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水道事業の効率性分析

著者 原田 禎夫

雑誌名 經濟學論叢

巻 55

号 4

ページ 101‑134

発行年 2004‑03‑20

権利 同志社大学経済学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000004650

(2)

【研究ノート】

水道事業の効率性分析

原 田 禎 夫

は じ め に

現代社会において,地方公共団体が住民に提供するサービスの中でも水道サ ービスは欠かすことのできない最も重要なサービスである.しかし,毎年のよ うに繰り返される渇水による断減水や水源の水質汚染によるカビ臭や有毒物質 の混入など安全性にかかわる問題は,「清廉にして豊富低廉な水の供給」(水道 法第1条)を目的とした水道事業への信頼を揺るがしかねない問題となってい る.

水道事業は安全かつ安定的な供給の必要性から水道法のもとで地域独占がみ とめられ,独立採算制がとられてきたが,「水道統計」(日本水道協会,2001)に も示されているように,昭和40 年代から給水原価が給水単価を大きく上回る事 業者が数多く存在し赤字経営が慢性化している.また他会計からの繰入金がか なりの額に上る事業者も多く存在し,事実上独立採算になっていない事業者が 多く存在する.しかし前述のように水道事業は公営の原則が定められており,

地域独占が保障されている.さらに料金体系についてもヤードスティック制や プライスキャップ制などのインセンティブ規制は導入されていない.このよう な状況では,水道事業には競争原理が働いているとは考えにくく,非効率性が 発生している可能性が考えられるが,水道サービスの供給主体である地方公共 団体の財政逼迫化により,ナショナル・ミニマムである水道事業といえども効 率的な運営が要請されている.

また,大都市圏の人口増加とともに,都市部の水道では年間を通じて安定的

(3)

な水源を確保するために,ダムなどの大規模な貯水設備への依存率が高くなっ ており,昭和40 年度には年間取水量に対するダム依存率は約12%だったのが,

平成12 年度には39.6%となっている.しかし,近年の環境意識の高まりとと

もに,ダムの新規立地は非常に困難になっており,この点からも効率的な運営 が望まれている.一方,量的な面だけではなく質的な面でも安定的かつ安全な 水への需要は高まっており,高度浄水処理1)を導入する事業体が増加している が,今後これらの課題に応えていくためにも,より効率的な運営が必要であろ う.

効率性を評価する手法として近年普及してきたものとして,包絡分析法(以 下DEA:Data Envelop Analysis)とフロンティア分析法(Frontier Analysis)が挙げ られる.まず,DEA は,実績データにもとづいて最も効率的なサンプルの生産 性を基準として,他のサンプルの相対的な効率性を計測するものであり,企業 や自治体,あるいは年度などを対象に,関数形を特定化することなくさまざま な効率性を測定することが可能である.また,効率性改善案の提示も比較的容 易に行なえるというメリットがある2).しかしDEA はノンパラメトリックな手法 であり統計的な検定を行なうことができないために,その信頼性に関して依然,

議論の余地がある.一方,パラメトリックな効率性評価手法であるフロンティ ア分析法は,ノンパラメトリックな手法であるDEA と比較して統計的な検定が 可能であるというメリットがある.しかし一方で,分析にどのようなフロンテ ィア関数を想定するのか,また想定する生産関数や分布形によって効率性の値 が変化してしまうなどの欠点も指摘されている.

水道事業の効率性評価に関する先行研究では,効率性,あるいは効率性に影 響を与える要因についてDEA とフロンティア分析法のいずれかの手法のみによ って分析しており両手法を比較したものは少ない.しかし効率性評価に関して

1)通常の浄水方法では十分に対応できない臭気物質,トリハロメタン,アンモニア性窒素などを取 り除くため,活性炭処理,オゾン処理,生物処理などの方法で浄水処理を行なうこと.

2)DEA については刀根(1993)に詳しいので,これを参照せよ.

(4)

どちらか一方の手法のみによる評価に依存するのは,信頼性の点で疑問が残る.

また,分析対象も限られた地域の事業体が対象であり,全国の事業者を対象に したものはない.そこで本稿では,分析対象を全国の事業者に拡大し,DEA と フロンティア分析法の両手法を用いて効率性評価について比較する.これらの 手法の間で同様な結果が得られれば,その評価はより頑健なものといえるであ ろう3).また,どのような要因が効率性に影響を与えているのかについても両手 法をもとにした分析を行ない,より信頼性の高い分析を行なう.

本稿の構成は以下の通りである.まず1 章では,わが国の水道事業について の現状を把握する.2 章では,水道事業の効率性評価に関する先行研究を紹介 する.3 章ではDEA とフロンティア分析法を用いた技術効率性評価の概要につ いて述べ,4 章ではこれらの方法を用いて水道事業の技術効率性を計測する.5 章では,4 章で得られた技術効率性に影響を与える要因について分析する.最 後に,これらの結果から水道事業の効率性について検討し,まとめとする.

1

水道事業の現状

平成13 年度末における,地方公共団体によって経営される水道事業の数は 3,639 事業あり,このうち上水道事業は1,991 事業(うち末端給水事業は1,905 事 業)4)で前年度に比べ1 事業の減少,簡易水道は1,648 事業で前年度に比べ22 事業の減少である.事業数減少の主な理由は水道企業団への加入や,事業統合 などである.上水道事業における末端給水事業のうち,給水人口1.5 万人未満

の事業は863 事業で全体の45.3%を占め,ついで1.5 万人以上3 万人未満の事

業は417 事業で全体の21.9%を占め,これらの小規模事業が全体の67.2%を占

めている.また,末端給水事業および簡易水道事業の現在給水人口は平成13

年度末で122,703 千人で,前年度より0.4%増加している.また,平成13 年度

3)DEA の頑健性を統計的に検定する方法としてBootstrap 法の併用が提唱されている.ここでとり

あげた先行研究では寺田(2002),宮良・福重(2003)などがある.本稿の分析でもBootstrap 法の 適用を考えたが分析に用いたソフトウェアの問題などにより見送った.

4)建設中の事業を含む.

(5)

の末端給水事業及び簡易水道事業の年間総有収水量5)は14,862 百万m3で,前

年度より137 百万m3減少しており,給水人口1 人当たりでみると1 日平均有

収水量は,全事業平均332rで,前年度に比べ4rの減少となっている.

水道普及率は平成12 年度末で96.6%となっているが,長引く不況や,少子 高齢化,住民の環境意識の変化などにより,水需要の伸びも少なくなってきて いる.一方で昭和30 年代から40 年代にかけて新設された水道施設の改良・更 新事業が今後も見込まれるため,事業の経営環境は今後さらに厳しくなること が予想されている.

