慮したうえで,先端形状は半 球形に変更された.また図 3,図 4,図 5 に示すような 前述の鼻管による静圧減少および茎管による静圧増加の 定量的評価も行われ,これらの効果を相殺する静圧孔位 置として,鼻管円筒部先端より 6Dpかつ静圧孔から茎 管まで 8Dpと決定された.

諸外国では

NPL

標準型ピトー管 9)のほかに,スタン

S Y

S U

S S

Y

U

S S

&

Y

U

P U 8/

5

H

図 1 鼻管先端形状ごとのピトー係数7)(筆者加筆) 

(※横軸は代表長さをピトー管直径としたレイ ノルズ数,縦軸はピトー係数である)

(3)

ダード型ピトー管 10)やプラントル型ピトー管 7)などが使 用されている.NPL標準型ピトー管の鼻管先端は図 6 に示すような勾配 1/10 の円錐状であり,Dpをピトー管 の外径とすると,先端部の円錐形状終了地点から下流側 へ 2.3 Dpの位置に静圧孔を持つ.次に,スタンダード 型ピトー管はアメリカの送風機試験規格である

AMCA

(Air Movement and Control Association 210) 10)で形状が 規定されており,図 7 に示すように鼻管と茎管は四半円 周状で接続される.鼻管先端から静圧孔までは 8D,茎 管から静圧孔までは 16Dである.また,プラントル型 ピトー管 7)はゲッチンゲン型とも呼ばれ,図 8 に示すよ うに鼻管と茎管は直角に接続される.鼻管先端から静圧

孔までは 3D,茎管から静圧孔までは 8Dから 10Dであ る.

2. 2 熱線流速計

熱線流速計は,流れ場に挿入された熱線の抵抗値変動 から流速を求める計測器である 11), 12).抵抗値は温度の関

図 2 JIS型ピトー管8)(筆者加筆)(※鼻管及び茎管の 外径を

Dp

とする)

図 5 静圧孔位置を基準とした,鼻管先端形状ごとの 静圧分布9)(※横軸は茎管から静圧孔までの距離 である)

図 3 評 価 に 使 用 し た 鼻 管 お よ び 鼻 管 先 端 部 の 形 状9)

図 4 鼻管先端位置を基準とした,鼻管先端形状ごと の静圧分布9)(※横軸は鼻管円筒部先端から静圧 孔までの距離である)

(4)

数であり,流れ場の流速が増すほど通電された熱線から 流体への熱伝達量が増加することを利用する.熱線の材 質として直径 2

μm

から 10 μmのタングステンや白金線 が一般的に使用される.プローブには熱線 1 本を張るこ とで高い空間分解能での流速測定ができる

I

型や,熱線 2 本を十字に張ることで 2 方向の流速測定が可能な

X

型,

壁面近傍や境界層の流れ測定に特化した境界層型などが ある.I型プローブを図 9 に示す.

熱線流速計は

SN

比や流速の分解能も高いため,乱流 や非定常の流れ場計測に適している.一方,流速算出に は熱線プローブを事前に校正し,実験定数を求める必要 がある.測定原理は 2 種類あり,熱線の温度を一定に保 つ定温度型と,熱線を流れる電流を一定に保つ定電流型 がある.定電流型のほうが電気回路としては簡易だが,

現在では計測制御に優れた定温度型が主流である.定温 度型において,熱線は図 10 に示すブリッジ回路の抵抗 の 1 つとして構成される.流れ場が熱線から奪う熱量に 対応する電圧値を検流計と可変抵抗値から算出し,熱線 に通電させることで熱線の温度を一定に保つ.熱線にお ける熱平衡式を式(2.5)に示す.

(2.5)

D Z Z

Z

Z Z

GK 7 7

W 7 F J 5 G

,

w w S U

S

図 6 NPL標準型ピトー管9)(筆者加筆)(※鼻管及び 茎管の外径を

Dp

とする)

図 8 プラントル型ピトー管7)(筆者加筆)(※鼻管及 び茎管の外径を

D

とする)

図 7 スタンダード型ピトー管7)(筆者加筆)(※鼻管

及び茎管の外径を

D

とする) 図 9 I型熱線プローブ先端部

(5)

ここで,Iは熱線を流れる電流,Rwは熱線の電気抵抗,

T

wは熱線の温度,Taは流体の温度,dは熱線の直径,cw

は熱線の比熱,ρwは熱線の密度,hは熱線表面における 熱伝達率である.左辺は熱線で発生するジュール熱,右 辺第 2 項は熱線から流体への放熱量を表す.ただし,熱 線の長さは直径の 200 倍以上と十分長いとし,熱線上の 温度分布が一様と見なせると仮定する.定温度型では

0

∂ =

t

T

w となるようにブリッジ回路を構成するため,式

(2.5)は以下のようになる.

(2.6)

熱線を流れる電流

I

と熱線の張られた方向に対し垂直に あたる流速νとの関係は,Kingの式 13)より式(2.7)で表 される.なお,式(2.7)には熱線の抵抗値が温度差に 対して直線近似できるとの仮定を含む.

(2.7)

ここで,R0は熱線が測定流体と同温度のときの抵抗値,

A,B

は流体温度に依存する定数,nは流速に依存する 定数,νは熱線周りの流速である.一般に

n

は 0.5 をと るが,微流速や高速流では 0.5 から変動する.また,

R

0,A,Bは流速ごとの測定値から決定することができ る.A,Bは個々の熱線プローブによって値が異なり,

かつ熱線の劣化や流体中の塵などの付着により値が時間 変動する可能性があるため,測定前の校正が必要であ る.

実際の測定ではプローブからの出力電圧と流速との関 係式であるが,(2.7)式に示すとおり,電流と抵抗の積 である電圧と流速は一次式の関係ではないため,電圧と 流速を直線化するリニアライザを使用する.このような 温度や抵抗値といった熱伝達による変化量と流速が相対 的な関係を持つ点は,ベルヌーイの定理などの基本的な

原理を用いた測定器と異なる特徴である.

2. 3 超音波式流速計

超音波式流速計は,周波数 20 kHz以上の超音波を用 いた伝播時間差を利用する測定方式が一般的である14). この方式は向かい合わせに設置した 2 個の送受信器から 交互に超音波パルスを発射し,受信までの時間差を用い て流速を測定する.送受信器 2 個を 1 組とし,空間 3 軸 方向に沿って 3 組を組み合わせることで,全方位の流速 平均値を同時に測定できる.

