共有メンタルモデルに関する社会心理学研究 [ PDF
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(2) 目について,所属チームで活動上重視していると考えられ. 標売上達成度を高める効果を持っていることが示された(β. る順に順位付けを行わせた。各メンバーの順位評定から,. = .90, p < .001)。 5. チームごとに Kendall の一致係数 W を算出した。 Table 1. 共有メンタルモデル質問項目 a. 商品の高品質化. b. コストの削減. c. 衛生管理の徹底. d. 積極的な宣伝. e. 自店や商品の個性のアピール. f. 丁寧な接客. g. 自店の状況や周囲の環境の把握. 目 標 売 上 達 成 度 ( 万 円 ). 4. 共有メンタルモデル. 3. +1 SD. 2. -1 SD. 1 0 -1 -2 -3 -4. -5 -1SD. 3. チーム内ダイアログ チーム内のコミュニケーション量の一側面として,チー. チーム内ダイアログ +1SD. Figure 2. 単純傾斜検定結果. ム内のダイアログ量を取り上げた。Tjosvold, Law, & Sun(2003)の尺度を参考に 4 項目を作成し(Table 2),各項目. 考察. についてメンバーがどの程度行っていたか 5 件法で回答を. 仮説 1,2 ともに支持された。チーム内ダイアログは,チ. 求めた。個人ごとに尺度得点化を行った上で,チーム内平. ームのパフォーマンスへ単純な促進的効果を持っていなか. 均値を算出した。. った。メンバーがメンタルモデルを共有している程度によ って,チームのパフォーマンスへ及ぼす影響力が異なって. Table 2. チーム内ダイアログ尺度因子分析結果 項目. 因子負荷量. いた。しかしこの結果は,共有メンタルモデルとチーム内. 2 お互いに効率的に働けているかどうか,いつも議論した. .88. 1 目標の達成方法について様々な観点から話し合った. .83. 4 仕事が上手く行えているかどうか再検討した. .82. な理解のためには,因果関係を加味した上で更に議論を重. 3 計画が上手くいかなかった場合に何ができるかを考えた. .81. ねていくことが望まれる。. ダイアログの関係を一時点で概観したに過ぎない。体系的. 2. Note 累積寄与率:R = 77.25%,α = .90. 研究 2 結果. 問題と目的. 共有メンタルモデルとチーム内ダイアログが目標売上達. 2 つの共有メンタルモデル. 成度に及ぼす影響を検討するため,強制投入法による階層. 研究 1 では共有メンタルモデルを画一的に測定したが,. 的重回帰分析を行った(Table 3)。その結果,主効果のみの. 単一の側面のみで捉えていくことには限界がある。そこで. モデルと比較して,交互作用項を含めたモデルは,交互作. 研究 2 では,共有メンタルモデルをタスク関連の共有メン. 用項の投入による R. タルモデルとチーム関連の共有メンタルモデルに分け. 2 の増加が有意であった。. (Mathieu, Heffner, Goodwin, Salas, & Cannon-Bowers,. Table 3. 階層的重回帰分析結果. 2000),各分類によって他の変数から受ける影響やチームの. 目標売上達成度 step 1. step 2. 共有メンタルモデル. .56. **. .38. *. チーム内ダイアログ. .49. **. .54. **. 共有メンタルモデル×チーム内ダイアログ R 2(adjusted) F Δ R2 F for Δ R 2. -.38 .49 9.64. *. 9.50. ***. .11 5.19. 時間経過,タイミングの影響 実存するチームは,形成初期から既に活動が円滑である ことはなく,熟練した状態へ至るまでには相応の時間を要. .60 ***. パフォーマンスへ及ぼす効果に違いがあるのか検討を行う。. *. Note ***p < .001,**p < .01,*p < .05. 交互作用が有意であったため,単純傾斜検定を行った. する。この事実を鑑みると,時間経過やタイミングといっ た要因の影響は看過出来ない。Kozlowski, Gully, Nason, & Smith(1999)のチーム発達モデルを踏まえると,チーム内の 活動はチームの発達段階によって変容していくことが推察 される。同一の行動や学習が行われるにしても,実施する. (Figure 2)。その結果,メンタルモデルの共有度が高い. タイミングによって,その効果が異なるものと考えられる。. (+1SD)場合はチーム内ダイアログが目標売上達成度に有意. メンタルモデルの共有促進要因. な影響を持っていないのに対し(β = .19, n.s.),メンタルモ. 研究 1 の問題として,メンタルモデルが如何にして共有. デルの共有度が低い(-1SD)場合はチーム内ダイアログが目. されるか考慮されていない点が挙げられる。メンタルモデ.
