■談話室
会社形態による国際共同研究プロジェクトのガバナンスについて
有限責任監査法人トーマツ,公認会計士,理学博士
藤 川 元 治
有限責任監査法人トーマツ
片 桐 豪 志 中 條 蕗 子
[email protected] [email protected]
デロイトトーマツコンサルティング合同会社
松 原 大 佑
[email protected] 2017年8月29日
1 はじめに
本稿は,研究者があまり土地勘のない,「研究組織のあり 方」について,研究組織のガバナンス(合意形成のメカニ ズム),スウェーデンのESS(EUROPEAN SPALLATION SOURCE)を例とした国際共同研究機関のガバナンス,日 本の独立行政法人との比較から,今後日本でも大規模な国 際共同研究機関をホスト国として設立する場合に参考とな り得る情報を紹介することを目的とする。
2 ガバナンスとは?
研究者は国公立大学や私立大学の研究室,国や自治体な どの公的な研究機関など,様々な研究所に所属している。
研究所には,研究室が多数集まる研究部門以外にも様々な 組織がある。研究費の管理を行う経理部,研究所の施設設 備の維持管理や備品管理などを担当する総務部,研究所と 地域や社会との交流を担う広報部,研究所全体の企画・運 営を担う経営企画部など,業務の分け方と組織の呼び方は 様々だが,研究者はこうした組織に支えられて研究するこ とができる。
研究所全体の運営を統括するのが,研究所長や理事長と 呼ばれる研究所のトップと,これを支える理事会などと呼 ばれる会議体である。その役割は,主な所管官庁である文 部科学省との調整,研究所としての運営方針策定や運営予 算獲得とその管理,研究者の人事・処遇,日々の組織運営 まで多岐に亘る事柄を意思決定することである。
個別の研究に関することであれば教授中心で意思決定で
きるかもしれないが,運営方針や予算,人事,施設設備な ど,研究所を運営するには多数の事柄が存在し,それぞれ に経理部長,人事部長,総務部長といった担当者が必要で ある。通常,規模の大きな研究所では理事会のような最上 位の会議体だけではすべてを議論し尽くすことは難しいた め,予算委員会や人事委員会,倫理委員会など下位の分科 会が置かれている。また,研究所の外部には所管官庁や地 域住民,共同研究企業,施設設備関連事業者など多数の利 害関係者が存在する。これら多数の関係者の立場を踏まえ た上で,透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うため の仕組みを「ガバナンス」と呼ぶ[1]。
その仕組みとして,理事会などのトップの会議体から予 算・人事・倫理といった下位の会議体が構成されているが,
どのような構成で合意形成を図るのかはその研究所の性格 や,これに応じた法人形態(学校法人や独立行政法人など)
によって異なる。たとえば,KEKはその正式名称を大学共 同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構といい,国立 大学法人法を根拠法としている。JAEA は国立研究開発法 人日本原子力研究開発機構といい,独立行政法人法通則法 に規定される独立行政法人という法人形態の三区分のうち の一形態である。
こうした法人形態の研究所の「所有者」は国である。研 究所の運営予算のほとんどを拠出している所有者から見る と,研究所が適切に運営されているか(研究費不正や倫理 違反といったネガティブな事柄が起きていないか,起きて も速やかに信頼回復ができる仕組みとなっているか,所管 官庁や地域住民など研究所の外部からの意見をその運営に 反映できているかなど),つまりガバナンスが効いているか
は大 要な関心事である。
上 のような研究所では所有者も研究所も意思決定に関 る上位者には元研究者や関連省庁・企業出 の日本人が 多く,所管者も日本国一か国であるため,所有と運営の 応 関 係 が か り や す い 。 し か し , ン ス の ESRF (EUROPEAN SYNCHROTRON RADIATION FACILITY) や イツのXFEL (X-RAY FREE ELECTRON LASOR),
ス ウ ェ ー デ ン の ESS (EUROPEAN SPALLATION
SOURCE) など もに で 設されている大規模な国際
共同研究機関の当 応関係は である。ま は「大規 模」であるため,研究所の運営予算を一国では いきれ ,