測定原理と概略図を図 11 に示す.送受信器間の距離 を

L,各送受信器間の到達時間を t

1及び

t

2,流速をν,

流速方向と超音波の進行方向との角度をθ,音速を

C

と すると,伝播時間

t

1及び

t

2は次式で与えられる.

(2.8)

(2.9)

この 2 式から音速

C

を消去すると,式(2.10)が得ら れる.したがって,伝播時間

t

1及び

t

2を測定すれば流 速を求めることができる.

(2.10)

超音波式流速計は伝播時間差が検知できる範囲であれ ば流速を問わず測定可能であり,測定方法や原理が簡潔 なため,様々な分野で活用が進んでいる.一方時間差が 短くなるほど流速の分解能や精度が低下する点や,ダス トや蒸気を多く含む流体には超音波が伝搬しにくい点が あり,測定に適する流れ場かを考慮する必要がある.

2. 4 レーザードップラー流速計

レーザードップラー流速計は一般的に

LDV(Laser

D Z

Z

GK 7 7

5

, ʌ í

Q Z

Z

$ %Y

5 5

5

,

& Y FRV T

W /

FRV T

& Y

W /

図 11 超音波式流速計の測定部 図 10 定温度型熱線流速計の電子回路図(※熱線は左

下の

A

の位置である)

(6)

D o p p l e r Ve l o c i m e t e r

)やL D A(

L a s e r D o p p l e r Anemometer)と呼ばれ,測定流体に混ぜた微小粒子に

よる散乱したレーザー光のドップラーシフト量を流速に 変換する測定器である 15).レーザー光は可干渉性と集光 性に優れているため,微小なドップラーシフト量でも測 定可能である.プローブを流れ場に挿入しない非接触測 定であるが,測定流体に散乱粒子を混ぜる必要があるた め風洞設備によっては導入が難しい.また,流速測定領 域であるレーザー光の干渉領域の安定性と再現性を確保 するため,光学系機器の配置調整が必要である.図 12 に,装置写真の一例を示す.

LDV

の測定原理を紹介する.ドップラーシフト量の 定義を式(2.11)とすると,ドップラーシフト量は式

(2.12)で示される.

(2.11)

(2.12)

ここで,

f

rは散乱したレーザー光の周波数,

f

eは元のレー ザー光の周波数,Δfはドップラーシフト量,λeは元の

レーザー光の波長,νは流速,θはレーザー光と基準軸と の角度である.図 13 に概略図を示す.式(2.12)より,

流速は原理的に式(2.13)で表すことができる.なお実 際の測定では,式(2.13)に補正係数を用いて正しい流 速を求める.なお,LDVにおいても補正係数算出のた めの校正が必要である.

(2.13)

一般的に使用されるレーザー光として,波長 632.8

nm

He-Ne

レーザー,波長 442 nmの

He-Cd

レーザー,

波長 514.5 nmまたは 488 nmの

Ar

レーザーがある.散 乱粒子には,空気であればシリコン油や

TiO

2,メタン や空気炎であれば酸化マグネシウムなど,測定流体に応 じた粒子を使用する.近年では,舞台演出に用いられる スモークや水+グリセリン水溶液などが使用される.散 乱粒子は光散乱特性が良いことや,粒径が揃っているこ と,粒子の発生量などの調節が容易であることが望まし い.また,測定流体が高温の場合や窓ガラスなどの遮蔽 物を通して測定する場合は,測定途中で変質せず,また 遮蔽物に付着しない粒子を選択することが必要である.

2. 5 粒子画像流速測定法

粒子画像流速測定法(Particle Image velocimetry)は,

パルスレーザーの照射時間間隔ごとの散乱粒子の変位ベ クトルから流速を求める測定法である 16), 17).測定には一 般的に二次元のシート状に照射できるパルスレーザー,

散乱粒子,撮影機材が用いられ,散乱粒子を混ぜた測定 流体に照射したパルスレーザーの照射に合わせて画像を 取得する.概略図を図 14 に示す.Δtの撮影時間間隔で 散乱粒子が移動した距離

x

をすると,この散乱粒子の速 度と移動方向は

x

とΔtの商から得られる.図 15 には液 体用

PIV

の実際の測定装置写真を,図 16 にはその概略 図を示す.図 15 と図 16 では水に満ちた水槽の左側に設 置したノズルから,散乱粒子を混ぜた噴流が紙面右向き に放出される.その流れを水槽右側からパルスレーザー

I

I

I

U H

H

I Y O

VLQ T

I

Y

H

T O VLQ

図 12 レーザードップラー流速計(※実際のレーザー 光線を写真内では点線で示す。散乱粒子はレー ザー光の交差部の上にある装置から放出され,

交差部の下の煙は測定部を通過した散乱粒子で ある。装置写真は信州大学飯尾昭一郎先生のご 厚意によりここに掲載する)

図 13 LDVの原理 図 14 PIVの概略図

(7)

で点滅させながら水槽を照射し,点滅時間に合わせて手 前左にあるカメラで高速撮影する.撮影した画像はパソ コンに取り込まれ,専用のソフトウェアで解析が行われ る.解析後画像の一例を図 17 に示す.

気体用の散乱粒子には平均粒径 0.5 μmから 10 μmの ポリスチレンや各種オイル,平均粒径 1 μm未満の煙な どがあり,液体用には平均粒径 10 μmから 100 μmのポ リエチレンやガラス球,平均粒径 50

μm

から 1000 μm の酸素気泡などが挙げられる.PIVは流れ場を乱さない 非接触測定であり,流れ場を面で可視化できる点が大き な特徴である.一方,パソコンやカメラなどの撮影系装 置とレーザー光などの照射系装置の設置や調整が必要で あり,測定空間や速度,空間分解能は装置による制限が 大きい.また

LDV

と同様に,測定流体の状態や実験条 件によって,粒子の密度や粒径を選定する必要がある.

解析では 1 枚の画像に多数の粒子が写るため同一粒子の 追跡が難しく,各粒子の推定誤差を減らすための研究が 進められている.

2. 6 風洞

本節では,流速測定機器ではないが各種流体実験での 流れ場生成に必要不可欠な,空気の流れを人工的に発生 させる風洞について紹介する.風洞とは,方向と速度が 整 っ た 空 気 の 流 れ を 人 工 的 に 発 生 さ せ る 設 備 で あ

 18), 19).自動車や飛行機,建築物などの空気抵抗評価や

各種風速計の校正などに使用される.設備は大きく 5 つ の装置から構成される.流れを発生させる送風機,管路 を拡大させて送風機による乱れを軽減させる拡散胴,

メッシュやハニカム網を管路に挿入して流れる速度と方 向を整える整流胴,管路を急激に縮小させて乱れを小さ くする縮流胴,そして校正装置や測定器を設置する測定 部である.風洞の構造には図 18 に示すような測定部で の流れを再利用しない開放型と,図 19 に示すような測 定部での流れを送風機につなげて再利用する回流型の 2 種類がある.開放型には測定部が開空間になるエッフェ ル型と閉空間になる

NPL

型にさらに細分される.回流 型はプラントル型またはゲッチンゲン型とも呼ばれる.

