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「南九州から南西諸島における総合的防災研究の推進と地域防災体制の構築」報告書

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Academic year: 2021

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市町村自治体における地域防災体制の現状と課題

-アンケート結果を踏まえて-

下川 悦郎

1. はじめに 平成26年度に実施した「地域防災体制に関する市町村自治体アンケート」を踏まえて、 防災の最前線を担う市町村自治体における地域防災体制の現状と課題について考える。 ご多忙のなかアンケート調査に回答いただいた市町村自治体の防災関係者に深く感謝す る次第である。 2.方法 アンケート調査は、基本情報(属性)、危機管理組織、市町村防災会議、防災協定等の締 結、自主防災組織等の活動に対する支援、地域防災計画等の見直し、ハザードマップの作 成公表、事業継続計画の策定、警戒避難対応および災害応急対応、災害復旧復興、市町村 自治体における地域防災の課題の11項目からなる。設問の総数は46である。回答は、 選択(二項選択回答形式、多項選択回答形式、無制限複数回答形式、制限複数回答形式)、 または記入(数値、文字)による。 アンケート調査用紙を鹿児島県内43の市町村自治体に発送し回答を依頼、すべての市 町村自治体から回答が寄せられた。 3.市町村自治体における地域防災体制の現状と課題 3.1 危機管理組織 (1) 危機管理業務の所管部局 (現状) 防災を含む危機管理業務は、危機管理専門の部または課6自治体、総務課等に配置され た係(あるいは室、チーム)34自治体、係等に配置された防災等担当職員3自治体で所 管されている。 (課題) 防災を含む危機管理業務を危機管理専門の部または課で所管している自治体は4万人以 上の人口を抱えた6市で、多くの自治体は係(または室やチーム)、あるいは係に配置され た職員で所管しており、自然災害等の危機事象に十分に対応できる組織体制になっていな い。 (2) 危機管理監

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(現状) 危機管理監(またはそれに類する役職)の配置について、配置している11自治体、配 置していない32自治体となっている。 危機管理官が担当する危機事象について、あらゆる危機事象4自治体、行政内部組織の 危機事象(個人情報の漏洩や職員の不祥事等)を除く危機事象4自治体、その他3自治体 となっている。 危機管理監の組織上の位置づけについて、首長の補佐として危機管理監が危機管理部局 を統括4自治体、局長(または部長、課長)の補佐として危機管理監が危機管理部局を統 括5自治体、その他2自治体となっている。 (課題) 専門職としての危機管理監を配置している市町村自治体は県内全自治体の4分の1程度 にとどまっている。 自然災害の起こり方や規模は時代とともに大きく変遷を遂げている。そうした変化に即 した地域防災体制のいっそうの強化をはかるために、危機管理監等専門職の配置が望まれ る。 (3) 人材の確保と育成 (現状) 専門的な危機管理の知識や経験を有する人材の確保について、人事面で工夫している5 自治体、とくに工夫していない37自治体となっている。 人事面での工夫の内容について、危機管理や防災等の経験者を外部から採用1自治体、 その他4自治体(消防職員の配置など)となっている。 危機管理や防災に係わる人材育成のための職員研修(外部機関が行う研修への派遣も含 めて)について、実施している25自治体、実施していない17自治体となっている。 職員研修の内容について(無制限複数回答)、災害・防災全般12自治体、地震災害8自 治体、津波災害7自治体、防災情報7自治体、土砂災害6自治体、警戒避難対応6自治体、 災害応急対応6自治体、風害(竜巻災害を含む)6自治体、放射線災害5自治体、河川・ 浸水災害4自治体、高潮災害3自治体、火山災害1自治体、復興・復旧1自治体、その他 1自治体となっている。 (課題) 危機管理を担う人材の確保について、意識的に取り組んでいる自治体はいまだ数少ない。 自然災害等危機管理についてのスキルアップをはかるため職員研修を実施している自治体 が半数を超えるが、職員研修を実施していない自治体もある。市町村自治体における地域 防災を担う人材の育成は十分とは言えない。 3.2 市町村防災会議 (現状) 市町村防災会議の設置について、設置している42自治体、設置されていない1自治体