(3) ルの共有を促進する要因の 1 つとして,クロス・トレーニ ディスプレイ. ング(cross-training)がある。クロス・トレーニングは“各 メンバーが他メンバーの職務を学ぶ教育方略”(Volpe,. キーボード. Cannon-Bowers, Salas, & Spector, 1996, p.87)と定義され. ジョイスティック. ており,実施することによってメンタルモデルの共有を促. 実験 参加者. 進することが実証されている(Marks, Sabella, Burke, &. 実験 参加者 衝立. Zaccaro, 2002)。しかし,従来の研究ではクロス・トレーニ. Figure 3. 実験の様子. ングの実施時期に関しては議論が行われていない。先述の タイミングに関する議論を踏まえると,クロス・トレーニ. 課題内容の説明(ブリーフィング) 20分. ングの効果が現れるためには適切なタイミングに実施する 必要があるものと考えられる。. 操作の練習(要因操作) 1回目. 目的と仮説. 休憩. 5分. 操作の練習(要因操作) 2回目. 以上の研究知見に従えば,クロス・トレーニングがメン. 休憩. タルモデルの共有へ与える影響力は,実施するタイミング つの共有メンタルモデルがクロス・トレーニングの実施タ. 質問紙への回答(共有メンタルモデルの測定) 10分. イミングの違いから受ける影響について検討することを目 的とした。これまでの議論から,以下に示す仮説を立て,. デブリーフィング. これらについて検証を行った。 説 1 仮 説 2 仮 説 3. 15分. 5分. 実験課題の実施(パフォーマンスの測定) 15分. によって異なるものと考えられる。そこで研究 2 では,2. 仮. 15分. 5分. Figure 4. 実験次第. メンバーがメンタルモデルを共有しているチームほど, 高いパフォーマンスを発揮するだろう。. 操作練習1 操作練習2. メンタルモデルの共有度は, 統 制 条 件. 後期にクロス・トレーニングを実施したチーム, 早期にクロス・トレーニングを実施したチーム, クロス・トレーニングを実施しなかったチームの順に高いだろう。 チームのパフォーマンスは, 後期にクロス・トレーニングを実施したチーム, 早期にクロス・トレーニングを実施したチーム, クロス・トレーニングを実施しなかったチームの順に高いだろう。. 方法 方法および対象 大学生および大学院生を対象に実験室実験を実施した。 不備のあったデータを除いた 43 チーム, 86 名(男性 26 名,. ト レ早 ー期 ニク ンロ グス 条・ 件 ト レ後 ー期 ニク ンロ グス 条・ 件 Note. 実験課題. ジョイスティック 担当者. J. J. J. キーボード 担当者. K. K. K. ジョイスティック 担当者. K. J. J. キーボード 担当者. J. K. K. ジョイスティック 担当者. J. K. J. キーボード 担当者. K. J. K. J:ジョイスティックの操作,K:キーボードの操作. Figure 5. 各条件の操作練習次第. 女性60名)を最終的な分析に用いた。 なお, 平均年齢は21.14 歳(SD = 1.79)であった。. 測定項目. 実験課題および実験手続き. 1. チームのパフォーマンス. Mathieu, Heffner, Goodwin, Cannon-Bowers, & Salas. 実験参加者には以下の目標を課し,合計得点を最大化. (2005)の実験パラダイムに依拠し,実験課題として Falcon. するよう求めた。(1)生存:課題時間を生存出来れば 3 ポ. 4.0: Allied Force を用いた。これはコンピュータを用いたフ. イントを得る,(2)飛行ルートの順守:設けられているル. ライト・シミュレーション課題であり,チーム内で相互協. ートを守って飛行すれば 2 ポイントを得る,(3)敵機の迎. 調していくことが求められる。実験参加者には 2 人 1 組で. 撃:敵機を 1 機迎撃するごとに 1 ポイントを得る。. チームを形成してもらい,1 機の戦闘機(F-16)の操縦を行わ. 2. 共有メンタルモデル. せた。その際,1 人にはジョイスティックの操作,もう 1 人にはキーボードの操作を担当させた。 実験状況を Figure 3 に,実験手続きを Figure 4 に,要因 操作を Figure 5 に示す。. Mathieu et al.(2005)の測定方法に従った(Table 4, 5)。課 題に関連する 14 項目を挙げ,各項目の関係性を 9 件法で評 価させた。個人のメンタルモデルの指標(次数中心性)を計算 した後,チームごとにその相関係数を求め,分析に用いた。.
