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eSportsの振興を通じた地方創生・新しい生き方の実践

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Academic year: 2021

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(1)

【経営

Topic

⑤】

eSports

の振興を通じた地方創生・新しい生き方の実践

Vol.

28

(2)

eSports

の振興を通じた

地方創生・新しい生き方の実践

有限責任あずさ監査法人 スポーツビジネス

センター・オブ・エクセレンス(

CoE

) パートナー 土屋 光輝 アシスタントマネジャー 得田 進介

KPMG

コンサルティング株式会社 パブリックセクター  パートナー 関 穣

Advanced Innovative Technology

パートナー 林 泰弘 マネジャー 

Hyun Baro

eSports

は、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行 う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲームやビデオゲー ムを使った対戦を �スポーツ競技�として捉える際の名称です1。他のスポーツと同 じように複数のプレーヤーにより組成されたチーム同士の対戦について、メジャー な大会では観客数が数万人規模にのぼる大規模スポーツイベントとして行われ、放 映権の売買等が大きなビジネスにもなっています。

2000

年頃に登場した

eSports

は、 現在、北米と韓国においてプロ・プレーヤーの活躍など大きな盛り上がりを見せて います。韓国のチーム「

SK Telecom T

1

」に所属するスタープレーヤー、

Faker

選手 の年俸は

30

億ウォン(約

2

.

9

億円)と言われており、日本のプロ野球選手のなかでも トップクラスの選手と同等の年俸と推定されます。 本稿では、世界的に盛り上がりを見せる

eSports

の振興を通じた地方創生・新しい生 き方の実践について解説します。 なお、本文中の意見に関する部分については、筆者らの私見であることをあらかじ めお断りいたします。 【ポイント】

eSports

はスポーツ産業として大きく発展する可能性を秘めている。その ために運営・経営に係る透明性の確保、分かりやすさ、地域への密着とグ ローバルへのチャレンジの両立が重要である。これはスポーツ産業全体に も通じる。 -

eSports

のイベントの開催、運営にあたって、既存のスタジアム・アリー ナおよび、現在、日本各地で建設中または建設が予定されているスタジア ム・アリーナの活用を念頭に置くこと。特に、国が推進している「スタジ アム・アリーナ改革」の施策を深く理解することが不可欠である。 -

地方創生や人生

100

年時代の新しい生き方を実践する手段の1つとして

eSports

が有効である。

土屋 光輝

つちや みつてる

得田 進介

とくだ しんすけ

関 穣

せき みのる

林 泰弘

はやし やすひろ

Hyun Baro

ヒョン・バロ 1 一般社団法人日本eスポーツ協会(JeSPA)

(3)

I.

注目される

eSports

eSports

は、

2022

年に中国・杭州市で開催される「第

19

回アジア 競技大会」において正式種目として採用されることが既に決定して います。また、

2017

8

28

日付け

South China Morning Post

に掲 載された国際オリンピック委員会のバッハ会長のインタビュー記 事では、

2024

年にパリで開催されるオリンピックにおいて

eSports

の正式種目としての採用について「何かを言うにはまだ早すぎる」 といった主旨の慎重な見解を示したものの否定されなかったことか ら、オリンピックに正式種目として採用される可能性について言及 している報道もあります。さらに、アメリカのプロバスケットボール 協会(

NBA

)やフランスやスペインの名門サッカークラブが

eSports

への参入を発表し、プレーヤーの獲得・契約を進めています。 一方、日本においては、一部のゲームプレーヤーの間で盛り上が りを見せ始め、また競技団体の設立・統合などの動きもあり、今後、 産業として大きく伸びる可能性を秘めています。米国や韓国に比べ ると普及の余地が大きく、先行する米国、韓国で発展した成功の要 因と、その発展の過程で明らかになった課題を考察し、日本にとっ ての学びとすることが有効と考えます。 私たち

KPMG

は、日本においてスポーツが産業としてさらに発展 するなかで、

eSports

が既存のスポーツを補完する役割を担うこと でスポーツ産業全体の発展に寄与すると考えています。日本ならで はの

eSports

の発展を目指すうえで以下を重視することが有効と考 えています。 ①運営・経営に係る透明性の確保 ②誰にとっても分かりやすい面白さの創出 ③既存、建設中、建設予定のスタジアム・アリーナの活用 ④地域密着とグローバルチャレンジの両立

II. eSports

とは?

