ISO 11452
シリーズの概要
前編
: ECE R10.05
に関係する規格
株式会社 e・オータマ
業務グループ 佐藤智典
2016
年 8 月 26 日
目 次
1 はじめに 12 ECE Regulation No. 10 1
3 ISO 11452シリーズ 2 4 試験法 3 4.1 共通事項 (ISO 11452-1:2005) . . . . 3 4.1.1 変調 . . . . 3 4.1.2 ド ウェル・タイム . . . . 3 4.1.3 周波数掃引ステップ . . . . 4 4.1.4 合否判定 . . . . 4 4.1.5 FPSC . . . . 4 4.1.6 電源のインピーダンスの管理 . . . . . 5 4.1.7 DUTの接地. . . . 5 4.2 ISO 11452-2:2004 (ALSE) . . . . 5 4.3 ISO 11452-3:2001 (TEMセル). . . . 6 4.4 ISO 11452-4:2005 (BCI) . . . . 7 4.5 ISO 11452-5:2002 (ストリップライン) . . . . 9 5 試験での合格と現実の問題の防止 9 5.1 試験方法による結果の変動. . . . 10 5.1.1 試験法 . . . . 10 5.1.2 DUTの配置. . . . 10 5.1.3 DUTの接地. . . . 10 5.1.4 ロード ・シミュレータのインピーダンス 10 5.2 試験レベル . . . . 11 5.3 温度の影響 . . . . 11 5.4 DUTの経年変化 . . . . 12 5.5 安全関連機能と機能安全 . . . . 12 6 BCI法 (置換法) での妨害レベルの変動 12 6.1 電流注入プローブの位置の影響 . . . . 12 6.2 ロード ・シミュレータのインピーダンスの影響 13 6.3 ハーネス長の影響 . . . . 13 6.4 DUTの接地ワイヤの影響 . . . . 14 7 参考資料 14
1
はじめに
現代の自動車は、様々な目的のための、多数の電 子回路を含むようになっている。電子回路は電磁干 渉に伴う誤動作を生じ得るし 、自動車で用いられて いる電子回路の誤動作は、その機能や誤動作の症状 に応じて、ちょっとした問題から大事故までに至る、 様々な影響をもたらし得る。一方、携帯電話やその 他の無線デバイスの普及に代表されるように、電波 の利用は拡大し続けており、これは電磁干渉の発生 の機会を増大させている。従って、問題の防止のた め、そのような電子コンポーネントが電磁妨害への 高い耐性 (イミュニティ) を持つことが重要となっ ている。 コンポーネントを供給する上での最低限のイミュ ニティ要求や試験法は、国際的あるいは国家的な基 準、業界団体規格、自動車メーカー (OEM) 規格な どで規定され得る。メーカー規格 (例えば Ford の FMC1278[3]のような) などでより多くの試験やよ り厳し い要求が適用されることも少なくないもの の、ここでは国際連合が発行した規則である ECE Regulation No. 10[1][9] を取り上げ、それに含まれ るイミュニティ評価の一部について説明する。2
ECE Regulation No. 10
ECE Regulation No. 10 (ECE R10)[1][9] は 、車
両等の相互承認に関する国際的な協定 (1958 年協 定) に基づいて国際連合が発行した、路上での使用 が意図された車両やそのような車両への取り付けが 意図されたデバイスの EMC に関する規則である。 名前に ECE (UNECE; 国際連合欧州経済委員会) が含まれているものの、ECE R10 で定められてい る技術的要求事項は、欧州以外の複数の国でも受け
入れられている。ECE R10 については、規則その
もの[1]やその解説[9]を参照していただきたい。
ECE R10の現時点での最新版は Revision 5 (ECE
R10.05)であり、これは、イミュニティ評価に関連
して、以下の国際規格を参照している:
• ISO 11451 — Road vehicles – Vehicle test
methods for electrical disturbances by narrow-band radiated electromagnetic energy (路上走 行車 — 狭帯域放射電磁エネルギーによる電気 的妨害に対する車両試験法)
– ISO 11451-1:2005+A1:2008 — General and definitions (一般原則及び用語) – ISO 11451-2:2005 — Off-vehicle
radia-tion source (車両外放射源)
– ISO 11451-4:1995 — Bulk current injec-tion (BCI) (バルク電流注入 (BCI))
• ISO 11452 — Road vehicles – Component test
methods for electrical disturbances by narrow-band radiated electromagnetic energy (路上走 行車 — 狭帯域放射電磁エネルギーによる電気 的妨害に対するコンポーネント試験法)
– ISO 11452-1:2005+A1:2008 — General and definitions (一般原則及び用語)
– ISO 11452-2:2004 — Absorber-lined
shielded enclosure (吸収材に裏打ちされ たシールド ルーム)
– ISO 11452-3:2001 — Transverse
electro-magnetic mode (TEM) cell (ト ラン ス
バース電磁モード (TEM) セル)
– ISO 11452-4:2005+cor1:2009 — Bulk current injection (BCI) (バルク電流注入 (BCI))
– ISO 11452-5:2002 — Stripline (ストリッ
プライン)
• ISO 7637 — Road vehicles – Electrical
distur-bance from conduction and coupling (路上走 行車 — 伝導と結合からの電磁妨害)
– ISO 7637-1:2002+A1:2008 — Definitions and general considerations (定義及び一般 考察)
– ISO 7637-2:2004+A1:2008 — Electrical transient conduction along supply lines only (電源線だけに沿う過渡電気伝導)
