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  福島県での保育士研修の評価

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II.   分担研究報告

(2)
(3)

厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)

原子力災害からの回復期における住民の健康を支える保健医療福祉関係職種への 継続的な支援に関する研究

分担研究報告書

福島県での保育士研修等の評価

研究代表者  山口一郎  国立保健医療科学院 分担研究者  奥田博子  国立保健医療科学院 分担研究者  欅田尚樹  国立保健医療科学院 分担研究者  志村 勉  国立保健医療科学院 分担研究者  寺田  宙 国立保健医療科学院 分担研究者  堀口逸子 長崎大学

研究協力者  岡田光彦 国立保健医療科学院 研究協力者  王子野麻代  日医総研 

研究協力者  大夛賀政昭 国立保健医療科学院 研究協力者  川崎千恵 国立保健医療科学院 研究協力者  後藤あや 福島県立医科大学 研究協力者  松田尚樹 長崎大学

研究要旨

福島県と共に取り組んできた保育士対象の研修や東京都で実施した講習会の評価を 行うとともに、昨年度の厚労科研で作成した資料の評価を行った。また、災害後の地域 保健活動での展開の可能性を探るためにフォトボイスを試みた。 

その結果、これまで実践してきた研修の枠組みが機能していること、教材が活用しう ることを検証した。また、行政の取り組みとして、保健師活動の原点に立ち戻るととも に、PDCAサイクルを念頭に置き組織で取り組むことの有用性を確認した。 

原子力災害からの回復期からの地域保健活動では倫理的な課題との関連が切り離せ ないものとなる。現場での課題は、放射線そのものの知識や放射線リスクの知識だけで は解決できる単純なものではなく、「リスク認知」の社会的・規範的次元を超えた、倫 理的・法的・社会的問題(ELSI)への対応が保健福祉分野でも迫られ、それが心理的な負 担につながる構造にもあるため、倫理的な側面を重視すると共に異なる専門領域間での コミュニケーションを促進させることが重要となると考えられた。

(4)

目次

. 研究目的 ... 13

. 研究方法 ... 13

B.1

  福島県での保育士研修の評価

... 13

B.2

  研修用資料の評価

... 13

B.3

  相談員制度を機能させるために保健医療福祉分野のスタッフの関わりのあり方 の検討

... 13

B.

4  フォトボイスの適用可能性の評価

... 14

B.

5  東京都の関係業務支援

... 14

. 研究結果 ... 14

C.1

  福島県での保育士研修の評価

... 14

C.1.1.

平成

26

年度の研修会の評価

... 14

平成

26

年度の研修会は県内

3

箇所でそれぞれ

3

日間の日程で開催された。参加者 数は

52

名であった。フォローアップ研修は県内

1

箇所で

1

日間の日程で開催され

21

名が参加した。フォローアップ研修の概要は別紙に示す。

... 14

研修の全体の流れ

... 15

C.1.2.

研修会をスタートさせる時点での評価とその後の実施状況との比較

... 19

C.1.2.

国で新たに整理されたリスク・コミュニケーションの考え方の適用

... 22

C.1.3.

医師会など地域の職能団体との連携

... 24

C.2

  研修用資料の評価

... 26

C.3

  相談員制度を機能させるために保健医療福祉分野のスタッフの関わりのあり方 の検討

... 28

C.

4  フォトボイスの適用可能性の評価

... 29

C.

5  東京都の関係業務支援

... 30

. 結論 ... 30

. 健康危険情報 ... 32

F.研究発表 ... 32

G.知的財産権の出願・登録状況 ... 32

   

(5)

 

A. 研究目的

自治体共に実践的な活動を展開すると共 に、作成した資料の評価、新しい試みに評 価を行うことを目的とした。

B. 研究方法

B.1  福島県での保育士研修の評価

  福島県保健福祉部子育て支援課と連携 して保育士等を対象とした研修を実施し、

その研修の評価を行うと共に、地域での活 動の課題の整理を試みた。

  この実践的な取り組みは、平成23年度に 厚労省が福島県内で実施した専門職のため の「放射線と健康」セミナーに引き続いて 行われた平成24年度の厚労科研特別研究に おける福島県でのリハーサル研修会、平成 25、26年度福島県保健福祉部子育て支援課 主催の「ふくしま保育元気アップ緊急支援 事業相談支援者育成研修会」において展開 されたものである。平成26年度は、福島県 立医大(放射線医学県民健康管理センター、

放射線健康管理学講座、災害こころの医学 講座、公衆衛生学講座、放射線医学講座)、

除染情報プラザ、福島県医師会小児科医会 の市川陽子先生、菊池信太郎先生、国立成 育医療研究センターの原田正平先生、福島 県作業療法士会の岡本宏二先生など多くの 方の協力を頂いた。また、フォローアップ 研修では、日本放射線安全管理学会の会員 の協力を得た。昨年度までの開催では、そ の他に、市民科学研究室の上田昌文先生、

消費者庁、国立精神神経センター、長崎大 学、福島県臨床心理士会の成井香苗先生、

伊達市など地域で活動なさっておられる半 谷輝己氏の協力を得ていた。この保育士研 修の参加者を対象にした事後アンケート及 び参加者に対する事後インタビュー調査を 実施した。このうち、フォローアップ研修 の評価及び参加者に対する事後インタビュ ー調査は特定非営利活動法人 パブリック アウトリーチの協力を得て実施された。

B.2  研修用資料の評価

本研究課題での成果物は、関係職員等の研 修として活用されることが想定されている。

作成している資料や実施している取組が現 場で活用しうるかどうかについて、アンケ ートやインタビュー調査等を実施し、評価 した。これらの調査の一部は、特定非営利 活動法人 パブリックアウトリーチの協力 を得て実施された。

B.3  相談員制度を機能させるために保健 医療福祉分野のスタッフの関わりのあり方 の検討

  相談員を保健医療福祉関係者が担う、も しくは協力する際の、関係者のあり方や関 係者への支援のあり方・具体的なツール開 発に資するために、保健活動の視点からの 地域活動のレビューを行った。対象は、伊 達市の健康福祉部健康推進課での原子力災 害対応での対人保健活動とし、担当する職 員のインタビュー調査を行った。

  具体的には、福島県伊達市において、現 場での活動を視察するとともに(平成26年 11月26日)、住民に対して放射線リスクに

(6)

関するコミュニケーションに係る事業を実 施している行政職員である保健師を対象に 半構造化インタビューを実施した(平成27 年2月2日)。

  質問内容は、組織構成、行政職員以外の 者で放射線リスクに関するコミュニケーシ ョンに係る事業に従事している者の状況、

放射線リスクに関するコミュニケーション に係わる地域資源の状況、放射線リスクに 関するコミュニケーションを実施する上で の工夫・今後の課題とした。

  インタビュー調査の実施にあたっては、

説明文書および同意文書を用いて本研究の 趣旨・目的・個人情報の保護・結果の公表 の仕方を説明し、同意を得た。

  また、同市の地域的な状況については、

ホームページや市から提供いただいた資料 を整理することで取りまとめた。

B.4  フォトボイスの適用可能性の評価   更なる展開を求めて、米国EPAで活動例 が紹介されている PhotoVoice 手法123の有 効性に関して評価する。フォトボイスは、

住民の方に気になっていることを撮影して

1 Lucy Annang. Using community-based approaches to address the needs and as- sets of a community post-disaster: The story of Project R.I.S.E. APHA 140th An- nual meeting. 2012.

