年金改革のルール化―逃げ水年金からの脱却を目指 して―
著者 中嶋 邦夫
学位授与大学 東洋大学
取得学位 博士
学位の分野 経済学
報告番号 甲第176号
学位授与年月日 2007‑04‑05
URL http://id.nii.ac.jp/1060/00003967/
平成18年度
年 金 改 革 の ル ー ル 化
−逃げ水年金からの脱却を目指して−
東 洋 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 科 経 済 学 専 攻 博士後期課程4210040001番 中 嶋 邦 夫
学位請求論文要旨
構 成
第 1 部 問 題 の 整 理
第 1 章 公 的 年 金 制 度 の 意 義 と 実 施 上 の 問 題 点 第II部分析1:なぜ逃げ水年金になったのか
第 2 章 年 金 財 政 予 測 の 問 題 第 3 章 政 策 パ ラ メ ー タ の 問 題 第 4 章 決 定 過 程 の 問 題
第5章年金改革が家計の消費貯蓄計画に与えた影響 第 Ⅲ 部 分 析 2 : 逃 げ 水 年 金 は 解 消 さ れ た の か
第6章2004年改正の定性的な分析と確率論的年金財政モデルの解説 第7章2004年改正のリスク
第 8 章 最 低 給 付 水 準 の 保 証 に 必 要 な コ ス ト 第 9 章 公 的 年 金 ガ バ ナ ン ス の あ り 方
第IV部結論
第10章ルール化の完成に向けて
第 1 部 問 題 の 整 理
第 1 章 公 的 年 金 制 度 の 意 義 と 実 施 上 の 問 題 点
公的年金に対する国民の不信や不満は大きく、 特に、
公的年金に対する国民の不信や不満は大きく、年金改革に注目が集まっている。
1985年改正以降の給付削減の連続は「逃げ水年金」とも呼ばれ、年金不信の大きン
1985年改正以降の給付削減の連続は「逃げ水年金」とも呼ばれ、年金不信の大きな原因と なってきた。
公的年金は、(1)終身年金における逆選択の回避、(2)モラルハザードによる引退後の生 活保護受給の回避、(3)近視眼的な個人による老後準備不足の回避、という市場や個人の失 敗を回避するために必要な制度である。
しかし、公的年金自体にも失敗が存在するため、上記のような制度改正の繰り返しが発 生する。この失敗の要因は、次のような政府や政治、有権者の誤りだと考えられる。
(1)政府の年金財政予測における誤り
(2)政府の政策パラメータ設定における誤り
(3)政治的な決定過程における誤り
2004年改正は、これらの政府や政治、有権者の誤りに対して保険料水準固定方式やマク ロ経済スライドといったルールを導入し、逃げ水年金からの脱却を試みた改革であった。
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公 的 年 金 改 革 に 関 す る 研 究 は こ れ ま で も 存 在 す る が 、 そ の ほ と ん ど が 研 究 さ れ た 時 点 の 制度や改革案に対する分析にとどまっており、過去の改革をまとめて振り返った研究はほ とんど存在しない。また、今後の公的年金を分析する基礎となる2004年改正については、
新たに導入されたルールに関する検証が十分ではない。
そこで本論文では、これまでの改革を振り返って上記の誤りを明らかにした上で、2004 年改正後の制度がそれらの問題をどの程度解決しているかを検証し、今後の公的年金制度 が持続可能性を維持し、逃げ水年金から脱却するための課題を明らかにする。本論文は、
先行研究に残された課題に取り組み、今後の政策的な課題を明らかにしている点で、学術 的、政策的な貢献がある。
以下、本章では、本論文の導入部分として次の点を述べる。まず第2節では、公的年金 の意義を再確認する。第3節では上記の3つの誤りと持続可能性の関係について述べる。
最後に第4節では日本の公的年金制度の概要を述べた上で本論文の分析対象を限定し、移 行の各章で議論の対象となる厚生年金財政の構造について解説する。最後に第5節で、次 章以降の本論文の構成を述べる。
