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163 PV 2. 太陽光発電の火災リスク 2.1 PV の火災事例の統計データ Fh ISE PVBrandschutzProjekt WEB 30 GW PV PV 170 PV 170 AC

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1. は じ め に 将来のエネルギー源として一翼を担うために,太陽 光発電システム(以下 PV システム)の普及拡大に期 待が寄せられていることは,2012 年 7 月から開始し た「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」後の PVシステムの導入量増加の動向からもわかる.この PVシステムの特徴をあらためて考えると,以下のよ うな点がある. ・発電設備の規模範囲が,数 kW の中規模から数 MWの大規模と幅広い. ・住宅屋根から地上置きまで設置場所,利用用途が 多様にある. ・直流および交流という,二つの電気方式を具有す る. ・屋根等に取り付けられるため構造物としての性質 を持つ. ・居住空間近くに設置されることが多い. ・設備数が多数存在する. ・広く国土に分散している. ・電気・屋根設計・施工をともなう ・多様な構成要素ならびにステークホルダーを含ん だ発電システムである PVシステムが持つ上記の特徴は,電源構成の豊富 さや新規雇用創出といったメリットを社会にもたらす 一方,ハザードをも内包している.各種構成要素から 発生するリスクとして,電気火災,電気感電,構造物 飛散,設計・施工時の人身事故などが想定される (図 1).PV システムを本格的にエネルギー源として 利用するためには,メリットをより拡張しつつ,これ らリスクに関して,個人財産および公衆安全の観点か ら許容可能なところまで低減する必要がある. 本稿ではこれらのリスクのうち,直流電気火災に注 目する.すでに欧米を中心に太陽電池と配線から生じ た直流アーク火災の事例が報告されている.直流側の アークは,一般的に発生時の遮断が難しい.さらに は,PV システム特有の性質として,光が当たる限り 発電を継続する特性があるため,PV システムで一旦 点弧した直流アークは自然消弧することなく継続して しまい,被害が拡大するリスクを有している.また, このことは火災が発生した場合にも同様に発電を継続 することを意味しており,消火時の感電等消防士の保 護の観点でもリスクを抱えている. PVの火災リスクに対して,事前の火災防止・抑止 の観点と発生後の消火活動における消防士保護の 2 点

総   説

太陽光発電の火災リスクに関して

大 関   崇

・吉 富 政 宣

††  太陽光発電システムが持つ上記の特徴は,電源構成の豊富さや新規雇用創出といったメリットを社会に もたらす一方,ハザードをも内包している.各種構成要素から発生するリスクとして,電気火災,電気感 電,構造物飛散,設計・施工時の人身事故などが想定される.太陽光発電システムを本格的にエネルギー 源として利用するためには,メリットをより拡張しつつ,これらリスクに関して,個人財産および公衆安 全の観点から許容可能なところまで低減する必要がある.本稿ではこれらのリスクのうち,直流電気火災 に注目し,事前の火災防止・抑止の観点と,発生後の消火活動における消防士保護の観点におけるリスク 等を概説することで安全工学の研究者の方々と太陽光発電システムの現状について情報共有することを目 的とする.  キーワード:太陽光発電,太陽電池,火災,感電,直流電気,消防士 † (独)産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター: 〒 305-8568 茨城県つくば市梅園 1-1-1 E-mail:[email protected] ††(有)吉富電気 PVRessQ! 名古屋支部:〒 465-0092 愛知 県名古屋市名東区社台 1-114 図 1 太陽電池のリスク