• IEC 61000-4 — Electromagnetic
Compatibil-ity (EMC) – Testing and measurement tech-niques (電磁両立性 (EMC) — 試験及び 測定 技術)
– IEC 61000-4-4:2004 —- Electrical fast transients/burst immunity test (電気的 ファスト・トランジェント/バースト・イ ミュニティ試験)
– IEC 61000-4-5:2005 — Surge immunity test (サージ・イミュニティ試験) 本稿では、これらの試験法のうち、ISO 11452 シ リーズに焦点を当てる。なお、ECE R10 は「コン ポーネント 」という用語を特別な意味で用いている が 、ここではそれを一般的な意味 (ECE R10 での 「ESA」に相当する) で用いる。
3
ISO 11452
シリーズ
ISO 11452シリーズ[2]は、自動車用の電子コン ポーネントの放射電磁エネルギー (電波、磁界など ) に対するイミュニティの評価の方法を定めた国際規 格である。これは、上記の ECE R10.05 での試験法 の一部として採用されている他、自動車メーカー規 格などでの試験法のベースとしても用いられている。 表1に 、ISO 11452 シリーズの現時点での最新 版、及び ECE R10.05 で参照されている版の、規格 番号、表題、及び適用可能な周波数範囲を示す。本 稿では、これらのうち、表 1 で太字で示した、ECE R10.05 で参照されている試験法について述べる。 ISO 11452シリーズのその他の試験法については、 後編で述べる。 なお、正確な情報は、規格そのもの[2]を参照し ていただきたい。表1: ISO 11452シリーズ
規格 表題 周波数範囲
ISO 11452-1:2005 + A1:2008
General principles and terminology
(一般原則及び用語)
—
ISO 11452-2:2004 Absorber-lined shielded enclosure
(吸収材に裏打ちされたシールド ルーム)
80 MHz∼18 GHz
ISO 11452-3:2001 Transverse electromagnetic mode (TEM) cell
(トランスバース電磁モード (TEM)セル)
0.01 MHz∼200 MHz
ISO 11452-4:2005 (+ cor1:2009)
Bulk current injection (BCI)
(バルク電流注入(BCI))
1 MHz∼400 MHz
ISO 11452-4:2011 Harness excitation methods
(ハーネス励磁法) 1 MHz∼3 GHz ISO 11452-5:2002 Stripline (ストリップライン) 0.01 MHz∼400 MHz ISO 11452-7:2003 + A1:2013
Direct radio frequency (RF) power injection
(無線周波(RF)電力の直接注入)
0.25 MHz∼500 MHz
ISO 11452-8:2015 Immunity to magnetic fields
(磁界に対するイミュニティ)
DC, 15 Hz∼150 kHz
ISO 11452-9:2012 Portable transmitters
(可搬型送信器)
26 MHz∼5.85 GHz
ISO 11452-10:2009 Immunity to conducted disturbances in the extended audio
frequency range
(拡張オーデ ィオ周波数範囲における伝導妨害へのイミュニティ)
15 Hz∼250 kHz
ISO 11452-11:2010 Reverberation chamber
(リバブレーション・チャンバー) ∼18 GHz
4
試験法
4.1
共通事項 (ISO 11452-1:2005)
4.1.1 変調 ISO 11452-1では以下の変調が規定されており、 ECE R10.05 では 、800 MHz 以下では振幅変調、 800 MHz 以上ではパルス変調での試験が指定され ている: • 連続波 (CW): 一定振幅の、単一周波数の高周波 • 振幅変調 (AM): AM 放送のような音声周波で 振幅変調された送信を模擬する、変調周波数 1 kHz、変調度 80% の振幅変調 • パルス変調 (PM): GSM の TDMA (時分割多元 接続) の送信と似た、ton577 µs、周期 4 600 µs (デューティー 1/8) の間欠的な出力 4.1.2 ド ウェル・タイム 試験に際しては、それぞれの周波数の妨害をある 時間づつ印加し 、DUT (被試験装置) の挙動を確認 図2: 変調(ISO 11452-1:2005[2]より転載) する。この時間 (ド ウェル・タイム、滞在時間) の 最小値は ISO 11452-1 では 1 秒以上と規定されて いるが、実際の時間は、それぞれの周波数の妨害に 対する DUT (被試験装置) の応答を確実に確認で きるように、DUT の特性や動作条件に応じて決め る必要がある。 DUTが間欠的に動く機能を持つ場合 (例えば 、通 信やセンサの読み込みを 30 秒毎に行なう、など ) や 反応に遅れがある場合 (例えば 、センサ入力が時定 数 10 秒のフィルタに通されている、など ) には、ド ウェル・タイムをかなり長くすることが必要となる かも知れない。これは試験時間を長くするので、特10 100 1k 10k 100k 1M 10M 100M 1G 10G R10.05 での要求範囲 ISO 11452-2:2004 ISO 11452-3:2001 ISO 11452-4:2005 ISO 11452-4:2011 ISO 11452-5:2002 ISO 11452-7:2003 ISO 11452-8:2007 ISO 11452-9:2012 ISO 11452-10:2009 ISO 11452-8:2015 0 図1: ISO 11452シリーズの各試験法の周波数範囲 に予備試験の段階では、動作周期を短くし 、あるい は応答時間を短くした試験用のサンプルを用意する ことが助けとなるかも知れない。 4.1.3 周波数掃引ステップ 試験に際しては、必要な周波数範囲内で周波数を 変えながら 、それぞれの周波数の妨害を印加する。 周波数の変え方には一定の周波数間隔で上げていく 方法 (リニア・ステップ) と一定の比率で上げていく 方法 (対数ステップ) があり、ISO 11452-1 では最大 のステップ幅は表2の通りとなる。 