法適用簡易水道事業を含む水道事業の平成 12 年度における総収支比率は

103.8%であり,純利益を生じた事業は1,497 事業(建設中の事業を除く全事業の

74.8%)である.一方,準損失を生じた事業は505 事業で,前年度より52 事業

減少した.生産性を示す指標である営業収益については,おおむね給水人口規 模の大きい事業が高くなっている.

上水道事業は地方公営企業法の規定がすべて適用されているが,山間部や離 島など人口の少ない地域に多い簡易水道や飲料水供給施設に対しては任意適用 となっている.近年の地方財政の逼迫により,これらの地域では費用抑制のた め,必ずしも上水道の導入ではなく簡易水道事業など地域に適した水道の導入 が推進される傾向にあるが,現在,簡易水道事業数1,648 事業のうち法適用は 32 事業にとどまっており,情報開示などの目的のため,簡易水道事業において も法適用事業が増加するよう平成12 年度より財政措置が講じられている6)

また,近年の市町村合併の進展と平行して,上水道事業も統合化・広域化が

進められ7),平成13 年度末における広域水道の配水能力は全事業の35.5%を占

めるまでになった.しかし,現状では事業間のさまざまな格差により事業統合

5)有収水量とは配水量のうち料金収入となった水量をさす.

6)総務省では平成12 年度より自主的に地方公営企業法の財務規定等を適用しようとする地方公共

団体に対し,その適用の準備に要する経費について補助金を交付している.

7)このメリットとして①水資源の確保の一元化,②施設の合理的な配置が可能になる,③水の相互融 通による水使用の合理化,④料金格差の是正による広域的な受益の均衡化,などが挙げられている.

(6)

の進展が困難なケースもみられ,各事業の経営状況や地理的条件などを総合的 に考慮した調整が望まれている.

さらに,より安定的かつ合理的な事業運営を目的として,平成 13 年度に水 道法が一部改正され,①第三者(他の市町村など)への業務委託の制度化,②事 業の広域化・統合による管理体制強化と手続きの簡素化,③利用者への情報開 示の充実,などが推進されることとなった.

以上,水道事業の現状について概観してきたが,次章以降ではわが国の水道 事業の効率性評価の先行研究を整理したうえで,全国の上水道事業を対象に事 業の効率性を計測し,その要因について検討する.

2

先 行 研 究

近年の地方財政の緊迫により,地方自治体(塩津・原田・伊多波,2001),第3 セクター鉄道(坂元,1996),公共図書館(池内,2002,田村,2002),警察(宮 良・福重,2002a),下水道(寺田,2002),公営バス事業(宮良・福重,2002b),消 防(宮良・福重,2003)など,さまざまな公益事業を対象にして効率性の評価が なされてきた.

経済学的な観点からのわが国の水道事業に対する分析は,比較的類似した構 造を持つ電気・ガス・通信事業に比べ統計的・定量的な分析が少ない.これは 他の公益事業分野と比較して,水道事業は特に導配水に関して地理的制約を大 きく受けるため,事業者間における比較が容易ではないことがあげられるであ ろう.

水道事業に関しては,通常の費用関数や生産関数,需要関数の推定にもとづ く分析が近年なされてきた.浦上(2001)において,小規模な事業者ほど大き な密度の経済性が存在する一方で,規模の経済性についてはわが国の水道事業 ではみられず,すでに過大な設備を有していることが示された.中山(2002)に おいては,同様の手法をもとに,事業者が複数生産物の費用関数を有すると仮 定し,この結果,給水人口 10 万人を境にそれ以上の水準において規模の経済

(7)

性が失われていることを示した.

DEA を用いて水道事業の効率性を計測した研究については,高田(1997)に おいて関東地方の事業者について技術効率性を計測したものがわが国における 最初の研究であると思われる.また中山(2000a)において,関西地区の事業体 の技術効率性が計測されている.

しかしDEA による効率性評価はノンパラメトリックな方法であり統計的な検 定ができないという欠点がある.このため,パラメトリックな手法であるフロ ンティア分析法による効率性評価の手法が開発されてきた.わが国では生命保 険業(中馬・橘木・高田,1993),病院(山田,1999),銀行(松浦・竹澤,2000,

2002),電力(後藤,2001)8),保育(白石・鈴木,2002)など制度が各主体の効率

性に影響を与えうる公共性の高い事業分野の実証研究がなされてきた.

本稿の直接的な先行研究となる,DEA とフロンティア分析法による効率性評 価の比較を行なったものとしては, 水道( 中山,2000b), 警察( 宮良・福重,

2002a)9)があげられる.このうち,上水道事業を対象に分析した中山(2000b)

では技術効率性,配分効率性,経済効率性についてDEA とフロンティア分析法 による効率性評価の2 つの手法を比較し,技術効率性についてはこれらの方法 の間に比較的高い相関関係があることが示された.

また,中山(2001)では,関西地区の水道事業の技術効率性をDEA を用いて 計測した後,非効率性の要因についてトービット・モデルを用いて分析を行な っている.ここでは,技術非効率性の要因としては料金水準の高い事業者で非 効率性が高く,市営と町村営による経営形態の差は,価格や補助率,施設利用 率,普及率の影響を考慮すればないことが示された.しかし,この分析では水 道事業者がもっとも影響を受けるであろう地理的,環境的な要因が考慮されて いない,という問題がある.

8)ただし,米国の電力事業を対象とした研究である.

9)宮良・福重(2002a)ではDEA とフロンティア分析法の比較には非確率的フロンティア関数を用

いているが,本稿では水道事業に関する先行研究との比較も行なうため,確率的フロンティア関数 を採用した.

(8)

そこで,本稿においては,全国の上水道事業を対象にDEA とフロンティア分 析法を用いて効率性評価を行ない,その結果について比較する.そして水道事 業の効率性に影響を与える要因について,事業者にとって不可避である地理 的・環境的な要因も考慮して分析する.

3

水道事業の効率性評価手法の概要

水道事業の効率性を分析するためには,データをもとに事業者が最も効率的 に事業運営を行なった場合に可能となる生産活動を表す生産フロンティアの推 定を行ない,各事業者の効率性を評価する.この生産フロンティアを推定する 一般的な手法として,ノンパラメトリックな手法であるDEA と,パラメトリッ クな手法であるフロンティア分析法が挙げられる.

以下では,各手法における効率性評価について簡単に概念を述べ,本稿で利 用したデータについて述べる.

3. 1 DEA による効率性評価の概要

近年,DEA は企業や自治体などの効率性評価の方法として注目を集めている.