過去の歴史を紐解くと,気体流速測定の発展は建築分 野と密接な関係がある.一例として,1889 年に建てら れたエッフェル塔の設計者

Alexandre Gustave Eiffel

(1832

-

1923)によるエッフェル型風洞の開発が挙げられ

図 15 液体用

PIV

の一例 (※装置写真は信州大学 飯尾昭一郎先生のご厚意によりここに掲載す る)

図 16 図 15 の概略

図 17 PIVによる,噴流の解析画像サンプル

図 18 エッフェル型風洞の概略図19)(筆者加筆)

(8)

る.エッフェル氏は自身が設計した巨大な橋が風によっ て崩壊したことをきっかけに,風速測定の重要性を認識 したと言われている.2010 年 3 月にはヨーロッパを襲っ た嵐によってエッフェル塔の先端で約 48 m/sを超える 風速が観測されたとの報道がある 20)が,エッフェル塔は これに十分に耐える設計であったことが伺える.なお,

エッフェル型風洞に並んで風洞設計の主流であるゲッチ ンゲン型風洞は,流体力学で最も重要な研究者のうちの 二人であるゲッチンゲン大学の

Theodore von Karman

氏(1881

-

1963) と

Ludwig Prandtl

氏(1875

-

1953) の 研究室で開発されたものである.

ゲッチンゲン型は流れを再利用するため建物内の温度 環境や気象条件の変動を受けにくいが,開放型と比べて 建設費が高く,煙などの散乱粒子使用時は管路内の洗浄 が必要である.また大型風洞の場合は,送風機の熱によ る測定流体の温度上昇を抑えるため,冷却装置が設置さ れる.一方エッフェル型はゲッチンゲン型と比べて建設 費が安いものの,流れを再利用しないため稼働時のエネ ルギー損失はゲッチンゲン型より大きい.煙などの散乱 粒子は再利用できないためゲッチンゲン型と比べて粒子 が大量に必要である.また,建物内の温度環境や気象条 件の変動を受けやすい.研究目的に適う流速測定を行う ためには,流速計の特徴を理解するのと同じぐらい風洞 の特徴を理解することが重要である.特に測定部の形状 に関しては,風洞の測定部と流れ場に挿入する測定器物 との面積比を考慮する必要がある.測定部に流速計など の器物を設置すると,流れが流速計を避けて流れるため に流れ場が乱れ,避けた流れが風洞壁面により押し返さ れるために流速が変化する.これは閉塞効果(ブロッ ケージ)と呼ばれ,同一の風洞設備であっても流速計の 構造や寸法が異なると,測定値に無視できない差が発生 する場合があるため,測定部の大きさが器物に対してど の程度の閉塞効果をもたらすのかを確認する必要があ

る.

第 3 章 わが国および諸外国の気体流速標準

3. 1 わが国における気体流速標準および気象分野にお けるトレーサビリティ体系

わ が 国 の 国 家 計 量 標 準 機 関(National Metrology

Institute,NMI) は 計 量 標 準 総 合 セ ン タ ー(National Metrology Institute of Japan,NMIJ)であり,その中に

ある計測標準研究部門気体流量標準研究室では,気体流 量および気体流速標準に関する研究が行われている.現 在の気体流速標準1)-4)は,0.05 m/sから 1.5 m/sの流速 域を扱う微風速標準と,1.3 m/sから 40 m/sの流速域 を扱う気体中流速標準である.微風速標準では地下トン ネル内に設置された走行台車を用いて,気体中流速標準 では回転円盤と

LDV

を用いて標準供給が行われる.図 20 には,NMIJにある微風速標準設備および気体中流速

図 19 ゲッチンゲン型風洞の概略図19)(筆者加筆)

図 20 NMIJが所有する気体流速標準設備

(a) 微風速標準設備である地下トンネルと走行 台車

(b) 気体中流速標準設備であるゲッチンゲン型 風洞の測定部

(a)

(b)

(9)

標準設備の写真を示す.

次に,気象分野におけるトレーサビリティ体系につい て紹介する.わが国で使用する気象観測用風速計は,気 象業務法 21)に基づき風杯型風速計,風車型風速計,超音 波型風速計が指定されており,図 21 に気象観測用風速 計の一例を示す.これらの風速計は,気象測器検定試験 センターの所有する検定用風洞にて型式証明および検定 が行われている 22).検定用風洞の測定部の写真を図 22 に示す.この風洞は一辺の長さが 60 mに近い巨大な ゲッチンゲン型風洞であり,風速計の耐久試験に用いら れる 108 m/sまでの流速が発生可能である.この検定 用風洞は微風速標準および気体中流速標準と,検定試験 センター所有の標準ピトー管と標準超音波流速計を介し てトレーサビリティが確保されている.しかし,現在 40 m/sを超える流速域では,標準ピトー管に値づけら れた 40 m/sでのピトー係数を 90 m/sまで適用してい るため,完全にトレーサビリティが確保されているとは 言いがたい.よって 90 m/sまでの流速範囲におけるト レーサビリティを確保し,流速の信頼性を高めることは 非常に重要である.

3. 2 諸外国の気体流速標準

各国

NMI

の気体流速標準について,流速範囲や所有 する標準設備を紹介する.また,2013 年 9 月に開催さ れた流量および流速標準分野の国際会議

FLOMEKO

で の講演内容も合わせて紹介する.

3. 2. 1 流速標準の CMCs

CMCs(Calibration and Measurement Capabilities)と

は,メートル条約加盟国の計量学有識者で構成される国 際度量衡委員会の相互承認協定(CIPM MRA)で登録 された,各

NMI

の校正・測定能力である.CMCsに気 体流速標準を登録する

NMI

は,2015 年 3 月末時点で表 1 に示す 13 機関6)である.これらの

NMI

は表 1 最右列 に示すような流速範囲での標準供給が可能である.表 1 に示した

NMI

の中で 40 m/s以上の大流速範囲で標準 供 給 を 行 う

NMI

は,VNIIM,NIST,PTB,LEI,VSL の 5 機関である.5 機関における拡張不確かさ(k=2)

を示した図 23 より,各

NMI

の不確かさはおよそ 0.4 % から 1.0 %の範囲にあることがわかる.よってわが国で 行う流速標準の不確かさも,これと同程度に設定するこ とが求められる.以降の節では,主要な

NMI

の気体流 速標準ならびに関連する研究について述べる.

