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ロコモティブシンドロームを中心とした運動器の健康

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 809 ~ 810ロコモティブシンドロームを中心とした運動器の健康 頁(2015 年). 809. 分科学会シンポジウム 9(日本予防理学療法学会). ロコモティブシンドロームを中心とした運動器の健康* 新 井 智 之**. 問で構成され,各項目 0 ~ 4 点の 5 段階で 100 点が最重症とな. はじめに. る評価表である。. 平成 25 年度の国民生活基礎調査によれば,要介護の原因の. 2015 年 5 月に日本整形外科学会は,3 つのロコモ度テストに. うち骨折・転倒が 11.4%,関節疾患が 10.9%と約 2 割が運動器. よるロコモの新たな臨床判断値を発表した 7)。その内容として. 疾患である. 1). 。また Yoshimura らの推計によれば,日本人の. は, 「ロコモ度 1」を移動機能の低下がはじまっている段階, 「ロ. 変形性膝関節症の有病者数は 2,530 万人,変形性腰椎症の有病. コモ度 2」を生活は自立しているが移動機能の低下が進行して. 者数は 3,790 万人,大腿骨頸部の骨粗鬆症の有病者数は 1,070. いる段階と定義する判断基準を示した 7)。「ロコモ度 1」の基. 万人に及ぶとされている 2)。さらにこれら 3 つの疾患のいずれ. 準は,立ち上がりテストはどちらか一側の脚で 40  cm の高さ. 2). から立つことができない,2 ステップ値は 1.3 未満,ロコモ 25. 運動器の障害を有しているものはきわめて多い現状にある。そ. の得点は 7 点以上となっている。「ロコモ度 2」の基準は,立. のような背景の中,日本整形外科学会では運動器の障害のため. ち上がりテストは両脚で 20  cm の高さから立つことができな. に移動機能の低下をきたした状態をロコモティブシンドローム. い,2 ステップ値は 1.1 未満,ロコモ 25 の得点は 16 点以上と. (以下,ロコモ)と定義し,運動器の健康とその予防の重要性. なっている。ロコモ度テストの臨床判断値が発表されたことに. かひとつを有している患者数は 4,700 万と推計されており. を提唱している. ,. 3). 。健康寿命延伸のためには,我が国の中高年. より,ロコモの判定が確立され,今後はロコモ度をアウトカム. に急増しているロコモを予防し,運動器の健康を保つことは重. にした研究の発展が期待される。. 要な課題である。そこで本稿では,1)ロコモを判断するため. ロコモのスクリーニング手段としては,ロコチェックがあ. の臨床判断値とスクリーニング,2)ロコモ予防のためのトレー. る。ロコチェックは一般市民にもわかりやすい内容となってお. ニングの効果について我々の研究成果や取り組みを交えて紹介. り,誰でも簡便に実施することができる。ロコチェックの質問. する。. 項目は,①片脚立ちで靴下がはけない,②家の中でつまずいた. ロコモを判断するための臨床判断値とスクリーニング. り滑ったりする,③階段を上るのに手すりが必要である,④横 断歩道を青信号で渡りきれない,⑤ 15 分くらい続けて歩くこ. ロコモを判定するテストとして 2013(平成 25)年にロコモ. とができない,⑥ 2  kg 程度の買い物をして持ち帰るのが困難. 度テストが発表された。ロコモ度テストとは下肢筋力の評価で. である,⑦家のやや重い仕事が困難である,といった 7 項目. ある立ち上がりテスト,歩行能力の評価である 2 ステップテス. である。石橋らはロコチェックに 1 項目でも該当した高齢者. ト,患者立脚型の質問紙評価としてロコモ 25 の 3 種類のテス. は,該当しなかった者に比べて,筋力,バランス,移動能力が. トである。. 有意に低下していると報告した. 立ち上がりテストは 40  cm,30  cm,20  cm,10  cm の台か. 年者 1,854 人に行った調査においても,ロコチェックは運動機. ら片脚および両脚で立ち上がることができるかを評価するテス. 能と密接に関連があり,ロコチェックに該当する項目が増える. トである。2 ステップテストはできる限り大股で 2 歩歩き,そ. ほど,段階的に運動機能が低下することが明らかとなっている. の距離を測定し,身長で割った値を 2 ステップ値とするテスト. (未発表データ,図)。このことからロコチェックは誰でもわか. である。村永らの報告により立ち上がりテストは下肢筋力 4),. る簡便な質問紙でありながら,高齢者の運動機能低下を判定す. と 2 ステップテストは歩行速度. 5). との相関が高いことが確認. されており,妥当性が証明されている。ロコモ 25 は Seichi ら により開発された患者立脚型の評価表であり 6),25 項目の質. 8). 。さらに我々が地域在住中高. るスクリーニングとして有用な手段であるといえる。. ロコモ予防のためのトレーニングの効果とその実際 ロコモに起因した運動機能低下を防ぐための手段としてロコ. *. Musculoskeletal Health with Focus the “Locomotive Syndrome” 埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科 講師 (〒 350–0496 埼玉県入間郡毛呂山町川角 981) Tomoyuki Arai, PT, PhD: Department of Physical Therapy Faculty of Health and Medical Care, Saitama Medical University キーワード:ロコモティブシンドローム,ロコモーショントレーニ ング,運動器. **. モーショントレーニング(以下,ロコトレ)がある。ロコトレ のおもな運動はスクワットと片脚立ちの 2 種類である。またロ コモチャレンジ推進協議会のホームページにはスクワットと片 脚立ちにプラスする運動として,かかと上げとランジ運動も紹 介されている。我々のグループが行う地域高齢者向けの講演会.

