大阪女学院大学国際共生研究所通信 創刊号 大学院21世紀国際共生研究科「平和・人権システム専攻」および大阪女学院大学国際共生研究所
開設記念シンポジウム テーマ1r女性と人権」
2009年10月21日於ホテルニューオータニ大阪 報告者 香川孝三 基調講演 r女性の人権 平等・発展・平和をめぐって」 講師 林陽子(弁護士・女性差別撤廃委員会委員) 女性差別撤廃条約が1979年に成立し、現在日本も含め て187か国が批准をしている。1999年成立した選択議定 書は個人通報制度と調査制度を定めているが、批准は98 か国で、日本はまだ批准をしていない。これは、日本が 先進国のなかで女性の人権が遅れている現状を示してい る。 この条約の成立から30年が経っているが、その間、戦 時や平時における女性に対する暴力が女性の社会的参画 への重要な障害であるとされ、差別問題として条約審査 の対象となってきている。さらに私的領域での差別に国 の撤廃義務を重視するようになってきている。この動き はドメスティック・バイオレンスやリブロダクティブ・ ヘルスをめぐる個人通報の事案を通じて顕著になってき ている。 この条約の日本への影響としては、国籍法の改正、男 女雇用機会均等法の成立、DV法の成立、ストーカー禁 止法の成立、男女共同参画基本法の成立、間接差別の導 入などに示されている。しかし、2009年8月に日本政府 が提出した報告の審査が行われ、きびしい勧告が下され た。たとえば、民法の改正、間接差別の範囲の狭さの是正、 ポジティブ・アクションの積極的活用などが勧告されて おり、日本政府はもっと女性の人権に力を入れるべきで ある。そのために、選択議定書の早期批准が期待される。 これからの課題として、複合差別の視点を持って、よ り弱い立場の人を支援していくこと、貧困を克服してい くためにミレニアム開発目標の達成に先進国として責任 を果たすこと、武力紛争後の平和構築に女性の殺害1」を再 検討し、さらに武力紛争時の性暴力の加害者への処罰を きちんと実施することが不可欠である。平等、開発、平 和の局面で宗教や文化の多様性を理解しつつ、異なる文 化との対話を継続していくことによって、今後の課題に 取り組む必要がある。そのために教育の殺害1」が重要であ る。国連のもとに組織されている女性差別撤廃委員会の 委員として、女性の人権を守るためにはどうすればいい かという視点からの話であった。シンポジウム
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司会 香川孝三(大阪女学院大学) パネリスト 林陽子 秋林こずえ(立命館大学) 阿久澤麻理子(兵庫県立大学) 元百合子(大阪女学院大学) 秋林こずえさんの報告は、「平和と女性一ジェンダーの 視点から」という題で行われた。人権の確立は平和な社 会を達成していることと不可分である。広義の平和とは 紛争がないという状態だけでなく、人権が確立された状 態を意味する。女性の人権は男性と比べて制限を受けて いるが、武力紛争や戦争の際に女性の人権が性暴力によっ て侵害される。ルワンダや旧ユーゴにおける戦時下の性 暴力がその典型的な事例である。それだけでなく平時に おいても軍によって女性が性暴力の犠牲になっている。 たとえば沖縄において米軍によってひきおこされる性暴 力の事例がそれである。それらをなくすために、国連安 保理決議1325号「女性・平和・安全保障」が2000年10 月31日採択された。これは平和構築のためには女性の貢 献が重要であり、平和・安全保障政策への女性の参加と ジェンダー視点の導入促進を定めている。たとえば具体 的には、アフガニスタンにおいてジェンダーの視点を取 り入れて平和維持活動をめざし、女性の役割や貢献の範 囲を拡大することがありうるであろう。 阿久澤麻理子さんの報告は「研究者として、個人とし て『ジェンダーを生きる』ということ」と題して行われ大阪女学院大学国際共生研究所通信 創刊号 だ。2000年の京都市人権調査によると、子どもの結婚相 手として同和地区出身者や在日韓国・朝鮮人であること を気にするかという質問に女性の方が気にする割合が高 い。これは相手の経済力や職業を重視して生活保障を図 るという「男性への依存という生存保障」をめざす傾向 が女性に強いことの反映であろう。女性が自立して生活 していこうとすることとは整合的ではない。女性が男性 並み、またはそれ以上のカを発揮しなければ評価されな い。その事例としてマグレブ刑務所においてリンディー・ イングランド上等兵(女性)が捕虜虐待を行ったという 報道があるが、これは