eSports

の言葉の定義は前述したとおりであり、

PC

などの電子機 器を利用してサイバースペース上で取り組むスポーツです。現在 は、主にサッカーや自動車レースといった「スポーツゲーム」、「リ アルタイム戦略シミュレーションゲーム」、「シューティングゲー ム」という

3

つのジャンルを中心に、市販のゲームソフトが使用され ています。オランダのゲーム市場調査会社

Newzoo

2017

2

月に 公表したレポートによると、

2017

年の

eSports

の世界全体での売上 は、

696

百万ドル(約

775

億円)で前年比

41.3%

の成長になる見込み で、北米、韓国、中国の

3

大市場で全体の

59%

を占めています。さら に、

2020

年には

1,488

百万ドル(約

1,657

億円)に拡大すると見込ま れています。

2015

年から

2020

年の年平均成長率は

35.6%

です。売 上の内訳は、放映権料、広告料、スポンサーシップ料が全体の

74%

を占め、残りは関連グッズやチケット等の販売によるものです。 公表されている調査データが限られているため、近しい年代で 比較すると

eSports

2015

年の売上の約

325

百万ドル(約

362

億円) は、メジャーリーグの

2010

年の売上2の約

1/20

、日本のプロ野球の

2008

年の売上3の約

1/5

の水準です。また、サッカーで比較した場合 には、英国のプレミアリーグの

2017

年の売上4の約

1/10

であり、日 本の

J

リーグの

2008

年の売上5の約

1/2

の水準で、約

20

年前のJリー グとほぼ同じ水準です。

2020

年には、日本国内で人気の高いプロ野 球とJリーグの総収入を超える規模に成長する可能性が高いと考 えられます(図表

1

2

参照)。 | 図表

1

eSports

売上成長率

出典:Newzoo 2017 Global Esports Market Reportを基にKPMG作成

230 350 517 1,220 95 143 179 268 0 400 200 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 2015 2016 2017 2020 ブランド投資関連売上(メディア権利・広告・スポンサー) その他の売り上げ(チケット・マーチャンダイズ) (百万ドル)

2 Forbes 「The Business of Baseball」

3 「週刊東洋経済」2010年5月15日号

4 Deloitte Annual Review of Football Finance2017 5 「週刊東洋経済」2010年5月15日号

| 図表

2

eSportsグローバル売上

出典:Newzoo 2017 Global Esports Market Reportを基にKPMG作成

37% 15% 7% 41% 北米 中国 韓国 その他

(4)

III.

米国、韓国における

成功の要因と課題

eSports

2000

年頃に登場して以来、米国、韓国、そして最近で は中国において非常に盛り上がりを見せています。こうした国々で 普及するに至った要因は以下と考えます。 ①国民、地域の嗜好にあった競技(シナリオ、種別)の選定 ②魅力ある賞金の設定 ③スポンサーの獲得 一方、日本での普及を考えた場合、課題となる事項は以下のとお りです。 ①

日本では緻密な戦略や操作が要求され、対戦により明確な勝 敗が決するタイプのコンピューターゲームの人気がそれほど高 くなく、

FPS

First Person Shooting

:一人称視点の銃撃戦ゲー ム)や

RTS

Real Time Strategy

:リアルタイムで行う戦略型シ ミュレーションゲーム)等の

eSports

が普及する素地があると は言いにくいため、対戦型に代わる新たな日本らしい競技を提 言することが重要。 ②

日本では、「ゲームは子供の遊び」という意識が未だに強く、ゲー ム競技者を育成する機会がなかったことから、プロ・プレー ヤーの育成のための基盤整備が重要。特に専門学校、高等専 門学校、工業高校における新たな職業資格取得を意図したラ イセンス制度の創設とカリキュラムの整備が重要。 ③

賞金について法律上の解釈をめぐる課題があり、スポンサー企 業を募ることが難しいため、スポーツ行政が中心となったガイ ドライン作りを行うことが重要。

IV.

日本における発展のシナリオ

日本において

eSports

が普及・発展するためには、以下の4点が 重要になると考えています。

1

.

運営・経営に係る透明性の確保 競技団体における運営の透明性、選手を擁するチームの経営の 透明性を確保するために企業経営の手法を取り入れることが欠か せません。意思決定を行う枠組み作り、内部規程等のルールの整備 とその実行を見守るマネジメントシステムを整えることが最も重 要なことです。既に民間企業において実践されている手法やアイデ アを取り入れることが近道と考えます。

2

.

