業種:情報・通信業 アナリスト:馬目 俊一郎 +81 (0)3-3239-2930 [email protected]
インターネット調査の大手、大規模モニター調査が強み
◆ インターネット調査の大手 ・当社はインターネットを利用した市場調査をコア事業に、それに付随する分 析・集計業務、レポート販売などの周辺サービスを提供する。 ・インターネット調査は、従来の調査手法に比べスピードとコスト、スケールの面 で優れており、市場調査市場(1,672 億円)の 24%の規模まで拡大している。 ・当社の市場調査業界でのポジションは業界 3 位ながらインターネット調査領域 では 2 位の実力。(1 位はマクロミル) ・大手ライバル企業は、M&A や大手ポータルとの提携等によって規模の拡大を 図っている。当社も楽天リサーチなどとの提携によって業界内での地位の強 化を目指している。 ◆ 大規模モニターに強み ・当社は市場調査業界では後発組ながら、業務提携先モニターの相互利用と 大手広告会社などの資本・業務提携によってノウハウを蓄積し成長してきた。 ・当社の強みはアンケート画面のカスタマイズ能力とインターネット調査に不可 欠な大規模モニターを駆使した大型案件への対応力。 ・売上は、広告会社や調査会社向けの間接販売と一般事業会社向けの直接 販売に分かれ、現在は、間接販売が約 70%だが、直接販売を強化。 ・景気変動に左右されやすい市場調査業界では、企業向け直接販売の営業 強化により、景気に左右され難い強い収益体質を目指す。 ◆ 2012 年 12 月期は先行投資一巡で来期以降の収益性変化に期待 ・2011 年 12 月期は直接販売の拡大で増収が見込まれるものの、先行投資負 担増で利益成長は小幅にとどまる見通し。また震災後の企業のコスト削減など を考えると、売上は 40 億円(対前期比+13.9%)、営業利益は 4.26 億円(同 +5.4%)と会社計画を若干下回るものと予想する。 ・しかしながら、2012 年 12 月期は投資一巡と増収効果で売上の伸びを上回る 利益成長が期待できる。2014 年 12 月期には、売上 52.2 億円、営業利益 6.74 億円を予想する。 ◆ 適正株価レンジは 1,850 円から 1,970 円を想定 ・当社はリーマンショックの 2008 年 10 月に東証マザーズ上場。昨年 2 月の安 値から株価が大きく上昇し、上場来パフォーマンスは 33.7%と好調。 ・現在の株価バリュエーションは 2011 年 12 月期の担当アナリスト予想 PER で 16.3 倍。予想 PER を 15~16 倍と考えると、2014 年 12 月期の予想 EPS123.37 円から想定される適正株価レンジは 1,850 円から 1,970 円。 ・当社は株主還元策として配当性向を中期的に 20%へ高める方針。現状の配 当利回り(0.56%)は低いが、今後は利益の伸びと配当性向の上昇により、継 続的な増配も期待できる。 ・流動株比率が少なく流動性が低いため、創業者の持ち株と自己株式を利用 して株主数を増やせるかが課題。クロス・マーケティング (3629 東証マザーズ)
【主要指標】 株価(円) 1,250 発行済株式数 3,057,000 時価総額(百万円) 3,821 上場日 2008/10/28 上場来パフォーマンス 33.7% 前期 今期 PER(倍) 13.4 16.3 PBR(倍) 1.9 2.3 配当利回り 0.6% 0.6% σ β値 リスク指標 65.4% 1.60 【主要 KPI(業績指標)】 前々期末 (2009/12) 前期末 (2010/12) 取引社数 926 社 1,186 社 【株価パフォーマンス】 1 ヶ月 3 ヶ月 12 ヶ月 リターン(%) -6.0 13.6 163.2 対 TOPIX(%) -3.5 21.0 171.2 *用語の説明は最終頁をご覧ください 調査方法:企業訪問 > 要旨 > 投資判断 証券リサーチセンター 審査委員会審査済 20110617-2クロス・マーケティング (3629 東証マザーズ)
(単位:百万円) 2009/12 期 実績 2010/12 期 実績 2011/12 期 会社予想 2011/12 期 予想 2012/12 期 予想 2013/12 期 予想 2014/12 期 予想 売上高 2,761 3,483 4,300 3,966 4,382 4,862 5,220 前年比 2.4% 26.2% 23.5% 13.9% 10.5% 11.0% 7.4% 営業利益 232 404 445 426 510 568 674 前年比 -41.4% 74.3% 10.1% 5.4% 19.7% 11.4% 18.7% 税引き前利益 253 408 451 431 515 573 679 前年比 -35.7% 61.2% 10.5% 5.6% 19.5% 11.3% 18.5% 当期純利益 151 221 249 