創作・鑑賞をふまえた俳句の授業 : 扉としての俳 句
著者 久留島 元
雑誌名 同志社国文学
号 87
ページ 54‑79
発行年 2017‑12‑20
権利 同志社大学国文学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000026
創 作
・ 鑑 賞 を ふ ま え た 俳 句 の 授 業
扉 ︱
と し て の 俳 句
︱
久 留 島
元
学校 教科 書に おけ る俳 句 現在 施行 され てい る﹃ 学習 指導 要領
生き る力
﹄︵ 平成 二十 年三 月告 示①
︶で は︑ 小学 校第 学 年及 び第 学 年に 対す る﹁ 伝統 的な 言 語文 化と 国語 の特 質に 関す る事 項﹂ に︑ 短歌
︑俳 句の 学習 につ いて 次の よう に記 載さ れる
︒ ﹁ A 話す こと
・聞 くこ と﹂
︑﹁ B 書く こと
﹂及 び﹁ C 読 むこ と﹂ の指 導を 通し て︑ 次の 事項 につ いて 指導 する
︒ ア 伝統 的な 言語 文化 に関 する 事項 (ア ) 易し い文 語調 の短 歌や 俳句 につ いて
︑情 景を 思い 浮か べ たり
︑リ ズム を感 じ取 りな がら 音読 や暗 唱を した りす るこ と︒ 短歌
︑俳 句に つい ては
﹁文 語調
﹂の
﹁伝 統的 な言 語文 化﹂ が重 視 され てい る︒ また
﹃新 学習 指導 要領
﹄︵ 平成 二十 九年 三月 公示②
︶で
は︑
﹁易 しい 文語 調の 短歌 や俳 句を 音読 した り暗 唱し たり する など して
︑言 葉の 響き やリ ズム に親 しむ こと
︒﹂ に改 訂さ れて おり
︑同 じく
﹁文 語調
﹂に 限定 する ほか
︑現 行指 導要 領に 比べ 音読
︑暗 唱を 重視 して 鑑賞 に踏 みこ まな い姿 勢に 転じ てい ると もと れよ う︒ しか し第 五学 年及 び第 六学 年に 対し ては
︑﹁ 書く こと の能 力を 育 成す る﹂ 指導 のひ とつ に﹁ 経験 した こと
︑想 像し たこ とな どを 基に
︑ 詩や 短歌
︑俳 句を つく った り︑ 物語 や随 筆な どを 書い たり する こ と﹂
︵現 行版
︶と あり
︑物 語や 詩歌 を創 作す るこ とが 求め られ てい る︒ これ は﹃ 新学 習指 導要 領﹄ では
﹁短 歌や 俳句 をつ くる など
︑感 じた こと や想 像し たこ とを 書く 活動
﹂と 改訂 され てい る︒ 物語
︑随 筆を 省き 短歌
︑俳 句が 残さ れる など 創作 面に も期 待が ある こと がわ かる 小 ︒ 学校 教科 書に おけ る﹁ 俳句
﹂の 位置 づけ は︑
﹁伝 統的 な言 語文
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
五四
化﹂ に親 しむ
﹁音 読﹂ と︑ 自己 の経 験を 表現 する
﹁創 作﹂ のふ たつ の点 が期 待さ れて いる
︒こ こで いう
﹁伝 統﹂ の内 容と して は﹁ 文語 調﹂ であ るこ とが 第一 であ り︑ また 明記 され てい ない が﹁ 有季 定 型﹂
︵五 七五 の定 型に 季語 がふ くま れた 俳句
︶で ある こと も期 待さ れて いる だろ う③
︒ 小学 校低 学年 では まだ 古典 文法 も指 導さ れて いな いた め︑
﹁伝 統 的﹂ な﹁ 文語 調俳 句﹂ を対 象と すれ ば︑
﹁鑑 賞﹂ より
﹁音 読﹂ が重 視さ れる こと はや むを えな い︒ しか し﹁ 創作
﹂へ つな げる ため には より 児童 に親 しみ やす い︑ 口語 調の 俳句 をふ くめ て例 示す るほ うが 理解 しや すい だろ う︒ また
︑親 しみ やす い俳 句を 導入 とし て﹁ 言葉 の響 きや リズ ムに 親﹂ しみ
︑そ のう えで 文語 調の 俳句 への 踏み こん だ﹁ 鑑賞
﹂に も広 げる こと も可 能と 考え られ る︒ 一方 でほ ぼ全 ての 中学 校・ 高等 学校 教科 書に おい ても 俳句 を紹 介 する 単元 が用 意さ れて いる が︑ その 位置 づけ
︑目 標は 小学 校の それ より 曖昧 であ る︒ 表 は︑ 現行 の教 科書 に掲 載さ れて いる 俳句 の一 覧で ある
︵後 掲︶
︒種 田山 頭火 の﹁ 分け 入つ ても 分け 入つ ても 青い 山﹂ は八 社︑
﹁う しろ すが たの しぐ れて ゆく か﹂ は五 社に 採用 され
︑ 坪内 稔典
︑夏 石番 矢と いっ た口 語調 の現 代俳 句作 家を ふく め︑ 多様 な俳 句が 示さ れて いる
︒ この うち 東京 書籍
﹃新 しい 国語 ﹄
︑光 村図 書﹃ 国語 ﹄ では 俳
句作 品だ けで なく
︑そ れぞ れ片 山由 美子 氏④
︑宇 多喜 代子 氏⑤
とい う代 表的 な俳 句作 家の 書き 下ろ し文 が掲 載さ れて いる
︒こ こで は季 語︑ 定型
︑切 れ字 など の俳 句の 基礎 的知 識が 紹介 され てお り︑ 鑑賞 の手 引き とし ての 役割 が期 待さ れて いる
︒す なわ ち︑ 中学 校・ 高等 学校 教科 書に おけ る﹁ 俳句
﹂単 元の 学習 は︑ 小学 校に おけ る学 びを ふま え︑ より 踏み こん だ理 解へ とつ なげ るこ とが 求め られ てい ると いえ よう 近 ︒ 年︑ 俳句 をユ ネス コ世 界文 化遺 産に 登録 しよ うと 求め る運 動が
︑ ニュ ース とし て大 きく 報じ られ た⑥
︒こ の運 動に は俳 人協 会︑ 現代 俳 句協 会︑ 国際 俳句 協会
︑日 本伝 統俳 句協 会の 四団 体の ほか
︑三 重県 伊賀 市︑ 愛媛 県松 山市 など の市 町村 も加 わっ てい る︒ 運動 の中 心と なっ た国 際俳 句協 会の 有馬 朗人 氏は
︑俳 句の 特色 とし て大 人も 子ど もも 楽し める 短詩 であ り世 界に 広が りが ある こと
︑自 然と 共生 する 姿勢 をも つこ とを あげ てい る⑦
︒有 馬氏 はさ らに
︑日 本文 化の 宝と し て俳 句が 再評 価さ れる こと で︑ 俳句 が世 界平 和に 貢献 でき ると 考え てい ると 主張 して いる
︒ 改め て俳 句へ 注目 が集 まっ てい ると いえ るが
︑一 方で
︑﹁ 日本 文 化﹂ や﹁ 伝統
﹂︑
﹁世 界遺 産﹂ とい った 枠組 みに とら われ るこ とで
︑ 俳句 の定 義が 教則 的に なる ので はな いか との 懸念 も表 明さ れて いる⑧
︒ ここ でそ の是 非を 問う つも りは ない が︑ 学校 教育 の現 場で はや くか 創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
五五
ら多 様な 俳句 文化 にふ れる こと は︑ 一面 的で はな い詩 歌の
﹁伝 統﹂ を知 るこ とに なり
︑よ り豊 かな 学び につ なが るの では ない だろ うか⑨
︒ 先行 研究 と本 稿の 位置 づけ 俳句 を活 用し た授 業実 践に つい ては すで に多 くの 蓄積 があ り︑ 特 に創 作面 を重 視し たも のと して 坪内 稔典
﹃坪 内稔 典の 俳句 の授 業﹄
︵黎 明書 房︑ 一九 九九
︒増 補版
︑二
〇一
〇︶
︑三 浦和 尚︑ 夏井 いつ き 編著
﹃俳 句の 授業 がで きる 本 創作 指導 ハン ドブ ック
﹄︵ 三省 堂︑ 二〇 一一
︶が ある
︒坪 内氏 は京 都教 育大 学在 任中 に多 くの 俳句 教育 に関 する 論考 を発 表し てお り︑ ほか の多 くの 論著 と並 んで 参考 にな る︒ また 夏井 氏は 近年 テレ ビの バラ エテ ィ番 組で も活 躍し てい るが