第 Ⅱ 部 分 析 1 : な ぜ 逃 げ 水 年 金 に な っ た の か
第II部では、先行研究で不足していた過去の複数の改革を一連のものとしてとらえる視点 で、次のような分析を行った。
第 2 章 年 金 財 政 予 測 の 問 題
第2章では、年金財政再計算における予測能力の問題に注目した。年金財政再計算に将 来の人口や経済の見通しを織り込むプロジェクシヨン方式が初めて導入された1973年改正 を起点に、それ以降の財政再計算でどのような前提条件の予測の誤りがあったかを定量的 に分析した。その結果は以下のように要約できる。
(1)15‑64歳人口に対する被保険者比率はスタート時点からずれが生じており、財政再計算 のたびに予測がずれてくる要因となっている。1999年再計算では推計手法の見直しが 行われたが、雇用形態の流動化が進むという社会状況も影響して、依然として難しい 問題となっている。
(2)将来の長寿化の見通しが不十分な点も問題である。この点も、2004年改正で用いられ た将来人口推計でも死亡率の予測が1とおりしか示されていないなど、今後も課題が 残っている。
第 3 章 政 策 パ ラ メ ー タ の 問 題
第3章では、制度改正の際に見直される給付乗率などの政策パラメータの問題に注目し た。これまでの制度改正を制度創設時から2000年改正にかけて連続的にサーベイし、どの 改革のどのようなパラメータ変更が持続可能性を低下させる要因になったかや、近年の給 付削減が持続可能性を回復するのに十分であったかを分析した。その結果、次の点が明ら かになった。
(1)1973年改正の給付水準が、当時のスタンダードであるILOの水準よりも1割高い水 準に設定され、後に給付削減が必要となる原因となった。
(2)加入期間の伸びによって将来の給付水準が過大になることが、十分に考盧されなかっ た点が問題だった。加入期間の伸びは十分予測可能であったにもかかわらず問題が先 送りされ、後に給付削減が必要となる原因となった。
(3)長寿化の進展に対応した支給開始年齢の引き上げを行わなかった点が問題だった。長 寿化が進む中で支給開始年齢を据え置いたため、公的年金の役割が予想を超える長寿 への対応から、誰もが受け取れる老後準備へと変化した。
(4)1973年改正を主因に発生した過大な給付を調整する方策が、徐々にしか実施されなか
った点が問題だった。第4章で触れる政治的な決定過程の問題もあるが、原案の時点 から移行期間を長くとりすぎるなどの問題があった。
第 4 章 決 定 過 程 の 問 題
第4章では、年金改革の政治的な決定過程の問題に注目した。ランダムな政治的な環境 や政治(有権者)の近視眼性によって、年金の持続可能性が棄損されたかどうかを分析し た。その結果は、次のとおりである。
(1)保険料の設定について、近視眼的な決定がみられた。当面の保険料引き上げが、原案 よりも抑えられ、現受給者や近い将来の受給者に影響がある給付削減には政治的な抵 抗が強かった一方、相対的に将来世代への影響が大きい最終保険料率は、改革のたび
に引き上げられてきた。
(2)改革の内容に経路依存性がみられた。年金改革はその都度ばらばらに行われたわけで はなく、支給開始年齢の引き上げが数度の失敗を経て段階的に達成されたように、過 去の年金改革の経緯がその後の年金改革に影響を与えていた。
(3)年金改革は、偶発的な政治情勢や有能な官僚の有無に左右されていた。さらに90年代 後半以降の改革は、年金受給者の増加と有権者の高齢化により、年金改革自体が政治 状況を左右するようになった。
(4)1985年以降の改革では政治的な影響を抑えるために、①有識者調査の実施、②選択肢 の提示、③給付削減と一部制度改善の抱き合わせ、という厚生労働省の世論説得パタ ーンが発見された。また2004年改正では、政治的なリスクを回避するために将来の保 険料や給付削減ルールが法定された。
第5章年金改革が家計の消費貯蓄計画に与えた影響
