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I はじめに近年 不妊治療における生殖補助技術 (ART) の発達は目覚ましいものがあり 多くの不妊カップルがその恩恵を受けていることは疑いない その技術革新のスピードには急速であり 排卵誘発剤の使用 体外受精 (IVF-ET) 顕微授精(ICSI) といった技術はすでに倫理的な議論の対象からは外れ

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Academic year: 2021

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平成

16 年度愛知県周産期医療協議会調査研究事業

周産期医療に及ぼす不妊治療の影響について

∼愛知県における実態調査∼

名古屋第一赤十字病院 産婦人科

1

名古屋大学医学部附属病院 周産母子センター

2

、産婦人科

3

石川 薫

1

、板倉 敦夫

2

、三井 崇

2

、久野 尚彦

1

岡田 真由美

3

、小谷 友美

3

、早川 昌弘

2

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I はじめに 近年、不妊治療における生殖補助技術(ART)の発達は目覚ましいものがあり、多くの不 妊カップルがその恩恵を受けていることは疑いない。その技術革新のスピードには急速で あり、排卵誘発剤の使用、体外受精(IVF-ET)、顕微授精(ICSI)といった技術はすでに 倫理的な議論の対象からは外れ、完全に市民権を得た感がある。これらの技術は以前のよ うに一部の高度先進医療施設に限定されることなく、一般の不妊専門クリニックが中心と なっておこなっている。 1996 年に日本産科婦人科学会から体外受精における胚移植数の制限する勧告がなされ、 2000 年に FIGO が多胎予防に関するガイドライン(Ethical Guidelines in the Prevention of Iatrogenic Multiple Pregnancy)を発表しているにも関わらず、ART において多胎妊娠 の発生率は依然高く(平成15 年度日本産科婦人科学会倫理委員会登録調査小委員会報告で は、体外受精による多胎妊娠の発生率は 17.3%)、解決された問題とは言えない。周知の 通り多胎妊娠は周産期合併症が高率に起こるため、周産期高次医療施設のハード及びソフ ト資源に影響を及ぼすといえる。このような状況が今後も続けば、現在でもハード及びソ フト資源不足が指摘される周産期高次医療施設、とくにNICU の病床数がますます不足し、 県民および周産期医療に携わる医療関係者の期待に応えるシステムの維持が困難になると 考えられる。また別の問題として、ART は周産期高次医療施設以外で実施されている割合 が高く、こうした実情がART 実施施設および治療を受ける患者に正確にフィードバックさ れていないことが挙げられる。「早く子どもを産みたい」との思いから、とかく不妊治療 の現場では、「多胎でも良いから」との患者からの要望も多い。経済的にも社会的にも負 担の大きい不妊治療の結果、周産期にさらなる経済的負担、長期入院の必要性があること なども、不妊治療を行う段階で正確な情報を与えて、十分なインフォームドコンセントが 得る必要であり、そのためのエビデンスが求められている。 今回我々は、平成16 年 10 月 1 日から平成 16 年 10 月 22 日までの期間で、愛知県下の 周産期高次医療施設における不妊治療による妊娠の影響を前方視的に検討し、さらに名古 屋大学医学部附属病院、安城更生病院を対象として、周産期医療に及ぼす不妊治療の影響 を、主に医療経済的視点から平成15 年1年間の期間で後方視的に解析し、愛知県下の周産 期医療と不妊治療の間の現在の問題点を明らかにすることにした。 Ⅱ 調査方法 1.定点調査 平成16 年 9 月に、愛知県周産期医療協議会指定・認定病院ならびに、平成 15 年度同研 究事業で母体搬送の受け入れを行った実績のある病院を参考に、表1のように愛知県下の 周産期高次医療施設を抽出し、産婦人科代表者には巻末に示すような用紙 A-1、A-2、A-3、 A-4(それぞれ平成 16 年 10 月 1 日、10 月 8 日、10 月 15 日、10 月 22 日用)を、小児科(新

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生児科)代表者には同様に用紙 B-1、B-2、B-3、B-4(日付は各々A-1 から A-4 と同じ)を 送付し、それぞれの施設規模、同日の入院症例の内容およびその中に占める不妊治療によ る妊娠症例の内容、不妊治療による妊娠症例に対する医療者側の意識(A-1 または B-1 のみ) を記入して頂くよう依頼した。調査用紙は平成16 年 11 月に回収した。 2.縦断調査 名古屋大学医学部附属病院、安城更生病院において、平成15 年 1 月 1 日から平成 15 年 12 月 31 日に分娩した産科入院患者、および同期間に新生児入院した患児(安城更生病院は 院内出生児に限定)を対象患者とした。対象患者の入院医療費を集計し、今回の妊娠に関 係する不妊治療の有無および治療内容、多胎妊娠の有無を調査した。さらに新生児入院の 対象患者については入院期間も調査した。不妊治療の有無および治療内容により対象患者 をグループ分けし、各群の入院医療費、入院期間を比較検討した。また多胎症例との関係 についても検討した。 Ⅲ 結果 1.定点調査 1) 調査用紙回収率 表1の通り、依頼した27 施設のうち、産婦人科で全回答頂いた施設は 21 施設(77.8%)、 部分回答頂いた施設は1 施設(3.7%)であり、小児科で全回答頂いた施設は 20 施設(74.1%)、 部分回答頂いた施設は1 施設(3.7%)であった。 調査用紙全体の回収率は、産婦人科で79.6%、小児科で 76.9%であった。 2) 施設規模 回答を得た施設の産婦人科病床数は合計で996 床(1施設あたり 19-87 床、平均 45.3 床)、 産科専用病床数は合計で468 床(1施設あたり 9-44 床、平均 21.3 床)であった。産婦人 科常勤医師数は合計で152 人(1施設あたり 3-27 人、平均 6.9 人)であった。 回答を得た施設の新生児病床数は合計で309 床(1施設あたり 1-36 床、平均 14.7 床)、 NICU 加算病床数は合計で 64 床(1施設あたり 0-12 床、平均 3.1 床)であった。小児科 常勤医師数は合計で192 人(1施設あたり 2-17 人、平均 9.1 人)であり、うち新生児専属 医師数は合計で34 人(1施設あたり 0-6 人、平均 1.6 人)であった。 3) 産科入院状況(表2) 回答を得た4回の定点調査における産婦人科入院患者総数はのべ3129 人で、産婦人科総 病床数に対する割合は 84.0%であった。これに対し、産科入院患者総数はのべ 1723 人で、 産科専有総病床数に対する割合は93.5%であり、産婦人科入院患者総数の 55.1%を占めた。

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経腟分娩の産婦・褥婦、及び帝王切開の術前・術後患者を合計した分娩患者総数はのべ 931 人で、これは産科入院患者総数の 54.0%であった。 母体搬送患者の総数はのべ155 人で、産科専有総病床数に対する割合は 4.2%であり、産 科入院患者総数の9.0%を占めた。 OHSS 患者と不妊治療目的で入院している患者を合わせた不妊治療中患者総数はわずか のべ14 人で、これは産婦人科入院患者総数の 0.4%を占めるに過ぎなかった。 4) 新生児入院状況(表3) 回答を得た4回の定点調査における新生児入院患者総数はのべ1225 人で、新生児総病床 数に対する割合は100.7%、NICU 総病床数に対する割合は 464.0%であった。 母体搬送及び新生児搬送による新生児入院患者数が新生児総病床数に対する割合はそれ ぞれ 24.2%、15.4%であった。これを NICU 総病床数に対する割合で考えると、それぞれ 112.5%、71.6%を占めた。 多胎妊娠による新生児入院患者数及び新生児総病床数に対する割合は 24.7%、NICU 総 病床数に対する割合は114.4%であった。 5) 産科入院医療に及ぼす不妊治療後妊娠の影響 回答を得た4回の定点調査における不妊治療後妊娠患者(不妊治療群と称する)数はの べ 170 人で、産科専有総病床数に対する割合は 9.2%であり、産科入院患者総数の 9.9%を 占めた(表4)。不妊治療群における母体搬送症例数は24 例で、母体搬送症例総数の 15.5% を占めた。また、不妊治療群の中で母体搬送症例が占める割合は14.1%であった(表4)。 不妊治療群の不妊因子及び不妊治療の内訳をそれぞれ図1、図2に示す。不妊因子は不 明の症例が最も多いが、わかっているもののなかでは排卵障害の占める割合が大きかった。 また不妊治療では体外受精の占める割合が圧倒的に大きく、56.9%を占めていた。 次に、不妊治療群の入院理由の内訳を、産科入院症例全体と比較してみた。産科入院症 例全体では図3aに示すように、経腟分娩及び帝王切開といった分娩に関係する患者が 50%以上を占めており、妊娠管理目的での入院症例の割合は 30-40%であった。これに対し、 不妊治療群では図3bに示すように、妊娠管理目的での入院症例が約4分の3を占め、中 でも多胎妊娠管理が全体の 39.4%も占めていた。分娩に関する患者は 13.5%を占めるに過 ぎなかった。 入院理由ごとの産科入院症例数における不妊治療群の占める割合を検討してみたところ、 多胎妊娠管理で入院した患者の半数以上を不妊治療群が占めており、他の入院理由と比較 して圧倒的に割合が大きかった(図3c)。 6) 新生児入院医療に及ぼす不妊治療後妊娠の影響 小児科を対象にした4回の定点調査において、患者の母親の不妊治療の有無、内容につ

