1 2 0 1 7 年 1 月 1 1 日 日本銀行高知支店 高知県金融経済概況 【概 論】 高知県の景気は、緩やかに回復している。 前回の概況公表時(11月初旬)以降の県内景気をみると、個人消費は、労働需給 が着実に改善し、雇用者所得も緩やかな増加基調にあるもとで、底堅く推移してい る。観光客は、個人客を中心に堅調に推移している。また、公共投資、住宅投資が 増加している。 この間、企業の業況感は、6月短観で慎重化の動きがみられたあと、比較的良好 な水準を維持しつつ横ばい圏内で推移しており、高水準の企業収益が続くもとで、 設備投資も高めの水準にある。 先行きについても、企業・家計の両部門において、所得から支出への前向きの循 環が維持されるもとで、経済対策の効果も見込まれることから、緩やかに回復して いくと考えられる。もっとも、①海外経済や国際金融資本市場の動向の影響、②消 費者の根強い低価格志向の帰趨について、注視していく必要がある。 【各 論】 1.需要項目別の動向 公共投資は、増加している。 発注の動きを示す公共工事請負金額をみると、12月は一時的に前年を下回った ものの、年度初来累計でみると国による2016年度予算の早期執行の影響や県・市 町村主体工事の発注増加もあって、前年を大幅に上回って推移している(16/12月 前年比:▲9.9%、年度初来累計前年比:+17.0%)。この結果、公共工事請負金 額の年度初来累計額(12月までの累計額)は、防災関連や災害復旧関連で積極的 に公共投資が行われていた2014年度の同時期の水準を上回っている。 設備投資は、高めの水準で推移している。 2016年度の設備投資額(16/12月短観ベース)は、前年度まで2期連続で3割強 の大幅増加となった反動もあって、前年度を3割下回る計画(全産業:2015年度 +34.6%→2016年度▲30.0%)。もっとも、小売業での新規出店や製造業での能 力増強投資、人手不足に対応した省力化投資など、企業は積極的な設備投資スタ ンスを維持している。 この間、企業からみた生産設備や営業用設備(16/12月短観ベース)は、不足感 が幾分強い状態が続いている(生産・営業用設備判断D.I.<「過剰」-「不足」>、 16/9月:▲2→16/12月:▲3)。
2 個人消費は、底堅く推移している。 大型小売店1の販売動向をみると、衣料品等の販売に弱さがみられたものの、基 調としては底堅く推移している。コンビニエンスストア売上高は、新規出店効果 から、前年を上回って推移している。家電量販店販売額は、季節家電(エアコン等) を中心に、前年に比べ増加している。乗用車新車登録台数は、軽自動車で弱めの 動きが続いているものの、普通車、小型車における新型車投入効果等から、全体 としては持ち直しつつある(16/11月前年比:+7.0%)。また、旅行取扱高は、 海外旅行でテロなど海外情勢への懸念の影響が続いているものの、国内旅行は堅 調に推移している。この間、年末年始商戦は、天候に恵まれたこともあって、良 好との評価が多く聞かれている。 観光は、個人客を中心に堅調に推移している。 県内の主要観光施設への入込客数(16/11月前年比:▲8.8%<速報値>)が団 体客を中心に前年割れとなったものの、主要旅館・ホテルの宿泊客数(同:+0.1%) が概ね前年並みとなるなど、全体としては個人客を中心に堅調に推移している。 この間、外国人観光客については、クルーズ船寄港の効果などから、増加してい る。 住宅投資は、増加している。 新設住宅着工戸数は、足もと貸家や分譲の減少により前年を下回っている (16/11月前年比:▲1.6%)ものの、振れを均してみると、緩和的な金融環境の 下支えや相続税対策の影響などから増加が続いている。 2.生産 製造業の生産は、緩やかに持ち直している。 一般機械は、災害対策関連や設備投資関連向けを中心に増加している。