︑ もと もと 全国 で﹁ 句会 ライ ブ﹂ を展 開し
︑高 校生 を対 象と する 俳句 とデ ィベ ート の全 国大 会︑ 松山 俳句 甲子 園⑩
の仕 掛け 人と して も知 ら れて いる
︒ 創作 講義 の実 践報 告例 とし ても 多く の報 告が あり
︑特 に中 学校
・ 高等 学校 を対 象と した もの に風 間重 利﹁ 俳句 創作 を通 した 自己 表現 と相 互交 流の 可能 性⑪
﹂︑ 頼岡 由美
﹁短 歌・ 俳句 に学 ぶこ とば の力
: 主体 的に 活動 する 場を どう 作る か⑫
﹂︑ 大学 にお ける 外国 人留 学生 対 象の 日本 語教 育の 実践 とし て小 林可 奈子
﹁俳 句学 習の 可能 性⑬
﹂な ど があ る︒
鑑賞
・解 釈を 重視 した 学習 につ いて は︑ 西尾 勝彦
﹁俳 句授 業の 試 み︱ ショ ート スト ーリ ーの 作成 を中 心に
︱⑭
﹂︑ 廣瀬 充﹁ 中学 校第 学年 国語 科学 習指 導案
俳句 調べ⑮
﹂︑ 岡崎 忍﹁ 生徒 が主 体的
・協 働 的な 学習 を実 現す るた めの 授業 に関 する 一考 察: 中学 校 年生 の俳 句の 授業 実践 報告⑯
﹂な どが ある
︒ また 石塚 修﹁ 多様 な﹁ 解釈
﹂を 楽し む俳 句の 授業 俳︱ 句指 導の 類 型化 の問 題点 を考 える
︱⑰
﹂で は︑ 国語 教育 にお ける
﹁俳 句﹂ の授 業 実践 につ いて の蓄 積を 認め なが ら︑
﹁類 型化 した
﹂授 業が 行わ れて いる こと を指 摘し
︑当 時の 中学 校国 語教 科書 に掲 載さ れて いた 六十 七句 を対 象に
︑中 学生 がど のよ うな 俳句 に関 心を もつ かを 報告 して いる
︒そ のう えで 生徒 が自 由に 記述 した 物語 的な 俳句 の鑑 賞文 を相 互に 批評 しあ うこ とで
︑読 みの 多様 性を 学ば せる とい う授 業実 践が 述べ られ てい る︒ 非常 に興 味深 い試 みで ある が︑ 俳句 の基 礎的 知識 を学 ぶと ころ から 十時 間を 費や して おり
︑実 際に 行う には 難し いだ ろう 俳 ︒ 句鑑 賞を スト ーリ ー化 する 試み は西 尾報 告で も行 われ てい る︒ ここ では 教科 書に 掲載 され た十 五句 の俳 句全 てに つい て﹁ 二〇
〇字 前後 のシ ョー トス トー リー
﹂を
﹁制 限時 間七
︑八 分﹂ で鑑 賞︑ 記述 させ てい る︒ 生徒 は︑ 個々 の俳 句に つい ての 難解 な語 句︑ 季語
︑切 れ字 など の解 説を ふま えた うえ で鑑 賞し てお り︑
﹁多 くの 生徒 は︑
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
五六
回を 追う ごと に俳 句世 界を 正確 かつ 想像 性豊 かに 受け 取り
︑表 現し てい た﹂ 一方 で﹁ 十五 回す べて にわ たっ て直 訳調 から 脱す るこ とが でき ない 生徒 が数 名い た﹂ とい う︒ 鑑賞 を対 象と する 講義 では ある 程度 やむ をえ ない とも いえ るが
︑か なり の授 業時 間が とら れる こと は課 題で あろ う︒ 筆者 はこ れま で複 数の 大学 にお いて
︑俳 句を 取り 入れ た創 作講 義 を実 践し てき た⑱
︒こ のう ち京 都造 形芸 術大 学で は︑ 一年 次生 を対 象 とす る基 礎的 な日 本語 学習 の講 座の なか で二 時限 を俳 句の 創作
・鑑 賞に 宛て てい た︒ その 際気 づい たこ とは
︑俳 句の 創作 を体 験す るこ とが 鑑賞 の導 入と なり
︑そ の他 の文 学鑑 賞に もつ なが るこ と︑ さら に俳 句鑑 賞文 の指 導が その 後の 文章 指導 にも 直結 する こと であ る︒ 学生 の実 作は
︑実 際に はつ たな く︑ 類型 的な もの が多 いが
︑実 作を 体験 する こと で定 型や 季語 の理 解が 深ま り︑ また 創作 の体 験を ふま える こと で自 分に はな い表 現の 豊か さに も気 づく こと がで きる
︒創 作の 完成 度を 目指 すの では なく
︑文 学鑑 賞の 導入 とし て俳 句を 位置 づけ てい くこ とが 可能 では ない か︒ 本稿 は右 の経 験を ふま えた うえ で︑ 俳句 の創 作・ 鑑賞 を中 学・ 高 等学 校の 生徒 を対 象と する 授業 案と して 提案 する
︒
大学 にお ける 授業 実践 ( ) 創作 第一 時: 俳句 の創 作 目的
:俳 句の 基礎 的な 知識 を学 び︑ 実作 をお こな う︒ 対象
:四 年制 大学 一年 次生
︒︵ 中学 三年
~高 校生 に対 応可
︶ 俳句 の基 礎的 な知 識と して
︑季 語・ 定型 につ いて 解説 する
︒と い って も基 本的 には 季語
:季 節を あら わす 言葉
︒時 代に よっ て変 化す る︒ 一句 にひ とつ が原 則︒ 定型
:五
・七
・五 の形
︒和 歌﹁ 五七 五七 七﹂ の上 句か ら派 生し た︒ とい った
︑ざ っく りと した 説明 でよ い︒ 場合 によ って は連 歌か ら俳 諧連 歌の 発句 が独 立し た︑ とい う文 学史 的説 明を 加え ても よい だろ う︒ 五七 五の 音数 の数 え方 は﹁ チュ
・ー
・リ
・ッ
・プ
﹂が 五音 であ ると 例示 する のが わか りや すい
︒ むし ろ重 要に なる のは
︑季 語が なぜ 必要 か︑ とい う意 義づ けで あ る︒ 筆者 は講 義に おい て次 のよ うに 解説 して いる
︒ 季語 は一 語に 含ま れる 情報 量が 豊か であ り︑ 短い 俳句 のな かで 場面 設定 に便 利︒ たと えば
﹁雲 の峰
﹂と いう 季語 は入 道雲 のこ とで ある が︑ 季語 を 創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
五七
置く だけ で夏 の暑 い盛 り︑ 雲が そび える 光景 を思 い浮 かべ るこ とが でき る︒ つま り﹁ 雲﹂ の見 える よく 晴れ た青 空が 想像 され
︑時 期︑ 気温
︑天 候︑ 屋外 か屋 内か
︑さ らに 季節 にと もな う心 情と して 晴れ やか さや
︑夏 休み を想 像さ せる ノス タル ジッ クな 気持 ちな ども 想起 させ る︒ 季語 の働 きを 実感 させ る仕 掛け とし てよ く行 って いる のが
︑俳 句 の季 語を 入れ 替え ると いう 実験 であ る︒
﹁雲 の峰
﹂で 歳時 記な どを めく ると 出て くる 有名 句に 厚餡 割れ ばシ クと 音し て雲 の峰
中村 草田 男
﹃銀 河依 然﹄ があ る⑲
︒こ れを 他の 季語 に入 れ替 えて 鑑賞 して みる ので ある
︒た とえ ば︑ 海に 出て 木枯 帰る とこ ろな し 山口 誓子 表 のう ち五 社以 上に 掲載 され てい る著 名な 句で ある
︒こ の﹁ 木 枯﹂
︵冬 の季 語︶ を当 ては めて みる と︑ 次の よう にな る︒ 厚餡 割れ ばシ クと 音し て木 枯 原句 が︑ 晴天 のも と大 きな 饅頭
︵厚 餡︶ を割 って 食べ ると いう 健 康的 な情 景だ った のに 対し て︑ 寒い 木枯 らし のな か饅 頭を 割る 句に なっ た︒
﹁木 枯﹂ は四 音で ある ため