(2) 810. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 図 ロココチェックの該当項目数とロコチェックの関連(未発表データ). や講習会などでは,スクワット,片脚立ちにかかと上げを追加. 害や運動機能低下を早期に予防する段階として有用な方法であ. した 3 種類のロコトレとウォーキングを指導している。石橋ら. る。本稿で述べたこと以外にも,気づきにくい骨粗鬆症に対す. が行った先行研究では,地域在住高齢者 172 人に対してロコト. る予防活動や高齢者の骨折と再骨折に対する対策など運動器障. レ指導を行い,2 ヵ月間,自宅でのロコトレを行った。その結. 害に関して取り組む課題は山積みである。今後はこれらの課題. 果,膝伸展筋力,足趾把持力,片脚立ち時間,歩行速度など. に対して,「ロコモ」という旗のもと,全国民的に運動器の健. の運動機能が有意に改善することを報告した。さらに我々は. 康増進,健康寿命の延伸に取り組んで行くべきである。. 2014 年に埼玉県伊奈町において,地域在住中高年者 340 人を 対象にしたロコトレの無作為化比較対照試験を実施した。その 結果,ロコトレを実施した群はコントロール群に比べて,片脚 立ち時間や最大歩行速度などの運動機能が有意に改善した(未 発表データ)。以上のことから,ロコトレは高齢者の運動機能 の向上に有用なトレーニングであるといえる。 現在の日本は高齢人口が増加し,個々の高齢者のライフスタ イルや生活機能は多様なものとなっている。そのため中高年の 運動器の予防を考える際には,その多様なライフスタイルや生 活機能に合わせた様々な予防活動があるべきである。これまで 介護予防の分野では特定高齢者に対する運動器の機能向上プロ グラム,一次予防としての地域の介護予防ボランティア育成や 自主グループ活動など様々なことが行われてきた。そのような 中で,ロコトレは自分で自宅でもできるプログラムとして中高 年からの健康増進や生活機能が低下しはじめた高齢者の一次予 防に対して有用であると考えられる。. おわりに 高齢化に伴い,急増する運動器疾患に対応するためには, 様々な対策が必要である。本稿ではロコモにいち早く気づく ためのチェック方法であるロコモ度テストとロコチェック,ま たその対策としてのロコトレを紹介した。これらは運動器の障. 文 献 1) 厚生労働省ホームページ:平成 25 年度国民生活基礎調査の概況. http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/ (2015 年 6 月 29 日引用) 2) Yoshimura N, Muraki S, et al.: Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. J Bone Miner Metab. 2009; 27: 620–628. 3) Nakamura K: A “ super-aged” society and the “ locomotive syndrome”. J Orthop Sci. 2008; 13: 1–2. 4) 村永信吾:立ち上がり動作を用いた下肢筋力評価とその臨床応用. 昭和医学会雑誌.2001; 61: 362–367. 5) 村永信吾,平野 清:2 ステップテストを用いた簡便な歩行能力推 定法の開発.昭和医学会雑誌.2003; 63: 301–308. 6) Seichi A, Hoshino Y, et al.: Development of a screening tool for risk of locomotive syndrome in the elderly: the 25-question Geriatric Locomotive Function Scale. Journal of Orthopaedic Science. 2012; 17: 163–172. 7) 日本整形外科学会ホームページ:ロコモ度を判定する「臨床判断  値」を発表.https://www.joa.or.jp/jp/media/comment/pdf/20150515_  locomo_clinical_judgment.pdf(2015 年 6 月 29 日引用) 8) 石橋英明:ロコモティブシンドローム 運動器科学の新時代,ロコ モティブシンドローム ロコチェックの運動機能低下の予見性と ロコトレの運動機能改善効果.医学のあゆみ.2011; 236: 353–359. 9) 石橋英明,藤田博暁,他:ロコモティブシンドロームの実証デー タの蓄積 高齢者におけるロコモーションチェックの運動機能予 見性およびロコモーショントレーニングの運動機能増強効果の検 証.運動器リハビリテーション.2013; 24: 77–81..

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