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第 11 号 階層構造化によるカルコゲナイド系熱電材料の高効率化 テルライドから硫化物へ Pb などの有害元素や Te といった希少元素を多量に含有し 539 らを参考にして頂きたい26 29) ている これらの要因から 熱電発電技術は宇宙開発などの もう一つの指針が階層構造制御である この指針では

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(1)

特集「熱電材料研究の新展開~新しい物性解析技術と新材料~」 オーバービュー(解説論文)

階層構造化によるカルコゲナイド系熱電材料の

高効率化テルライドから硫化物へ

太 田 道 広

国立研究開発法人産業技術総合研究所省エネルギー研究部門

J. Japan Inst. Met. Mater. Vol. 79, No. 11 (2015), pp. 538547

Special Issue on Progresses in the Development of Thermoelectric Materials: New Analyses and New Materials  2015 The Japan Institute of Metals and Materials

OVERVIEW

Hierarchical Structures for High

Performance Chalcogenides: From Tellurides to Sulfides

Michihiro Ohta

Research Institute for Energy Conservation, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), Tsukuba 3058568

An efficient way to enhance the performance of thermoelectric materials is to tune its structure at all length scales from atomic to microscopic. This review addresses recent developments in alllengthscale hierarchical structuring of the thermoelectric chalcogenides, including PbTe, mineralbased sulfides, and layered sulfides. The inclusion of nanostructures in PbTe significantly reduces the lattice thermal conductivity without affecting the charge carrier mobility, leading to very high thermoelectric figure of merit ZT. The high efficiency in the nanostructured PbTebased devices was demonstrated. For mineralbased sulfides, the lowenergy atomic vibration inhibits heat flow, resulting in a low lattice thermal conductivity and high ZT. In layered sulfides, the lattice thermal conductivity is reduced through the intercalation of guest atoms/layers into host crystal layers which effectively scatters heatcarrying phonons. Furthermore, the highly oriented microtexture of layered systems allows high carrier mobility in the inplane direction, leading to a high thermoelectric power factor. Among all chalcogenides, sulfides could pave the way for environmentfriendly and costeffective thermoelectric systems.

[doi:10.2320/jinstmet.JA201513]

(Received May 7, 2015; Accepted June 16, 2015; Published November 1, 2015)

Keywords: lead telluride, mineralbased sulfides, layered sulfides, hierarchical structure, intercalation, lowenergy atomic vibration, nanostructuring, oriented texture, thermoelectric modules

1.

持続可能な社会を実現するためには,地球温暖化を 2°

C 以

内に抑制することが避けて通れないとされ,そのためには,

化石燃料由来の温暖化ガスの排出量を加速的に削減すること

が求められる

1)

.この 2°

C シナリオを達成するためには,一

次エネルギーの 50以上を占め,利用されずに棄てられる

だけのもったいない未利用熱エネルギーの回収が不可欠であ

る.固体デバイスである熱電発電デバイスは,ゼーベック効

果に基づき,熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する

ことができる.そのため,熱電発電技術を用いれば,未利用

熱エネルギーを利用価値の高い電気エネルギーとして回収す

ることが可能となる.

熱電変換モジュールの最大変換効率 h

max

は,モジュール

の上下の温度をそれぞれ T

H

,T

L

とすると,カルノー効率

(T

H

-T

L

)/T

H

と熱電材料の性能指数 Z ˜T を用いて以下のよ

うに記述できる

2)

h

max

T

H

-T

L

T

H

1+Z ˜T-1

1+Z ˜T+T

L

/T

H

( 1 )

ここで, ˜T=(T

H

+T

L

)/2 である.温度 T における ZT は,

ZT=S

2

T/rk

total

(S,

r, k

total

はそれぞれ,ゼーベック係数,

電気抵抗率,熱伝導率)と表すことができる.さらに,熱伝

導は格子振動(フォノン)と電荷を運ぶキャリアが担うので,

熱伝導率は格子の寄与

k

lat

とキャリアの寄与

k

el

の和,k

total

k

lat

k

el

と 書 く こ と が で き る .

r と k

el

は Wiedemann

Franz 則を通じて,k

el

=LT/r(L はローレンツ数)の関係に

ある.すなわち,モジュールの変換効率を高くするために

は,熱電材料の電気特性に関わる因子 S

2

/r(出力因子と呼ば

れる)を高くして,その上で格子熱伝導率 k

lat

を低くする必

要がある.

例えば,温度差 300 K において熱電変換モジュールの変

換効率が 12まで向上し,それが自動車に搭載された場

合,排熱回収熱電発電により 7の燃費改善,さらにペルチ

ェ局所空調による車内空調の効率化により 3の燃費改善が

見込まれる

3)

.合計 10の改善が達成されれば,社会にもた

らすインパクトと意義は非常に大きい.ただし現状は厳し

く,既存の熱電材料の ZT は低く(1.0 以下),その結果,市

販のモジュールの多くでその最大変換効率は 5に満たな

4)

.その上,既存の熱電材料(Bi

2

Te

3

や PbTe)の多くは,

(2)

Fig. 1 Highmagnification transmission electron microscopy images of (a) PbTe2 Mg4 Na and (b) PbTe0.2 PbI2 taken along [001] and [111] zone axes.38) (c) Highangle annular dark field scanning transmission electron microscopy image and energydispersive Xray spectroscopy mappings in PbTe2 Mg4 Na.38)

