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務統計である個人の 課税対象所得額 をみると 3 大都市圏以外では大半の県域で 景気拡大局面であった 2~7 年の間も個人所得が減少を続けた 景気が後退局面に入った 8 年以降はその減少率が高まっているが 3 大都市圏では 特に首都圏を中心に 景気後退局面でも個人所得が増加 ( ただし人口増加を考慮

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農協金融の回顧と展望

農林中金総合研究所 調査第一部

目 次 はじめに 1 家計を取り巻く経済環境 2 家計の金融資産増加額と業態 別の預貯金動向 ⑴ 家計金融資産の動き ⑵ 個人預貯金の業態別動向 3 農協貯金の動向と展望 ⑴ 利用者別および種類別の動 向 ⑵ 農協貯金の地域別動向 ⑶ 農協貯金の展望 4 農協貸出を取り巻く外部環境 ⑴ 住宅着工と住宅ローン関連 の動き ⑵ 家計負債の現状と展望 ⑶ 地方公共団体と地方債の動 向 5 農協貸出金の動向と展望 ⑴ 農協貸出金の推移と今後の 展望 ⑵ 求められる農協の貸出体制 の質的進化 おわりに

はじめに

本稿では、2009 年度後半から 10 年度にか けての農協貯金・貸出金の動きとその背景等 を回顧し、今後の展望を試みる。

1 家計を取り巻く経済環境

農協信用事業は個人リテール金融という面 が大きいから、まず 10 年度前半までのわが国 家計の動向を取りまとめる。 わが国の景気は、09 年 3 月を底に緩やかな 上昇傾向にある。しかし、名目雇用者報酬(季 節調整済)が前期比増加に転じたのは 10 年 1-3 月期であり、7-9 月期には再び前期比△ 0.1%に転じている。 10 年度については、経済政策による家計所 得の下支えが名目可処分所得の増加につな がった面がある。例えば、10 年度の子ども手 当支給総額は 2 兆円程度とされており、この 額は、家計可処分所得 292 兆円(『国民所得統 計』、08 年度)の約 0.7%に相当する。 家計消費も、09 年 4 月に発表された経済危 機対策で、環境対応車やグリーン家電の購入 促進策が盛り込まれる等政策的後押しがあり、 10 年 7-9 月期までは比較的高い増加率となっ ている。 一方、経済活動水準の地域差について、税

経 済 ・ 農 業 情 勢

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務統計である個人の「課税対象所得額」をみ ると、3大都市圏以外では大半の県域で、景 気拡大局面であった 02~07 年の間も個人所 得が減少を続けた。景気が後退局面に入った 08 年以降はその減少率が高まっているが、3 大都市圏では、特に首都圏を中心に、景気後 退局面でも個人所得が増加(ただし人口増加 を考慮すると1人当たり所得は低下)し、3 大都市圏以外との差が明確になっている(第 1図)。人口も首都圏を中心に都市部への移動 が強まっており、人口の増減が、サービス産 業等の業況を左右し、3大都市圏とそれ以外 との経済活動水準の差をもたらすことが懸念 される。そしてこのことが、農協信用事業に も影響を及ぼすことも懸念される。 次に農業経営であるが、農産物生産者価格 指数を農業生産資材価格指数で割った交易条 件は、05 年を 100 とすると、07 年より 100 を下回り続けており、経営収支に対する価格 面での恩恵はない。 10 年度は、同年産の米価下落が農家収支を 圧迫している。10 年 9 月の平均卸売価格は前 年比で△2,129 円/俵となっている。この背 景には、米の消費量減少や過剰作付けによる 需給の緩みに加え、10 年度からの戸別所得補 償制度や夏の猛暑による一等米比率の低下等 があるとされている。稲作は、農業総産出額 の約 22%を占める。そのため、稲作地帯を中 心に米販売代金の減少による貯金流入額の減 少等、農協信用事業に影響する可能性がある。

