障害と開発に向けたJICA の取り組み
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(2) 656. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 制の強化に取り組んだ。当初はプロジェクト活動の計画段階で. 切なニーズの把握,住民のオーナーシップ強化,活動の持続性. の障害者の参加が十分でなかったが,途中で障害者のエンパワ. の観点からも望ましい。その際に,障害者も地域社会の一員で. メントを活動の柱に加えた。その結果,障害者リーダーの育成. あること,そして,これらの活動に障害者が参加できるように. や障害者団体の強化を通じて,障害者が自分の直面している困. するためには様々な障壁を取り除く必要があることを忘れては. 難や希望について医療関係者に伝えられることになったこと. ならない。JICA では,建物や交通機関におけるアクセシビリ. が,障害者自身のニーズをふまえたリハビリテーションサービ. ティの欠如,地域住民による障害者に対する差別や偏見等の障. スの提供につながった。また,障害者にとって優先度の高い課. 壁を障害者が行動主体となって取り除く活動を支援している。. 題であった就労機会の拡大に向け,障害者による起業の支援を. JICA は,これまでの経験から,「障害の主流化」と「障害. 行うとともに,地域の医療機関や家族との協力を通じた地域に. に特化した取り組み」を実施するにあたっては,障害者自身が. 根差したリハビリテーション(CBR)を促進した。さらに,障. 中心となり,周囲の人たちの参加を得ることが効果的であると. 害者が地域住民のニーズの聴き取りを行い,水道の不足が課題. いう教訓を得ており,日本と開発途上国の障害者の双方が事業. であることを把握し,適切な場所に水道を設置するという取り. に参加することを推進している。理学療法士は,専門技術や知. 組みも実施した。このように,障害者を中心としつつ,地域住. 識の移転に加え,障害者や他の専門職種の人材等と連携して総. 民の主体的な参加を得て,地域社会の課題に取り組むことが可. 合的なリハビリテーションや地域づくりを進めていく推進役を. 能となった。日本の理学療法士や言語聴覚士がプロジェクトの. 担うことができる。このように,理学療法士はツイン・トラッ. 専門家として派遣され,現地の障害者や医療機関,自治体等の. ク・アプローチの実践においても重要な役割を果たすことがで. 関係者と協力し,障害者の参加の推進や総合リハビリテーショ. き,JICA の専門家やボランティア等として国際協力の現場で. ンの提供体制整備のプロセスに大きく貢献した事例である。. 今後も活躍することが期待されている。. この事例からもわかるように,障害と開発の課題に取り組む うえで,地域社会の人たちが共通して抱えている課題の解決に 障害者が参加することが効果的である。医療サービスの質の向 上,就労の促進,安全な水へのアクセス,防災などは誰もが直 面する課題であり,その解決に向けて,地域社会のリソースを 活用し,住民が計画策定や活動に主体的に参加することが,適. 文 献 1) WHO and World Bank: World Report on Disability. 2011, p. 44. 2) WHO, World Health Assembly. http://www.who.int/disabilities/ publications/other/wha5823/en/(2015 年 10 月 15 日引用) 3) 国際協力機構:課題別指針「障害と開発」.2015,pp. 13–16. 4) 国際協力機構:課題別指針「障害と開発」.2015,pp. 38–41..
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