電子部 品は、減少している。食料品は、増加している。製紙は、海外向け製品を中心に 持ち直している。窯業・土石は、国内向けを中心に弱めの動きとなっている。鉄 鋼は、全体として横ばい圏内ながら、一部機械・造船向けで弱さがみられる。 3.雇用・所得 労働需給は、着実な改善を続けている。 有効求人倍率は、上昇している(16/11月:1.14倍)。常用労働者数は、前年を 上回った(16/10月前年比:+2.5%)。この間、企業からみた雇用人員(16/12月 短観ベース)は、不足感が強い状態が続いている(雇用人員判断D.I.<「過剰」 -「不足」>、16/9月:▲19→16/12月:▲21)。 1 県内の百貨店、ショッピングセンター、スーパー。
3 雇用者所得は、緩やかな増加基調にある。 1人当りの現金給与総額は、サンプル替えの影響を除けば緩やかな上昇基調に あるとみられる(16/10月前年比:▲0.5%)。こうしたもとで、常用労働者数と 1人当りの現金給与総額の積として表される雇用者所得は、緩やかな増加基調に ある。 4.物価 消費者物価は、前年を下回った。 消費者物価(高知市、生鮮食品を除く総合)は、食料品(除く生鮮食品)など が前年を上回った一方で、ガソリンや光熱費等の下落が続いていることから、全 体では前年を下回った(16/11月前年比:▲0.3%)。 5.企業倒産 企業倒産は、低めの水準で推移している(16/12月:倒産件数1件<前年2件>、負 債総額100百万円<同92百万円>)。 6.金融 実質預金(銀行、信金、信組)は、個人預金や法人預金の増加から、前年比プラ ス基調をたどっている(16/11月末残前年比:+2.3%)。 貸出(同)は、個人向けや非金融企業向けで増加しているものの、地公体等で減 少していることから、前年を下回った(同:▲0.5%)。 貸出約定平均金利(銀行)は、低下基調をたどっている(16/11月:1.554%)。 以 上 【本文中の使用計数などの出所】 ・ 乗用車新車登録台数:四国運輸局「自動車保有台数と販売状況速報」、主要観光施設への入込客数:高知県「月別観光施設 利用実績」、新設住宅着工戸数:国土交通省「建築着工統計調査報告」、公共工事請負金額:西日本建設業保証株式会社 「高知県内の公共工事動向」、有効求人倍率など:厚生労働省「一般職業紹介状況」、完全失業率:総務省「労働力調査」、常 用労働者数・現金給与総額・雇用者所得など:高知県「毎月勤労統計調査地方調査」、消費者物価(高知市、生鮮食品を除く 総合):総務省「消費者物価指数」、企業倒産:東京商工リサーチ「倒産月報」。 ・ その他の項目は、日本銀行高知支店が個別に収集したもの。 ・ なお、利用統計は公表月によって異なる。
トピック-1 【今月のトピック】 「しんじょう君」で地産外商 ~「しんじょう君:売るキャラ」への飛躍に向けて~ 1.はじめに(問題意識) 【図表1】歴代の入賞キャラ 【図表2】須崎市のふるさと納税 【図表3】PR キャラクターの経済効果1 1 日本銀行熊本支店(くまモン:2011 年 11 月~2013 年 10 月の 2 年間の経済波及効果 1,244 億円を 年間約 622 億円と仮定)、栃木県佐野市(さのまる:2013 年 11 月~2014 年 10 月の経済波及効果)、 一般財団法人群馬経済研究所(ぐんまちゃん:2013 年度、2014 年度 2 年間の経済波及効果 33 億円 を年間約 16 億円と仮定)、静岡県浜松市(2012 年 9 月~2014 年 8 月の 2 年間の経済波及効果約 59 億円を年間約 29 億円と仮定)。 