3. 2. 2 ロシアの流速標準設備

ロシアの

NMI

である

VNIIM

では,図 24 に示すよう

なゲッチンゲン型風洞を所有している 23), 24).0.1 m/sか ら 30 m/sまでは

LDA

を用いて,5 m/sから 100 m/sま ではピトー管を用いて流速測定が行われている.ノズル 出口直径は 700 mmであり,測定部は大気開放または閉 管路を選択できる.大気開放では 0.5 m/sから 100 m/s まで,閉管路では 0.05 m/sから 50 m/sまでの流速範囲 に対応する.縮流ノズルの形状は,整った流れを発生さ せるためにヴィトシンスキー式(Vitoshinskii formula)

に基づいている.送風機は 125 kWの直流モーターを用 いており,主に電圧を調節することで流速を変更してい るが,0.05 m/sから 5 m/sまでは送風機の羽の角度を 調節している.2012 年にロシア国内での流速測定法を 定めた

GET150 -

2012 の改定に伴い,流速下限値を 0.05

m/s

まで拡張した.

3. 2. 3 アメリカの流速標準設備

アメリカの

NMI

である

NIST

は,全長 43.5 m,横幅 8.9

m

の巨大なゲッチンゲン型風洞を所有している25),26). 境界層に関する著名な研究者の一人である

Klebanoff

が 用いた風洞としても有名である.測定部の長さは 12.1

m

あり,流速範囲の変更には断面積が異なる 2 つの測 定部全体を上下に移動させる.図 25 は風洞の平面図,

図 26 は風洞立面図である.低流速用測定部は 0.2 m/s 図 21 左から,気象用観測用の風杯型,風車型,超音

波式風速計

図 22 気象測器検定試験センターが所有する検定用風 洞の測定部

(10)

表 1 CMCに気体流速標準を登録する

NMI

6)

&RXQWU\ 10, 502 $LUVSHHG>PV@

5XVVLDQ)HGHUDWLRQ

ǰȟȓȞȜȟȟȖȗȟȘȖȗțȎ ȡȥțȜȖȟȟșȓȒȜȐȎȠȓ șȪȟȘȖȗȖțȟȠȖȠȡȠ ȚȓȠȞȜșȜȑȖȖȖȚDz

ǶǺȓțȒȓșȓȓȐȎ 91,,0

&220(7 WR

8QLWHG6WDWHV

1DWLRQDO,QVWLWXWH RI6WDQGDUGVDQG

7HFKQRORJ\

1,67

6,0 WR

*HUPDQ\

3K\VLNDOLVFK 7HFKQLVFKHQ

%XQGHVDQVWDOW 37%

(85$0(7 WR

/LWKXDQLD /LHWXYRV (QHUJHWLNRV

,QVWLWXWDV/(, (85$0(7 WR

1HWKHUODQG 9DQ6ZLQGHQ /DERUDWRULXP

96/ (85$0(7 WR

$XVWULD (((OHNWURQLN

(( (85$0(7 WR

)UDQFH

/DERUDWRLUH QDWLRQDOGHPp WURORJLHHWGHVVDLV

/1(

(85$0(7 WR

-DSDQ

1DWLRQDO 0HWURORJ\

,QVWLWXWHRI-DSDQ 10,-

$303 WR

7XUNH\

8/86$/

0(752/2-ú (167ú7h6h

80(

(85$0(7 WR

'HQPDUN 'DQLVK 7HFKQRORJLFDO

,QVWLWXWH'7, (85$0(7 WR

&KLQHVH7$,3(, ,75,&HQWHUIRU 0HDVXUHPHQW

6WDQGDUGV&06 $303 WR

.RUHD5HSXEOLFRI

.RUHD5HVHDUFK ,QVWLWXWHRI 6WDQGDUGVDQG 6FLHQFH.5,66

$303 WR

6ZLW]HUODQG

'DV(LGJHQ|

VVLVFKH,QVWLWXWIU 0HWURORJLH

0(7$6

(85$0(7 WR

(11)

から 45 m/sの流速に対応し,測定部の断面は高さ 2.1

m×横幅 1.5 m

である.高流速用測定部は 0.2 m/sから

75 m/sの流速に対応し,くびれた部分の断面は高さ 1.2

m×横幅 1.5 m

である.図 27 には高速流用測定部の写

真を示す.また実用標準は

LDA

であり,この

LDA

は回 転円盤を用いた校正によって

SI

へのトレーサビリティ を確保する.回転円盤の外周には直径 5 μmの金属線が 回転軸と平行に取り付けられる.NISTにおける回転円

盤とこれを用いた

LDA

の校正の様子を,図 28 に示す.

現在は,LDAによる不確かさの減少および

PID

流速 制御を用いたデータ取得方法の改良に関する研究が行わ れている.風洞測定部における流速分布は図 29 に示す ようなトップハット状をしており,壁面に近い領域で は,下流に向かうほど境界層が発達する.測定部の中心 付近は流速が一定となる安定した領域(Safe Calibration

Region)であるため,NIST

ではこの領域に校正器物を

設置する.図 30 に示すような測定断面上での流速分布 を測定し,この領域における流速の安定性を詳細に検討 していた.今後は校正時の風洞における閉塞率の議論を 進めること,また,ピトー管を流速モニター用の標準と することを予定している.

3. 2. 4 ドイツの流速標準設備

ドイツの

NMI

である

PTB

が所有するゲッチンゲン型

図 25 NISTにおける風洞の平面図25)(筆者加筆)

図 26 NISTにおける風洞の立面図25)(筆者加筆)(※中 央に並列してあるのが測定部である)

図 27 NISTにおける風洞の側面写真 (※中央に写る のは高流速用測定部である)

図 24 VNIIMにおけるゲッチンゲン型風洞23),24)(筆者 加筆)

(a)写真23)

(b) 平面図24)(※ 1,3,4,5,6 は配管,2 は 送風機,7 は前方室,8 はノズルである)

(a)

(b)

図 23 40 m/s以上の流速範囲における各

NMI

の拡張 不確かさ(k=2)

(12)

風洞を図 31 に示す27).この風洞では校正可能な最大流 速である 65 m/sが供給可能である.製作当時はガス メーター校正設備の送風機を駆動源とするエッフェル型 であったが,近年改装し,現在の風洞設備となった.測 定部へ整った流れを供給する縮流ノズルの出口直径は

320 mmである.測定部を覆うように 6 枚の平面ガラス が設置されてあり,レーザードップラー流速計を使用す る際には全ガラスを閉じて閉管路とする.一次標準は高 精度の回転円盤であり,実用標準はレーザードップラー 流速計である.

