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競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法 行為地

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(1)

競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法 行為地

著者 西岡 和晃

雑誌名 同志社法學

巻 66

号 4

ページ 985‑1051

発行年 2014‑11‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014717

(2)

   同志社法学 六六巻四号四九九八五

西            

                                     

(3)

   同志社法学 六六巻四号五〇九八六                                                                                                            

(4)

   同志社法学 六六巻四号五一九八七  

Ⅰ   は じ め に

  二〇〇四年、国際ビタミンカルテルの参加者に対し不法行為による損害賠償請求訴訟(以下、﹁競争法 1

上の私訴﹂という。)が米国、英国、ドイツほか各国で提起され 2

、注目を集めた。このカルテルに関する競争法上の私訴は、我が国の裁判所に提起されていないが、日本企業が関係する事件がしばしば生じることから、国際的な競争制限行為に関する競争法上の私訴が我が国の裁判所に提起される可能性は高まっていると思われる 3

  渉外的な競争法上の私訴が提起されると、準拠法や国際裁判管轄の問題が相互依存的に生じる。というのは、外国競争法が準拠法として我が国の裁判所で適用されえないのであれば、そもそも国際裁判管轄を認める必要がなく、また外国競争法に関する請求の国際裁判管轄が認められえないのであれば、準拠法を検討する必要もないからである 4

  競争法上の私訴における国際裁判管轄の問題は、あまり議論されていない 5

が、国際裁判管轄原因として、被告住所地、営業所所在地、事業活動地 6

、不法行為地などが考えられる。もっとも、本稿では、不法行為地に焦点を絞り、検討していきたい。外国企業に対し競争法上の私訴が提起される場合に、外国企業の日本における営業所の業務または日本において継続的な取引を行う外国企業の日本における業務が、日本市場の競争秩序に影響を及ぼすときには、営業所所在地管轄または事業活動地管轄が認められるであろう。しかし、①日本に営業所などを有さず、子会社や代理店などを介して行われる事業が日本市場の競争秩序に影響を及ぼす場合および②外国市場の競争秩序だけに影響を及ぼす競争制限行為の一部が日本で行われる場合には、事業活動地管轄は、その立証が容易ではなく、場合によっては認められないであ

(5)

   同志社法学 六六巻四号五二九八八

ろう。このような場合には、加害行為地または結果発生地に基づく不法行為地管轄が重要になる。もっとも、不法行為地管轄が特別に機能する場面は、①および②のような場面に限定されるであろう。

  ①の具体例としては、次のような場合である。X社は、製品甲を製造販売する日本法人である。Y社(スイス法人)およびZ社(米国法人)は、甲の製造に必要な製品乙の製造業者であり、それぞれ日本に営業所などを有さず、継続的な取引も行っていない。Xは、Yの日本における代理店から乙を購入したが、乙の価格はYZ間のカルテルにより引き上げられたものであった。なお、このカルテルは、日本を含む東アジア市場を対象とするが、チューリヒ、ニューヨークおよび東京における会合を経て締結されたものとする。Xは、カルテルにより損害を被ったと主張し、YおよびZに対し競争法上の私訴を我が国の裁判所に提起する。

  ②の具体例としては、①の事案におけるXが、A国において製品甲を製造販売する日本法人のA国子会社であり、またXがYのA国支店から乙を購入したが、当該カルテルがA国市場を対象とする場合である。

  これらの場合に、国際裁判管轄原因としての不法行為地、すなわち、加害行為地および結果発生地はどのように解釈されるのか。さらに、結果発生地が遍在する場合に、各結果発生地の裁判所の審理範囲はどのように解釈されるのか。

  まず、これら三つの問題に関する我が国の議論を概観した上で(Ⅱ)、ハーグ条約および諸外国における議論を紹介する(Ⅲ)。その後、ハーグ条約および諸外国における議論を踏まえ、若干の解釈論的検討を行い(Ⅳ)、本稿を締めくくることにしたい(Ⅴ)。

(6)

   同志社法学 六六巻四号五三九八九

Ⅱ   我 が 国 に お け る 議 論

  経済取引の国際化などに対応する必要性から、平成二三(二〇一一)年民事訴訟法改正(以下、﹁二〇一一年改正﹂という。)により、財産関係事件に関する国際裁判管轄規定が法定された。これ以前の国際裁判管轄は、明文規定を欠いていたため、条理に基づき判断されていた。当初は、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念から条理に従い、旧民事訴訟法四条以下で定められる国内土地管轄に基づく裁判籍が我が国に認められる場合には、我が国の国際裁判管轄も認められるというものであった 7