第5章では、以上の改革の結果が家計に与えた影響をライフサイクル・モデルを使って 世代別に分析した。その結果は次のとおりである。
(1)1980年改正では、1960年生まれ以降の世代で、拠出に対する給付の割合や効用水準が 低下している。これは、2006年に賦課方式に移行し、改正時点で未成年や未出生だっ た世代が高い負担を負う計画だったためである。
(2)1985年以降の改正では概ね給付削減が実施されたため、1950年台後半生まれ以前の世 代で拠出に対する給付の割合や効用水準が低下している。
(3)2000年改正や2004年改正では給付削減に最終保険料率の引き下げを組み合わせること で、将来世代の拠出に対する給付の割合や効用水準を上昇させ、特定世代の給付の割 合や効用水準を引き下げることが可能になっている。
(4)各世代が経験してきた改革の影響を累積すると、1950〜1955年生まれは負担に対する
給付の倍率βの低下が大きかった。それ以前の世代は、保険料引き上げ計画変更の影
響を受けにくいため、βの低下が小さかった。1960年生まれ以降の世代は、最終保険 料率引き下げの恩恵も受けられるため、βの低下が小さかった。第ⅡI部分析2:逃げ水年金は解消されたのか
第III部では、第II部で明らかになった予測の誤りや政策決定の誤りという問題に対して、
2004年改正がどのように対処しているかを検証した。
第6章2004年改正の定性的な分析と確率論的年金財政モデルの解説
第6章では、2004年改正で導入されたルールについて解説し、次章以降の定量分析に先
立ち、定性的に分析した。その結果、(1)将来の保険料率が引き上げられることで未出生世代などが不利益を被らないように保 険料率を法定した、
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(2)段階的な実施を伴う支給開始年齢の引き上げなどと違い、現時点の受給者から給付削 減を実施できるスライド率を調整した、
(3)調整のルールを法定して政治的なリスクを避ける
という点で、これまでの問題を解決しようとするものだと評価できた。ただし、2004年改 正後の年金財政がどの程度の持続可能性を有し、必要な給付水準を保証できるかは定量的 に検証する必要がある。
第6章の後半では、その検証のために第7章と第8章で用いる確率論的な財政予測モデ ルを解説した。2004年改正に対しては未だ先行研究が十分でなく、かつ2004年改正で盛り 込まれた自動均衡装置の検証は不十分である。筆者達の確率論的な財政予測モデルは、こ れら先行研究が着手していない課題を解決するツールである。
第7章2004年改正のリスク
第7章では、第6章で説明した確率論的な財政予測モデルを用いて2004年改正後の年金 財政が持続可能性を維持し、給付の最低水準を保証することは可能なのかを検証した。そ の結果は次のとおりである。
(1)団塊世代が受給者になって年金財政が厳しくなる2015年の積立度合は、平均で4.2倍、
通常想定できる最も悲観的な場合でも3.1倍となる見通しであり、積立金が枯渇するよ うな危機的状況ではない。
(2)ただし、給付水準(モデル所得代替率)をみれば、平均で49.0%にまで低下し、最低 保証水準である50%を確保できない可能性が56.5%ある。悲観的な場合には、モデル 所得代替率が42.9%にまで低下する。
(3)人口や経済の変化に対する感応度を分析した結果、次のことが明らかになった。
①経済要素の変化に対しては、持続可能性を確保できる。
②少子高齢化が現在の予想より悪化すると、給付水準の低下が大きい。
③運用方針の変更に対しては給付水準の上昇と財政状態の健全化がトレードオフの 関係にあり、給付設計と運用方針の総合的な検討が必要。
第 8 章 最 低 給 付 水 準 の 保 証 に 必 要 な コ ス ト
第8章では、第7章で用いたモデルに法律附則に記載された最低給付水準保証を行う仕 組みを加えて、最低給付水準保証を行うために必要なコストを推計した。このコストは法 案の審議時点では明らかにされておらず、政治的な決定過程で生じた隠れたコストといえ