233 285 318 375 前年比 -26.5% 45.8% 12.7% 5.4% 22.3% 11.6% 17.9% 期末株主資本 1,337 1,479 - 1,671 1,936 2,225 2,559 発行済株式数 3,178,100 3,197,500 3,205,600 3,205,600 3,205,600 3,205,600 3,205,600 EPS 47.74 69.82 81.68 76.44 93.76 104.62 123.37 配当 0.00 5.50 7.00 7.00 10.00 14.00 20.00 BPS 420.90 484.04 - 548.17 636.93 732.00 841.89 ROE 12.0% 15.7% - 14.8% 15.8% 15.3% 15.7% 株価 314 939 1,250 1,250 - - -PER 6.6 13.4 15.3 16.3 13.3 11.9 10.1 配当利回り 0.0% 0.6% 0.6% 0.6% 0.8% 1.1% 1.6% PBR 0.7 1.9 - 2.3 2.0 1.7 1.5 > 収益モデル > 株価パフォーマンス (注)将来予想における PER、配当利回り、PBR は、レポート作成時の株価を用いて算出。 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 9 / 0 6 / 0 8 9 / 0 6 / 2 9 9 / 0 7 / 2 0 9 / 0 8 / 1 0 9 / 0 8 / 3 1 9 / 0 9 / 2 1 9 / 1 0 / 1 2 9 / 1 1 / 0 2 9 / 1 1 / 2 3 9 / 1 2 / 1 4 0 / 0 1 / 0 4 0 / 0 1 / 2 5 0 / 0 2 / 1 5 0 / 0 3 / 0 8 0 / 0 3 / 2 9 0 / 0 4 / 1 9 0 / 0 5 / 1 0 0 / 0 5 / 3 1 0 / 0 6 / 2 1 0 / 0 7 / 1 2 0 / 0 8 / 0 2 0 / 0 8 / 2 3 0 / 0 9 / 1 3 0 / 1 0 / 0 4 0 / 1 0 / 2 5 0 / 1 1 / 1 5 0 / 1 2 / 0 6 0 / 1 2 / 2 7 1 / 0 1 / 1 7 1 / 0 2 / 0 7 1 / 0 2 / 2 8 1 / 0 3 / 2 1 1 / 0 4 / 1 1 1 / 0 5 / 0 2 1 / 0 5 / 2 3 円 13週移動平均 26週移動平均当社はインターネットを利用した市場調査をコアに、それに付随する 分析・集計業務、レポート販売などのサービスを提供している。グル ープ会社はグループインタビューなどの会場調査を行うリサーチア ンドサーベイ(100%子会社)、IT 業界調査を主力とするイーシーリ サーチ(100%子会社)、140 万人の大規模モニターを擁するリサーチ パネル(40%持分)などがある。 当社の最終顧客は、一般事業会社や公共機関だが、受注形態や経路に よって、広告会社や調査会社向けの間接販売と一般事業会社向けの直 接販売に分かれる。2010 年 12 月期の売上高構成比では、間接販売が 約 70%、直接販売は約 30%。しかし、最近の売上高傾向を見ると、 業界内での認知度アップやサービス領域の拡充とともに直接販売の 伸びが顕著になっており、当社の成長ドライバーとしての期待が高ま っている。 当社の特徴としては、アンケート画面のカスタマイズ能力や大規模モ ニターを駆使した大型案件への対応力が挙げられる。独自のシステム によって定量的・定性的な調査を実施し、個々の顧客のマーケティン グ課題の解決をサポートする。調査モニターは自社のリサーチパネル に加えて、業務提携先との相互利用によって1,000 万人規模の大型調 査にも対応可能。更にグループインタビューなどの対面調査やレポー ト販売も手掛けるなど、当社は市場調査に関するワンストップサービ スを提供している。
会社の概要
案件ごとのカスタマイズ能力 と大規模モニターに強み。>
事業内容
0 10 20 30 40 50 04.12 06.12 08.12 10.12 0 1 2 3 4 5 間接販売(左目盛) 直接販売(左目盛) 経常利益(右目盛) 期 億円 億円 <当社の業績推移> 当社の事業モデル (会社公表資料より)当社の経営陣は、代表取締役社長の五十嵐氏以下 5 名の取締役で構成 されている。社外取締役の選任されておらず、3 名の社外監査役が監 視機能を担うガバナンス体制。経営陣のうち、社長とシステム開発担 当の 2 名が創業当時からのメンバーで、他の取締役は金融機関出身と マーケティング会社出身という構成である。 五十嵐社長は、創業オーナー社長であり、当社の意思決定は社長のリ ーダーシップのもとで決定されている。