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いて情報を頂いた施設は 8 施設(小児科で全回答頂いた施設の 40.0%、新生児患者数の 58.8%)であった。従って、ここでの統計結果はこの8施設に限定したものである。なお、 これら8施設における新生児病床数、NICU 病床数に対する新生児患者総数、新生児搬送、 母体搬送、多胎児の割合は、全回答頂いた施設の割合と大きな差はなかった(表5)。不妊 因子についてはほとんどの施設で情報がなかったため、集計は不可能であった。 不妊治療後妊娠から出生した患者(不妊治療群と称する)数はのべ85 人で、新生児病床 数、NICU 病床数に対する割合はそれぞれ 11.2%、39.4%であり、新生児入院患者総数の 11.8%を占めた(表5)。 不妊治療群における母体搬送症例数はのべ46 例で、母体搬送症例総数の 15.5%を占めた。 また、不妊治療群の中で母体搬送症例が占める割合は54.1%であった(表5)。 これに対し、不妊治療群における新生児搬送症例数はのべ 5 例で、新生児搬送症例総数 のわずか2.6%を占めるに過ぎなかった。また、不妊治療群の中で新生児搬送症例が占める 割合は5.9%であった(表5)。 不妊治療群における入院患者のうち、多胎児はのべ52 人で、多胎児入院総数の 17.2%を 占めた。また、不妊治療群の中で多胎児が占める割合は26.8%であった(表5)。 不妊治療群の不妊治療の内訳を図4に示す。不妊治療では産科入院よりもさらに体外受 精の占める割合が圧倒的に大きく、68.2%を占めていた。 不妊治療群の入院理由の内訳を、産科入院症例全体と比較してみた。産科入院症例全体 (図5a)も、不妊治療群(図5b)もほとんど同じ傾向であり、いずれもいわゆる未熟 児のために入院した症例が3分の2近くを占めた。入院理由ごとの産科入院症例数におけ る不妊治療群の占める割合を検討してみたところ、外科疾患でわずかに大きい傾向を認め たものの、産科入院のように特徴的に割合が大きい疾患は存在しなかった(図5c)。 7) 意識調査 高次周産期医療施設の医師が不妊治療後妊娠患者に対して抱く印象について、いくつか の項目に分けて調査した。 「患者側の不安が強い」(図6a)、「患者側からの質問や要望が多い」(図6b)といっ た患者に対して抱く印象は、産科、小児科ともに約8割の施設で有しているという回答で あった。 「帝王切開が多い」(図6c)については、産科、小児科ともに約8割の施設でそのよう な印象を持つという回答であったが、「治療方針が慎重になる」(図6d)という印象を持 つ施設は、産科では約8割であったのに対し、小児科では半数に満たなかった。 「多胎が多い」(図6e)、「切迫流早産、早産による入院が多い」(図6f)という印象 を持つ施設は、産科、小児科ともに7割以上に達し、小児科の方がより強い印象を持つ傾 向にあった。

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「母体搬送や緊急入院が多い」(図6g)、「NICU 入院が多い」(図6h)という印象を持 つ施設は、産科ではともに半数に満たなかったのに対し、小児科では6割以上に達した。 また、「入院期間が長い」(図6i)という印象を持つ産科施設は、8割以上に達した。 「産褥期にうつ状態になる割合が高い(産科)」(図6g)、「先天奇形が多い(小児科)」 (図6h)という患者に対する印象は、ほとんどの施設で否定的であった。 2.縦断調査 1) 入院症例と不妊治療の内訳 名古屋大学医学部附属病院(以下、名大病院)において、2003 年の1年間で産科入院し た分娩症例は260 例、新生児入院した症例は 186 例であった。安城更生病院において 2003 年の1年間で産科入院した分娩症例は1294 例、新生児入院した症例(院内出生児に限定) は500 例であった。安城更生病院産科分娩症例のうち、6 症例は入院医療費が不明であった ため、以下の統計から除外した。 名大病院産科分娩症例のうち、不妊治療による妊娠であった症例(以下、不妊治療群) は全体の18.1%を占め、そのうち体外受精によるもの(以下、体外受精群)が最多で 25 例 (9.6%)であった(図7a)。これに対し、名大病院新生児入院症例では、産科分娩症例と 比較して不妊治療群の占める割合がやや大きく、全体の 23.7%を占め、そのうち体外受精 群がやはり最多で、29 例(15.6%)であった(図7b)。一方、安城更生病院産科分娩症例 のうち、不妊治療群は全体の6.6%を占めに過ぎなかった(図7c)。そのうち、排卵誘発剤 によるもの(以下、排卵誘発剤群)が最多で49 例(3.8%)であった。体外受精群は 24 例 (1.8%)であった。安城更生病院新生児入院症例でも、産科分娩症例と比較して不妊治療 群の占める割合が大きく、全体の15.0%を占め、そのうち体外受精群が最多で、37 例(7.4%) であった(図7b)。 産科分娩症例における多胎妊娠症例は、名大病院で 16 例(6.2%)、安城更生病院で 64 例(5.0%)であった。名大病院で、不妊治療なしの多胎症例は 5 例で、これは非不妊治療 群の2.3%を占めるに過ぎないが、体外受精群では 11 例あり、体外受精群の 44.0%(全体 の4.2%)を占めていた(図7a)。これは安城更生病院でも同様の傾向で、非不妊治療群の 多胎症例33 例(非不妊治療群の 2.7%)、排卵誘発剤群の多胎症例 10 例(20.4%)、である のに対し、体外受精群の多胎症例は17 例あり、体外受精群の 70.8%(全体の 1.3%)を占 めていた(図7c)。 新生児入院症例では、多胎妊娠症例の占める割合は産科より当然大きくなるが、名大病 院で30 例(16.1%)、安城更生病院で 106 例(21.2%)であった。名大病院で、非不妊治療 群の多胎症例は 7 例で、これは非不妊治療群の 5.3%(全体の 3.8%)を占めるに過ぎない が、体外受精群では23 例あり、体外受精群の 79.3%(全体の 12.4%)を占めていた(図7 b)。これは安城更生病院でも同様の傾向で、非不妊治療群の多胎症例 57 例(非不妊治療

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群の 15.4%)、排卵誘発剤群の多胎症例 9 例(37.5%)、であるのに対し、体外受精群の多 胎症例は32 例あり、体外受精群の 86.4%(全体の 6.4%)を占めていた(図7d)。 2) 産科入院医療費と不妊治療の関係 2003 年の1年間の産科分娩症例の入院医療費総額は、名大病院で 1 億 3460 万 1560 円、 安城更生病院で7 億 6122 万 3687 円であった。保険負担金に限定すれば、名大病院で 7675 万6530 円、安城更生病院で 3 億 9177 万 9917 円が費やされていた。ここから単純に平均 すれば、産科分娩入院1症例あたり、名大病院では平均51 万 7698 円(保険負担金では平 均29 万 5217 円)、安城更生病院では平均 59 万 1012 円(保険負担金では平均 30 万 3711 円)が入院医療費として計上されていたことになる。 入院医療費総額の観点からすれば、産科分娩症例全体のうち不妊治療群が要した費用は、 名大病院で23.9%、安城更生病院で 12.9%を占め、入院症例数の割合よりもそれぞれ 5.8%、 6.3%高かった(図8a,c)。名大病院では、不妊治療群うち体外受精群が最も医療費を要 しており、全体の 15.6%で、入院症例数の割合よりも同様に 6.0%高かった(図8a)。安 城更生病院では、体外受精群、排卵誘発剤群が医療費全体のそれぞれ 4.5%、6.1%を占め、 入院症例数の割合よりもそれぞれ2.7%、2.3%高かった(図8c)。 さらに、多胎妊娠との関係を考えると、名大病院で多胎妊娠症例全体が要した医療費は 全体の12.0%であり、症例数との割合と比較して 5.8%高かった。非不妊治療群の多胎妊娠 症例が要した医療費は症例数と割合の上でほとんど変わりないが、体外受精群の多胎妊娠 症例が要した医療費は全体の9.8%に至り、症例数の割合と比較して 5.6%高かった(図8a)。 以上から、名大病院で不妊治療群の入院医療費が高くなっているのは、体外受精群、とく に体外受精による多胎妊娠症例の医療費は多くかかっていることに起因すると言える。こ れに対し、安城更生病院で多胎妊娠症例全体が要した医療費は全体の 12.4%であり、症例 数との割合と比較して7.4%高かった。名大病院とは異なり、非不妊治療群も不妊治療群も 症例数との割合と比較して一様に高かった(図8c)。 なお、保険負担金に限定してみると、上記の傾向はさらに強くなっていると言える(図 8b,d)。 名大病院産科分娩症例における不妊治療別の入院医療費の分布を図9aに示す。症例ご との差が非常に大きいが、多胎症例に関しては、非不妊治療群では単胎症例と比較して大 きな傾向の差はないのに対し、体外受精群では単胎症例と比較して明らかに高くなってい ると言える。不妊治療別に有意差検定を行うと、体外受精群は非不妊治療群と比較して有 意に医療費が高くなっていることが示された(図9b)。しかし、単胎症例だけに限定した 場合、各群間に有意な差は認めなかった(P=0.47; Kruskal-Wallis)。 安城更生病院産科分娩症例における不妊治療別の入院医療費の分布を図9cに示す。こ ちらも他群と比較して、体外受精群では多胎症例が単胎症例と比較して高い傾向にあると 言える。不妊治療別に有意差検定を行うと、その他以外の全ての不妊治療群の亜群が非不