「国際共同」で う必要がある。つまり予算の出し であ る所有者が 数国存在することになり, 国所管官庁の意 思を研究所の運営に反映さ る必要がある。また,研究者 や設備も 数国から調 することになるため,研究所の 部の利害関係者も多数の国 の人々から構成されている。
この多様性に起 する様々な意見を調整し,透明・公正 かつ迅速・果断な合意形成を行うためには,高 なガバナ ンスの仕組みが必要なことが できるが,そのために公 的な研究機関であるにもかか ら 式会社の法人形態が 用されている。 式会社は多数の出 者の意見を反映し やすい法人形態であり,上 のような研究所を運営するに は適した法人形態と考えられる。日本では 式会社という と利 を するための民 企業というイメー が定 し て り, 式会社形態で運営されている公的研究機関は,
科学研究の分 ではあまり例がない1。
本稿では 在 設中で最 の り組みであるESSを り 上 ,スウェーデンの会社法などで められるガバナンス と,それを するためにESSが構 しているガバナンス 形態を する。そして今後, が国であまり経 のない 国際共同研究機関のホスト国としての設立を に れる 場合に2,ESSのような国際共同研究機関のガバナンスの仕 組みが多いに参考になると考えられるため,その際に ま しいガバナンスのあり方を考える一 とすることを目的と する。
な ,本稿に ける意見に たる部分は,い れも 者 グループの個人的見 であることに 意いただきたい。
3 国際共同研究 のガバナンス ス ェ ンの ESS と て
1 日本 業 機構や日本政策 行など,経 政策の 行や 支 を目的としつつ,経 の調査研究を行っている公的機関 では 式会社形態の例がある。
2 ITER(INTERNATIONAL THERMONUCLEAR
EXPERIMENTAL REACTOR)やTMT国際 文 (THIRTY METER TELESCOPE INTERNATIONAL OBSERVATORY)と いった国際研究機関の設立 の参加経 はある。
ESS は 中性子 施設をスウェーデン国 のルン に 設する 大プロ ェ トである。参加国は 17カ国, 研究者・ス ッ の国 は 26 カ国であり, 設コストは
18 ーロ, 設 は12年に ぶ。
上 の通り,「公的」な国際共同プロ ェ トでありなが ら,その中心となる組織は 式会社の形態で運営されてい る。 体的には,スウェーデンの国 法に 拠した会社法 人(有限責任会社)であるEuropean Spallation Source ESS AB(以下3 ESS AB)が設立されている。ESS ABの役割は, ESS の設計, 設,所有,運営のほか,参加国との調整や 国際 定の など広 に たり,ESS というプロ ェ ト全体をマネ メントすることである。
ESS AB の機関設計やガバナンスは スウェーデンの会
社法(The Swedish Companies Act, 2005[2])に 拠してい る。また,スウェーデン政 が 主であることから,スウ ェーデンに いて公営企業に適用される 国有に関する方 針(State Ownership Policy[3])に っている。これは,ガ バナンスやサスティナ ティ(持 性)に関する事 よび外部報 の 成ガイ インを り決めたもの である。本方針では,公営企業がガバナンスとサスティナ ティの でロール デルとなることを って り,上 場企業に られる コー ートガバナンス・コー
(The Swedish Code of Corporate Governance[4])にも う よう要 している。コー ートガバナンス・コー とは, ガバナンスの のために企業が うべき規 を 部まで 定めたものであり,スウェーデンでは2005年に されて いる。
これらスウェーデンに けるガバナンスに関する主な法 規 などについては 1に,また, 法規 などに定めら れている 機関の 要を 2 よび3に す。 2は 法 規 などに ける機関設計についての を比較した ものであり, 3は三委員会( 名委員会,報 委員会 よび監査委員会)について り上 たものである。スウェ ーデンの会社法には委員会に関する規定は いが,コー
ートガバナンス・コー よび国有に関する方針によっ て設置が されている。
ESS AB は,政 がその 式の を 有していること
から, 本的に 1に したすべての規 を して り,公的研究機関でありながら,組織・ 上は上場企業 に する たるガバナンスを している。
だが,な , が国の独立行政法人法のような法 を 定しなかったのだ うか。 的経 や 設計のコスト などの理 もあ うが,ここではガバナンスの から考