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となっている。設置の形態は単独設置である。 市町村防災会議の活用について(無制限複数回答)、地域防災計画等の策定・見直し42 自治体、域内関係機関の調整8自治体、大規模災害および複合災害への対応6自治体、そ の他3自治体となっている。 (課題) 市町村防災会議が設置されていない自治体がある。市町村防災会議の活用は必ずしも十 分ではない。住民への防災啓発や地域防災力の向上のために、防災会議をいっそう活用す る必要がある。 3.3 防災協定等の締結 (1) 他自治体 (現状) 他自治体との防災協定(あるいはそれに類する協定)の締結について、結んでいる32 自治体、結んでいない11自治体となっている。なお、鹿児島県では県と市町村との間で 「鹿児島県及び県内市町村間の災害時相互応援協定」が締結されている。 防災協定等の内容について(無制限複数回答)、物資の援助32自治体、職員(事務系、 技術系)の派遣29自治体、避難住民の受け入れ16自治体、消防職員の派遣14自治体、 医療関係者の派遣10自治体、平時における情報交換や職員の人事交流3自治体、その他 1自治体となっている。 防災協定等の締結先について(無制限複数回答)、県内の隣接する自治体24自治体、県 内の隣接していない自治体17自治体、県外の隣接する自治体7自治体、県外の隣接して いない自治体13自治体、広域連合3自治体、事務組合1自治体、その他9自治体となっ ている。 (課題) 県内のすべての市町村自治体が他自治体と防災協定を締結している。他県の自治体と協 定を結んでいる自治体もある。 防災協定の内容については、物資の援助や防災要員の派遣など災害時の応援が主になっ ている。防災に関わる情報交換や人材養成など平時における連携を強化する必要がある。 (2) 団体、企業等 (現状) 団体、企業等との防災協定(あるいはそれに類する協定)の締結について、結んでいる 40自治体、結んでいない3自治体となっている。 防災協定等の締結先について(無制限複数回答)、企業(建設関係企業)34自治体、企 業(電気・通信等のライフライン関係企業)33自治体、企業(ライフライン・建設関係 企業以外の企業)24自治体、医療機関7自治体、社会福祉協議会5自治体、町内会・自 主防災組織等2自治体、NPO・ボランティア団体等2自治体、商工会・青年会議所2自 治体、商店会1自治体、その他7自治体となっている。

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(課題) ほとんどの自治体が団体、企業等との間で防災協定を結んでいるが、結んでいない自治 体もある。地域防災力を向上させるうえで、企業等との連携を図ることは重要な課題であ る。 3.4 自主防災組織等の防災活動に対する支援 (1) 自主防災組織に対する防災活動支援 (現状) 市町村自治体における自主防災組織の組織率は70~100%、平均組織率は約91% である。 自主防災組織の防災活動の現状について、全体として活動が活発3自治体、一部に活発 な組織もあるものの不活発な組織が多い30自治体、全体として活動は低迷している8自 治体、現状を把握していない1自治体となっている。 自主防災組織の活動に対する行政支援について(無制限複数回答)、防災担当職員や防災 アドバイザーの派遣による防災の助言・指導26自治体、研修会や講習会による防災リー ダーの育成19自治体、活動資機材の支給・貸与14自治体、活動資金の援助12自治体、 災害時要援護者の支援8自治体、安否確認のための住民名簿の作成4自治体、その他2自 治体となっている。 (課題) 市町村自治体における自主防災組織の組織率は大きく向上したが、その活動は全体とし て不活発な状況にある。活動を活性化するための自治体の支援体制のいっそうの強化が望 まれる。 (2) 市町村自治体の管内企業等に対する防災活動支援 (現状) 管内企業等の防災活動に対する支援について(無制限複数回答)、消防部局による防火対 策23自治体、防火訓練等の指導・助言5自治体となっている。 (課題) 管内に立地する企業等に対する市町村自治体の防災支援は限定的であり、企業等との地 域防災の連携をはかるために拡充する必要がある。 3.5 地域防災計画等の見直し (現状) 地域防災計画や防災対策に係わる条例、計画、指針、マニュアルについて、適宜見直し ている30自治体、あまり見直していない9自治体となっている。 (課題) 地域防災計画や防災対策に係わる条例等について、多くの市町村自治体が適宜見直しを 行っているが、あまり見直しを行っていない自治体もある。 3.6 ハザードマップの公表