2 Lucy Annang et al.Mental health con- cerns in a rural community post-disaster . APHA 140th Annual meeting. 2012.

3 Lucy Annang et al.Perspectives on emergency response from healthcare providers and community residents: Lo- cal disaster with global implications.

APHA 140th Annual meeting. 2012.

頂き、撮影者をとりまく状況やニーズを住 民の方が撮影された画像から把握する手法 である問題を共有する手法として環境汚染 を伴う災害からの地域コミュニティの回復 過程でも活用されている。この調査は、特 定非営利活動法人 パブリックアウトリー チの協力を得て実施された。

B.5  東京都の関係業務支援

    平成 26 年度  東京都健康安全研究セ ンター  環境保健衛生講習会「放射線の測 定値の見方、考え方」の企画・運営に協力 し、参加者からの評価を得た。講習会は、

平成27年2月に開催された。

(倫理面での配慮) 

本調査は行政機関が事業として行う研修 会で行政目的に用いる調査を支援する形式 で実施した。事業評価のためのアンケート は無記名で行われ個人情報は扱っておらず、

アンケートへの記入は任意で行われた。ま た、アンケートに関する質問や疑問点につ いては、随時研究者が応じること等を伝え アンケートの提出により調査への協力を得 られたものとした。なお、行政の事業に追 加して実施した調査にあたっては、本院の 研究倫理審査により承認(NIPH-IBRA

#12084)を受け実施した。調査の実施にあ たっては地域の関係者とも十分に協議し、

調査対象者の理解を得るようにした。

C. 研究結果

C.1  福島県での保育士研修の評価

C.1.1. 平成26年度の研修会の評価

  平成26年度の研修会は県内3箇所で

(7)

それぞれ3日間の日程で開催された。参 加者数は52名であった。フォローアッ プ研修は県内1箇所で1日間の日程で開 催され21名が参加した。フォローアッ プ研修の概要は別紙に示す。

研修の全体の流れ

1.初日

9:30〜9:40

1.1  主催者挨拶(子育て支援課)

9:40〜11:00

1.2  子育てに関わる職員のための保育 士の方などのための放射線の知識の整理

(科学院)

参加者の疑問を解消できるように放射線の 基礎を説明した。

11:10〜12:00

1.3  現場での放射線対策(科学院)

参加者の疑問に対して放射線便利帳などを 用いて考えた。また、施設での実際の取り 組みがイメージできるように、具体的な事 例を共有した。

12:00〜13:00

昼休み(参加者とスタッフが時間を共有で きるようにした)

13:00〜14:45

1.4  県民健康調査の紹介(県立医大)

県民健康管理調査のことを説明した。甲状 腺検査のことを特に詳しく説明した。

15:00〜15:30

1.5  放射線何でも質問会(科学院)

放射線対策を考える上での素朴な疑問を参 加者と考えた。

15:30〜16:00

1.6  事業説明(子育て支援課)

福島県子育て支援課から、ふくしま保育元 気アップ緊急支援事業補助金交付要綱につ いて説明があった。

2.二日目

9:30〜12:00

2.1  子育てに関わる職員のための子ど もの発達の知識の整理と遊びの工夫(小児 科医)

子供の発達段階に応じた体験は重要であり、

放射線対策を講じつつ、子ども達の健やか な発育を子育てに携わる保育士がサポート する必要があることから子どもの発達・発 育に関する知識を改めて整理する時間とし た。なお、県外の小児科医が対応した会で は福島県作業療法士会のサポートを得た。

12:00〜13:00 昼休み

13:00〜16:00

2.2  事例共有・現場の課題検討(科学 院、除染情報プラザ)

研修に参加された方から、施設での取り組 みをご発表いただいた。

また、グループワークで、これまでの取り 組みについて情報を共有し、今後の取り組 みを話し合っていただいた。

(8)

3.三日目

9:30〜12:00

3.1  子育てに関わる職員のためのメン タルヘルスの知識(県立医大)

放射線対策でも、気持ちの問題への配慮が 欠かせないことから、メンタルヘルスの専 門家から気持ちの問題をどう扱ったらよい のか、楽しい実習も交えて、講義があった。

12:00〜13:00 昼休み

13:00〜15:45

3.2  子育て施設で役立つコミュニケー ションの技法(県立医大)

保育所などで放射線対策を進めるには、コ ミュニケーションの技法を使うことが有用 であることから、臨床心理士のスキルを学 び、ファシリテーターとしての能力向上に 役立るための講義がなされた。

14:45〜16:00

3.3  研修振り返り(福島県・科学院)

3日間の研修の成果を現場でどのように発 揮するのかを考え、子育てに関わる専門職 として施設内での取り組みをどのように推 進していくか、一人一人がポジティブに取 り組むためのモチベーションアップのため の時間とし、振り返りシートに記入し、グ ループ内で発表し合った。

各科目の評価 表.各科目の評価

内容理解 役立つか 放射線 4.3 4.3 現場対策 3.9 4.0

県民健康調査 4.3 4.4 子どもの健康 4.8 4.7 グループワーク 4.2 4.4 メンタルヘルス 4.8 4.7

1-5点の間で参加者に評点をお願いした。点数が高 いほど評価が高いことを示す。

  県民健康調査の講義では、甲状腺検査に ついて特に詳しい説明があった。嚢胞と結 節の違いのような医学的な説明だけではな く、これまでの結果通知の問題点が率直に 提示され、その改善点が説明されるなど、

県立医大での取り組みの実情が解説された。

県民健康調査のうち妊産婦に関する調査に 従事しているスタッフが聴講した会では、

関係するスタッフから実際の対応が補足さ れた。このように甲状腺検査について詳し い説明がある中で、甲状腺検査の不利益に ついても言及があった。このことを学ぶの は容易ではないとも考えられるが、米国の タレントが予防的な外科治療を受けたこと がメディアでも取り上げられていたことか ら、参加者とやりとりし、理解を深めるこ とができた。一方的な説明だけでは理解が 困難なことであっても、やり取りを行うこ とで理解が促進されること、フェアに情報 を提供しようとした県立医大のスタッフの 真摯な態度が支持されていることが観察さ れた。