してみよう。
3 ABはAktiebolagの で有限責任会社の意。
は大 要な関心事である。
上 のような研究所では所有者も研究所も意思決定に関 る上位者には元研究者や関連省庁・企業出 の日本人が 多く,所管者も日本国一か国であるため,所有と運営の 応 関 係 が か り や す い 。 し か し , ン ス の ESRF (EUROPEAN SYNCHROTRON RADIATION FACILITY) や イツのXFEL (X-RAY FREE ELECTRON LASOR),
ス ウ ェ ー デ ン の ESS (EUROPEAN SPALLATION
SOURCE) など もに で 設されている大規模な国際
共同研究機関の当 応関係は である。ま は「大規 模」であるため,研究所の運営予算を一国では いきれ ,
「国際共同」で う必要がある。つまり予算の出し であ る所有者が 数国存在することになり, 国所管官庁の意 思を研究所の運営に反映さ る必要がある。また,研究者 や設備も 数国から調 することになるため,研究所の 部の利害関係者も多数の国 の人々から構成されている。
この多様性に起 する様々な意見を調整し,透明・公正 かつ迅速・果断な合意形成を行うためには,高 なガバナ ンスの仕組みが必要なことが できるが,そのために公 的な研究機関であるにもかか ら 式会社の法人形態が 用されている。 式会社は多数の出 者の意見を反映し やすい法人形態であり,上 のような研究所を運営するに は適した法人形態と考えられる。日本では 式会社という と利 を するための民 企業というイメー が定 し て り, 式会社形態で運営されている公的研究機関は,
科学研究の分 ではあまり例がない1。
本稿では 在 設中で最 の り組みであるESSを り 上 ,スウェーデンの会社法などで められるガバナンス と,それを するためにESSが構 しているガバナンス 形態を する。そして今後, が国であまり経 のない 国際共同研究機関のホスト国としての設立を に れる 場合に2,ESSのような国際共同研究機関のガバナンスの仕 組みが多いに参考になると考えられるため,その際に ま しいガバナンスのあり方を考える一 とすることを目的と する。
な ,本稿に ける意見に たる部分は,い れも 者 グループの個人的見 であることに 意いただきたい。
3 国際共同研究 のガバナンス ス ェ ンの ESS と て
1 日本 業 機構や日本政策 行など,経 政策の 行や 支 を目的としつつ,経 の調査研究を行っている公的機関 では 式会社形態の例がある。
2 ITER(INTERNATIONAL THERMONUCLEAR
EXPERIMENTAL REACTOR)やTMT国際 文 (THIRTY METER TELESCOPE INTERNATIONAL OBSERVATORY)と いった国際研究機関の設立 の参加経 はある。
ESSは 中性子 施設をスウェーデン国 のルン に 設する 大プロ ェ トである。参加国は 17カ国,
研究者・ス ッ の国 は 26 カ国であり, 設コストは
18 ーロ, 設 は12年に ぶ。
上 の通り,「公的」な国際共同プロ ェ トでありなが ら,その中心となる組織は 式会社の形態で運営されてい る。 体的には,スウェーデンの国 法に 拠した会社法 人(有限責任会社)であるEuropean Spallation Source ESS AB(以下3 ESS AB)が設立されている。ESS ABの役割は,
ESS の設計, 設,所有,運営のほか,参加国との調整や 国際 定の など広 に たり,ESS というプロ ェ ト全体をマネ メントすることである。
ESS AB の機関設計やガバナンスは スウェーデンの会
社法(The Swedish Companies Act, 2005[2])に 拠してい る。また,スウェーデン政 が 主であることから,スウ ェーデンに いて公営企業に適用される 国有に関する方 針(State Ownership Policy[3])に っている。これは,ガ バナンスやサスティナ ティ(持 性)に関する事 よび外部報 の 成ガイ インを り決めたもの である。本方針では,公営企業がガバナンスとサスティナ ティの でロール デルとなることを って り,上 場企業に られる コー ートガバナンス・コー
(The Swedish Code of Corporate Governance[4])にも う よう要 している。コー ートガバナンス・コー とは,