Pb などの有害元素や Te といった希少元素を多量に含有し

ている.これらの要因から,熱電発電技術は宇宙開発などの

ニッチな分野での実用化に留まっている

5)

.熱電発電技術の

幅広い実用化を達成するためには,熱電材料の ZT 向上を実

現させるとともに,その構成元素を環境に調和した元素に代

替させる必要がある.このような背景の中で,スクッテルダ

イト

69)

,ハーフホイスラー

10,11)

,クラスレート

4,12,13)

,酸化

1417)

などと並んで,資源として豊富に存在して,環境負

荷の少ない硫黄を主成分とした硫化物熱電材料に関心が寄せ

られている

4,1723)

本稿では,まず,第二章で,熱電材料の ZT を向上させる

ための指針である階層構造制御などについて俯瞰する.その

後,第三章から第五章で階層構造制御を用いたカルコゲナイ

ド熱電材料の高効率化について,元素戦略の観点を交えなが

ら解説する.ナノ構造化に関する戦略に関しては鉛テルライ

ド(第三章)を,原子の大振幅振動に関しては熱電変換鉱物

(第四章)を,結晶配向制御や部分構造制御に関しては層状硫

化物(第五章)を例にとる.我々は,実用化への橋渡しをス

ムーズに行うために,熱電材料だけではなくモジュール開発

にも力を入れており,その成果も併せて紹介する.

2.

熱電性能指数 ZT を向上させるための指針

縮退半導体や金属の場合,ゼーベック係数 S と電気抵抗

率 r は,次式で書くことができる

24,25)

1

r

=nem=

ne

2

t

e

m

( 2 )

S=

8p

2

k

2 B

3eh

2

mT

(

p

3n

)

2/3

( 3 )

ここで,n, e, m, t

e

, k

B

, h, mはそれぞれキャリア濃度,電

荷,移動度,緩和時間,ボルツマン定数,プランク定数,有

効質量である.式( 2 )と( 3 )中に含まれるいくつかの物性

値の中で,n は比較的容易に調整できる.すなわち,出力因

子 S

2

/r の増加を通じて熱電性能指数 ZT を向上させるため

には,n を調整することが最も容易な方法である.熱電材料

の開発はドーピング・ゲームである,といわれる所以であ

る . 一 般 的 に , n = 10

19

~ 10

20

cm

-3

で S

2

/r は 最 大 と な

25)

.本稿ではナノ構造化などの最新の技術について紹介

するが,n の調整も重要であることを忘れないで欲しい.先

端技術にのみ走りすぎて,n の調整をおろそかにしている例

を多々見かける.

n を調整したうえで,さらに ZT を向上させる指針とし

て,二つの代表的なものが知られている.一つは,バンド・

エンジニアリングと呼ばれる手法で,電子のバンド構造を設

計して S

2

/r を増大させて,ZT を向上させる指針である.

例えば,PbTe において,キャリアの有効質量の小さな価電

子帯と有効質量の大きな価電子帯をともに電気輸送特性に効

率的に貢献させて,ZT を~1.8(850 K)まで向上させたとい

う報告がある

26)

.バンド・エンジニアリングは有効な方法

であるが,一方で本稿の本題である階層構造制御と比較して

その研究例はまだ少ない.バンド・エンジニアリングに関し

ては,PbTe や PbSe の詳しい文献を引用しているのでそち

らを参考にして頂きたい

2629)

もう一つの指針が階層構造制御である.この指針では,結

晶(原子),ナノ,マイクロの各階層の構造を制御して ZT を

向上させる.階層構造制御は,次章以降に述べるように,多

くの材料系に適応されて,ZT の向上という成果を生んでい

る.この設計指針には様々な戦略が含まれており,例えば,

結晶構造レベルでは原子の大振幅振動や部分構造の制御が,

ナノレベルではナノ構造化が,そして,マイクロレベルでは

結晶配向制御がある.次節から,テルライドと硫化物熱電材

料とそれらのモジュールを例に,元素戦略的な観点も交えな

がら,これら戦略を詳細に見ていく.

3.

ナノ構造化熱電材料

鉛テルライド PbTe は,1950 年代から盛んに研究されて

きた実用熱電材料であり,その地位は現在でも変わらな

5,25)

.特に,自動車から排出される未利用熱エネルギーに

熱電発電技術を適用しようという機運が高まった 2000 年代

ころから,階層構造化,特にナノ構造化によって PbTe の熱

電性能指数 ZT は急激に向上している

3035)

.2000 年代まで,

PbTe の ZT は 1.0 程度であったが,今では 2.0 を超えるま

でに押し上げられている

36,37)

3.1

ナノ構造化

Fig. 1 に,我々が作製した(a)PbTe2 Mg4 Na 焼結

体(p 型)と,(b)PbTe0.2PbI

2

焼結体(n 型)の高分解能透

過型電子顕微鏡(TEM)により得た格子像を示す

38)

.TEM

写真からわかるとおり,PbTe バルク体中に二つの異なる形

状,板状と球状のナノ構造が混在している.これらナノ構造

は,試料全体に均一に分布している.一つ目は,p 型,n 型

(3)