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について考慮する必要があるが,国内ではいずれも議 論が十分に進んでいない.本稿では,PV システムに 関する火災リスクおよびそれに関連する感電に関して 概説することで安全工学の研究者の方々と情報を共有 することを目的とする. 2. 太陽光発電の火災リスク 2.1 PV の火災事例の統計データ 欧州では,フランフォーファ(Fh ISE)が中心とな り「PV-Brandschutz-Projekt」のプロジェクトを開 始している1).プロジェクトの一部ワーキンググルー プは,2011 年から実施している WEB アンケート調 査(http://www.pv-brandsicherheit.de/9/)とメディ ア報道資料とを参考に,当該システムの関係者に問い 合わせをして事例を収集している.なおデータの重複 は,保険会社のデータベースにアクセスすることで回 避している.この際には後述するマンハイム保険の協 力があった.統計概要は以下のとおりである. ・調査現在,ドイツ全土で 30 GW(130 万枚の太陽 電池モジュール)が設置されている. ・約 220 件:過去 15 年の間に火災が発生した建物 において,PV が設置されており PV が燃えた・ 損傷したと確認できた件数 ・約 170 件:建物火災の要因が PV である可能性が 推測された件数  170 件の内訳:AC 側の接続 25 件,パワコン 39 件,DC 側の接続 44 件,モジュール 36 件等 ・75 件:火災の原因が PV であると断定できた件数 国内では,製品評価技術基盤機構(NITE)の事故 情報データベース上に,モジュール,パワーコンディ ショナ,接続箱を発生箇所とする事故事例が公表され ている.このうち出火まで発展したものは,モジュー ル由来のものが 3 件,パワーコンディショナ由来のも のが 2 件である.また,消費者安全法において,重大 製品事故に関する情報の公表が定められている.同公 表事例から NITE の事故情報データベースとの重複を 除くと,パワーコンディショナ由来のものが 10 件, 接続ユニット由来のものが 2 件,接続ケーブル由来の ものが 1 件,発電モニタ由来のもの 1 件が PV システ ム関連の公式火災統計ということになる.これらのう ち NITE 事故情報データベースに報告されている 2011/09/16の事例は太陽電池由来であることが推察 され,直流電気安全を考える上で示唆に富む. 一方で消防関係の統計には,事例が殆ど現れていな い.その理由の一つとして,PV システムの一部から 出火した場合においてもそれが自然鎮火する場合や機 器焼損に留まる場合は,関係者が消防署に通報する必 要を感じないことが挙げられる.またユーザーは,太 陽電池の部分焼損に気づかないことが少なくない.こ れは,システムの多くがユーザーの視野外である屋根 上に設置されていること,故障がそのまま認知に至る ほどの発電電力量低下の形に表れないことが背景にあ る.図 2 もまた,ユーザーが気づかずにいた事例で ある.このような,大規模な建物火災には至っていな いがそれに準ずるリスクを内包する事例についての統 計数の把握は進んでいない.PV システム火災の実態 を考える上ではこのような非通報事例を常に念頭に置 く必要がある. 2.2 個 別 火 災 事 例 PVの火災は,欧州・米国を中心に数多く報告され ている.Photon PV システム safety conference におい て,米国 San Jose Fire Department が発表した資料が 比較的よくまとまっている.原因は調査中のものも多 い.また DC 切断の欠如による消火の遅れや,地絡火 災の非検知などの課題が挙げられている2)(図 3). 2.2.1 太陽電池からの出火リスク 太陽電池モジュール(以後,太陽電池)から出火リ スクに関して述べる.図 4 に示すのは,2006 年の欧 州における事例である3).設置業者からの製品不良告 発を受けとめた専門誌が掲載した 2 枚の組写真は,太 陽電池からの出火が建物へと延焼する可能性の実証例 となった.発火箇所は,ジャンクションボックスと呼 ばれる太陽電池裏面の一部位である.製造時における ジャンクションボックス内のはんだ付け不良個所から 発生したアークは,ジャンクションボックス内部から 図 2 太陽電池の焼損事例

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発生時期 場所 概要 2008 年6月 Sedona, AZ 構造火災、負傷者有り アークがフェンス支柱を燃焼 DC 電線管が複数の場所で接地 AC サービスが木杭の火災により停止 2009 年2月 Los Angeles, CA UL リストにないモジュールの使用 標準を満たしていない設置方法

2009 年3月 Simi Valley BIPV Fire

バイパスダイオードの欠陥が原因の可能性 2009 年4月 Bakarsfie Id Fire モジュール及びデッキへの損傷 地絡の非検出 設置、試運転の課題 緊急時対応要因が危険レベルについて認識 不足 2009 年7月 Concord, CA 車庫火災 オーナーにより切断機が覆われており、切 断されるまでシステムは起動 2010 年4月 Greenbelt, Md 住居 PV システム、48V DC グリッド接続 システム げっ歯類による損傷及びアレイ下の残骸の 可能性

2010 年5月 San Diego, CAFresno, CA

住居 PV システムにおける住居側面のインバータ火災 DC 切断の欠陥によって、消火が遅れた 駐車場格子システム上の統合器の火災 2011 年4月 Yorba Linda, CA 新住居開発における BIPV 火災 消防隊が屋根を破壊し、コンダクターを切った   Mt Holly, NC 米国 Gypsum の屋上 PV システム 地絡火災の非検知 いくつかの統合器への火災損傷 全ての評価が終わるまで、Duke Energy の 10MW が非接続となった 図 3 米国における太陽光発電システムの火災関連事例