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妊治療群と比較して有意に医療費が高くなっていることが示された(図9b)。中でも体外 受精群はその他の亜群と比較して高い傾向にあることが示された。また、単胎症例だけに 限定した場合でも、名大病院とは異なり、その他以外の全ての不妊治療群の亜群が非不妊 治療群と比較して有意に医療費が高くなっていた(データ表示なし)。 3) 新生児入院医療費と不妊治療の関係 2003 年の1年間の新生児入院医療費総額は、名大病院で 2 億 6877 万 3640 円、安城更生 病院で3 億 5245 万 2280 円であった。ここから単純に計算すれば、新生児入院1症例あた り、名大病院で平均144 万 5019 円、安城更生病院で平均 70 万 4950 円が入院医療費とし て計上されていたことになる。 入院医療費総額の観点からすれば、新生児入院症例全体のうち不妊治療群が要した費用 は、名大病院で 29.6%、安城更生病院で 24.0%を占め、入院症例数の割合よりもそれぞれ 2.2%、9.0%高かった(図10a,b)。名大病院では、不妊治療群うち体外受精群が最も医療 費を要しており、全体の 22.9%で、入院症例数の割合よりも同様に 7.3%高かった(図 10 a)。安城更生病院では、体外受精群、排卵誘発剤+AIH 群が医療費全体のそれぞれ 10.4%、 8.7%を占め、入院症例数の割合よりもそれぞれ 3.0%、7.1%高かった(図10b)。 さらに、多胎妊娠との関係を考えると、名大病院で多胎妊娠症例全体が要した医療費は 全体の 29.9%であり、症例数との割合と比較して 23.7%高かった。非不妊治療群の多胎妊 娠症例が要した医療費は、症例数と割合と比較して3.7%高かったが、体外受精群の多胎妊 娠症例が要した医療費は全体の22.4 に至り、症例数の割合と比較して 10.0%も高く、体外 受精群の医療費のほとんど(98.0%)を占めていた(図10a)。以上から、名大病院新生児 入院症例において、体外受精群の多胎妊娠症例が要した医療費が特徴的に高くなっており、 逆に、その他の不妊治療群の入院医療費は非不妊治療群と比較して特徴的な傾向を示して いないことがわかる。これに対し、安城更生病院で多胎妊娠症例全体が要した医療費は全 体の 31.7%であり、症例数との割合と比較して 10.5%高かった。名大病院とは異なり、非 不妊治療群も不妊治療群も症例数との割合と比較して一様に高い傾向にあった(図10b)。 名大病院新生児入院症例における不妊治療別の入院医療費の分布を図 11aに示す。症例 ごとの差が産科と比較してさらに大きく、1000 万円以上を費やしている症例も複数あるこ とがわかる。多胎症例に関しては、産科と同様に、非不妊治療群では単胎症例と比較して 大きな傾向の差はないのに対し、体外受精群では単胎症例と比較して明らかに高くなって いると言える。不妊治療別に有意差検定を行うと、産科と同様に、体外受精群は非不妊治 療群と比較して有意に医療費が高くなっていることが示された(図11b)。しかし、単胎症 例だけに限定した場合、非不妊治療群と体外受精群では医療費に有意な差は認めなかった。 安城更生病院新生児入院症例における不妊治療別の入院医療費の分布を図 11cに示す。 こちらも他群と比較して、体外受精群および排卵誘発剤+AIH 群では多胎症例が単胎症例と 比較して高い傾向にあると言える。不妊治療別に有意差検定を行うと、体外受精群および

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排卵誘発剤+AIH 群が非不妊治療群および排卵誘発剤群と比較して有意に医療費が高くな っていることが示された(図11b)。しかし、単胎症例だけに限定した場合、産科分娩症例 とは異なり、各群間に有意な差は認めなかった(P=0.31; Kruskal-Wallis)。 4) 新生児入院期間と不妊治療の関係 2003 年の1年間の新生児入院症例の入院日数を検討すると、図 12a,bのように、1週 間以内の症例が両病院とも約半数を占め、逆に 4 週間を超す入院を要した症例は、名大病 院で全体の19.9%、安城更生病院で全体の 13.8%占めるに過ぎなかった。しかし、4 週間を 超す入院を要する症例は、長期間病床を専有しただけでなく、当然人工呼吸管理など intensive care を要した結果と考えられ、新生児医療へのハード面、ソフト面への影響を考 える上で重要な症例群と考えられる。 そこで、4 週間を超す入院を要した症例の不妊治療の内訳を検討したところ、体外受精群 の多胎妊娠症例が名大病院で 29.7%、安城更生病院で 22.4%を占め、症例数の割合と比較 してそれぞれ17.3%、14.0%も高くなっていた(図13a,b)。非不妊治療群の割合は名大病 院で56.8%、安城更生病院で 59.2%であり、症例数の割合と比較してそれぞれ 15.7%、25.8% も低くなっていた。また非不妊治療群の多胎妊娠症例の割合は5.4%であり、症例数との割 合とほとんど変わらなかった。体外受精群以外の不妊治療群の割合も症例数との割合とほ とんど変わらなかった。 名大病院新生児入院症例における不妊治療別の入院日数の分布を図14aに示す。これも 症例ごとの差が非常に大きく、3ヶ月以上入院を要した症例も複数あることがわかる。多 胎症例に関しては、医療費と同様に、非不妊治療群では単胎症例と比較して大きな傾向の 差はないのに対し、体外受精群では単胎症例と比較して明らかに長期に入院を要している と言える。不妊治療別に有意差検定を行うと、医療費と同様に、体外受精群は非不妊治療 群と比較して有意に入院期間が長くなっていることが示された(図14b)。しかし、単胎症 例だけに限定した場合、各群間に有意な差は認めなかった(P=0.39; Kruskal-Wallis)。ま た、不妊治療不明の症例も有意に入院期間が長くなっているが、これらの症例は全て新生 児搬送(従って母体の不妊治療に関する情報が得られなかった)症例であり、重篤な症例 が多かったことに起因すると考えられ、また新生児搬送自体のリスクが影響したとも考え られる。 安城更生病院新生児入院症例における不妊治療別の入院日数の分布を図 14cに示す。名 大病院とほぼ同じ傾向であることがわかる。また、医療費と同様に、体外受精群および排 卵誘発剤+AIH 群では多胎症例が単胎症例と比較して入院期間が長い傾向にあると言える。 不妊治療別に有意差検定を行うと、体外受精群および排卵誘発剤+AIH 群が非不妊治療群お よび排卵誘発剤群と比較して有意に医療費が高くなっていることが示された(図14b)。し か し 、 単 胎症 例 だけ に 限定 し た 場合 、 各群 間 に有 意 な 差は 認 めな か っ た(P=0.25; Kruskal-Wallis)。

