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フランスにおけるデザインの保護

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Academic year: 2021

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(1)6. 特集:各国におけるデザイン保護法制. フランスにおけるデザインの保護. 麻生 典 Aso Tsukasa. Design Protection in France. 九州大学芸術工学研究院 Kyushu University. 1.はじめに 1)本稿では、デザインという用語は工業デザインだけで なく、情報デザイン等も含む広い概念で使用する。意 匠という用語は、いわゆる工業デザインを意味するも の(意匠法の保護対象として想定されるもの)として 使用する。 2)なお、フランスでは知的財産法が法典化されており、 我が国のように著作権法、意匠法、商標法などの別個 の法律ではなく一つの法典(知的財産法典)としてま とめられている。以下では、フランス法を表す場合に も著作権法部分等とは呼ばず、単に著作権法、意匠 法、商標法と呼ぶ。 3)欧州共同体意匠規則等については本稿では取り扱わな い。欧州共同体意匠規則については、例えば青木博通 「欧州共同体意匠規則 ─ 市場指向型デザイン保護シス テムの概要とその後の進展 ─ 」知的財産法政策学研 究10巻(2006年)189頁以下を参照。. フランスにおけるデザイン1)の保護は、欧州共同体意匠規則による保護 と、フランス知的財産法典内の意匠法部分、著作権法部分、商標法部分、そ して不正競争訴訟による保護によってパッチワーク的になされている2)。 欧州共同体意匠規則及び欧州連合商標規則による保護は欧州全体に及ぶ単 一的な意匠・商標の保護であり、欧州全体での保護を得ることが可能である3)。 一方で、フランスだけでの保護を望む場合は、フランスで出願して意匠権等 を取得することとなる。意匠法と商標法については欧州共同体意匠指令及び 欧州連合商標指令により各国法が調和されていることから、欧州指令の解釈 も重要である。さらに、フランスでは「美術の一体性理論4)」に基づき意匠 法だけではなく著作権法によって広く応用美術の保護が図られていることか ら、著作権によるデザインの保護も重要となる5)。 そこで、本稿は、今後のデザイン保護法制のあり方を検討するために、フ. 4)本稿では著作権法部分で取り扱う。 5)著作権法による意匠の保護は各国の裁量に委ねられて いる(欧州意匠指令17条)。. ランスにおけるデザイン保護法制の概略を明らかにすることを目的とする6)。. 6)なお、本特集ではドイツにおけるデザイン保護法制に ついて Christoph Rademacher が検討するが、欧州内で は欧州共同体意匠指令による各国法の調和がなされて いることから、ドイツ意匠法については原則的にフラ ンス意匠法と登録要件等は同一である。そこで、重複 記載を避けるために、意匠法にかかる部分については 本稿で重点的に検討することとし、Rademacher 論文. 2.フランス知的財産法典 L.511-1以下(意匠法部分)による保護7) デザインを保護する法の中でも、その中心にあるのは意匠法である。フラ. ンスにおける意匠の保護は、フランス知的財産法典 L.511-1以下に規定され. ている8)。. では簡潔に記載するにとどめる。. 7)欧州法との比較におけるフランス意匠法の紹介として、 ミシェル・ヴィヴァン(著) ・拙訳「フランスと欧州に おける意匠法の概要」麻生典= Christoph Rademacher. 編『デザイン保護法制の現状と課題 ─ 法学と創作の 視点から ─ 』 (日本評論社、2016年)37頁以下参照。. また、簡単なフランス意匠法の紹介として、Magali. Dieny(著)= Patrick Boyle(著)=髙橋洋江(著・翻. 訳) 「フランス商標・意匠法と欧州共同体及び日本の制 度との比較の概要」パテント65巻1号(2012年)48頁 以下。 8)条文については、特許庁の外国産業財産権制度情報の フランス法部分(https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/. fips/mokuji.htm)、著作権情報センターのフランス著作. 権法の翻訳(http://www.cric.or.jp/db/world/index.html). を参照している(2017年7月31日最終確認) 。. 9)コンピュータープログラムは一定の場合に特許法、著 作権法によって保護される。 10)F.Pollaud- Dulian, La propriété industrielle, Economica, 2011,. no983, p.524.. 11)Cass. com, 20 févirer 2007, Bull. civ. Ⅳ , n 53, p.56. o. 2.1. 実体的要件. ⑴ 保護対象となる意匠 意匠は、製品または製品の部分の外観(apparence d’un produit ou d’une partie. de produit)でなければならない(L.511-1)。意匠には工業製品、手芸製品、 印刷用書体(caractères typographiques)などが含まれるが、コンピューター. プログラムは除かれる(L.511-1)9)。こうした意匠の定義から、自然物や純. 粋美術は意匠から除かれることとなる10)。. そして、意匠は物品の外観であることから視認性が要求される。複合製品 の部品(pièce d’un produit complexe)の場合には、当該部品が複合製品に組 み込まれてもなお通常の使用状態で視認できることが必要である(L.511-5. (a))。通常の使用とは、最終消費者による使用が問題とされる11)。. しかし、当該意匠の要件を満たしたとしても、以下の場合には保護を受け. ることができない。.