2 家計の金融資産増加額と業態別の預

貯金動向

(1)家計金融資産の動き 10 年 4-6 月期までの家計の金融資産増加 額(市場価格の変化を含まない)は、緩や かな拡大傾向にあり、年換算すれば 10 兆円 前後の増加となっている(第2図)。 家計の金融資産選択については、安全資 産志向により 09 年度内は定期性預金への 資金流入が目立った。しかし、10 年度から は、預貯金金利の低下から流動性預金の積 み上がりや、資産の一部を投信等に振り向 ける動きなども生じている。 第1図 都道府県別個人所得額増加率と人口増加率 ᇞ 15 ᇞ 10 ᇞ 5 0 5 10 15 北 海 道 青 森 岩 手 宮 城 秋 田 山 形 福 島 茨 城 栃 木 群 馬 埼 玉 千 葉 東 京 神 奈 川 新 潟 富 山 石 川 福 井 山 梨 長 野 岐 阜 静 岡 愛 知 三 重 滋 賀 京 都 大 阪 兵 庫 奈 良 和 歌 山 鳥 取 島 根 岡 山 広 島 山 口 徳 島 香 川 愛 媛 高 知 福 岡 佐 賀 長 崎 熊 本 大 分 宮 崎 鹿 児 島 沖 縄 (%) 07‐09年の個人所得額増加率 02‐07年の個人所得額増加率 人口増加率(02‐09年) 資料 個人所得は総務省「市町村税課税状況等の調」に基づく課税対象所得額、人口は総務省「住民基本台帳人口」 (注)02-07 年はほぼ景気拡大局面に相当し、07-09 年はほぼ景気後退局面に相当する。個人所得額の増加率は、02 年か

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(2)個人預貯金の業態別動向 第3図は個人貯金増加率を業態別に比較 したものである。ゆうちょ銀行では、民営 化以降貯金の減少幅が縮小し、それが各業 態における個人預貯金増加率に影響を与え ているとみられ、ゆうちょ銀行以外の個人 預貯金増加率は足元で鈍化している。 ゆうちょ銀行の貯金について流動性と定 期性に分けてみると、通常貯金を中心とす る流動性貯金が増加し、定期性貯金の前年 比増加率は、10 年 6 月からマイナスに転じ ている。ゆうちょ銀行では、10 年 4 月から 「定額貯金ありがとうキャンペーン」によ り定額貯金の金利が 0.1%上乗せされてい るが、それにも関わらず、金利水準自体の 低さから流動性貯金に資金が滞留する構図 となっている。 農協の個人貯金の増加率は、国内銀行、 第2図 家計金融資産の増加額と種類別内訳 ᇞ 15 ᇞ 10 ᇞ 5 0 5 10 15 20 25 30 35 07年4‐6月 08年4‐6月 09年4‐6月 10年4‐6月 (兆円) 流動性預金 定期性預金 投資信託 保険・年金準備金 その他 金融資産計 資料 日銀「資金循環統計」 (注)株価の変動等の市場価格の変化を含まない。後方4四半期の合計値。 第3図 家計預貯金残高前年比増加率と業態別の個人預貯金前年比増加率 ᇞ 8 ᇞ 6 ᇞ 4 ᇞ 2 0 2 4 07年3月 07年9月 08年3月 08年9月 09年3月 09年9月 10年3月 10年9月 (%) 預貯金計 国内銀行 信金 JA 郵貯 資料 預貯金計:日本銀行「資金循環統計」、国内銀行・信金:日本銀行「預金者別預金」、 郵貯:ゆうちょ銀行ディスクロ誌、農協:農中総研「農協残高試算表」 (注)郵貯の 07 年 9 月末残高と 12 月末残高との間には民営化に伴う不連続がある。

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信金等の他業態比でみると相対的に低い水 準で推移している。