。その後、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念に反するような特段の事情がある場合を除き、国内土地管轄に基づく裁判籍が我が国に認められる場合には、我が国の国際裁判管轄は認められるとする﹁特段の事情﹂論に基づき判断されていた 8

1   不 法 行 為 に 関 す る 国 際 裁 判 管 轄

  二〇一一年改正により、不法行為に関する国際裁判管轄規定が三条の三第八号に定められている。三条の三第八号によると、国際裁判管轄原因としての不法行為地には、二〇一一年改正以前の裁判例 9

および通説 ₁₀

と同様に、加害行為地と結果発生地の両方が含まれる。

  加害行為地は、不法行為の原因となる行為がなされた地であり、具体的な加害行為地は、各不法行為において加害行為とされるものに左右される。たとえば、製造物責任においては、製造物の製造(および設計)地 ₁₁

、インターネットを介した著作権侵害・名誉毀損においては、アップロード地やサーバ所在地 ₁₂

が加害行為地とされている。また、共同不法行為における共謀の事実は、不法行為地を定める要素ではなく ₁₃

、不法行為の構成要素に該当しないと解されている ₁₄

(7)

   同志社法学 六六巻四号五四九九〇

  次に、結果発生地は、加害行為の結果である法益侵害が発生した地である。結果発生地を解釈するにあたっては、結果発生地の結果として含まれる損害の範囲に留意しなければならない。すなわち、二次的・派生的な経済的損害が結果に含まれるか否かである。二〇一一年改正以前は、二次的・派生的な経済的損害が結果に含まれると、最終的に被害者である原告の住所地に裁判管轄を認めることになるため、一次的・直接的な損害のみが結果に含まれるとの見解 ₁₅

が有力であった ₁₆

。二〇一一年改正時に、二次的・派生的な経済的損害が結果に含まれない旨を明文化するべきか議論されたものの、最終的に明文化されなかった。そのため、二次的・派生的な経済的損害が結果に含まれるか否かは、依然として解釈問題である。もっとも、現行法においても、二〇一一年改正以前の裁判例および有力な学説と同様に、二次的・派生的な経済的損害は、結果に含まれないものと解されている ₁₇

2   競 争 法 事 件 に お け る 不 法 行 為 地

  競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地について判断を下した裁判例はこれまでにない。学説においては、加害行為地として、競争法に違反する協定などの締結地とする見解 ₁₈

、協定などの実施地とする見解 ₁₉

およびその両方を加害行為地とする見解 ₂₀

が示されている。協定などの締結およびその実施はそれぞれ生じうる損害の原因となる重要な行為と思われることから、いずれの地も加害行為地として適切であると思われる。

  結果発生地としては、被害者の財産を一次的に侵害される法益と考え、国際カルテルなどの競争制限行為により損害を被った者の本拠地とする見解 ₂₁

と被害者の財産に実際に損害が生じた地とする見解 ₂₂

が示されている。その一方で、競争秩序の侵害が発生した地を結果発生地とする見解も示されている ₂₃

。結果発生地として、財産上の損害の発生地とする見解と競争秩序が侵害される地(市場地)とする見解が示されている通り、結果発生地は、競争制限行為により一次的に

(8)

   同志社法学 六六巻四号五五九九一 侵害される法益の解釈により異なるであろう。

3   審 理 範 囲

  また、名誉毀損やプライバシー侵害事件などの複数の国で損害をもたらす、いわゆる、拡散的不法行為事件においては、結果発生地が遍在することから、結果発生地の裁判所の審理範囲が問題とされる ₂₄

。すなわち、結果発生地の裁判所の審理範囲が当該結果発生地で生じた損害に限定されるか否かである。

  この問題について判断を下した裁判例はこれまでに存在しない。二〇一一年改正以前の多くの学説は、結果発生地の一つが我が国に認められる場合に、審理範囲を我が国で生じた損害に限定したとしても、訴えの客観的併合が認められることから、審理範囲を我が国で生じた損害に限定するとの解釈は困難であると主張していた ₂₅

。訴えの客観的併合に関して、多くの見解は、請求間の﹁密接な関連﹂を必要とする現行法三条の六 ₂₆

と同様に、一定の関連性を求めていた ₂₇

が、同一の事象から複数国で損害が生じる拡散的不法行為事件の場合には、それぞれを別々の不法行為とみなすとしても、ここで求められる一定の関連性が満たされることに疑問の余地はないと思われるとも指摘されていた ₂₈

  加えて、審理範囲の限定に反対する主張として、結果発生地と他の管轄原因との関係から次のような主張もなされる。すなわち、審理範囲の問題は、被害者保護の観点から考慮されるべきであり ₂₉