まず,DEA の概念について簡単に述べる10)

DEA は実績データにもとづいてノンパラメトリックに生産フロンティアを求 め,最も効率的な事業体の生産性を基準とした事業体の相対的な効率性を計測 するものである11,12).生産関数の推計をもとにしたフロンティア分析と比較し て,生産フロンティアの関数形の特定化が不要であること,比較的少数のサン

10)DEA については刀根(1993),Cooper, Seiford and Tone(2000)に詳しいので,これを参照せよ.

11)DEA における効率性の概念は以下の3 つである.

技術効率性:所与の投入要素のもとで産出を最大にする効率性をいう.

配分効率性:投入要素の価格を所与としてその最適な組み合わせを達成する効率性をいう.

総効率性:技術効率性と配分効率性の積であらわされる効率性をいう.

12)Tone and Sawada(1990)では,公営バス事業者の効率性の分析において,Service Efficiency, Cost Efficiency, Income Efficiency, Public Service Efficiency の4 つの効率性を定義し分析している.

それぞれの定義は以下の通りである.

Service Efficiency:車両台数と従業員数をインプットとし営業キロ数をアウトプットとしたもの.

Cost Efficiency:操業費用をインプットとし車両台数と従業員数をアウトプットとしたもの.

Income Efficiency:車両台数と従業員数をインプット,収入をアウトプットとしたもの.

Public Service Efficiency:車両台数と従業員数をインプット,サービス密度をアウトプットとしたもの.

(9)

プルでも評価が可能であること,複数の産出からなる生産活動の分析が可能で あるといった利点がある.しかし,DEA では投入物に用いた変数が生産にどの 程度寄与しているかを統計的に検定できない,誤差項を考慮しないためデータの 誤差によって計測された効率性が左右される,という欠点もあるため,インプッ トやアウトプットに用いる変数について十分に吟味して選択する必要がある.

本稿では,技術効率性の評価手法としてもっとも基本的なモデルである,規 模に関して収穫一定のモデル(CCRモデル13))と,規模に関して収穫可変なモデ ル(BCC モデル14))を用いて分析を行なった.ここでは,CCR モデルとBCC モデ ルの概要を,第 1  図のような1 つのインプット(x),1 つのアウトプット(y)

の場合を例に考える(A〜Iは各DMU15)を表す点である).

13)CCR モデルという名称は,開発者であるCharnes, Cooper and Rhodes(1978)の頭文字に由来する.

14)BCC モデルの名称も,開発者であるBanker, Charnes and Cooper(1984)の頭文字に由来する.

15)DEA では対象となる企業や自治体,あるいは年度など,対象となる主体をDMU(Decision

Making Units)と呼ぶ.

出力(Y) 

0 q

CCRモデルにおける効率的生産フロンティア 

BCCモデルにおける効率的生産フロンティア 

B D

E

H G

C

F A

I

r s t

q´  入力(X) 

生産可能集合  s´ 

r´ 

第 1 図 BCCモデルの生産可能集合

(10)

規模に関して収穫一定なCCR モデルの生産フロンティアは,原点O とB を 結ぶ直線で示され,この直線より下はすべて生産可能な領域である.この場合,

企業B が最も効率的な企業であり,B 以外のすべての企業には技術非効率性が

存在し,効率性を改善する余地があるといえる.一方,規模に関して収穫可変 なBCC モデルにおいては,規模に関して収穫可変を仮定し,最も効率的な企業 は,A,B,D,E,I となる.

ここで,企業C の入力指向型のBCC モデルにおける技術効率性はqs/qtとし て測ることができる.なぜなら,企業A は同じ出力(q)をより少ない入力(s)

で達成可能であるからである.同様にして,CCR モデルにおける技術効率性は

qr/qtとして示される.したがって,効率的であるとき,その効率性は1 となり,

非効率であるときその値は1 より小さくなる.また,qr/qsが規模の効率性に相 当する.

同様にして企業C の出力指向型のBCC モデルにおける技術効率性はq s /q t として測ることができる.企業C は同じ入力(q )を用いて,生産フロンティ ア上のs まで生産することが可能だからである.また,CCR モデルにおける技 術効率性はq r /q tである.

また,これらの間には

CCR モデルにおける技術効率性=

BCC モデルにおける技術効率性×規模の効率性

の関係が成立する.また,規模に関して収穫逓減かどうかは,規模に関して収 穫非逓増な生産フロンティア(図ではOBDE)とBCC モデルの効率性が等しくな ければ,その企業は規模に関して収穫逓増であることが分かる.規模に関して 収穫逓減であるかどうかについても同様にして,規模に関して収穫非逓増な生 産フロンティアとBCC モデルの効率性が等しければ,その企業は規模に関して 収穫逓減であると判断される16)

16)詳細はCoelli, Rao and Battese(1998)を参照せよ.

(11)

3. 2 フロンティア分析法による効率性評価の概要

DEA による効率性評価は,多入力,多出力の場合の効率性評価が容易に行な えるなどの長所があるが,ノンパラメトリックな方法であるために統計的な検 定ができない,という欠点がある.そこで,統計的に検定が可能なパラメトリ ックな方法としてフロンティア分析法があるが,本稿ではこのうち多くの公益 事業の効率性評価で採用されている確率的フロンティア生産関数を用いた効率 性評価を行なう17),18).確率的フロンティア生産関数による効率性評価は,想定 される生産フロンティアに関して確率的に不確定であると仮定して,計量的に 推定された生産関数からの乖離をもって効率性を評価する.そして生産関数か らの乖離を誤差と非効率性の合成と捉え,これを分離することで効率性の推計 を行なうため,統計上の誤差の影響を排除することができるというメリットが ある.しかし一方で,計量的な推計にあたり十分な自由度を確保するために多 くのサンプル数が必要であることや,生産関数の形状や効率性について確率分 布を特定化しなければならず,またその特定化によって効率性の値が変化して しまうなどの欠点がある.

本稿ではCoelli, Rao and Battese(1998)による推定方法を用いる.確率的フロ ンティア生産関数としては切断正規分布モデルを考える.まず,確率的な生産 フロンティアにおける確定的部分(deterministic kernel)をコブ・ダグラス型生産 関数に特定化する.したがって,技術非効率性を含んだフロンティア関数は

(1)

と表される.ここで,yiは第i 事業体の産出量,xniは第i事業体の第n 番目の 投入要素である.νiは通常の誤差項であり,N(0,σν

2) を仮定する.また,ui

17)このうち,フロンティア分析法についても,生産可能性フロンティアに確率的な変動があるもの とする確率的フロンティア関数と確率的な変動がないものとする非確率的フロンティア関数による 方法に分けられる.