Fig. 2 Temperature dependence of the (a) total thermal conductivity (ktotal)and lattice thermal conductivity (klat), (b) electrical resistivity (r), (c) Seebeck coefficient (S), and (d) thermoelectric figure of merit (ZT) of the sintered compacts of PbTe4 SrTe 2 Na,36)PbTe2 Mg4 Na,38)and PbTe2 Na36)and melted ingot of PbTe4 Na.47)

両試料に存在し,Fig. 1(a)と(b)にてで示している晶帯軸

[001]の格子像に見られる板状のナノ構造である.この板状

ナノ構造は多くの文献で報告されており

36,3844)

,諸説はある

が,板状ナノ構造内の格子点の間隔が PbTe の格子定数の半

分程度であることなどから,Te や Pb 空孔といった格子欠

陥であろうと考えられている

40,41)

.我々は,試料内に Pb の

みから成る粒子を発見しており,本試料では Pb 欠陥が板状

ナノ構造を形成しているのではないかと推測している

44)

PbTe は NaCl 構造という単純な結晶構造を有しているにも

かかわらず,低い格子熱伝導率

k

lat

を有している.この要因

として,重い Pb を含むことなどの様々な要因が挙げられる

が,本結果は,低い

k

lat

の要因の一つに,この板状ナノ構造

が引き起こす効果的なフォノン散乱が含まれることを示唆し

ている.

上記の板状ナノ構造の他に,アルカリ土類金属

36,38,4347)

Sb

48,49)

, PbS

37,5052)

, CdTe

53,54)

, HgTe

54)

などを添加すること

で,PbTe バルク体中にナノ構造を形成できる.この種のナ

ノ構造は,PbTe の熱電特性を劇的に向上させる.Fig. 1(a)

に示す,アルカリ土類金属の一種の Mg を添加した PbTe

焼結体の晶帯軸[111]の格子像において,板状ナノ構造とは

異なる球状ナノ構造(図中のの記号)が見てとれる.このナ

ノ構造は 5 nm 程度の大きさである.もっとも重要な特徴

は,ナノ構造が母相の PbTe とコヒーレントな界面を形成し

ていることである.後述するとおり,このコヒーレントな界

面のために,ナノ構造は PbTe の電気輸送特性に大きな影響

を与えない.Fig. 1(c)に示す走査透過電子顕微鏡の高角度

散乱暗視野像には,10~100 nm 程度の大きさを持つ粒子も

見つかり,エネルギー分散型 X 線分析の結果から,この粒

子は MgTe であることが明らかとなった

38)

.Kanatzidis ら

は,Sr, Ca, Ba を添加した PbTe2 Na の系でも 10 nm 以

下の同種のナノ構造が分布し,このナノ構造の周辺が大きく

ひずんでいることを明らかにした

45,46)

.このひずみは,フォ

ノンを効果的に散乱して

k

lat

を減少させる.

Fig. 2(a)に,アルカリ土類金属の Mg と Sr を添加した

PbTe4 SrTe2 Na 焼結体

36)

と PbTe2 Mg4 Na

焼結体

38)

,Mg と Sr を添加していない PbTe2 Na 焼結

36)

と PbTe4 Na 溶融バルク体

47)

の熱伝導率

k

total

k

lat

を 示 す . す べ て の 試 料 で , 300 ~ 923 K に て

k

total

は 4.3

W K

-1

m

-1

以下を示す.重要なことは,Mg と Sr を添加し

た PbTe の

k

lat

は,添加していない PbTe のそれよりも小さ

い.例えば,300 K で,PbTe4 SrTe2 Na 焼結体の

k

lat

は~2.0 W K

-1

m

-1

で,PbTe2 Na 焼結体の

k

lat

~2.8

W K

-1

m

-1

よりも約 30小さい.これは,Fig. 1(a)に示す

球状ナノ構造が効果的にフォノンを散乱して,k

lat

を低減さ

せていることに起因している.

球状ナノ構造のもう一つの重要な点は,このナノ構造が

PbTe の電気輸送特性に大きな影響を与えないことである.

Fig. 2(b)と(c)に示すとおり,アルカリ土類金属の有無にか

かわらず,すべての試料でゼーベック係数 S と電気抵抗率

r

はほぼ同じ値を示す.例えば,810 K で,PbTe4 SrTe

2  Na 焼 結 体 の

r は ~ 23 mQ m で S は ~ 250 mV K

-1

PbTe2 Na 焼結体の

r は~29 mQ m で S は~260 mV K

-1

ある.これは,PbTe と球状ナノ構造がコヒーレントに接合

されていることに起因している.このコヒーレントな界面は,

PbTe 母体と球状ナノ構造の価電子帯の間に小さなバンド・

オフセットを与えるので,球状ナノ構造は PbTe のキャリア

(4)

Fig. 3 Temperature dependence of the thermoelectric figure of merit (ZT) of the sintered compacts of PbTex PbI2.44)

Fig. 4 Photographs of the (a) nanostructured PbTebased module,38)(b) module testing system,60) and (c) segmented Bi2Te3/PbTe module.38)