表2: 周波数掃引ステップ 周波数帯 リニア・ステップ 対数ステップ MHz MHz % 0.01∼0.1 0.01 10 0.1∼1 0.1 10 1∼10 1 10 10∼200 5 5 200∼400 10 5 400∼1 000 20 2 1 000∼18 000 40 2 4.1.4 合否判定 どの機能までが、どの判定基準に適合しなければ ならないかは、適用する規格、そのコンポーネント の機能や用途、そしてメーカーや納入先の判断など に依存する。一般には、安全に関係する機能につい てはどの試験レベルでも危険側の誤動作は認められ ないであろうが、高い試験レベルでの安全側の誤動 作は認められるかも知れない。また、安全に関係し ない機能については、機能の劣化や、場合によって は喪失さえ認められるかも知れない。 ECE R10の場合、本稿で述べる範囲の試験でイ ミュニティ評価の対象となるのは「 イミュニティ関 連機能」(ECE R10.05[1][9] 参照) のみであり、妨害 の印加中やその後にイミュニティ関連機能の劣化が なければ 、合格と判断できる。 試験に際しては 、評価が必要な機能、動作条件、 具体的な判定基準などを事前に同定し 、例えば監視 機器、信号源、試験用プログラムなどが必要であれ ばその準備を行なうべきである。安全に関係する機 能については、特に慎重な検討と準備が必要である。 4.1.5 FPSC ISO 11452-1:2005は 、イミュニティ評価に関連
して、試験信号と方法、functional status classifica-tion、及び試験厳しさレベルから成る、FPSC (func-tional performance status classification) と呼ばれ
る枠組みを定めている。†1
†1 ISO 7637-2:2004 にも同様のものが含まれているが、failure
Functional status classification はデバイスやシ ステムの妨害に対する反応の区分の枠組みで、次の ようになっている: • クラス A: 妨害の印加中とその後、デバイスやシ ステムのすべての機能が設計通りに動作する。 • クラス B: 妨害の印加中、デバイスやシステム のすべての機能が設計通りに動作する。だが 、 その 1 つ以上が規定された許容幅を超えても良 い。妨害が止められた後、すべての機能は自動 的に通常の限界内に戻る。メモリ機能はクラス Aのままでなければならない。 • クラス C: 妨害の印加中、デバイスやシステム の 1 つ以上の機能が設計通りに動作しないが 、 妨害が止められた後、すべての機能は自動的に 通常の限界内に戻る。 • クラス D: 妨害の印加中、デバイスやシステム の 1 つ以上の機能が設計通りに動作せず、妨害 が止められ、デバイスやシステムが単純な「オ ペレータ/使用」アクションによってリセット されるまで、通常の限界内に戻らない。 • クラス E: 妨害の印加中とその後、デバイスや システムの 1 つ以上の機能が設計通りに動作せ ず、デバイスやシステムの修理か交換なしでは 正しい動作に戻らない。 だが、ECE R10.05 では、本稿で述べる範囲の試験 についてはこの表現は用いられていない。 4.1.6 電源のインピーダンスの管理 一部の試験を除き、電源のインピーダンスの管理 のため、所定の電圧を維持できる低インピーダンス
の電源から、AN (artificial network)†2を介して給
電する。
ISO 11452 シリーズの規格での試験で 12 V や
24 Vなどの直流電源に使用する AN は 5 µH/50 Ω
ANと呼ばれるもので、図3に示すようなインピー
ダンス特性を持つ。
†2 LISN (line impedance stabilization network) とも呼ば
れる | Z | (ohms) Frequency (MHz) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 0.1 1 10 100 図3: 5 µH/50 Ω ANのインピーダンス(理論値) 4.1.7 DUT の接地 電源のマイナス側 (リターン 、グランド ) の接続 をどのようにするかは、実車での接続の方法から決 定する。 マイナス側の線をそのコンポーネントの近くで車 体に落とす場合のように 、実車で 200 mm 以下の ワイヤで接続することを意図している場合には、プ ラス側の電源のみを AN を介して給電し 、マイナ ス側の線はグランド ・プレーンに落とす。 マイナス側の線をプラス側と同様に離れた場所か らワイヤで引く場合のように 、実車で 200 mm よ りも長いワイヤで接続することを意図している場合 には、プラス側と同様、マイナス側も AN を介して 接続する。 コンポーネントのボディをグランド・プレーンに 接続するかど うかも、実車で車体に接続されるかど うかから決定する。但し 、これらの規格では、コン ポーネントの金属のケースが実車でシャーシに直接 ボルト止めされるような場合であっても、コンポー ネントは 50 mm の高さの絶縁台の上に置き、グラ ンド・プレーンにワイヤで接地することが原則となっ ている。
4.2
ISO 11452-2:2004 (ALSE)
こ の 試験は 電波暗室 (absorber-lined shielded enclosure; ALSE) 内で送信アンテナから電磁界を 放射して DUT (被試験装置) とハーネスをその電磁 界に曝すもので、最も素直な方法と言えるだろう。 だが 、この実施のためには電波暗室 (反射の低減 のために内面に電波吸収体を取り付けたシールド ・ ルーム) が不可欠であり、また高レベルの電磁界を得るためには強力な高周波電力増幅器が必要となる ため、比較的高コストなものとなる。また、低い周 波数では充分な強度の電磁界の発生や結合を行なう ことが難しくなるため、この方法での試験は、ある 程度高い周波数範囲に限られている。 電界強度 (試験レベル) は、DUT がない状態で、 アンテナの正面、アンテナから 1 m の距離 (ハーネ スの位置) で、電界プローブを用いて校正する。 試験に際して、DUT は高さ 90 cm の机の上のグ ランド・プレーンの上の 50 mm の絶縁性の台の上 に置き、グランド・プレーンの前縁と平行な部分が 1.5 mの長さとなるように配置したハーネスを介し てロード・シミュレータ (対向器) に接続する。送信 アンテナは、ハーネスから 1 m 離し 、1 GHz 以下 の試験ではハーネスの中央、1 GHz 以上の試験で は DUT に向けて置き、ハーネスと DUT の双方に 電磁界を照射する (図4,図5)。 