(2) デザイン学研究特集号  Vol.25-2 No.98. まず、公序良俗に反する意匠は保護を受けることができない(L.511-7)。. 例えば卑猥な形態の意匠などは公序良俗に反するものとして拒絶される。一 方、著作権法においてはこのような例外規定は存在していないことから、著 作権法では意匠法で公序良俗に反する意匠も保護される12)。 また、その外観が技術的機能によって「のみ」特徴づけられる意匠も保護 対象とならない(L.511-8(1))。すなわち、意匠は美術的選択によるもので. なければならず、もっぱら技術的な理由から選択された製品の外観は保護対 象とはならない。そのような技術的機能に基づく製品は特許法の保護対象で あるからである13)。問題は、技術的機能によって「のみ」特徴づけられると いう「のみ」の解釈である。この点については、形態の多様性基準(critère. de la multiplicité des formes)、すなわち、他の形態によっても同じ技術的効果. が得られる場合には、当該形態は「のみ」の要件を満たさず、意匠法の保護 対象となるという基準が主張されている14)。この基準は欧州共同体意匠指令 に基づく知的財産法典 L.511-8(1)の新設前からフランスで主張されていた. ものであるが、新法でも当該形態の多様性基準が容認されていると捉えられ ているようである15)。. さらに、「製品の外観であって、その製品を、別の製品に対置させ、これ と接続し又はその内側若しくは外側に設置することにより、両者の機械的 結合を可能にして両製品がその機能を果たせるようにするために、製品の 正確な形状及び寸法を複製しなければならない」意匠、いわゆる相互連結 (interconnexion)の意匠も保護対象とはならない(L.511-8(2))。これは、自 動車や家電製品の部品に関する競争を刺激するため、それらを意匠の保護対 象から外すことを意図した規定である。ただし、この例外規定にはさらなる 例外が存在し、「モジュール方法で作成された総体の内部で、相互に交換可 能な製品の複合的組立又は連結を可能とする目的に資する意匠は保護されう る」(L.511-8(2)第2文)。いわゆる Lego 条項と呼ばれるものであり、この. 例外の例外規定によりレゴブロックのようなモジュール内での相互交換可能 な意匠は、意匠法の保護対象となる。 ⑵ 新規性(nouveauté). 上記のような意匠要件を満たすことを前提として、意匠権を得るために. は、新規性要件を満たさなければならない。「意匠は、出願日又は主張され た優先日において同一の意匠が開示されてい」る場合には、新規性を有しな い(L.511-3)。このように、意匠権取得のためには客観的で絶対的な新規性. が要求される。なお、「意匠は、発行、使用又はその他何らかの方法を通じ て公衆の利用に供された場合は、公表されたものとみなされる」(L.511-6)。 ただし、新規性は意匠が秘密保持義務を有する者にのみ公開された場合には. 12) J.Raynard, E.Py, et P.Tréfigny, Droit de la propriété. industrielle, Lexis Nexis, 2016, n 529, p.306. o. 13)なお、特許法の要件を満たさない場合であっても、不 正競争訴訟の対象となる可能性は残る(J.Raynard, E.Py,. et P.Tréfigny, op.cit.(no12), n 535, p.310. Cass.com., 12 o. juin 2007, PIBD 2007, no858, Ⅲ, p.554.)。. 14)J.Raynard, E.Py, et P.Tréfigny, op.cit.(no12), no999, p.534.. 15) J.Passa, Droit de la propriété industrielle, T. 1 , L.G.D.J.,. 喪失しない(L.511-6 第2文)。. 新規性の判断においては、「意匠はその特徴が重要でない細部においての. み異なる場合は、同一であるものとみなされる」(L.511-3)。なお、すべて の構成要素が一つの意匠として公表されている場合に初めて新規性を喪失. し、いくつかの要素を結合して初めて出願意匠となるような場合には新規性 は喪失しない16)。. 2.éd., 2009, n 710, p948. N.Binctin, Droit de la propriété. 