(出所)PV Fire-Related Case Studies, 2011 年 2 月 15 日,

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高温滴下物を噴出させ,それが桟木の一部を炭化させ た.しかしながら本例では,太陽電池が屋根葺き材を 兼ねる工法(屋根建材型)になっているため下地に延 焼したのであり,日本で最も普及割合が高い屋根置き 型,すなわち,不燃材である屋根材の上に太陽電池が 載せられる工法では,延焼可能性が低いとの考えが多 い.このことについて以下に考察を行う. ( 1 )屋根建材型の延焼可能性 第 1 回 Photon PV システム SAFETY 会議にて,屋 根建材型での内部延焼につながる可能性があった事例 が報告されている4)(図 5).この事例では,建物と 煙突が太陽電池への日射を部分的,かつ,長期間遮っ たためにセルを保護する素子(バイパスダイオード) が疲労破壊したことが,発火に寄与したと報告されて いる.屋根材と一体になった太陽電池から出火すれ ば,その下部にある野地板などの可燃物に延焼するの は自然な現象といえる.このように,屋根建材型がハ イリスク群であることは間違いないと考察できる.ま た,国内事例として,東京消防庁の発表論文があり5), 同論文の写真から屋根建材型であることがわかる.こ れは,公的に公表されている数少ない事例であるが, 火災に至った理由は明確ではない. ( 2 )屋根置き型の延焼可能性 火元となる太陽電池やその配線と野地板との間が瓦 やスレートに阻まれている屋根置き型の延焼可能性に ついて考察する.PV システムについて,新設時の状 態が変化することなく続くものと考えた場合には,確 かに延焼リスクは少ないと考えられるが,実際には, 風や小動物は小さな隙間にも異物を送り込む可能性は 低くない.図 6 に示すように,実際の PV システムに おいては,太陽電池と屋根材との間に稲わらやビニー ル紐などの可燃物が運び込まれて堆積する現象は自然 なことと考えられる. そのため,これらの可燃物に PV システムからの アークが着火するリスクが考えられる.実際に, National Fire Protection Association(NFPA) か ら 図 7 に示す火災事例の報告があり,米国で開催された幾つ かの PV システム関係学会発表者の推測によると,原 因は動物による配線の咬害であり,側方への延焼は落 ち葉による導火である可能性が高いと報告されてい る6).また,米国 UL が同様の条件下で行った実験7) (図 8)では,加えて屋根面が燃え抜けて室内火災に 至っている.このことから,屋根置き型でも室内へと 燃え広がるリスクはあるといえる. 2.2.2 機器の焼損リスク PVシステムは太陽電池以外の構成機器も存在する ため,それらの焼損リスクがある.本稿に公表できる 国内事例として,図 9 に接続箱の機器焼損例を示す. 発火のきっかけは直流正負極間のアークと考えられ る.密集した電線が持つ導火線効果によって被害が筐 体の外にまで及んでいるものの,電線管が自己消火性 であるために自然鎮火している.共著者の愛知県内に おける同業者からは,10 件以上同様の事例を聞いて いる.しかしいずれも出火後即自然鎮火していること から,消防署への通報は行われていない. 2.2.3 システムレベルでの火災リスク 米国では,大型の PV システムは火災を生じやすい とされている8).図 10 に示すのは,2009 年 4 月,カ リフォルニア州ベーカーズフィールド(Bakersfield) のスーパーマーケットの屋上,380 kW の事例である9). 発火のきっかけは,猛暑と日射によって膨張した金属 製電線管がその継手で配線を挟み込んだことによる地 絡であり,火災はそこから 200 フィート離れた 1 列の 図 4 JB からの出火(左)と桟木の炭化(右)3) 図 5 屋根建材型の火災4)