18)確率的フロンティア生産関数の推計方法についてはGreene(1997)に詳しいのでこれを参照せよ.

lnyi0+  β1ln xini−ui n=1

N

Σ 

(12)

|N(μ,σu2)|で技術非効率性を示し,

(2)

である.ここで,zmi は第i 事業体の技術的非効率性に影響を与える第m 番目 の要因であり,δmは推定すべき係数ベクトルである.

なお,νiuiには相関関係はないと仮定する.分散を σ2ν

2u2 (3)

(4)

とした場合,0<_γ<_ 1 である.γ=0 であればσu2=0 となるために,uiは(1)

式から消去されるため,フロンティア関数によらずOLS で一致推定量が得られ る.つまり,δj=γ=σu2=0 を満たしていればui=0 となり,各事業体の生産 活動はフロンティア曲線上で行なわれ,非効率性が存在しない.一方,δj

u2=0 とならない場合,非効率性が存在する.

本稿で分析の対象となる各事業体の技術効率性(TESF)は,生産がフロンテ ィア曲線上にあるとすると,

TEiSF=exp(−ui) (5)

により求められる.したがって,非効率性は

1−exp(−ui) (6)

で示される.

3. 3 サンプル・データ

サンプルは『地方公営企業年鑑(平成13 年度版)』掲載の水道事業のうち用水 供給事業と簡易水道事業を除いた末端給水事業から,データに欠損値のあった 事業を除く1,900 事業である.用水供給事業と簡易水道事業を除いた理由は,

末端給水事業と用水供給事業では事業の目的や形態が異なると判断したためで ある.また,末端給水事業と簡易水道事業では経営環境に大きな違いがあるこ

ui0+  δm zmi m=1

Σ 

M

γ= σu2

σν2u2

(13)

と,簡易水道事業のうち法適用企業はごくわずかなものであり,末端給水事業 と簡易水道事業とのさまざまな差異を明確にあらわすことは難しいと判断した ためである.

水道事業のインプットとアウトプットについては次の通りとした.インプッ トとして労働,資本,その他投入財の3 つ,アウトプットとしては有収水量19)

である.これらのデータについては『地方公営企業年鑑』から得ている.労働 は従業員数を用いており,「施設・業務概況及び経営分析に関する調」の損益 勘定所属職員数と資本勘定所属職員数の合計の数値(単位:人)である.資本は 貸借対照表より有形固定資産額(単位:千円)を用いた.その他投入財について は動力費,光熱水費,通信運搬費,修繕費,材料費,薬品費,路面復旧費,委 託費,受水費から資本相当分を除いたもの,その他の和(単位:千円)である.20)

産出量は「施設・業務概況及び経営分析に関する調」の年間総有収水量(単 位:千m3)を用いた.

4

推 計 結 果

4. 1 DEA による効率性評価

技術効率性の計測には,DEA Solver Professional 2.121)を用いた.水道事業につ いては,生産量は予想された需要量を満足するよう生産量が決定されている.

19)桑原(1998)をはじめとした水道事業の先行研究ではアウトプットに有収水量を用いているので,

これらにならった.

20)アウトプット同様,水道事業の効率性を分析した各先行研究にならった.資産やその他投入財に ついては,現状ではデータの制約によりこれらの数値を用いている.

21)詳細はhttp://www.saitch-inc.com/ を参照せよ.

第 1 表 DEAによる技術効率性の計測結果の要約

平均  標準偏差  最大値  最小値 

0.3668 0.1547 1.0000 0.0171

0.4404 0.1796 1.0000 0.0957

CCRモデル BCCモデル

(14)

すなわち個々の水道事業体にとって生産量は所与であり,制御可能なものは生 産要素のみであると考えるのが妥当であろう.したがって,本稿においては,

入力指向型のモデルを用いて効率性を計測した.

600  500  400  300  200  100  0

〜0.1 0.1〜0.2 0.2〜0.3 0.3〜0.4 0.4〜0.5 0.5〜0.6 0.6〜0.7 0.7〜0.8 0.8〜0.9 0.9〜1

 

効率性 

第 2 図 CCR モデルにおける効率性分布

600  500  400  300  200  100  0

〜0.1 0.1〜0.2 0.2〜0.3 0.3〜0.4 0.4〜0.5 0.5〜0.6 0.6〜0.7 0.7〜0.8 0.8〜0.9 0.9〜1

 

効率性 

第 3 図 BCC モデルにおける効率性分布

第 2 表 経営主体別にみた技術効率性の要約(CCRモデル)

平均  標準偏差  最大値  最小値 

0.3513 0.9178 0.4951 0.2429

0.3243 0.0775 0.4287 0.1197

0.3932 0.1291 1.0000 0.0841

0.3569 0.1641 1.0000 0.0171

0.3292 0.1663 0.9543 0.0721 県営  政令都市営  市営  町村営  企業団営 

(15)

技術効率性の平均値はCCR モデルにおいては36.67%,BCC モデルにおいて

は42.78%である.また,規模に関して収穫可変を仮定するBCC モデルによる

技術効率性は,小規模な事業体の多い町村営や企業団営と比較して政令指定都 市営の方がかなり高い値を示しており,水道事業に規模の効率性が働いている ことが予想される.

先行研究においては,高田(1997)では,関東地区の末端給水広域水道事業 の技術効率性は約45%,市営事業で約18%,その他の分類においても本稿の 結果よりかなり低くなっている.一方,中山(2002)では,関西地区の水道事 業において,CCR モデルでは45.11%,BCC モデルでは60.02%となっており,

本稿の結果より若干高くなっている.これはDEA の計測結果が異常値に左右さ れやすいこと,標本数が多くなるほど効率性が下がる傾向があるためであるが,

これに関する分析については今回は触れない.

CCR モデルとBCC モデル双方において効率性が1 であったのは,青海町(新 潟県),庄川町(富山県),辰口町(石川県),根上町(石川県),大仁町(静岡県), 伊豆長岡町(静岡県),太地町(和歌山県),玉野市(岡山県),山陽町(岡山県), 窪川町(高知県),開聞町(鹿児島県)の11 事業であった.これらの事業者は生 産技術が規模に関して収穫一定あるいは可変な場合のどちらのモデルであって も効率的な運営を行なっていることを示し,BCC モデルにおける効率的生産フ ロンティアの規模に関して収穫一定な部分にあることを意味している.