新規性については、わが国と比較してその範囲が制限されているのが特徴. 則の立法者は形態の多様性基準に立つと評価するもの. 的である17)。すなわち、知的財産法典 L.511-6は「意匠が、出願日前又は主. o. intellectuelle, LGDJ, 4éd., 2016, no328, p.228.欧州意匠規. として、F.Pollaud-Dulian op.cit.(no 10), n 1007, p.539. o. 16)J.Raynard, E.Py, et P.Tréfigny, op.cit.(no12), no545, p.316. 17)日本法については本特集の五味論文を参照。. 張された優先日前に、当該分野での通常の取引過程に従って、欧州共同体. で業務を営む専門家(professionnels du secteur intéressé)に合理的に知られな. 7.

(3) 8. 特集:各国におけるデザイン保護法制. かった場合は、公表されていない」と規定し、我が国のような無制限の公知 を採用していない。この規定の具体的な適用について、例えば欧州司法裁判 所は2013年2月13日の判決によって、「登録されていない意匠は、欧州内で 操業している関連セクターの1つの企業にしか公開されていなかった又は欧 州の領域外にある企業の展示事務所においてのみ陳列されていたものである 以上、秘密の明示又は黙示の条件なく公表されたにもかかわらず、通常の業 務において、当該分野の専門業者達(milieux spécialisés)に合理的に知られ. ることができなかったと考えられうる」としている18)。また、当該判例は、. 「当該分野の専門業者達(milieux spécialisés)」という概念はデザイナーや製 造業者だけに限定されず、単なる商人も含むとしている。. なお、創作者が自身で意匠を公開したとしても、その日から12ヶ月以内 に出願すれば、新規性喪失の例外規定の適用を受けることが可能である (L.511-6 第3文)。. ⑶ 固有の特徴(caractère propre). 意匠要件・新規性要件を満たしたとしても、保護を受けるためにはさらに. 「固有の特徴」要件を満たさなければならない19)。 知的財産法典 L.511-4は「意匠は、それが経験豊かな識者(observateur averti). に与える全体の視覚的印象が出願日前又は主張された優先日前に開示された 何らかの意匠のそれと異なる場合は、固有の特徴を有する」と規定する。議 論の対象となっているのは、この「経験豊かな識者」という主体的要件の解 釈である。すなわち、「経験豊かな識者」は、特許法における進歩性の判断 主体である当業者(homme de l’art)と同じ概念であるのか、それとも商標 法でいうところの平均的消費者(consommateur moyen)と同じ概念であるの. か。この点については、一般に、当業者と平均的消費者のレベルの間にある 者と解釈されている20)。欧州司法裁判所は、「経験豊かな使用者」21) は「専. 門的な経験又は対象セクターにおよぶ知識を有しているという理由から、平 均的な注意力を有するだけでなく、特別な注意深さ(vigilance particulière). を有する使用者を意味するものとして理解されている」22)とし、さらに、欧. 州第1審裁判所は「発案者又は技術の専門家(expert technique)でなくても よいが、使用者が関係するセクターにおいて存在する様々な意匠を知ってお り、そして、意匠が通常有する諸要素に関する知識を使用者が相当程度有し ており、さらに、その製品に利益を有していることから使用者は意匠を利用 する際に相対的に高度な注意レベルを示す、ということを“経験豊かな”と いう形容詞はその上ほのめかしている」23)としている。一方で、経験豊かな 18)CJUE, 13 févr. 2014, C-479/12, JurisData n°2014-019628.. 19)これは欧州意匠指令による調和以前にはフランス法に は存在しなかった要件である。 20)J.Raynard, E.Py, et P.Tréfigny, op.cit.(no12) , no550, p.319. 例えば、CA Douai, 11 mars 2004, PIBD 2004, n 792, Ⅲ, o. 487。. 