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太陽電池群に生じている. 米国では通常,太陽電池回路集合端の一極を意図的 に接地する(直流接地系).直流接地系では接地側極 と異なる側の極が地絡すると,事故電流の帰路が形成 さ れ て ア ー ク を 生 じ る. そ こ で NFPA は National Electrical Code(NEC:米国電気工事規定)において, Ground Fault Detector Interrupter(GFDI:地絡検知 遮断器)の設置を従前から義務付けている. ところが本システムでは GFDI の不感帯である接地 極側の太陽電池配線が,運用開始前から既に地絡して いた.そのため金属管部に新たに生じた地絡に対して は遮断装置が作動せず,定格数十 A の接地側太陽電 池配線に数百 A もの過電流が流入した.これが,事 故が金属管付近の小火に留まらず太陽電池までもが火 災に至った原因である. 火災につながる地絡を GFDI が検出できなかったこ とは,米国の消防と PV システム業界に大きな衝撃と 基規準不備への痛烈な反省を与え,間もなく NFPA は GFDI の不感帯を補う Arc Fault Circuit Interrupter (AFCI:アーク保護遮断器)の併置を義務付けるよう 図 6 太陽電池と瓦の間にある鳥の巣

図 7 屋根置き型の側方延焼6)

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NECの改訂が行われた. 一方の日欧では,正負極のいずれもが大地から電気 的に浮いた状態で設計施工される(直流非接地系). また,竣工時に両線の対地絶縁抵抗が厳格に検査され る.このようなシステムでは,運用開始後に,一線が 地絡する第一故障と他方の極が地絡する第二故障とい う 2 段階を経なければ,大地を通じた電流ループが形 成されることが無い.以上の理由より日欧では,米国 型の火災が生じる確率は極めて低いとの楽観的な考え が支配的であった. しかしながら,前述の米国事例と同じ年の 2009 年 6月 21 日,ドイツのヘッセン州ビュルシュタット (Bürstadt)の物流倉庫屋根上,5 MW の PV システム が多点地絡を一因として炎上した10).図 11 に火災 現場の遠景を,図 12 に要因のひとつと考えられてい る箇所の組写真を示す.以下 3 点が要因箇所に関する 所与の情報である. ①図 12 に見える凸字の部品は棟板金相互と架台と を電気的に接続する金物である.大地電位にある これら金属部は,電路と離隔される必要がある. ②太陽電池は一般に,その裏面が機械的に脆弱であ る.図 12 左上からわかるように,充電部である セルと凸型金物とが,薄いバックシート(BS) のみにて隔てられている. ③太陽電池は一般的に,3.2 ∼ 4.0 mm 厚のガラス のみを構造的支持材としているため,雪や風に よって反復性のタワミを生じる. 以上を統合すると,太陽電池の裏面とこれに近接し た金物とが擦過を繰り返すとやがて BS が裂傷し,異 なる太陽電池間で容易に電流ループを生じうることが わかる.次に本事例から導かれる論点を 3 つ示す. 一つ目の論点は,設計・施工における間違いの系統 性である.図 12 左上のようにある金物が BS を損じ 易い位置に誤って配置されている場合,同様の部位す べてに同様の誤りが存在することが多い.そのため地 絡事故は,図 12 左下・右のように,多点,かつ,広 範囲に生じる可能性が高い. 二つ目の論点は,第一出火点とは別の場所からの突 然の出火である.太陽電池は電気的負荷状態によって その出力電圧・電流が複雑に変化する性質を持つ.そ のために,当初の地絡火災箇所が鎮火して太陽電池群 の電気的接続状態が変化すると,他の地絡部位に電気 的ストレスが移動する.これが思わぬ場所からの,新 たな出火要因となる.実際この事故では,鎮火後一週 間以上を経過した 6 月 30 日にインスペクターの面前 で 2 件の小火(太陽電池焼損)が発生した.多点地絡 におけるこのような出火の連鎖性・異地点性は,欧米 の消防関係者にとって大きな課題である.最初の火災 が鎮火したのちには,電気計測と計算によって次のハ イリスク箇所を突き止めたいものだが,多点地絡を生 じている場合には無数の解を生じるために,隠れた故 障点を同定できるとは限らない.また,配線図が整備 されていないことも多く,計算法による予測をさらに 不確実にする要因となっている.このような事情か ら,火災後の PV システムにおけるリスク箇所の確認 として,欧米では赤外線カメラによる経過観察が重視 されている.しかしながら,太陽電池下部の状態が不 明であるため,赤外線観測のみではリスク箇所の特定 方法として不十分である.そのため,欧州では,危険 図 9 接続箱(上)とその端子台(下) 図 10 直流接地系での火災9)