したがって名実ともに、自性 が保たれていると考えられる。 当社の株主構成は、社長の五十嵐氏が近親者も含め 50.65%(直接所 有分 45.93%、合算対象分 4.72%)と支配株主であるため、同族会社 になる。また資本・業務提携先の EC ナビが 13.45%、電通(東証 4324) グループとビデオリサーチがそれぞれ 2.50%を保有する。自己株式は 6.30%保有しているが、その活用方法等は公表されていない。 2010 年 12 月末の株主数は 656 名と時価総額に比して少ない。もとも と流動株が少ない中で、自社株買いなどを実施したため、上場以来株 主数が減少している。一日の出来高が、1,000 株を割る日も多く、流 動性向上の施策が必要と考えられる。 五十嵐幹 43.2% EC ナビ 13.5% 電通リサーチ 2.5% ビデオリサーチ 2.5% 金融機関 1.0% 外国人 0.9% 自己株式 6.3% 当社は 2003 年 4 月にインターネットを用いたリサーチ事業を目的に 設立され、同年 10 月には EC ナビとアンケートモニターの募集で業務 提携。2006 年 5 月に EC ナビと資本提携し、合弁でリサーチパネル(当 社持分 40%)を設立した。また、2007 年 3 月には電通グループ及び ビデオリサーチと資本・業務提携を行い、2008 年 9 月にクレディセゾ ン(東証 8253)、リサーチパネルと提携し、インターネットリサーチ サービス「永久不滅リサーチ」を開始した。 2008 年 10 月に東証マザーズに上場し、2009 年 4 月にはサイボウズ(東 証 4776)から調査レポートの企画・販売部門を譲受け、同年 5 月には 会場調査主力のリサーチアンドサーベイを、同年 7 月にはソフトバン ク(東証 9984)グループから IT 関連調査主体のイーシーリサーチを 買収している。また、業務提携に関しては、スパイア(JASDAQ4309)、 ネットスマイルとはモニターの相互利用を、ネットエイジアとモバイ ルリサーチとは資本・業務提携、楽天(JASDAQ4755)グループともモ ニターの相互利用などで提携している。 当社の経営理念は「事業創造」であり、ネットリサーチ事業の周辺の 新しいサービスの開発、さらにネットリサーチ以外の新たなビジネス モデルの創造を目指す。そのために、社員には、①ポジティブネス、 ②イマジネーション、③リーダーシップ、以上 3 つの価値観の共有を 徹底している。
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株主構成
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沿革・企業理念
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経営陣
社長が実質的に株式の過半 数を握り、電通グループやビ デオリサーチとも良好な関係 を維持。 2010 年 12 月末時点 自己株式は 2011 年 3 月末時点0 500 1000 1500 2000 07 08 09 その他 アドホック・既存手法 アドホック・ネット調査 パネル調査 年 億円 0% 20% 40% 60% 80% 100% 03 04 05 06 07 08 09 訪問 郵送 会場 インターネット 質的調査 パネル調査 その他 年 ◆ 市場調査の中でシェアを伸ばすインターネット調査 市場調査業界の特徴としては、①景気動向に左右されること、②イン ターネット調査の構成比の拡大、などが挙げられる。当社が属する日 本マーケティング・リサーチ協会(以下 JMRA)が 2010 年に行った経 営業務実態調査(正会員 149 社対象:回答 128 社)によると、2009 年 の市場調査業界の市場規模はリーマンショックの影響で前年比 5.3% 減の 1,672 億円、インターネット調査市場も同 2.4%減の 394 億円で あった推計されている。 市場調査業界は、広告業界各社、一般企業及び官公庁などを顧客に、 新製品開発や市場調査などの幅広いニーズに支えられている。しかし、 広告系の市場調査は景気動向に左右されやく、価格下落圧力も高まっ ており、これが 2009 年の市場規模を押し下げた要因と考えられる。 JMRA 会員の調査手法別売上高構成比を見ると、従来型手法である訪問 面接や郵送に代わり、インターネット調査のウェイトが増加している。 その構成比は 2003 年の 8.3%から 2009 年には 19.9%まで上昇し、今 後もこの傾向は続くと予想される。インターネット調査は、モニター の回答自体がデジタル化されているため、データ加工や分析が容易で 調査結果が早く得られる。また、郵送費や調査員費などのコストがか からず、調査費用を低く抑えられ、数 10 万人から数 100 万人規模の 大型案件にも比較的短期間で対応可能である。