21)欧州法では「utilisateur averti(経験豊かな使用者)」で. あるが、フランス語バージョンの「observateur averti(経 験豊かな識者)」と同じ概念である。. 22)CJUE, 20 oct. 2011, aff. C-281/10, Propr. intell. 2011, no41,. p.453, obs. de Candé.. 23)TUE, 14 juin 2011, aff. T-68/10, JCP E 2011, n 1818, p.39, o. obs. Caron ; Propr. ind. 2011, comm. 66, note Gasnier.. 24)CJUE, 19 juin 20014, aff. C-345/13, D. 2014, pan. p. 2209,. obs. Lapousterle.. 25)TUE, 6  juin 2013, aff. T-68/11, PIBD 2013, no994, Ⅲ,. p.1573.. 識者は意匠を組み合わせる能力を有することは要求されない。例えば、欧州 司法裁判所は2014年6月19日判決で、「意匠が独自的な性質を有していると みなされるためには、経験豊かな使用者に対して意匠がもたらす全体的な印 象が、先に存在する複数の意匠から導かれた独立した諸要素の結合によって ではなく、それぞれ独立した一つ又は複数の先に存在する意匠によってもた らされた印象と異ならなければならない」24)としている。 なお、その経験豊かな識者が属する分野は、出願された意匠が最終的に使 用される産業分野が想定されている25)。 さらに、この固有の特徴要件の評価には「意匠の創作における創作者の自 由度が考慮される」(L.511-4)。例えば、剃刀を創作する場合には、最低限、 刃と取手を組みあわさなければならないという制約が存在し、創作者の自由 度がその範囲に制限される。抽象的にいえば、創作者の自由度が大きければ.

(4) デザイン学研究特集号  Vol.25-2 No.98. 大きいほど小さな相違では固有の特徴要件を満たすには不十分であり、逆に 創作者の自由度が少なければ少ないほど小さな相違でも固有の特徴要件を満 たすこととなる26)。例えば、技術的な飽和状態があれば、些細な相違でも固 有の特徴要件を満たすのに十分である27)。. 2.2. 形式的要件 ⑴ 出願(dépôt). 意匠権を取得するためには出願が必要であり(L.511-9)、出願は産業所有. 庁にしなければならない(L.512-1)。出願すると、出願人はその保護の受益 者との推定を受けることができる(L.511-9 第2文)。これにより、真の権. 利者からの権利返還請求(revendication)がない限り(L.511-10)、当該出願 人が権利者と推定されることとなる。権利が共有に係る場合には、民法典 815条以下の共有の規定に従うこととなる。 フランス知的財産法典の意匠法部分は特許法と著作権法の場合と異なり、 職務意匠に関する特別規定を設けていないが、美術の一体性理論の影響か ら、著作権法の職務著作の規定(L.113-2)に引きつけて考える立場が多い ようである28)。. ⑵ 出願の内容 出願は一定の要件・形式に基づいてしなければならない(L.512-2)。出願. が複数の意匠に係る場合は、これらの意匠を組み込むこと又は用いること が意図されている製品は、ロカルノ協定により設けられた分類に基づく同. 一の類に属するものでなければならない(R.512-3)。出願には、出願人の同 定、出願対象の意匠の数、出願に含まれる図形又は写真複製の総数、意匠. の複製の数などを含めなければならない(R.512-3)。登録に関する技術的な. 準備が始まるまでは、出願人は出願書類の補正(rectification)が可能である. (R.512-3-1)。また、出願に際して、出願人は公報への公開の最大3年の延 期請求を行うことが可能である(R.512-10)。. 出願は、商品形態が頻繁に変更されるような製品については簡易出願. (dépôt simplifié)という形式をとることも可能である(L.512-2 第5文)。簡 易出願は通常の意匠に切り替えることができるが、その存続期間は出願日か ら3年に限定される(R.512-11)。この制度の利用には、3年の間、流行性. ある製品について真に意匠権取得が必要か否かを考慮する期間が与えられる というメリットがある29)。. 2.3. 審査. 産業所有庁は一定の形式的要件と公序良俗違反以外の実体的要件の審査は. 