Table 1 Measured and simulated maximum conversion effi-ciency (hmax) of nanostructured PbTebased module and segmented Bi2Te3/PbTe module.38) The hotside temperature (TH)was 873 K and coldside temperature (TL)was 303 K or 283 K. Hotside temperature, TH/K Coldside temperature, TL/K Maximum conversion efficiency,hmax () Nanostructured PbTebased module:

Measurement 873 303 8.8

Simulation 873 303 12

Segmented Bi2Te3/PbTe module:

Measurement 873 283 11

移動度と電気特性に影響を与えないと推測できる

45)

アルカリ土類金属を添加することで生じる球状ナノ構造は,

k

lat

のみを選択的に減少させて,PbTe 本来の高い出力因子

S

2

/r を維持する.その結果として ZT は大きく向上する

(Fig. 2(d)).例えば,PbTe2 Na 焼結体の ZT は 815 K

で~1.4 であるが,PbTe4 SrTe2 Na 焼結体の ZT は

915 K で ~ 2.2 に 達 す る . ZT が 2.0 を 超 え た と い う 事 実

は,性能が低くて使えないという熱電材料のこれまでの常識

を覆して,実用化に向けて大きな道筋をつけるものである.

3.2

キャリア濃度の調整

ここまで,ナノ構造に焦点を合わせた議論を進めてきた

が,キャリア濃度の調整を実施したうえでナノ構造化を進め

た結果,ZT の向上に成功したことを見落とさないでほし

い.キャリア濃度の調整はこの記事の本題ではないが,ここ

に簡単に触れる.PbTe に限らず,熱電材料のキャリア濃度

を調節するには,アクセプターあるいはドナーを注入する.

Na は古くから知られているアクセプターであり,2から

4の添加量のときに最大の ZT を与えることが知られてい

36,38,42,43,4547,5458)

.同様に,PbI

2

は古くから知られている

ドナーである

44,53,55,59)

.PbTex PbI

2

の場合,710 K にお

い て , PbI

2

量 x の 増 加と と もに , S は~ 250 mV K

-1

(x=

0.12 ) か ら ~ 120

mV K

-1

( x = 0.60 ) ま で 半 減 し ,

r は ~ 40

mQ m(x=0.12)から~8.2 mQ m(x=0.60)まで 1/5 に減少す

44)

.k

total

は,670 K で,~1.2 W K

-1

m

-1

(x=0.12)から

~2.2 W K

-1

m

-1

(x=0.60)まで増加する.この結果,Fig. 3

に示すとおり,ZT は x=0.40 の際に最大値を示し,860 K

で~1.2 に達する.ナノ構造を導入しなくても ZT が 1.0 を

超える事実は,n 型 PbTe の潜在力も高いことを意味してい

る.今後,ナノ構造化によって,n 型 PbTe の ZT も大きく

向上することであろう.

ここで,ナノ構造化によって,キャリアの移動度を減少さ

せないように注意する必要がある.ナノ構造はフォノンだけ

でなく,電荷キャリアの散乱源にもなりうる.ナノ構造化に

よる

k

lat

の低減効果以上に,r を低減させてしまい,ZT が

むしろ低下している失敗例を多く見かける.ナノ構造化の恩

恵を受けるためには,フォノンのみを選択的に散乱させる必

要があり,そのためには,ここで示したようなナノオーダで

かつコヒーレントな界面を有したナノ構造を形成することが

有効である.

3.3

モジュール化

さて,素晴らしい ZT を示す材料を手に入れたので,熱電

変換モジュールを作製しない手はない.Fig. 4(a)に,我々

が作製したナノ構造 PbTe を用いた熱電変換モジュールの外

観の写真を示す

38)

.p 型には PbTe

2 Mg

4 Na 焼結体,

n 型には PbTe0.2 PbI

2

焼結体を使用している.一つの熱

電変換素子のサイズは~2 mm×~2 mm×2.8 mm であり,

16 個(8 個の pn 対)の熱電変換素子を接続して熱電変換モ

ジュールを作製した.Fig. 4(b)に示すように,開発した装

60)

を用いて,このモジュールの発電特性を測定したとこ

ろ,低温端と高温端の温度がそれぞれ 303 K と 873 K のと

きに,最大変換効率は~8.8に達した(Table 1).最大変換

効率が 5に満たない市販のモジュールと比べると

4)

,優れ

た性能が達成されたことがよく理解できると思う.さらに,

Bi

2

Te

3

とのセグメント型モジュールを作製したところ(Fig.

4(c)),最大変換効率は~11に跳ね上がった.いよいよ,

熱電発電技術において効率 10の時代が到来した.

有限要素法によってその発電特性を物性値から三次元シミ

ュレーションしたところ,Table 1 に示すとおり,低温端と

高温端の温度がそれぞれ 303 K と 973 K のときに,12の

最大変換効率を示す可能性があることがわかった

38)

.シミ

(5)

Fig. 5 Temperature dependence of the (a) total thermal conductivity (ktotal) and (b) lattice thermal conductivity (klat) of Cu10.5Ni1.5Sb4S13,61) Cu11.5Zn0.5Sb4S13,62) Cu11.6Mn0.4Sb4S13,63) Cu10.5Ni1.0Zn0.5Sb4S13,64) Cu26V2Ge6S32,66) and Cu26V2Sn6S32.66) (c) Power factor (S2/r)plotted against the chemical composition (x) in Cu

11-xTrxSb4S13at 660 K670 K. (d) Temperature depen-dence of the thermoelectric figure of merit (ZT). Parts of the figures (b) and (d) were taken with permission from Ref. 23).