したがって、モニター 数の確保と調査・分析のシステムを自前で構築することが重要である。 ◆ 大手ライバル企業は M&A によって業容規模を拡大 JMRA 経営業務実態調査によると、売上高 10 億円未満の会員企業は約 80%を占めている。当社の競合大手企業は、業界トップでパネル調査 (継続調査)に強みを持つインテージ(東証 4326)、業界 2 位でイン ターネット調査首位のマクロミル(東証 3730)などがある。当社は業 界 3 位で、インターネット調査では 2 位と推定される。 景気停滞で市場調査市場全体が伸び悩むなか、成長分野のインターネ ット調査を軸に業界再編の動きが加速している。インテージは、ヤフ ーとの合弁会社(インテージ・インタラクティブ)を完全子会社化し、 インターネット調査を強化。マクロミルはヤフーへの第三者割当増資 と、ヤフーグループ会社(ヤフーバリューインサイト)を株式交換に より買収し、ヤフーが筆頭株主となった。 競合上位が M&A などでインターネット調査を強化するなか、当社も大 規模モニター構築のため、これまで提携関係にあった 2 社(スパイア、 ネットマイル)に加え、新たに楽天リサーチとの業務提携で実施し、 モニターの相互利用を可能としている。
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業界環境・競合他社
事業環境
<会員企業の調査手法別売上構成比推移> <国内マーケティング・リサーチ市場規模> インターネット調査は大手へ の集約が進み、大規模モニ ターの構築が競争力を左右 することになりそうだ。 (出所)日本マーケティング・リサーチ協会 (出所)日本マーケティング・リサーチ協会0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 03/12 05/12 07/12 09/12 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 売上高(左目盛) 取引社数(右目盛) (百万円) (社) 出所)会社資料より 当社のビジネスサイクルは、案件の規模や種類によって異なる。間接 販売(広告代理店・調査会社向け売上高)ではインターネットによる アドホック調査(単発調査)が大部分を占めるため、契約は単発で、 かつ実施期間は数日から数週間程度と短いものが多い。しかし、間接 販売においては、大手顧客との取引が継続的に行われることが多く、 いわゆる取引業者としての地位は安定的な受注確保につながる。 ただし、アドホック調査市場は景気動向に左右される。また景気動向 によっては価格競争も厳しくなることが想定され、収益性が悪化する リスクが考えられる。 一方、直接販売(一般企業向け)は、広告系と開発系に分かれる。広 告系は間接販売のアドホック調査と同様、単発で短いものと想定され る。開発系は、新製品のコンセプト開発からポテンシャル評価、市場 投入後の検証や消費者調査など広範囲に及ぶため、長期間の継続調査 が不可欠で、受注期間は数か月から数年に及ぶ。また、開発系は、景 気動向に左右されにくく単価の下落圧力も限定的と考えられる。 このように、当社のビジネスモデルは、長期安定的ではないものの、 顧客との継続的な取引によって、比較的継続性のある受注の確保が可 能であり、そのためには、人とシステム構築が必要であり、さらに実 績と信用の積み重ねが安定した事業基盤の構築につながる。 拡大するインターネット調査市場においては、規模の拡大と大規模モ ニターの構築が業界内での優位性を左右すると考えられる。今後も上 位企業を核に強固な会員組織を持つポータルサイトなどとの業務提 携や、業界再編の動きが予想される。 当社の将来業績を予測するための KPI(事業指標)としては、取引社 数の推移が挙げられる。これまで、売上高と取引社数には一定の相関 関係が見られる。特に、直接販売を伸ばすことを狙う当社にとって、 取引社数の積み上げは重要である。 月次ベースの売上高や取引社数は開示されないものの、決算期の説明 会では顧客別(直接販売、間接販売)の売上高、取引社数などが公表 されている。個々の顧客との取引に濃淡はあるものの、成長過程にお ける取引のアカウント数の増減は成長ポテンシャルを図る上で有益 な指標となろう。
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ビジネスサイクル
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KPI(業績指標)