回復期フェーズに応じた課題の変化

  災害からの回復期でどのような対策が最 適であるかは、フェーズによって異なる。

このため、回復期での対策の効率化をどう 図っていくかも課題となる。研修では、施

(9)

設での対策の見直しも共通課題となった。

  バランスを考えた保育施設での放射線対 策の緩和のあり方は昨年度の研修でも課題 となっていたが、その課題の認知度が高く なっていると考えられた。対策を緩和する ことにも困難さがあるため、その判断を迫 られる現場の管理職の負担軽減を図る必要 がある。とりわけ、これらの保護者が施設 長に強力なリーダーシップを求める場合に は、特に施設長の判断の負担の軽減策が求 められることが昨年度確認されていたが、

その状況が継続していた。話し合いを進め るにあたり、対立構造を避けるために、「子 どもを守るため」「、同じ目的を目指してい ることを共通認識としながら探っていくこ とになるが、関係者全てが納得する正解が 存在しないこともあるだけではなく、人々 の関係性の問題から本音を出すことが容易 ではないことがこれまでの研修で伺われ、

意見表面が安心してできる場づくりが重要 となることが、昨年度の研究でも示唆され ていた。今年度の研修会でのグループワー クの感想で思っていることがより率直に言 えたことがよかったという意見があり、そ のことの重要性が改めて確認できた。その 観点でも臨床心理士によるグループワーク でのファシリテーションの知恵を学ぶこと が有益であると考えられる。

研修内容に対するネガティブな意見

・  保育現場での活用としてどこまで安心 か自然物(散歩)の活用範囲の限界をど う線引きすれば良いかを明確に示して 欲しい。

・  県民健康管理調査は、調査・検査の段階

であるため、まだまだ疑問だらけの中な のに、回答が明示されず、あいまいなま ま受け止め、あいまいな状態を持ち帰る ことで問題自体が長期化する。

・  「大丈夫」が前提になっているので、正 直どこまで信用できるかがわからない が、専門家ではないので信じるしかあり ません。正確な内容をぜひ伝えて下さい。

今まで、あまりにもいろいろな情報があ りすぎて、「迷い」がたくさんある人も いると思います。

その他の意見

・  放射線についての詳しい話を聞くこと ができとても有益でした。保護者の方に も聞いていただく機会を作ったら安心 できることがたくさんあると思います。

ただ、今もいろいろな情報があり正直、

不安です。本当に信じて大丈夫でしょう か…。保護者の方もそういう思いで子育 てしているのではと思います。本当に安 心できる情報をどんどん発信して欲し いです。

・  ここを信じていけば大丈夫なんですよ ね?

研修内容に対するポジティブな意見

・  あらかじめ決まっている答えを押し付 けないことがよかった。

・  研修前は、決まった答えを知ればよいと 思っていたが、皆で答えを探すのもよい と思った。

・  リスク論がなるほどと思わされました。

自分たちはグレーゾーンで生きている。

どれだけのリスクがあるか、その覚悟の

(10)

上で生きていくというのが大切だと思 った。

・  今までよりもより深く放射線や県民健 康調査について理解することができ家 族や園でも伝えていきたい。

・  改めて確認できたことが多々ありまし た。甲状腺がん検診の意図が確認できた ことが一番の収穫でした。

・  研修の回を重ねると疑問点が明確にな ってくるので、このような研修をこれか らも続けて欲しいです。放射線の影響や 考え方はこれから年数を重ねていき状 況が変わっていくため、その時々の情報 が必要だと思います(保育現場に直結で きる情報によって保育の内容も変わっ てくると思います)。

・  震災後、何度となく聞いてきた言葉でし たが、今ひとつよく理解していないとこ ろが、今日、改めてこの研修を通じて自 分自身の中で納得できとてもよかった と思いました。

・  多くの皆さんと意見・問題点を出すこと により、「つながり」を感じました。保 護者の方にも、このことが必要なことと 思いました。この研修をしっかり自分の ものにしていきたいです。

・  いろいろな園での取り組み、悩みなどを 聞くことができて、自分たちだけじゃな いということが分かり、元気づけられま した。情報の共有ができたことがとても 良かったです。

・  子どもにとって体を動かすことが大切 であることを再認識できました。これか らもっともっと子ども達と一緒に楽し い時間が持てるように工夫したいと思 います。

・  正直、専門的なことはわからないものも 多いのですが、私たちが今できることを 単刀直入に教えていただけてよかった です。あまりにも情報が多く、とても悩 み心配だったので、あせらず少しずつで きることから頑張ろうと思います。

・  言葉の使い方、表現方法をより多く持っ ていないと多くの方へのコミュニケー ションは取れないのだろうと感じた。ま ずは、一人から声をかけ一人から始めて いきたいと思った。

・  ゲームを通したり、グループワークによ り他園の様子や先生方と交流を持てた のは良かった。

研修の振り返りから

(発達障害)

・  障害をもっている子どもたちがどう感 じ生きているか理解出来た。

・  発達障害の特徴を正しく理解しその子 に振り回されたり普通じゃないとレッ テルを貼らずに居心地の良い環境を作 ってあげたい。

(メンタルヘルス)

・  今までの不安を取り除くために自分が どうすればいいのか考え行き詰まって いた。不安であってもいいのだという考 えが目からうろこでその考えを広めた い。そして一緒に考え悩みながら子供た ち自身がこれからの世を生き延びてい ける力を身につけられるように言葉を 見つけかけていきたい。自分たちに味方 がたくさんいるのを知らせ利用活用で きるよう広めていきたい。

・  不安に対するケアや不安そのものの知

(11)

識を学び自分自身にも今後の仕事にも 思い当たることがたくさんあり、より実 践的、現実的に対処出来るようになった。

・  メンタル面では母子また職員も解決方 法を知ることが出来た。親子だけではな く職員もメンタル面を話し合っていく。

・  不安に関することメンタルケアについ て実践的なものを具体的に知ることが 出来た。

・  講義を受けて学ぶだけではなく話し合 うことで得られるものが大きい。分から ないことがあっても、また不安を感じて も良いと言うことを学んだ。

(その他)

・  様々な分野の方が福島の未来のために 力を尽くしてくれていることを知り、感 動した。

・  保育所だけで考えるのではなく「徐染情 報プラザ」など利用出来るものは広く利 用して今後の保育、放射能への不安等に ついてみんなで考えていく。

(これらのフィードバックのバイアス)

  これらのフィードバックは、研修終了 直後に得ており、研修を効果的に捉える バイアスが働いていることも考えられ る。このため引き続いて行われたフォロ ーアップ研修の事後に面接調査を行っ たが十分な被験者を確保することがで きなかった。この面接調査の結果は、別 紙(フォローアップ研修の評価)に示す。

