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アタマ・ココロ・カラダをつなぐ遊びのデザイン

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Academic year: 2021

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(1)24. 特集:なぜ、子どものためのデザインに取り組むのか. 小宮加容子 Komiya Kayoko. 細谷多聞. Hosoya Tamon. アタマ・ココロ・カラダをつなぐ 遊びのデザイン Design of PLAY which Connects Children Ideas and Interests, Behavior. 札幌市立大学. Sapporo City University. 1.はじめに 1.1. 活動の経緯と動機. 札幌市立大学では地域や企業と連携し、さまざまな活動に取り組んでい. る。本活動もその1つであり、「札幌市立大学あそび lab! オヘソ(以下、オ. ヘソ)」という団体名で有志の学生たちと共に、2011年8月に札幌駅地下歩 行空間(チ・カ・ホ)での実施を皮切りに、札幌市内を中心に毎年4回ほ ど、遊びイベントを企画、実施してきた。さらに、2013年から2017年まで は、毎年3月に復興支援活動として福島市子どもの夢を育む施設「こむこ む」にて開催されていた「キッズワークショップカーニバル in ふくしま. (キッズデザイン協議会主催)」にも参加していた。活動を始めた当初は、大 学の公開講座や自主的な活動として実施してきたが、近年は、地域やイベン ト主催団体から依頼を受け実施することも増えてきている。 本活動では、提案するどの遊びについても「アタマ・ココロ・カラダをつ なぐ遊び」をテーマにしている。保育の分野では、このアタマ、ココロ、カ ラダの3要素がバランス良く発達することにより、子どもの心身ともに健や かな成長を促すと言われている。この3要素は、それぞれが双方向の関係に あり、ある要素が満たされると次の要素に働きかける。また、遊びの中で は、どの要素から始まっても問題はない。例えば、自分の行動に起因して変 化する周囲の環境から「(自分が)こうしたら、(環境が)こうなる」という 気づきを得て「(自分が)こうしたら、(環境は)どうなるのか」などをアタ マで想像する⇔ワクワクする気持ち(好奇心)がココロに芽生える⇔カラダ. がついつい動きだす⇔それによってまた新たな気づきを得る .... といった関. 係性であると考えている。オヘソでは、この3つの要素が遊びの中にバラン ス良く含まれていることが理想であると考えており、このような遊びを1つ でも多く提案し、実施することは、子どもたちにとって楽しく遊び、成長で きる場が増えるということだけでなく、保護者への子育て支援につながると 確信している。さらに、この活動から得た知見は、子どもに限らず大人や 障害をもった方などの分野へも広く応用することができるのではないかと考 える。 札幌市立大学はデザインと看護の2学部で構成されている。さらにデザイ ン学部は人間空間デザインコースと人間情報デザインコースの2コースで構 成されており、学生たちの興味は、建築、まちづくりィザイン、プロダクト デザイン、グラフィックデザインなど幅が広い。そこで本活動では、参加す.