、また、結果発生地の裁判所の審理範囲を当該結果発生地で生じた損害に限定する一方で、結果発生地でもない被告住所地の裁判所の審理範囲をすべての損害に認めることに、合理的な理由が存在しないとの主張である ₃₀

  他方で、著作権などの保護国毎に独立して存在する知的財産権事件に関しては、訴えの客観的併合を留保するが、各保護国に侵害された利益が存在することから、審理範囲は当該結果発生地で生じた損害に限定されるとの見解も示され

(9)

   同志社法学 六六巻四号五六九九二

₃₁

  それに対して、知的財産権事件に関する結果発生地の裁判所の審理範囲は、当該結果発生地で生じた損害に完全に限定されるとの見解も示される ₃₂

。この見解によると、知的財産権に対する侵害行為が特定国に向けられた場合の審理範囲は、EUの名誉毀損事件に関する

Sh ev ill

判決 ₃₃

で示されたモザイク理論にならい、当該国で生じた損害に限定され ₃₄

、さらに、訴えの客観的併合による審理範囲の拡大の可能性が排除される ₃₅

  競争制限行為が複数国の市場の競争秩序に影響を及ぼす場合においても、審理範囲の問題が生じるであろう。しかし、現在のところ、競争法事件についての特別な言及はなされていない。各国は、自国の競争法により自国市場の競争秩序を規制していることから、結果発生地の裁判所の審理範囲は、当該結果発生地で生じた損害に限定されるとの解釈も可能であると思われる。その一方で、そのような競争法の性質を重視せず、競争法上の私訴についても、訴えの客観的併合が認められうることなどから、結果発生地の裁判所の審理範囲は何ら限定されないとの解釈も可能であると思われる。

4   小 括

  競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地について判断を下した裁判例は存在しない。学説においては、加害行為地と解釈されうる地として、協定などの締結地、協定などの実施地、ならびに締結地および実施地が主張される。結果発生地としては、競争制限行為により損害を被った被害者の本拠地、被害者の財産に実際に損害が生じた地、および競争秩序が侵害される地(市場地)が主張される。これらの解釈も可能であるが、加害行為および一次的に侵害される法益の解釈次第では、加害行為地および結果発生地の異なる解釈も可能であろう。また、審理範囲ついては、特別の言及はなされていないが、私訴事件における競争法の性質評価に左右されると思われる。

(10)

   同志社法学 六六巻四号五七九九三

Ⅲ   ハ ー グ 条 約 お よ び 諸 外 国 に お け る 議 論

  先に示した通り、競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地について、いくつかの見解が示されているが、我が国ではあまり議論がなされていない。そこで、比較法的観点から何らかの示唆を得るために、一九九九年ハーグ条約草案、EU、スイスおよび米国における議論を紹介する。

1   一 九 九 九 年 ハ ー グ 国 際 裁 判 管 轄 条 約 草 案

  ハーグ国際私法会議において、民事および商事事件における裁判管轄および判決の承認執行に関する条約作成プロジェクトが一九九四年に開始され、一九九九年一〇月に、民事および商事に関する国際裁判管轄および外国判決に関する条約準備草案(以下、﹁一九九九年条約草案﹂という。) ₃₆

が起草された。もっとも、一九九九年条約草案は最終的に採択されず、管轄合意に限定された管轄合意に関する条約 ₃₇

が二〇〇五年に採択されるに至った。同条約作成プロジェクトにおいて、反トラスト法上の請求は、一九九九年条約草案では不法行為類型の一つとして含められていたが、二〇〇一年外交会議終了時の暫定条文案 ₃₈

では、事項的適用範囲から排除された ₃₉

。そのため、本稿では、一九九九年条約草案に関するナイ・ポカール報告書 ₄₀

を主に扱う。

⑴   不 法 行 為 に 関 す る 国 際 裁 判 管 轄

  一九九九年条約草案では、不法行為に関する国際裁判管轄規定が一〇条に定められている ₄₁

。同条は、交通事故、製造物責任、環境、競争および名誉毀損などの実務上生じうる様々な不法行為類型を十分に考慮した包括的な規定である ₄₂

(11)

   同志社法学 六六巻四号五八九九四

  同条一項は、a号において、損害の原因となった作為または不作為がなされた国、すなわち、加害行為地国の裁判所に国際裁判管轄を認め、b号において、損害が発生した国、すなわち、結果発生地国の裁判所に国際裁判管轄を認める。もっとも、b号における結果発生地は、二次的損害が生じた地を含まず、一次的損害が生じた地であり ₄₃