ふるさと納税額(千円) 平成 26 年度 2,007 平成 27 年度 597,433 PR キャラクター 1 年間の経済波及効果 くまモン 約 622 億円 さのまる 約 226 億円 ぐんまちゃん 約 16 億円 出世大名家康くん 約 29 億円 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年 2016 年 1 位 くまモン (熊本県) バリィさん (愛媛県) さのまる (栃木県) ぐんまちゃん (群馬県) 出世大名 家康くん (静岡県) しんじょう君 (高知県) 2 位 バリィさん (愛媛県) ちょるる (山口県) 出世大名 家康くん (静岡県) ふっかちゃん (埼玉県) みきゃん (愛媛県) はにぽん (埼玉県) 3 位 にしこくん (東京都) ぐんまちゃん (群馬県) ぐんまちゃん (群馬県) みきゃん (愛媛県) ふっかちゃん (埼玉県) チュッピー (岡山県) 4 位 与一くん (栃木県) さのまる (栃木県) ふっかちゃん (埼玉県) しんじょう君 (高知県) しんじょう君 (高知県) とち介 (栃木県) ○ しんじょう君は、2014 年と 2015 年のゆるキャラ®グランプリで 4 位となってい たが、「ゆるキャラ®グランプリ 2016」で 1 位を獲得した【図表1】。 ―― しんじょう君は、須崎市の新荘川で目撃された最後のニホンカワウソをモ チーフに作成された PR キャラクター。なお、しんじょう君が被っているの は須崎市の名物「鍋焼きラーメン」をかたどった帽子。 ○ こうした効果もあって、2015 年度(平成 27 年度)の須崎市のふるさと納税は大 きく増加し、返礼品として使用される地元の特産品の受注が増加している【図表 2】。ただし、こうした効果は、グランプリで 1 位となった他の PR キャラクター の経済効果に比べると、僅少にとどまっている【図表3】。 14 位 しんじょう君 (出所)総務省
トピック-2 2.しんじょう君の潜在的な経済効果2 【図表4】しんじょう君関連商品の波及効果 【図表5】しんじょう君による観光客増加の波及効果 2 一定の仮定を置き、平成 22 年高知県産業連関表を用いて当店にて推計したものであるため、結果 については相応の幅をもってみる必要がある。 3 日本銀行熊本支店が推計した 2 年間(2011 年 11 月~2013 年 10 月)のくまモン利用商品売上高 1,250 億円を年間 625 億円と仮定、同様にくまモンによって増加した観光客は 2 年間(同期間)で 18.8 万人であることから、年間 9.4 万人と仮定。 4 粗付加価値額とは、売上高から中間投入物の費用を差し引いたもの。 ○ 今後、しんじょう君関連商品の売上げが、グランプリ1位となった PR キャラク ターの中で最も成功しているくまモン関連商品と同程度の売上げ(年間 625 億 円3)となった場合には、その高知県への波及効果は 458 億円【図表4】と大まか に推計できる。 ○ それに加え、しんじょう君が、くまモンと同等の観光客増加(9.4 万人3)をも たらす場合には、その波及効果は 28 億円となる【図表5】。 ○ これらの効果を合計すると、しんじょう君は、潜在的に 486 億円の波及効果(粗 付加価値額4では 249 億円<県内総生産の約 1.1%に相当>)を持つとみられる。 ―― 最も経済効果が小さかったぐんまちゃんと同等の経済効果しか得られなか った場合、目に見えて県内総生産を押し上げる効果は得られない(波及効果約 16 億円<粗付加価値額では約 8 億円、県内総生産の約 0.04%>)。 関連商品売上増加(625 億円) 県内での生産誘発額 404 億円 (直接・1 次波及効果) 県内所得増による生産誘発額 55 億円 (2 次波及効果) 経済波及効果 458 億円 うち、粗付加価値額 232 億円(県内総生産の約 1.0%に相当) 観光消費の増加(25 億円) 県内での生産誘発額 23 億円 (直接・1 次波及効果) 県内所得増による生産誘発額 4 億円 (2 次波及効果) 経済波及効果 28 億円 うち、粗付加価値額 17 億円(県内総生産の約 0.1%に相当)