<売上高と取引社数の推移>現状の戦略は、提案営業強化による直接販売の拡大である。当社は設 立当初から、インターネット調査の優位性を確立すべくモニターの確 保を進めるとともに、大手広告代理店や調査会社との資本・業務提携 により、モニターの確保と調査ノウハウの積み上げを図ってきた。そ の結果、代理店等を通じた間接販売を主体に売上を伸ばすことができ た。しかし、間接販売は、景気変動や価格競争の影響を受けやすい。 そこで当社は、受注量や価格がより安定している直接販売の強化に力 を入れている。顧客企業の商品開発やブランド構築等に関わる市場調 査は、契約が長期に渡るため、安定した売上が見込める。また、顧客 毎にカスタマイズしたサービスが多いため、価格下落のリスクが小さ い。したがって、業績面へのプラス効果が期待できる。 しかし、直接販売を伸ばすには課題も多い。第一に、直接顧客を獲得 するには、提案力が求められ、営業担当者の数を確保する必要がある。 これは固定費の増加につながる。第二に、調査や分析に関して高度な 提案が求められるため、優秀なリサーチャーを確保する必要がある。 これら課題の早期克服が、利益成長への条件と考えられる。 中長期の戦略としては、海外展開が考えられる。国内の消費低迷が続 くなか、消費関連の顧客企業のなかには海外展開で活路を見出そうと する企業も見受けられ、今後は海外市場の調査案件に対するニーズも 増えることが見込まれる。現在当社は、海外の市場調査については、 海外調査機関に委託をしている。 しかし、コストや日本企業向けのきめ細かいサービス提供には、独自 の調査体制を整備することが必要であろう。そのためには、M&A な ども選択肢として考えられる。 当社は市場調査業界で後発組ながら、インターネット調査に不可欠な 大規模モニターを業務提携先との相互利用を活用しながら構築して、 業界内でのプレゼンスを高めて来たことは高く評価できる。こうした 提携先との関係を維持しつつ、直接販売を増やすことは、一定のリス クも伴うが、大手のライバルが規模の拡大を狙った戦略を打ち出して いる以上、独自の成長戦略を考えることが重要になる。 今後の注目点は、直接販売拡大に向けた強化策の進捗である。中でも 商品開発系の契約は長期間のものも多く、収益への寄与も大きいと想 定されるため、顧客のニーズを捉えたサービスの提供により、受注を 積み上げることができるかが注目される。
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現状の課題と戦略
経営戦略
直接販売強化で景気動向に 左右され難い収益体質を目 指す。>
中長期の課題と戦略
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アナリストの戦略評価
広告大手や調査大手との資 本・業務提携で調査ノウハ ウを蓄積。◆ SWOT 分析 強み (Strength) ・自社モニター(持分適用リサーチパネル)に加え、業 務提携によるモニター相互利用で1,000 万人規模の大 規模調査に対応可能 ・インターネットによる大規模な定量調査からグループ インタビューなど対面による定性調査までワンスト ップ体制を構築 ・アンケート手法のカスタマイズ力と運用ノウハウ 弱み (Weakness) ・間接販売が多いため、景気変動の影響を受けやすく、 また価格決定力が弱い ・ネットによる単純な定量調査は、過当競争により価格 競争に陥りやすい ビジネス機会 (Opportunity) ・市場調査業界における、インターネットによる調査拡 大の流れ ・市場調査業界の再編・集約などにより、業界上位企業 のシェアは拡大 脅威 (Threat) ・資本・業務提携にある電通グループ向け売上高が全体 の18.7%(2010 年 12 月期)を占め、電通グループと の提携解消は事業リスクを高める ・自社モニターは持分法適用会社であるリサーチパネル のモニターを利用しているため、その親会社(EC ナ ビ)との提携解消は高いリスク ・直接販売を高めると、間接販売の顧客である広告代理 店等との連携が希薄になる虞がある。特に電通グルー プ向け売上の低下はリスクと考えられる。 ◆ 業者内競争 インターネット調査を扱う事業者は100 社超と推定される。成長市場 でもあることから、業界内競争も厳しいが、大手企業からの受注には 大規模モニターの有無がその優劣を左右する。当社は、自社モニター に加え、業務提携によりモニター相互利用ができることから、業界内 で大きなアドバンテージを有しているものと考える。 ◆ 新規参入の脅威 インターネット調査市場は新しい事業領域であり、技術的にも困難で ないことから、参入障壁は低い。しかし、モニターの確保が重要であ り、大規模な会員組織を持つポータルサイトや会員サイトによって、 業界再編が進み、業界の上位業者による色分けはできたと考えられる。 したがって、今後は大手企業や中堅業者においてM&A などで寡占化 が進むことが予想される。
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基礎的分析
会社の分析・評価