ECE R10には、REESS 充電モード†3での試験の セットアップについての特別な規定も含まれている (図6)。 DUT 900 50 100 1000 100 200 1500 図4: ISO 11452-2試験セットアップ (≤ 1 GHz) †3 REESS 充電モードとは、電気自動車やプラグイン・ハイ ブ リッド 自動車の動力用バッテリを外部からの給電で充電する 状態のこと。 100 DUT 900 50 100 200 1500 1000 図5: ISO 11452-2試験セットアップ (≥ 1 GHz) 50 5 -0 +100 100 -0 +100 100 200 2 ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ 100 1 DUT 1000 2 1500 2 ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿÿÿ HV LV
AC/DC charger harness
ÿ ÿÿÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ 100 1 図 6: ISO 11452-2 試験セットアップ (ECE R10.05, REESS充電モード;≤ 1 GHz)
4.3
ISO 11452-3:2001 (TEM
セル)
この試験では 、DUT は 、TEM セル内に発生さ せられた TEM 波†4に曝される。 この試験で用いられる TEM セルはそれ自身が シールド されていることから、本稿で述べる他の試 験法と異なり、基本的には電波暗室やシールド・ルー ムを必要としない。†5この試験法は低い周波数から†4 transverse electromagnetic wave (横電磁界波)。電磁界
が進行方向と直角の方向の成分のみから成る波。
†5 但し、DUT を外部の対向器と接続するワイヤが充分にフィ
ルタされていない場合には電磁界の過剰な漏洩が生じ る可能性 があるため、その懸念がある場合はシールド・ルーム内で使用し た方が安全であろう。
使用可能であり、また比較的小さい電力で高い電界 強度を得ることができる。だが、標準的な 200 MHz までで使用可能なセルの高さは約 0.6 m で、DUT の高さはセルの高さの 1/6 までに制限されるため、 大きな DUT の試験には適さない。 試験に際しては、セルの片側の同軸コネクタに電 力増幅器から高周波電力が注入され、セル内を伝搬 した後、反対側のコネクタに取り付けられた終端器 で吸収される (図7)。セル内の電界強度は、セルに 注入された正味電力 (net power)、あるいはセルか ら出て終端器に向かう電力から、計算によって求め られる。 基本的に、セル内には TEM 波のみが発生するも のと想定されているが、セルの寸法から決まる高次 モード のカットオフ周波数よりも高い周波数の電力 がセルに注入された場合、セル内に高次モード の電 磁界が発生し 、試験に悪影響を与える可能性がある。 この問題の防止のため、この規格では、試験周波数 の上限をセルの寸法から決まるカットオフ周波数以 下に制限するとともに、電力増幅器とセルのあいだ にカットオフ周波数の 1.5 倍以上で 60 dB 以上の 減衰を持つ高域遮断フィルタを入れるようになって いる。 DUT のみを電磁界に曝す場合、DUT はセルの 中央付近、セルの底面から 50 mm の高さに置き、 ハーネスはシールドしてセル底面に沿って引く (図 9)。ハーネスも電磁界に曝す場合、DUT はセルの 中央付近、セルの底面からセルの高さの 1/6 の高 さに置き、ハーネスはセル側面下端に付けられたコ ネクタ・パネルに向けて斜めに引く (図10)。 図8: TEMセルの例(写真は Teseq社提供)
4.4
ISO 11452-4:2005 (BCI)
DUTが小さい場合、低い周波数の電磁妨害は、主 にハーネスを介して DUT に入り込む傾向がある。 DUT 50 L W b図9: ISO 11452-3 — DUTとハーネスの配置 — DUT
のみへの照射 b / 6 DUT L W b
図10: ISO 11452-3 — DUTとハーネスの配置— DUT
とハーネスへの照射 また、DUT が良くシールド されている場合、高い 周波数においてもハーネスの影響が支配的となるこ とがある。このような状況では、ハーネスに妨害を 注入することで DUT のイミュニティの評価を行な えると考えられる。 BCI法†6では、高周波の妨害を電流注入プローブ (BCIプローブ) を用いてハーネスに注入すること で、DUT のイミュニティを評価する。この試験で は電磁界を空間に放射することは意図されていない ものの、試験に際しては相当の電磁界が放射される ため、試験はシールド・ルーム内で行なうことが原 則となる。 注入する妨害の強度は、置換法か電力制限付き閉 ループ法のいずれかの方法で設定する: • 置換法: あらかじめ、電流注入プローブを校正治具に取 り付けた状態で、各周波数で所望の電流を発生 †6 BCI は bulk current injection の略で、bulk current は
ÿÿ ÿ ÿ ÿÿ ÿ ÿ ÿ ÿÿ ÿ ÿÿÿÿÿ ÿ ÿ ÿ 60 dB ÿ ÿ ÿ6 ÿÿ ÿÿÿÿ RFR ÿÿÿÿÿÿ ÿÿÿÿÿÿ ÿ ÿÿÿ ÿÿÿÿÿ ÿÿÿÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿÿ DUT Rÿ ÿÿÿ ÿÿÿÿÿÿÿÿ ÿÿ LPF L LPF 図7: ISO 11452-3試験構成(正味電力での制御) させるために電流注入プローブに印加する必要 がある進行波電力を求めておく。 試験に際しては、図11に示すように、DUT を グランド・プレーンの上の 50 mm の絶縁性の 台の上に置いて 1 m のハーネスを介してロー ド・シミュレータに接続し 、ハーネスの所定の 位置に取り付けた電流注入プローブに、あらか じめ求められた、所望の妨害を発生させるため に必要な進行波電力を印加する。 電流注入プ ローブ は 、DUT から 150 mm、 450 mm、及び 750 mm の位置に取り付けて 試験を行なう。但し 、ECE R10 では 150 mm の位置での試験のみが要求されている。 電流注入プローブと DUT のあいだに電流モニ タ用のプローブを入れることもあるが、その場 合も、測定された電流を出力の制御に用いるこ とはない。 ECE R10には 、REESS 充電モード での試験 のセットアップについての特別な規定も含まれ ている (図13)。 • 電力制限付き閉ループ法: この場合も、あらかじめ、電流注入プローブを 校正治具に取り付けた状態で、各周波数で所望 の電流を発生させるために電流注入プローブに 印加する必要がある進行波電力を求めておく。 試験に際しては、図12に示すように、DUT を グランド・プレーンの上の 50 mm の絶縁性の 台の上に置いて 1 m のハーネスを介してロー ド・シミュレータに接続し 、ハーネスの所定の 位置に電流注入プローブと電流測定プローブを 取り付け、電流測定プローブで測定された電流 が試験レベルに達するまで、電流注入プローブ に印加する電力を増加させる。 但し 、通常、電流注入プローブに印加する電力 は、事前に校正治具上で求められた電力の 4 倍 までに制限される。 -0 50 +10 dc 1000 DUT ÿÿÿÿÿÿÿÿ dc: 150, 450, d ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ 900 9 図11: ISO 11452-4試験セットアップ(置換法) -0 50 +10 DUT 1000 900 50 ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿÿÿÿÿÿÿÿ ÿÿÿÿÿÿÿ ÿ 900 9 図12: ISO 11452-4試験セットアップ(電力制限付き閉 ループ法) ISO 11452-4ではこれらの 2 つの方法の使い分け
50 5 -0 +300 1700 -0 +100 100 -0 +100 100 ÿÿÿÿÿÿÿÿ dc: 150 mm ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ dc ÿ ÿ ÿ ÿ DUT ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ LV HV
AC/DC charger harness ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ ÿ 図13: ISO 11452-4試験セットアップ(REESS充電モー ド) は述べられていないが 、例えば ECE R10 や Ford FMC1278[3]で置換法の使用が指定されているよう に、これを参照する規則や規格ではいずれかの方法 の使用が指定されることが多い。 そのような指定がない場合、少なくとも低い周波 数範囲においては、 • DUT (及びロード・シミュレータ) のグランド・ プレーンに対するインピーダンスが低い場合、 置換法では指定された試験レベルよりもかなり 大きい電流が流れるが、電力制限付き閉ループ 法では実際にハーネスを流れる電流 (電流測定 プローブの位置で観測される電流) が指定され た値を超えないように調整される • DUT が接地されていない場合のように、DUT のグランド・プレーンに対するインピーダンス が高い場合、いずれの方法でも実際にハーネス に流れる電流は設定された試験レベルに達しな いであろうが、電力制限付き閉ループ法での試 験は試験レベルを 2 倍としての置換法での試験 と似た状況となり、置換法を用いた場合よりも 設定された試験レベルに近い電流が流れる ことも考慮し 、電力制限付き閉ループ法の方が適切 であればそちらを、さもなくば置換法を選択すれば 良いだろう。最終的にど ちらの方法での評価が行な われるかがわからない状況で予備試験を行なおうと している場合のように、いずれの方法よりも有意に 甘くならないような形での評価を行ないたい場合、 試験レベルを 2 倍 (ばらつきなどに対する余裕を取 りたいのであればそれ以上) としての置換法での試 験を考える価値もあるかも知れない。
4.5
ISO 11452-5:2002 (
スト リップラ
イン)
この試験法は、DUT を妨害に曝すために用いる こともできるものの、主にハーネスへの妨害の注入 のために用いられている。この試験で用いられるス ト リップラインは上述の TEM セルと異なりシー ルド されておらず、周辺にも電磁界が放射されるた め、シールド ・ルームが必要となる。 この規格では 50 Ω と 90 Ω のストリップライン が規定されてるが、図14、及び図15では、50 Ω ス トリップラインを例として示している。 試験に際しては、ストリップラインの片側のコネ クタに電力増幅器から高周波電力が注入され、スト リップライン内を伝搬した後、反対側の終端器で吸 収される。ストリップライン内の電界強度は、スト リップラインに入力された正味電力から計算によっ て求めるか、あるいは電界プローブを用いた校正を 行なう。 妨害をハーネスに印加する場合、アクティブ導体 の下、グランド・プレーンから 50 mm の高さにハー ネスを 1 m 以上引き、DUT 自身はその外側に置く (図14)。 電磁界を DUT に直接印加したい場合には、DUT をアクティブ導体の下に置く。だが 、この方法での 試験では、DUT の大きさはアクティブ導体の高さ の 1/3 (50 mm) までの小型のものに制限される。 +20-0 200 DUT 50 2500 4300 200 150 740 1500 図14: ISO 11452-5試験セットアップ5
試験での合格と現実の問題の防
止
試験に合格させることだけが目的となり勝ちであ るものの、最終的には、実際に使用された時に問題図15: ストリップラインの例(写真は Teseq社提供) を起こすリスクが低いことが目標となろう。だが 、 ECE R10などで定められたイミュニティ要求は必 ずしも実際の使用状況で起こり得る最も厳しい状況 を模擬するものではないし 、試験の方法などの違い によって大きく異なった結果が得られることも珍し くない。このため、EMC 試験に合格した装置が 、 実際の使用に際して電磁妨害に伴う問題を起こすと いう状況も起こり得る。 そのような問題の防止のためには、単に規格に従っ て最小限の試験を行なうだけではなく、実際の使用 状況を考え、そのイミュニティをできる限り適切に 評価できるように試験を行なうことが望ましい。
5.1
試験方法による結果の変動
5.1.1 試験法 上で述べた 4 つの試験法は基本的には同じ現象を 模擬しようとしているものであり、ECE R10.05 の 場合、試験法を任意に組み合わせて 20 MHz∼2 GHz の周波数範囲をカバーすれば良いものとなっている。 だが 、実際には、DUT への影響は試験法によっ て大きく異なり得る。例えば 、ISO 11451-4 (BCI) は 400 MHz まで (ISO 11452-4:2011 の TWC 法 では 3 GHz まで) の周波数帯で適用可能であるが、 ケーブルが良くフィルタされているが DUT 本体が 良くシールド されていないなどの場合、特に高い周 波数で、この試験法では DUT のイミュニティを適 切に評価できなくなる可能性が高まる。 5.1.2 DUT の配置ISO 11452-2 (ALSE)では DUT のどの面をアン