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兆候の見逃しを減らすために,電気検査と赤外線観測 を連携的に行うことはもちろん,その予防原則思想を 背景に太陽電池同士をつなぐ全てのコネクタを外すこ とも行われている. 三つ目の論点は,最初の出火元が PV システムでな くとも,出火した建物に PV システムがありさえすれ ば,その直流電路が新たな火元になりうるということ である.火災でダメージを受けた直流電路は無数の地 絡点を形成するからである.この傾向は太陽電池が金 属屋根に設置されている場合にさらに顕著となりう る.また昨今,FRP 製の架台やポリタンク製の架台 用重量基礎が商品化されている.これら樹脂の燃焼性 も都市防火の観点から評価されないとならない. 2.3 既存の火災対策技術とその課題 火災対策は,個別事象に単体機器で処するという, 一対一対応の技術方式で対応出来るとは限らないこと がこれまでの事例で分かる.火災はシステマティック に生じているのであるから,自ずとその対処にもシス テマティックな技術方法が求められる. 一例として,太陽電池モジュールや太陽電池ストリ ングへの逆電流とその対策の現状を挙げる.太陽光発 電システムは所定の電圧を作り出すために太陽電池モ ジュールを直列にしたストリングを作成しこれを並列 にすることで容量を増やす構成となっているが,並列 部に動作電圧のインバランスを生じると,低電圧側ス トリングに高電圧側ストリングからの電流が逆流する (図 13). これを防止するため日本では,各ストリングにブ ロッキングダイオードを挿入する.ところで半導体と してのダイオードには開放と短絡という 2 つの故障 モードがある.開放モード故障の場合は回路が遮断さ れるために低電圧側ストリングは保護される.しかし もうひとつの故障モード,即ち,短絡モード故障を生 じた場合には,逆電流を防ぐことが出来ずに太陽電池 図 11 直流非接地系での火災現場の遠景10) 図 12 金物との接近(左上)と地絡(左下・右)10)

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が焼損する恐れがある.しかもダイオードの一般的故 障モードは短絡モードであり,フェイルセーフ側では ない.このようなダイオード自体の特性に加え,熱設 計不良とみられるダイオードの故障事例報告がドイツ から提出されたことで,欧米ではブロッキングダイ オードを用いた逆電流対策は忌避されており一般的で はない. 欧米では逆電流保護のためにヒューズが用いられ る.しかしながらヒューズは事故電流が過大なときに しか遮断動作せず,本質的に,他の並列ストリングか らの逆電流を防ぐことが出来ない.そのため,事故電 流がヒューズの遮断閾値よりも小さい場合には,高電 圧側ストリングが低電圧側ストリングの事故点に事故 電流を継続的に供給する恐れを残す.このようにブ ロッキングダイオードとヒューズにはそれぞれに得失 がある.そのため,Commission(IEC:国際電気標 準会議)でも議論が続けられている. その他,アークの発生を発見する AFCI などがある. これはコネクタ抜けなどによって発生する直列アーク を検出する機器であり,アーク発生時の周波数の乱れ を検知する方式などが検討されている. しかし,アークの発生要因は多様であり,検知後に どのように事故電流を遮断するかの検討は未だ十分で ない.例えば,コネクタ抜けによるアークでは集電箱 の位置で各ストリングの電路を開放すればアークを遮 断できるが,この方法では集電箱よりも太陽電池側で 生じた多重地絡アークを遮断することは出来ない.こ のように,既往技術ではカバーしきれない事故モード が存在する. 3.  太陽光発電の火災における消火活動時の感電 リスク PVシステムの火災発生時における消火活動におけ る感電リスクに関して考察を行う.PV システムの直 流部は,陽が当たる限り発電を続ける.この性質は施 工者・電気検査者といった納入関係者と,消防隊員・ 火災調査者といった防災関係者の双方に感電リスクを 与えている.システムが正常に動作している限りその 感電危険個所は予測可能であり,納入関係者のリスク は制御可能である.一方,防災関係者は事故によって 電気的な状態が変化した後の,予測不可能な電気的状 態にある現場に向き合うことになる.そのため,防災 関係者は納入関係者以上に感電リスクが高くなる. 3.1 消火活動時における感電の二分類 消防隊員に関係する感電は,死傷レベル感電とそれ 以外の感電とに大別することができ,それぞれ生理学 的意味とリスクの性質が異なる.一般に感電事故とい えば,皮膚経由の感電であるマクロショックのうち, ジュール熱由来の火傷や 50 mA・sec 程度の交流電流 が引き起こす心室細動といった死傷レベルの感電を指 す.このような,電流によって直接死に至る感電につ いては IEC60479-111)において戦前からの人体実験の 成果が集約されている.同文献のグラフから直流は, 150 mA・sec 程度という,交流よりも安全側の心室細 図 13 ブロッキングダイオードとヒューズの関係