(フォローアップ研修)

  また、H26 年度のフォローアップ研 修を実施した。この研修では、現場での

対応のあり方を巡ってスタッフ間での 議論が生じ、グループワークを短縮する など参加なさった方に迷惑をかけるこ とになった。参加下さった方々に改めて お詫びを申し上げたい。この研修の概要 は別紙で示す。

C.1.2. 研修会をスタートさせる時点で

の評価とその後の実施状況との比較

(平成24年度のリハーサル研修の概要)

  平成 25,26 年度の福島県保健福祉部子育

て支援課主催の「ふくしま保育元気アップ 緊急支援事業相談支援者育成研修会」は、

平成24年度の厚労科研(特別研究)におけ る福島県でのリハーサル研修会を経て実施 された。このリハーサル研修会は、福島県 保健福祉部子育て支援課および福島県保育 協議会と研究班が連携して実施したもので、

参加者数:18名で、研修のデザインを検討 するために実施された。調査は5段階評価 で行われ、原発事故対応に関して、職員に 対する研修は必要かとの問いに対して、不 要:1,必要:5としたところ、7割が必要:

5、2割が4と回答し、研修会が実施される ことになった。この研修会はその後も意義 が評価され、平成26年度まで集合形式で実 施されることになった。このリハーサル研 修会での科目の必要性は、いずれも平均が 4 を超えたが、リスク・コミュニケーショ ンとグループワークが特に高評価 (平均が 4.5 を超えた)であり、受講した感想でも、

これらは特に高評価であった。これらは平 成 26 年度までの研修でも同様の結果であ った。

(平成 24 年度のリハーサル研修で取り上

(12)

げるべき課題とされたこと)

  参加者から選択された課題のトップ2は、

(1)不安を訴える保護者にどう対応するか?

(2)保育園内の職員間の意見の違いにどう対 応するか?の、いずれもコミュニケーショ ンに関するものであった。このため、これ らの課題に対して、実現が可能だと考えら れる保育士が果たすべき役割を見つけるこ とを研修のゴールにすることとした。

(平成 24 年度のリハーサル研修で保育士 の役割としては難しいとされたこと)

  一方、保護者に身近な存在である保育士 などが放射線のことを学んで伝えるという モデルの適用に関しては、学んだことをご 自身で話すことができると回答したのは

5%程度に過ぎず、約 8 割が困難と回答し、

その大半がその困難さが強いとしたことか ら、そのモデルが機能する場面も日常の保 育活動であり得るとは考えられるものの、

現実性に限界があり、それを保育士の本来 の役割とは位置づけないこととした。この 役割に関しては、平成26年度まで大きな変 化はなかったが、研修を経るにつれ、コミ ュニケーションに関してより保育士の関与 を深めたいとの意向が強くなっていること が伺われた。

(平成 24 年度のリハーサル研修でのその 他の意見)

  リハーサル研修で寄せられた意見として は、具体的な事例(困っていること)に対 してのアドバイスや考えるための判断材料 になるヒントが欲しいとの意見が目立った。

このため、研修では事例を取り上げて、み んなで考えることとし、事例対応にあたっ ての、基本的な考え方を整理し、具体的な

事例対応の情報共有を図ることとした。こ のことへのニーズは平成 26 年度も同様で あった。

(安心材料提供のニーズへの対応)

  放射線の基礎知識に関しては、専門用語 の理解の困難さ以上に、どこまでが安全な のか、大丈夫という確信がないと不安は減 らず、個人のリスク対策は自分で、社会で の対策はみんなで決めると言っても、それ が容易ではないことが表明された。安心は 科学的な知識を身につけることで得られる ものではなく、他者との関わりの中で得ら れるものであるので、関わる人々の間での コミュニケーションを維持することが大切 だと考えられる。また、不安を持ちつつ気 をつけて生活することもあるのが実情であ り、困難さを自覚して信頼感の醸成を目指 して地道に取り組むしかないと考えられる。

その一方で、気持ちへの強力な後押しが必 要であるとも考えられたので、地域の人材 にも貢献して頂くこととした。

(コミュニケーションを研修で扱うこと)

  コミュニケーションに対しては、「考え方 が難しすぎて理解できない」という感想も いただいたが、「すごく考えさせられました。

言葉の使い方、伝え方など、まだまだ勉強 が必要だと感じた」などのポジティブな反 応が大半であった。実践することも 難しい 課題ではあるが、このような気付きが出発 点だと考えられることから、研修で実践性 を高めることとした。

(研修でのグループワークの位置づけ)

(13)

  グループワークに対しては、情報を共有 するだけではなく、お互いに思っているこ とを話すということは心を整理するのによ かったや解決できなかったとしても同じ悩 みを共感することで力になったとの感想が 得られた。共感できることは人間のすばら しい能力であり、研修でそのことが体験で きることも意義があることと考えられた。

(H25年度の研修)

  2013年度の保育士対象研修は、福島県内 4会場で実施した。3日間コースで参加者数 は287名であった。内容は、事業説明、県 民健康管理調査の紹介、保育士のための放 射線に関する知識の整理、保育士のための メンタルヘルスの知識、ワークショップ、

小児科医による保育士リフレッシュ講義、

研修の振り返りであった。

(H25 年度による現場での放射線対策の変 化)

  研修後の施設の変化を調べるために、研 修から約2月間経過した2013年8月に県 から調査票が配布され、163 施設から回答 があった。対照群が設けられていないので、

この調査からは、研修の介入による影響か どうかは断定できない。また、このような 目に見える変化ではなく、研修の効果とし ては、保育士の方々の緊張感を和らげる効 果の方が重要だったとも考えられる。いず れにしても、幅広い関係機関の協力を得て、

正解を探す研修ができたことに意義がある と考えられた。

・屋外でのプール遊び

施設数(割合)

実施している 118(71%)

何らかの制限あり 48(29%)

何らかの制限ありの 48 施設の研修後の対 応

施設数(割合)

変更した 20(42%)

変更なし 14(30%)

未回答 15(31%)

・  外遊び

制限あり 制限なし

研修前 82(50%) 82(50%)

研修後 66(41%) 96(59%)

・  雨が降った場合の翌日の外遊び時間の 繰り越し

施設数(割合)

以前と同じ 114(74%)

研修後に繰り越し可能に 23(15%)

その他 17(11%)

・ フォローアップ研修への参加希望 施設数

(割合)

参加してみたい 121 (74%)

参加したいとは思わない 42(26%)

なお、平成25年度のフォローアップ研修 への実際の参加者は118名であった。

(14)