テナに向けるかは述べられておらず、メーカー規格 などで特に要求がない限り、ハーネスを素直に配置 できるような、あるいは DUT の正面をアンテナに 向けた配置のみで試験すれば良いと考えるかも知れ ない。だが 、特に高い周波数においては、DUT の どの面をアンテナに向けるかによって結果が有意に 変わる可能性がある。 ISO 11452-3 (TEMセル) では、コネクタ・パネ ルへの接続の都合上、DUT の置き方の自由度は下 がるものの、この場合も DUT の置き方によって結 果が有意に変わる可能性がある。
ISO 11452-4 (BCI)や ISO 11452-5 (ストリップラ
イン) でのハーネスへの注入の場合でも、特に DUT が良くシールド されていない場合、DUT のどの面 を下に向けるかによって結果が変わる可能性がある。 5.1.3 DUT の接地 ISO 11452シリーズでは、DUT の筐体の接地に 関しては、一般に、それが実車で接地されないので あれば接地しないように述べられているだけで、そ れ以上の詳細な規定はない。試験の結果は筐体の接 地の有無によって大きく異なる可能性があるが、ど ちらが厳しくなるかの予測は簡単ではない。 また、DUT の筐体や 0 V (グランド ) をグラン ド・プレーンにワイヤで接続する場合、そのワイヤ がかなりのインダクタンスを、従って高い周波数で はかなり高いインピーダンスを持ち、その線の長さ や配置が結果に影響を与える可能性がある。そのイ ンダクタンスが共振 (例えば DUT とグランド ・プ レーンとのあいだの静電容量との並列共振) に関係 している時には、§6.4でもう少し詳しく述べるよう に、さらに複雑な状況が引き起こされ得る。 5.1.4 ロード ・シミュレータのインピーダンス ISO 11452シリーズでは、一般に、ロード・シミュ レータ (対向器) の金属の筐体はグランド ・プレー ンに接続し 、それへの電源は擬似電源回路網 (AN) を介して接続する。 一見、これはロード・シミュレータを DUT 側か ら見たインピーダンスを低く抑えるように見えるか も知れないが、例えば 、ロード・シミュレータ内の回 路が筐体に接続されていない場合や、高インピーダ ンスの入出力回路が用いられている場合などには、 DUT 側の端子のインピーダンスは高い状態のまま
となり得る。ロード・シミュレータ内の回路やその 先の機器への妨害の影響を低減するためにフィルタ やフェライト・コアを付けた場合、それもこのイン ピーダンスに影響を与える。 ロード・シミュレータの DUT 側の端子が電源入 力と接続されている、あるいはロード・シミュレー タなしで AN を直接接続した場合でも、AN のイン ピーダンスは 100 MHz 以下についてのみ規定され ているため、高い周波数でのインピーダンスは不明 のままとなる。 ロード・シミュレータのインピーダンスはどの試 験法でも影響を与え得るが、BCI 法の場合が最もわ かりやすく、これについては §6.2で述べる。
5.2
試験レベル
ECE R10.05[1][9]は、「 イミュニティ関連機能」を 持つコンポーネントに対するイミュニティ要求レベ ルを、そのコンポーネントの使用環境やリスクの程 度とは無関係に定めている。 例えば ECE R10.05 の ALSE 法でのイミュニティ 要求レベルは 30 V/m であり、これは住商業環境向 けの一般的な製品で要求されることが多い 3 V/m よりもかなり高い。しかし 、強力な放送設備やレー ダ ーは 、通常は地上への過度の照射を抑えるよう に配慮されている筈ではあるものの、自動車を強い 電磁界に曝し 、影響を与える可能性がある (例えば [8]の #356、#394、#758、また Ford FMC1278[3] RI 114を参照)。また、携帯電話やその他の無線デ バイスが車内や車両付近で使用された場合を考える と、粗い推定†7で、1 W の送信機から 20 cm 程度、 10 W の送信機からならば 70 cm 程度で 30 V/m を超え得る。従って、誤動作に伴うリスクが高い場 合には特に、このイミュニティ・レベルは充分なも のとは言い難いだろう。 無線デバイスが近傍で使用される可能性がある場 合、その要求は ECE R10.05 には含まれていないも のの、その影響の評価のために、例えば ISO 11452-9 (後編でもう少し詳しく述べる) や Ford FMC1278[3] RI 115で述べられているような近接試験法を用い ることができる。 また、ECE R10.05 はイミュニティ要求を 2 GHz までの周波数について定めているが、既にこれより †7 E ' 7√P /dによる。但し 、放射源の近傍での電磁界の強 度はこのような単純な計算に従うとは限らない。 図16:近接試験用アンテナの例(写真はSchwarzbeck社 提供) も高い周波数の無線デバイスが身近なところでも用 いられるようになっており、その拡大は今後も続く ことが予期される。古い自動車の中で新しい無線デ バイスを使う、あるいは古い自動車が新しい無線設 備の近くを走行するような状況は普通に考えられる であろうから 、どこまでを試験するかは別として、 より高い周波数の妨害に対するイミュニティへの配 慮も必要となり得る。5.3
温度の影響
一般に 、EMC 試験は常温でのみ行なわれるが 、 実際の使用に際してはかなり広い温度範囲 (例えば 、 −20∼+65◦C、−40∼+150◦Cなど ) で所望の性能 を発揮することが期待されることが多い。 電子部品の特性は温度の影響を受けるため、常温 での試験で問題ないと判断されたコンポーネントが、 低温や高温の環境で実際に EMC 問題を起こす可能 性もある。 例えば 、アルミ電解コンデンサのインピーダンス は低温では著しく増大し[10]、これは EMC の有意 な悪化を招く可能性がある。半導体、抵抗、電解コ ンデンサ以外のコンデンサなどの特性も、それほど 劇的ではないものの、温度の影響を受ける。 実際に極限温度で EMC 試験を行なうことは実際 的でなく、通常はそれを行なうように要求されるこ とはないものの、温度やその他の環境条件が EMC にど のような影響を与えそうかを検討することが 、 場合によってはその影響を実際に評価することが必 要となるかも知れない。5.4
DUT
の経年変化