誰にとっても分かりやすい面白さの創出 競技のルールの整備と運用を司る協会組織の設置が欠かせませ ん。加えて設置された協会組織の運営が透明性を確保しているこ とも必要です。また、日本らしい競技であることも面白さを創出す るうえで大切な要素であると考えます。日本において長く歴史を持 つ野球、サッカー、将棋、囲碁など既存の競技を参考にしてその基 盤を活かすことが有効であると考えます。

3

.

既存、建設中、建設予定のスタジアム・アリーナの活用 内閣府発表の「日本再興戦略

2016

」においてスポーツの成長産 業化が位置づけられ、そのなかでもスタジアム・アリーナが地域活 性化の起爆剤となることが期待されています。さらに「未来投資戦 略

2017

」において、

2025

年までに

20

ヵ所のスタジアム・アリーナ の実現が掲げられ、スポーツ産業を我が国の基幹産業へと発展さ せ、地域経済好循環システムを構築していくことが示されていま す。たとえば、サッカースタジアムの場合、試合開催日以外では大 きなイベント開催が少なく不稼働日となっていることが多いことか ら、

eSports

の大会を不稼働日に開催することで、ピッチの芝生を傷 めることなく稼働日に代えることができます。スタジアム・アリー | 日本での発展における

4

つのポイント 運営・経営に係る透明性の確保 ① 誰にとってもわかりやすい面白さの創出 ② 既存、建設中、建設予定のスタジアム・アリーナの活用 ③ 地域への密着とグローバルでのチャレンジの両立 ④

(5)

ナを中心とした地域経済の循環システムに

eSports

イベントを組み 込むことで

eSports

の普及、定着にも繋がると考えます。

4

.

地域への密着とグローバルでのチャレンジの両立 子供から高齢者まですべての年代にまたがる活動として、特に高 齢者にとっては健康増進のための活動として、また健常者だけでな く障害者も活躍できるコミュニティ活動として地域に根差すことが 欠かせません。単なるゲームでは子供の遊びの域を出ず、社会に広 く受け入れられることに難しさがあります。

eSports

が地域社会に 貢献する産業であること、育成した人材が地域の活動に貢献するこ とを示すこと、競技性に加えて高齢者の健康増進にも寄与できるこ とが第一歩となります。加えて、単に地域に閉じることなく、世界 各地で開催される大会への出場、世界大会が開催できるスタジア ム等の場づくりは、魅力ある地域の拠点を作ることに繋がります。

V.

まとめ

コンピューターゲームやビデオゲーム産業は、長らく日本のお 家芸であったと言えます。日本企業により開発された多くのハード ウェアやソフトウェアが世界で一世を風靡し、また世界で活躍す る多くのゲームクリエイターを輩出するなど、

eSports

でも世界を リードする下地はあると考えます。ある研究では、ゲームは人の脳 を活性化する効果があるという研究結果もあるなど、高齢化が進 む日本だからこそ、世界をリードし

eSports

を通じてスポーツ産業 全体を発展させることに意義があるのだと考えます。 本稿に関するご質問等は、以下の担当者までお願いいたします。     KPMGコンサルティング株式会社 Advanced Innovative Technology TEL:03-3548-5111(代表電話) パートナー 林 泰弘

Yasuhiro.hayashi@jp.kpmg.com

マネジャー Hyun Baro Baro.Hyun@jp.kpmg.com

(6)

KPMG

ジャパン marketing@jp.kpmg.com www.kpmg.com/jp 本書の全部または一部の複写・複製・転訳載および磁気または光記録媒体への入力等を禁じます。 ここに記載されている情報はあくまで一般的なものであり、特定の個人や組織が置かれている状況に対応するものではありません。私たちは、 的確な情報をタイムリーに提供するよう努めておりますが、情報を受け取られた時点及びそれ以降においての正確さは保証の限りではありま せん。何らかの行動を取られる場合は、ここにある情報のみを根拠とせず、プロフェッショナルが特定の状況を綿密に調査した上で提案する 適切なアドバイスをもとにご判断ください。

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【特集】

進化し続ける監査法人

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Insight

KPMG Newsletter

Vol.

28

January 2018

Focus

破壊的イノベーション

~破壊から破壊的創造へ、企業が生き残るための戦略とは V o l.28 J an ua ry 2 01 8

参照

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