行わない(R.512-9)。すなわち、新規性や固有の特徴要件は審査されず、侵. 害訴訟において裁判所で意匠権の有効性が争われることになる。. 出願が形式的要件等を満たしている場合には、延期が要求された場合を除 いて、登録公報(BOPI)に掲載される(R.512-10)。. 登録は出願日から5年の存続期間を有し、当該期間は25年を限度として5. 26)Trib. UE, 25 avril 2013, aff.T-80/10, Propr.intell. 2013,. no49, p.455, obs. P. de Candé.. 27)TUE, 12 mars 2014, aff. T-315/12, Propr. ind. 2014, comm. 31, p.35.. 28)J.Raynard, E.Py, et P.Tréfigny, op.cit.(no12) , no582, p.336,. F.Pollaud-Dulian op.cit.(no10), no1077, p.584 et s.. 29)F.Pollaud-Dulian op.cit.(n 10), n 1049, p.570. o. o. 年単位で延長可能である(L.513-1)。. 2.4. 意匠権の効力. 意匠権の効力は絶対的な排他権であるが、禁止される行為は一定の行為に. 限定される。すなわち、意匠の製造、提供、市販、輸入、輸出、中継、使. 9.

(5) 10. 特集:各国におけるデザイン保護法制. 用、それらの目的のための所持である(L.513-4)。. また、意匠権の効力は、経験豊かな識者に全体として異なる視覚的印象を. 与えないあらゆる意匠にも及ぶ(L.513-5)。この表現は固有の特徴要件に用. いられる表現と同一であり、その判断要素も同様である。よって、意匠権の. 効力は、意匠の同一又は準同一(quasi-identique)にまで及ぶことになる30)。 さらに、意匠権の効力は製品の一部分の複製にも及ぶ31)。なお、被疑侵害製. 品が需要者に混同を生じるかどうかは侵害の判断において考慮されない32)。 一方で、意匠権の効力には例外がある。例えば、私的かつ非商業目的で の実施、実験目的での実施、引用や教育目的による利用については意匠権の 効力は及ばない(L.513-6) 。また、一時的にフランスの領域内に入る船舶等. 機器、当該船舶等の修理のための部品の輸入にも意匠権の効力は及ばない. (L.513-7) 。さらに、意匠権者が欧州共同体又は欧州経済地域内で販売した製. 品については意匠権の効力は及ばない(消尽論:L.513-8) 。なお、フランス. においては修理部品(スペアパーツ)の保護に関する例外規定は存在しない。 意匠権侵害に対しては、侵害訴訟の提起によって(L.521-2)、差止請求と. 損害賠償請求が可能である。損害賠償については、その損害額の算定につい て特別規定が存在する。すなわち、損害賠償額を確定するために、裁判所 は、①損害を受けた者に生じた逸失利益と被った損失という侵害による負の 経済的結果、②損害を受けた者に生じた無形の損害、③侵害者によって実現 された知的な、物質的な、そして、販売を促進する投資費用の節約が含まれ る利益、を考慮する(L.521-7)。なお、裁判所は、選択的に、かつ、損害を. 受けた者の請求により、損害賠償額として一括額(somme forfaitaire)の支. 払いを命ずることができる。この額は、ライセンスを求めていた場合に支払 われるべきロイヤリティー額を上回るものとする(L.521-7)。. その他、刑事罰は3年以下の拘禁および300,000ユーロ以下の罰金である. (L.521-10)。. 2.5. 意匠権の無効等. 意匠登録は一定の理由に基づいて裁判所から無効を宣言される(L.512-4)。. 意匠要件や実体的要件違反(L.511-1∼L.511-8)については、何人も無効を. 請求することができる(L.512-4)。冒認出願の場合、先後願違反の場合、第. 三者の著作権を侵害する場合、商標権者の先に保護された識別標識を侵害す る場合は、利害関係人のみが無効を請求することが可能である(L.512-4)。. 公訴官は無効理由を問わず、無効訴訟の提起が可能である(L.512-4)。なお、 無効理由は限定列挙である33)。. 無効訴訟の判決は絶対的な効力を有する(L.512-6)。