︑音 を整 え﹁ 冬の 風﹂ と置 き直 して もよ い︒ 冬の ほう が暖 かい 饅頭 にふ さわ しい と感 じる 人も いる かも しれ ない し︑
﹁シ ク﹂ とい う独 特の 擬音 が寂 しげ に響 くと いう
感じ 方も ある だろ う︒ 少な くと も原 句は むく むく と雄 大な
﹁雲 の 峰﹂ と︑ 手元 で餡 を割 るひ そや かな 音と の対 比が ある が︑
﹁木 枯﹂ には 内面 に迫 った 寂寥 感が ある
︒あ るい は 鰯雲 人に 告ぐ べき こと なら ず 加藤 楸邨 これ も高 校三 社に 掲載 され る句 であ るが
︑同 じ雲 を示 す﹁ 鰯雲
﹂
︵秋 の季 語︶ を入 れ替 える と 厚餡 割れ ばシ クと 音し て鰯 雲 雲の 峰人 に告 ぐべ きこ とな らず とな る︒ 前者 は﹁ 厚餡
﹂と
﹁鰯 雲﹂ が食 べ物 つな がり でお いし そ うだ と感 じる 人も いる だろ うし
︑う るさ いと 思う 人も いる だろ う︒ 秋口 の涼 しい 季節
︑鰯 雲の 見え る夕 方の ほう が美 味そ うだ
︑と いう 感想 もあ って よい
︒後 者は
︑秋 の憂 いを 帯び た季 節か ら健 康的 な雲 の峰 に変 化し たこ とで
︑﹁ 告ぐ べき
﹂内 容も 大き く変 化す るだ ろう
︒ こう した 例句 を鑑 賞を 通じ て︑ 特別 な感 情語⑳
︵う れし い︑ さみ し い︑ たの しい
︶な どを 用い るこ とな く季 語に よっ て様 々な 情報 を手 に入 れて いる こと を実 感す る︒ また
﹁雲 の峰
﹂を 選択 した 原句 の意 図に つい て考 える こと にも つな がる㉑
︒ 草田 男句 の﹁ 厚餡
︵を 割る 音︶
﹂と
﹁雲 の峰
﹂︑ 楸邨 句の
﹁鰯 雲﹂ と﹁ 人に 告ぐ べき こと
﹂の よう に︑ 二物 の対 比で 詩を 生む 技法 を
﹁取 り合 わせ
﹂と 呼ぶ
︒俳 句の 実作 にお いて は﹁ 季語 以外
﹂を 考え
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
五八
たう えで
﹁季 語﹂ を﹁ 取り 合わ せる
﹂と いう 過程 が︑ 導入 とし てよ く利 用さ れる
︒﹁ 雲の 峰﹂ など 五音 の季 語で あれ ば︑ 残り 十二 音の 内容 を考 えれ ばよ い㉒
︒そ のよ うに 説明 する と学 生に も負 担が 少な く︑ たと えば 十分 程度 の考 える 時間 を与 える こと で次 のよ うな 俳句 が生 まれ る︒ 雲の 峰聞 いて 欲し いな この はな し 唐揚 げを 食べ て見 上げ る雲 の峰 サバ ンナ はは るか かな たに 雲の 峰 雲の 峰私 もな かに 入り たい いず れも 大学 生の 作品 だが
︑一 部季 語を
﹁雲 の峰
﹂に 変更 した㉓
︒ 授業 では これ らの 句を 無記 名で 提出 させ たう えで 黒板 に筆 写し
︑ 作者 名を 伏せ たま まで 人気 投票 を行 う︑ 略式 の﹁ 句会
﹂を 行っ た︒ むろ ん教 員が 期待 する 俳句 とは 違う
︑学 校生 活の 不満 をあ らわ した サラ リー マン 川柳 的な 句や
︑笑 いを とり にい った 句が 一位 にな るこ とも ある が︑ あえ て自 由に 選ば せる
︵自 分の 句は 選ば ない
︶︒ その うえ で︑ なぜ その 句を 選ん だか
︑選 ばな かっ たか
︑と いっ た質 問を 学生 に行 い︑ 肯定 的な 意見 と否 定的 な意 見を ぶつ けあ わせ る︒ どの よう な意 見で も構 わな いの で言 うよ うに
︑と うな がし
︑自 分と は異 なる 意見
︑見 方が あっ たこ とを 意識 させ るこ とが 重要 であ る︒ 教員 側に 俳句 の知 識が ある 場合 は︑ 生徒 の人 気投 票に 対し て俳 句
とし ての 評価 基準 を示 し︑ 指導 する こと もあ りう るが
︑現 場の 教員 に知 識が なけ れば
︑あ えて 教員 もい ち読 者と して 投票 に加 わっ てよ い︒ 教員 にも
﹁絶 対の 知識
︑自 信は ない
﹂こ とを
︑場 合に よっ ては 明ら かに した うえ で︑ 教員 がど の句 をい いと 思っ たか を学 生と 話し 合う 場に した い㉔
︒ なお
︑自 由に 俳句 を作 らせ ると
︑必 ず生 まれ るの が﹁ 季重 ね﹂ で ある
︒﹁ 夏休 み﹂
﹁プ ール
﹂﹁ アイ スク リー ム﹂ など 代表 的な 夏の 季 語は 事前 に示 し︑
﹁雲 の峰
﹂に よっ て夏 であ るこ とは 示さ れる ので 一句 にひ とつ が原 則︑ と指 示し てお くの がよ い︒ 大学 にお ける 授業 実践 ( ) 鑑賞 第二 時: 俳句 の鑑 賞 目的
:俳 句の 基礎 的な 知識 を学 び︑ 鑑賞 をお こな う︒ 対象
:四 年制 大学 一年 次生
︒︵ 中学 三年
~高 校生 に対 応可
︶ 第二 時は 俳句 の鑑 賞を 行う
︒鑑 賞に あた って 教員 が選 んだ
︑正 岡 子規 以降 の代 表的 俳句 五十 句を 提示 し︑ その なか から 好き な句 二句 を選 んで
︑二 種類 の鑑 賞文 を書 くこ とを 指示 した
︒字 数は それ ぞれ 四〇
〇字 程度 とし て原 稿用 紙を 配布 した が︑ 実際 には タイ トル
︑氏 名の ほか に句 の引 用が あり
︑三
〇〇 字弱 とな る︒ 対象 とな る俳 句は
︑学 校現 場で あれ ば教 科書 掲載 の句 から 選ん で 創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
五九
もよ いが
︑で きれ ば教 員自 身が でき るだ け多 様な 俳句 を示 すこ とで
︑ 画一 化さ れた 俳句 では なく
︑俳 句表 現の もつ 豊か さに 気づ いて ほし い狙 いが ある㉕
︒ A. 形式 的鑑 賞文 まず 季語 と季 節を 指摘 し︑ 句の 内容 を具 体的 に解 説す る︒ その うえ で︑ 自分 がど この 部分 を︑ なぜ よい と思 った か︑ どう 考え たか を︑ 具体 的に 句の 表現 をふ まえ て書 く︒ B. 創作 的鑑 賞文 句の 表現 をも とに
︑自 由に 句の 内容
︑場 面を 想像 し︑ 自分 が好 きな よう に書 く︒ Aに 関し ては 作文 指導 を兼 ねる
︒季 語の 指摘 や︑ 鑑賞 文に 適し た文 体︑ 語尾 など を指 定し
︑ワ ーク ショ ップ 形式 であ ては めて いく
︒具 体的 には 作者 は▲
▲︒ この 句の 季語 は﹁
○○
﹂︑ 季節 は□ であ る︒ 一 句を 読ん でイ メー ジす るの は︑
~~
~と いっ た情 景で ある
︒/
~~
~と いう 姿で ある
︒ 私が この 句を 選ん だの は~
~~ だか らで ある
︒﹁
==
=﹂ と いう 表現 から
︑~
~~ だと わか る︒
﹁○
○○
﹂と いう 表現 が意 外で
︑面 白か った
︒
⁝⁝ とい うと ころ が︑ この 句の 魅力 であ る︒
とい った 利用 しや すい 文体
︑語 彙を 例示 した うえ で︑ これ らを 使っ て具 体的 な表 現に もと づい て鑑 賞す るよ うに
︑と 指導 を行 った
︒こ れら は一 見︑ 学生 の自 由な 表現 を制 限し てい るよ うに 見え るが
︑実 際に はど の句 に注 目し
︑ど うい った 面白 さを 引き 出す か︑ とい った 根本 的な 選択 が委 ねら れて おり
︑か えっ て個 性を 出し やす い︒ 学生 は多 くの 場合
︑直 感的 に﹁ この 句が いい