3 農協貯金の動向と展望

(1)利用者別および種類別の動向 農協貯金の前年比増加率は、09 年度以降 1.5%前後で推移している(第4図)。 農協貯金の前年比増加率を利用者別にみ ると、09 年度以降公金貯金の寄与度が拡大 し、10 年 9 月末の増加寄与度は約 0.5%と なっており、公金貯金が農協貯金全体の増 加を下支えする状況が続いている。 ただ公金貯金の増加は農協に限られた現 象ではない。農協、国内銀行、信金におけ る公金預貯金の前年比増加額をみると(第 5図)、信金においては公金預金が継続的に 第4図 農協貯金の増加率と利用者別寄与度 ᇞ 0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 07年1月 07年7月 08年1月 08年7月 09年1月 09年7月 10年1月 10年7月 (%) 一般貯金 公金貯金 金融機関貯金 貯金計 資料 農中総研「農協残高試算表」 (注)一般貯金は貯金計から公金貯金と金融機関貯金を除いたもの。金融機関貯金の寄与度は小さい ために表示されない。 第5図 主な業態の公金預貯金の前年比増加額 ᇞ 3 ᇞ 2 ᇞ 1 0 1 2 3 4 07年1月 07年7月 08年1月 08年7月 09年1月 09年7月 10年1月 10年7月 (兆円) 農協 信金 国内銀行 資料 日本銀行「預金者別預金」、農中総研「農協残高試算表」

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増加しており、国内銀行においても変動幅 は大きいが増加傾向にある。 国内銀行の公金預金の 09 年 4 ~5 月、10 年 5 月にみられる一時的かつ大幅な増加は、 定額給付金や子ども手当に充当する資金が、 地方公共団体(以下、地公体)の指定金融 機関の口座に振り込まれたためとみられる。 農協や信金の公金預貯金の安定的な増加 の背景には、地公体の資金運用の中心であ る積立金の増加が背景にあろう。09~10 年 度の積立金の実績はまだ公表されていない が、例えば、積立金の一部を構成する地方 債の増加に伴う減債基金の増加等の事態が 考えられよう。 農協貯金の前年比増加率を種類別に分け てみると、低金利を背景に 09 年から流動性 貯金である当座性貯金の寄与度が拡大して いる(第6図)。日本銀行の金融緩和姿勢は 当面続くとみられるから、この傾向は今後 も続くと考えられる。 (2)農協貯金の地域別動向 農協個人貯金の前年比増加率は、家計預 貯金全体の増加率に比し低い水準にあり、 国内銀行、信用金庫に比べても同様である。 ただし地域別にみると様相は異なる。冒 頭述べたように、人口減少や高齢化といっ た構造的変化が地域経済に及ぼす影響が次 第に大きくなっており、それが農協貯金の 前年比増加率の地域差となってあらわれて いるとみられる。なかでも、比較的明瞭な のが3大都市圏とそれ以外の県域での貯金 増加率の差の定着である(第7図)。 日本全体の人口が減少に転ずるなかでも、 3大都市圏は依然として人口増加を続けて いる。このことが、サービス産業である金 融業、特に個人リテールを中心とする農協 信用事業にとって持つ意味は大きい。農協 の個人貯金の増加傾向は、90 年代後半から 3大都市圏とそれ以外とで差が生じ、それ が定着している。リーマンショック後は、 大都市圏でも景気が大幅に悪化したことで、 貯金増加率の差が縮小したが、10 年度に 入って再び差が明瞭になっている。3大都 市圏における農協貯金の前年比増加率は、 既に国内銀行の個人預金増加率を上回る状 第6図 農協貯金の前年比増加率と種類別寄与度 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 07年1月 07年7月 08年1月 08年7月 09年1月 09年7月 10年1月 10年7月 (%) 当座性 定期性 貯金計 資料 農中総研「農協残高試算表」