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(現状) 市町村自治体における災害種ごとのハザードマップの公表の状況については、以下の通 りである。 河川・浸水災害のハザードマップの公表について、公表26自治体、未公表4自治体、 作成中または作成予定6自治体、その他1自治体となっている。土砂災害のハザードマッ プの公表について、公表27自治体、未公表1自治体、作成中または作成予定12自治体 となっている。地震災害(地盤災害)のハザードマップの公表について、公表15自治体、 未公表9自治体、作成中または作成予定10自治体、その他4自治体となっている。津波 災害のハザードマップの公表について、公表15自治体、未公表5自治体、作成中または 作成予定16自治体、その他2自治体となっている。火山災害のハザードマップの公表に ついて、公表5自治体、未公表17自治体、作成中または作成予定4自治体、その他9自 治体となっている。高潮災害のハザードマップの公表について、公表9自治体、未公表1 7自治体、作成中または作成予定5自治体、その他5自治体となっている。放射線災害の ハザードマップの公表について、公表19自治体、作成中または作成予定4自治体、その 他10自治体となっている。 (課題) 災害種ごとにハザードマップを作成し公表している自治体が増えているが、未作成未公 表の自治体も少なくない。ハザードマップの作成公表を急ぐ必要がある。 3.7 自治体の事業継続計画(BCP)の策定 (現状) 災害時における自治体の事業継続計画について、策定している3自治体、策定していな い33自治体、作成中または作成予定6自治体、その他1自治体となっている。 (課題) 市町村自治体の事業継続計画について、策定または策定中としたのは9自治体で、多く の自治体が未作成となっている。 3.8 警戒避難対応および災害応急対応 (1) 実施組織 (現状) 災害警戒本部及び災害対策本部を設置する基準について、策定している42自治体、策 定していない1自治体となっている。また、災害が突発的に発生し首長と速やかな連絡が 取れない場合、あるいは首長に事故や不測の事態が生じた場合など対策本部の設置や応急 防災対応に係わる体制について、整備している32自治体、整備していない10自治体、 その他1自治体となっている。 (課題) 首長の不在や事故など不測の事態における災害警戒本部及び災害対策本部の設置に関す る基準が整備されていない自治体もある。災害警戒本部や災害対策本部の設置の遅れは警