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Ⅳ 考察 1.定点調査 1) 愛知県下の周産期高次医療施設における入院状況 産科専有病床の稼働率は90%以上で、産婦人科全体(84.0%)と比較して全体的に高いと いえる(表2)。産科入院患者の中に占める分娩患者の割合は50%強で決して高くなく、今 回調査対象となったような高次医療施設では、合併症のために産科管理を要する患者の割 合が大きいことを裏付けていると言える。このような患者は入院期間が比較的長く、産科 専有病床の稼働率の上昇をもたらしていると考えられる。 また、母体搬送患者は産科入院患者の約 9%を占め、産科専有病床の約 4%を利用してい ることが示された。母体搬送は平均して生じるものではなく、また一部の病院に集中しや すいと言える。このような病院では長期産科管理入院を要する患者の割合も多いと考えら れる。以上の結果から、産科病床が満床であるために、母体搬送が受け入れなくなること がしばしば起こっている現状を十分に理解することができる。 これに対し、今回調査対象となったような高次医療施設では、不妊治療を目的とした入 院患者数の割合は極めて低い。不妊治療は外来で行うことが多いので一概には言えないが、 少なくとも体外受精妊娠による産科入院患者の多くは、他院からの紹介であることが予想 され、ART 治療の主体が不妊クリニックであることを裏付ける結果であると考える。 新生児病床の稼働率は産科専有病床よりもさらに高く、およそ 100%であった(表3)。 母体搬送及び新生児搬送による新生児入院患者を合わせると、新生児入院患者総数の約 40%を占めており、新生児入院がいかに突発的に起きていて、事前の予測が困難な状況にあ るかがわかる。母体搬送及び新生児搬送による新生児入院患者は比較的重症であることが 予想されるが、両者を合わせるとNICU 総病床数の約 1.8 倍となり、NICU 病床数が絶対 的に不足していることは明らかである。 多胎妊娠による新生児入院患者数は新生児入院患者総数及び新生児総病床数の約4分の 1を占め、NICU 総病床数を上回っており、多胎妊娠が新生児医療のハード面に大きな影 響を与えていることがわかる。NICU 入院予定の妊婦が産科病棟に入院している場合、出 生に備えて NICU で病床・呼吸器等を確保しておく必要がある。これが多胎であった場合 には、病床確保のために医療資源の確保が多くなり、このことが NICU への受け入れ、さ らには母体搬送応需を困難としていると考える。 2) 周産期医療に及ぼす不妊治療後妊娠の影響 産科入院、新生児入院ともに、総入院患者数のうち不妊治療群の占める割合は約 10%で あり、同様に専用病床の約10%を占めていた(表4、表5)。産科入院、新生児入院ともに、 不妊治療群では母体搬送の割合が高く、とくに新生児入院ではその傾向が顕著であった。

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これに対し、新生児入院において、不妊治療群では全体と比較して新生児搬送の割合が低 かった。 また図3からわかるように、産科入院における不妊治療群の入院理由の内訳は、経腟分 娩及び帝王切開といった分娩に関係する患者が非常に少なく、切迫早産などの妊娠管理目 的での入院症例が約4分の3を占め、中でも多胎妊娠管理目的の入院が特徴的に多かった。 以上から、不妊治療群では、多胎妊娠管理を代表的な理由として、高次医療施設に妊娠 中に紹介されたり、母体搬送されるケースが多く、慎重な対応がなされていることがわか る。このようなケースでは、産科で長期の入院管理が必要であることが多いことが多く、 NICU 入院が想定される妊婦が産科病棟に入院している場合、出生に備えて NICU で病床・ 呼吸器等を確保しておく必要がある。これが多胎であった場合には、病床確保のために医 療資源の確保が多くなり、このことが NICU への受け入れ、さらには母体搬送応需を困難 としていると考える。 図2、図4からわかるように、不妊治療群の受けた不妊治療の中で体外受精の占める割 合が圧倒的に多く、体外受精を含めて排卵誘発剤を使用する治療は、産科入院、新生児入 院ともに 90%以上を占めている。体外受精が広く普及していることが改めて裏付けられて おり、これらの治療により生じる多胎妊娠を予防していくことで、周産期医療への影響を 軽減できることが示されたといえよう。 3) 意識調査 不妊治療群に対して抱く印象について、全体的に産科も小児科も同じような傾向を認め た(図6)。その中で、「母体搬送や緊急入院が多い」(図6g)、「NICU 入院が多い」(図6 h)という印象は小児科の方が強く抱いているのに対し。「治療方針が慎重になる」(図6 d)という意識は、逆に小児科の方が低い傾向にあった。これは不妊治療群によるハード 面への影響が、新生児医療側の方により強く及んでいるためと考えることもできる。その ため、新生児医療側では「治療方針が慎重になる」余裕さえなくなっているのかもしれな い。 また、不妊治療をうけた妊婦と直接的に接する機会の多い産科医療側が、「治療方針が慎 重になる」傾向にあるのは自然なことと言えるのかもしれないが、そういった意識の結果 として、新生児医療側への負担を増しているおそれもあり、産科医療側が今後注意してい かなければいけない点であると考えられる。 以下は、ある産科施設の医師からアンケートの中の「不妊治療により妊娠した妊産婦に 対して、周産期管理上とくに留意していること」という問いに対して頂いた言葉である。 「“不妊治療でできた貴重な児である”との意識を持つ患者もあるかとは思うが、“児は 全ての妊婦にとって貴重である”から、特別扱いは行わないし、求められても対応できな い。」

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2.縦断調査 2003 年の1年間の入院症例のうち、不妊治療群の占める割合は、名大病院では、産科分 娩症例で18.1%、新生児入院症例で 23.7%、安城更生病院では、産科分娩症例で 6.6%、新 生児入院症例で 15.0%であった。安城更生病院の産科分娩症例以外は、いずれも不妊治療 群のうち体外受精群の占める割合が最多で、不妊治療群のそれぞれ 53.2%(名大病院産科 分娩症例)、56.9%(名大病院新生児入院症例)、49.3%(安城更生病院新生児入院症例)で あり、定点調査と同様に、不妊治療の中で体外受精が主体となってきている現状を反映し ていると考えられる。また体外受精群では多胎率が非常に高いことが特徴的であり、とく に新生児入院症例では、いずれの病院でも体外受精群の大半を占めていた。 入院医療費の観点からは、不妊治療群の占める割合は、名大病院では、産科分娩症例で 23.9%、新生児入院症例で 29.6%、安城更生病院では、産科分娩症例で 12.9%、新生児入院 症例で 24.0%であった。いずれも入院症例数の割合よりも大きく、不妊治療群は平均して 医療費が多く費やされていることが示された。症例数の割合と同様、安城更生病院の産科 分娩症例以外は、不妊治療群のうち体外受精群に最も医療費が多く費やされており、不妊 治療群全体における割合は、産科分娩症例の医療費総額では66.7%(名大病院)、35.1%(安 城更生病院)、産科分娩症例の保険負担金では70.0%(名大病院)、37.6%(安城更生病院)、 新生児入院症例の医療費総額では 76.7%(名大病院)、43.5%(安城更生病院)であった。 さらに、体外受精群に費やされている医療費の大半が多胎妊娠症例で、新生児入院症例の 医療費においては、体外受精群の 98.0%(名大病院)、83.4%(安城更生病院)が多胎妊娠 症例によるものであった。 入院期間の観点からも、4 週間を超す長期入院症例では、体外受精群の多胎妊娠症例が名 大病院で 29.7%、安城更生病院で 22.4%を占め、症例数の割合と比較して特徴的に高く、 また、両病院で体外受精群は非不妊治療群と比較して有意に入院期間が長くなっているこ とも示された。 以上から縦断調査の上でも、名大病院および安城更生病院の周産期医療経済およびハー ド資源に対して不妊治療群が及ぼす影響の大半が体外受精群によるものといってよく、そ のことは統計学的有意差をもって示された。なかでも多胎妊娠症例の影響が非常に大きい ことが明らかとなった。また、これらの傾向は産科医療よりも新生児医療の方がより顕著 であり、ひとつの方策として、体外受精での多胎妊娠を少なくすることが、周産期医療、 とくに新生児医療の経済的負担およびハード資源の負担を軽減する近道であると言える。 平均値から単純に計算すれば、仮に体外受精による多胎妊娠が半減することができたとす ると、名大病院では、産科医療費約650 万円、新生児入院医療費約 3000 万円、のべ占拠病 床数約 500 床(全体の 12%)を、安城更生病院では、産科医療費約 1400 万円、新生児入 院医療費約1500 万円、のべ占拠病床数約 340 床(全体の 4.6%)を、1年間で削減できる と概算できる。