(2) デザイン学研究特集号  Vol.28-1 No.103. る学生たちそれぞれの学部、コースで学んだ専門性を活かしながら新しい遊 びを提案し、企画・実施まで学生が主体的となって進めることで、学生への 教育的な効果を高めようとしている。具体的には、学生たちがイベントに参 加する子どもたちの年齢、人数、遊び場の使用環境、予算等の条件を考慮し ながら新しい遊びを考え、準備から実施当日までのスケジュール管理を行 い、実施当日に運営し、終了後には自分たちが提案した遊びに対する子ども たちの反応について振り返りを行うといった、デザインプロセスを実践的に 学ぶ場の1つと位置付けている。 私生活においても活動の動機となることは多い。著者には一人娘がおり、 子育ては「人がどのように人として成長していくのか」を学ぶ貴重な機会と なっている。彼女を見ていると日常生活の中であたりまえと思い見落として いたことを、それぞれに意味があることと気づかせてもらえる。特に幼少期 は、子どもの視点から見える世界や、そこから湧き出る疑問「なんで?」を 聞くのがとても楽しみであった。そのような子どもの視点からの気づきは、 子どものモノに限らず、万人のモノのデザインへつながっていると考えてい る。「遊び」についても同様であり、子どもだけのコトではなく、大人に とっても楽しく、心を豊かにするとても大事なコトと考えている。 . 1.2. これまでの活動の概要. オヘソが遊びの提案、実施にあたって以下のことを大切にしている。 提案する遊びでは、 ①アタマとココロとカラダをつなげた遊びであること ②子ども自身が能動的に遊びを発展させることができること ③年齢、技術、知識等に関係なく誰もが楽しめること ④遊びを通して何か気づきがあること ⑤再現性があること(自宅等で同様の遊びができること) 具体的に示すために、今までに実施した代表的な遊びイベントを1つ紹介. する。札幌駅総合開発株式会社との共催で2014年より実施している遊びイベ ント「Connekid!」である。このイベントは毎年8月初旬ごろ(小学生の夏. 休み期間中に合わせて)に、JR タワーエスタ屋上にある「そらのガーデン. と11階にあるプラニスホールにて実施している。遊びのメインテーマとして. 図1 遊び場「すいてきコロコロ」の様子. 1)小宮加容子、福田大年、松尾友絵、瓜生愛里:素材に 対する多様な見方を活かした遊び「しゃぼん玉とん だ!」の活動報告、日本デザイン学会第62回春季研究 発表大会、2015 2)吉田傑、小宮加容子、瓜生愛里:異なる環境の相互作 用で深まる遊び「風の子 GO! GO!」の活動報告、日本 デザイン学会第63回春季研究発表大会、2016. 3)小宮加容子、佐竹希里、宮浦志穂:思いやりの気持ち を育む遊び「たいようキラキラ花さかキッズ」の活動 報告、日本デザイン学会第64回春季研究発表大会、2017 4)佐竹希里、小宮加容子、江口怜南:探究心を成長させ る遊び「わくわくひろがる星の子たんけんたい」の活 動報告、日本デザイン学会第65回春季研究発表大会、 2018 5)木村はるな、小宮加容子、中茂裕貴、江口怜南:遊び イベント「ぴちゃ、ぽちゃ、ざぷん?」を通しての 「アタマ・ココロ・カラダ」の視点による遊びの考察、 日本デザイン学会第66回春季研究発表大会、2019. 「泡」[注1]、「風」[注2]、「花」[注3]、「星」[注4]といった自然を取 り入れたテーマをもとに遊びを提案している。2018年度は「水」をテーマに した「Connekid!2018『ぴちゃ、ぽちゃ、ざぷん?』、2018年7月29日(日). 11:00∼16:00」を実施した[注5]。この遊びイベントでは異なる6つの 遊び場を設け、各遊びに「好奇心→行動→結果→振り返り」の循環を取り入. れることで、子どもが主体的に繰り返し遊ぶことができるように工夫した。 「すいてきコロコロ」は、撥水加工として薄いビニールシートを巻いた板ダ ンボールで制作した盤の上面に水滴を垂らし、盤を傾けることで水滴を転が す遊びである(図1)。盤には複数の穴が空いていたり、魚やタコなど海に 住む生き物の絵が描かれたりしている。また、盤のサイズは一人用の小さい サイズと複数人用の大きいサイズをそれぞれ複数枚用意した。子どもたちは スポイトを使い色の付いた水滴を盤の上に落とし、自分が決めたルートを水 滴が転がるように盤を前後左右に傾ける。また、大きいサイズの盤は複数人 で協力しながら盤を持ち水滴を転がす必要がある。盤のサイズによって一人 での遊びに集中することもできるし、複数人で協力した遊びにもできる。. 25.

(3) 26. 特集:なぜ、子どものためのデザインに取り組むのか. 他にも盤に描いた絵の上に色水を重ね新しい絵を作るなどのお絵描きのよう な遊びもできる。 イベントでは、多くの子どもたちが、夢中になって、水滴を盤から落とさ ないように身体全体を使って慎重に前後左右に盤を傾けている様子がみられ た。これは、自分の身体の動きに対して水滴がどのように動くのかといった 「好奇心」が、身体全体を使って慎重に前後左右に盤を傾けるという「行動」 に現れたといえる。しかし、簡単に目的は達成できず、盤から水滴が落ちる という「結果」がでる。この「行動」と「結果」より、「傾けるスピードを 変えたらどうなるだろうか」という「振り返り」を行い、それが新たな「好 奇心」を生み、次の「行動」へ…と繰り返されたと考える。さらに、この遊 びでは自分の決めた目的(思い描いたコースを辿る、ゴールまで水滴を落と さないで進む等)を達成させたいという「挑戦心」も芽生え、盤の上で水滴 を転がすというシンプルな遊びであるにも関わらず、夢中になって遊び続け る様子が見られたと予想する。 本イベントの参加者は266人(子ども144人、保護者122人)であった。イ ベントに参加した子どもにアンケートを実施し「一番多く繰り返して遊んだ のはどの遊びですか?」という問いかけを行った。その結果、遊び毎に回答 数に差があるものの、どの遊びも繰り返し遊んでいたことがわかった。これ らの結果から、どの遊びも「好奇心→行動→結果→振り返り」の循環を取り 入れたことで、子どもが主体的に繰り返し遊ぶことを促せたことがわかっ た。図2に「すいてきコロコロ」以外の遊び場と子どもの様子を示す。水中 を探検しているような迷路(上段左)、水滴に見立てた風船がたくさんある ドーム(上段中央)、様々な音がでるカプセルを組み合わせて自分の水の音 を作る(上段右)、ペンで描いた絵をそっと水に浮かせる(下段左)、青色ク レヨンで窓ガラスにお絵かき(下段中央)、波を超えて島までお手紙をだし にいく(下段右)。 このイベント以外でも、絵本を題材にしたストーリー性のある遊びや床や 壁に絵を描く遊びなど様々な遊びを実践している。さらに、子どもだけでな く高齢者や障がい者なども一緒に楽しむことができる遊びも実践している。. 図2 その他の遊び場での子どもの様子.