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Porter’s 5 Forces
提携モニターとの相互利用 で 1,000 万人規模の大規模 調査にも対応可能。 インターネット調査は業界再 編 で上 位業者 への 集中 が 進み、異業種からの新規参 入リスクは小さい。◆ 代替品・代替サービスの脅威 インターネット調査が市場調査業界で普及し始めたのは 1990 年代後 半からで、その後、訪問や郵送などによる従来の調査手法に代わり、 アドホック調査の主流となった。当面はインターネット調査の拡大が 続くと予想される。一方、新世代の携帯端末などの進化により、これ までのインターネット調査と異なる手法が台頭する可能性は否定で きない。当社はすでにネットエイジア㈱と資本・業務提携によりモバ イルモニターの相互利用を進めている。 ◆ 買い手の価格支配力 インターネット調査は競争が厳しく、広告会社や調査会社向け間接販 売はビジネスサイクルが短く景気変動の影響も受けやすい。そのため、 顧客側に価格交渉力の優位性があると考えられる。当社は広告会社や 調査会社と資本・業務提携を結ぶなど、良好なビジネスパートナーシ ップを構築しているが、価格支配力には限界がある。 ◆ 売り手の価格支配力 アンケートシステムや集計・分析ツールは自社開発だが、事業拡大に 伴う開発費や契約社員の拡充等により外注コストが生じることがあ る。また、大規模案件などでモニターの相互利用を進めた場合、外部 モニター利用に伴うコストの増加も考えられる。しかし、これらの外 注市場にボトルネックは想定しにくい。 ◆ 環境対応;Environment サービス業であり、特別な環境対応方針等は公表していないものの、 企業行動憲章の中で環境問題への取り組みを謳っている。インターネ ット調査と環境問題は直接的な関連性は希薄と考えられないが、ペー パーレス化などの資源有効活用などが基本的な考え方と想定される。 ◆ 社会的責任;Society 市場調査の過程で個人情報の取り扱いに特に注意が必要となる。当社 は個人情報保護方針を定め日本工業規格「個人情報マネジメントシス テム要求事項」に準拠した個人情報保護システムを策定・遵守し、2004 年 9 月には日本情報処理開発協会の「プライバシーマーク制度」の認 定を受けている。 ◆ ガバナンス;Governance 当社はコーポレート・ガバナンスの実効性を高めるため、株主総会、 取締役会、監査役会等の機能強化を掲げている。創業社である五十嵐 社長は、近親者も含めて 50%以上の株式を保有しており、典型的なオ ーナー経営者である。上場企業として、一般の株主に対する説明責任 を果たしていくことは今後の大きな課題でもある。
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ESG活動・分析
インターネット調査は、当面 は拡大市場であるが、モバ イルリサーチの台頭も考え られる。会社計画によれば、売上高は前期比 23.5%増の 43.0 億円、営業利益 は同 10.1%増の 4.4 億円、当期純利益は同 12.7%増の 2.4 億円を見 込んでいる。当社は今期(2011 年 12 月期)を来年度以降の成長に向 けた先行投資期間と位置付けており、売上面では積極的な受注活動に より直接販売の伸長を見込むものの、利益面では人員投資やシステム 費用が嵩み、利益率は低下する計画である。なお、これには東日本大 震災の影響を加味していない。 担当アナリストは、東日本大震災による景気の一時的な冷え込みは避 けられないと考えており、現時点で 2011 年 12 月期は会社計画を下回 る可能性が高いと予想している。したがって、売上は約 40 億円 (+13.9%)営業利益は 4.26 億円(+5.4%)と会社計画よりも保守的 な数字を予想する。 来期(2012 年 12 月期)以降の業績は、業界再編により、大手におい て規模のメリットが働き、当社によってもビジネスチャンスが拡大す ることが予想される。また、景気のサイクルから間接販売の伸長も見 込まれ、当社の注力する直接販売も営業強化策の奏功により伸びが期 待できる。利益面でもシステム投資が一巡するうえ、売上高の伸びに より、人員増による固定費の増加を吸収できると予想されることから、 今期に比べて営業利益率は改善することが見込まれよう。 今後 3 年間の売上は、M&A などによる上乗せがなければ、10%内外の 伸びを目指すことになろうが、利益面では、業容の拡大が収益性を改 善させてことになると想定する。2014/12 期の売上は、52.2 億円、営 業利益は 6.74 億円を予想する。また、当社はこれまで配当による株 主還元を積極的に行ってこなかった。しかし、今後は配当性向を 20% 程度に高める方針のため、利益の増加に伴い、増配の可能性が高いと 考える。
業績動向と今後の見通し