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動閾値を持つことが読み取れる.ただしこの値は脈動 の無い純直流を前提とした値であり,日射に応じて電 圧・電流が刻々と変化する PV システムには必ずしも 当てはまらない.よって,消防の行動方針を定める上 では,厳格側の交流閾値を採用するべきかの議論が必 要である. 他方,オーストラリアニュージーランド規格12)で は,知覚レベル・不随意レベルの感電についても,不 意の電撃に驚き体勢を崩した作業者は高所から滑落す る恐れがあるため,注意喚起がされている. なお,皮膚を介さずに生じる死傷レベル感電である ミクロショックは,マクロショックと区別されなけれ ばならない.100 µA 程度を閾値とするミクロショッ クは,たとえば心臓カテーテルを電路として医療行為 中に生じうるものであり,消火活動中に生じうるもの ではないためである. 3.2 消火活動時の感電危険個所 PVシステムは,交流電路を開放しても活線のまま であるため,感電危険個所は,太陽電池アレイ∼接続 箱∼ PCS の 3 機器 2 区間,即ち直流電路(図 14)と なる.ただし,接続箱∼ PCS の区間は,接続箱内の 開閉器を手動開放することで非充電状態となる.その ため,消火活動前に交流遮断・接続箱直流開閉器開放 の 2 操作を行うことが,消防隊員の感電リスクを低減 するための原則だと言えるが,接続箱は,その開扉に 鍵を必要としたり,アクセス困難な天井裏に設置され ていたりといった状況であり,その原則遵守は実際に は容易ではない. 室内からの人命救出や室内消火活動の際には,太陽 電池アレイ∼接続箱の配線場所を見極める必要があ る.直流の配線経路には図 14 に示すように,屋外配 線と屋内配線の 2 種類がある.屋外配線の場合には室 内活動での電撃受傷リスクは著しく低減される.とこ ろが屋内配線の場合には,絶縁被覆を焼失した電線か ら電撃を受ける恐れが高い.欧米の PV システム業界 と消防は,二つの配線経路の違いを強調している. また,屋根上の消火活動の際には,太陽電池への接 触感電と,ロータリーソーや鳶口といった金属製消火 道具や放水を介した間接的感電が問題になる.さら に,体勢が不安定な傾斜屋根では,死傷レベル感電の みならず,知覚レベル・不随意レベル感電による驚き からの滑落危険がこれに加わる. 3.3 消火活動時の感電リスク低減対策 消防用の人工照明灯や火炎の明るさによっても太陽 電池は発電するため,昼間のみならず夜間でも消防隊 員が感電する可能性がある.そこでドイツのミュンヘ ン消防や米国 UL 7),遮光シートや泡消火剤による光 遮蔽の研究を行っている(図 15). しかし,いずれ の方法にも課題を残している.遮光シートは作業性に 問題があり,大面積を有する事業用 PV システムには 実施性を欠く.また泡消火剤は,太陽電池のガラス面 を流下してしまう. この結果に対し,UL は一層の研究が必要と結論し, ドイツのマスコミは悲観論を提出している.感電危険 源の除去は困難であることが判明した現在,欧米の消 防は,暫定的に次の感電防止策,また,PV システム 所有者に対する規制案を提案している. ・消防隊員の防具:手袋や靴等の防具に電気絶縁性 を持たせる. ・消火開始前に活線区間を最小化する:より太陽電 池アレイに近い位置での直流電路開放. ・放水ルール策定:スプレーとフルウォーターそれ 図 14 屋外配線と屋内配線