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況となっている。 また、3大都市圏以外の地域のなかで、 次第に県域ごとに増加率の差が顕在化して いる点が近年の特徴である。この背景とし て考えられるのが、昭和一桁世代の高齢化 による正組合員の減少率の高まりとそれへ の対応の差である。 昭和一桁世代は農家人口の年齢階層別構 成の中でも、他の世代に比べて人数が多く、 「農協の組織活動や事業活動を支えてきた 世代」(注 1)とされる。この世代がすべて 75 歳以上層に移行し、離農や経営縮小を選ぶ ケースが増えたことが、概要が明らかに なった「2010 年世界農林業センサス」にお ける 05 年センサスからの「総農家」数の減 少率拡大に影響しており、それが県別にみ た農協貯金の動向にも影響を与えつつある と考えられる。農協は、従来から次世代対 策や地域での利用の拡大に取り組んできた が、その進捗は県により異なる。相続等に よる正組合員由来の貯金流出の影響が強ま りつつあるとみられるなか、農協が地域の 非農業者の利用を安定的に増加させている かどうかが、農協貯金の動向をも左右して いくと考えられる。 (3)農協貯金の展望 11 年の農協貯金の展望は国内景気に依 存し、景気の足踏み状態が続くとすれば、 貯金増加率の上昇要因とはなりにくい。米 価下落も、稲作地帯を中心に貯金増加率の 引き下げ要因となろう。また、家計に対し て 5,000 億円程度の負担となる見込みであ る税制改正の影響も懸念される。 中長期的にみると、正組合員の死亡によ る相続の増加が見込まれ、次世代との関係 強化の進捗如何が貯金増加率に大きく影響 を及ぼすこととなろう。地方における人口 減少率は拡大する傾向にあり、このことは 農協貯金増加率の引き下げ要因となる。人 口減少のなかで貯金増加率を高めるために は、地域でのシェア拡大が不可欠であり、 農協事業の安定的利用層である准組合員拡 大の重要性が更に高まることとなる。 第7図 農協一般貯金の前年比増加率(三大都市圏とそれ以外) 0 1 2 3 4 5 03年1月 04年1月 05年1月 06年1月 07年1月 08年1月 09年1月 10年1月 (%) 三大都市圏 三大都市圏以外 資料 農中総研「農協残高試算表」 (注)一般貯金は貯金計から公金貯金と金融機関貯金を除いたもの。三大都市圏は、 東京都、埼玉県、神奈川県、愛知県、大阪府の5都府県の合計。

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他業態との関係では、11 年度まではゆう ちょ銀行の定額貯金の満期金が増加する見 込みであり、農協の対応次第では貯金の増 加要因になろう。但し、中長期的な利用者 基盤拡大なしには、安定的な貯金の増加を 維持することが難しくなっていることには 注意を払う必要がある。 公金貯金の獲得については、入札が主で あり、コスト面からの配慮が重要といえよ う。 (注1)内田多喜生「農家構造の変化と農協組織-迫 られる次世代対応」『農林金融』2008 年 11 月号

4 農協貸出を取り巻く外部環境

(1)住宅着工と住宅ローン関連の動き 10 年度は住宅ローン減税や住宅取得資 金等への贈与税非課税限度額の引き上げ、 住宅版エコポイントの創設等、住宅取得を 促す様々な制度が拡充されたが、これらの 政策的支援にも関わらず、リーマンショッ ク後に大きく減少した住宅着工戸数の増加 ペースは鈍い。 政策的支援の中で、住宅 ローンを取り扱う金融機関等 にとっての最大の関心事は、 住宅金融支援機構が取り扱う フラット 35S の金利引下げ幅 の拡大であろう。フラット 35S は、2 月 15 日の資金受け 取り分から、1.0%に金利引下 げ幅が拡大した。この拡充は 12 月 30 日までの申込分(ま たは、予算が消化された時点) で終了する予定であったが、 11 年 12 月(または、予算が 消化される)まで延長されることとなった。 フラット 35S を含む住宅金融支援機構の 買取債権残高の伸びは著しく、10 年 9 月の 前年比伸び率は 37.4%となっている。 (2)家計負債の現状と展望 家計金融負債残高は、10 年 6 月期には 305 兆円となり、民間住宅貸付を除いた全ての 項目で前年比減少となっている(第8図)。 家計金融負債の太宗は、その約6割を占め る住宅貸付(民間および公的金融機関の合 計)であり、10 年においては住宅購入を促 す多様な政策が実施されているにもかかわ らず、住宅貸付の残高は伸び悩んでいる。 今後についても、住宅建設業者の中には、 新設住宅着工件数が 11 年に大きく伸びる とは考えにくいといった意見がある。また、 消費者信用は家計金融負債の約1割を占め るが、消費者金融業界は過払金返還請求へ の対応と改正貸金業法の完全施行に伴い、 貸出残高を調整している最中であり、その 伸びは当面期待できない。 第8図 家計部門への貸出金の前年比増加率 △ 15 △ 10 △ 5 0 5 07年3月 08年3月 09年3月 10年3月 (%) 貸出金 うち民間住宅貸付 うち公的住宅貸付 消費者信用 企業・政府向け貸付 住宅貸付 資料 日本銀行「資金循環統計」