、責任を問われる者が結果発生地における結果の発生を合理的に予見することができた場合にのみ認められる ₄₄

  同条二項は、特別委員会においてほとんど議論がなされないまま採択されたものであるが、反トラスト法事件から結果発生地を排除する。反トラスト法事件から結果発生地を排除する理由は、次のように説明される。すなわち、単一の違法行為が複数の国で損害を生じさせうる場合には、各結果発生地国における訴訟を回避し、加害行為地国に訴訟を集中させるべきであり、加害行為地国に訴訟を集中させることにより、不法行為地管轄が認められる国と、責任が問われる者が違反した法を有する市場地国とを一致させることである ₄₅

。もっとも、同項は、反トラスト法分野で一般的に認められる行為の結果に注目する効果理論に沿わないと批判される ₄₆

  同条三項は、既に生じた損害に対する請求だけでなく、将来の損害を防ぐための予防的な訴えの提起を認める。同条四項は、被告が結果発生地国に常居所を有する場合を例外として、結果発生地国の裁判所の審理範囲を当該結果発生地国で生じた、またはそのおそれがある損害に限定する。

⑵   反 ト ラ ス ト 法 事 件 に お け る 不 法 行 為 地

  前述した通り、反トラスト法事件も含む包括的な規定が一〇条に定められている。同条によると、国際裁判管轄原因として、加害行為地および結果発生地が認められるが、反トラスト法事件においては、同条二項により結果発生地が排除されることから、加害行為地のみが認められる。

(12)

   同志社法学 六六巻四号五九九九五   そこで、加害行為地の解釈が問題となるが、反トラスト法事件における加害行為地は、条文上明らかとされていない。むしろ、一九九九年条約草案は、加害行為地を決定する基準を何ら定めておらず、各国の裁判所が国内法または問題とされる不法行為の準拠法に基づき、その判断を行うことを想定していた ₄₇

  もっとも、起草過程においては、競争が市場における両訴訟当事者の存在から生じることを理由に、次のような市場地の裁判所が、反トラスト法事件を審理する最も適切な裁判所であると考えられていた ₄₈

。すなわち、両訴訟当事者が存在する、競争制限行為が実施されたまたは反トラスト法が違反される市場地である。また、加害行為自体は明らかでないものの、反トラスト法が違反される市場地が加害行為地と考えられていたことは、加害行為地国と責任を問われている者が違反した法を有する市場地国とを一致させるとの、反トラスト法事件から結果発生地を排除する理由からも推測されうる ₄₉

⑶   審 理 範 囲

  結果発生地国の裁判所の審理範囲は、一〇条四項により、原則として、結果発生地国で生じた損害に限定される。もっとも、反トラスト法事件については、同条二項により結果発生地が排除されているため、審理範囲の問題は生じない。

⑷   小 括

  一九九九年条約草案において、反トラスト法事件における加害行為地は、条文上明らかとされていない。しかし、起草過程および結果発生地の排除理由から、反トラスト法が違反される市場地が加害行為地と考えられていたと推測される。結果発生地は、前述の通り、一〇条二項により反トラスト法事件から排除される。そのため、結果発生地国の裁判

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   同志社法学 六六巻四号六〇九九六

所の審理範囲は問題とならない。

  一九九九年条約草案の規定を具体例に当てはめると、問題となる競争制限行為が反トラスト法に違反する市場地が加害行為地となると思われる。結果発生地は、排除されているため、認められず、結果発生地国の裁判所の審理範囲も問題とならない。したがって、一九九九年条約草案の規定による場合には、問題となるカルテルが反トラスト法に違反する市場地国に加害行為地が認められる。

2   E U

  EUでは、国際裁判管轄および裁判の承認執行に関する統一規則として、民事および商事事件における裁判管轄および裁判の執行に関する二〇〇〇年一二月二二日の理事会規則(EC)四四/二〇〇一(以下、﹁ブリュッセルⅠ規則﹂という。) ₅₀

が定められている。また、EU構成国とEFTA構成国間の裁判管轄および判決の承認執行に関する条約(以下、﹁ルガノ条約﹂という。) ₅₁

も存在するが、ルガノ条約の規定およびその解釈は、ブリュッセルⅠ規則におけるものとほぼ同一であるため ₅₂

、ここでは、主にブリュッセルⅠ規則における議論を紹介する。

⑴   不 法 行 為 に 関 す る 国 際 裁 判 管 轄

  ブリュッセルⅠ規則には、競争法事件に関する特別の管轄規定は定められていない。しかし、不法行為事件に関する特別管轄 ₅₃

が五条三号(改正後、七条二号)に定められており、競争法事件も五条三号の適用範囲に含まれる ₅₄

生も生発が実事すらたをた害損、くなでけだ地し地発をるれさとのもむ含方で両の地為行害加るあ ₅₅   ﹁でしが険危るす生発、かた生る発が実事すらたもを害あ地あ損損結果地たし生発が害、﹂は言文の号三条五のとる

