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実施例 2. 建物概要 建物名称ゆめタウン廿日市 所在地広島県廿日市市下平良 2 丁目 建築主 イズミ 主用途商業施設 敷地面積 51,067.23m2 建築面積 33,066.13m2 延床面積 180,348.37m2 階 数地上 6 階, 地下 1 階, 塔屋 1 階 構 造鉄骨造 ( 柱 C

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Academic year: 2021

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ヒートポンプとその応用 2016.11.No.90 ■キーワード/建築計画・設備計画・省エネルギー

1.はじめに

 本建物は㈱イズミの大型商業施設「ゆめタウン」シ リーズで最大規模の店舗で,2015年6月にオープンした (写真-1)。  廿日市市が都市の拠点として整備するシビックコア重 点地区の中心施設として出店し,敷地東側を流れる可愛 川沿いの親水公園と一体的に利用できるように2カ所の エントランスやレストランのテラス席が設置されている。  また店内にも市民ホールや地場企業のアンテナショッ プ,コミュニティ FM放送局の設置等,「地域のために」 というイズミの企業理念が追及されている。  建築設備計画では,高効率熱源システムやLED照明 等の省エネルギー設備,太陽光発電や地中熱利用空調等 の創エネルギー設備,BEMSの導入に積極的に取り組み, 『平成26年度 住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入 促進事業(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル実証事業)』(以 下,ZEB補助金)の交付を受けている。  本報では,建築設備計画の概要とZEB補助金への取り 組み,エネルギー使用実績について報告する。 ㈱エネルギア・ソリューション・アンド・サービス 

長 尾 武 臣

鹿島建設㈱ 中国支店 

宅 間 康 人

ゆめタウン廿日市

建築設備計画とZEB補助金への取り組み

写真-1 建物外観

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2.建物概要

建 物 名 称 ゆめタウン廿日市 所 在 地 広島県廿日市市下平良2丁目 建 築 主 ㈱イズミ 主 用 途 商業施設 敷 地 面 積  51,067.23㎡ 建 築 面 積  33,066.13㎡ 延 床 面 積 180,348.37㎡ 階   数 地上6階,地下1階,塔屋1階 構   造 鉄骨造(柱CFT) 建 物 高 さ 36.88m 工   期 2014年1月〜2015年5月 設   計 鹿島建設㈱ 中国支店一級建築士事務所 施   工 鹿島建設㈱ 中国支店 電気・衛生施工 ㈱きんでん 中国支社 空 調 施 工 東洋熱工業㈱ 中国支店 昇降機施工 三菱電機㈱ 中国支社 補助金コンサルティング       ㈱エネルギア・ソリューション・アンド・       サービス  図-1に西側立面図・断面図(フロア構成)を,写真- 2〜4に内観写真を示す。  1〜3階が店舗フロアであり,3層吹抜のセンター コートが建物中心に設置されている。通路は3層吹き抜 けのメインモールと,吹き抜けがないサーキットモール からなり,回遊型の店作りとなっている。売場は飲食店 舗を含む約200のテナントとイズミ直営のスーパーマー ケットおよび物販ゾーンで構成されている。  地下1階,地上4〜6階(屋上)および屋外が駐車場 で,約3,600台の駐車スペースを完備している。 写真-2 メインモール 写真-3 センターコート 写真-4 フードコート 4∼6階 駐車場 1∼3階 店舗 B1階 駐車場 図-1 立面図・断面図

(3)

ヒートポンプとその応用 2016.11.No.90 3-3 電気設備 受 変 電 22kV 10MVA       6.6kV 14,150kVA 非 常 発 電 440V 255kVA(消火ポンプ類)       220V 225kVA(排煙機および保安負荷) 電     灯 LED照明 売場平均照度1,000Lx 内 装 電 源 テナント:開閉器渡し       直  営:内装電源盤より給電 防     災 非常照明,自火報,非常放送,誘導灯,       避雷針 駐 車 管 制 ループコイル式 車両誘導システム採用 電気自動車充電器 急速×2台,低速×2台 太陽光発電 パネル容量 350kW (㈱エネルギア・ソリューション・アンド・ サービスによるオンサイト発電事業) 3-4 昇降機設備 エ レ ベ ー タ 客用8台,人荷用4台 エスカレータ 10台