る。推計の結果は次のとおりである。
(1)最低給付水準保証を行うために必要なコストは、ピーク時において、平均で0.8%、リ スク時で3.1%の保険料率に相当することが明らかになった。
(2)さらに感応度分析の結果、物価上昇率が上方シフトした場合や実質賃金上昇率が下方
シフトした場合、出生率が下方シフトした場合、死亡率が下方シフトした(長寿化)の 場合、ローリスク・ローリターンで運用した場合には、このコストが増加することも 明らかになった。(3)最低給付水準を割り込まないように予め政策パラメータの変更で対応するには、支給 開始年齢の1〜2歳引き上げや保険料率の1〜2%の引き上げが必要。
第9章公的年金ガバナンスのあり方
第9章では、過去に発生した政策立案時や政策決定時の問題がなるべく発生しないよう にするためのガバナンスのあり方について、アンケートの分析を踏まえて考察した。
アンケート分析の結果、国民の意識は次のように解釈された。
①国会議員は年金制度に対して責任があり、その行動も重要
②政策企画を担う官僚も年金制度に対する責任がある
③制度執行を担当する公務員には責任が少ないが、誠実に従事すべきである これらの結果から、今後のガバナンスのあり方について次のような示唆を得た。
(1)アンケート結果にみられる国民の意識への対応や、や今後の有権者の高齢化による政 治リスクを回避するために、審議会のあり方を改善する必要があろう。具体的には、
各委員の立場を明らかにして、委員の任命を透明化する必要がある。運営においても、
事務局からの独立性を高める必要がある。
(2)制度執行についても、委員任命方法や職務が明確化された評価委員会が監視する仕組 みが必要である。
第IV部結論
第10章ルール化の完成に向けて
第10章の前半では、以上の分析を要約し、逃げ水年金の要因と考えられる3つの誤りが 過去の年金改革でどのように発生していたか、2004年改正でどのように改善され、何が課 題に残っているかを次表のようにまとめた。
年 金 財 政 予 測 に お け る 誤 り 過 去 の 状 況
誤 り の 有 無 誤 り が あ っ た 具 体 的 な 例 ・財政再計算スタート時点か
らの被保険者比率のずれ
・長寿化の織り込み不足
2004年改正(ルール化)の効果 問 題 の 有 無
改 善 さ れ た 点
残 さ れ た 課 題
課題解決の 方 向 性
改 善 さ れ た が 問 題 が 残 る
・予測誤差の影響をマクロ経 済 ス ラ イ ド で 吸 収
・予測方法の改善
・最低給付水準の保証と財政 の自動均衡装置の両立が困 難
・人口要素の変化が直接には 調 整 さ れ て い な い
実際の出生率が、足下では予 測 よ り 下 回 っ た
・ 死 亡 率 の 予 測 が 1 と お り し か 示 さ れ な か っ た
.政府は確率論的な財政予測 を 行 わ な か っ た
・確率論的な財政予測の実施
・死亡率予測の複数化
逃 げ 水 年 金 の 要 因 政 策 パ ラ メ ー タ 設 定
に お け る 誤 り
誤 り が あ っ た
・将来の加入期間進展を考慮 しない設定
・長寿化進展の中で支給開始 年 齢 問 題 を 放 置
・賦課方式化により将来世代 にのみ負担(1980年改正)
改 善 さ れ た が 問 題 が 残 る
・世論調査や有識者調査の実 施
ス ラ イ ド や 保 険 料 の 引 き 上 げを毎年実施
・財政均衡期間の更新やマク ロ 経 済 ス ラ イ ド の 再 発 動 な ど将来に起こりうる事象の 説 明 不 足
・設定された保険料水準で は、給付水準と持続可能性の 両 立 が 困 難
・給付面だけで財政バランス を 調 整 す る 是 非
・基礎年金も給付調整するこ との是非
・支給開始年齢のルール化や 要 件 の 見 直 し
・保険料引き上げのルール化
政 治 的 な 決 定 過 程 に お け る 誤 り
誤 り が あ っ た