。もっとも、結果発

(14)

   同志社法学 六六巻四号六一九九七 生地の解釈にあたっては、二次的・派生的な経済的損害の発生地が五条三号における結果発生地に含まれるか否かに留意しなければならない。この点につき、EUにおいても、結果発生地は、一次的損害が生じた地であり ₅₆

、二次的損害の発生地を含まないとされる ₅₇

⑵   競 争 法 事 件 に お け る 不 法 行 為 地

  現在のところ、競争法事件における国際裁判管轄原因としての不法行為地について判断を下した裁判例は存在しない ₅₈

。その一方で、学説においては、議論が盛んであり、とりわけ、加害行為地に関して、多くの見解が述べられている。以下では、加害行為地、結果発生地の順にそれぞれについての議論を紹介する。

ⅰ  加害行為地   加害行為地については、議論が盛んであり、締結地、実施地および本拠地(または設立地)が主張され、これらの地を巡り多くの見解が示されている。以下では、締結地、実施地および本拠地について、順に紹介する。

a  締結地   一つ目は、競争制限的な協定、決定または協調行為などが交渉・締結される締結地である。締結地は、EUにおける主な競争ルールを含む欧州連合の機能に関する条約(以下、﹁TFEU﹂という。) ₅₉

が競争ルールに違反する協定自体を禁止し、その実施を必要としないことを根拠に主張される ₆₀

。締結地を支持する裁判例として、価格目標の合意や取引関連情報の交換を目的とした協定などの締結を加害行為とする英国の判決 ₆₁

および輸出禁止措置の決定を加害行為とするド

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   同志社法学 六六巻四号六二九九八

イツの判決 ₆₂

が挙げられる ₆₃

  もっとも、締結地は、単一の地に特定される場合 ₆₄

には、加害行為地として適切であるとされる一方で、複数存在する場合については、見解が分かれている。複数の締結地を加害行為地とする解釈に否定的な見解は、次のように主張する。すなわち、締結地の遍在が加害行為地管轄の膨脹(

In fla tio nie ru ng

)を導きうること、および様々な地で内容が更新される長期的なカルテルの場合には、個々の行為と損害との因果関係の立証が非常に困難であり、またある行為から生じた損害を損害全体から分離することが不可能であると思われることから、締結地は加害行為と解釈されるべきではない ₆₅

。さらに、複数の締結地が存在する場合には、契約債務の履行地が特定不可能であることに基づき、特別管轄である五条一号の義務履行地を排除した欧州司法裁判所の裁判例 ₆₆

を援用し、締結地は排除されうるとも主張される ₆₇

  それに対して、複数の締結地を加害行為地とする解釈に肯定的な見解は、次のように主張する ₆₈

。すなわち、締結地が複数存在する場合に、その内の一つが単に観光目的で選択された地に過ぎないときであっても、重要な行為は締結地で行われており、またカルテル参加者自身が締結地を操作することができることから、各締結地は加害行為地として不合理なものではない。もっとも、各締結地がそれぞれ加害行為地となるが、各締結地で主張されうる損害は、因果関係を有する行為から生じた損害に限定される。各締結地で主張されうる損害が因果関係を有するものに限定されるにせよ、問題とされる行為が既に明らかであり、また当該行為が損害との明白な因果関係を有している場合には、締結地を排除することは適切ではない。

  また、情報通信手段を介して協定などが締結される場合には、単一の加害行為地を特定することは困難であるが、次のように主張される ₆₉

。すなわち、契約債務の準拠法に関する二〇〇八年六月一七日の欧州議会および理事会規則(EC)五九三/二〇〇八(以下、﹁ローマⅠ規則﹂という。) ₇₀

における契約の方式の有効性に関する一一条二項の見解を援用し、

(16)

   同志社法学 六六巻四号六三九九九 各カルテル参加者に説明がなされたすべての地を加害行為地とすべきである。もっとも、一一条二項は、法律行為の方式上の要件を広く認め、法律行為を可能な限り有効とすることを意図するものであり、これをカルテルの成立に当てはめると、加害行為地としての締結地が広く認められるとの不利益がカルテル参加者にもたらされる。

⒝  実施地   二つ目は、協定などの実施地(

pla ce o f im ple m en ta tio n

)である ₇₁

。なお、ここでいう﹁実施(

im ple m en ta tio n

)﹂とは、特定機関による価格などの情報調整、人為的に引き上げられた価格での物の販売、契約締結の拒否、特定の相手方グループの差別など、実際の競争制限効果に必要な要件の決定である ₇₂