3.設備概要

3-1 空調設備 熱  源 インバータターボ冷凍機 600USRT×3台      空冷ヒートポンプモジュールチラー 2,700kW      地中熱利用ヒートポンプマルチ    28kW 空  調 外調機+ファンコイルユニット,      空冷ヒートポンプエアコン 排  煙 機械排煙(ルーフトップ排煙機) 中央監視 中央監視盤,BEMS 3-2 衛生設備 給  水 受水槽280㎥+加圧給水ポンプ 給  湯 ガス瞬間湯沸器(局所給湯) 排  水 汚水・雑排水/雨水分流方式      厨房除害施設(100㎥/日) 厨  房 従業員用厨房(150人食) ガ  ス LPG,バルクタンク2.9t×2基 消  火 スプリンクラー,泡消火(CFシステム),      放水型スプリンクラー,移動式粉末消火器, ABC10型消火器,連結送水管,消防用水 図 3 − 4 − 2 CT 1 オーバーフロー (量水器取付) IR-1 ターボ冷凍機 600USRt 〈INV〉 IR-2 ターボ冷凍機 600USRt 〈INV〉 IR-3 ターボ冷凍機 600USRt 〈INV〉 冷却塔置場(4FL+5,000) 4階 熱源機械室 OAC 空気調和機 ファンコイルFCU 〈冷温水往ヘッダ〉 〈冷温水還ヘッダ〉 〈差 圧〉 100 300TE TE TE TE TE TE TE TE TE TE 300 250 250 250 250 250 32 50 50 32 32 32 32 50 150 200 200 200 200 200 200 250 200 250 250 250 65 65 250 200 200 200 200 200 200 150 200 200 200 250 250 32 65 300 300 300 300 300 200 300 200 300 200 300 300 300 300 300 300 200 300 200 300 350 200 200 (バイパス) ×24 6モジュール×3 ×2 ×36 FM 補給水 FM FM CDR CD CDR CD CH CH CHR E E CD CD CR CHR CR CR CR CR CD CD CD CDR CDR C C C C CH CH CH CH CR CHR CHR CHR CHR CDR CDR CD CDR CDR CH C C CD CD CD CHR P T CT 2 CT3 AHP 1 TEX 1 CDP 1 INV F1 F1 7,042L/min INV 7,042L/min INV

INV INV INV 7,042L/min 3,020L/min ×3 5,000L/min ×3 17℃,38℃ 32℃ 17℃ TE TE F1 F1 32℃ 17℃ TE TE F1 F1 F1 F1 32℃ 17℃ 37℃ 7℃ 37℃ 7℃ 37℃ 7℃ 7℃,45℃ CDP 2 CDP 3 CP 3 FC 1 CHP 3 INV CHP 2 INV CHP 1 INV FCU FCU CP 2 HCHR 1 HCHS 1 HCHS 2 HCHR2 CP 1 T P T P TE TE T P T P TE TE TE TE T T P T P T P P P P T P T P T P T P T P T P P P P P T T P T P P P T P P T M M M M M M M M 図-2 空調システム図

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5.ZEB補助金への取り組み

 ZEB補助金とは,経産省の補助金事業で「ZEBの実現 に資する省エネシステム・高性能設備機器を導入する場 合の経費の一部を補助」するものである。一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)が窓口となり公募・申請審 査を行っている。本件では一次エネルギー削減率58.8% とした補助金交付申請を行い,平成26年度,27年度の交 付を受けた。  図-3に本件でのZEB化への取り組みの概念図を示 す。図中の赤枠が補助対象項目,黒枠が対象外である。  補助対象としては,前述の高効率熱源システム,およ び最適台数制御システムのほか,大温度差ファンコイル ユニットや高効率トランス,LED照明,BEMSを採用し た。補助対象外であるが,電気自動車充電器の設置,高 効率冷凍ショーケースの採用等にも取り組んでいる。  また,「先導的な技術」として売場内授乳室にブラケッ ト型有機EL照明の試験導入(イズミとメーカの共同開 発),および地中熱利用高効率ヒートポンプを採用した。  さらに,創エネへの取り組みとして,太陽光発電(パ ネル容量350kW)を屋上に設置している。