通常、EMC 試験は、健全な、ご く少数の (しば しば 1 台だけの) サンプルを用いて行なわれる。実 際に出荷される製品がその試験されたサンプルと同 程度の EMC 性能を持つかど うかという議論もある ものの、出荷された後での経年変化の考慮も重要と なり得る。 コンポーネントが新品の状態では高いイミュニ ティ・レベルを持っていたとしても、実際に自動車 に取り付けられた後、激しい温度変化、水分や汚染 物質、振動/衝撃、電気的サージなどに曝されなが ら使用されるあいだに、例えばシールド やグランド の接続の悪化 (図17)、コンデンサの容量減少、防 護素子の劣化などに伴い、実際に問題を生じるとこ ろまでイミュニティが低下することがあり得る。 このような問題の防止のためには、経年変化によ る問題を起こしにくいように設計することに加え、 耐環境性試験や加速寿命試験の後のサンプルでの EMC試験を行なうことを考える価値があるかも知 れない。 図17: 塩化カルシウムの存在下で腐食した銅のスプリン グ・フィンガー(上)とアルミニウムのケース(下)5.5
安全関連機能と機能安全
安全に関係するコンポーネントの場合、その安全 関連機能の誤動作、特に危険をもたらし得る誤動作 の発生の可能性を低く抑えることが非常に重要と なる。イミュニティ試験で妨害への耐性を確認する ことは役に立つが、それだけで充分であるとは言え ない。 この種の電気/電子システムには機能安全の枠組 みの適用が求められるようになっており、ベースと なる機能安全規格として IEC 61508[4] が 、そして 自動車産業向けの規格として ISO 26262[5] が発行 されている。機能安全の枠組みの中での EMC の 扱いはまだ発展中であるものの、機能安全のための EMCについてのガ イド[6][7] が IET†8から発行さ れており、これは自動車用のコンポーネントに関連 しても有用となり得る。6
BCI
法
(
置換法
)
での妨害レベ
ルの変動
6.1
電流注入プローブの位置の影響
図18は、1 m のハーネス (単一のワイヤ) のロー ド ・シミュレータ側を短絡状態とした時に 、50 Ω で終端された DUT 側で観測された妨害レベル (校 正治具でのレベルに対する相対値) を示す。注入プ ローブは、DUT 側から 15 cm、45 cm、及び 75 cm の位置に置いた。 この 15 cm の時のカーブを見ると 75 MHz 付近 (そしてその 3 倍と 5 倍) の妨害レベルが著し く低 くなっているが 、これは注入プローブとロード・シ ミュレータのあいだのハーネスの電気的長さが λ/4 (そして 3/4 λ、5/4 λ) となって高インピーダンス を生じ 、妨害の注入を妨げているところである。妨 害が極度に入りにくくなる周波数は注入プローブの 位置によって変化し 、3 箇所での最大値を見れば 、 意図したレベル (0 dB) をかなり下回ってはいる部 分はあるものの、全周波数範囲である程度のレベル を得られている。注入プローブの位置を変えて試験 を繰り返すことが明示的に要求されていなかったと しても、注入プローブの位置を変えて試験を繰り返 すことは、この特性の試験結果への悪影響を低減す るために有用である。 ハーネス: 1m ロード・シミュレータ側: 短絡 DUT側: 50Ω 妨害 レベル ( dB ) 周波数 (Hz) 図18: 電流注入プローブの位置の影響†8 The Institution of Engineering and Technology. イギ
6.2
ロード・シミュレータのインピーダン
スの影響
図19は、1 m のハーネス (単一のワイヤ) のロー ド・シミュレータ側の状態を変化させた時の、50 Ω で終端された DUT 側で観測された妨害レベルを 示す。ここで妨害レベルとして示したものは、注入 プローブの位置を 15 cm、45 cm、75 cm とした時 の最大値の、校正治具でのレベルに対する相対値で ある。 ハーネスのロード・シミュレータ側を開放とした 時には低い周波数でのレベルが極度に低くなってい るが、これは低い周波数の妨害を DUT に注入する ためには妨害電流がロード・シミュレータを通って 流れなければならないためであり、ロード・シミュ レータの DUT 側の端子のグランド・プレーンに対 するインピーダンスが高い時に実際に生じ得ること である。逆に、ハーネスのロード・シミュレータ側 をグランド・プレーンに短絡した時には、低い周波 数でのレベルは高めとなっている。 ハーネスのロード・シミュレータ側を 50 Ω で終端 した時は、ハーネスが波長に対して充分に短くなる 低い周波数でのレベルは意図した通りとなっている が、50 Ω の終端はこの測定でテスト・ハーネスとし て用いたワイヤの特性インピーダンス (直径 1 mm で 300 Ω、直径 5 mm で 200 Ω 程度と推定される) よりもかなり低いことから、高い周波数でのカーブ は短絡の時と幾分似たものとなっている。ロード ・ シミュレータ側にチョーク・コイルを追加した時、中 程の周波数での大きな低下が見られたが 、これは 、 例えばロード・シミュレータが妨害の影響を受ける のを防ご うとしてチョーク・コイル (フェライト・ コア) を取り付けている時に実際に生じるかも知れ ないことである。 BCI 試験で低い周波数の妨害を適切に印加する ためにはロード・シミュレータ側のインピーダンス を低く保つことが非常に重要である。そのインピー ダンスが高い状態で試験を行なった場合、妨害が意 図したように印加されていたならば検出できていた 筈の、そして実際の使用時に大きな問題を引き起こ すかも知れない、潜在的なイミュニティ問題を見落 とすことになるかも知れない。 必要な場合、ロード・シミュレータの DUT 側の 各端子とその金属の筐体とのあいだにコンデンサを 付け、筐体をグランド・プレーンに直接接続すれば 、 ある程度以上の周波数でのインピーダンスを下げる ことができる。ISO 11452-1:2015[2] では 、デジタ ル入出力については 1 nF のコンデンサの使用が示 されており、これは 1 MHz で 160 Ω、20 MHz で は 8 Ω 程度のインピーダンスを与える。20 MHz では 0.1 nF でも 80 Ω 程度のインピーダンスが得 られ、高い周波数範囲の試験ではこの程度の容量の コンデンサでも相当の効果を期待できる。高い周波 数においてはこれをグランド・プレーンに接続する ワイヤの影響も無視できなくなるため、ロード・シ ミュレータの筐体の金属面がグランド・プレーンに 直接接触するようにし 、その筐体に上記のコンデン サを最短のリード で接続すると良いだろう。 50Ω + チョーク・コイル 開放 50Ω 短絡 妨害 レベル ( dB ) 周波数 (Hz) 図19: ロード ・シミュレータのインピーダンスの影響6.3