ガバナンスの のために企業が うべき規 を 部まで 定めたものであり,スウェーデンでは2005年に されて いる。
これらスウェーデンに けるガバナンスに関する主な法 規 などについては 1に,また, 法規 などに定めら れている 機関の 要を 2 よび3に す。 2は 法 規 などに ける機関設計についての を比較した ものであり, 3は三委員会( 名委員会,報 委員会 よび監査委員会)について り上 たものである。スウェ ーデンの会社法には委員会に関する規定は いが,コー
ートガバナンス・コー よび国有に関する方針によっ て設置が されている。
ESS AB は,政 がその 式の を 有していること
から, 本的に 1に したすべての規 を して り,公的研究機関でありながら,組織・ 上は上場企業 に する たるガバナンスを している。
だが,な , が国の独立行政法人法のような法 を 定しなかったのだ うか。 的経 や 設計のコスト などの理 もあ うが,ここではガバナンスの から考
してみよう。
3 ABはAktiebolagの で有限責任会社の意。
1 スウェーデンに けるガバナンスに関する法規 など。
文 名
The Swedish Companies Act, 2005
スウェーデンの会社法
会社に関する 本的な事 を定めた法 公開・ 公開企業に適用される
The Swedish Code of Corporate Governance, 2010
企業の 体的なガバナンス方法についての規
コー 通りに 施しない場合には,その理 を 明する 務がある 公開企業に適用される
State Ownership Policy 2013
政 が 式を所有する企業のガバナンスやサスティナ ティに関する事 よび外部 報 の 成に関するガイ イン
政 が 式の 数を所有する企業に適用される
2 文 に ける機関設計に関する もな 事 。 文 名
機関名 The Swedish Companies Act, 2005 The Swedish Code of Corporate
Governance, 2010 State Ownership Policy, 2013
主総会
主は 主総会 出 する 利 よび
有 式数に応じた議決 を有する 主総会に ける意思決定は多数決に
より行う
主は 主 を有する
主総会は最高意思決定機関であり,
会社に関するあら る議 を り う ことができる
主総会議事 を 成し,Webサイト 上で開 しなければならない
スウェーデン議会議員は年 総 会 の出 を有する
年 総会に して,一 民が
出 し,経営 に して を行 う場を設ける
役
役は 主総会で任 される 役の任 は原則1年だが,定 に
することにより4年を えない で 長することができる
企業 よび経営 から独立している必 要がある*
役の 数は企業 よびその経営 から独立し, なくとも2名は主要 主から独立している必要がある*
その企業または子会社の経営 と 任 できる 役は1名までとする
役の 任プロ スは政 が
監 する
役会
公開企業の場合は3名以上の 役の 設置が必要
役が 数人いる場合はその中から 議長を 任し,議長の責任で 役会 を開 する
な ェン ーバ ンスを るよう
に めなければならない 役の人数は6 8人とする
最高経営責任者
(CEO) -
CEOは 役会に 属し,日常業務に ける意思決定を担う
役会に出 し,発 する 利を有
する
役(議長以外)との 任が
CEO は 役会で任 , ,
される
CEO は 役と 任してはなら ない
外部監査人
外部監査人を1名以上設置する必要が あり,人数は定 に する 外部監査人は 主総会で任 される 外部監査人は監査報 を 成し,年
総会に 出する
監査報 には,関連法規に って 成されたものであることが明 される 必要がある
会計 査 が外部監査人を 名 する 利を有する
* 企業 よび経営 からの 役の独立性は,一定 ,企業またはその な関係会社の CEO, 業員などでなく,一定の限 を える個人的な報 , 要な がないことなどが要 となっている。主要 主からの独立性は,主要 主との 的または 的な な どを勘 し,総合的に される。また,主要 主が法人である場合で,その法人の 業員または 役である場合には主要 主から独立 しているとはみなされない。な ,主要 主とは, もしくは 的に なくとも10%の 式または議決 を有する 主をいう。
コー ートガバナンス・コー で設置が されている委員会 。 委員会名
名委員会