(4) デザイン学研究特集号  Vol.28-1 No.103. 2.さわってみつける遊びのデザイン 遊びの分類の1つに「感覚遊び」がある。これは、主に乳児を対象とした 遊びであり、五感を使ってその刺激を感じることを楽しむ遊びである。人間 の成長において、五感の中でも特に「触覚」は早い時期から発達している。 そのため、指で触る、口に入れてなめるなど触覚を使って、そのモノが何で あるのか、自分の行動に対してどのような反応をするのか確かめながら、自 分の身の回りの世界を理解していくのが普通である。さらに「抱きしめる (ハグ)」は、他者と交わす挨拶の中でも高い親密さを表し、愛情の溢れるハ グは大きな安心感を得ることができる[注6]。しかし、触覚刺激が過敏な 子どもは、本来は遊びを通して触覚から得ることができる多くの情報を、成 長の過程で上手く得ることができず、一層、周囲への適応が一層難しくな る。ひどい場合には、自分の親でさえも抱きしめてもうこと拒み、親子の信 頼関係を上手く築けないこともある。このような「触れることを拒む子ど も」も、決して周囲の環境に興味がない訳ではなく、親から愛情を求めてい ない訳ではない。困難を抱えている子どもたちは、周囲の理解を得ることが 図3 遊びイベント「お∼い、サンタさん!」 の様子. 難しく、さらにその行動から誤解を招いてしまうことが多いのである。この ように、他者からみれば困った子どもであるが、本人からみれば困っている 子どもであり、支援が必要な状態である。. 2.1. さわられることの効果とさわる玩具の提案. 触覚を介した心理療法にタッチセラピーがある。マッサージによる効果と. して、未熟児へのマッサージによる体重増加、運動機能や環境適応能力の発 達などや、ホスピスの患者への血圧や心拍数に好影響を与えるなどが報告さ れている。さらに、注意欠陥多動性障がい児の落ち着きなさの改善も報告さ れている。 そこで、今までの活動の中で得た経験や知識をもとに、新たに「子どもが 能動的に触る経験を重ねることを支援する玩具」の開発を目指すことにし た。この玩具は、子どもの触覚防衛反応の状態に応じて触覚刺激を「調整」 し、時間をかけて可変的に目標域へと誘導する仕組みを持つ。具体的には、 触覚が過敏な子どもには刺激量を抑制し、刺激への慣れに応じて少しずつ刺 激を増やしていく。鈍麻の子どもには刺激量を増幅し、刺激への慣れに応じ て少しずつ刺激を減らしていく。こうした調整の結果、それぞれ子どもが負 図4 「さわってみつける遊び」場の様子. 担なく触覚刺激の経験を重ね、感覚の統合が上手くできるようになるのでは ないかと予想している。. 2.2. さわってみつける遊びの実施. 手始めとして、子どもはどの程度の触感の違いを区別できるのか確認をす. ための調査を行った。調査は「SORA こそだてフェスティバル2019(2019年. 12月14日(土)、札幌コンベンションセンター)にて実施した遊び「お∼い、 サンタさん!(図3)」の中の1つの遊びとして、さわってみつける遊びを 取り入れることで実施した。まず、遊び「お∼い、サンタさん!」は、子ど も達がサンタさんの落とし物を届けにサンタランドへ行き、クリスマス準備 図5 4 種 の 異 な る 触 感 の オ ー ナ メ ン ト ボール 6)山口創:皮膚感覚から生まれる幸福 ─ 心身が目覚め るタッチの力 ─ 、春秋社、2018. に忙しいサンタさんのお手伝いをする。そして、そのお礼としてサンタラン ドで自由に遊ぶというストーリー性のある遊びである。さわってみつける遊 はサンタさんのお手伝いに設定し、サンタさんから渡されたオーナメント ボールを、手触りを手がかりに同じサンプルの掛かったツリーに飾りつける. 27.

