教頭による職務遂行の過程を規定する構成要因に関する研究 [ PDF
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(2) 求められる。日々の教育活動はむしろ職員室を預かって. のために教頭は校務を組織成員と協同で行い、悩みや苦. いる教頭が組織文化をつくっている。そこで、教頭とし. しみ、喜び、感動などを共に味わいながら組織成員を育. ての本来の職務遂行を規定する構成要因を明らかにし、. てていかなければならない。. 日々の教育活動において遂行すればその過程において、. (1) 校長の補佐職としての教頭. 学校の組織が確立し、組織成員の研修意欲を高め、資質・. 教頭の職務について、 「教頭は校長を助け、 校務を整理. 能力の向上を図ることができ、さらに組織文化を創造す. し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる。 」 (学校教. ることができるであろう。. 育法 28 条4項)とある。そこで、教頭の職務である「校. 5.研究の内容と方法. 長を助ける」 ということについてみておきたい。 「教頭は. 教頭の職務については「教頭は校長を助ける」とある。. 校長を助け・・・」とあるのは、教頭は校長の補助役、. これは教頭は職員室内で、職員と日頃よりコミュニケー. 補佐役であるということである。教頭が校長を「助ける」. ションを密にすることを示したものである。教頭がこの. ということは、校長の職務全般にわたって助けることで. ような活動を遂行すれば、校長を補助・補佐することに. あり、校長の職務である「校務をつかさどること」 、 「所. もなり、学校全体においては組織成員の職務や教育活動. 属職員を監督すること」 (学校教育法 28 条3項)を助け. を指導・助言していくことにもなる。そこで、本研究で. るのであるからその範囲は校長の職務の全般について十. は、教頭の日常的な職務の実態を把握することにより、. 分に理解しておかなければならない。教頭の「校長を助. 教頭の活動と教頭としてのリーダーシップの在り様がそ. け」という職務の内容としては、①校長が示す学校経営. の学校にどのような組織文化をつくり上げているかをア. 目標や経営方針を組織成員に対してその理念が十分に理. ンケート調査の集計結果を中心に分析・考察する。. 解されるように働きかけること、②校長が持っている教. 6.論文の構成. 育理念を示すために校内のあらゆる事情を情報として提. 序章では、学校教育が抱えている教育課題の現状を取. 供できるように常に収集をしておくこと、③校長が学校. り上げ、研究の目的と視点、主題設定の理由、仮説内容. の実情を十分に理解するために、教頭は職員室内で、組. と方法等、研究の概要を述べる。第1章ではわが国の教. 織成員と日頃よりコミュニケーションを密にしておき、. 育制度上の事情について触れ、歴史的背景がもたらして. 教職員の意見や要望を正確に伝えることができるように. いる教頭職の職務上の課題性を探る。第2章では教頭職. しておくことなどが挙げられる。したがって、日常的な. としての役割について法的・理論的な面を中心に経営論. 校内での職務は校長の職務を校長の指導権限内で担う場. の立場から述べる。第3章では教頭が日常的に校務とし. 面が多くなってくると考えられる。また、教頭の「校務. て、組織成員に対してどのような働きかけをするか、教. を整理し・・・」とあることから、校務を整理するとい. 育現場の現状を踏まえながらリーダーシップ論を述べる。. う、教頭の職務を遂行することによって、校長を補助・. 第4章では調査研究を基に統計的に教頭の職務の現状と. 補佐することはもちろんであるが、そのことが学校全体. 遂行過程における組織文化形成の因果関係を考察する。. においては組織成員の職務や教育活動を指導・助言して. 第5章では今後の教育界の動向を踏まえ、教頭の役割に. いくことにもなる。. ついて示し、課題に対する展望を拓く。終章では本研究. (2) 調整職としての教頭. によって明らかになったことや残された課題について述. 教頭の職務は①校長を助けること、②校務を整理する. べ、研究のまとめを図る。. ことにある。校長を助けることと校務の整理とは密接な. 7.教頭職の役割. 関連がある。教頭の「校務を整理すること」とは校長の. 教頭は職員室の経営を直接的に担っており、職員室の. つかさどる校務と同じであり、教頭独自の校務は存在し. 主である。学校改善に当たって教頭は校長以上に職員室. ない。このことは、教頭が職務上責任を持つということ. の人的・組織的・運営上の諸問題を的確に把握しておく. ではない。次に「整理する」とは法規上は「調整する」. 必要がある。学校の特色ある文化創造は、校長・教頭の. というように理解されている。調整とは一般には、複数. リーダーシップにかかっており、組織成員の資質の向上. の当事者の間における主張・企画・行為などについて食. と力量形成についても、 教頭の果たすべき役割は大きい。. い違いを是正し、または重複を整理し、意見の不一致を. なかでも主任(ミドルリーダー )の育成は特に重要である。. 調和する等によってそれらの間における調子を整えるこ. また、職員室の雰囲気づくりは組織成員一人一人に目標. とをいう」とある。そこで、調整とは学校教育目標の達. が共有化(連関性)されているか、学校教育目標に向か. 成のためにそれぞれの組織成員の意見の食い違いを共有. って教育実践が行われている(協働性)かにかかる。そ. 化し、教育活動を調和的に協働させていくこと及び教育.