トピック-3 3.しんじょう君とくまモンの取り組みの違い 【図表6】ゆるキャラ®グランプリで 1 位を獲得して以降のしんじょう君とくまモン の主な取り組み ① 認知度向上に向けた PR 「くまモン」 「しんじょう君」 国内でのイベントや、大阪環状線普通電車 1 編 成の女性専用車に、車体ラッピング及び車内広 告ジャックを行うことで熊本県の PR を実施 帯屋町商店街でゆるキャラ®グランプリの優 勝パレードや奥四万十博など、県内でのイベ ント参加やテレビ出演を行ったほか、SNS を 使った情報発信を実施 上海やシンガポールなど海外のイベントに参加 したほか、アメリカの名門誌「The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)」 の PR キャラクターを紹介する記事の中で、挿絵 として使用 2017 年 3 月ハワイでイベントに参加予定 ―― なお、2015 年に台湾へのイベントに参 加したほか、2016 年はフランス・パリで 開催された「Japan EXPO」に参加 ② コラボ商品の販売 「くまモン」 「しんじょう君」 イラスト使用料無料化(1 万件以上) イラスト使用料の無料化(約 600 件) ハローキティとのコラボ商品の発売 ― 国内航空会社とコラボし、国際線機内食「AIR くまモン」の提供を実施 ― 海外ブランドとのコラボ商品を発売 ― ③ 観光 「くまモン」 「しんじょう君」 くまモンの情報や、熊本県の観光・物産情報を 発信する「くまモンスクエア」を設置 ― 観光客を呼び込むため、くまモンと写真撮影可 能なアプリの導入 ― ○ しんじょう君は、くまモンに比べ、PR 面、関連商品の開発・販売の面で、かな り後手に回っている【図表6】。 ―― くまモンは国内外で大規模な PR(世界的に有名な新聞でも紹介)、国内外 の大企業・有名企業とのコラボを進めている。一方、しんじょう君は、主と して国内へのイベント等への参加を中心に行っているほか、企業とのコラボ も現時点では限定的。 ―― こうした違いの背景としては、くまモンは県ベース、しんじょう君は須崎 市ベースでの取り組みと、予算・人員等の面で大きな格差が存在しているこ とが指摘可能(熊本県の平成 28 年度のくまモン関連予算約 200 百万円、須 崎市の平成 28 年度のしんじょう君関連予算約 7 百万円)。 (出所)独立行政法人経済産業研究所、高知新聞等
トピック-4 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (年) (体) 4.今後の課題 【図表7】ゆるキャラ®グランプリへのエントリー数 (出所)ゆるキャラ®グランプリオフィシャル HP 等 以 上 ○ ゆるキャラ®グランプリ 1 位のネームバリューは大きく、また、しんじょう君 ファンには消費意欲の旺盛な 30~50 歳台の女性が多いことを踏まえると、しん じょう君を高知県の産品、観光の切り札の1つとして活用していく価値がある。 ただし、今後も続々と人気の PR キャラクターが登場してくることを踏まえると 【図表7】、しんじょう君効果を最大化するためには、今年 1 年の取り組みが最 も重要とみられる。 ○ そのためには、以下の取り組みが重要と考えられる。 ①しんじょう君が須崎市のご当地キャラクターとしての位置付けから、高知県を 代表するキャラクター(例えば、高知県のしんじょう君あるいは高知県/須崎 のしんじょう君)になること。 ②県が高知県の産業振興・観光振興の目玉の 1 つとして、しんじょう君を活用す ること。 ③須崎市だけでなく、高知県の経済界で、しんじょう君関連商品の開発・販売、 しんじょう君が参加する内外のイベントでの高知の特産品の PR など、しんじ ょう君効果を享受できる取り組みを進めること。 「しんじょう君」