Fig. 6 (a) Crystal structure of Cu12Sb4S13and lowenergy vibration of the Cu atom2023,61)and (b) crystal structure of Cu26V2M6S32 (M : Ge, Sn). Sizes of atoms in this figure are arbitrary.

ュレーション値と実測値の差は,ナノ構造 PbTe と接合電極

の間に存在する界面抵抗の影響である.今後の研究におい

て,界面抵抗を下げることができれば,ナノ構造 PbTe のみ

から成る熱電変換モジュールで,シミュレーション値に近い,

10を優に超える変換効率を得ることが期待される.

4.

熱電材料としての硫化銅鉱熱電変換鉱物

PbTe は,ZT の観点から見たとき最も優れた熱電材料で

あることに間違いはない.しかし,主な構成元素の Pb は世

界中で厳しい使用制限がかけられている毒性元素で,さらに

Te は希少元素である.すなわち,元素戦略の面から考える

と PbTe は大きな課題を抱えており,これが PbTe 熱電材料

の幅広い実用化を妨げている要因の一つである.そこで,

Te と同族に属しており,地殻埋蔵量が豊富で環境調和性の

高い硫黄 S に注目が集まり,硫化物熱電材料が脚光を浴び

ている.その中で最も有望な材料として,熱電変換鉱物,す

なわち,テトラヘドライトとコルーサイト(ともに p 型)が

挙げられる

4,2023)

.ともに,S と Cu(Cu も地殻埋蔵量が豊富

で,環境調和性が高い)を組成の主成分としており,元素戦

略の面から見て魅力的な熱電材料である.

4.1

テトラヘドライト

鉱 物 を 模 倣 し て 人 工 的 に 作 製 し た テ ト ラ ヘ ド ラ イ ト

Cu

12-x

Tr

x

Sb

4

S

13

(Tr : Mn, Ni, Zn)の

k

total

k

lat

の温度依存

性を,Fig. 5(a)と(b)にそれぞれ示す

6164)

.ここで,本材料

は,Cu サイトの一部を M で置換している.300~800 K の

温度範囲で,k

total

は 1.3 W K

-1

m

-1

以下と低く,k

lat

は 0.7

W K

-1

m

-1

以下と極端に低い.我々は,熱電材料として魅

力的なこの極端に低い k

lat

の起源を探るために,大型放射光

(6)

Table 2 Measured and simulated maximum conversion effi-ciency (hmax)of single thermoelectric leg of Cu11Ni1.0Sb4S13. The hotside temperature (TH)was changed from 370 K to 673 K. The coldside temperature (TL)was held at 300 K.

Hotside temperature, TH/K Coldside temperature, TL/K Measured maximum conversion efficiency, hmax() Simulated maximum conversion efficiency, hmax()67) 370 300 1.2 1.5 472 300 2.3 3.7 673 300 7.8

施設 SPring8 において,高輝度 X 線を用いた回折実験を実

施した

61)

.その結果,Fig. 6(a)に示すように,[CuS

3

]三角

形面内に位置する Cu が,この面に垂直な方向に低エネル

ギーの大振幅振動することを明らかにした.このような原子

の大振幅振動は,スクッテルダイト

68)

やクラスレート

12,13)

といったかご状構造を有する熱電材料で観測されており,こ

れらの材料ではラットリングと呼ばれている.これら材料の

かごの中に充填されたゲスト原子が大振幅振動して,フォノ

ンを効果的に散乱させて

k

lat

を減少させる.テトラヘドライ

トにおいても,ラットリングと類似した Cu の大振幅振動に

起因した効果的なフォノン散乱と,単位格子中に 58 個もの

原子を含む複雑な結晶構造が,極端に低い

k

lat

を導くと考え

られる.

2012 年にテトラヘドライトにおいて低い

k

lat

の報告があ

65)

,2013 年には,我々と米国のグループがほぼ同時に,

Cu サイトを Fe, Ni, Zn で置換することで,キャリア濃度を

調 整 で き , 高 い S

2

/r を ZT を 達 成 で き る こ と を 見 出 し

61,62)

.ここで,上記金属元素以外にも,Mn と Co がアク

セプターとして働くことが知られている

63,65)

.Fig. 5(c)に,

660 K か ら 670 K に お け る Cu

11-x

Tr

x

Sb

4

S

13

( Tr = Ni, Zn,

Mn)の S

2

/r と置換量 x との関係を示す.すべての Tr にお

いて,x=0.0 から 0.5 の範囲で S

2

/r は最大値を有する.例

えば,Cu

11-x

Ni

x

Sb

4

S

13

の場合,660 K において,r は x=

0.0 の~13

mQ m から x=1.5 の~40 mQ m まで,S は x=0.0

の ~ 120 mV K

-1

か ら x = 1.5 の ~ 190 mV K

-1

ま で 増 加 す

る.その結果,660 K の S

2

/r は x=0.5 のときに最大とな

り,~1200 mW K

-2

m

-1

に達する

61)

テトラヘドライトの低い

k

lat

と高い S

2

/r は高い ZT をも

たらす.Fig. 5(d)に示すとおり,Cu

10.5

Ni

1.0

Zn

0.5

Sb

4

S

13

にお

いて最大の ZT が観測され,その値は 712 K で~1.0 に達す

る.この事実は,環境に調和した硫化物熱電材料の幕開けを

告げるものである.