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戒避難対応や災害応急対応に深刻な影響を及ぼすことがあり、早急に基準を整備する必要 がある。 (2) 防災情報の収集・分析・伝達 (現状) 防災情報の収集・分析・伝達を行う体制(要員、機器等)の整備について、十分整備さ れている3自治体、ある程度整備されている37自治体、ほとんど整備されていない3自 治体となっている。 整備の内容について(無制限複数回答)、通信手段が麻痺した場合に備えて衛星通信手段 を確保している26自治体、情報収集・伝達システムを構築している25自治体、民間の 気象関係企業等から防災情報を収集している15自治体、雨量や河川水位等について独自 に防災情報を収集している15自治体、消防団や自主防災組織との連絡体制を整え住民に きめ細かな防災情報を提供している13自治体、専門の要員を配置し防災情報の分析を実 施している1自治体、その他2自治体となっている。 (課題) ほとんどの自治体で防災情報の収集・分析・伝達体制の整備が進んでいるが、整備され ていない自治体もある。また、専門の要員を配置し情報の分析を行っているのは1自治体 に過ぎない。防災情報の内容については、充実がはかられている。 (3) 避難勧告等意思決定の判断基準 (現状) 避難勧告や避難指示等、避難に係る防災情報発令の判断基準の策定について、策定して いる40自治体、策定していない2自治体、その他1自治体となっている。 策定した判断基準の対象災害について(複数回答)、土砂災害38自治体、津波災害30 自治体、河川・浸水災害29自治体、高潮災害26自治体、風害(竜巻災害を含む)25 自治体、地震災害23自治体、火山災害6自治体、放射線災害5自治体となっている。 判断基準を策定していない理由について、災害の発生条件が場所によって異なり一律に 判断基準をつくることは難しい2自治体、高度な専門的知識が必要1自治体、その他1自 治体となっている。 (課題) ほとんどの自治体が避難勧告等の意思決定の判断基準を作成しているが、作成していな い自治体もある。作成している自治体においては新たな災害の発生を踏まえ、適宜判断基 準の見直しが求められるし、作成していない自治体においては判断基準の作成を急ぐ必要 がある。 (4) 災害応急対応 (現状) 非常用電源設備等、停電や浸水に対し災害対策拠点の機能を維持するための備えについ て、ほぼできている4自治体、ある程度できている33自治体、ほとんどできていない6

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自治体となっている。 災害対策拠点における食料や資材の備蓄について、ほぼできている1自治体、ある程度で きている23自治体、ほとんどできていない19自治体となっている。 災害応急対応の行動計画(あるいは指針、マニュアル等)の作成について、作成してい る14自治体、作成していない29自治体となっている。 (課題) 災害対策拠点の機能を維持するための備えができていない自治体がある。食料や資材の 備蓄ができていない自治体も半数近くに上っている。災害応急対策の行動計画については、 多くの自治体が未作成である。 3.9 災害復旧復興における対策の優先度 (現状) 災害復旧復興にあたって特に優先して実施する対策は何との問いについて(制限複数回 答―3選択)、被災者の生活支援42自治体、ライフラインの復旧42自治体、道路・港湾 等社会インフラの復旧32自治体、生業の復旧復興支援5自治体、防災体制の強化5自治 体、防災施設の整備3自治体、その他1自治体となっている。 (課題) 被災者の生活支援やライフラインの復旧、道路・港湾等社会インフラの復旧を優先的に 挙げる自治体が多い。生業の復旧復興支援や防災体制の強化、防災施設の整備は優先度が 低い。 3.10 市町村自治体が挙げる地域防災の課題 (現状) 自治体における地域防災の課題について(無制限複数回答)、高齢化による災害時要援護 者の増加への対応39自治体、災害の大規模化・広域化・複合化への対応24自治体、過 疎・過密化への対応16自治体、避難勧告等避難に係る防災情報の発令の基準づくり13 自治体、温暖化に伴う異常気象現象(降雨の大規模化等)への対応を11自治体、タイム ラインによる防災対応10自治体、合併による広域化への対応1自治体、その他5自治体 となっている。 (課題) 多くの市町村自治体が高齢化による災害時要援護者の増加への対応を挙げている。災害 の大規模化・広域化・複合化への対応や過疎・過密化への対応を挙げる自治体も多い。避 難勧告等に係る防災情報の発令基準づくり、温暖化に伴う異常気象現象(降雨の大規模化 等)への対応、タイムラインによる防災対応を挙げる自治体も少なくない。 4.おわりに 今回実施したアンケート調査結果を踏まえ県内市町村自治体における地域防災体制の現 状を分析し、地域防災体制の課題を抽出した。

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抽出された課題は多岐にわたり、また解決が難しい課題もある。地域防災教育研究セン ターがこうした課題の解決と地域防災力の向上に貢献することができればと願っている。

参照

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