C.1.2. 国で新たに整理されたリスク・

コミュニケーションの考え方の適用

  文部科学省の安全・安心科学技術及び社 会連携委員会では、平成26年03月に「リ スクコミュニケーションの推進方策」4をと りまとめた。また、独立行政法人 科学技術 振興機構科学コミュニケーションセンター では、同じく平成26年3月に「リスクコミ ュニケーション事例調査報告書」5をとりま とめた。これらは、リスク・コミュニケー ションの標準的な指針になると考えられ、

この研究班での取り組みも、これらの考え 方に沿ったものとなっている。

  この報告書では、リスク認知の主観性を 扱った議論で、「しかし公平性、自発性、信 頼はいずれも社会正義に関わる事柄であり、

これらに関わる 感情には個人心理の問題 に留まらない社会的意味がある。公平性は 社会的不平等に関することであり、自発性 は自己決定権という権利問題である。他に も上に列挙したものでは、人工性とは人為 性の言い換えであり、リスクや発生した被 害に対して関係者が負う「責任」 の問題を 含意している。信頼も社会を成り立たせる 重要な要素である。

したがって、リスクの科学的な理解を重視 するあまり、これらの社会的・規範的な問 題を単に「感情的」で「誤った」リスク認 識の要因として扱うことは、リスクコミュ

4

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijy utu/gijyutu2/064/index.htm

5

http://www.jst.go.jp/csc/archive/riskcom.h tml

ニケー ションやリスク管理で対応すべき 重大な問題に背を向けることになる。とく にリスクが事件化・社会問題化し、人々が リスクにさらされていると強く認識してい るクライシスの状況では、人々は社会的・

規範的問題に敏感になっており、社会的・

規範的な側面での違いを無視して確率論的 な見方のみでリスクの比較を行うことは、

人々の不満や怒りをまねきかねない。たと えば原子力発電所の事故にともなう放射線 被ばくのリスクを、レントゲン撮影や CT スキャンのように診断・治療に役立ち、自 分で受け容れられるかどうか決められる医 療被ばくのリスクと比較することは、リス クと引き換えの便益や自己決定の有無の違 いを無視したものとして問題視されやすい。

また「問題となっているリスクは〇〇のリ スクよりも小さい」といった説明は、当該 のリスクの定量的な把握を人々に促すため であっても、「○○より小さいリスクなのだ から受け容れよ」という押しつけと受け止 められやすい。」とあり、この原子力事故の 特性を考慮した対応が求められると考えら れる。現場での課題は、この原子力事故の 特性がもたらしたものと考えられるので、

以下でその対応を考えたい。

(現場での問題の構造)

  福島県での保育士研修では、以下のよう な意見も見られた。

「(再び含まれる放射性物質の量が増えて いるかもしれないと考えて)土の入れ替え をするかどうかは、絶対にこれが正しいと いう正解がないとのことですが、○か×な のか、はっきりした答えが欲しかった。」

「保護者に理解を得られるような説明の仕

(15)

方を具体的に教えて欲しい。」

  このような意見は様々な背景があると考 えられ、それぞれの背景に応じた対応が必 要になる。まずご自身が納得できることが 大切であると考えられる場合もあるだろう。

根本的な不公平感や信頼感の欠如が根底に あるとも考えられるだろう。

  これに対しては、それぞれの園の取り組 みで正解であり、安全上、問題があれば行 政が介入することや、理解を得るには決定 プロセスの工夫が有効であること、保育士 に求められるのは保護者との信頼関係作り であり、負担を抱え込まないようにすべき であることを説明した。

  人々の気持ちを整理する手法として、地 域の人材を活用した行政でのチーム対応が 効果を上げているが、それを実現するため には環境整備も必要になる。また、懸念さ れていることを継続的に誰かに聞けるよう にしておくことも有用であろう。

(リスクを定量的に示すことの試行結果)

  倫理的な側面からも不公平感を確認した 上での対応として、余命損失を取り入れて 地域の人々と考えた事例を紹介したい。こ の試みは、原子力文化財団の助成事業とし て実施され、募集に対して応募あった福島 県内の6箇所の保育所および幼稚園(福島 市、伊達市、いわき市、喜多方市)で2015 年2月に実施されたものである。参加した のは保護者 51 名と保育所および幼稚園の 職員17名であった。事業評価を行うために 学習会の前後に質問紙が配布された。学習 会前の質問紙では、このまま住み続けるこ とに4割が、不安があると回答した。昨年 度の厚労科研(特別研究)で検討された余

命損失を用いて、放射線リスクの大きさを 提示したプレゼンテーションは約 9割が理 解できたと回答し、約8割は内容が正しい と思うと回答した。一方、3%は内容が理解

できず、1%は内容が正しくないと回答した。

  学習会前は15%が放射線の心配のために

(水道水中の放射性セシウム濃度は mBq/l オーダーとなっている)水道水を飲用して いないと回答したが、学習会後は水道水を 避けたいと回答したのは 3%と低下した (p=0.03)。

  余命損失を用いた、放射線リスクの大き さの提示は、リスク推計の不確かさを無視 しているという大きな欠点がある。また、

提示法によっては、押し付けと受け止めら れ大きな反発を受けるだろう。事実、この 試みに強く反発した一人の参加者は、公平 性が損なわれかねないことを危惧しておら れた。

  環境経済学の手法を用いた、昨年度の検 討は、個人の選択の支援として使うことを 想定しており、より前提条件が複雑になる、

社会での意志決定に用いることは想定して いないが、当然、そのような限界を超えて 適用しているのではないかとの疑念をもた らすことがあるだろう。その一方で、リス クを取ることを選択した方には好評であっ た。

  このことは、傷ついている誰かを支えよ うとする言説が、他の誰かを深く傷つけて しまうジレンマを示すものでもある。この 限界は超えられないので、それを自覚して 取り組む必要がある。

(16)

C.1.3. 医師会など地域の職能団体との 連携

(基本的な考え方)

  地域の医師会では、各種の研修会や「放 射線と健康」相談会が実施されている。そ れらの活動支援として、現場の方々から頂 いたご意見やこれまでにまとめられた資料 をもとに、以下のように整理を試みた。

① 地域の医師に期待されている役割を明 確にする。

  地域の医師にとって1回の研修を受けた のみで原子力災害に関する相談に応じるの は荷が重いことがあると考えられる。原子 力災害への対応は多岐に渡り、様々な社会 的な論争があり、科学的な知見でも専門性 が高い分野では一定の結論が得られていな い部分もある。地域の医師の役割としては、

専門性の高い対応が期待されているのでは なく、被災者のニーズを汲み、適切なサー ビスへつなぐことであり、それを可能とす るために必要とされる知識や技能の習得が あればよいと考えられる。