3. 2. 5 リトアニアの流速標準設備

リトアニアの

NMI

である

LEI

の風洞は回流式であり,

校正可能な流速範囲は 0.05 m/sから 60 m/sである 28). この風洞はドイツの

NMI

である

PTB

に対してトレーサ ビリティが確保されており,標準ピトー管とレーザー ドップラー流速計を校正器物としている.また,実用標 準として超音波流速計が用いられる.図 32 に概要を示 す.

図 29 NISTの風洞測定部における流速分布の発達過 程イメージ25)

図 28 NISTにおける一次標準である回転円盤とその 校正の様子25)

図 30 NISTの風洞測定部における測定断面の詳細25)

(※直径 9 mmの

L

型ピトー管が,壁から 0.2 m 離れた位置に設置されている)

図 31 PTBにおける最大 65 m/sまでの流速校正が可 能なゲッチンゲン型風洞27)(筆者加筆)

(13)

3. 2. 6 オランダの流速標準設備

オランダの

NMI

である

VSL

の風洞は,32 m 3

/h

から 15000 m 3

/h

の範囲で校正が可能な気体流量校正設備を 併用している 29).気体流量校正設備が発生した流量は,

図 33 に示される直径 200 mm,380 mm,400 mm,500

mm

および 600 mmに変更可能な円錐台形状ノズルへ供 給される.この流量と,出口断面における差圧(流速)

分布の円積分から算出する積分流量との比較より,流速 を求める.校正可能な流速範囲は最大 50 m/sである.

この風洞におけるトレーサビリティは気体流量設備の流 量へとつながることから,他の機関における流速標準設 定とは異なる原理である.

3. 2. 7 オーストリアの流速標準設備

オーストリアの

NMI

である

E+E

での流速校正範囲 は 0.04 m/sから 40 m/sであり,11 mWの

He-Ne

レー ザー(波長 632.8 nm)による

LDA

を用いた標準設定が 行われている30).0.04 m/sから 2 m/sを扱う低流速用風 洞と,0.3 m/sから 40 m/sを扱う高流速用の 2 種類の 風洞を所有している.低流速用および高流速用風洞で用

いられる

LDA

はドイツの

NMI

である

PTB

で校正され ており,流速に対する不確かさは 0.2 %以下である.最 近の校正によれば,干渉縞間隔の変化量は年間平均で 0.015 %未満である.低流速用風洞は図34に示すような,

流れ方向が鉛直下向きのエッフェル型風洞で,測定部の 断面は一辺 0.25 mの正方形である.また,高流速用風 洞は図 35 に示すゲッチンゲン型であり,測定部が大気 に開放されている.絞り比が直径比で 4:1 のノズルを使 用し,その出口直径は 0.255 mである.また,測定部の 流れ方向の長さは 0.3 mであり,測定部の 90 %の領域 では乱れ強さが 0.15 %から 0.5 %の範囲に収まる.高流 速用風洞では煙突内部の測定環境を模擬するため,流体 温度を 5 ℃から 80 ℃まで設定できる.図 36 には

LDA

による校正の様子を,図 37 には測定部の校正器物と

LDA

の配置を示す.散乱粒子として,平均粒径 1 μmの

図 33 VSLにおける円錐台形状ノズルと測定部29)(筆 者加筆)

図 32 LEIにおける測定部の概要28)(筆者加筆)(※ 1 は温度調節系,2 は電気ユニット,3 はパソコン,

4 は小縮流ノズル,5 は金属格子,6 は主縮流ノ ズルである)

図 35 E+Eにおける高流速用ゲッチンゲン型風洞30)

(筆者加筆)

図 34 E+Eにおける低流速用エッフェル型風洞30)(筆 者加筆)

(14)

油滴である

DEHS

が用いられる.

最近では校正器物による閉塞効果を評価した実験を 行 っ て い る. 一 例 と し て,2 種 の 超 音 波 式 流 速 計

(EURAMET P827,EURAMET P1050) と ピ ト ー 管

(EURAMET P1050)を下流方向(図 37 に示す

y

方向)

に移動しながら流速を測定し,LDAの測定値と比較を 行っていた.今後はこれらの比較測定から不確かさ評価 を行い,閉塞効果を考慮した校正を実施する予定であ る.

3. 2. 8 フランスの流速標準設備

フランスの

NMI

である

LNE

は,図 38 に示す最大流 速 40 m/sの校正が可能なゲッチンゲン型風洞を所有し ている31).測定部の長さは 1 mで,その断面は 510 mm

×560 mmの長方形である.測定部の天井と底は平行だ が,側面は境界層の発達による流速増加を打ち消すため に,わずかに上流から下流に向かって広がった形状を持 つ.

LNE

では,風洞測定部に置かれた校正器物ごとの閉 塞効果に関する研究が行われている.一例として,ピ トー管や羽根型など 4 種類の流速計周囲に発生する流速 分布を

LDA

で実際に測定し,さらにこれらの測定条件 を模擬した数値計算結果から両者を比較した.その結

果,両者の結果は良く一致していることがわかった.加 えて,ダクト内を想定した流速計測では閉塞係数が測定 値に大きな変動を与えるため,数値計算の初期条件には 多様な閉塞係数に対応した測定領域を設定することで,

実験を行うより簡易に同等の結果が得られることもわ かった.

3. 2. 9 中国の流速標準設備

中国の

NMI

である

NIM

では,0.2 m/sから 30 m/s における気体流速標準を設定するためのエッフェル型風 洞を新たに整備した 32), 33).この風洞は全長が 6.8 mであ り,縮流ノズルの形状は

Vischinski shape carve

を採用 している.ノズル出口の直径は 200 mmである.図 39 には風洞の写真を,図 40 には風洞の概要を示す.この 風洞が発生する標準流速は,図 41 に示す直径 5 μmの タングステンを張った回転円盤を用いて校正した

LDA

図 37 E+Eの高流速用風洞での測定部の配置30)

図 36 E+Eの高流速用風洞測定部30)

図 38 LNEにおけるゲッチンゲン型風洞31)(筆者加筆)

図 40 NIMにおけるエッフェル型風洞の概要32)(筆者 加筆)(※ 1 は散乱粒子および流入する流れ,2 は流入口,3 は縮流ノズル,4 は測定部,5 は

LDA

用レーザー光源,6は校正器物,7は拡散胴,

8 は送風機を示す)

図 39 NIMにおけるエッフェル型風洞33)

(15)

で測定する.LDAで使用するレーザー波長は 514.5 nm,

散乱粒子は

ACETONE(C

3

H

6

O)である.この校正によ

り,LDAの測定領域にある干渉間隔の拡張不確かさ(k

=2)は,0.3 %未満であることが示された.また,二次 標準である熱線流速計およびピトー管は,それぞれ 0.2

m/s

から 5 m/sおよび 5 m/sから 30 m/sの流速域で用 いられ,測定部の面積に対する閉塞効果が無視できるも のを用いている.