﹂と 選ぶ が︑ その
﹁よ さ﹂ を具 体的 に記 述す る場 合︑ 文体 を整 える こと で端 的に 自分 が﹁ よ い﹂ と思 った 表現 を指 摘し
︑記 述で きる
︒こ れは 季語
︑定 型と いっ た制 限を 課し たう えで 個性 を出 す俳 句的 発想 に近 い︒ Bの 創作 的鑑 賞文 は︑ 前掲 の西 尾氏
︑石 塚氏 が実 践す る授 業形 式 に近 いも ので ある
︒芸 術系 大学 の学 生対 象だ った こと もあ るが
︑事 前に 創作 を体 験し
︑季 語の 働き など を学 んだ こと で鑑 賞に も入 りや すく
︑句 の内 容に 入り 込ん だ物 語風 のも の︑ アニ メー ショ ンを 見る よう に情 景を 説明 する もの
︑な ど自 由な 鑑賞 がお こな われ た︒ A︑ B両 方を 行う こと で︑ 場面 によ って 異な る文 体を 使い 分け る意 識な ども 喚起 でき たか と思 う︒ 以下
︑学 生に よる 鑑賞 文の 一部 を公 開す る㉖
︒ A﹁ セン チメ ント な﹂ 秋深 し手 品了 りて 紐は 紐
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
六〇
高柳 克弘 作︒ 上五 の︿ 秋深 し﹀ から 季節 は秋 だと わか る︒ わた しが この 句を 選ん だ理 由は
︑中 七下 五に ある
︒︿ 手品 了り て 紐は 紐﹀
︒手 品が 終了 して しま えば
︑小 道具 とし て使 われ た紐 は無 意味 な紐 であ る︒ その 当然 の情 景に
︑季 語で ある 上五 の︿ 秋深 し﹀ が重 なる こと で言 い表 しよ うの ない 寂し さが こみ 上げ てく る︒ 華や かで 人目 を引 く︿ 手品
﹀を あえ て終 わら せた
︑と いう 部分 にも
︑作 者の 意識 が感 じら れる
︒ 秋が 深ま り肌 寒く なっ たこ の時 季こ そ味 わう こと ので きる セン チ メン トな 一句 であ ろう
︒ A﹁ 夏の 子ど もた ち﹂ 分け 入っ ても 分け 入っ ても 青い 山 作者 は種 田山 頭火
︒ この 句の 季節 は夏
︒こ の句 を読 んで 私が 想像 した のは
︑真 夏の 日 中に 元気 な男 の子 の兄 弟が 元気 いっ ぱい に森 の中 をか け巡 って いる 姿で ある
︒そ こか らは
︑せ みの 声や 子ど もの 足音
︑笑 い声 まで もが 聞こ えて くる よう だ︒ 私が この 句を 選ん だ理 由は
︑﹁ 分け 入っ ても
﹂を
回繰 り返 すこ とで 青々 とし た森 の中 をど んど ん進 んで いく 動き を感 じら れた から だ︒ そこ から 好奇 心や 冒険 心を ただ よわ せる 一方
︑言 葉を 繰り 返す
こと で出 口の ない 迷宮 に入 った かの よう な不 安や 恐れ まで もが 感じ られ る︒ この 句か ら︑ 最初 は期 待や 好奇 心が あっ たが 後に だん だん 不安 な 空気 を漂 わせ てく る︒ この よう な時 の流 れも 感じ られ る作 品だ と私 は思 った
︒ B﹁ 高い とこ ろか ら勢 いよ く落 ちる 水﹂ 滝落 ちて 群青 世界 とど ろけ り 作者 は水 原秋 桜子
︒ この 句を 一度 読ん だと き︑ 私は 大き な樹 々と 生い 茂る 草花 に四 方 八方 を塞 がれ たの だ︒ 威圧 的で はな く︑ 怪し い気 配も 感じ ない
︒こ の景 色に 相応 しい 言葉
︑﹁ 格が 違う
﹂︒ 二度 目に この 句を 読ん だよ き︑ 豪快 に揺 れ動 く樹 木の 間を 無理 や りに 押し 通る かの よう な轟 音が 聞こ えだ した
︒何 かと 思っ た私 は︑ 立派 に成 長し た草 木を 掻き 分け
︑こ の森 全土 に響 き渡 る音 の源 を目 指し た︒ 段々 と進 むに つれ て樹 はど んど んと 高く
︑太 くな り︑ 雑草 たち は草 藪と 化し てい った
︒ 三度 目に この 句を 読ん だと きだ った
︒突 然視 界が 広が った のだ
︒ 私は その 水の 流れ 落ち る様 に釘 付け とな り︑ ずっ と音 を聞 いて いた
︒ 創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
六一
B﹁ 一輪 挿し
」 ぽん ぽん だり あ ぱん ぱん があ る るん ば・ たん ば 作者 は高 柳重 信︒ 女が 欲し い︒ そう 思っ た︒ 上野 のプ ラッ トホ ーム のベ ンチ でな に をす るわ けで もな く︑ ぼん やり と︑ そう 思っ た︒ ばか にな りた いと 思う とき があ る︒ おれ はば かで はな いか らだ
︒ ばか は良 い︒ 考え なし に脳 なし に︑ てれ んこ てれ んこ
︑そ れで 良い
︒ なあ そこ のお 嬢ち ゃん
! えら いべ っぴ んや なあ
⁝お 花み たい に 真っ 赤で ヒラ ヒラ のス カー トよ う似 おと るわ あ︒ な︑ な︑ ええ こと しよ や!
お手 々繋 いで くる くる
︑く るく る︒ ダン スダ ンス
︑ル ン バル ンバ
︑俺 のお 郷は 丹波
︑丹 波︑ なぁ んて
⁝⁝ 列車 に乗 って 宿に 帰っ た︒ 扉と して の俳 句 前掲 の風 間氏 は︑
﹁国 語科 教師 にと って 短歌
・俳 句・ 現代 詩は 鬼 門﹂ であ ると 述べ
︑実 作者 では ない 教員 にと って
﹁結 局は 俳人 や歌 人︑ 詩人 の伝 記と 絡め て授 業ら しく させ るの が関 の山
﹂だ と嘆 いて いる㉗
︒そ のう えで 句会 の授 業を 実践 し︑
﹁生 徒が 自己 表現 の欲 求を
非常 に強 く持 って いる こと
﹂が 実感 され
︑﹁ 普段 表に は見 えに くい 生徒 の表 現意 欲や 能力 も︑ 条件 さえ 整え てい けば 画期 的に 引き 出す こと が出 来る こと を痛 感﹂ した
︑と 述べ てい る︒ こう した コミ ュニ ケー ショ ンを 重視 した 授業 展開 は︑ これ から も国 語科 教育 のな かで 重要 性を 増し てい くと 考え られ るが
︑そ のた めの 時間 が大 幅に 割か れ︑ 教科 教育 を侵 食す ると いっ たこ とで は︑ なか なか 導入 が難 しい であ ろう
︒ また 坪内 稔典 氏の 句会 実践 をも とに
︑詩 の創 作授 業に 応用 を試 み た山 本純 子氏 は︑ 飛躍 をは らん だ詩 の創 作を 指導 した こと の意 義を
︑ 次の よう に述 べて いる㉘
︒ 論理 的に 最後 まで 続け ない
︑最 後の 部分 で強 引に 飛躍 する こと を求 めた
︒⁝
⁝強 引さ を求 めた のは
︑次 の理 由に もよ る︒ 国語 の授 業の 多く の分 野で は︑ 論理 性が 求め られ
︑強 引さ は嫌 われ るが
︑文 学で は︑
﹁人 を愉 快に する 強引
﹂が 作品 の質 を決 定す る大 きな 要素 とな って いる
︒そ のこ とを
︑意 識的 に自 らの 創作 に活 かし てほ しい
︑と いう 勧め であ る︒ 山本 氏は 明言 して いな いが
︑創 作講 義の 根幹 には こう した
﹁文 学﹂ の楽 しみ を知 った うえ で︑ ほか の小 説︑ 現代 文な どの 理解 につ なげ てほ しい とい う意 図が ある と思 われ る︒ 本稿 では
︑筆 者が 大学 で実 際に 行っ た講 義を もと に︑ 創作 と鑑 賞
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
六二