4.2

コルーサイト

2014 年,我々はテトラヘドライトよりも化学組成に占め

る Cu と S の割合がさらに多い,すなわち環境調和性の高い

コルーサイト Cu

26

V

2

M

6

S

32

(M : Ge, Sn)で高い ZT を達成し

た.Fig. 5(a)と(b)に,人工的に作製したコルーサイトの

k

total

k

lat

の温度依存性をそれぞれ示す

66)

.コルーサイトの

k

total

k

lat

はテトラヘドライトと同程度であり 300 K から

670 K の温度範囲において,それぞれ,0.7 W K

-1

m

-1

以下

と 0.6 W K

-1

m

-1

以下である.この極端に低い k

lat

の起源

は明確ではないが,Fig. 6(b)に示すとおり,単位格子中に

66

個もの原子を含み結晶構造が複雑であることに起因して

いるのではないかと考えている.比較のために,サルバナイ

ト Cu

3

VS

4

(8 つの原子から成る単純立方格子をもつ)を作製

し て k

lat

を 評 価 し た . 350 K に て , コ ル ー サ イ ト

Cu

26

V

2

Ge

6

S

32

k

lat

は~0.4 W K

-1

m

-1

であったが,サル

バナイトの

k

lat

は 4.0 W K

-1

m

-1

を超えた

66,67)

.この結果

は,コルーサイトはもちろん,テトラヘドライトについて

も,それらの極端に低い

k

lat

の要因に複雑な結晶構造が関係

していることを強く示唆している.

コルーサイトの

r と S は,温度とともに上昇する

66)

.例

えば,Cu

26

V

2

Ge

6

S

32

の場合,r は 300 K の~36 mQ m から

660 K の~71

mQ m まで,S は 300 K の~120 mV K

-1

から

660 K の~210

mV K

-1

まで増加する.S

2

/r は,660 K で

~620 mW K

-2

m

-1

に達する.

極端に低い

k

lat

と高い S

2

/r の結果,Cu

26

V

2

Ge

6

S

32

の ZT

は 660 K で ~ 0.73 に , Cu

26

V

2

Sn

6

S

32

の ZT は 660 K で

~0.56 に達する(Fig. 5(d)).コルーサイトへのドーピング

などの研究がまだ着手されていない.ドーピングによってキ

ャリア濃度が調整されれば,ZT はさらに上昇するだろう.

4.3

発電特性

熱電変換鉱物は p 型の優れた熱電特性を示す.ただ,モ

ジュールで対をなす n 型の熱電材料はまだ見つかっていな

い.そこで,p 型のテトラヘドライト Cu

11.0

Ni

1.0

Sb

4

S

13

のみ

から成る単一熱電素子を作製して,その発電特性を評価し

6769)

.Table 2 に,最大変換効率の実測値と物性値から計

算したシミュレーション値を示す.低温端と高温端の温度が

それぞれ T

L

=300 K と T

H

=472 K のとき,実測の最大変換

効率は~2.3となった.単一熱電素子の評価によりテトラ

ヘドライトの発電動作を確認した.ただ,熱電材料と電極材

との間の高い界面抵抗に起因して,実測の最大変換効率はシ

ミュレーション値よりも低い.シミュレーションによると,

T

L

=300 K と T

H

=673 K のとき 7.8の最大変換効率が得

られると推測される.今後,熱電材料と電極材との間の界面

抵抗が低減すれば,実測値がシミュレーション値に近づくも

のと思われる.

テトラへドライトの極端に小さい

k

lat

が 2012 年に発表さ

れてから

65)

,わずか 3 年のうちにその ZT は 1.0 を超え

64)

その上,発電動作を確認するに至り

67)

,またその派生材料

とも呼べるコルーサイトも発見された

66)

.この開発スピー

ドが,熱電材料としては異例の速さであることからも,人口

鉱物が熱電変換材料としての高い可能性を有していることが

わかる.

5.

層状構造を有する硫化物熱電材料

熱電変換鉱物と並び,硫化物熱電材料として注目を浴びて

いる材料が層状硫化物である.層状構造を最適に設計するこ

とで,熱電材料として魅力的な特性を引き出せる.1997 年

に寺崎ら

14)

が,NaCo

2

O

4

において面内方向に高い S

2

/r を見

出したことがきっかけとなり,CoO 層を有する酸化物熱電

(7)

Fig. 7 (a) Crystal structure of TiS2. Sizes of atoms in this figure are arbitrary. (b) Scanning electron micrograph of the fractured section of the Ti1.008S2sintered compact (taken with permission from Refs. 23), 73)).

