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厚生労働科学研究費補助金(肝炎等克服政策研究事業)
(分担)研究報告書
肝硬変の疾病費用(Cost of Illness)に関する研究
研究分担者 長谷川 友紀 (東邦大学医学部社会医学講座)
研究協力者 北澤 健文 (東邦大学医学部社会医学講座)
研究協力者 松本 邦愛 (東邦大学医学部社会医学講座)
研究要旨
【目的】我が国の肝硬変(アルコール性のものを除く)(ICD-10コード:K74.3~K74.6) の疾病費用(Cost Of Illness:COI)を推計した。
【方法】推計には公開されている官庁統計データを用いた。1996年~2014年におけるCOI を算出するとともに、将来推計を行った。将来推計値は固定型推計と変動型推計 により求めた。
【結果】COIは1996年の4,437億円から2014年の2,081億円に減少していた。将来推計 では、固定型推計では横ばいに推移、変動型推計では減少傾向が続くことが示唆 された。
【考察・まとめ】肝硬変のCOIは減少傾向であり、その傾向は将来も続くと考えられた。
今後は、肝硬変に至る以前の肝炎治療なども考慮した肝疾患のCOIを検討する必 要がある。
A.研究目的
我が国における肝硬変の症例数は 40〜 50万人と推計されている。本研究では、Rice らにより開発された手法1)を用いて、我が 国の肝硬変(アルコール性のものを除く)
(ICD-10 コード:K74.3~K74.6)の疾病 費用(Cost Of Illness:COI)を推計した。
B.研究方法
COIは入院、外来診療等に係る直接費用、
治療によって失われた労働の対価である罹 病費用、死亡に伴う人的資本の喪失である 死亡費用から構成される。COIの推計には 公開されている官庁統計データを用いた2)。 直接費用の推計には社会医療診療行為別調 査等、罹病費用の推計には患者調査、労働
力調査等、死亡費用の推計には賃金構造基 本統計調査等をそれぞれ用いた。
1996 年~2014 年における患者調査実施 年(3年間隔)のCOIを算出するとともに、
将来推計を行った。将来推計値は先行研究3
-6)で用いた固定型推計と変動型推計(線 形型推計、対数型推計、混合型推計)によ り求めた。固定型推計では、健康関連指標
(死亡率、人口あたり外来回数、人口あた り入院回数、平均在院日数)を2014年の値 に固定し、人口、年齢構成のみが変化する と仮定した。変動型推計では、人口および 年齢構成の変化に加え、健康関連指標の推 移が現状のペースで今後も継続すると仮定 した。1996年から2014年における各健康 関連指標の推移から、項目毎に近似曲線を
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77 作成し、2017年以降の各健康関連指標値を 推計してCOIを算出した。対数近似により 求めたものを対数型推計、線形近似により 求めたものを線形型推計とした。混合型推 計では、各健康関連指標について、対数近 似と線形近似の同一年齢階級における決定 係数を比較し、係数が高い年齢階級の数が 多く示された方の推計を用いた。なお、近 似曲線を用いた推計で、将来の予測値が 0 を下回る場合に最低値を設定した。死亡 率・人口当たり外来回数、人口当たり入院 回数については、0 を下回る直前の値を最 低値とした。また平均在院日数については、
OECD Health Dataより、8.2日を最低値 に設定した。
C.研究結果
1996 年~2014 年において、肝硬変によ る死亡数、総外来回数、総入院日数はいず れも減少していた。平均死亡年齢は男性、
女性共に上昇していた。
COI推計額は、4,437 億円(1996 年)、 3,973 億円(1999 年)、3,715 億円(2002 年)、3,008億円(2005年)、2,721億円(2008 年)、2,375億円(2011年)、2,081億円(2014 年)であり、減少傾向であった。また、将 来推計では、固定型推計では横ばいに推移、
対数型推計、線形型推計、混合型推計では いずれも減少傾向となることが示唆された
(表1、図1)。 D.考察
肝硬変のCOIは減少傾向であり、その傾 向は将来も続くと考えられた。死亡数減少、
平均死亡年齢の上昇により死亡費用は減少、
総入院日数、総外来回数の減少により罹病 費用は減少していた。
わが国における肝硬変の成因は肝炎ウイ ルスによるものが多く、約7 割が HCV感
染、約 2 割が HBV感染によるとされる。
近年の肝炎治療では、高いウイルス学的著 効達成を示す新規開発薬を含めた新しい医 療技術が臨床に導入されている。それらは 高い治療効果をもたらす一方で、医療費も 高額となる。今後は、肝硬変に至る以前の 肝炎治療なども考慮した肝疾患のCOIを検 討する必要がある。
参考文献
1) Rice, DP: Estimating the cost of illness. Am J Public Health Nations Health. 57(3):424-40. 1967.