BCC モデルにおいては効率性が1 となり,かつスラックレス22)である事業は,

第 3 表 経営主体別にみた技術効率性の要約(BCCモデル)

平均  標準偏差  最大値  最小値 

0.8400 0.1925 1.0000 0.5286

0.8081 0.2252 1.0000 0.1268

0.4592 0.1690 1.0000 0.0957

0.4312 0.1778 1.0000 0.1292

0.3648 0.1689 1.0000 0.0996 県営  政令都市営  市営  町村営  企業団営 

22)過剰な投入や産出の不足が無い状態をさす.DEA では効率性を示す値が1 となり,かつスラック レスな状態のとき,そのDMU は効率的であるとされる.

(16)

36 事業であった.また効率性が1 に近い,比較的効率的な事業も含めると,

CCR モデルと比較して効率的な事業体において大都市が上位に占める割合が高 くなった.このことからも,仮に水道事業が規模に関して収穫可変であるなら ば規模の効率性が存在することが予想される.

第 4  表はBCC モデルにおいて規模に関してそれぞれ収穫逓増,一定,逓増 な生産可能性フロンティア上にあると判断された事業体数のまとめである.

また,効率性が0.1 未満となる事業体は,CCR モデルでは軽米町(岩手県), 埼玉県南水道企業団(埼玉県),旭村(茨城県),大和村(茨城県),市原市(千葉 県),山武町(千葉県),播磨高原広域事務組合(兵庫県),玄海町(福岡県),越 智諸島上水道企業団(愛媛県),の9 事業体,BCC モデルにおいては越智諸島上 水道企業団と市原市の2 事業であった.市原市を除くときわめて小規模な事業 体である.

各事業体の効率性改善案を示すのは,サンプル数が膨大であり困難であるた め経営主体別にみた効率性改善案の平均値を第 5  表で示す.これらの事業体 の改善案を第5 表,第 6  表に示す.ここでは,入力指向型のモデルを用いて いるため,改善案は削減すべき投入物の量,すなわち過剰投入が示されている.

また,( )内はそれぞれ事業体数である.

CCR モデルにおいては,非効率的である多くの事業体においてその他投入財 の過剰投入が指摘されていた(819 事業体).ついで資本の過剰投入(479 事業体), 労働の過剰投入(293 事業体)であった.BCCモデルにおいても同様の傾向がみ

第 4 表 規模に関する収穫変化の要約 

規模に関して収穫逓増  規模に関して収穫一定  規模に関して収穫逓減       計 

10 11 15 36

998 299 567 1864

1008 310 582 1900 効率的フロンティア 

上の事業体 

参照集合に  属する事業体  計 

(17)

られ,その他投入財の過剰投入(690 事業体),資本の過剰投入(436 事業体),労 働の過剰投入(124 事業体)の順であった.

どちらのモデルにおいても,比較的大規模な事業体で職員数が過剰である点 が指摘されていたことが特筆される.これは,小規模な事業体においては職員 数がきわめて少ないものが多くみられることも要因として考えられる23)

資本についてはCCR モデルにおいては小規模な事業体ほど,BCC モデルにお いては大規模な事業体ほど過剰投入が指摘される傾向がみられる.一方,その 他投入財については逆の傾向がみられる.

第 5 表 効率性改善案 

都道府県営

(4)

政令都市営

(12)

市営

(587) 町村営

(1221)

企業団営

(76)

全体

(1900)

0.0

(−)

4.5

(1)

3.7

(81) 0.5

(197)

4.1

(14) 

1.6  

(293) 

0.0

(−)

0.0

(−)

827.6

(268) 284.9

(204)

1863.9

(7) 

409.1

(479) 

15111.0

(3)

960.5

(6)

203.8

(265) 37.4

(518)

200.4

(27) 

159.8

(819) 

0.0

(−)

102.8

(2)

12.3

(65) 0.7

(51)

6.7

(6) 

8.8

(124) 

95783.9

(2)

36295.3

(5)

1773.5

(77) 434.0

(338)

75.9

(14) 

1562.1

(436) 

75.7

(1)

2573.1

(5)

205.6

(214) 40.9

(446)

306.2

(24) 

117.6

(690) 

CCRモデルによる改善案 BCCモデルによる改善案

労働  資本  その他投入財  労働  資本  その他投入財 

*( )内は過剰投入を指摘された事業体数.

 単位は労働(人),資本(100万円),その他投入財(100万円)

23)職員数が10人未満の事業体は1,119 事業にのぼる.この中には職員数が1 人という事業体が23

事業あり,大都市の事業体と比較して実際の業務がどのように行なわれているのか,詳細に調査す る必要があろう.

(18)

4. 2 フロンティア関数による効率性評価

フロンティア関数による効率性の推計結果は第 7  表に示されている24).な お,比較のためにOLS 推定値も示す.第6 表に示されているように各パラメー ターは予想通りの符号を持ち,有意であった.

また,Kodde and Palm(1986)による5 %有意水準での臨界値は自由度3 で

7.045 であるからδm=γ=σ2=0 の帰無仮説は棄却される.すなわち水道事業の

生産活動はフロンティア曲線上で行なわれておらず,非効率性が存在するとい える.γの値が0.6664 ということは,誤差項全体の分散の要因のうち,非効率 性の分散によって説明される部分が多いことを示している.各係数はすべて1

第 6 表 フロンティア関数の推計結果 

定数項

In 資本

In 労働

In その他投入財

σ2

γ LL LR

3.5315

(0.1086) 

0.1918

(0.0181) 

0.5014

(0.0187) 

0.3062

(0.0137) 

     

−920.2

3.7911

(0.1074) 

0.2157

(0.0184) 

0.4846

(0.0186) 

0.2895

(0.0139) 

0.2652

(0.6664) 

0.6664

−895.6 49.1431

OLS推定値 ML推定値

注:( )内は標準誤差を示している.

  また,γ=σu2 / (σν2+σu2) である.

  LL は対数尤度,LR は δm=ν=σ2=0 の検定

24)推計はCoelli によるFrontier4.1xp で行なった.これについてはCoelli(1996)を参照せよ.

(19)

%水準で有意である.

フロンティア関数を用いて計測した技術効率性の概要は以下の通りである.

フロンティア関数による技術効率性の平均値は73.86%である.また,規模に よって効率性の平均値に大きな差はないものの,規模が小さくなるほど,効率

第 7 表 フロンティア関数による技術効率性の計測結果の要約  平均 

標準偏差  最大値  最小値 

0.7386 0.1051 0.9366 0.0044

800  700  600  500  400  300  200  100  0

〜0.1 0.1〜0.2 0.2〜0.3 0.3〜0.4 0.4〜0.5 0.5〜0.6 0.6〜0.7 0.7〜0.8 0.8〜0.9 0.9〜1

 

効率性 

第 4 図 フロンティア関数による効率性分布

第 8 表 経営主体別にみた技術効率性の要約 

平均  標準偏差  最大値  最小値 

0.7566 0.0432 0.8100 0.6990

0.7165 0.0846 0.7882 0.4521

0.7669 0.0782 0.9133 0.3695

0.7259 0.1117 0.9366 0.0441

0.6864 0.1283 0.9089 0.2331 県営  政令都市営  市営  町村営  企業団営 

(20)

性にばらつきが大きいことが分かる.