を結 びつ け二 時限 で構 成し た授 業案 を提 案し た︒ むろ ん︑ 本稿 で提 示し た句 会実 践の 数を 増や した り︑ 鑑賞 の時 間を 深め るこ とで
︑よ り多 様な 展開 が見 込ま れる
︒特 に︑ 教科 書掲 載の 俳句 理解 を深 める こと を目 的に する なら ば︑ 本稿 では あえ て排 除し た文 法的 解説 や︑ 伝記 の解 説に も時 間を 割く 必要 があ ろう
︒本 稿も そう した 作家 論的 理解 を拒 むも ので はな い︒ しか し︑ 俳句 作品 に関 する 知識
︑創 作技 法の 向上 だけ を目 指す ので はな く︑ ひろ く詩 歌︑ 文芸 一般 へと 関心 をひ ろげ る契 機に して ほし い狙 いが ある
︒す なわ ち︑ 俳句 を﹁ 扉﹂ とし た文 芸鑑 賞の 試み であ る︒ また
︑創 作講 義の 成果 につ いて は一 般的 なコ ンク ール に応 募し た り︑ 句数 がそ ろう よう であ れば 簡易 版で 合同 句集 など の形 にま とめ るこ とも
︑学 習者 にと って モチ ベー ショ ンが あが る仕 掛け とし て積 極的 に取 り入 れた い︒ 注
① 文部 科学 省 学習 指導 要領 ht tp :/ /w ww .m ex t. go .j p/ a_ me nu /s ho to u/ ne w- cs /y ou ry ou /i nd ex .h tm
︑二
〇一 七年 九月 一〇 日閲 覧
② 文部 科学 省 新学 習指 導要 領 ht tp :/ /w ww .m ex t. go .j p/ a_ me nu /s ho to u/ ne w- cs /1 38 46 61 .h tm
︑二
〇一 七年 九月 一〇 日閲 覧
③ 俳人 協会 編﹃ 学校 教育 と俳 句﹄
︵二
〇〇 一︶ には
﹁小
・中 学校 の国 語 教科 書出 版社 に︑ 教科 書作 成に あた って
︑俳 句の 有季 定型 の基 本に 則る
こと を引 きつ づき 継続 して ほし い旨 の要 請状 が発 送さ れた
﹂と あり
︑教 育現 場に 対し て﹁ 有季 定型
﹂を 強く 求め る声 があ った とわ かる
︒
④ 一九 五二
~︑
﹁狩
﹂所 属︑ 鷹羽 狩行 に師 事す る︒ 句集
﹃水 精﹄
︵本 阿弥 書店
︑一 九八 九︶
︑﹃ 天弓
﹄︵ 角川 書店
︑一 九九 五︶ ほか
︒当 該の 文章 は
﹁俳 句の 読み 方︑ 味わ い方
﹂﹃ 新し い国 語
﹄︵ 東京 書籍
︶
⑤ 一九 三五
~︑
﹁草 苑﹂ を経 て﹁ 草樹
﹂代 表︒ 桂信 子に 師事
︒現 代俳 句 協会 会長 を経 て︑ 特別 顧問
︒二
〇一 六年
︑日 本芸 術院 賞受 賞︒ 句集 に
﹃り らの 木﹄
︵草 苑発 行所
︑一 九八
〇︶
︑﹃ 象﹄
︵角 書川 店︑ 二〇
〇〇
︶ほ か︒ 当該 の文 章は
﹁俳 句の 可能 性﹂
﹃国 語
﹄︵ 光村 図書
︶
⑥
﹁﹁ ユネ スコ 文化 遺産 登録
﹂目 指す 推進 協設 立﹂
﹃毎 日新 聞﹄ 二〇 一七 年四 月二 四日
⑦
﹁ユ ネス コ登 録に 向け ての 現状 と今 後﹂
﹃俳 句界
﹄二
〇一 七年 一〇 月号
⑧
﹁特 集 俳句 ユネ スコ 無形 文化 遺産 登録 推進 をめ ぐっ て﹂
﹃鬣
﹄二
〇一 七年 八月 号
⑨ 現代 俳句 協会 青年 部編
﹃I ns it u﹄ 二︵ 二〇 一二
︶は
﹁学 校教 育と 俳 句﹂ を特 集す るが
︑そ こで 座談 会﹁ 俳句 と教 科書
﹂︵ 高野 ムツ オ︑ 藺草 慶子
︑外 山一 機︑ 司会
:神 野紗 希︶ のな かで 俳人 協会 が要 請し た教 育現 場に おけ る﹁ 有季 定型 厳守
﹂に つい て︑ 無季 俳句
︑自 由律 俳句 など の多 様な 可能 性を 排除 する ので はな いか と問 題提 起さ れて いる
︒
⑩ 俳句 甲子 園実 行委 員会 監修
﹃一 冊ま るご と俳 句甲 子園
:俳 句生 活永 久 保存 版﹄
︵角 川学 芸出 版︑ 二〇 一〇
︶
⑪
﹃金 沢大 学教 育学 部附 属高 等学 校 高校 教育 研究
﹄五 四︵ 二〇
〇二 年 一一 月︶
⑫
﹃国 語教 育研 究﹄ 五四
︵二
〇一 三年 三月
︶︑ 第回 広島 大学 教育 学部 国語 教育 学会
・研 究協 議 協議 課題
﹁新 しい 学習 指導 要領 と国 語科 授業
:習 得・ 活用
・探 究を どう 扱う か﹂ 所収
︒ 創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
六三
⑬
﹃大 阪大 学日 本語 日本 文化 教育 セン ター 授業 研究
﹄一
〇︵ 二〇 一二 年 三月
︶
⑭
﹃同 志社 国文 学﹄ 六〇
︵二
〇〇 四年 三月
︶
⑮
﹁先 生の ため の授 業に 役立 つ学 校図 書館 活用 デー タベ ース
﹂h tt p: // ww w. u- ga ku ge i. ac .j p/
~s ch oo li b/ ht do cs /で 公開 され てい る︑ 二〇
〇四 年︑ 東京 学芸 大学 附属 国際 中等 教育 学校 での 授業 実践 例︒ 管理 番号 A0 20 2︑ 二〇 一四 年九 月二 日作 成︵ 二〇 一七 年九 月一
〇日 閲覧
︶
⑯
﹃子 ども 教育 研究
﹄八
︵二
〇一 六年 三月
︶
⑰
﹃人 文科 学教 育研 究﹄ 二三
︵一 九九 六年 八月
︶
⑱ 担当 した 期間 は次 のと おり
︒ 京都 造形 芸術 大学
﹁こ とば と表 現﹂
︵二
〇一 一年 九月
~二
〇一 七年 三 月︶ 園田 学園 女子 大学
﹁日 本語 表現
﹂︵ 二〇 一一 年九 月~ 二〇 一二 年三 月︶ 同志 社女 子大 学﹁ 創作 A︑ 創作 B﹂
︵二
〇一 五年 四月
~現 在︶ 大阪 大谷 大学
﹁創 作Ⅱ
﹂︵ 二〇 一五 年四 月~ 現在
︶
⑲ 歳時 記が 手元 にな い場 合︑ イン ター ネッ ト上 で現 代俳 句協 会の 提供 す る﹁ 現代 俳句 デー タベ ース
﹂︵ ht tp :/ /w ww .h ai ku -d at a. jp /︶ で検 索す る こと も可 能で ある
︒
⑳ 三浦
︑夏 井前 掲書 では
︑感 情語 を使 った ワー クシ ート を紹 介し てい る
︵四 四頁
︶︒ そこ では
︑﹁ うれ しい な﹂
﹁か なし いな
﹂を 使っ た五 七五 の言 葉を 作っ たう えで
︑感 情語 の部 分を
﹁春 うら ら﹂
﹁梅 雨曇 り﹂ など の季 語に 置き 換え る︑ とい う手 法を 提案 して いる
︒ま た五 味太 郎﹃ 俳句 はい かが
﹄︵ 岩崎 書店
︑一 九九 四︶ では
﹁チ ュー リッ プ並 んで 咲い て楽 しそ う﹂ を﹁ チュ ーリ ップ 喜び だけ を持 って いる
細見 綾子
﹂の よう に表 す のが 俳句
︑と 解説 する
︒
㉑ 作句 の技 術的 な用 語で
﹁季 語が 動く
﹂と いう 表現 があ る︒ 選択 され た
季語 が︑ 内容 にそ ぐわ ない とい う指 摘で あり
︑同 じ季 節の 季語 でも 他の 選択 肢が ない か︑ 場合 によ って は季 節そ のも のを 変え ても 成り 立つ ので はな いか
︑と いっ た検 討が 行わ れる
︒作 者の 実体 験と は別 に︑ 作品 とし てど うい う効 果を 生ん でい るか とい う検 討が 行わ れる ので あり
︑表 現力 を考 える うえ でよ い指 標に なる だろ う︒
㉒ 三浦
︑夏 井前 掲書 では この
﹁季 語以 外﹂ を﹁ 俳句 の種
﹂と 命名 する
︒