② バックアップ体制(専門家・専門医との ネットワーク)が重要

  これまでの4年間で様々な事例が蓄積さ れ、困ったときのよりどころがあることの 重要性が確認されている。このような研究 班が、関係作りのハブとなる場面もあった。

③ 補助資料のあり方

  地域住民などに説明の機会がある場合に は、科学的な知見を示す役割が期待される と考えられる。そのことを想定した資料案

を作成した(不当表示って何?6)。また、

UNSCEAR 報告書などの国際機関の解説

を提示することも考えられるかもしれない。

そのような報告書に対して、社会的な議論 となった場合には、その議論の概要を整理 して示すことが有用かもしれない。また、

医療では放射線がよく使われ、放射線診療 従事者が受けた線量と線量限度との比較の 観点では、それに近いレベルの人数では原 発事故対応を除いては、医療分野が多い現 状にある7。リスク比較そのものの課題や比 較するリスクの性質が異なることの問題か ら、そのまま住民に示すことは適切ではな いと考えられるが、医療従事者自身が理解 するために、歯科での放射線診療で受ける 放射線量と原発事故直後の吸入や原乳を飲 んでしまった場合の甲状腺の等価線量やリ スクの大きさ提示がありえるかもしれない。

  ただし、リスク対応に関して、これが絶 対に正しいという答えはなく8、社会的な論 争になっていることに地域の医師が公の場

(診療なさっている地域の範囲を超えるな ど)などで踏む込むことの困難さは大きい と考えられる。

(実践例)

  このうち、現実的な取り組みとして考え られるのは、地域の専門職としての保育所 などのスタッフへの日常的なサポートであ

6

http://ndrecovery.niph.go.jp/?record_id=1 016&mode=index

7

http://www.kosenkyo.jp/siryou/datalink.h tm

8東京弁護士会  会長  竹之内  明.資源エ ネルギー庁の「不正確情報対応」事業の適 正化を求める会長声明.2011

(17)

る。昨年度の報告書でも述べたように、こ のような取り組みでは、保健医療福祉職種 と連携した支援体制をいかに構築していく のかが問われることになり、医療や介護の 領域でも地域包括ケアと同様の構造の課題 となる。地域包括ケアでは地域で自分らし い暮らしを続けることができるよう、医療 機関、介護施設、自治会、ボランティア、

NPO など地域コミュニティの中でサポー トする体制をつくることを目指している9。   行政の機能には限界があるので、その限 界をこれらの支援団体が補完し地域で支援 できる姿を目指すことが求められ、地域包 括ケアの概念は放射線リスク・コミュニケ ーションについても応用できるものがある と考えられるが、園医としての保育所への 関わりで、園長やスタッフへの心理的な支 えになっている例があった。

(地域の方々からの配慮例)

  また、帰還に向けた動きの中でも、地域 の方々が、地域の医師を気遣う場面が見受 けられた。自分たちが戻ろうとしている地 域やその付近にも、開業医の方々がおられ、

その方々が、地域に戻らない場合の複雑な 感情があるために、その感情を共有して、

情報を発信し、地域の医師へのバッシング を回避することが必要ではないかとの意見 があった。

  地域の医師や歯科医師が住民に当時の行 動を率直に語ること(避難したことの思 いなど)が、有益であると考えられること

9

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bu nya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiik

が観察される場面がある。この問題に関連 して、日本医師会総合政策研究機構(日医 総研)では、日医総研ワーキングペーパー

No.273『「被災地の 医療 に関する医師の

意識調査 」−東北 3県の医師を対象に −』

10だけではなく、No.257「福島県原子力災 害に対する損害賠償と 復旧・復興のあり方 に関する研究」や福島の被災者の声をまと

めた No. 312「国際連合における健康権の

視点から観た東日本大震災・原発事故の被 災者支援に関する研究」11を作成しており、

その中で、「かかりつけ医に長期的に見守っ ていてほしい」という意見があったことを 記載している。以下にその抜粋を示す。

2.1.2 かかりつけ医による健康影響の見守

かかりつけ医が患者に甲状腺検査の受診状 況を確認する等、放射線被ばくによる健康 影響の見守りを求める研究参加者がいた。

(避難先に)うちの子どものかかりつけの 病院があるんです。…原発事故で避難して きた子どもだなって分かりますよね、カル テとか、診察したときね。例えば、「甲状腺 は検査した?」「血液検査はしてますか」と か、アドバイス、情報をいただければ助か るかな。自分でも親として何かを忘れてる と思うんですよ。放射線のことで不安もあ るなかで、専門的な情報をちょっといただ

10

http://www.jmari.med.or.jp/research/work ing/wr_499.html

11

http://www.jmari.med.or.jp/research/rese

(18)

ければ、嬉しい(双葉町、研究参加者)。

ヒアリング先の支援団体は、「地域の医療は 地元のお医者さんに託されていると思う。

そばにいて支えてくれる医者という点は、

地元の医師会にしか期待できないのでお願 いしたい」(いわき市内NPO法人)と話し た。また、放射線被ばくに関するリスクの 説明を医師から聞きたいと話す研究参加者 もいた。

やっぱり(放射線被ばくに関して)リスク も併せて話してくれないと、私たちはもう 信用ができないんですね。例えば、民間の 支援団体が主催する相談会の先生は医療被 ばくのリスクもきちんと発信している先生 で、やっぱりお母さんたちは心から信頼を してお話をすることができるんですね(い わき市、研究参加者)。

ほかに、子どもの定期健診時、放射線被ば くに関する検査結果について説明を受ける 体制を望む研究参加者もいた。

子どもの3歳健診のときに、小児科の先生 に「(尿検査でセシウムが)出てるんですけ ど、どういうふうに生活、気をつければい いですか」って話したら、「分かんない。主 治医に相談して」って。誰も頼る人がいな い結果になったんですね。今後、健診なん かで相談できる人とかいたらいいなと思い ます(いわき市、研究参加者)。

「医師向けテキスト」という観点では平成 27 年1月の難病法の施行に伴う新制度の 概況を取りまとめた日医総研.日医総研ワ ーキングペーパーNo.334「新たな難病対策 の概況 -平成 27 年 1 月 難病法の施行を

受けて-」12も参考になるであろう。この資 料は、医師向けのテキストで、今後、制度 普及のため、全国の医師に対して実施され る研修会にて活用されるもので、制度作り を進めた厚生労働省からの依頼に基づき作 成されており、小児慢性特定疾病について も同様に、児童福祉法改正に伴う新制度の 概況が取りまとめられつつあるところであ る。制度は法律のほか関係法令が複雑なも のですので、わかりやすく図や表にしてい るところに特徴がある。それだけではなく、

重要と考えられる問題点を率直に指摘して いるところにも特徴があり、そのアプロー チの方法そのものもモデルになりえると考 えられる。

(日本診療放射線技師会との連携)