フロンティア関数を用いた技術効率性の計測に関する先行研究においては,

中山(2000)では,関西地区の水道事業において,効率性の平均値は80.16%で あり,本稿の結果より若干高くなっている.これはサンプル選択の差による部 分が大きいと思われる.

4. 3 DEA とフロンティア関数による技術効率性評価の比較

ここでは,DEA とフロンティア関数による評価がどの程度類似しているかを みる.第 9  表では,DEA とフロンティア関数による効率性の相関関係と順位 の相関関係を示した.

ここでは,BCC モデルとフロンティア関数による効率性および順位の相関関 係に対して,CCR モデルとフロンティア関数との相関関係の方が若干であるが 高い値を示している.これは,技術の規模に関する収穫についての仮定を課し ていないフロンティア関数にもとづいた生産可能性フロンティアが,規模に関 して収穫可変を課したBCC モデルよりも規模に関して収穫一定を課したCCR モ デルにもとづく生産可能性フロンティアにより近いことを示す結果であり,今 回の分析においてはCCR モデルが技術的効率性を計測するためにはより適して いるといえる.このことは一般に指摘されるような,水道事業が規模やネット ワークの経済性といった性質をもたない可能性があるといえよう25).あるいは,

第 9 表 各手法における効率性と順位の相関関数  CCRとフロンティア関数

効率性 0.7667

順位 0.8444

効率性 0.6002

順位 0.7118 BCCとフロンティア関数

25)生産関数や費用関数の推計にもとづき水道事業の最適規模に関して分析した研究において,水道 事業には規模や範囲の経済性はみられるものの,ある程度の給水規模を上回るとこれらの経済性が 失われる可能性が指摘されている.詳細はMizutani and Urakami(2001),中山(2002)などを参照 せよ.

(21)

DEA は実績データにもとづいて生産可能性フロンティアを導出し,相対的な効 率性を評価するものであるため,もし水道事業の実際の生産関数が規模に関し て収穫一定もしくは逓減であっても,BCC モデルでは生産可能性フロンティア について凸性を課しているために,多数を占める小規模な事業体が規模に関し て収穫逓増な領域にあると判断され,その結果がBCC モデルとフロンティア関 数にもとづく効率性評価との相関係数の低さとして大きく影響した可能性もあ る.

次に,個別の事業体の効率性について検討する.なお,すべての事業体につ いての効率性を示すのは大変な量になるため,第 10 表ではDEA およびフロン ティア関数による効率性評価で上位10 位,および下位10 位に入った事業者を 示す.

評価手法によらずいずれの手法においても上位に評価された事業体は相対的 に効率的な事業運営を行なっており,一方,いずれの手法においても下位に評 価された事業体は相対的に非効率な事業運営を行なっていると判断しても良い だろう.またCCR モデルとフロンティア関数にもとづく評価は相関係数の高さ に示されるように,より類似性がみられた.

各手法において,上位・下位各10 事業とも比較的規模の小さな事業体が多 くみられる.特に下位に評価された事業体は,地理的な条件が厳しいと予想さ れる企業団営が下位10 団体にみられる.しかし,市原市のように事業体の規模 が大きいにも関わらずCCR モデルでは下位10 団体に選ばれている事業体もあ る.また,山武町のようにCCR モデルやフロンティア関数による効率性評価で は下位であったにも関わらずBCC モデルの場合では上位に入っている事業体も ある.これは,BCC モデルでは山武町が仮想的な生産フロンティア上で事業が 運営されているとして評価されたためで,このことからも分かるようにDEA で はどのモデルを採用するか,ということは非常に重要な問題である.

(22)

第 10 表 各手法による効率性上位・下位10事業体

開聞町(鹿児島県)

窪川町(高知県)

山陽町(岡山県)

太地町(和歌山県)

大仁町(静岡県)

伊豆長岡町(静岡県)

辰口町(石川県)

根上町(石川県)

庄川町(富山県)

青海町(新潟県)

   ほか 1 事業 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

吉備高原水道企業団 

(岡山県) 

埼玉県南水道企業団 

(埼玉県) 

埼玉県南水道企業団 

(埼玉県) 

越智諸島上水道企業団 

(愛媛県) 

市原市(千葉県) 

軽米町(岩手県) 

玄海町(佐賀県) 

播磨高原広域事務  組合(兵庫県) 

埼玉県南水道企業団 

(埼玉県) 

越智諸島上水道企  業団(愛媛県) 

越智諸島上水道企  業団(愛媛県) 

旭村(茨城県) 

大和村(茨城県) 

山武町(千葉県)  市原市(千葉県) 

0.1027

0.0949

0.0851 0.0841 0.0793 0.0771 0.0721

0.0450

0.0445 0.0171

0.1592

0.1586

0.1482 0.1429 0.1425 0.1292 0.1268

0.1005

0.0996 0.0957 輪之内町(岐阜県)

野沢温泉村(長野県)

忍野村(山梨県)

押水町(石川県)

辰口町(石川県)

根上町(石川県)

庄川町(富山県)

青海町(新潟県)

山武町(千葉県)

長野原町(群馬県)

   ほか26事業 佐原市(千葉県) 

 

水海道市(茨城県) 

 

岩井市(茨城県) 

白井市(千葉県) 

 

榛原町(奈良県) 

鋸南町(千葉県) 

 

千葉市(千葉県) 

0.0441

0.2331

0.2465 0.2528 0.3301 0.3695 0.3785

0.3812

0.3813 0.3899 山武町(千葉県) 

     

旭村(茨城県) 

大和村(茨城県) 

   

白井市(千葉県) 

 

玄海町(佐賀県) 

 

軽米町(岩手県) 

   

上湧別町(北海道) 

1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 上

  位   10   事   業

下   位   10   事   業

CCR BCC

大仁町(静岡県) 

根上町(石川県) 

辰口町(石川県) 

青海町(新潟県) 

上富田町(和歌山県) 

白浜町(和歌山県) 

藍住町(徳島県) 

水上町(群馬県) 

庄川町(富山県) 

垂井町(岐阜県) 

0.9366 0.9328 0.9293 0.9291 0.9191 0.9177 0.9161 0.9159 0.9142 0.9136 フロンティア関数 

播磨高原広域事務  組合(兵庫県) 

*網掛けは各手法で共通して上位または下位10位に入っている事業体

(23)

5

効率性に影響を与える要因の分析

次に,非効率性の要因について説明するために分析を行なった.この目的は,

1)効率性の違いが事業体の経営特性によるものなのか,2)地理的要因をはじ めとした事業者が制御できない特性によるものなのか,を知るためである.