役会議長 よびそのほかの 役の 者, よびその報 を 主総会に する 外部監査人 者とその報 を 主総会に する
委員長を なくとも3名以上のメンバーにより構成されなければならない
メンバーの 数は企業 よびその経営 から独立し, なくとも1名は 主から独立していなければならな い
CEO よびそのほかの経営 はメンバーになることができない
役は委員長の 位に くことができ ,また 数を めてはならない 名委員会のメンバーの任 ,または任 方法は 主総会で決議する
報 委員会
役員報 をはじめとした経営 の 用 を 備する
員数については に規定していないが,メンバーは企業 よびその経営 から独立していなければならない 役会議長が委員長の 位に くことができる
役が業務を行うほうが適切と 断される場合,委員会を設置しなくてもよい
監査委員会
務報 に関する 備,外部監査人との 会を通じた監査方針の調整,外部監査人から されるサー スについ てのガイ イン 成,監査業務の , よび 名委員会との 業による外部監査人 の 定などの業務を行 う
なくとも3名以上のメンバーにより構成されなければならない 経営 に加 っている 役はメンバーになることができない
メンバーの 数は企業 よびその経営 から独立し,1名以上は主要 主から独立していなければならない 役が業務を行うほうが適切と 断される場合,委員会を設置しなくてもよい
* 委員会の委員の独立性については,コー ートガバナンス・コー の 役の独立性の規定が 用されている。
3.1 と の
有限責任会社( 例は 式会社) は文 通り,出 者の責任を有限とすることで出 者を するものであ り,たとえ会社が多 の を って たんしたとしても 出 者の責任は出 までであり,出 を えて 担を
められることはない(たとえば が国の会社法 104 に「 主の責任は,その有する 式の を限 とす る」と定められている)。このように出 者を するのは,
出 者により設立された会社が たんした場合にすべての 責任を うとなると,国民経 の 全な発 を 害するか らである。すな ち, 主の責任を有限にすることで,一 部の大 持ちだけではなく広く一 大 から を るこ とが となり,大規模な会社を設立できるのである。た とえばト 自 式会社では,発行 み 式総数33
1 , 主数687,028 名, 主の出 は1 2 900
にの る(2017年3月31日 )。同社はこれだけの の出 を広く日本のみなら から集め,大規模な 場を 設して自 を ・ して り,まさに出 者が有限責任である か で国民経 が 全に発 してい るのである。
一 に の 式会社では,出 者( 会社の所有者)
と会社の経営者は別であり,所有と経営の分 が起こる。
企業を経営するにはその 門 が必要であり,一 的に出
者はその 見を持たないため,当 の である。とこ が,所有と経営の分 が と情報の 称性が じ, 経営者が所有者を 切ることがある(エー ェン ー などと呼ばれる)。経営者が自分の報 を不当に高くしたり,
者を役員に えたり,い い な 切り行 が考えら れる。このような れがあってはいくら有限責任であ う と,一 大 が出 を行うは がなく,国民経 の 全な 発 が 害されてしまう。そのため,国は会社法などで規
をつくり,会社経営の透明性を高めているのである。 に上場企業については出 者( 主)が不 定多数になる ため, に しいルールが られている。
3.2 ス ェ ンの のガバナンス
会社の所有と経営の分 の 果,経営者の管理・監 が 必要となった経 を したが,ここでスウェーデンの上 場企業の ースを見てみよう。出 者( 主)は経営者の 管理・監 にあたり, ・ の たつの方法を有して いる。 者では, 主は 主総会に いて会社に関するあ ら る議 を り うことができると規定されて り,
的に経営に関 することが である。後者では,同じ く 主総会に いて 主は 役,外部監査人を 任し, 自 の 理として 的に経営 を監 ・監 する。すな ち, 役は会社 部にあって経営 の会社運営を り
コー ートガバナンス・コー で設置が されている委員会 。 委員会名
名委員会
役会議長 よびそのほかの 役の 者, よびその報 を 主総会に する 外部監査人 者とその報 を 主総会に する
委員長を なくとも3名以上のメンバーにより構成されなければならない
メンバーの 数は企業 よびその経営 から独立し, なくとも1名は 主から独立していなければならな い
CEO よびそのほかの経営 はメンバーになることができない