。実施地は、カルテルなどの実施が損害をもたらしたと明確に言及する国際ビタミンカルテルに関する

P ro vim i

判決 ₇₃

および実施が競争法違反を判断するための決定的な要素であると述べる

W oo d P ulp

判決 ₇₄

によって支持される ₇₅

。さらに、実施地の根拠として、以下の四つが挙げられる ₇₆

。すなわち、実施地が影響を及ぼされる市場と関連性を有すること、協定などが実施されない場合には損害が生じないこと、不法行為地の遍在を導かないこと、および影響を及ぼされない地における訴訟が排除されることである。

  しかし、実施地に対しては、次のような批判がなされる ₇₇

。すなわち、あるカルテルが世界各地の市場で実施される場合には、実施地に基づく加害行為地管轄が遍在し、その結果、フォーラム・ショッピングのおそれ、そして、法的不安定性をもたらすとの批判である。しかし、この批判に対しては、次のように反論される ₇₈

。すなわち、カルテル価格に基づく物品の販売といった協定の実施は、各カルテル参加者の独立した義務であり、各実施行為は独立した不法行為となる。そのため、実施地に基づく加害行為地管轄は、各実施地で生じた損害に限定される。また、このような実施地は、多くの場合、結果発生地と解釈されうる市場地と一致すると指摘される ₇₉

(17)

    同志社法学 六六巻四号六四一〇〇〇

⒞  本拠地   三つ目は、被告の本拠地(または設立地)である。本拠地は、

Sh ev ill

判決のように被告の本拠地を唯一の加害行為地とすることで、加害行為地が明確なものとなり、法的安定性が確保されることを根拠に主張される ₈₀

  しかし、本拠地は、既に二条および六〇条で一般管轄として認められることから、本拠地を加害行為地とする解釈は、加害行為地の独立した重要性への考慮を欠き、原告に認められる特別管轄の一つである加害行為地を意図的に排除することになると批判される ₈₁

。また、モザイク理論が競争法上の私訴において用いられる場合には、結果発生地の裁判所の審理範囲が当該結果発生地で生じた損害に限定されるため、本規則が本来予定するすべての損害について審理することができる不法行為地管轄がほぼ存在しないことになる。そのため、このような解釈は、加害行為地の遍在を防ぐ一方で、被告を過度に優遇するおそれがあり、とりわけ、競争法違反が競争当局により既に認定されている場合には、不適切であるとも批判される ₈₂

。これらの批判に対しては、事案との関連性および正当な原告の利益保護を目的とする不法行為地は、結果発生地によって追求されうると反論される ₈₃

  もっとも、本拠地は、単なるその所在ではなく、問題となる協定などに応じた経営上の重要な判断が下された場所であることが根拠とされる場合には、加害行為地の一つとして適切であると主張される ₈₄

。しかし、関連する重要な判断が下される場所であることに基づき本拠地を加害行為地に含めたとしても、本拠地は、二条および六〇条により既に一般管轄として認められることから、加害行為地に基づく追加的な特別管轄は認められない ₈₅

ⅱ  結果発生地   次に、結果発生地としては、主に市場地と財産侵害地の二つが主張されている。以下では、市場地、財産侵害地の順

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    同志社法学 六六巻四号六五一〇〇一 に各見解を紹介する。

a  市場地   一つ目は、競争制限行為により競争秩序に影響(効果)を及ぼされる市場地である。市場地を結果発生地と解釈する根拠として、次のように主張される ₈₆

。すなわち、競争法事件において一次的に保護される法益は、市場の機能能力(

F un kt io ns fä hig ke it

)および競争制限からの自由(

B es ch rä nk un gs fre ih eit

)であり、競争制限行為により市場で被った経済的損害は、二次的な損害に過ぎない。また、競争法は、競争の制限および歪曲ならびにその結果から、公共(

A llg em ein he it

)だけでなく、個々の被害者も保護することを目的としており、抵触法上においてもこの目的が考慮されなければならない ₈₇

。そのため、競争制限行為の効果が生じる市場地を結果発生地とする解釈は、この目的に沿い、適切である ₈₈

  また、競争制限行為により被る経済的損失を一次的損害とするが、そのような損害は、競争秩序に影響を及ぼされた市場地で生じるとし、市場地を結果発生地と主張する見解もある ₈₉

  市場地を結果発生地と解釈する見解に共通する根拠として、次のことが主張される ₉₀

。すなわち、契約外債務の準拠法に関する二〇〇七年七月一一日の欧州議会および理事会規則(EC)八六四/二〇〇七(以下、﹁ローマⅡ規則﹂という。) ₉₁

六条三項が、市場地を競争法事件における結果発生地とすること ₉₂

、ならびにローマⅡ規則前文七が同規則の実体的な適用範囲および規定に関して、ブリュッセルⅠ規則との統一的解釈を求めることである。

(19)