  診療放射線技師は、日常的に放射線を扱 い患者からの質問に答えている実態がある。

また、大分県診療放射線技技師会のように 学校への訪問授業を行うなど、新たな展開 が模索されている。このため、カウンセリ ング・マインドに関する研修を受講した日 本診療放射線技師会の会員が、地域で取り 組むチームに加わることも有益であると考 えられる。

C.2  研修用資料の評価

昨年度の研究成果物に修正を加えたもの の有効性を評価するために、アンケート調 査及びフォーカス・グループ・インタビュ ーを実施した。評価対象としたのは、放射

12

http://www.jmari.med.or.jp/download/WP 334.pdf

(19)

線便利帳で2014年12月発行(第3版)を用 いた。インタビューは、2回のフォーカス・

グループ・インタビューによって行った。

インタビュー調査の詳細は別紙に示す。

アンケート調査の対象者

アンケート調査は、福島県内の保育士等お よび全国の国立病院機構の診療放射線技師 を対象とした。福島県内の保育士等を対象 にした調査は、平成27年2月22日に実施し たフォローアップ研修参加者配布21枚(回 収18枚)及び喜多方市内の幼稚園を対象と した(回収8枚)。全国の国立病院機構の診 療放射線技師を対象にした調査は、平成27 年1月16日に国立病院機構本部で実施した 研修会の場を利用した配布46枚(回収45枚)。

保育士等を対象とした調査結果

ネガティブな意見

・  一見わかりやすそうですが、読んで頂く のは難しいと思います。

ポジティブな意見

・  震災後、まもなく4年目となりますが、

今の段階に合った内容となっていると 思います。今後もぜひ発行して下さい。

・  保護者からもわかりやすかったという

ご意見を頂くことが多いです。

・  もう少し小さい本にして保護者にも配 布してもらいたい。

・  質問形式でその答えが分かりやすい。質 問内容が普段思っていることで色々な ことを知ることができた。

・  イラストが多く一つ一つ丁寧に説明し てあったので読みやすい。

・  保育士の目線で質問されており、お家の 方もこういうような不安や疑問を持っ ているかなと感じた。

・  参考にして説明することができればと 思う。

・  難しい言葉が入っておらず、誰が読んで も理解できるのではないかと思います。

・  カラーでわかりやすい言葉、文章で表現 してあるので、読んですぐ理解できまし た。

・  大人はもちろん小学生の児童も一人で 読んで理解できると思います

その他の意見

・  基本的な知識であればよいが、それをど う使うか共有するか伝えるかが大切だ と思う

診療放射線技師対象とした調査

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20%#

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(20)

ネガティブな意見

・  放射線の知識のない人に説明するには 詳しすぎて大変な気がした。

ポジティブな意見

・  放射線技師にとっても勉強になる

・  家族に見せてみたい

その他の意見

・  甲状腺のモニタリングなど長期的に見 ないと結果がわからないものもあり、新 しい知見が出た場合は順次改訂を進め て欲しい。

当該研究における成果物の有効性に関する 評価は、「放射線便利帳」に関して、福島県 内の保育所職員へのフォーカス・グルー プ・インタビュー、および、震災後に放射 線リスクを有していた地域である千葉県柏 市住民へのフォーカス・グループ・インタ ビューにて行った。その結果、全体として は、イラストが豊富であり、見やすく、読 んでみようという気持ちになるという評価 を得た。また、目次が裏面に配置されてお り、必要になったときの辞書としても使え る工夫がなされているという意見もあった。

一方で、専門的な用語について、分かりや すく解説しようと工夫されていることに一 定の評価をしつつも、さらなる工夫が必要 との意見も聞かれた。

  放射線便利帳に追加して掲載して欲しい 内容としては、建物の中の放射線量、将来 どうなるのか(例えば、10年後の健康影響 はどうなるのか)がわかるようなコンテン ツの要望があった。掲載するコンテンツに ついても、福島の状況変化に合わせたもの が必要になる。

  今後、継続して発行する場合には、掲載 するコンテンツについては、地域の状況変 化に合わせたものが必要になる。

C.3  相談員制度を機能させるために保健 医療福祉分野のスタッフの関わりのあり方 の検討

  福島県伊達市における取り組みを取り上 げ、同市の放射線リスクへの対応として対 人保健サービスに関する事業の状況につい てインタビュー調査を実施し、この分析を 行うことで、被災自治体における放射線リ スクに関係したコミュニケーションのあり 方について、自治体一般における放射線健 康管理に係る事業の実施可能性を検討した。

  伊達市において事業が効果的に進んでい る要因として、チームによる対応、実施状 況に応じた事業の見直し、スタッフ間でミ ーティングを重ねることによるスキルアッ プ等の要因が考えられ、自治体一般への適 用の可能性について、それらの要因に対応 した要点を考察した。

  ただし、福島県伊達市の一例のみを取り 上げたため、その普遍化には限界がある。

よって今後は引き続き、他自治体における 事例を収集し、放射線リスクに関するコミ ュニケーションに係わる行政組織の在り方 について検討を行っていくことが重要と考 えられた。より詳細は別紙に示す。

  保健師が担うべき役割は、「一人ひとりの 健康問題を地域社会と切り離さずにとらえ,

対象地区の伝統や風土(地理的条件・歴史 的条件・文化社会的条件など)と,個々の

(21)

生活意識や行動を結びつけて理解し,個人 はもちろん,環境や周囲に働きかけ,ひい ては健康の格差を縮めながら地域全体の健 康水準の向上をもたらしていく活動」とさ れている例があるが、原子力災害への対応 では、個人と家族や地域など公衆衛生的な 課題をもたらすことになる。例えば、社会 の中でのしがらみがあるために、母親自身 が納得できる判断ができていないと感じて いる場合にどうするかを考えると、中板の 保健師活動の概念整理に従うと、しがらみ が生じた地域社会と、母親個人との双方に 目を向けて、その双方に働きかけて、「地域 全体の健康水準の向上」を目指す、という ことになるだろう。しかし、このことは容 易ではない役割であると考えられる。社会 の中で家族や個人を考えることは、ミク ロ・メゾ・マクロレベルの視点を絶えず行 き来することになる。伊達市での事業展開 は、困難な状況の中で、まさに、それを実 践している例であり、行政の取り組みとし て、保健師活動の原点に踏まえた、PDCA サイクルを念頭に置き組織で取り組むこと の有用性が確認できたと考えられる。

  伊達市以外でも保健師による様々な模索 が観察される。その中でも県立医大の公衆 衛生学講座が継続的に関わり、地方自治体 職員と一緒に考え続けていることはモデル 的な活動として重要であると考えられる。

改めて現場の方々の努力に敬意を払いたい。

C.4  フォトボイスの適用可能性の評価   フォトボイス手法の有効性としては、写 真を撮るという行為自体によるリスクの再 発見の効果、写真や地図、付箋を用いるこ