Table 3 Seebeck coefficient (S), electrical resistivity (r), power factor (S2/r), lattice thermal conductivity (k

lat), and thermoelectric figure of merit (ZT) at 663 K in the inplane and outofplane directions for polycrystalline Ti1.008S2.73)

Direction Seebeck coefficient,S/mV K-1 Electrical resistivity,r/mQ m S2/r/mW KPower factor,-2m-1 Lattice thermal conductivity,k lat/W K-1m-1

Thermoelectric figure of merit,ZT

Inplane -150 17 1300 1.8 0.34

Outofplane -150 32 710 1.8 0.22

Fig. 8 (a) Power factor (S2/r) plotted against the carrier concentration (n) at 300 K in the inplane (abplane) direction for Ti1+xS2.7173,7782) Temperature dependence of the (b) lattice thermal conductivity (klat)and (c) thermoelectric figure of merit (ZT) of Ti1.008S2,73) Ti1.025S2,81) Cu0.1TiS2,80) Ag0.1TiS2,82) [BiS ]1.2[TiS2]2,83) [PbS ]1.18[TiS2]2,83) [SnS]1.2[TiS2]272)and [BiS]1.2[Ti0.95Cr0.05S2]2.84)Parts of the figures were taken with permission from reference.23)

材料でナノブロック・インテグレーションという戦略が提唱

された

16,17)

.この戦略では,電気伝導を担う層の間に,フォ

ノンを効果的に散乱する乱れた層を挿入することで,電気伝

導層の高い S

2

/r と乱れた層による低い k

lat

を両立させる.

酸化物熱電材料では,CoO 層が電気伝導を担い,その層間

の乱れた Na の配置や CaCoO 層がフォノンを散乱して

k

lat

を低減させる.一般的に,酸化物と比較して硫化物の共有結

合性は強く,その結果として

r が低く(S

2

/r が高く)なる傾

向がある.そのため,近年,熱電コミュニティーは,ナノブ

ロック・インテグレーションに基づいた設計が可能な層状構

造を有する硫化物に注目している

4,17,19,2123)

5.1

TiS

2

層を基礎とした層状硫化物

TiS

2

の結晶構造を Fig. 7(a)に示す.CdI

2

型の TiS 層が

c 軸上に積み重なっており,その層同士はファン・デル・

ワールス力で弱く結合している

70)

.TiS

2

の結晶構造は強い

配向性を示しており,それを反映して熱電特性も強い配向性

を有する

7173)

.Fig. 7(b)に示すとおり,加圧焼結法を用い

て,結晶構造を反映した組織を実現することができる.加圧

方向に垂直な方向に結晶粒が成長しており,その長さは約

10

mm である.c 軸は加圧方向に平行に配向していることが,

X 線回折パターンから確認された

73)

面内方向に高い移動度(室温の移動度は面内方向で~2.1

cm

2

V

-1

s

-1

,面外方向で~1.2 cm

2

V

-1

s

-1

)と,Table 3 に

示すとおり,それに起因した面内方向の低い r が観測され

73)

.一方,面外方向に層間でのフォノン散乱に起因した

10低い

k

lat

が観測された(面内

k

lat

~2.0 W K

-1

m

-1

,面外

k

lat

~1.8 W K

-1

m

-1)

.ただ,高温(663 K)では,k

lat

の差は

面内と面外方向でほとんどなくなる.S はキャリアの緩和時

間には強く依存しないため(式( 3 )),面内と面外方向で同

じ程度の値を示す.面内方向の低い

r と配向の影響をほと

ん ど 受 け な い S に よ り , 面 内 方 向 の 高 い S

2

/

r ( ~ 1300

mW K

-2

m

-1

at 663 K)を示し,その結果として面内方向の

ZT(~0.34 at 663 K)が面外方向より高くなる.

TiS

2

の組成範囲は Ti リッチ側に広く,TiS

2

から Ti

1.1

S

2

まで存在できる

7476)

.この範囲で Ti 量を調整することで

キャリア濃度 n を調整でき,Fig. 8(a)に示すとおり,n=

(8)

2.8 × 10

21

cm

-3

付 近 で 室 温 の S

2

/

r は 最 大 値 ( ~ 3700

mW K

-2

m

-1

)に達する

23,7173,7782)

.このように TiS

2

は非常

に高い S

2

/r を示すが,一方で k

lat

が高く,その結果として

ZT

は低い値に留まる.そこで最近の研究は,k

lat

の減少に

焦点が当てられており,ナノブロック・インテグレーション

などの部分構造制御が適応されている.

上述したとおり,TiS 層はファン・デル・ワールス力で

弱く結合しているだけなので,様々な原子や原子ブロックを

インターカレーションすることができる.Fig. 8(b)に,銅

や金属と硫黄から成る層をインターカレーションした系の

k

lat

を 示 す

23,72,73,80,8284)

. イ ン タ ー カ レ ー シ ョ ン に よ り

k

lat

は 減 少 す る . 例 え ば , 300 K で , TiS

2

k

lat

は ~ 2.0

W K

-1

m

-1

から,Cu のインターカレーション(Cu

0.1

TiS

2

)

により~1.7 W K

-1

m

-1

まで,BiS のインターカレーション

([BiS]

1.2

[TiS

2

]

2

)により~0.7 W K

-1

m

-1

まで減少する.

Fig. 8 ( c ) に TiS

2

系 の ZT の 温 度 依 存 性 を 示

23,72,73,8084)

.キ ャリア 濃度を調 整して S

2

/r を改善 した

Ti

1.025

S

2

で ZT~0.48(700 K),インターカレーションによ

k

lat

を低減させた Cu

0.1

TiS

2

で ZT~0.47(800 K)を示す.