DEA にもとづく効率性の指標に影響を与える要因を分析した先行研究では,

サンプル数が少ない場合,効率性が 1 近辺に集中することにより,トービッ ト・モデルが用いられてきた.しかし,宮良・福重(2002b)では,DEA による 効率性評価はインプットとアウトプットを用いた場合でも,その単位のとり方 に影響を受ける可能性があることから,これらの影響を受けないのは効率性の 順位だけであることを指摘し,順序プロビット・モデルを用いることが適切で あると指摘している.本稿においても同様の理由により順序プロビット・モデ ルを用いて効率性の要因分析を行なった.また,DEA による効率性はインプッ トやアウトプットのわずかな変化によって影響を受ける場合が多くみられるた め,このことからも順序ダミーを用いる順序プロビット・モデルを用いて要因分 析を行なうほうが,より適切であろう.

順序プロビット・モデルは,DEA によって計測された効率性の順位を被説明 変数としたプロビット・モデルである.本稿では第 11 表の分類にしたがって 各事業者に順序ダミー(order)を与え,これを被説明変数としている.

順序ダミーは効率性の高い分類から順に0 から5 までのダミーを与えている.

ただし,BCC モデルではCCR モデルと比べて効率性が高くなるため,1 から5 までとした.したがって,係数が負値をとる説明変数は効率性に負の影響を与 えることとなる.

推定される効率性要因モデルの変数は1)事業者の経営特性,2)事業者の環 境特性,に分類することができる.事業者の経営特性を表す説明変数に,水の 供給単価,他会計からの補助率,施設利用率,また,経営主体を示す県営ダミ ー,政令指定都市ダミー,市営ダミー,企業団営ダミーを用いた.一方,水源

(24)

をどのような形で得ているか,という事業者の環境特性を表す説明変数として,

ダムや他事業からの受水を除いたその他表流水率,ダム率,受水率を用いてい る.

1)事業者の経営特性

・供給価格:水の供給単価,すなわち販売価格であり,有収水量1 m3あたりの 収入単価である26).給水人口規模の小さい市町村の事業に給水原価の高い事 業が多くみられるが,これは人口密度や地形などの要因により施設の効率性 が悪いことによると思われる.また,同質的な環境のもとで供給単価が高い 事業者は費用削減の努力が働かず,非効率性を生む要因となることが予想さ れる27).このような理由により,符号は正と予想されるが,これらの仮説の

第 11 表 効率性による分類と順序ダミー 

事業体数  順序ダミー  順序ダミー  事業体数  11

25

95

532

1027

210

53

52

192

680

863

60 0

1

2

3

4

5

0

1

2

3

4 効率性による分類 

CCR BCC

効率的な事業体 1

効率性の高い事業体 0.8以上 1 未満  効率性のやや高い事業体

0.6以上0.8未満  平均的な効率性の事業体

0.4以上0.6未満  効率性のやや低い事業体

0.2以上0.4未満  効率性の低い事業体

0.2未満 

26)供給単価が給水原価を下回る場合,料金収入以外の収入である他会計補助金や受取利息などによ り補填されている.

27)高田・滋野(2001)では,料金が高いために収益が上がっているような事業体では,収益が上が っているために,さらに経営の効率性を高めるインセンティブが働かず非効率性が生じている可能 性も指摘されている.しかし,これらの仮説のどちらが正しいかについては,本稿のようなアプロ ーチから検証することは困難であり今後の課題である.

(25)

どちらが正しいかについては,さらなる検証が必要である.

・補助率:地方自治体の一般会計や国庫補助など他会計負担金の総費用に占め る割合である.補助率の高い事業者ほど非効率な経営がなされていると考え られるため,符号は正と予想される.

・施設利用率28):今回の分析に用いた標本の平均が約61.5%であることを考え ると,利用率が上昇すると非効率性は減少することが予想されるので,符号 は負と予想される.

・普及率29):今回の分析に用いた標本の平均は約89.3%であった.わが国の水 道普及率は非常に高い水準にあり,そのことを考慮するならばこれ以上の水 道の普及には,費用がかかるため,非効率性が上昇するものと考えられる.

したがって,符号は正と予想される.

・都道府県営ダミー,政令指定都市営ダミー,市営ダミー,企業団営ダミー:

経営主体の違いによって効率性に差がみられるかどうかを検討するために用 いた.もっとも多い町村営をレファレンスとし,「都道府県営ダミー」「政令 指定都市営ダミー」「市営ダミー」「企業団営ダミー」をおいた.経営主体が より大規模なものになることにより運営の効率化が図られるとすれば,符号 は負と予想される.

2)事業者の環境特性

・その他表流水率:河川などの表流水からの取水は地下水や他事業からの受水 と比較するともっとも費用のかからない取水方法であるので,費用削減の努 力が働きにくいと予想される.したがって符号は正と予想される.

・ダム率:ダムからの取水は年間を通じて安定的な取水が可能である.また,

ダムの維持・保全には多額の費用が必要となるため,ダムからの取水の増加 は非効率性を上昇させる要因となるであろう.したがって,符号は正と予想

28)1 日平均配水量を1 日配水能力で割った値である.

29)普及率には,行政区域内人口,計画給水人口,現在給水人口に対するものがあるがここでは現在 給水人口に対する普及率を用いた.また,高田・茂野(2001)では普及率については分析されてい ない.

(26)

される.

・受水率:一般に受水している事業者は費用が高いといわれている.現在の料 金制度のもとでは費用をそのまま料金に転嫁することが可能であり,結果と して費用削減のインセンティブをもたらさず非効率性を上昇させる要因とな るであろう.したがって符号は正と予想される30)

・水利権率:河川などから排他的に取水を行なえる権利であり,その意味で安 定的な取水が可能であり,水利権が多くなるほど費用削減努力は働かないと 予想される.したがって符号は正と予想される.

以上の変数を用いて,次のような式により分析を行なった.order*をどの順位 ダミーとなるかを潜在的に決めている潜在変数とすると本稿で分析した順序プ ロビットモデルは,

order*=c+β1ln 価格+β2補助率+β3施設利用率+β4普及率 (7)

5その他表流水率+β6ダム率+β7受水率+β8水利権率

9都道府県営ダミー+β10政令指定都市営ダミー+β11市営ダミー +β12企業団営ダミー

order=0 if order*<_ 0,

=1 if 0<_order*<1

=J if μJ−1<_order*

となる.前述の通り順序ダミーについては,CCR モデルではJ=5,BCC モデル ではJ=4 である.