最近では,測定部内で流速の乱れが最小となる計測位 置を決定するため各種実験を行っている.一例として,

測定器の位置を変えながら,校正器物が示す流速とノズ ル出口から 50 mm下流の測定位置における

LDA

が示す 流速差を求めていた.その結果,0.2 m/s,0.5 m/s,2

m/s,10 m/s,25 m/s

の設定流速において,ノズル出

口から 100 mm下流の位置での流速差が最も小さく,最 適な計測位置であることがわかった.

3. 2. 10 韓国の流速標準設備

韓国の

NMI

である

KRISS

は,2 m/sから 15 m/sま での流速範囲が校正可能なエッフェル型風洞を所有す る 34).図 42 に風洞の概要を示す.風洞測定部の長さは 6 mであり,その断面は一辺 0.9 mの正方形である.測 定部における流れの乱れ強さは 0.5 %未満であり,流速 の拡張不確かさ(k=2)は流速 2 m/sから 5 m/sで 1.1

%未満,流速 5 m/sから 15 m/sで 0.6 %未満である.

KRISS

では煙突内の流速測定に使用される

S

型ピトー

管を対象とした,設置条件ごとのピトー係数を評価して いる.S型ピトー管は煙突での気体流速測定に最も使用 される測定器で,図 43 に示すように一般的な

L

型ピトー 管より圧力孔が広く,管の強度が強いことが特徴であ る.今回は

S

型ピトー管と

L

型ピトー管を測定部内に 図 42 に示すように対面させて設置し,S型ピトー管の ピッチ角およびヨー角を変動させた際のピトー係数を測 定した.その結果,ピッチ角が±10 度に近づくとピトー 係数は減少し,変動するピッチ角の正負やレイノルズ数 の変動に対して対称性が見られることがわかった.ま た,ヨー角が-10 度に向かって減少するにつれてピトー 係数は減少することがわかった.

3. 2. 11 イタリアの流速標準設備

イタリアの

NMI

である

INRIM

では流速標準に関す

図 42 KRISSにおけるエッフェル型風洞の概要と

S

型ピトー管の設置条件詳細34)(筆者加筆)

図 41 NIMにおける

LDA

校正用の回転円盤32)

(16)

CMC

登録を行っていないが,中流速域に対応する新 たな風洞が整備された35).以前は 0.5 m/sから 25 m/s の流速が発生可能な風洞があり,性能評価にはピトー管 を用いていた.また,イタリアの圧力国家標準からト レーサビリティを確保していた.この風洞は

Galleria del Vento Piccola(Small Wind Tunnel) の 略 称 で GVP

風洞と呼ばれており,図 44 に示すようなエッフェル型 風洞である.半開式の測定部を持ち,モーターと送風機 は測定部の下流側に設置される.GVP風洞の校正には イタリアの長さ国家標準及び時間国家標準とトレーサブ ルな

LDA

を使用し,通常は縮流ノズルの差圧を用いて 流速を測定する.LDAによる測定より,この

GVP

風洞 が発生可能な速度は最大 35 m/sであることがわかった.

最近では,熱線流速計を用いた

GVP

風洞の性能評価 を行っている.一例として,ノズル出口面から下流にお

ける断面での流速分布および乱れ強さの測定を行ってい た.図 45 には測定軸に沿って 0.1 m下流側に設置した 熱線流速計と測定部の写真を示す.測定結果より,熱線 流速計から得た乱れ強さは最大 0.6 %程度であることが わかった.一方,設定流速 12.5 m/sでは下流になるほ ど乱れ強さが増加する傾向が見られ,気流による渦が衝 突している可能性が考えられる.また,熱線流速計を測 定断面上で移動させた場合,低速流では乱れ強さが変化 したが,高速流ではほとんど変化しないことがわかっ た.

INRIM

では,回転腕と

LDA

を用いた微小流速標準の

設定に関する測定にも力を入れている36).長さ 3.5 mの 回転腕は図 46 の右側にあり,流速計は回転腕の先端に 設置する.校正の前準備として実験室内に

LDA

用の散 乱粒子を充満させ,充満後に 10 分間待機して室内の空 気の流れを停止させる必要がある.流速範囲は 0.10 m/s から 5.0 m/sであり,回転速度と流速計までの半径から 標準流速を求め,流速計を校正する.最近は羽根型流速

図 44 INRIMにおける

GVP

風洞35)

図 43 S型ピトー管の仕様34)

図 46 INRIMの微小流速標準設定のための設備36)

図 45 INRIMが整備した

GVP

風洞の測定部35)

(17)

計を回転腕上に設置し,巻き込み効果による流速変動の 評価を行っており,測定した結果より,0.1 m/sから 3

m/s

の流速範囲では巻き込み効果の再現性が高く,そ の大きさは流速計の大きさに依存することがわかった.

今後は他の原理に基づく流速計でも同様の測定および評 価を実施する予定である.

第 4 章 NMIJ における気体大流速標準の設定案

本章では前章までの内容を踏まえて,わが国における 気体大流速標準の設定方針とその方法について解説す る.

4. 1 気体大流速標準設定の指針 4. 1. 1 流速標準設備の種類

流速標準を供給するための流速計校正設備は,大きく 分けて 2 種類ある.1 つは回転腕や走行台車のように,

停止した流体中で校正器物(DUT)を移動させる方法 であり,もう 1 つは固定した

DUT

の周囲に風洞を用い て流れを発生させる方法である.前者は移動速度を測定 することで,後者は風洞内の流速を測定することで

SI

へのトレーサビリティを確保する.本標準の設定におい ては対象となる流速が大きいため,測定器を移動させる 前者の方法では設定が困難である.したがって,風洞を 用いた後者の方法を採用する.