これまで n とインターカレーションの制御は個別に実施さ

れてきたが,今後,ZT をさらに向上させるためには,これ

らを同時に実施する必要がある.

TiS

2

の興味深い点として,層間に有機物もインターカ

レ ー シ ョ ン で き る こ と が 挙 げ ら れ る . 河 本 ら は ,

[(hexylammonium)

x

(H

2

O)

y

(DMSO)

z

],をインターカレー

ションした TiS

2

がフレキシブル性を有し,その上,373 K

の ZT がやや高い値(0.28)を示すことを報告した

85)

.無機材

料と有機材料との融合により,フレキシブル熱電変換モジ

ュールの可能性が示されたことは興味深い.

5.2

[MS]

1+m

[TS

2

]

n

層状硫化物

紹介してきた TiS

2

系は,組成式[MS]

1+m

[TS

2

]

n

(M : Sn,

Pb, Sb, Bi,希土類金属元素T : Ti, V, Cr, Nb, Ta; m : 0.7

~0.28; n : 1, 2, 3)で表すことができる材料群の一つであ

70)

.元素 M,T,整数 n の組み合わせを数えただけで,

[MS]

1+m

[TS

2

]

n

には多数の類似化合物が存在していること

がわかる.しかしながら,TiS

2

系を除くと,それらの熱電

材 料 と し て の 研 究 は 始 ま っ た ば か り で あ る . 宮 崎 ら が

[ MS ]

1+m

NbS

2

( M  希 土 類 金 属 元 素 )

86,87)

, 我 々 が

[LaS]

1+m

NbS

2

(M : Cr, Nb)

88)

の熱電特性を報告している程

度 で あ る . そ れ ら の う ち で , ZT の 高 い も の で も

[LaS]

1.14

NbS

2

の 0.15(950 K)に留まる.この数値は熱電材

料としては物足りない.今後,この膨大な組成の組合せを有

する材料群を舞台に,階層構造制御を基盤として熱電材料の

探索が進めば,TiS

2

系のように新しい可能性を持った熱電

材料が見つかるだろう.

6.

本稿では,カルコゲナイド系熱電材料として PbTe,熱電

変換鉱物(テトラヘドライトとコルーサイト),そして層状硫

化物について紹介した.紙面の都合で触れることはできなか

ったが,シェブレル相

8991)

やホモロガス相

92,93)

なども重要な

カルコゲナイド熱電材料である.カルコゲナイドの中でも,

硫化物は環境に調和しており,これからの時代に相応しい熱

電材料群といえる.

階層構造制御は,今後,硫化物を中心としたカルコゲナイ

ド熱電材料のみならず,あらゆる熱電材料の性能を高めるう

えで重要な設計指針である.結晶構造レベルでの原子の大振

幅振動や部分構造制御と,ナノレベルでのナノ構造化は効果

的にフォノンを散乱し,低い格子熱伝導率をもたらす.さら

に,マイクロレベルでの配向制御は,キャリアの移動度を増

加させて出力因子を向上させる.これら各階層の構造制御を

一体的に進めていくことで,ZT の大きな向上が達成され

る.学術的に見たときに,この階層構造制御は,電気輸送特

性と熱輸送特性の個別制御への挑戦といえる.実用的に見た

場合は,階層構造制御は,熱電発電による未利用熱エネル

ギーの有効利用の扉を開くものである.

本研究の一部は,日米等エネルギー技術開発協力事業(経

産省)と JSPS 科研費 25420699 からの支援によって遂行さ

れた.本稿で記載した研究成果は,ノースウェスタン大学の

KANATZIDIS Mercouri G. 教授,広島大学の末國晃一郎助

教と高畠敏郎教授,北陸先端科学技術大学院大学の小矢野

幹夫准教授,室蘭工業大学の平井伸治教授と谷俊博助教,

産業技術総合研究所の JOOD Priyank 博士と山本淳研究グ

ループ長,そして下記参考文献に名前を見つけることができ

る多くの共著者との共同研究によって成し遂げられた.紙面

を拝借して御礼を申し上げる.

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Fig. 1 Highmagnification transmission electron microscopy images of (a) PbTe2 Mg4 Na and (b) PbTe0.2 PbI 2 taken along [001] and [111] zone axes
Fig. 2 Temperature dependence of the (a) total thermal conductivity (k total ) and lattice thermal conductivity (k lat ), (b) electrical resistivity (r), (c) Seebeck coefficient (S), and (d) thermoelectric figure of merit (ZT) of the sintered compacts of P
Table 1 Measured and simulated maximum conversion effi- effi-ciency (h max ) of nanostructured PbTebased module and segmented Bi 2 Te 3 /PbTe module
Fig. 5 Temperature dependence of the (a) total thermal conductivity (k total ) and (b) lattice thermal conductivity (k lat ) of Cu 10.5 Ni 1.5 Sb 4 S 13 , 61) Cu 11.5 Zn 0.5 Sb 4 S 13 , 62) Cu 11.6 Mn 0.4 Sb 4 S 13 , 63) Cu 10.5 Ni 1.0 Zn 0.5 Sb 4 S 13 , 6
+3

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