とによる視覚的に訴える効果が指摘されて いるが、今回試行したフォトボイス手法を 用いたワークショップは、放射能・放射線 リスクの発見(再確認)に有効であること、

視覚的な手法であることから情報共有(見 える化)も容易であることがわかった。ま た、見える化が容易なことから、他の人と の考え方の共通点や相違点を知ることがで き、さらに、不安の軽減や解決への糸口に たどり着くことも、進め方によっては可能 であることがわかった。

  福島における展開可能性としては、フォ トボイス手法を用いることで、具体的な形 でリスクを認識、共有し、その解決に向け て話し合う価値のある場面であり、かつ、

共通の地理感覚とリスク感覚を持っている 人たちの間で行われることが望ましい。

  例えば、ある保育所において、職員複数 名を参加者として、子どもたちの活動範囲 におけるリスクの確認と、対応策の話し合 いをするための材料を提供するという試み には応用価値があるだろうと思われる。こ の場合、共通の地理感覚(保育所周辺の散 歩コースなどの範囲内)を持ち、共通のリ スク感覚(子どもたちへの影響に対するリ スク感覚)を持っている。また、抽象的な 話よりも、具体的な対象について、どう対 応するかを真剣に知ろうとする意識も強い。

  今回のワークショップでは、答え探しの ステップでは「パンフレット」を用いて、

自ら答えを探した。しかし、福島では、積 極的に情報を提供できる専門家の協力が不 可欠であろう。なぜなら、福島において、

放射能・放射線リスクは「現在進行形」の ものであり、答え探しに関しても、中途半 端では許されないからである。参加者に対

(22)

して、適切な支援をできる専門家が必要で あろう。放射線リスクに関するような、単 純な科学技術だけでは解決しない問題を取 り扱う場合には、専門家の分野も広く取っ ておく必要がある。リスクの波及範囲を整 理して、それをカバーできるような人選が 好ましい。また、地域の事情に通じている

(ローカルナレッジの豊富な)専門家も用 意する必要がある。また利害関係者が揃っ ていない場では、何かを決めていくための リスク・コミュニケーションが成立し得な い限界を認識しておく必要がある。

  全般として、フォトボイス手法は、視覚 的に訴えることが可能であり、適切な見え る化をすることによって、気づきを誘起で きる手法であると言える。福島の放射能・

放射線リスクに関するマネジメントやコミ ュニケーションの場面へも、幅広い応用が 期待できると考えられた。より詳細は別紙 に示す。

C.5  東京都の関係業務支援

  参加者は、34名であった。参加者の背景 は、一般都民、保育所関係者、行政職員で あった。講習会は、講演、実習、グループ 間での意見交換・質疑で構成された。参加 者間で意識の差異は大きかったが、それぞ れの立場の方から肯定的な評価が得られた。

より詳細は別紙に示す。

D.結論

本研究班では、一昨年度の欅田班や昨年度 での検討に引き続き、現場の課題の困難さ の解決を実践的な研究により目指した。 

その結果、これまで実践してきた研修の枠 組みが機能していること、教材が活用しう ることを検証した。また、行政の取り組み として、保健師活動の原点に立ち戻るとと もに、PDCAサイクルを念頭に置き組織で取 り組むことの有用性を確認した。改めて現 場の方々の努力に敬意を払いたい。 

現場での課題は、放射線そのものの知識や 放射線リスクの知識だけでは解決できる単 純なものではなく、「リスク認知」の社会 的・規範的次元を超えた、倫理的・法的・

社会的問題(ELSI)への対応が保健福祉分野 でも迫られ、それが心理的な負担につなが る構造にもある。このため、ELSIなど科学 技術の社会的・規範的問題に取り組む人 文・社会科学の専門性も必要となるが、現 場のニーズに基づく課題を設定して、現場 のニーズを解決するために検討を進めるた めには、倫理的な側面を重視すると共に異 なる専門領域間でのコミュニケーションを 促進させることが重要となると考えられた。 

参考文献 

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14) US Nuclear Regulatory Com- mission. Effective Risk Communica- tion. 2004

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21) IAEA. Report on En- hancing Transparency and Communication Effectiveness in the Event of a Nuclear or Radiological Emergency. 2012

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23) 復興庁.帰還に向けた放射線リス クコミュニケーションに関する施策パ ッケージ.2014

24) 環境省.東京電力福島第一原子力 発電所の事故に伴う放射線による健康 影響等に関する国の統一的な基礎資料 平成25年度版

25) 文部科学省.新しい放射線副読 本.2014

26) 「健康危機管理従事者のリスク/ クラ イシス・コミュニケーションスキル向上 のための研修プログラムの開発と評価」

班. 研究代表者 吉川 肇子.健康危機管 理者のための コミュニケーション  は じめの一歩,  同・健康危機管理時にお

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けるクライシス・コミュニケーションの クイックガイド

http://h-crisis.niph.go.jp/node/5170 27) 田中 幹人, 丸山 紀一朗, 標葉 隆馬.

災害弱者と情報弱者―3・11後、何が見 過ごされたのか.2012

28) US NIEHS. Successful Models of Community-Based Participatory Re- search. 2000

29) US EPA. EPA’s Environmental Jus- tice Collaborative Problem-Solving Model. 2006

30) 影浦 峡.信頼の条件  原発事故をめぐ

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31) 島薗進.つくられた放射線「安全」論.

(2013)

E.健康危険情報

該当なし   

F.研究発表

 1.  論文発表

1) Shimura T, Yamaguchi I, Terada H, Svendsen ER, Kunugita N. Public Health Activities for Mitigation of Radiation Ex- posures and Risk. Communication - Chal- lenges after the Fukushima Nuclear Acci- dent -. J Radiat Res 2015

2) Shimura T, Yamaguchi I, Terada H, Kengo O, Svendsen ER, Kunugita N. Radiation

occupational health interventions offered to radiation workers in response to the com- plex catastrophic disaster at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. J Radiat Res 2014; Nov 20. pii: rru110

 2.  学会発表

1) 堀口 逸子.放射線と健康影響に関する

「リスクコミュニケーション」と称され た活動について考えること.第 13 回日 本予防医学リスクマネージメント学会 学術総会.2015年3月7日.東京 

2) 山口 一郎.原子力災害からの回復期に おける地域保健活動への外部支援とそ の課題.第 13 回日本予防医学リスクマ ネージメント学会学術総会.2015年3月7 日.東京 

3) Ichiro  Yamaguchi,  Naoki  Kunugita,  Hiroshi  Terada.  Tsutomu  Shimura. 

Point/Counterpoint  discussion:  Fu‑

kushima risk communication strategy  2‑ Public health activities in local  communities. ISEE 2015.8.30‑9.3: São Paulo, Brazil. 

 

G.知的財産権の出願・登録状 況

なし

 

参照

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