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ぞれの近接可能距離の算出とルール化. ・PV システム存在掲示:建物に PV システムの標 識を掲示. ・配線経路情報:消防への配線図提出. また国内においても,消防研究センターでの研究成 果をもとに PV システムが設置されている一般住宅の 消防活動への留意事項として,消防庁消防・救急課よ り消防活動時のリスクに関して情報発信をしてい る13). 4. お わ り に 欧米の事例と研究を挙げつつ PV システム特有の火 災発生特性と感電リスクを紹介したが,これまで収集 された情報は,火災予防と円滑な消火法開発にとって 十分とは言えない.火災予防的見地では,PV システ ムの火災事例を原因まで遡った状態で掌握する必要が あるが,当事者は利害関係者からの報復を恐れるた め,状況聴取と公表がしばしば難航する.このような 事情から本稿では国内例を一例しか紹介できなかっ た.外国の重大事故調査方法に倣い,関係者免責や告 発者顕彰の制度を発足することも対策として検討する 価値がある. また,太陽電池単体から生じる火災メカニズムは電 気研究者の間で知られつつあるものの,PV システム を構成する,各機器の相互作用から生じる火災メカニ ズムは未だ十分に解明されていない.これを受けて, 国内では,平成 24 年度より新エネルギー等共通基盤 促進事業において「太陽光発電システムの直流電気安 全性に関する基盤整備」というプロジェクトを立ち上 げた.参画機関は,産総研,関電工,JX 日鉱日石エ ネルギー,日本電機工業会,みずほ情報総研(平成 25年度より)の 5 機関である.平成 26 年度までの 3 年間を予定するこのプロジェクトでは,国内外の調査 および実証実験をベースにリスクアナリシスを行い, PVシステムの直流電気安全に関するガイドラインを 策定することを目標としている.今後関係機関の方々 にはご協力をお願いしたい. PVシステムのメリットだけを全面に押し出して推 進するのではなく,真正面から各種リスクに立ち向か い解決していくことが必要不可欠である.特に PV シ ステムは多数の技術分野に支えられているため,分野 の異なる専門家同士の積極的な情報交換が事故対策進 展の鍵となる.さらには本稿では直流電気安全の火災 リスクについて特化して執筆した.PV システムのリ スクはこれ以外にも存在する.安全工学の研究者の 方々が PV システムの安全性に関してご参画頂けるな ら大変心強く,本稿がそのきっかけになれば幸いであ る. 参 考 文 献

1)   H. Laukamp, G. Bopp, R. Grab, H. Häberlin, B. v. Heeckeren, S. Phillip, F. Reil, H. Schmidt, A. Sepanski, H. Thiem, W. Vaaßen, PV systems - a fire hazard? - Myths and facts from German experience , pp3862-3867, Proceedings of 27th European Photovoltaic Solar Energy Conference and Exhibition (2012)

2)   Matthew Paiss, PV Fire Safety Milestones: Progress Repor t , Presentation of Photon's 3rd PV Safety Conference (2012)

3)   Photon International, A burning problem , pp.14-16 (Aug.2006)

4)   Matthew Paiss, Fire Captain PV Fire ‐ Related Case Studies , Presentation of Photon 1st PV Safety Conference (2011)

5)   小室修 , 住宅用太陽光発電システムが設置された建物 火災の消防活動について , 第 59 回全国消防技術者会 議資料(平成 23 年 10 月), pp127-131 (2011) 6)   Casey C. Grant, P.E., Fire Fighter Safety and Emergency

Response for Solar Power Systems - Final Report- (May 2010)

7)   Robert Backstrom, David A. Dini, P.E., Firefighter Safety and Photovoltaic Installations Research Project (Nov. 2011)

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8)   Solar ABCs, A Safety Concern for Larger Photovoltaic systems in the United States (2012)

9)   Bill Brooks, The Ground-Fault Protection BLIND SPOT: A Safety Concern for Larger Photovoltaic Systems in the United States , A Solar ABCs White Paper (Jan. 2012)

10)   BP Solar gibt erste Erkenntnisse zur Brandursache des Sonnenfleck -Solardachs in Bürstadt bekannt (Aug. 2009)

11)   IEC60479-1(邦訳:TSC0023-1:2009 人間及び家畜に 関する電流の影響 - 第 1 部:一般分野)

12)   AS/NZS 5033, Installation of photovoltaic (PV) arrays (2005) 13)   消防庁消防・救急課 , 消防庁消防研究センター , 事務 連絡 平成 25 年 3 月 26 日 太陽光発電システムを設置し た一般住宅の火災における消防活動上の留意点等につ いて (Mar. 2013) 特定非営利活動法人 

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図 8 UL の実験(左)と小屋裏への燃え抜け(右) 7)
図 15 シート(左)や泡(右)による遮光実験 7)

参照

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