㉓ 坪内 前掲 書で は︑
﹁窓 の露
﹂︵ 秋︶ の季 語で 作句 をう なが した あと
︑
﹁窓 の露
﹂と 同じ 情景 を詠 んだ 句を 除外 して 選句 させ る︑ とい う指 導も 行っ てい る︵ 二二 頁︶
︒ 窓の 露先 生し わが ふえ てる ね 窓の 露目 覚ま し時 計の 音が する 窓の 露朝 日が 映り 露光 る 窓の 露き らり と光 る露 の玉 これ らの 句の うち
︑後 半 句を 除外 し前 半 句は 残さ れて いる
︒こ うし た操 作は
︑最 終的 には 現場 の教 員が 判断 する こと にな るが
︑除 外さ れた 生徒 への 対応 も大 切で あり
︑俳 句に 対す る知 識が ない 場合 は特 に操 作を 行う 必要 はな いだ ろう
︒
㉔ 坪内 前掲 書は
︑作 者を 伏せ たま ま合 評を 行う こと で﹁ 作者 の思 って も みな かっ たこ とに 話が 及ぶ
﹂︑ 自分 自身 が思 って いな かっ た﹁ 自分 を発 見﹂ する こと が︑ 句会 の魅 力と 述べ る︒
㉕ 先述 した とお り︑ 俳句 を一 部の 基準
︑価 値観 だけ で選 ぶこ とは 難し い︒ でき るか ぎり 学生 にも 親し みや すい
︑現 代の 作家 を多 く取 り入 れた い︒ 参考 とし て︑ 現代 の作 家を 対象 とし た以 下の よう なア ンソ ロジ ーが ある
︒ 宇多 喜代 子著
﹃戦 後生 まれ の俳 人た ち﹄
︵毎 日新 聞社
︑二
〇一 二︶
﹃関 西俳 句な う﹄
︵本 阿弥 書店
︑二
〇一 五︶ 佐藤 文香
︑黒 瀬珂 瀾︑ なか はら れい こ編
﹃大 人に なる まで に読 みた い
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
六四
短歌
・俳 句・ 川柳
﹄一
~三
︵ゆ まに 書房
︑二
〇一 六︶ 河原 地英 武﹃ 平成 秀句
﹄︵ 邑書 林︑ 二〇 一六
︶
㉖ 作品 は京 都造 形芸 術大 学﹁ こと ばと 表現
﹂公 式ブ ログ
︵h tt p: // ko to hy o. sb lo .j p/
︶に 公開 され てい る︒ ブロ グで は執 筆者 の氏 名も 公開 され てい るが
︑こ こで は名 前を 伏せ て転 載す る︒
㉗ 前掲
︑注
⑪風 間氏 論考
㉘ 山本 純子
﹁﹁ あれ っ﹂ では じま る詩 の創 作: 句会 の授 業の 形式 をベ ー スに した 詩の 授業
﹂﹃ 国語 科教 育﹄ 七〇
︵二
〇一 一︶ 創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
六五
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
六六 表
中学 校・ 高等 学校 掲載 俳句 出版 社
書 名
俳
句
作 者
備
考 東京 書籍
中学
新し い国 語
たん ぽぽ や日 はい つま でも 大空 に
中村 汀女
片山 由美 子の 文中 囀を こぼ さじ と抱 く大 樹か な
星野 立子
片山 由美 子の 文中 をり とり ては らり とお もき すす きか な
飯田 蛇笏
片山 由美 子の 文中 春風 や闘 志い だき て丘 に立 つ
高浜 虚子 万緑 の中 や吾 子の 歯生 え初 むる
中村 草田 男 赤と んぼ 筑波 に雲 もな かり けり
正岡 子規 冬菊 のま とふ はお のが ひか りの み
水原 秋桜 子 分け 入つ ても 分け 入つ ても 青い 山
種田 山頭 火 光村 図書
中学
国語
どの 子に も涼 しく 風の 吹く 日か な
飯田 龍太
宇多 喜代 子の 文中 いく たび も雪 の深 さを 尋ね けり
正岡 子規
宇多 喜代 子の 文中 跳び 箱の 突き 手一 瞬冬 が来 る
友岡 子郷
宇多 喜代 子の 文中 たん ぽぽ のぽ ぽと 絮毛 のた ちに けり
加藤 楸邨 分け 入つ ても 分け 入つ ても 青い 山
種田 山頭 火 赤い 椿白 い椿 と落 ちに けり
河東 碧梧 桐 バス を待 ち大 路の 春を うた がは ず
石田 波郷 万緑 の中 や吾 子の 歯生 え初 むる
中村 草田 男 飛び 込み のも う真 っ白 な泡 の中
神野 紗希 桐一 葉日 当り なが ら落 ちに けり
高浜 虚子 金剛 の露 ひと つぶ や石 の上
川端 茅舎 冬菊 のま とふ はお のが ひか りの み
水原 秋桜 子 日と 月の ごと く二 輪の 寒牡 丹
鷹羽 狩行
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
六七
咳を して も一 人
尾崎 放哉 学校 図書
中学
国語
凍蝶 のな ほ大 いな る凍 降り ぬ
藤田 湘子
小林 恭二 の文 中 春風 や闘 志い だき て丘 に立 つ
高浜 虚子
風景 滝落 ちて 群青 世界 とど ろけ り
水原 秋桜 子 風景 分け 入つ ても 分け 入つ ても 青い 山
種田 山頭 火 風景 つき ぬけ て天 上の 紺曼 珠沙 華
山口 誓子
花 芋の 露連 山影 を正 しう す
飯田 蛇笏
花 この 樹登 らば 鬼女 とな るべ し夕 紅葉
三橋 鷹女
花 鮟鱇 の骨 まで 凍て てぶ ちき らる
加藤 楸邨
生き 物 冬蜂 の死 にど ころ なく 歩き けり
村上 鬼城
生き 物 水の 揺れ が魚 に移 れり 半夏 生
大木 あま り
生き 物 万緑 の中 や吾 子の 歯生 え初 むる
中村 草田 男 愛 子の 髪の 風に 流る る五 月来 ぬ
大野 林火
愛 きみ 嫁け り遠 き一 つの 訃に 似た り
高柳 重信
愛 逢ひ に行 く開 襟の 背に 風溜 めて
草間 時彦
愛 捕虜 冷え ぬ五 体の 火種 皆絶 えて
鈴木 ゆす ら 命 戦没 の友 のみ 若し 霜柱
三橋 敏雄
命 三省 堂
中学
現代 の国 語
桐一 葉日 当り なが ら落 ちに けり
高浜 虚子
俳句 の世 界 まさ をな る空 より しだ れざ くら かな
富安 風生 菫ほ どな 小さ な人 に生 れた し
夏目 漱石 一軒 家も 過ぎ 落葉 する 風の まま に行 く
河東 碧梧 桐 バス を待 ち大 路の 春を うた がは ず
石田 波郷
俳句 十句 草の 花が しあ はせ さう に黄 色し て
細見 綾子
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
六八 何も かも 散ら かし て発 つ夏 の旅
大高 翔 万緑 の中 や吾 子の 歯生 え初 むる
中村 草田 男 芋の 露連 山影 を正 しう す
飯田 蛇笏 星空 へ店 より 林檎 あふ れを り
橋本 多佳 子 咳の 子の なぞ なぞ あそ びき りも なや
中村 汀女 いく たび も雪 の深 さを 尋ね けり
正岡 子規 分け 入つ ても 分け 入つ ても 青い 山
種田 山頭 火 入れ もの がな い両 手で 受け る
尾崎 放哉 教育 出版
中学
伝え 合う 言葉
中学 国語 春風 や闘 志い だき て丘 に立 つ
高浜 虚子
春 赤い 椿白 い椿 と落 ちに けり
河東 碧梧 桐 春 ゆさ ゆさ と大 枝ゆ るる 桜か な
村上 鬼城
春 ひつ ぱれ る糸 まつ すぐ や甲 虫
高野 素十
夏 万緑 の中 や吾 子の 歯生 え初 むる
中村 草田 男 夏 噴水 のし ぶけ り四 方に 風の 街
石田 波郷
夏 啄木 鳥や 落葉 をい そぐ 牧の 木々
水原 秋桜 子 秋 をり とり ては らり とお もき すす きか な
飯田 蛇笏
秋 燕は やか へり て山 河音 もな し
加藤 楸邨
秋 いく たび も雪 の深 さを 尋ね けり
正岡 子規
冬 風雪 にた わむ アン テナ の声 を聴 く