(3) 活動に取り組む以前の事前準備のための調整を行うこと である。. ②校務分掌組織の活性化(Do)を図る。 校務分掌は各学校の実情に合わせて、教育目標達成に. 次に、調整機能には校務分掌などと関連し、垂直的調. 向けて働く組織でなければならない。そのためには教頭. 整と水平的調整とから把握する必要がある。縦と横の組. が校務分掌組織を常に見直し、改善するための資料を収. 織が機能するような調整を行わなければならない。縦の. 集することが責務となる。学校規模にもよるが一人一役. 系列では校長、教頭、主任、教諭という各職務機能にお. になっていたり、単なる仕事の分担であるという意識が. ける活動の調整を行う。また、横の系列では教科指導、. あったり、複数担当者がいても活動しているのはその中. 学年指導、学級指導、生活指導、保健指導という各職務. の限られた人数であったりすると組織は有機的に働くこ. 機能における活動の調整を行う。この時、教頭は情報を. とはできない。また、校務分掌の活性化のためには、次. 伝えたり、受け取るパイプ役になる等の活動のみではな. の点に留意して改善を試みることが重要である。. く、縦と横の関連を調整することによって組織体として. ア.組織がお互いに連関し合いながら協働体制がとれる. の連関性を強めることになる。 (3) 職員室のリーダーとしての教頭 教頭の職務は校務全般にわたって整理することを担 っている。 実際には校務は組織成員に分掌されているが、. ような構造に組み替えること。 イ.各々の組織成員の個性が発揮できるようにするた めに、職務の内容を整理し係の在り方を検討する。 ウ.なるべく重複するような複雑な構造になっている. 分掌されているのみでは学校教育目標を達成することは. 場合には、単純化してお互いに連絡を取りながら職. できない。そのためには分掌される校務について調整し. 務が遂行できるようにする。. なければならない。校務は組織成員に分掌されているの. エ.それぞれの職員が自分の職務以上に他の職務につい. で組織成員の調整は、校務の内容に対して組織成員の実. ても理解を深め、一人一人が経営に参画しているとい. 態に応じて、また個々の組織成員の希望なども取り入れ. う認識を持たせること。. ながら適材適所に分掌しなければならない。実際には分. オ.教頭は学校経営者の一人として一つ一つの校務分掌. 掌しても各分掌で仕事の内容が重なり合ったりすること. がよく機能しているか否かを評価する活動を継続し. が出てくる。したがって、教頭は日常的な活動として仕. て行なうようにする。. 事内容を調整したり、組織成員の間に生じる意見の不一 致等について調整したりすることにより目標達成に近付. ③学校教育目標の達成の評価(See )を図る。 目標が達成できたか、それはどこまで到達できたのか、. きたい。また、学年との関わりについては教頭は直接職. どのくらいの期間で到達できたか、 どんな活動の援助 (手. 員室のリーダーとして組織成員を指導する立場にある。. 段)が有効であったか、どこまで到達したらどの段階ま. 教頭は管理・監督するだけではなく指導という有効的な. で進んだと判断するかという評定尺度等を分析・統合し、. 教育活動を推進することが必要である。教頭には長年に. 反省点を加え、次の計画(P)への資料を収集すること. わたる経験と勘を生かして、困難に直面している教師に. が有効な活動となる。. 指導の手を差しのべる仕事がある。学校で行う学校行事. (5) 教頭のリーダーシップ. や児童会・生徒会行事は、学年単位で計画し活動するこ. 教頭の職務は多岐にわたっている。その中でも最も重. とが多い。この時、学年主任との連絡調整や主任を育て. 要な職務は、学校教育目標を具現化しようとしている校. るという観点からもその関わり方は重要な活動となる。. 長の補佐をするということである。教頭は校長と組織成. そのことが職員室の中の協働性を高めることにつながる。. 員とのパイプ役として意思の通りをよくし、理解を求め. (4) 職員室の経営戦略. て、指導にあたったり、援助の手を差し伸べるなどの活. 学校教育目標を達成するためには、日々の教育実践の. 動が重要になってくる。また、その活動の延長線が教頭. 中で、次の項目について図らなければならない。. の調整職の機能を果たすことになる。さらに日常的な活. ①各組織間の調整(Plan)を図る。. 動としては、学校の組織である、運営委員会、教務委員. 学校教育目標の具現化のためには、学校の規模や教職. 会、学年主任会、生徒指導部会等を動かせるような教頭. 員の実態に応じて組織がつくられ、運営がなされている. としての資質・能力の向上が要請されることになる。そ. が、運営委員会(企画委員会)をはじめ、教務委員会、. の他、学校の教育課題を的確に把握し、解決の見通しを. 研修委員会、学年委員会等、横の連関性をつくりあげる. 持ち、課題解決のため、実践に向かって活動するエネル. ための働きかけが教頭には重要な任務として任されるこ. ギーを教頭自らの研修によって育成していかなければな. とになる。. らない。それによって、組織成員を指導し、組織として.