(5) 28. 特集:なぜ、子どものためのデザインに取り組むのか. 遊びとした(図4、図5)。オーナメントボールは直径60㎜、触感の異なる 4種類を用意した。触覚 A は表面はなめらかであり重い、触覚 B は表面がざ. らざらであり重い、触覚 C は表面がなめらかであり軽い、触覚 D は表面は. なめらかであり重く、冷たい。触覚 A、B、D の重さは同じ、触覚 A、C、D. の表面のなめらかさは同じ、触覚 A、B、C の温度は同じである。また、オー. ナメントボールは年齢別に異なる色を付けることでどの年齢帯のこどもが掛 けたかを判別するとともに、参照するサンプル用オーナメントボール(以 下、サンプル)は他と明確に区別できるよう、金色にした。サンプルは4つ のツリー毎に1個、子どもの目線の高さに飾った。サンタさんは子ども達へ サンプルを用いて異なる触感のオーナメントボールがあることと、受け取っ たオーナメントボールと同じ触感のサンプルが飾られたツリーをみつけ、そ のツリーに飾りつけをして欲しいことを伝える(図6)。. 図6 サンタさんから受け取ったオーナメントボールをツリーにかける様子. 図7 「触覚 A」が飾られた各ツリーの年齢別割合. 図8 「触覚 B」が飾られた各ツリーの年齢別割合. 図9 「触覚 C」が飾られた各ツリーの年齢別割合. 図10 「触覚 D」が飾られた各ツリーの年齢別割合.

(6) デザイン学研究特集号  Vol.28-1 No.103. 2.3. 結果と考察. 遊びには396名の参加があり、そのうち1歳から6歳までの328名を調査対. 象とした。子どもがサンタさんから受け取ったオーナメントボールの飾りつ けの割合を4つの触覚毎に、グラフで示す(図7∼図10)。この割合は各年 齢の子どもの数に対する各ツリーに飾られたオーナメントボールの数の割合 である。この結果から、オーナメント触覚 B のざらざらした触感が特に区別. がしやすい結果となった。これは触覚 B が手からの得る触覚の情報だけでな く、視覚から得る情報(表面のざらざら感、粗さ)が影響したと考えられ. る。しかし、全体をみると、触感によって正解率の違いはあるものの、1歳 から6歳のどの年齢のこどもたちも触感の違いを概ね区別できているといえ る。今後も引き続き、調査結果の分析、追加調査等を行い、提案する玩具の 開発の基礎データとして蓄積するつもりである。. 3.おわりに 3.1. こどもを取り巻く環境のあるべき姿. 今までの活動では、子どもだけでなく、子どもと大人、高齢者、障がい者. など、幅広い参加者が共に楽しむ遊びを実施してきた。遊びを媒介とするこ とで、初めて出会った人同士、年齢が違ったもの同士、障がいの有無に関わ らず、スムーズな交流を図ることができるだけでなく、それぞれの人がとて も楽しそうに過ごしていることに気づいた。図11に遊びを通して参加者同士 が交流する様子を示す。 本活動は、子どもを多様な世代の中で育てる環境が理想と考える。子ども を中心に、様々な世代、考え方、経験を持つ人同士がつながり、関係し合 い、今だけを見て何をすべきか考えるのではなく、大人になった将来を見据 えて育てることができるようにしたい。小さなことかもしれないが、本活動 も様々な人が交流できる場を今まで以上に意識し、今後も工夫を続けたい。. 3.2. これからの活動の見通し. これまでの活動を継続するとともに、今まで実践してきたなかで得た知識. や経験を具体的なモノにしたいと考えている。その1つが「さわる玩具」の 開発である。本報後半に示した「感覚統合」を主たる目的として、子どもを 中心に様々な人が楽しむことのできる遊びのデザインを具体的に示していく つもりである。. 図11 参加者同士の交流の様子. 29.

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