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従って、11 年の家計負債は、これまでと 変わらず減少することが推察される。但し、 最近の住宅着工件数が緩やかながら増加し ていることを考慮すると、減少幅は小幅と なるとみられる。 (3)地方公共団体と地方債の動向 10 年度は約 15.8 兆円の地方債発行が見 込まれており、地公体の資金需要は大きい。 また、厳しい地方財政への対応として始め られた 07 年度からの補償金免除繰上償還 措置が 10 年度から 3 年間延長され、3 年間 で約 1.1 兆円の繰上償還が実施される見込 みとなっている。この規模は、前 3 年(07 ~09 年度)の約 5.2 兆円と比べると大幅に 減少しているが、民間からの借入れにより 公的機関からの借入れの繰上げ償還がなさ れるため、民間金融機関を中心とした地公 体向け貸出しの増加に一定程度寄与するこ とが見込まれる。 10 年の民間金融機関における地公体貸 付の前年比増加率は鈍化し、11 年も増加率 は低水準となることが予想されるが、貸付 残高は増加する可能性が高い。地方債残高 がほぼ横ばいとなること、地方債発行額全 体に占める民間からの借入れ比率が 10 年 度と大きく変わらないことが地公体貸付残 高を下支えすると予想されるためである。

5 農協貸出金の動向と展望

(1)農協貸出金の推移と今後の展望 農協残高試算表によれば、農協貸出金(公 庫・共済・金融機関貸付を除く)の前年比 増加率は、09 年 5 月の 3.8%をピークとし て低下傾向にあり、10 年 9 月には△0.2% となった。増加率がゼロを下回ったのは 06 年 3 月以来のことである。 10 年 6 月に当総研が実施した「平成 22 年度第 1 回農協信用事業動向調査」を用い て、農協貸出金の増加について見てみると、 県市町村・公社公団貸付が 6.8%、自己居 住用住宅資金(以下、住宅ローン)が 5.3% となっており、増加寄与度の高い県市町 村・公社公団貸付および住宅ローンの伸び が低下している(第1表)。 a.住宅ローン 農協の住宅ローンは、増加率は低下して いるものの、残高は増加している。前年比 増加率が低下している背景のひとつに、09 第1表 農協貸出金の用途別残高増加率等の推移 (単位 百万円,%) 残高 構成比 前年比増加 寄与度 前年比伸び率 10年3月末 08年3月 09年3月 10年3月 自己居住用住宅資金 32.3 1.7 8.5 8.1 5.3 県市町村・公社公団貸付 18.2 1.2 17.7 21.6 6.8 農外事業資金 11.4 △ 1.0 △ 6.7 △ 6.0 △ 7.9 生活資金 6.0 △ 0.5 △ 11.1 △ 7.6 △ 8.1 農業資金 4.2 △ 0.1 △ 5.6 △ 6.6 △ 3.3 資料 農中総研「農協信用事業動向調査」 (注)前年比増加率は、各年度第 1 回調査結果による。回答組合数は、08 年 350、 09 年 328、10 年 317 組合である。また、貸出金合計にはその他の科目も含む ので、各科目の合計は 100%とはならない。