(4) のボトムアップを図ることが職員室を預かるスクールリ. ○ 「組織文化」について、当該教頭に所属している組. ーダーの職務になる。. 織成員に対する「教頭評価」も資料として収集しな. 8.教頭の職務に関する調査と考察. いと、その相関を的確に把握することはできにくい. 教頭の職務の実態と教育課題の解決のために、どのよ. ことが研究課題として残された。. うに働きかけているかをみるために、福岡県内義務制学. ○ 教頭のリーダーシップスタイル(型)と組織文化の. 校(小学校・中学校) 500 校の教頭を対象に質問紙法に. 形成やその過程に関わる連関性についての相関は明. よるアンケート調査を行ない、その結果を分析すること. らかにできなかった。. によって所期の目的を達成する。. ○ 教頭として、組織成員に対する指導・助言の働きか. ) (1) 研究の成果(研究によって明らかになったこと。. けは当然のことであるが、上司である校長に対して. ア.組織文化が形成されている(または今後、形成され. 教頭という立場からのリーダーシップが成立するか. ると予測できる)学校の共通した教頭の活動として、以. という課題に対しては今後の研究にしたい。. 下の点が認められる。. 9.まとめ. ○ 教頭は率先垂範の心構えで臨んでいる。朝、組織成. 教頭が職員室の経営において、法律や条例を振りかざ. 員の誰よりも早く出勤して、職務遂行の条件整備(窓. しても人は動かないし、組織文化を形成することはでき. の開閉、部屋の照明、冷暖房の調整等)を整え組織. ない。それは本来、法の重要性は組織成員にも理解され. 成員との挨拶によってコミュニケーションを図り、. ていることであり、組織成員一人一人の感情も含めた意. 教頭としての意欲と人間関係を築く努力を行ってい. 識は理論の壁を越え難いものを持っているからである。. る。. 法のみを優先して学校経営に当たっても、一時的には組. ○ 形成される過程についてはP.1の右側の①∼⑩に. 織が形成されても永続しない。それは、権力の前に表面. 示しているがそのことが、順追って形成されること. 上の態様が変容しているに過ぎず、その行動は意識によ. を確認することができた。. る変革ではないからである。教頭としての人間味あふれ. ○ 教頭が校内の組織に対して、十分な働きかけを行っ. た接し方については、1950 年代の研究で明らかになって. ている。例えば、運営委員会で主任が発言できる場. おり、教頭の人格面は大きな要因であり、現在でも不易. を保証し、仕事を分担して責任を持たせるなど、指. のものとして実証できる。また、教頭の職務に関する観. 導の手立てが行き届いている。. 察を通して行ったエスノグラフィク的方法でも、教頭の. ○ また、教頭は各組織(学年会、生徒会担当者会、教 科部会、研修会等)との関わりで、各主任に活動の. 組織成員に対する人格的な側面は組織文化が形成される 過程の要因の一つであることを裏付けている。. 場を与え、教頭自らが指導主事的な立場に立って指 導・助言を行って組織を活性化している。 ○ 各組織成員に自律性が育つと、「総合的な学習の時. 〈参考文献〉 中留武昭. 間」の取り組み等のカリキュラム・マネジメントに 対する認識が育っている。. 東洋館出版社 中留武昭. ○ 教育関係諸団体(PTA、学校評議員、青少協等) に対しても教頭の指導により、組織成員は協力的で. 中留武昭. ○ 教頭は総論として職員会議(学校経営方針の検討) を位置付け、日常的に各論として各種委員会(校務 分掌に関わる活動の打ち合わせ等)を位置付け、組 織成員一人一人に指導・助言を行っている。 イ.組織文化が形成されていない学校 上記に示したような項目の教育活動の内、一つが活 されていなかったり、全般にわたって不十分な取り組み の場合、形成されていない。 ) (2) 残された課題(今後の研究で明らかにすること。. 1998. 『学校経営の改革戦略』 玉川大学出版部. 中留武昭. 1998. 『校長の文化的リーダーシップの構成要因 に関する研究』九州大学出版部. 中留武昭. 1993. 『学校文化を創る校長のリーダーシップ』 エイデル研究所. 中留武昭. 1993. 『学校指導者の役割と力量形成の改革』 東洋館出版社. あり、積極的に参加、発言等を行い、学校組織に対 する地域社会からの信頼関係を形成している。. 『学校改善ストラテジー』. 1999. 『教育改革時代における教頭の職務と役割』 学校運営研究会. 2000.
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