山口 誓子
冬 咳の 子の なぞ なぞ あそ びき りも なや
中村 汀女
冬 夕立 やお 地蔵 さん もわ たし もず ぶぬ れ
種田 山頭 火 こん なよ い月 を一 人で 見て 寝る
尾崎 放哉 筑摩 書房
高校
精選 国語 総合
バス を待 ち大 路の 春を うた がは ず
石田 波郷
春
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
六九
隠岐 やい ま木 の芽 をか こむ 怒濤 かな
加藤 楸邨 春ひ とり 槍投 げて 槍に 歩み 寄る
能村 登四 郎 万緑 の中 や吾 子の 歯生 え初 むる
中村 草田 男 夏 谺し て山 ほと とぎ すほ しい まゝ
杉田 久女 子を 殴ち しな がき 一瞬 天の 蝉
秋元 不死 男 芋の 露連 山影 を正 しう す
飯田 蛇笏
秋 啄木 鳥や 落葉 をい そぐ 牧の 木々
水原 秋桜 子 この 樹登 らば 鬼女 とな るべ し冬 紅葉
三橋 鷹女 いく たび も雪 の深 さを 尋ね けり
正岡 子規
冬 遠山 に日 の当 りた る枯 野か な
高浜 虚子 海に 出て 木枯 帰る とこ ろな し
山口 誓子 咳を して も一 人
尾崎 放哉
無季 水枕 ガバ リと 寒い 海が ある
西東 三鬼 いつ せい に柱 の燃 ゆる 都か な
三橋 敏雄 冬深 し柱 の中 の濤 の音
長谷 川櫂
現代 の句 子燕 のこ ぼれ むば かり こぼ れざ る
小澤 實 みづ うみ のみ なと のな つの みじ かけ れ
田中 裕明 筑摩 書房
高校
国語 総合
柿く へば 鐘が 鳴る なり 法隆 寺
正岡 子規 いく たび も雪 の深 さを 尋ね けり
正岡 子規 春風 や闘 志い だき て丘 に立 つ
高浜 虚子 白牡 丹と いふ とい へど も紅 ほの か
高浜 虚子 夏草 に気 缶車 の車 輪来 て止 る
山口 誓子 炎天 の遠 き帆 やわ がこ ころ の帆
山口 誓子
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
七〇 寒雷 やび りり びり りと 真夜 の玻 璃
加藤 楸邨 鮟鱇 の骨 まで 凍て てぶ ちき らる
加藤 楸邨 分け 入つ ても 分け 入つ ても 青い 山
種田 山頭 火 うし ろす がた のし ぐれ てゆ くか
種田 山頭 火 降る 雪や 明治 は遠 くな りに けり
中村 草田 男 万緑 の中 や吾 子の 歯生 え初 むる
中村 草田 男 花衣 ぬぐ やま つは る紐 いろ いろ
杉田 久女 谺し て山 ほと とぎ すほ しい まゝ
杉田 久女 をり とり ては らり とお もき すす きか な
飯田 蛇笏 たま しひ のた とへ ば秋 のほ たる かな
飯田 蛇笏 三省 堂
高校
国語 総合
いく たび も雪 の深 さを 尋ね けり
︵病 中雪
︶
正岡 子規 鶏頭 の十 四五 本も あり ぬべ し
正岡 子規 痰一 斗糸 瓜の 水も 間に あは ず
正岡 子規 遠山 に日 の当 りた る枯 野か な
高浜 虚子 白牡 丹と いふ とい へど も紅 ほの か
高浜 虚子 桐一 葉日 当り なが ら落 ちに けり
高浜 虚子 分け 入つ ても 分け 入つ ても 青い 山
種田 山頭 火 まつ すぐ な道 でさ みし い
種田 山頭 火 うし ろす がた のし ぐれ てゆ くか
種田 山頭 火 蛍籠 昏け れば 揺り 炎え たた す
橋本 多佳 子 乳母 車夏 の怒 濤を よこ むき に
橋本 多佳 子 霧月 夜美 しく して 一夜 ぎり
橋本 多佳 子 乙鳥 はま ぶし き鳥 とな りに けり
中村 草田 男
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
七一
玫瑰 や今 も沖 には 未来 あり
中村 草田 男 勇気 こそ 地の 塩な れや 梅真 白
中村 草田 男 夏草 に気 缶車 の車 輪来 て止 る
山口 誓子 海に 出て 木枯 帰る とこ ろな し
山口 誓子 炎天 の遠 き帆 やわ がこ ころ の帆
山口 誓子 大寒 の一 戸も かく れな き故 郷
飯田 龍太 鰯雲 日か げは 水の 音迅 く
飯田 龍太 一月 の川 一月 の谷 の中
飯田 龍太 たん ぽぽ のぽ ぽの あた りが 火事 です よ
坪内 稔典
今日 の俳 句 春の 水と は濡 れて ゐる みづ のこ と
長谷 川櫂 ゆた んぽ のぶ りき のな みの あは れか な
小澤 實 未来 より 滝を 吹き 割る 風来 たる
夏石 番矢 夜桜 やひ とつ 筵に 恋仇 敵
黛ま どか 第一 学習 社 高校
現代 文B
小春 日や 隣家 の家 の名 はピ カソ
皆吉 司
創作 の楽 しみ
・短 歌と 俳句 犬 炎天 に犬 の身 振ひ の骨 の音
沢木 欣一 土場 を外 れ枯 野の 犬と なり にけ り
山口 誓子 曳か るる 犬う れし くて うれ しく て道 の秋
富安 風生 十月 の木 に猫 がい る大 阪は
坪内 稔典
創作 の楽 しみ
・短 歌と 俳句 猫 黒猫 の子 のぞ ろぞ ろと 月夜 かな
飯田 龍太 百代 の過 客し んが りに 猫の 子も
加藤 楸邨 恋猫 の恋 する 猫で 押し 通す
永田 耕衣 恋文 をひ らく 速さ で蝶 が湧 く
大西 泰世
創作 の楽 しみ
・短 歌と 俳句 蝶 ひか り野 へ君 なら 蝶に 乗れ るだ ろう
折笠 美秋
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
七二 高々 と蝶 こゆ る谷 の深 さか な
原石 鼎 蝶々 のも の食 ふ音 の静 かさ よ
高浜 虚子 湯に 立ち て赤 子あ ゆめ り山 桜
長谷 川櫂
創作 の楽 しみ
・短 歌と 俳句
走る
・歩 く 春ひ とり 槍投 げて 槍に 歩み 寄る
能村 登四 郎 向日 葵の 日を 奪は んと 雲走 る
篠原 鳳作 しぐ るる やし ぐる る山 へ歩 み入 る
種田 山頭 火 母の 日の ての ひら の味 塩む すび
鷹羽 狩行
創作 の楽 しみ
・短 歌と 俳句
飲む
・食 う 誰も みな コー ヒー が好 き花 曇
星野 立子 葡萄 食ふ 一語 一語 の如 くに て
中村 草田 男 食べ てゐ る牛 の口 より 蓼の 花
高野 素十 第一 学習 社 高校
国語 総合
三千 の俳 句を 閲し 柿二 つ
正岡 子規
ここ ろの 帆 いく たび も雪 の深 さを 尋ね けり
正岡 子規 痰一 斗糸 瓜の 水も 間に あは ず
正岡 子規 山国 の蝶 を荒 しと 思は ずや
高浜 虚子 去年 今年 貫く 棒の 如き もの
高浜 虚子 手毬 歌か なし きこ とを うつ くし く
高浜 虚子 冬蜂 の死 にど ころ なく 歩き けり
村上 鬼城 鷹の つら きび しく 老い て哀 れな り
村上 鬼城 闘鶏 の眼 つむ れて 飼は れけ り
村上 鬼城 高嶺 星蚕 飼の 村は 寝し づま り
水原 秋桜 子 冬菊 のま とふ はお のが ひか りの み
水原 秋桜 子 滝落 ちて 群青 世界 とど ろけ り
水原 秋桜 子 冬の 水一 枝の 影も 欺か ず
中村 草田 男
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
七三
万緑 の中 や吾 子の 歯生 え初 むる
中村 草田 男 玫瑰 や今 も沖 には 未来 あり
中村 草田 男 鰯雲 人に 告ぐ べき こと なら ず
加藤 楸邨 隠岐 やい ま木 の芽 をか こむ 怒濤 かな
加藤 楸邨 木の 葉ふ りや まず いそ ぐな よい そぐ なよ
加藤 楸邨 つき ぬけ て天 上の 紺曼 珠沙 華
山口 誓子 海に 出て 木枯 帰る とこ ろな し