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今期業績
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来期以降の業績
東日本大震災後の自粛ムー ドにより、会社計画は見達を 見込む。 先行投資が一巡する 2012 年 12 月期以降は、収益性の 変化に期待。IPO がリーマンショック後の 2008 年 10 月だったこともあり、公募価 格 590 円に対して初値は 580 円であった。その後、2009 年 7 月に 660 円を付けたが、2010 年 11 月までは 300 円から 500 円のボックス圏の 動き。2010 年 12 月期の増額修正発表で株価は上昇し、2011 年 2 月 23 日には楽天リサーチとの業務提携発表で上場来高値 1,506 円を付けた。 東日本大震災で 680 円まで急落するも、直近では大震災前の 1,300 円 を挟んだ揉み合いとなっている、その結果、上場来パフォーマンスは 33.7%と好調である。 当社は 2008 年 10 月の上場以降無配で、2010 年 12 月期に初めて年間 5.50 円配当(中間 2.00 円)を実施した。今期は年間配当 7.00 円(中 間配当 3.50 円)を計画しており、配当性向は会社計画で 8.6%になる 見通し。今後は配当性向を中期的に 20%へ高める方針を掲げており、 当社の財務内容や FCF 予想から今後も増配継続の可能性が高い。 また、機動的な資本政策と株主還元を図るため、2010 年 9 月から 2011 年 3 月に初めて自己株取得(上限 20 万株または 1.1 億円)を実施し、 2011 年 3 月末の自己株式は発行済株式数の 6.3%(16.6 万株)。この 利用法については開示はないが、市場調査業界では業界再編が進んで いることから、M&A に利用される可能性も考えられる。 2009 年 12 月期までは、売上高成長に比べて利益が伸びず株価は低迷 した。市場は当社の収益構造に疑念を抱いていたと推察される。2011 年 12 月期は先行投資負担で高い利益成長が見込めないものの、株価 は楽天グループとの業務提携等をポジティブに評価している模様。 昨年後半からの株価急騰で株価には一応の達成感がある。2014 年 12 月期の予想(EPS123.37 円)を現在の PER 水準(15~16 倍)に当ては めると、適正株価レンジは 1,850 円から 1,970 円が予想される。 現在の株価バリュエーションは 2011 年 12 月期の会社予想 PER で 15.4 倍、担当アナリスト予想 PER で 16.3 倍。同業他社比較では、高い ROE と成長性が評価されているもの想定される。 <同業他社比較> クロス・マーケティング インテージ マクロミル 株価(6/3) 1,250 円 1,621 円 771 円 PER(予想) 15.4 倍 10.2 倍 19.6 倍 PBR(実績) 2.47 倍 1.19 倍 2.18 倍 ROE(予想) 16.2% 11.6% 11.1% 利回り(予想) 0.56% 3.08% 2.46% 時価総額 38.2 億円 168.6 億円 249.1 億円
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上場来パフォーマンス
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株主還元
中期的に配当性向 20%を目 指すため、増配への期待が 高まる。投資判断
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今後の株価見通し
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株価バリュエーション比較
楽天グループとの業務提携 を好感しながら、上値を追う 展開を予想。 中立・公平な情報を発信 本レポートは、一般社団法人 証券リサーチセンターに所属している中立的な立場にあるアナリスト経験 者が企業調査及び株価評価を行い、その調査レポートを早稲田大学知的資本研究会が監修することで、 国内資本市場の活性化に向けた質の高い客観的な投資情報を提供します。 隠れた強みを持ちながらも、市場から着目されていない企業を選定しカバー 新興市場を中心に、企業の知的資本(隠れた強み)を評価する手法などを活用することで、株価が適正 に評価されていない上場企業を発掘し、アナリストレポートを作成・公表することで、情報の非対称性 を改善することを目的としています。 企業の知的資本(=隠れた強み)を読み手に伝える分析 本レポートは、株式会社アクセルが企業の知的資本を伝えるために体系化したフォーマットを採用して おります。これに基づき、企業の分析・評価にあたっては、SWOT 分析や M. Porter の競争優位性分析 など伝統的な手法を用いて企業の特徴を明らかにし、また企業の知的資本の視点からも評価を行ってい ます。さらに、今後の成長を測る上で重要な業績指標(KPI)を掲載することで、広く投資判断の情報 を提供します。