4.空調設備計画

 図-2に本建物の空調システム図を示す。熱源として インバータターボ冷凍機(600USRT)を3台と空冷ヒー トポンプモジュールチラー(2,700kW)を設置している。  冷房時にはインバータターボ冷凍機をベースとし,モ ジュールチラーを並列運転し2次側の外調機およびファ ンコイルユニットへ冷水を供給する。熱源台数制御には, 熱源機の運転効率,冷却塔・各ポンプの運転をトータル に考慮し,CO2排出量が最少となるような最適台数制御 システムを導入した。  暖房時には空冷ヒートポンプモジュールチラーにより 温水を外調機へ供給し,導入外気の昇温に用いている。 従来,大型商業施設においては照明等の内部発熱により 冬季においても冷房が必要であったが,LED照明の普 及により内部負荷が抑えられ,室温維持のため暖房要求 が発生しているためである。  2次側の空調としては,外調機により全館に空調した 新鮮外気を供給している。さらに一般物販エリアには ファンコイルユニットを配置し,飲食テナントやサービ ステナント等は空冷ヒートポンプエアコンによる個別空 調を行っている。また,自然エネルギー使用への取り組 みとして,地中熱利用ヒートポンプマルチを採用し,年 間を通して負荷の多い風除室前の空調に用いている。 図 3 − 4 − 3 太陽光発電 発電パネル容量 350kW,1,344枚 設置面積 約2,900㎡ 発電量 385千kWh/年 高効率空調熱源機器+最適制御(高効率統合熱源システム) インバータターボ冷凍機     600RT×3台 空冷ヒートポンプモジュールチラー 900kW×3台 インバータポンプ システムCOP 5.3(熱源+補機+冷温水二次ポンプ,年平均) 高効率トランス (トップランナー) 外調機(インバータファン) 車両誘導システム 各車室のセンサーにより,LED招き灯表示, 空台数表示を行い,駐車場内のうろつき走行防止 を行う 店内モニターへの 省エネ情報の表示 有機EL照明 授乳室壁面に試験導入を行い, 照度変化・耐久性等の確認を 行う デマンドコントロール デマンド抑制のため, 店舗バックヤード空調を自動制御 BEMSの導入 LED調光照明 基本照明にスケジュール調光制御 (初期照度補正,清掃時20%, 夜間60%,初期照度80%等)を導入 高輝度誘導灯 全館で導入 高効率ショーケース インバータコンプレッサー搭載の 新型冷蔵・冷凍ショーケースの採用, ケース内照明のLED化により 省エネルギーを図る 地中熱利用高効率ヒートポンプ 水熱源ビルマルチ 10HP 地中熱採熱杭   100mH×6本 地中熱ヒートポンプを 風除室空調に採用 電気自動車充電器 急速充電器 2台 普通充電器 2台 大温度差搬送システム (ファンコイル) 図-3 ZEB化への取り組み概念図

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ヒートポンプとその応用 2016.11.No.90  図-7は,熱源設備の消費電力とシステム運転効率で ある。年間平均値としては,全体のシステムCOPは4.9, インバータターボ冷凍機システムCOP(補機含む)は6.4, 空冷ヒートポンプモジュールチラーシステムCOPは2.9 となっている。  特にインバータターボ冷凍機は最適台数制御システム の効果もあり,高い省エネ性を示し,一次エネルギーの 減少に寄与している。  なお,本建物では,省エネ推進活動の中で,収集した データを分析し無駄を見つけ,設定値,制御パラメーター 等を調整することとしている。

7.おわりに

 ゆめタウン最大規模である本建物は,省エネ・創エネ 技術に積極的に取り組み,ZEB補助金の交付を受けてい る。オープン後も,建物運用にBEMSを活用することに より,当初計画を上回る省エネ効果を発揮していること が確認できた。  最後に,本プロジェクトの計画・施工・運用にわたり ご指導,ご協力いただきました関係各位の皆さまに厚く 御礼申しあげます。

6.運用実績

6-1 建物全体のエネルギー消費実績  本建物では,BEMSシステムを導入しエネルギー消費 量を可視化している。管理点数は865点あり,主要機器 の個別計量,用途別の取りまとめ計量を組み合わせた構 成としている。  図-4は,オープン後1年間の一次エネルギー消費実 績である。計画値と比較すると冬季の一部で計画を上回 るが,年間では9%の削減実績となり,計画以上の省エ ネがはかられている。  図-5は,用途別の電力量割合である。テナント電灯 関係が最大で,空調,照明関係と続くことが分かる。 6-2 空調関係運転実績  図-6は,熱源設備の年間製造熱量である。冬季にお いて,暖房需要が発生し,空冷ヒートポンプモジュール チラー(AHP)による暖房運転が行われている。 計画値 実績値 計画累計 実績累計 図 3 − 4 − 4 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5(月) 累計GJ 単月GJ 図-4 一次エネルギーの年間実績 図 3 − 4 − 5 空調 23% 照明(直営部分) 8% 換気 4% エレベーター 0.4% 冷凍・冷蔵 8% スーパーバックヤード 1% テナント電灯 29% テナント動力 7%  内装盤 5% その他 14% 熱源・補機・ポンプ 外調機・PAC 図-5 用途別の電力量割合 図 3 − 4 − 6 0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 -4,000 -2,000 0 2,000 4,000 6,000 8,000 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 (月) (℃) (GJ) AHP温熱 AHP冷熱 IR-3 IR-2 IR-1 外気温 図-6 熱源設備の年間製造熱量 図 3 − 4 − 7 (月)0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 350,000 400,000 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 (COP) (kWh) IR-1 IR-2 IR-3 補機類 AHP-1 システム全体COP 図-7 熱源設備の消費電力量と運転効率

参照

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