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年度から続く住宅着工件数の少なさ、フ ラット 35S の影響等がある。四半期毎の前 四半期比での住宅ローン残高増加額を業態 別に比較すると、フラット 35S を含むフ ラット 35 が主な残高となっている住宅金 融支援機構の買取債権残高の増加額は右肩 上がりとなっている(第9図)。 11 年の住宅ローン全体の見通しは厳し く、農協の住宅ローンも当面は大きな拡大 が望めないとみられる。フラット 35S を中 心とした全期間固定の低金利商品需要が住 宅ローン利用者および利用見込者から高 まっているし、民間金融機関の間で、借り 換え推進が激化することも想定される。 今後、住宅ローンという貸出の柱をいか に伸ばし、強みとしていくか、その対策が 農協に求められる。例えば、近年住宅建設 業者が注力しているリフォームを対象とし たローンに、これまで以上に取り組むこと の他、場合によっては農協がフラット 35 を取扱う等、状況に応じた様々な対応が農 協の住宅ローンの強みを補強していくこと となるのではないだろうか。 b.地公体貸付 県市町村・公社公団貸付は、06 年頃から 前年比で高い伸びを示してきたが、10 年度 に入ってからの伸びは低下している。農協 の地公体貸付の増加率が鈍化した背景には、 補償金免除繰上償還額が 09 年度と比べ減 少する見込みであること等が挙げられる。 今後は、各農協の地公体貸付へのスタン スが、その残高の推移に影響を及ぼすとみ られ、地公体貸付に対するスタンスを左右 するものとしては、貸付利率の低さや利ざ やの低さについての判断、信用リスクへの 対応、金利変動リスクの管理等があげられ よう。そのうち信用リスクについては、地 公体のデフォルトリスクは低いものの、地 公体の会計は歳入歳出が中心で企業会計と は異なること、バランスシート上のリスク の所在が分かりづらいこと等をどの程度考 慮するかが農協のスタンスに違いをもたら すこととなろう。 第9図 住宅ローンの前四半期比増減額(業態別) ᇞ 2,000 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 09年度第2四半期 09年度第3四半期 09年度第4四半期 10年度第1四半期 (億円) (住宅金融支援機構)買取債権残高 国内銀行 信金・信組 労金 農協 資料 住宅金融支援機構 HP

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(2)求められる農協の貸出体制の質的進化 農協貸出金をとりまく環境は厳しく、特 にこれまで農協貸出金の増加を牽引してき た住宅ローンと地公体貸付については、10 年と同様、09 年以前と比べ増加率が低下す ることが予想される。 しかしながら、農協は事業エリアを限定 した地域金融機関であるから、新たな市場 を求めて地域の外へ出ていくことはできな い。従って、貸出金を伸ばすことを考える ならば、新たな取り組みが求められる。 例えば、現在農協が強化している農業融 資にひとつのヒントを求めるとすれば、農 協系統の強みである農業融資の強化を通じ、 個別事業者の資金需要に対応できる人材の 育成やノウハウの蓄積をし、地域に根付い た信用事業を目指すことも選択肢のひとつ かもしれない。農業の6次産業化に関連す る「地域資源を活用した農林漁業者等によ る新事業の創出等及び地域の農林水産物の 利用促進に関する法律」が施行される見込 みであり、今後、農業の川下に位置する農 業関連産業の資金需要が拡大する可能性が ある。もちろん、貸出には信用リスクが伴 うため、融資に取り組む体制整備や人材の 育成が必要条件であるが、農協が地域に根 付いた融資機能を更に強化できれば、地域 における農協の存在意義がこれまで以上に 増すこととなるのではないだろうか。

おわりに

高齢化・人口減少のなかで、地域を取り巻 く状況の厳しさは増している。地域経済が厳 しいからこそ、地域に根付いた様々な事業・ 活動を行い、地域の経済を支える農協の役割 発揮の重要性が高まっていると考えられる。 農協信用事業にとって、正組合員次世代への 働きかけとともに、地域における信用事業の 安定的な利用者拡大に向けた取り組み強化が 喫緊の課題といえる。 そのようななかで憂慮すべきは、地域の実 情や地域における農協の重要性を軽視した、 一方的とも言える農協批判や、農協の事業・ 活動を弱める方向での農協制度改正に向けた 議論が繰り返されている現状である。 生協その他の市民組織との連携を強めるな どを通じて、消費者にも理解や支援の輪を広 げていく必要があるが、農協組織の圧倒的な 基盤は地域にこそあり、そこで事業・活動の 理解者であり事業の継続的利用者でもある准 組合員を拡大していくことは、農協そのもの への批判に対抗する基盤の強化にもつながる ことである。 それぞれの農協はその力を十分に備えてい ると思われるが、その十全な発揮が求められ ているといえよう。 (農林中金総合研究所 調査第一部) <はじめに、1、おわりに>(小野澤康晴) <2、3>(小田志保、小野澤康晴) <4、5>(若林剛志)

参照

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