    同志社法学 六六巻四号六六一〇〇二

⒝  財産侵害地   二つ目は、競争制限行為により財産への損害が及んだ財産侵害地である。財産侵害地を主張する見解は、競争制限行為を単なる財産侵害と捉え、競争制限行為により被った経済的損失を一次的損害とする。もっとも、この見解の中でも、財産侵害地として、市場地、被害者の本拠地 ₉₃

および具体的所在地 ₉₄

が主張される。市場地については、前述の通りであるので、以下では、被害者の本拠地、具体的所在地について概観する。

(b1)  被害者の本拠地   まず、競争法事件において、被害者の本拠地を支持する裁判例として、国際ビタミンカルテルに関する

L G D or tm un d

事件 ₉₅

および不当なライセンス契約に関する

Sa nD isk

事件 ₉₆

があげられる ₉₇

 

L G D or tm un d

事件において、ドイツ法人である原告は、被告であるスイス法人のドイツ子会社から、カルテルの対象とされるビタミンを購入していた。原告は、本来のビタミン価格とカルテルにより騰貴されたビタミン価格との差額分を競争制限行為により被った経済的損失として、ドイツの裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した。裁判所は、実際に経済的損失を被った具体的な結果発生地を示していない。しかし、原告と被告のドイツ子会社間の取引が渉外性を有しないことから、原告の本拠地を結果発生地である財産の侵害地と考えていたことが明らかであると指摘される ₉₈

 

Sa nD isk

事件では、原告である米国法人に対して欧州の複数の企業により提示された特許権に関するライセンス契約が問題となった。原告は、ライセンス契約の内容が不当なものであることに基づき、合理的かつ非差別的なライセンス契約および濫用的な特許権の行使(

pa te nt e nf or ce m en t

)に対する損害賠償などを求め、英国の裁判所に訴えを提起した。裁判所は、ライセンスを正当に得ることができないことが、原告の英国におけるビジネスに影響を及ぼしているこ

(20)

    同志社法学 六六巻四号六七一〇〇三 とを認めた上で、原告の設立地(デラウェア州)が結果発生地としての直接的かつ経済的な損失が生じた地であると示した ₉₉

  前述の通り、競争法事件における財産侵害地として、被害者の本拠地を支持する裁判例もあるが、被害者の本拠地を結果発生地とする解釈は、次のように批判される 100

。すなわち、不法行為地に基づく国際裁判管轄は、証拠との密接な関連性および事理に適した訴訟遂行の必要性によってのみ正当化されるものである。そのため、原告である被害者の本拠地を容易に結果発生地とすることは、ブリュッセルⅠ規則二条一項における被告住所地原則を減退させるだけでなく、原告住所地の裁判所に容易に国際裁判管轄を導くことになり、適切ではない。

(b2)  具体的所在地   被害者の本拠地に対する前述の批判から、競争法事件における財産侵害地として、具体的所在地が主張される。この見解を支持するものとして、競争法事件における裁判例ではないが、

D an m ar ks R ed er ifo re nin g

事件 101

および

K ro nh of er

事件 102

があげられる 103

  まず、

D an m ar ks R ed er ifo re nin g

事件は、スウェーデンにおける労働争議行為(

in du st ria l a ct io n

)のため、デンマーク船籍である自社船舶の航行を取りやめ、他の船舶を借りなければならなくなったことから生じた損害に関して、デンマークに本拠を有する海運会社が損害賠償請求訴訟をデンマークの裁判所に提起した事案である。同事案では、船舶の目的地国であるスウェーデンでの労働争議行為により生じた損害が、航行を取りやめた船舶の上で発生したとみなされうるのか、および当該船舶の船主が、当該船舶の旗国地で労働組合に対する損害賠償請求訴訟を提起できるか否かが問題となった。この問題に関して、欧州司法裁判所は、次のように判示し、デンマークの裁判所に国際裁判管轄を認め

(21)

    同志社法学 六六巻四号六八一〇〇四

104

。すなわち、原告がデンマークに本拠を有するだけでは、デンマークの裁判所に国際裁判管轄は認められない。しかし、船舶の上で損害が発生する場合には、当該船舶の旗国法が不法行為地の決定的な要素であり、本件のような損害の場合においても、旗国籍を考慮することは認められ、適切である。

  次に、

K ro nh of er

事件は、オーストリアに居住する原告が、自らの資金をロンドンにおける投機的な取引で失ったドイツの財産管理会社に対して、損害賠償請求訴訟をオーストリアの裁判所に提起した事案である。同事案では、原告がドイツで被った金銭的損失から、連鎖的に金銭的損失が生じたとされるオーストリアが結果発生地に含まれるか否かが問題となった。この問題に対して、欧州司法裁判所は、次のように判示し、オーストリアの裁判所の国際裁判管轄を否定した 105