KPI(Key Performance Indicator)
企業の戦略目標の達成度を計るための評 価指標(ものさし)のことです 知的資本 顧客関係や業務の仕組みや人材力などの、 財務諸表には表れないが、財務業績を生 み出す源泉となる「隠れた経営資源」を 指します。本レポートにおけるカバー対 象企業の選定では、インテレクチャル・ キャピタル・インターナショナルの知的 資本評価手法を活用しております。 関係資本 顧客や取引先との関係、ブランド力など 外部との関係性を示します 組織資本 組織に内在する知財やノウハウ、業務プ ロセス、組織・風土などを示します 人的資本 経営陣と従業員の人材力を示します β(ベータ)値 個別銘柄の株価変動の大きさが市場指数 (例えばTOPIX)の価格変動に比べ大 きいか小さいかを示す指標です。ベータ 値(β値)が1 であれば、市場指数と同 じ動きをしたことを示し、1 より大きけ れば市場指数より値動きが大きく、1よ り小さければ市場指数より値動きが小さ かったことを示します SWOT 分析 企業の強み(Strength)、弱み(Weakness)、 機会(Opportunity)、脅威(Threat)の 全体的な評価を SWOT 分析と言います ESG Environment:環境、Society:社会、 Governance:企業統治、に関する情報を 指します。近年、環境問題への関心や企 業の社会的責任の重要性の高まりを受け て、海外の年金基金を中心に、企業への 投資判断材料として使われています 免責事項 ・本レポートは、一般社団法人 証券リサーチセンターに所属する証券アナリストが早稲田大学知的資本研究会の監修を受け、広く投資家に株式投資の参考情報として閲覧さ れることを目的として作成したものであり、特定の証券又は金融商品の売買の推奨、勧誘を目的としたものではありません。 ・本レポートの内容・記述は、一般に入手可能な公開情報に基づき、アナリストの取材により必要な補充を加え作成されたものです。本レポートの作成者は、インサイダー 情報の使用はもとより、当該情報を入手することも禁じられています。本レポートに含まれる情報は、正確かつ信頼できると考えられていますが、その正確性が客観的に検 証されているものではありません。また、本レポートは投資家が必要とする全ての情報を含むことを意図したものではありません。 ・本レポートに含まれる情報は、金融市場や経済環境の変化等のために、最新のものではなくなる可能性があります。本レポート内で直接又は間接的に取り上げられている 株式は、株価の変動や発行体の経営・財務状況の変化、金利・為替の変動等の要因により、投資元本を割り込むリスクがあります。過去のパフォーマンスは将来のパフォー マンスを示唆し、または保証するものではありません。特に記載のないかぎり、将来のパフォーマンスの予想はアナリストが適切と判断した材料に基づくアナリストの予想 であり、実際のパフォーマンスとは異なることがあります。したがって、将来のパフォーマンスについては明示又は黙示を問わずこれを保証するものではありません。 ・本レポート内で示す見解は予告なしに変更されることがあり、一般社団法人 証券リサーチセンター及び早稲田大学知的資本研究会は、本レポート内に含まれる情報及び見 解を更新する義務を負うものではありません。 ・一般社団法人 証券リサーチセンター及び早稲田大学知的資本研究会は、投資家が本レポートを利用したこと又は本レポートに依拠したことによる直接・間接の損失や逸失 利益及び損害を含むいかなる結果についても一切責任を負いません。最終投資判断は投資家個人においてなされなければならず、投資に対する一切の責任は閲覧した投資家 にあります。 ・本レポートの著作権は一般社団法人 証券リサーチセンターに帰属し、許可なく複製、転写、引用等を行うことを禁じます 上場来パフォーマンス 新規上場時の公募価格をベースに算出し た投資パフォーマンス(年率複利換算) を示すものです
PER(Price Earnings Ratio)
株価を1 株当たり当期純利益で除したも
ので、株価が1 株当たり当期純利益の何
倍まで買われているのかを示すものです
PBR(Price Book Value)
株価を1 株当たり純資産で除したもので、 株価が1 株当たり純資産の何倍まで買わ れているのかを示すものです 配当利回り 1 株当たりの年間配当金を、株価で除し たもので、投資金額に対して、どれだけ 配当を受け取ることができるかを示すも のです σ(標準偏差) リターンのばらつき度合いを示す統計値 です。値が大きいほどバラツキが大きく なります