役は委員長の 位に くことができ ,また 数を めてはならない 名委員会のメンバーの任 ,または任 方法は 主総会で決議する
報 委員会
役員報 をはじめとした経営 の 用 を 備する
員数については に規定していないが,メンバーは企業 よびその経営 から独立していなければならない 役会議長が委員長の 位に くことができる
役が業務を行うほうが適切と 断される場合,委員会を設置しなくてもよい
監査委員会
務報 に関する 備,外部監査人との 会を通じた監査方針の調整,外部監査人から されるサー スについ てのガイ イン 成,監査業務の , よび 名委員会との 業による外部監査人 の 定などの業務を行 う
なくとも3名以上のメンバーにより構成されなければならない 経営 に加 っている 役はメンバーになることができない
メンバーの 数は企業 よびその経営 から独立し,1名以上は主要 主から独立していなければならない 役が業務を行うほうが適切と 断される場合,委員会を設置しなくてもよい
* 委員会の委員の独立性については,コー ートガバナンス・コー の 役の独立性の規定が 用されている。
3.1 と の
有限責任会社( 例は 式会社) は文 通り,出 者の責任を有限とすることで出 者を するものであ り,たとえ会社が多 の を って たんしたとしても 出 者の責任は出 までであり,出 を えて 担を
められることはない(たとえば が国の会社法 104 に「 主の責任は,その有する 式の を限 とす る」と定められている)。このように出 者を するのは,
出 者により設立された会社が たんした場合にすべての 責任を うとなると,国民経 の 全な発 を 害するか らである。すな ち, 主の責任を有限にすることで,一 部の大 持ちだけではなく広く一 大 から を るこ とが となり,大規模な会社を設立できるのである。た とえばト 自 式会社では,発行 み 式総数33
1 , 主数687,028 名, 主の出 は1 2 900
にの る(2017年3月31日 )。同社はこれだけの の出 を広く日本のみなら から集め,大規模な 場を 設して自 を ・ して り,まさに出 者が有限責任である か で国民経 が 全に発 してい るのである。
一 に の 式会社では,出 者( 会社の所有者)
と会社の経営者は別であり,所有と経営の分 が起こる。
企業を経営するにはその 門 が必要であり,一 的に出
者はその 見を持たないため,当 の である。とこ が,所有と経営の分 が と情報の 称性が じ,
経営者が所有者を 切ることがある(エー ェン ー などと呼ばれる)。経営者が自分の報 を不当に高くしたり,
者を役員に えたり,い い な 切り行 が考えら れる。このような れがあってはいくら有限責任であ う と,一 大 が出 を行うは がなく,国民経 の 全な 発 が 害されてしまう。そのため,国は会社法などで規
をつくり,会社経営の透明性を高めているのである。
に上場企業については出 者( 主)が不 定多数になる ため, に しいルールが られている。
3.2 ス ェ ンの のガバナンス
会社の所有と経営の分 の 果,経営者の管理・監 が 必要となった経 を したが,ここでスウェーデンの上 場企業の ースを見てみよう。出 者( 主)は経営者の 管理・監 にあたり, ・ の たつの方法を有して いる。 者では, 主は 主総会に いて会社に関するあ ら る議 を り うことができると規定されて り,
的に経営に関 することが である。後者では,同じ く 主総会に いて 主は 役,外部監査人を 任し,
自 の 理として 的に経営 を監 ・監 する。すな ち, 役は会社 部にあって経営 の会社運営を り
まり,外部監査人は会社外部の独立した 三者として監 査を行い,その 果を 主総会に報 する。
ここでは所有と経営の分 に起 する 決 とし て,スウェーデン上場企業の機関設計を したが,これ はコー ートガバナンスの一部分といえよう。より広 には,ステー ホル ー(利害関係者)は所有者と経営者 だけでなく,企業に して を行う 行などの 者,
, 業員,一 などが考えられる。さらには企 業が などを起こす 性があれば,企業と 関係 な一 大 もステー ホル ーといえよう。企業 のグ ローバル とも まって上場企業のコー ートガバナン スは高 して り, 国でコー ートガバナン ス・コー が 定されるなど,その関心も高まっている。
4 との ESS と の
と て
独立行政法人は,独立行政法人通則法(以下,通則法)