(4) を検討するため,データ全体および条件ごとに強制投入法. Table 4. タスク関連の共有メンタルモデル測定項目 レ 武. ー. 敵. 妨. 器. ダ. 機. 害. 選. ー. 敵. か. 機. 方. 速. 択. の. 機. ら. 器. 向. 度. ・. 読. の. の. の. 転. 調. 射. 取. 撃. 避. 使. 換. 整. 撃. り. 墜. 難. 用. による階層的重回帰分析を行った。その結果,データ全体 および後期クロス・トレーニング条件において,統制変数 のみのモデルと比較して,独立変数を含めたモデルは,独 立変数の投入による R2 の増加が有意であった(Table 7)。統 制条件および早期クロス・トレーニング条件に関しては,. 上昇・下降. 有意なモデルが得られなかった。また,全ての条件におい. 方向転換. て交互作用項の投入による R2 の増加が認められなかった。. 速度調整 武器選択・射撃. Table 7. 階層的重回帰分析結果. レーダーの読取り 敵機からの避難. トレーニング条件. チームのパフォーマンス. Table 5. チーム関連の共有メンタルモデル測定項目 自. 後期クロス・. 統制条件. 敵機の撃墜. チ. コ. ー. ミ. シューティング・ゲーム熟達度. step 1. step 2. step 1. .16. .14. .52. ュ. タスク関連の共有メンタルモデル. .47. ニ. チーム関連の共有メンタルモデル. .01. 分. ム. の. の. 変. 意. 方. 化. 状. ケ. 見. 針. へ. 況. ー. R (adjusted). の. の. の. の. シ. F. 主. 決. 適. 把. ョ. 張. 定. 応. 握. ン. Δ R2. 2. F for Δ R. リーダーシップの発揮. .00. .19. 1.08. 4.31. step 2. †. **. 5.80. †. .60. *. -.17 .21 *. 4.56. .53 †. 5.80. .19 2. .40. .32 **. 4.93. Note **p < .01,*p < .05,†p < .10,有意なモデルのみ記載. 自分の意見の主張 チームの方針の決定 変化への適応 状況の把握. 考察 仮説 1 は部分的に支持され,仮説 2,3 は支持されなかっ. 3. シューティング・ゲームの熟達度 シューティング・ゲームの熟達度を表す指標として,4. た。タスク関連の共有メンタルモデルはチームのパフォー. 項目作成し(Table 6),4 件法で回答を求めた。個人ごとに尺. マンスを予測する一方で,チーム関連の共有メンタルモデ. 度得点化を行った上で,チーム内平均値を算出した。. ルは予測出来ていなかった。ただしこれは,後期クロス・. Table 6. シューティング・ゲーム熟達度尺度因子分析結果. トレーニング条件のみに限られていた。この結果から,チ. 項目 2 1 3. あなたが最もシューティングゲームをしていた時期は, どの程度の頻度で遊んでいましたか あなたのこれまでのシューティングゲーム経験で, 最も当てはまるのはどれですか あなたのシューティングゲームの腕前は, ご自身でどの程度だと思いますか. 4 あなたはシューティングゲームをすることが好きですか. 因子負荷量 .87 .86. ームのパフォーマンスを向上させるには,第一に各メンバ ーがタスクに関するメンタルモデルを正確に形成していく ことが重要であり,その上で共有を進める必要があること が示唆される(Figure 8)。このことから,ただ闇雲にクロ. .57. ス・トレーニングを実施すれば良い訳ではなく,適切なタ. .33. イミングに行われることが効果的であると予想される。. 2. Note 累積寄与率:R = 72.12%,α = .79. 結果 分散分析 条件間で各変数に差があるかを検討するため,1 要因 3. 各メンバーが正しい メンタルモデルを形成 メンバーが メンタルモデルを共有. チームの パフォーマンス向上. Figure 8. 仮説モデル. 水準の参加者間計画の分散分析を行った。その結果,タス ク関連の共有メンタルモデル(F(2,40) = 1.39, n.s., η2p = .07),チーム関連の共有メンタルモデル(F(2,40) = 0.18,. n.s.,. η2p. = .01),チームのパフォーマンス(F(2,40) = 1.08,. 結論 2 つの研究を通して, 共有メンタルモデルがチームにもた らす意義について検討を行った。チーム内のコミュニケー. n.s., η2p = .05)全てにおいて有意差が見られなかった。. ションや,チーム・マネジメントの実施時期について再考. 重回帰分析. を求める提言を得たことは,チーム活動の是正に有用と言. タスク関連の共有メンタルモデルおよびチーム関連の共 有メンタルモデルがチームのパフォーマンスに及ぼす影響. *. えるだろう。より良いチームづくりのため,今後更に検討 を加え,理論の精緻化が進められることが望まれる。. *.
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