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今回縦断調査の対象となった病院が愛知県下の周産期高次医療施設全体において、施設 規模、症例数においてどれだけの割合を占めているのか、今回の定点調査の結果に照らし 合わせてみたところ、産科入院施設規模および入院症例数は、名大病院で約3%、安城更生 病院で約 9%を占め、新生児入院施設規模および入院症例数は、名大病院で約 5%、安城更 生病院で約9%を占めていた。仮に、この 2 病院の入院症例の患者比率が、愛知県下の周産 期高次医療施設全体の比率と同じで、今回の定点調査が年間を通じた愛知県下の全周産期 医療施設の実情を反映したものであるとすれば、体外受精による多胎妊娠を半減させた場 合、愛知県下の周産期高次医療施設全体で、産科医療費約1 億 9000 万円、新生児入院医療 費約3 億 8000 万円、のべ占拠病床数約 6900 床(全体の 6%)を、1年間で削減できるこ とになる。 3.まとめ 定点調査からも縦断調査からも、不妊治療による妊娠の中で体外受精による妊娠の割合 が非常に大きいだけでなく、周産期医療への影響を考える上でも非常に重要であることが 明らかになった。 国内で体外受精によって生まれた子供は、2002 年は 1 万 5223 人(前年比 15.7%増)で、 日本産科婦人科学会が調査を始めた1986 年以来の累計が 10 万に達したことが最近報じら れた。2002 年は出生数(約 115 万人)の 1.3%が体外受精による妊娠であるということに なる。体外受精の実施施設の増加や、治療に対する助成を行う自治体が増えてきているた め、今後も体外受精妊娠による出生数が増加することは間違いなく、それに伴う周産期医 療資源の更なる拡充が必要である。 また意識調査の中で“児は全ての妊婦にとって貴重である”という回答もあるように、 体外受精妊娠に対して現在行っている慎重な対応は今後すべての妊娠に広まっていくこと と考えられ、現在よりさらに母体搬送が増加することが予想される。これは周産期死亡率 の減少にもつながり望ましいことと考えるが、その結果 NICU では、病床や呼吸器などの 確保といった架空の医療を増加させることにつながり、新生児搬送、母体搬送の応需がさ らに困難となる可能性がある。限られた周産期医療資源の有効活用の観点から、病床や呼 吸器の確保などを最小限にとどめるように、高次医療機関同士での母体再搬送などのシス テムを構築していく必要もあるであろう。 さらに体外受精による妊娠症例は、多胎妊娠、高齢妊娠などの割合が高く、周産期医療 において様々な問題をはらんでいる。冒頭にも述べたとおり、体外受精による多胎妊娠を 予防するガイドラインがいくつか発表され、医療者側の意識も確実に高まってきていると 思うが、多胎妊娠率は依然として高い。ART 実施施設を比較する上で、妊娠率の向上に注 目が集まりやすいが、多胎妊娠率低下も同様に重要であることが認識されるべきである。 こうした点に目を向けたART 技術の更なる改善が必要とされ、ART 実施施設への学会や行

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政が十分な指導を行うことが求められる。 今回の調査を行った結果、新生児医療者側に母体の不妊治療状況の情報が十分に伝わっ ていない現状も明らかとなった。逆をいえば、不妊治療を行う医療者側に出生児の情報が 十分にフィードバックされていないことになる。不妊治療を受けるカップルは、経済的・ 社会的・心理的な負担が極めて多く、早く妊娠したいとの願望から少しでも妊娠率を向上 させたいとの願うことは当然である。しかし、不妊治療後に妊娠成立しても長期にわたっ て母体、新生児が入院することは、家族にとって更なる負担を強いることにもつながる。 不妊治療のゴールは単なる妊娠ではなく、健全な出産及び子育てを通したそれぞれの家族 の幸福であるべきであり、例えば不妊治療による多胎妊娠が母児とって、さらに言えば家 族や社会にとって、どのような影響があるのか、不妊患者に十分な情報を伝える必要があ る。そのためにはART 実施医療機関でののみならず不妊相談事業でのカウンセリングによ る正確な情報提供が必要である。そのために、新生児医療者側にも母体不妊治療状況を正 確に伝え、ART 実施施設に児の情報が十分にフィードバックされ、その情報をふまえて ART 実施施設において適切な不妊治療が行われる環境を整備すべきと考えられる。今回の調査 がその一助になれば幸いと考える次第である。 Ⅴ 謝辞 ご協力頂きました愛知県下の医療機関の諸先生方には、診療にお忙しい中で調査に御協 力いただきましたことを、深く御礼申し上げます。

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<表1>定点調査対象病院 病院名 産婦人科 小児科 病院名 産婦人科 小児科 周産期医療協議会指定・認定病院 その他の病院(50音順) 名古屋第一赤十字病院 ○ ○ 愛知医科大学 ○ ○ 城北病院 ○ 春日井市民病院 ○ ○ 名古屋第二赤十字病院 ○ ○ 刈谷総合病院 ○ ○ 海南病院 ○ 昭和病院 ○ ○ 公立陶生病院 ○ 聖霊病院 ○ 一宮市立市民病院 ○ ○ 大同病院 小牧市民病院 ○ ○ 中京病院 ○ ○ 半田市立半田病院 ○ 豊川市民病院 トヨタ記念病院 ○ ○ 名古屋記念病院 ○ ○ 岡崎市民病院 ○ ○ 名古屋市立大学 ○ ○ 安城更生病院 ○ ○ 名古屋大学 ○ ○ 豊橋市民病院 ○ ○ 西尾市民病院 藤田保健衛生大学 ○ △ 碧南市民病院 ○ ○ 緑市民病院 △ ○ ○ :全回答、△:部分回答、空欄:回答なし

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<表2>定点調査 産科入院状況 10 月 1 日 10 月 8 日 10 月 15 日 10 月 22 日 合計 産婦人科患者総数 845 812 716 756 3129 産科患者総数 457 458 403 405 1723 産婦人科患者総数 /産婦人科総病床数(%) 88.9 85.5 78.4 82.8 84.0 産科患者総数 /産科専用病床数(%) 97.6 97.9 89.0 89.4 93.5 産科患者総数 /産婦人科患者総数(%) 54.1 56.4 56.3 53.6 55.1 経腟分娩患者数 (a) 147 148 139 151 585 帝王切開患者数 (b) 98 104 78 66 346 分娩患者数 (a+b) 245 252 217 217 931 分娩患者数 /産科患者総数(%) 53.6 55.0 53.8 53.6 54.0 母体搬送 40 42 34 39 155 母体搬送 /産科専用病床数(%) 4.2 4.4 3.7 4.3 4.2 母体搬送 /産科患者総数(%) 8.8 9.2 8.4 9.6 9.0 OHSS (c) 0 2 1 4 7 不妊治療目的(d) 5 1 1 0 7 不妊治療中患者総数 (c+d) 5 3 2 4 14 不妊治療中患者総数 /産婦人科患者総数(%) 0.6 0.4 0.3 0.5 0.4

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<表3>定点調査 新生児入院状況 10 月 1 日 10 月 8 日 10 月 15 日 10 月 22 日 合計 新生児患者総数 309 301 300 315 1225 新生児患者総数 /新生児病床数(%) 100.0 97.4 103.8 101.9 100.7 新生児患者総数 /NIC U 病床数(%) 468.2 456.1 454.5 477.3 464.0 母体搬送 60 71 76 90 297 新生児搬送 56 47 44 42 189 母体搬送 /新生児病床数(%) 19.4 23.6 25.3 28.6 24.2 母体搬送 /NIC U 病床総数(%) 90.9 107.6 115.2 136.4 112.5 新生児搬送 /新生児病床数(%) 18.1 15.6 14.7 13.3 15.4 新生児搬送 /NIC U 病床数(%) 84.8 71.2 66.7 63.6 71.6 多胎児 70 75 76 81 302 多胎児/新生児病床数(%) 22.7 24.9 25.3 25.7 24.7 多胎児/NICU 病床数(%) 106.1 113.6 115.2 122.7 114.4

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<表4>不妊治療後妊娠患者(不妊治療群)の産科入院状況 10 月 1 日 10 月 8 日 10 月 15 日 10 月 22 日 合計 不妊治療群患者数 38 49 38 45 170 不妊治療群患者数 /産科病床数(%) 8.1 10.5 8.4 9.9 9.2 不妊治療群患者数 /産科患者数(%) 8.3 10.7 9.4 11.1 9.9 不妊治療群の母体搬送 4 7 6 7 24 不妊治療群の母体搬送 /母体搬送総数(%) 10.0 16.7 17.6 17.9 15.5 不妊治療群の母体搬送 /不妊治療群患者数(%) 10.5 14.3 15.8 15.6 14.1