また確率的フロンティア生産関数にもとづく効率性評価の非効率性の要因に ついてもDEA の際と同じ変数を用いOLS によって推計した.推計したモデルは

(8)式のようなモデルであり,uiは非効率性の程度を示している.

30)ただし,事業体によっては政治的な要因などにより安易に料金に転嫁することは困難であるために,

その他の費用の削減努力をもたらし,結果的に非効率性を減少させる可能性も考えられるだろう.

(27)

ui01ln 価格+δ2補助率+δ3施設利用率+δ4普及率 (8)

5その他表流水率+δ6ダム率+δ7受水率+δ8水利権率

9都道府県営ダミー+δ11政令指定都市営ダミー+δ12市営ダミー +δ13企業団営ダミー

データは『地方公営企業年鑑』から得ている.価格は「施設・業務概況及び 経営分析に関する調」の供給単価(単位は円/m3)を用いた.施設利用率,普及 率も「施設・業務概況及び経営分析に関する調」から得ている.補助率は他会 計からの補助金合計を費用で割ったものである.なお,補助金合計は『地方公 営企業年鑑』の「損益計算書」のその他の営業収益のうち,他会計負担金,国 庫補助金,都道府県補助金,他会計補助金,他会計繰入金の和であり,費用は

「施設・業務概況及び経営分析に関する調」の有収水量1 m3あたりの費用に年 間総有収水量をかけて導出している.また,環境要因として有収水量に占める

「その他表流水」「ダム」「受水」および「水利権」が占める割合をそれぞれ

「施設・業務概況及び経営分析に関する調」より導出している.また,経営主 体による効率性への影響をみるためにさらに,各経営主体別ダミーを用いた.

これも「施設・業務概況及び経営分析に関する調」より得ている.

推定結果は第 12 表に示す通りである.

ln 価格の係数はいずれのモデルにおいてともに正の値を示し,有意である.

これは水の供給単価が高い事業者ほど非効率的であることを示している.中山

(2000),高田・茂野(2001)31)でも,同様の結果を示している.

補助率については,どの手法を用いた場合でも非効率性に与える影響は正に 推計されているがフロンティア関数による効率値を用いた場合には有意ではな かった.一方,DEA による効率性評価ではCCR モデル,BCC モデルともに正で 有意であり,補助率の高い事業者ほど非効率性が発生していることを示してお り,中山(2000),高田・茂野(2001)と同様の結果であった.

31)ただし,高田・茂野(2001)における非効率性の要因分析は,非効率性と想定された各要因との 相関関係のみを分析したものである.

(28)

施設利用率については,CCR モデルおよびフロンティア関数による効率性評 価ではともに負であるがBCC モデルでは有意には選ばれなかった.中山(2000), 高田・茂野(2001)でも施設利用率は有意には選ばれていない.

一方,普及率についてはBCC モデルおよびフロンティア関数の場合に有意で あったがBCC モデルでは符号は正,フロンティア関数による場合は負であった.

中山(2000)においては32),BCC モデルにおいては,本稿での結果と同様の結果 を示していた.

環境要因として選んだ取水源の種別については,その他表流水率はフロンテ ィア関数による評価の場合のみ正で有意であった.ダム率はBCC モデルでは有 意ではなかったがCCR モデルおよびフロンティア関数の場合においては正で有

第 12 表 推定結果 

定数項 ln 価格 補助率 施設利用率 普及率 その他表流水率 ダム率 受水率 水利権率 県営ダミー 政令指定都市ダミー 市営ダミー 企業団営ダミー Scaled R2

−11.4171 3.1012 4.8050

−0.8331

−0.2052 0.2023 0.4111

−1.0452 0.0028

−0.0278

−0.2382

−0.0242 0.2278 0.5599

*** 

*** 

*** 

*** 

   

** 

*** 

−10.1480 2.3811 2.0785

−0.2960 0.7373 0.0496

−0.0521

−0.5522

−0.0401

−2.3931

−2.3027

−0.0661 0.3628 0.3511

*** 

*** 

*** 

 

*** 

   

*** 

 

*** 

*** 

 

** 

−0.7120 0.2175 0.0165

−0.0796

−0.1132 0.0218 0.0496 0.0110

−0.0042

−0.0649

−0.0188

−0.0256 0.0151 0.6607

*** 

*** 

 

*** 

*** 

*** 

*** 

***       

*** 

CCRモデル BCCモデル フロンティア関数 

***は有意水準 1%,**は有意水準 5%で有意であることを示している. 

32)ただし,CCR モデルにおいて普及率は正の値をとっている.

(29)

意であった.受水率についてはすべての場合で有意であったがフロンティア関 数の場合は符号は正であった.水利権率については,いずれの場合でも有意で はなかった.

また,経営主体の違いについては県営ダミーと政令指定都市営ダミーはBCC モデルにおいては負で有意であった.市営ダミーについてはフロンティア関数 による場合,負で有意である.企業団営ダミーはBCC モデルでは正で有意であ った.

中山(2000b)においては,関西地区の水道事業者について市営と町村営の事 業者について,市営ダミーは有意ではなく,価格,補助率,施設利用率,普及 率の影響を考慮すれば,市営と町村営の効率性の差は見かけ上のものであると 分析しており,今回の分析結果とはやや異なった.今回の分析では分析対象を 全国の都道府県営や企業団営にまで拡大しており,市営や町村営のみを分析対 象にした場合に比べて地理的な条件や財政面をはじめとして大きな差がある.

このような経営基盤の違いが効率性に影響を与えているのであれば,従来の市 町村営を基本とした水道事業の経営形態のあり方について,より議論する必要 があろう.

6

結論と今後の課題

本稿の目的は,全国の水道事業を対象にDEA とフロンティア関数によって水 道事業の技術効率性を計測し,非効率性がどのような要因によって発生するの かについて分析を行なった.

その結果,水道事業の技術効率性はCCR モデルでは36.67%,BCC モデルに

おいては42.78%,フロンティア関数による場合は76.9%であることが計測され

た.また,フロンティア関数による計測と比較することで,今回の分析におい てはDEA を用いて効率性評価を行なう場合,CCR モデルによる評価の方が,

BCC モデルによる効率性評価よりも適切であることが明らかになった.

次に効率性に影響を与える要因について,DEA による効率性評価とフロンテ

参照

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