・支給開始年齢の問題には経 路依存性や偶発的な政治状 況が影響した
・政治の近視眼性により保険 料の引き上げが国会で原案
よ り 抑 え ら れ た
改善されたが問題が残る
・保険料の引き上げ計両や給 付 調 整 の ル ー ル を 法 定
・財源の検討がないまま最低 給付水準の保証が盛り込ま れ た
国会がスキャンダラスな議 論 に 終 始 し 、 法 案 の 内 容 を 十 分に審議しなかった
高 齢 化 に よ っ て 受 給 者 の 意 見 が 選 挙 に 大 き く 反 映 さ れ る 懸 念
・政策決定や執行に対するガ バ ナ ン ス の 改 善
・情報提供の充実や明瞭化
第10章の後半では、以上の結果から得られた示唆として、これまでのような約5年ごと の政治過程を経る制度改革をやめて、ルール化された制度調整に移行すべきと主張した。
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詳細は次のとおりである。
これまでの年金改革は、そのたびごとに公的年金の持続可能性を維持・向上しようと試 みられてきたため、(1)年金財政予測の誤り、(2)政策パラメータ設定時の考盧不足、(3)近 視眼的な政治決定という問題が発生してきた。人口や経済の見通しをもとに年金財政を予 測し、政策パラメータを決め、さらに政治的に決定するという過程を経るために、改革に 時間がかかり、それがまた前提の予測誤差を引き起こす。しかも、年金問題が常に意識さ れているわけではなく、「5年に1度のお祭り」として年金改革が処理されている。その 結果が「逃げ水年金」の発生であり、その言葉に象徴される年金不信である。
この問題を回避するためには、公的年金の持続可能性を維持する方法をルール化して、
その範囲内で小刻みに調整していくことが必要である。小刻みな調整は、5年ごとの大き な改革と比べて即時の対応が可能であるとともに、家計などの経済主体に与える影響は小 幅である。ルール化された調整は、政治プロセスを経てそのたびごとに決められる改革よ りも、将来の見通しが立てやすい。ルール化と確率論的予測を組み合わせれば、将来の財 政状況や、家計に与える影響は、かなりの部分を変動リスクを考盧して事前に予測できる。
変動リスクを考慮して事前に予測できることは、家計にとっても政府にとっても、非常に 有用であろう。
2004年改正は、保険料水準固定方式やマクロ経済スライドなどをルール化し、法定した 点で、随時の制度改革という従来の方法からルール化された制度調整へと転換を図った、
意義のある改革であった。しかし、厚生労働省は改正の意義や仕組みに説明を抑え、有権 者である国民やマスコミは、給付水準や保険料といった数字、未納問題や執行上の問題と いったスキャンダラスな問題に目を奪われた。また国会も未納スキャンダルに終始して、
ルール化について十分な審議が行われなかった。そのために、ルール化という方向性は正 しかったものの、2004年改正では不十分なルール化しかできなかった。
そこで上記の分析結果から、次のルールの追加を提案した。
(1)保険料に関するルール(例えば実質賃金上昇率の範囲内で保険料率をあげる)
(2)支給開始に関するルール(例えば平均寿命の変化への連動や年齢以外を要件にする)
(3)最低給付水準保証のためのルール(例えば発生が予測された時点で議論を開始)
(4)持続可能性の計測を複数化するルール(例えば有限均衡方式か永久均衡方式の併用)
これらの追加ルールの導入は容易ではないが、長期にわたる制度である公的年金の持続 可能性を担保するためには、これから生まれてくる将来の加入者についても配慮した上で、
問題を克服する努力が必要である。
筆者の今後の研究課題は、(1)上記の追加ルールについて、具体的な内容を検討し、数量 的に検証する、(2)不確実な随時改革からリスクが把握可能なルール化への変更が家計に与 える影響を分析する、(3)過去の改革の定量的な分析を追加する、(4)国民年金を分析する、
(5)公的年金の一元化を分析する、という点である。