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<表5>不妊治療による妊娠から出生した新生児患者(不妊治療群)の新生児入院状況 10 月 1 日 10 月 8 日 10 月 15 日 10 月 22 日 合計 新生児患者総数* 188 181 178 173 720 新生児搬送* 37 29 27 27 120 母体搬送* 43 54 58 62 217 多胎児* 45 52 50 47 194 新生児病床数* 190 190 190 190 760 NIC U 病床数* 54 54 54 54 216 不妊治療群患者数 18 21 24 22 85 不妊治療群患者数 /新生児患者総数*(%) 9.6 11.6 13.5 12.7 11.8 不妊治療群患者数 /新生児病床数*(%) 9.5 11.1 12.6 11.6 11.2 不妊治療群患者数 /NIC U 病床数*(%) 33.3 38.9 44.4 40.7 39.4 不妊治療群の母体搬送 10 11 11 14 46 不妊治療群の新生児搬送 2 1 2 0 5 不妊治療群の母体搬送 /母体搬送総数*(%) 16.7 15.5 14.5 15.6 15.5 不妊治療群の母体搬送 /不妊治療群患者数(%) 55.6 52.4 45.8 63.6 54.1 不妊治療群の新生児搬送 /新生児搬送総数*(%) 3.6 2.1 4.5 0.0 2.6 不妊治療群の新生児搬送 /不妊治療群患者数(%) 11.1 4.8 8.3 0.0 5.9 不妊治療群の多胎児 10 13 15 14 52 不妊治療群の多胎児 /多胎児総数*(%) 14.3 17.3 19.7 17.3 17.2 不妊治療群の多胎児 /不妊治療群患者数(%) 22.2 25.0 30.0 29.8 26.8 * :患者の母親の不妊治療の有無、内容について情報のあった8施設に限定した集計。

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(付)用紙 A-1 産科質問用紙(定点調査) ···平成 16 年 10 月 1 日用 貴施設名 1. 貴施設の産婦人科病床数をご記入下さい。 ··· 床 うち、産科専用病床数をご記入下さい。··· 床 (明確でなければ、主に産科用に使用していると考えられる病床数をお書き下さい。) 2. 貴施設の産婦人科常勤医師数をご記入下さい。 ··· 人 3. 本日貴施設に入院中の産婦人科患者総数をご記入下さい。··· 人 4. 本日貴施設に入院中の産婦人科患者のうち、以下に示します入院理由の患者数をご記入 下さい。(重複不可。重複した理由がある場合は主要と思われるものを選択して下さい。 合計が質問 3 のお答えと一致するようお願いします。) a. 切迫流産(単胎のみ) ··· 人 b. 切迫早産(単胎のみ) ··· 人 c. 多胎妊娠の管理入院(多胎の切迫流早産を含む) ··· 人 d. 妊娠中毒症の管理入院 ··· 人 e. 合併症妊娠の管理入院 ··· 人 f. 胎児異常(IUGR、胎児奇形など)の管理入院 ··· 人 g. 経腟分娩の産婦または褥婦 ··· 人 h. 帝王切開の術前または術後 ··· 人 i. 子宮外妊娠(術前・術後は問いません) ··· 人 j. 人工妊娠中絶 ··· 人 k. 上記以外の産科疾患(具体的な病名も) ··· 人 病名 l. OHSS(卵巣過剰刺激症候群) ··· 人 m. 不妊治療目的(体外受精など。検査目的は除く。)··· 人 n. 上記以外(婦人科疾患など)··· 人 5. 本日貴施設に入院中の産婦人科患者のうち、母体搬送で入院された患者数をご記入下さ い。··· 人

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6. 本日貴施設に入院中の産科患者のうち、「不妊治療」によって妊娠した患者個々につい て以下の項目にご記入下さい。 「不妊治療」は以下の項目に該当するものとします。 i) 腹腔鏡下手術、通水、人工授精など排卵誘発剤を使用していない治療 ii) 排卵誘発剤のみ(クロミフェン、hMG 製剤、FSH 製剤のいずれかの使用) iii) 排卵誘発剤併用人工授精 iv) 体外受精など(IVF-ET、IVF-ICSI-ET、T-ET、ZIFT、GIFT) 不妊因子は以下のように分類します。 ア. 男性因子、イ. 卵管因子、ウ. 排卵異常、エ. 子宮内膜症、オ. その他、原因不明 入院理由は質問 4 の a∼k のいずれかを記号でご記入下さい。 不妊治療歴 (今回の妊娠前の 治療期間:月単位) 不妊因子 (ア∼オ:複数回 答可) 今回の妊娠に至 った不妊治療 (i∼iv) 入院理由 ( a ∼k のい ず れ か:k の場合は病名 も) 母体搬送の有無 (ありの場合○を 記入) (例)2 年 6 ヶ月 ア、ウ iv c

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7. 不妊治療によって妊娠した産科患者について、周産期管理上、貴施設が抱いている印象 についてもっとも当てはまるものに○をつけてください。回答される先生の個人的な意 見で結構です。 まったく あまり だいたい よく あてはまらない あてはまらない あてはまる あてはまる 1)患者自身の不安が強い ···1 2 3 4 2)患者・家族からの質問や要望が多い ···1 2 3 4 3)入院期間が長い傾向にある ···1 2 3 4 4)治療方針が慎重になる傾向にある ···1 2 3 4 5)帝王切開率が高い ···1 2 3 4 6)多胎が多い ···1 2 3 4 7)切迫流早産による入院が多い ···1 2 3 4 8)母体搬送や緊急入院が多い ···1 2 3 4 9)出生児が NICU に入院する割合が高い ···1 2 3 4 10)産褥期にうつ状態になる割合が高い ···1 2 3 4 8. 不妊治療により妊娠した妊産婦に対して、周産期管理上、貴施設でとくに留意している ことがありましたらご記入下さい。回答される先生の個人的な意見で結構です。 9. 不妊治療技術の発展や普及に伴い、不妊治療により妊娠に至った妊産婦が近年増加して いると思われますが、このような状況で、周産期管理上、不妊治療に対する意見、行政 への要望などがありましたら、ご自由にご記入下さい。回答される先生の個人的な意見 で結構です。 以上です。ご協力ありがとうございました。

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(付)用紙 B-1 小児科(新生児科)質問用紙(定点調査)···平成 16 年 10 月 1 日用 貴施設名 10. 貴施設の小児科病床数をご記入下さい。··· 床 うち、新生児病床数をご記入下さい。 ··· 床 うち、NICU 加算病床数をご記入下さい。 ··· 床 11. 貴施設の小児科常勤医師数をご記入下さい。··· 人 うち、新生児専従医師数をご記入下さい。 ··· 人 12. 本日貴施設に入院中の新生児患者総数をご記入下さい。 ··· 人 13. 本日貴施設に入院中の新生児患者のうち、以下に示します入院理由の患者数をご記入下 さい。(重複不可。重複した理由がある場合は主要と思われるものを選択して下さい。 合計が質問 3 のお答えと一致するようお願いします。) a. 超低出生体重児··· 人 b. 極低出生体重児(出生体重が 1000g以上 1500g未満)··· 人 c. 低出生体重児(出生体重が 1500g以上 2500g未満)··· 人 d. 先天奇形症候群・染色体異常··· 人 e. 先天性心疾患 ··· 人 f. 新生児仮死··· 人 g. 胎便吸引症候群··· 人 h. 周産期感染症 ··· 人 i. 新生児一過性多呼吸··· 人 j. 合併症妊娠の検査入院(糖尿病母体の児など)··· 人 k. 新生児黄疸··· 人 l. 外科疾患 ··· 人 m. 上記以外 ··· 人

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14. 本日貴施設に入院中の新生児患者のうち、多胎児として出生した患者数をご記入下さい。 ··· 人 15. 本日貴施設に入院中の新生児患者のうち、貴院で出生した患者数をご記入下さい。 ··· 人 16. 質問 5 のうち、母体搬送されて、貴院で出生した患者数をご記入下さい。 ··· 人 17. 本日貴施設に入院中の新生児患者のうち、新生児搬送された患者数をご記入下さい。 ··· 人

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18. 本日貴施設に入院中の新生児患者のうち、「不妊治療」によって妊娠し、出生した患者 個々について以下の項目にご記入下さい。 「不妊治療」は以下の項目に該当するものとします。 i) 排卵誘発剤を使用していない治療(腹腔鏡下手術、通水など) ii) 排卵誘発剤のみの治療 iii) 排卵誘発剤を併用した人工授精 iv) 体外受精など(IVF-ET、IVF-ICSI-ET、T-ET、ZIFT、GIFT) 入院理由は質問 4 の a∼k のいずれかを記号でご記入下さい。 不妊治療歴 (今回の妊娠前の 治療期間:月単位) 今回の妊娠に至 った不妊治療 (i∼iv) 入院理由 (a ∼n のい ずれ か:n の場合は病名 も) 母 体 搬 送 / 新 生 児搬送の有無 (ありの場合内容 を記入) 多胎の有無 (ありの場合○と 胎数を記入) (例)2 年 6 ヶ月 Iv a 新生児 ○(2)