山口 誓子 炎天 の遠 き帆 やわ がこ ころ の帆
山口 誓子 東京 書籍
高校
国語 総合 現代 文
鶏頭 の十 四五 本も あり ぬべ し
正岡 子規
白牡 丹︱ 俳句 抄 糸瓜 咲て 痰の つま りし 仏か な
正岡 子規 白牡 丹と いふ とい へど も紅 ほの か
高浜 虚子 金亀 子擲 つ闇 の深 さか な
高浜 虚子 芋の 露連 山影 を正 しう す
飯田 蛇笏 くろ がね の秋 の風 鈴鳴 りに けり
飯田 蛇笏 来し かた や馬 酔木 咲く 野の 日の ひか り
水原 秋桜 子 滝落 ちて 群青 世界 とど ろけ り
水原 秋桜 子 つき ぬけ て天 上の 紺曼 珠沙 華
山口 誓子 海に 出て 木枯 帰る とこ ろな し
山口 誓子 分け 入つ ても 分け 入つ ても 青い 山
種田 山頭 火 うし ろす がた のし ぐれ てゆ くか
種田 山頭 火 冬の 水一 枝の 影も 欺か ず
中村 草田 男 万緑 の中 や吾 子の 歯生 え初 むる
中村 草田 男 旅終 へて より B面 の夏 休
黛ま どか
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
七四 待ち し一 枚そ の中 にあ り年 賀状
黛ま どか 東京 書籍
高校
精選 現代 文B
一日 物云 はず 蝶の 影さ す
尾崎 放哉
プラ タナ ス︱ 俳句 抄 咳を して も一 人
尾崎 放哉 水枕 ガバ リと 寒い 海が ある
西東 三鬼 算術 の少 年し のび 泣け り夏
西東 三鬼 鰯雲 人に 告ぐ べき こと なら ず
加藤 楸邨 鮟鱇 の骨 まで 凍て てぶ ちき らる
加藤 楸邨 プラ タナ ス夜 もみ どり なる 夏は 来ぬ
石田 波郷 バス を待 ち大 路の 春を うた がは ず
石田 波郷 白葱 のひ かり の棒 をい ま刻 む
黒田 杏子 磨崖 仏お ほむ らさ きを 放ち けり
黒田 杏子 三月 の甘 納豆 のう ふふ ふふ
坪内 稔典 がん ばる わな んて 言う なよ 草の 花
坪内 稔典 明治 書院
高校
精選 国語 総合
白牡 丹と いふ とい へど も紅 ほの か
高浜 虚子
万緑 の中 や 去年 今年 貫く 棒の 如き もの
高浜 虚子 芋の 露連 山影 を正 しう す
飯田 蛇笏 をり とり ては らり とお もき すす きか な
飯田 蛇笏 啄木 鳥や 落葉 をい そぐ 牧の 木々
水原 秋桜 子 山桜 雪嶺 天に 声も なし
水原 秋桜 子 ピス トル がプ ール の硬 き面 にひ びき
山口 誓子 海に 出て 木枯 帰る とこ ろな し
山口 誓子 万緑 の中 や吾 子の 歯生 え初 むる
中村 草田 男 玫瑰 や今 も沖 には 未来 あり
中村 草田 男
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
七五
鰯雲 人に 告ぐ べき こと なら ず
加藤 楸邨 鮟鱇 の骨 まで 凍て てぶ ちき らる
加藤 楸邨 うし ろす がた のし ぐれ てゆ くか
種田 山頭 火 雨ふ るふ るさ とは はだ しで ある く
種田 山頭 火 湾曲 し火 傷し 爆心 地の マラ ソン
金子 兜太 海と どま りわ れら 流れ てゆ きし かな
金子 兜太 筆と れば 若葉 の影 す紙 の上
森鴎 外
俳句 の窓
あん ずあ まさ うな 有る 程の 菊抛 げ入 れよ 棺の 中
夏目 漱石 青蛙 おの れも ペン キぬ りた てか
芥川 龍之 介 あん ずあ まさ うな ひと はね むさ うな
室生 犀星 もろ もろ の浴 衣に 江戸 を祭 りけ り
佐藤 春夫 恋す れば 言葉 少し ソー ダ水
吉屋 信子 雛飾 る手 の数 珠し ばし はづ しお き
瀬戸 内寂 聴 筑摩 書房
高校
精選 現代 文B
痩馬 のあ はれ 機嫌 や秋 高し
村上 鬼城 冬蜂 の死 に所 なく 歩行 きけ り
村上 鬼城 分け 入つ ても 分け 入つ ても 青い 山
種田 山頭 火 うし ろす がた のし ぐれ てゆ くか
種田 山頭 火 竹馬 やい ろは にほ へと ちり 〴〵
久保 田万 太郎 した ゝか に水 をう ちた る夕 ざく ら
久保 田万 太郎 金剛 の露 ひと つぶ や石 の上
川端 茅舎 月光 に深 雪の 創の かく れな し
川端 茅舎 炎帝 につ かへ てメ ロン 作り かな
篠原 鳳作 しん しん と肺 碧き まで 海の たび
篠原 鳳作
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
七六 そら 豆は まこ とに 青き 味し たり
細見 綾子 女身 仏に 春剥 落の つづ きを り
細見 綾子 湾曲 し火 傷し 爆心 地の マラ ソン
金子 兜太 人体 冷え て東 北白 い花 盛り
金子 兜太 大寒 の一 戸も かく れな き故 郷
飯田 龍太 かた つむ り甲 斐も 信濃 も雨 のな か
飯田 龍太 軍鼓 鳴り
/荒 涼と
/秋 の/ 痣と なる
高柳 重信 樹々 ら/ いま
/切 株と なる
/谺 かな
高柳 重信 摩天 楼よ り新 緑が パセ リほ ど
鷹羽 狩行 紅梅 や枝 枝は 空奪 ひあ ひ
鷹羽 狩行 街へ の投 網の やう な花 火が 返事 です
夏石 番矢 千年 の留 守に 瀑布 を掛 けて おく
夏石 番矢 筑摩 書房
高校
現代 文B
梨む くや 甘き 雫の 刃を 垂る る
正岡 子規 糸瓜 咲て 痰の つま りし 仏か な
正岡 子規 鷹の つら きび しく 老い て哀 れな り
村上 鬼城 冬蜂 の死 に所 なく 歩行 きけ り
村上 鬼城 赤い 椿白 い椿 と落 ちに けり
河東 碧梧 桐 曳か れる 牛が 辻で ずつ と見 廻し た秋 空だ
河東 碧梧 桐 昼寝 起き れば つか れた 物の かげ ばか り
尾崎 放哉 入れ もの がな い両 手で 受け る
尾崎 放哉 来し かた や馬 酔木 咲く 野の 日の ひか り
水原 秋桜 子 コス モス を離 れし 蝶に 谿深 し
水原 秋桜 子 雪は げし 抱か れて 息の つま りし こと
橋本 多佳 子
創作
・鑑 賞を ふま えた 俳句 の授 業
七七
蛍籠 昏け れば 揺り 炎え たた す
橋本 多佳 子 鞦韆 は漕 ぐべ し愛 は奪 うべ し
三橋 鷹女 きし きし とき しき しと 秋の 玻璃 を拭 く
三橋 鷹女 算術 の少 年し のび 泣け り夏
西東 三鬼 兵隊 がゆ くま つ黒 い汽 車に 乗り
西東 三鬼 雁や 残る もの みな 美し き
石田 波郷 雷落 ちて 火柱 見せ よ胸 の上
石田 波郷 軍鼓 鳴り
/荒 涼と
/秋 の/ 痣と なる
高柳 重信 樹々 ら/ いま
/切 株と なる
/谺 かな
高柳 重信 千年 の留 守に 瀑布 を掛 けて おく
夏石 番矢 神々 のあ くび が桜 を枯 らす のか
夏石 番矢 教育 出版
高校
現代 文B
流れ 行く 大根 の葉 の早 さか な
高浜 虚子
現代 の俳 句 どう しよ うも ない わた しが 歩い てゐ る
種田 山頭 火 しん しん と肺 碧き まで 海の たび
篠原 鳳作 やが てラ ンプ に戦 場の ふか い闇 がく るぞ
富沢 赤黄 男 夏の 河赤 き鉄 鎖の はし 浸る
山口 誓子 滝落 ちて 群青 世界 とど ろけ り
水原 秋桜 子 湾曲 し火 傷し 爆心 地の マラ ソン
金子 兜太 蛍籠 昏け れば 揺り 炎え たた す
橋本 多佳 子 桜散 るあ なた も河 馬に なり なさ い
坪内 稔典 日本 海に 稲妻 の尾 が入 れら れる
夏石 番矢 三省 堂
高校
現代 文B
鞦韆 は漕 ぐべ し愛 は奪 うべ し
三橋 鷹女
鞦韆 鞦韆 を漕 ぐと き父 も地 を離 る
鷹羽 狩行