ハーネス長の影響
図20に示すように、ハーネス長も妨害の注入に大 きな影響を与えるので、規格で規定されたハーネス 長を厳守するとともに、ハーネスの端を適切なロー ド ・シミュレータ (あるいはその代わりとなる RF 境界) に接続し 、その位置でインピーダンスを管理 するようにすべきである。 ロード・シミュレータの先に計測器などを接続す ることは珍しくないが 、その場合もロード・シミュ レータの位置でインピーダンスを管理する必要があ り、ロード・シミュレータの位置に単なる中継ボッ クスのようなものを置いてはならない。ロード・シ ミュレータの位置でインピーダンスが適切に管理さ れていない場合、その先に接続されたケーブルや装 置も妨害の注入に直接影響を与え、試験の結果に予 期できない変動をもたらすことが予期される。!"#$%&'()*+,-#$./&.01$ 図20: ハーネス長の影響
6.4
DUT
の接地ワイヤの影響
図21は、DUT 側の 50 Ω の終端がグランド・プ レーンではなく DUT の金属の筐体とのあいだに接 続され、その筐体が接地ワイヤでグランド・プレー ンに接続されている状態を考え 、BCI 法で妨害を 印加した際に DUT に注入される電流 (あるいは 、 ハーネスの DUT 端と DUT の筐体のあいだに誘起 する電圧) を推定した結果を示す。ここでは、接地 ワイヤとして長さ 15 cm 程度の細いワイヤが用いら れた場合を想定してそのインダクタンスを 150 nH と、また比較的小さい DUT を想定して DUT の金 属の筐体とグランド・プレーンとのあいだの静電容 量を 10 pF と仮定した。また、ロード・シミュレー タ側は先の例と同様にグランド・プレーンに短絡さ れているものとし 、ハーネスの特性インピーダンス と電気的長さは前に示した実測結果に合わせるよう に設定した。 ここで、注入プローブの位置と無関係に現れる著 しいデ ィップが 130 MHz 近傍に見られるが 、ここ は 150 nH と 10 pF が並列共振して高インピーダン スを生じているところである。実際の試験でこのよ うな状況となった場合、DUT が接地されているに もかかわらず、一部の周波数で DUT のグランド ・ プレーンに対するインピーダンスが高くなり、妨害 電流の流入が妨げられることになる。 また、接地ワイヤのインダクタンスは接地ワイヤ の寸法や配置によって変動し 、DUT とグランド・プ レーンのあいだのキャパシタンスは DUT のグラン ド・プレーンに対する置き方やそのあいだの絶縁材 の誘電率によって変動するので、これらの条件の違 いによって共振周波数が変化し 、一部の周波数での 試験結果の大きな変動を引き起こす可能性がある。 1M 10M 100M 400M (0dB) (-20dB) (+10dB) 1 0.1 0.01 3 周波数 (Hz) 妨 害 レ ベ ル 45cm 図21: DUTの接地ワイヤの影響7
参考資料
[1] ECE Regulation No. 10 Revision 5,
Uni-form provisions concerning the approval of vehicles with regard to electromag-netic compatibility, United Nations, 2014, http://www.unece.org/trans/main/welcwp29.html [2] ISO 11452 series, Road vehicles – Component
test methods for electrical disturbances by nar-rowband radiated electromagnetic energy
• ISO 11452-1:2005, General and definitions,
ISO, 2005
• ISO 11452-2:2004, Absorber-lined shielded enclosure, ISO 2004
• ISO 11452-3:2001, Transverse electromag-netic mode (TEM) cell, ISO, 2001
• ISO 11452-4:2005, Bulk current injection (BCI), ISO, 2005
• ISO 11452-5:2002, Stripline, ISO, 2002 • ISO 11452-1:2015, General and definitions,
ISO, 2015
[3] FMC1278, Electromagnetic Compatibility
Spec-ification For Electrical/Electronic Components and Subsystems, Ford Motor Company, 2015,
http://www.fordemc.com/docs/requirements.htm [4] IEC 61508 series, Functional safety of
electri-cal/electronic/programmable electronic safety-related systems
[5] ISO 26262 series, Road vehicles — Functional
safety
[6] Overview of techniques and measures related to
EMC for Functional Safety, IET, 2013,
http://www.theiet.org/factfiles/emc/ [7]機能安全のための EMC の達成のための最初の 実際的なテクニック, Keith Armstrong, 佐藤 訳, 2013, http://t-sato.in.coocan.jp/emcj/ [8]バナナの皮, EMC Journal, 佐藤 訳, 2006–2013, http://t-sato.in.coocan.jp/banana/
[9] ECE Regulation No. 10.05の概要, 株式会社 e・
オータマ, 2014–2015, http://www.emc-ohtama.jp/emc/reference.html [10]アルミ電解コンデンサテクニカルノート, ニチ コン株式会社, 2008–2015, http://www.nichicon.co.jp/lib/aluminum.pdf c
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