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19. 不妊治療によって妊娠した出生した新生児患者について、周産期管理上、貴施設が抱い ている印象についてもっとも当てはまるものに○をつけてください。回答される先生の 個人的な意見で結構です。 まったく あまり だいたい よく あてはまらない あてはまらない あてはまる あてはまる 1)患者の両親の不安が強い ···1 2 3 4 2)患者の両親・家族からの質問や要望が多い ·1 2 3 4 3)治療方針が慎重になる傾向にある ···1 2 3 4 4)帝王切開率が高い ···1 2 3 4 5)多胎が多い ···1 2 3 4 6)早産児が多い ···1 2 3 4 7)母体搬送や緊急入院が多い ···1 2 3 4 8)出生児が NICU に入院する割合が高い ···1 2 3 4 9)先天奇形の割合が多い ···1 2 3 4 20. 不妊治療により妊娠/出生した新生児が入院した際に、新生児期の管理上で特に留意し ていることがありましたらご記入下さい。回答される先生の個人的な意見で結構です。 21. 不妊治療技術の発展や普及に伴い、不妊治療により妊娠/出生する新生児が近年増加し ていると思われますが、このような状況で、周産期および新生児貴の管理上、不妊治療 に対する意見、行政への要望などがありましたら、ご自由にご記入下さい。回答される 先生の個人的な意見で結構です。 以上です。ご協力ありがとうございました。

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<図1>産科入院における 不妊治療群の不妊因子の内訳 (定点調査;複数回答あり) 男性因子 34例(16%) 卵管因子 22例(1 0%) 排卵異常 69例(32%) 内膜症 17 例(8%) その他、不明 72例(34%) AIH 14例(9%) 排卵誘発剤単独 28例(18%) 排卵誘発剤+ AIH 24例(16%) 体外受精 87例(57%) その他、不明 0例(0%) <図2>産科入院における 不妊治療群の不妊治療の内訳 (定点調査) <図4>新生児入院における 不妊治療群の不妊治療の内訳 (定点調査) AIHなど 2例(2%) 排卵誘発剤単独 23 例(27%) 排卵誘発剤+AIH 2例(2 %) 体外受精 58例(68%) その他、不明 0例(0%)

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<図3a>入院理由(産科入院患者全体) <図3b>入院理由(不妊治療群) 切迫流産 89例(5%) 切迫早産 309例(18%) 多胎管理 125例(7%) 妊娠中毒症 40例(2%) 母体合併 症妊娠 33例(2%) 胎児異常 39例(2%) 経腟分娩 585例(3 5%) 帝王切開 346例(20%) 子宮外妊娠 36例(2% ) 人工妊娠 中絶 2 3例(1%) その他の産科疾患 98例(6%) 妊娠中毒症 8例(5%) 母体合併症妊娠 0例(0%) 胎児異常 4例(2%) 切迫流産 11例(6 %) 切迫早産 36例(21%) 多胎管理 67例(39 %) 経腟分娩 7例(4%) 帝王切開 16例(9%) 子宮外妊娠 7例(4%) 人工妊娠中絶 1例(1%) その他の産科疾患 13 例( 8%) 0 10 20 30 40 50 60 切迫流 産 切迫早 産 多胎管 理 妊娠中 毒症 母体合 併症妊 娠 胎児異 常 経腟分 娩 帝王切 開 子宮外 妊娠 人工妊 娠中 絶 その 他の 産科疾 患 (% ) <図3>産科入院症例における不妊治療後妊娠患者の割合(定点調査) <図3c>入院理由ごとの産科入院における不妊治療群の占める割合

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<図5a>入院理由(新生児入院患者全体) 超低出生 体重児 228例( 19%) 極低出生 体重児 162例( 13%) 低出生体重児 360例( 30%) 先天奇形、染色体異常 63例( 5%) 先天性心疾患 40例( 3%) 新生児仮死 55例(4%) MAS 29例( 2%) 周産期感染症 20例( 2%) 108例( 9%)TTN 母体合併症妊娠 12例( 1%) 新生児黄疸 22例( 2%) 外科疾患 49例( 4%) その他 77例( 6%) <図5b>入院理由(不妊治療群) 超低出生体重児 20例( 24%) 極低出生体重児 5例(6%) 低出生体重児 29 例(3 4%) 先天奇形 、染色体異常 4例( 5%) 先天性心疾患 2例( 2%) 新生児仮死 0例( 0%) MAS 1例( 1%) 周産期感染症 1例( 1%) TTN 7例(8%) 母体合併症妊娠 0例( 0%) 新生児黄疸 0例( 0%) 外科疾患 7例(8% ) その他 9例( 11%) <図5c>入院理由ごとの新生児入院における不妊治療群の占める割合 0 2 4 6 8 10 12 14 16 超低出 生体重 児 極低出 生体重 児 低出生体重 児 先天奇 形、染色体異 常 先天性 心疾 患 新生児仮 死 胎便吸 引症候 群 周産期感染 症 新生児一過性多呼 吸 母体合 併症妊 娠 新生児黄 疸 外科疾 患 その 他 (% ) <図5>新生児入院症例における不妊治療群の割合(定点調査)

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産科 0% 18% 64% 18% 小児科 0% 13% 74% 13% <図6>意識調査(定点調査) <図6b>患者側の質問が多い 18% 77% 5% 0% 0% 27% 66% 7% 23% 63% 14% 31% 38% 31% <図6c>帝王切開が多い 18% 68% 14% 50% 31% 13% <図6d>治療方針が慎重になる 6% 9% 68% 23% 19% 43% 38% <図6e>多胎が多い 27% 59% 14% 25% 44% 31% <図6f>切迫早産、早産が多い <図6a>患者側の不安が強 い 産科 小児科 産科 小児科 産科 小児科 産科 小児科 産科 小児科 0% 0% 0% 0% 0% 0% 0% まったく あてはまらな い あまりあて はまらない だいたいあてはま る よくあてはま る

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<図6>意識調査(続) 14% 72% 14% <図6j>産褥鬱病が多い 産科 18% 77% 5% <図6i>入院期間が長い 産科 まったくあてはまらな い あまりあてはまらない だ いたいあてはまる よくあてはまる 6% 75% 19% <図6k>先天奇形が多い 小児科 5% 54% 41% 38% 43% 19% <図6g>母体搬送が多い 産科 小児科 0% 0% 5% 50% 45% 38% 31% 31% <図6h>NICU入院が多い 産科 小児科

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総症例数:2 60例 (2 003年) <図7>入院症例数と不妊治療の内訳(縦断調査) <図7a>名大病院産科分娩入院症例数 なし(単胎) 208例(81%) 体外受精(単胎) 14 例( 5%) 排卵誘発剤 8例(3 %) 排卵誘発 剤+ AIH 3例(1% ) AIH 8例(3%) その他 3例(1% ) なし( 多胎) 5例( 2%) 体外受精(多胎) 11例( 4%) <図7b>名大病院新生児入院症例数 排卵誘発剤 2 例(1%) 排卵誘発剤+AIH 2例(1%) その他 2例(1%) AIH 9例(5%) 不明 7例(2%) なし( 単胎) 128例(69%) 体外受精(単 胎) 6例(3 %) なし(多胎) 7例(4%) 体外受精( 多胎) 23 例(12%) 総症例数:186例 (200 3年) なし(単胎) 1169例( 91%) 体外受精(単胎) 7例(1%) 排卵誘発剤(単胎) 39例(3 %) 排卵誘発剤+AIH( 単胎) 3例(0 %) AIH(単胎) 2例(0% ) その他 4例(0% ) なし(多胎) 33例( 3%) 体外受精(多胎) 17例(1 %) 総症例数:1288例 (2003年) 排卵誘発 剤(多胎) 10 例( 1%) 排卵誘発剤+AIH(多胎) 3例( 1%) AIH(多胎) 1例(0%) <図7c>安城更生病院産科分娩入院症例数 ※6 症例は除外 <図7d>安城更生病院新生児分娩入院症例数 なし(単胎) 368例(75%) 体外受精(単胎) 5例( 1%) 排卵誘発剤(単胎) 15例(3%) 排卵誘発剤+AIH(単胎) 2例(0% ) AIH(単胎) 2例(0%) その他 2例(0%) なし(多胎) 57例(1 2% ) 体外受精( 多胎) 32例(6%) 総症例数:500 例 (20 03年) 排卵誘発剤(多胎) 9例( 2%) 排卵誘発剤+AIH(多胎) 6 例( 1%) AIH(多胎) 2例(0%)