。すなわち、財産の中心地のような不明確な要素を裁判管轄の判断基準とすることは、原告および被告の潜在的な法廷地に対する予見可能性を損なうおそれがあり、さらに、このような地を結果発生地に含めると、原告住所地に裁判管轄を容易に認めるおそれがある。

  これら二つの裁判例を援用して、被害者の本拠地に代わり、具体的所在地が財産侵害地として主張されるが、具体的所在地については、被害者である原告が有利な結果発生地を不当に得ることを防ぐために、次の留保が付される 106

。すなわち、原告の口座や金銭などが両当事者または取引と何ら関係のない国に所在する場合には、それらの地が具体的所在地から排除されることを被害者である原告が予見可能であったか否かである。

⑶   審 理 範 囲

  名誉毀損や国際カルテルなどの拡散的不法行為事件においては、複数国で損害が生じ、結果発生地が遍在しうることから、結果発生地の裁判所の審理範囲が問題となる。すなわち、結果発生地の裁判所の審理範囲が、当該結果発生地で

(22)

    同志社法学 六六巻四号六九一〇〇五 生じた損害に限定されうるか、という問題である。この問題に関して、多くの学説は、モザイク理論に従い、結果発生地の裁判所の審理範囲が当該結果発生地で生じた損害に限定されると主張し 107

、欧州委員会もモザイク理論の適用を前提としている 108

。その一方で、二〇〇三年に改正されたEU競争法執行規則 109

一条が各構成国裁判所による競争法違反の認定の対象を一国におけるものに限定していないことから、結果発生地の裁判所の審理範囲は、当該結果発生地で生じた損害に限定されないとも考えられると指摘される 110

  結果発生地の裁判所の審理範囲がモザイク理論に従い当該結果発生地で生じた損害に限定される場合には、原告は、十分な救済を得るために、損害を被った各国で訴えを提起しなければならない。そのため、そのような場合には、国際ビタミンカルテルに関する

P ro vim i

事件の原告のように、ブリュッセルⅠ規則六条一号で認められる共同訴訟の特別管轄を用いることが実務上重要とされる 111

⑷   小 括

  現在のところ、競争法上の私訴における国際裁判管轄原因としての不法行為地について判断を下した裁判例は存在しない。学説においては、加害行為地として、締結地、実施地および本拠地が主張され、これらの地を巡り多くの見解が示されている。その一方で、結果発生地については、市場地と財産侵害地の二つが主張されるが、ローマⅡ規則において、競争法上の私訴における結果発生地が定められたことから、市場地を結果発生地と解釈する見解が有力であると思われる。また、結果発生地の裁判所の審理範囲については、モザイク理論によるべきであるとの見解が有力であり、欧州委員会もこれを前提としている。

  EUにおける見解を具体例に当てはめると、加害行為地は、その解釈により大きく異なるであろう。①の場合には、

(23)

    同志社法学 六六巻四号七〇一〇〇六

締結地は、スイス、米国および日本、実施地は、日本を含む東アジア諸国、本拠地は、スイスおよび米国である。②の場合には、実施地がA国となる以外、①の場合と同一である。結果発生地もその解釈により異なるが、市場地とする見解によると、結果発生地は、①では、日本を含む東アジア諸国、②では、A国である。また、結果発生地の裁判所の審理範囲は、有力な見解によれば、当該結果発生地で生じた損害に限定される。

3   ス イ ス

  スイスには、国際裁判管轄に関して、EU構成国とEFTA構成国間のルガノ条約とスイス連邦国際私法典(以下、﹁IPRG﹂という。) 112

が存在する。IPRG一条二項は、スイスで有効な国際条約がIPRGに優先して適用される旨を規定しており、ルガノ条約が適用される場合には、IPRGは適用されない。

  ここでは、先に述べた通り、ルガノ条約における議論がブリュッセルⅠ規則におけるものとほぼ同一であるため、主にIPRGにおける議論を紹介する。

⑴   不 法 行 為 に 関 す る 国 際 裁 判 管 轄

  IPRGには、競争法事件に関する特別の国際裁判管轄規定は定められていない。しかし、競争法事件も含む不法行為事件に関する包括的な規定が一二九条 113

に定められている。

  一二九条は、不法行為事件における国際裁判管轄原因として、次の三つを認める。一つ目は、スイスにおける被告の住所地または常居所地である。同条における自然人の住所地は、二〇条一項a号、法人については、二一条一項ないし三項に従い決定される。また、被告がスイスに住所を有しない場合の常居所地は、二〇条一項b号に従い決定される。

参照

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