4. 1. 2 風洞を用いた流速標準設定

風洞を用いた流速標準設定を行うためには,風洞内部 の流速を

SI

へのトレーサビリティが確保できる方法で 測定する必要がある.近年,流速標準設備の設定では レーザードップラー流速計(LDVまたは

LDA)が最も

一般的に用いられる.LDVを使用するには流体中に散 乱粒子を注入する必要があり,特に本標準の目指す最大 90 m/sの大流速域では極めて大量の散乱粒子が必要と なるため,環境的にも経済的にも導入が難しい.よって 我々は

SI

トレーサビリティ確保のために,LDVを用い た流速測定ではなく,風洞内を流れる体積流量の測定を 考える.この方法は流速同士の比較による校正ではな く,測定した流速と断面積の積による体積流量と,設備 に供給される標準体積流量との比較による校正である.

風洞に与える体積流量に

SI

トレーサビリティが確保さ れていれば,体積流量から流速への

SI

トレーサビリティ が確保される.

4. 2 気体大流速標準設備の測定方法

4. 2. 1 閉ループ式流量計校正設備における流速発生方

NMIJ

が所有する閉ループ式流量計校正設備では,大 気圧を含む加圧状態で 1000 m 3

/h

までの体積流量を試験 管路内に発生させることができる.この流量値は気体中 流量国家標準である定積槽で校正された複数の臨界ノズ ルを参照基準とするため,SIトレーサビリティが確保 される.設備の試験配管の一部を室内に開放し,開放部 分の上流側に出口直径が 60 mmの円形ノズル(流量流 速変換ノズル)を取り付けることで 100 m/s近い流速 を持つ噴流を発生させる.すなわち,

Q

maxは 1000 m 3

/h,

ノズル半径

r

は 30 mmとすると,ノズル出口の断面平 均流速νmaxは以下のとおり求められる.これより,最大 90 m/s程度の流速が理論上発生可能となる.

PD[ PD[

| U

Y 4 S m/s

この噴流の流速分布を精密に測定することで,設備が 発生した流量値を上位標準として

SI

にトレーサブルな 流速値に変換する.ただし流量流速変換ノズルの直径が 60 mmと小さいため,流速分布の測定にはピトー管や 熱線流速計など,プローブ断面積が小さく空間分解能が 高い測定器が必要となる.また,流量流速変換ノズル周 囲は静止した室内空気のためノズルによる噴流で空気が 噴流に引き込まれ,噴流外縁部に伴流が発生する.その ため,噴流断面における体積流量値はノズル出口から下 流側に離れるほど増大する.次に,噴流外縁部の流速分 布を精密に測定するためには噴流の外側までプローブを 移動させる必要がある.さらに,プローブの断面積によ る閉塞効果を低減させるために,測定断面をノズル出口 からある程度下流側に離す必要がある.

これらの条件を考慮し,ノズルに供給された体積流量 を用いて正確な流速値を求めるためには,ノズル出口よ り下流側かつ伴流による噴流の流量増加を受けない測定 断面位置を選ぶ必要がある.ノズル出口から下流方向に 測定断面を変えながら流速分布を測定し,伴流による流 量変化が無いとみなされる位置を求めるなど,実測によ る検討が必要となる.

4. 2. 2 流速分布の測定方法

本標準設定における噴流断面の流速分布測定では,想 定される流速は 0 m/sから最大 90 m/s程度までの広範 囲に及ぶ点,必要な空間分解能は断面内の位置によって 異なる点を考慮する必要がある.

熱線流速計は出力電圧と流速との校正曲線を得ること

(18)

で本設定に必要な広範囲の流速測定に対応できる.ま た,高い空間分解能を得るにはプローブの長さ方向を正 確に噴流境界の接線方向に向けることで実現できる.一 方,本設定で行う流速分布測定は 1 回数時間に渡ると想 定されるため,噴流中の塵などの付着により予期せず特 性が変化する可能性を考慮する必要がある.これに対 し,ピトー管は特性が長期にわたって非常に安定してい るが,低速域では差圧の測定分解能が低下するため適応 しがたい.また,断面直径が最低でも 1 mm程度あるた め,空間分解能は熱線流速計に比べて低い.

そこで,噴流断面内の流速が整った中心部では主とし てピトー管を,流速勾配が大きいため高い空間分解能が 必要となる噴流の境界部では主として熱線流速計を用い ることで,両者の長所を生かす測定方法を考える.この 方法では噴流断面全体にわたって信頼性の高い流速分布 測定が可能であり,さらに熱線流速計から得られる流れ の乱れ強さは流速や流れ場の安定性を示す指標として扱 うことができる.

4. 2. 3 流量流速変換ノズルでの流速分布測定

気体大流速標準を設定するためには,前述のとおり校 正設備が供給する標準体積流量を流速に変換するノズル

(流量流速変換ノズル)が必要である.本ノズルの目的 は,標準体積流量から発生する標準流速値を長期安定性 の優れた移転標準器に移すことであるため,仮設の設備 で十分である.流量流速変換ノズルは閉ループ式流量計 校正設備の試験管路に取り付ける.実験室内の大気を吸 入して再び室内に放出することにより,温度一定に調節 した実験室内の空気を循環させる.図 47 に閉ループ式 流量計校正設備と設備に取り付けた流量流速変換ノズル の写真と概要を示す.

流量流速変換ノズルに供給される質量流量は,国家標 準で直接校正された複数の臨界ノズルを用いて発生させ る.設備内の流れは定常流であるため,測定対象である 噴流の質量流量は臨界ノズルが発生する質量流量に等し い.気流温度調整器で流量流速変換ノズル上流側の管路 内の温度を一定に保つことで,流量流速変換ノズル内の 流体温度はノズルの十分上流側で測定できる.これによ り,流体中に挿入する温度センサがもたらす気流の乱れ を低減させることができる.次に,流量流速変換ノズル 出口での流体密度を求めるために,出口に静圧孔を設け て噴流の静圧を測定する.また,室内環境条件を測定す るために,大気圧,温度,湿度を測定する.

流量流速変換ノズルの絞り形状は噴流断面の流速分布 を整えるために十分大きな絞り比を持たせ,流速分布の 軸対称性を確保するために精度良く製作する必要があ

る.さらに,指定の噴流断面での流速分布を測定するた めに,流速分布を極力乱さないように考慮したトラバー ス装置が必要である.このトラバースを用い,指定の断 面にわたって流速をピトー管および熱線流速計で測定す る.熱線流速計の特性が測定中に変化した場合であって も,噴流の中心部分でピトー管により測定された値を参 照すれば,その変化の検出や補正が可能である.噴流断 面における流速を面積にわたって円積分することで体積 流量値を求め,設備が供給する標準質量流量と流量流速 変換ノズル出口での流体密度を用いて求めた噴流の体積 流量に等しいとすると,流速が一意に決定する.ピトー 管と熱線流速計は同時に測定できないため,校正設備に は質量流量の高い再現性が求められる.図 47 に示す校 正設備は世界的にも最も安定して流量を発生できる設備 の1つであり,流量の再現性に問題は無いと考えられる.