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総額:1億3460 万1560円 (2003年) なし(単胎) 995 2万4750円(74%) 体外受精(単胎) 782万9130円(6%) 排卵誘発剤 303万7780円(2%) 排卵誘発剤+ AIH 233万8270円(2%) AIH 393万2200円(3%) その他 175 万5 870円(1%) なし( 多胎) 294万8480円(2%) 体外受精(多 胎) 1313万45 90円(10% ) <図8a>産科分娩入院医療費総額(名大病院) <図8>名大病院産科分娩入院医療費と不妊治療の内訳(縦断調査) <図8b>産科分娩入院保険負担金総額(名大病院) 排卵誘発剤 94万2260円(1%) 排卵誘発剤+ AIH 195万6260円(3%) AIH 251万547 0円(3%) その他 121万3100円(2%) なし(単胎) 5232万7680円(68%) 体外受精(単胎) 420万6370円(5%) なし(多胎) 199万0300円(3%) 体外受精(多胎) 11 60万509 0円(1 5%) 総額: 7675万6530円 (2003年) なし(単胎) 6億2053万3227円(82%) 体外受精(単胎) 640 万4840円(1%) 排卵誘発剤(単胎) 324 3万6377円(4%) 排卵誘発剤+ AIH(単胎) 364万9903円( 0%) AIH(単胎) 248万4537円( 0%) その他 201万9473 円(0%) なし(多胎) 4226万4463円 (6%) 体外受精(多胎) 281 7万6607円(4%) 排卵誘発剤(多胎) 1344万6533円(2 %) 排卵誘発剤+ AIH(多胎) 793 万9 693円(1%) AIH(多胎) 196万8033円(0%) <図8c>産科分娩入院医療費総額(安城更生病院) 総額:7億6122 万3687円 (2003年) 体外受精(単胎) 504万3200円(1%) 排卵誘発剤(単胎) 2 381万93 67円(6%) 排卵誘発剤+AIH(単胎) 313万2833円( 1%) AIH(単胎) 231万4467円( 1%) その他 75万2533円(0%) なし(多胎) 34 04万638 3円 (9%) 体外受精(多胎) 24 42万791 7円(6%) 排卵誘発 剤(多胎) 990万4033円(2%) 排卵誘発剤+AIH(多胎) 697万8133円( 2%) AIH(多胎) 19 6万8 033円( 1% ) なし(単胎) 2 億78 79万3017 円(71%) 総額: 3億9117万9917円 (2003 年) <図8d>産科分娩入院保険負担金総額(安城更生病院)

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<図9>不妊治療別の産科分娩入院医療費総額の分布(縦断調査) <図9a>名大病院 散布図 <図9b>名大病院 ボックスプロット な し 体外受 精 排卵誘発 剤 誘発 剤 + A IH A IH そ の 他 0 100万 200万 300万 400万 (円) 単胎 多胎 な し 体 外受 精 排 卵 誘発 剤 誘 発 剤 + A IH A IH そ の 他 0 50万 100万 150万 ** (円) ** P < 0.01 VS なし; Mann-Whitney U-test 上側10%値 上側25%値 平均値 中央値 下側25%値 下側10%値 な し 体外 受 精 排卵誘発 剤 誘発 剤 + A IH AIH そ の 他 0 200万 400万 600万 (円) 単胎 多胎 <図9c>安城更生病院 散布図 <図9d>安城更生病院 ボックスプロット な し 体 外受 精 排卵 誘 発 剤 誘 発 剤 + A IH A IH そ の 他 0 200万 400万 600万 (円) 上側10%値 上側25%値 平均値 中央値 下側25%値 下側10%値 ** P < 0.0 1 VS なし; Mann-Whitney U-test † P <0. 05; Mann-Whitey U-te st ** ** ** ** † †

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<図10>新生児入院医療費総額と不妊治療の内訳(縦断調査) 排卵誘発 剤 1009万9860円(4%) 排卵誘発剤+AIH 48万6430円(0% ) AIH 682万7370円(3%) その他 6 0万72 30円(0 %) 不明 1238万3340円(5%) なし(単胎) 1億5664万1770円(58%) 体外受精(単胎) 124万0360円(0%) なし(多胎) 2019万562 0円(8 %) 体外受精( 多胎) 6029万1660円(22% ) 総額: 2億6877万3640円 (2003年) <図10a>名大病院 <図10b>安城更生病院 なし(単胎) 2億207 4万0960円(63%) 体外受精(単胎) 612万5470 円(2%) 排卵誘発剤(単胎) 832万5120円( 2%) 排卵誘発剤+AIH(単胎) 157万7510 円(0%) AIH(単胎) 301万6010円( 1% ) その他 109万5450円(0%) なし(多胎) 4716万6730円 (13%) 体外受精(多胎) 3068万1270円(9%) 排卵誘発剤(多胎) 422万0960円( 1%) 排卵誘発剤+AIH(多胎) 2908万9000円(8% ) AIH( 多胎) 41万3800円( 0%) 総額: 3億5245万2280円 (2003年)

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<図11>不妊治療別の新生児入院医療費総額の分布(縦断調査) <図11a>名大病院 散布図 <図11b>名大病院 ボックスプロット 単胎 多胎 上側10 %値 上側25 %値 平均値 中央値 下側25 %値 下側10 %値 (円) (円) な し 体外 受 精 排 卵誘発 剤 誘発 剤 + A IH AIH そ の 他 0 400万 800万 1200万 1600万 不 明 な し 体 外受 精 排 卵 誘発 剤 誘発 剤 + A IH AIH そ の 他 不 明 0 500万 1000万 <図11c>安城更生病院 散布図 <図11d>安城更生病院 ボックスプロット 単胎 多胎 (円) 0 400万 800万 1200万 1600万 な し 体 外 受 精 排 卵誘発 剤 誘発 剤 + A IH AIH そ の 他 な し 体外受 精 排 卵誘発 剤 誘発 剤 + A IH A IH そ の 他 上側10 %値 上側25 %値 平均値 中央値 下側25 %値 下側10 %値 (円) 0 500万 1000万 ** ** P < 0.01 VS なし; Mann-Whitney U-test ** P < 0.0 1 VS なし; Mann-Whitn ey U-test † P <0.05 ; Mann-Whitey U- test ** ** † †

(37)

<図12a>名大病院 <図12>新生児入院期間(縦断調査) <図12b>安城更生病院 総症例数: 186例 (2003年) 1週間以内 83 例( 45%) ∼4週間 66例( 35%) ∼8週間 18例(10%) 8週間∼ 19例( 10%) 排卵誘発 剤 1例(3%) 排卵誘発剤+AIH 0例(0%) その他 0例(0%) AIH 1例(3%) 不明 3例(8%) なし(単胎) 19例( 51%) 体外受精(単胎) 0例(0%) なし(多胎) 2例(5%) 体外受精(多 胎) 11例(30%) 症例数: 37例 (2003年) なし(単胎) 19例(39%) 体外受精(単 胎) 1例( 2%) 排卵誘発剤(単胎) 1例( 2%) 排卵誘発剤+AIH(単胎) 1例( 2%) AIH(単胎) 2 例(4 %) その他 2例( 0%) なし( 多胎) 10例( 20%) 体外受精(多胎) 11例(22%) 総症例数: 49例 (2003年) 排卵誘発剤(多胎) 9例(2% ) 排卵誘発 剤+AIH(多胎) 3例( 6%) AIH(多胎) 2例( 0%) <図13a>名大病院 <図13b>安城更生病院 <図13>4週間を超す入院症例の不妊治療の内訳(縦断調査) 1週間以内 278例(56%) ∼4週間 137例( 27.4%) ∼8週間 46例( 9%) 8週間∼ 23例(5%) 不明 16例(3%) 総症例数:50 0例 (2003年)

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<図14>不妊治療別の新生児入院期間の分布(縦断調査) <図14a>名大病院 散布図 <図14b>名大病院 ボックスプロット な し 体 外 受 精 排 卵誘発 剤 誘発 剤 + A IH A IH そ の 他 0 50 10 0 20 0 25 0 不 明 15 0 (日) (日) 単胎 多胎 上側10%値 上側25%値 平均値 中央値 下側25%値 下側10%値 な し 体外受 精 排卵 誘 発 剤 誘発 剤 + A IH A IH そ の 他 不 明 0 20 40 60 80 100 120 140 <図14c>安城更生病院 散布図 <図14d>安城更生病院 ボックスプロット な し 体外受 精 排卵誘発 剤 誘発 剤 + A IH AIH そ の 他 (日) 0 20 40 60 80 100 120 上側10%値 上側25%値 平均値 中央値 下側25%値 下側10%値 0 10 0 30 0 40 0 20 0 (日) 単胎 多胎 な し 体 外受 精 排卵誘発 剤 誘発 剤 + A IH A IH そ の 他 **

** P < 0.01, * P < 0.05 VS なし; Mann- Whitn ey U-test

** P < 0. 01 VS なし; Mann-Wh itney U-test †† P <0. 05, † P <0.05; Mann- White y U-test

**

**

†† †

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