を根拠法として り,「国民 び社会経 の 定 の公 共上の見地から に 施されることが必要な事務 び事 業」を行う法人であり,その組織,運営 よび管理につい ては個別法にも別 定められている。たとえば理 学研究 所は文部科学省の 下にあり,「国立研究開発法人理 学研 究所法」という個別法に いて設置されている。
ここではESS ABが 際に設置している機関と,その運
営 態について,ESS AB が 年発行する Annual Report 2013[5] に まれるCorporate Governance Report(以下,
コー ートガバナンス報 )とESS ABの定 [6]を参 して,日本の独立行政法人と比較しながら 者の違いに ついて する( 4)。
4.1 会 の の
在ESS ABの 式はスウェーデン政 が74%,デンマ
ー 政 が 26%を所有している。これらの 主が 主総会 に いて 任した 名委員会が,ESS AB の 在・ の 決に要する 力の に いて, 役を 名し
ている。この 果, 役はスウェーデン として5名,
デンマー として3名の合計8名が 任されて り,
また, 役会議長はスウェーデン から, 役会 議 長はデンマー から 出されている。 役の人数は,
式の 有比 ( 出 比 )により, 役の 国比 が調整されているものと思 される。
独立行政法人では,役員の任 は通則法に き,主務 大 が独立行政法人の長と監事を任 する。任 にあたっ ては「必要に応じ,公 の 用に めなければならない」,
「公 によらない場合であっても,透明性を しつつ,
者の の めその の適任と認める者を任 するた めに必要な 置を るよう めなければならない」とさ れている。また,個別法の定めにより,そのほかの役員が ある場合は,法人の長が任 する。
ESS AB の場合には, 主総会が開かれて 名委員会の
委員が任 され,当 委員が 役を 名する を経る のと比較すると,独立行政法人の長 よび監事の任 は主 務大 が 常に い 限を持つように設計されているとい える。これは,独立行政法人という性格上,ESS AB のよ うに 数の出 者がいる けではないため,出 者の利害 を調整する必要がないためであ う。
4.2 の
ESS ABでは外部監査人は 主総会で任 されるが,2016
年 ではKPMG ABが外部監査人となっている。外部監
査人は国有に関する方針に いて開 務のある 務 , コー ートガバナンス報 ,サスティナ ティ報
について監査または ーを行い,その適切性につい て意見を 明する。通則法では,役員の場合と同様に,主 務大 が独立行政法人の会計監査人を 任する。また,会 計監査人は公認会計士または監査法人でなければなら , 務 ,事業報 (会計に関する部分に限る。) よび 決算報 について監査することが定められている。ESS ABの外部監査の となっている報 と比較すると,独 立行政法人はコー ートガバナンス報 ,サスティナ
4 ESS ABと日本の独立行政法人のガバナンスの比較
比較 目 ESS AB 独立行政法人 者の違い
意思決定会議体の 参加者の 任
主総会で 名委員会が任 さ れ,当 委員が 役を 名
主務大 が長と 事を任
そのほかの役員は長が任
主総会を経るか,長が決めるか
外部監査人の 任
主総会で 任
務 ・コー ートガバナン ス報 ・サスティナ ティ報
について監査または ーを行う
主務大 が 任
務 ,事業報 (会計に関 する部分に限る。) よび決算報
について監査する
主総会を経るか,主務大 が決 めるか
務 以外の報 も
ー か
ティ報 を 成する 務がない。今後,独立行政法 人のガバナンスやサスティナ ティに する国民の関心 が高まれば,スウェーデンに ける政 有企業のように,
これらの報 が国民に開 され,外部監査人による監 査・ ーが行 れるようになるかもしれない。
ESS AB では必要な人 ,研究機器, などを多数の
国から集 して形成した国際共同研究組織体を有限責任会 社の形態で運営している。機関設計はスウェーデンの会社 法を 本とし,国有に関する方針 よびコー ートガバ ナンス・コー により,ガバナンスについてさらに しく 規定されている。これによりESS ABでは上場企業と同 のガバナンスが されるよう 機関が設計され,透明 性の や情報開 のための仕組みが整備されている。ま た,研究機関に けるコー ートガバナンス報 ,サ スティナ ティ報 の 成,外部監査人によるそれら の報 の 業務も が国では見られないものであった。