以上を踏まえ,本設備におけるモデル式を算出する.

図 47 流量流速変換ノズルを設置した閉ループ式流量 計校正設備

(a)写真

(b)設備概要

(a)

(b)

(19)

はじめに,流量流速変換ノズルに供給された質量流量と 噴流断面における流速の間には,次式の関係が成り立 つ.

(4.1)

ここで,νnは流速

[m/s],r′ は噴流半径 [m],Q

mは噴 流の質量流量

[kg/s],ρ

nは流体の密度

[kg/m

 3

],Q

Vnzは 噴流の体積流量

[m

 3

/s]

である.次に,移転標準用ピトー 管を用いて噴流内の流速を測定するとき,流速は式

(4.2)で与えられる.

(4.2)

C

tは移転標準用ピトー管のピトー係数,ΔPpitはピトー 管に発生した差圧分布

[Pa]

である.測定した流速分布 の積分値を

Q

V int egとすると,Ctは次式で求められる.

(4.3)

式(4.3)において,QVnzとρnの不確かさは校正設備の 不確かさよりおおよその推定が可能なため,ΔPpitを精 密に測定することが不確かさの大きさを決める重要な要 因であることがわかる.式(4.2)および式(4.3)が,

閉ループ式流量計校正設備におけるモデル式である.ま た,流速測定に用いた移転標準用ピトー管を用いて,後 述の大流速校正風洞を校正する.

4. 2. 4 大流速校正風洞での流速測定

流量流速変換ノズルで設定した標準流速値を恒常的に 供給するためには,閉ループ式流量計校正設備とは独立 した校正風洞が必要となる.標準供給に用いる校正風洞 から安定した噴流が発生可能で,さらに設備の小型化や 建設コストを考慮すると,エッフェル型風洞が適する.

以上より

NMIJ

では,図 48 に示すエッフェル型風洞を 大流速校正風洞として用いる.全長は 8.4 m,ノズルの 出口直径は 100 mmである.ノズル直径が流量流速変換 ノズルより 40 mm大きくなるため,より大きな流速計 も扱うことができる.

以上の設備を踏まえ,大流速校正風洞での不確かさモ デル式を算出する.本風洞では,ノズルの入口および出 口に設けた静圧孔による差圧(ノズル差圧)を,測定部 における流速の指標として扱う.具体的には,大流速校 正風洞が発生する噴流中心部の流速を,移転標準用ピ トー管で測定し,ノズル差圧と対応づける.これにより,

第 2 章で記述したベルヌーイの定理より,ノズル差圧に 対応する流速の補正係数

C

WTが次式で得られる.なお,

測定流体は実験室内の大気を用い,大気圧,温度,湿度 は測定部周囲で測定する.

(4.4)

ここで,ΔPWTはノズル差圧である.CWTが得られるこ とで,移転標準用ピトー管を取り外した後でも,ΔPWT

から標準流速が得られるようになる.校正風洞を独立し た標準流速発生装置とすることができ,この噴流中に置 いた一般の流速計の校正が可能となる.次に,校正器物

(DUT)としてピトー静圧管を想定した際の,校正時の 不確かさモデル式を算出する.今回は.前述のベルヌー イの定理より,大流速校正風洞における

DUT

のピトー 係数は,次式で表される.

(4.5)

ここで,ΔPDUT

DUT

から得られる差圧である.以上 より,式(4.4)および式(4.5)が,大流速校正風洞に おけるモデル式である.ただし,この 2 式を用いるため には流体の密度が等しいことが前提であるため,ΔPWT

とΔPpit,ΔPWTとΔPDUTを同時測定する必要がある.

第 5 章 おわりに

本調査報告では,我々の生活に密接な気体流速に関し て調査を行い,標準整備が必要である気体大流速域の標 準設定と方法について検討した.はじめに,気象分野で の風速測定の現状や近年の新たな流速測定方法の普及,

国際的な整合性確保の観点から,わが国では最大 90 m/s 程度の標準整備が必要であることがわかった.次に,流 速測定方法として各種流速計の測定原理と特徴をまと め,各

NMI

における

CMCs

登録内容や標準設備の概要,

Q SLW W Q

& 3

Y U

'

:7 SLW W

:7

3

& 3

& '

'

'87 :7 :7

'87

3

& 3

& '

'

図 48 大流速校正風洞

(a)写真

(b)設備概要

(a)

(b)

(20)

近年の動向を紹介した.特に,40 m/s以上の流速範囲 での標準供給はロシアの

VNIIM,アメリカの NIST,ド

イツの

PTB,オランダの VSL,リトアニアの LEI

の 5

機関で行われていた.また,これら 5 機関の大流速での 範囲における拡張不確かさ(k=2)はおよそ 0.4 %から 1.0 %であり,わが国でも同程度の拡張不確かさを目標 とすべきであることが確認できた.近年の動向を調査す る中で,各国の主要産業分野の発展を後押しするような 研究が多数行われており,流速域の拡大や不確かさ提言 に通ずる計測技術の検討は,わが国だけでなく各

NMI

共通の課題であった.

以上の調査結果を踏まえ,NMIJで設定すべき大流速 標準の設定案を議論した.わが国では 40 m/sから 90

m/s

までの流速標準が必要であるが,回転円盤と

LDV

を用いた標準設定では流速での

SI

トレーサビリティ確 保が困難であると想定されたため,最大 98 m/sまでの 流速が発生可能な既存の流量標準設備を用いた,気体流 量からのトレーサビリティ体系を提案した.流量標準設 備から正確な流量を流量流速変換ノズルに供給し,ノズ ルから発生する噴流の流速分布を精密測定することで,

大流速域での標準設定が可能であることを示した.ま た,流量標準設備と恒常的な標準供給体制を確立するた めの校正風洞における不確かさについても概説し,標準 設定の方針を確認した.

謝辞

本調査研究を行うにあたり,ご指導・ご助言を頂きま した寺尾吉哉 流量計測科長,石橋雅裕 気体流量標準研 究室長,栗原昇 主任研究員,舩木達也 主任研究員,な らびに気体流量標準研究室の皆様に深く感謝いたしま す.

参考文献

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参照

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