2) 松本邦愛、芳賀香代子、花岡晋平、北 澤健文、長谷川友紀:部位別がんの疾 病費用.日本医療マネジメント学会雑 誌.13(1):2-6.2012.
3) Haga K, Matsumoto K, Kitazawa T, Seto K, Fujita S, Hasegawa T: Cost of illness of the stomach cancer in Japan - a time trend and future projections. BMC Health Serv Res.
13: 283. 2013.
4) Hayata E, Seto K, Haga K,
Kitazawa T, Matsumoto K, Morita M, Hasegawa T: Cost of illness of the cervical cancer of the uterus in Japan -a time trend and future projections. BMC Health Serv Res.
15: 104. 2015.
5) Matsumoto K, Haga K, Kitazawa T, Seto K, Fujita S, Hasegawa T: Cost of illness of breast cancer in Japan:
trends and future projections. BMC Res Notes. 8: 539. 2015.
6) Kitazawa T, Matsumoto K, Fujita S, Seto K, Hanaoka S, Hasegawa T:
Cost of illness of the prostate cancer in Japan -a time-trend analysis and
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78 future projections. BMC Health Serv Res. 15: 453. 2015.
E.研究発表 1. 論文発表 なし
2. 学会発表
1)北澤健文、松本邦愛、藤田茂、瀬戸加 奈子、平尾智広、長谷川友紀:肝硬変 の疾病費用(Cost of Illness)の推計.
第 18 回日本医療マネジメント学会学 術総会.福岡.2016.04.
2)Kitazawa T, Matsumoto K, Hirao T, Hasegawa T: Cost of illness of liver cirrhosis in Japan -a time trend and future projections-. 33rd International scientific meeting on quality and safety in health care (ISQua). Tokyo. JAPAN. 2016. 10 F.知的財産権の出願・登録状況 なし
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表1. COI推計結果(単位:億円)
1996 1999 2002 2005 2008 2011 2014
直接費用 677.1 658.7 749.7 439.5 449.4 266.7 289.8
罹病費用 554.1 496.9 301.7 217.0 162.5 147.7 138.0
死亡費用 3,206.3 2,817.5 2,664.2 2,352.0 2,109.3 1,960.9 1,653.3 COI 4,437.5 3,973.1 3,715.7 3,008.5 2,721.2 2,375.3 2,081.2
表2. 将来推計結果(単位:億円)
2017 2020 2023 2026 2029 直接費用 固定型推計 300.9 311.1 320.7 326.0 331.7
対数型推計 302.8 302.1 298.1 292.7 256.9 線形型推計 231.5 206.2 181.0 154.9 132.2 混合型推計 214.9 169.9 138.7 112.2 62.9 罹病費用 固定型推計 138.4 141.1 142.6 143.1 142.1 対数型推計 116.7 105.0 97.7 90.4 82.7 線形型推計 87.4 74.6 63.0 52.3 44.4 混合型推計 88.5 67.2 55.5 45.9 37.5 死亡費用 固定型推計 1,666.2 1,685.5 1,670.3 1,685.9 1,669.5
対数型推計 1,706.1 1,570.7 1,433.4 1,298.8 1,164.9 線形型推計 1,161.2 816.0 673.6 586.4 510.6 混合型推計 1,706.1 1,570.7 1,433.4 1,298.8 1,164.9 COI 固定型推計 2,105.4 2,137.8 2,133.6 2,155.1 2,143.3 対数型推計 2,125.6 1,977.8 1,829.2 1,681.9 1,504.5 線形型推計 1,480.1 1,096.9 917.6 793.6 687.3 混合型推計 2,009.4 1,807.8 1,627.6 1,456.9 1,265.2
図1 COI将来推計(億円)
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 5,000
1996 1999 2002 2005 2008 2011 2014 2017 2020 2023 2026 2029 年次推移 固定型推計 線形型推計 対数型推計 混合型推計
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