大規模な国際研究機関を設立する場合,ホスト国を主と した 組織は人 ,施設設備, を多数の国から調 する必要がある。これら ースの調 と き えに,
の に応じた発 力の や,成果の公 な分 の が必要となるが,これを とする法人形態がそのホ スト国に用意されている必要がある。
国立大学法人や独立行政法人といった が国でこれまで
運用されてきた法人形態では上 の 応が難しいことが 定され,その場合には 式会社という法人形態での運用も ESS などの事例からは一考の があるものと考えられる。
本報 を 成するにあたって,独立行政法人に けるガ バナンスについて情報 をいただいた有限責任監査法人 トーマツの と, いただいた公認会計士の
,関根 に したい。
[1] 地 明, ,松下 ,最 コー ートガ
バナンスのすべて (日本 業出 社) . [2] The Swedish Companies Act (SFS 2005:551).
[3] Ministry of Enterprise and Innovation, State ownership policy 2013, 28 October 2013.
[4] Swedish Corporate Governance Board, The Swedish Corporate Governance Code (applicable from 1 February 2010), May 2008.
[5] European Spallation Source ESS AB, Annual Report 2013, 21 March 2014.
[6] European Spallation Source ESS AB, Articles of association, 25 March 2011.
ティ報 を 成する 務がない。今後,独立行政法 人のガバナンスやサスティナ ティに する国民の関心 が高まれば,スウェーデンに ける政 有企業のように,
これらの報 が国民に開 され,外部監査人による監 査・ ーが行 れるようになるかもしれない。
ESS AB では必要な人 ,研究機器, などを多数の
国から集 して形成した国際共同研究組織体を有限責任会 社の形態で運営している。機関設計はスウェーデンの会社 法を 本とし,国有に関する方針 よびコー ートガバ ナンス・コー により,ガバナンスについてさらに しく 規定されている。これによりESS ABでは上場企業と同 のガバナンスが されるよう 機関が設計され,透明 性の や情報開 のための仕組みが整備されている。ま た,研究機関に けるコー ートガバナンス報 ,サ スティナ ティ報 の 成,外部監査人によるそれら の報 の 業務も が国では見られないものであった。
大規模な国際研究機関を設立する場合,ホスト国を主と した 組織は人 ,施設設備, を多数の国から調 する必要がある。これら ースの調 と き えに,
の に応じた発 力の や,成果の公 な分 の が必要となるが,これを とする法人形態がそのホ スト国に用意されている必要がある。
国立大学法人や独立行政法人といった が国でこれまで
運用されてきた法人形態では上 の 応が難しいことが 定され,その場合には 式会社という法人形態での運用も ESS などの事例からは一考の があるものと考えられる。
本報 を 成するにあたって,独立行政法人に けるガ バナンスについて情報 をいただいた有限責任監査法人 トーマツの と, いただいた公認会計士の
,関根 に したい。
[1] 地 明, ,松下 ,最 コー ートガ
バナンスのすべて (日本 業出 社) . [2] The Swedish Companies Act (SFS 2005:551).
[3] Ministry of Enterprise and Innovation, State ownership policy 2013, 28 October 2013.
[4] Swedish Corporate Governance Board, The Swedish Corporate Governance Code (applicable from 1 February 2010), May 2008.
[5] European Spallation Source ESS AB, Annual Report 2013, 21 March 2014.
[6] European Spallation Source ESS AB, Articles of association, 25 March 2011.