また、無効は部分的. になされる場合もあり、その場合には修正後の形態で意匠の保護要件を満た し、かつ、意匠の同一性が満たされる場合には、修正後の意匠で意匠権が維 持される(L.512-5)。. なお、意匠権者は意匠権の全体又は一部をいつでも放棄することが可能で. ある(R.513-2)。. 30)J.Raynard, E.Py, et P.Tréfigny, op.cit.(no12), no594, p.343.. 31)F.Pollaud-Dulian op.cit.(no10), no1141, p.621. Cass. crim., 6 juin 1991, Bull.crim., no240, p.617.. 32)Cass. com., 19 septembre 2006, no04-13871, inédit.. 33)J.Raynard, E.Py, et P.Tréfigny, op.cit.(n 12), n 610, p.348. o. o. 3.フランス知的財産法典 L.111-1以下(著作権法部分)による 保護 フランスでは応用美術に該当する意匠は意匠法だけではなく、著作権法に よっても広く保護される。それは美術の一体性理論によるものと理解されて.

(6) デザイン学研究特集号  Vol.25-2 No.98. いることから、まずは美術の一体性理論について明らかにしておこう。. 3.1. 美術の一体性理論(théorie de l’unité de l’art) 34)満田重昭「著作権と意匠権の累積」半田正夫先生還暦 記念『民法と著作権法の諸問題』(法学書院、1993年) 616頁以下、より詳しくは駒田泰土「応用美術の著作. 美術の一体性理論については、すでに我が国でも紹介があるが 34)、その始. 祖はプイエと言われている。プイエは「美術には限界はないと言わなければ. 権保護について ─ 美の一体性の理論に示唆を受けて」. ならない。美術には始まりも終わりもない。美術は人間の精神によって生み. 渋谷達紀ほか編『知財年報2009』別冊 NBL(商事法. 出される創造の表現でしかな」く35)、「美術的であり、多かれ少なかれ美術. ゴリーではなく利用方法のことである」著作権研究43. から生じるあらゆる著作物について、法は統一的でなければならない」36)と. 務、2009年)222頁以下、同「応用美術-それはカテ 号(2017年)29頁以下。. 35)E.Pouillet, Traité théorique et pratique des dessins et modèles, 5.éd., Paris Marchal et Godde, 1911, no28, p.52.. 36)E.Pouillet, op.cit.(no35), no28, p.53.. 37)拙稿「意匠法の存在意義 - 著作権法との関係を中心に」 麻生典= Christoph Rademacher 編『デザイン保護法制 の現状と課題 ─ 法学と創作の視点から ─ 』(日本評論. 社、2016年)5頁以下の記述に負う。また、駒田・前 掲注 (34)著作権研究31頁以下も参照。 38)著作権に関する1793年7月19-24日のデクレロワを改 正する1902年3月11日の法(著作権法)でも、 「著作 物の価値と用途がいかなるものでも、著作権は彫刻家 および装飾家に帰属する」と規定し、部分的な重複を 著作権法側から認めていた。さらに、著作権に関する 1957年3月11日の法では「いずれの精神の著作物につ いても、その種類、表現形式、価値又は用途のいかん を問わず、著作者の権利を保護する」と、さらに著作 物の例として応用美術の著作物をあげている。 39)F.Pollaud-Dulian, Le droit d’auteur, Economica, 2.éd., 2014,. no168, p.157, Michel Vivant et Jean-Michel Bruguière,. Droit d’auteur et droits voisins, Dalloz, 3.éd., 2016, n 264, o. p.266, P.-Y.Gautier, Propriété littéraire et artistique, PUF, 10.éd., 2017, no34, p.48.. 40)S.Chatry, Le concours de droits de propriété intellectuelle,. L.G.D.J., 2012, no61, p.54, F.Greffe et P.-B.Greffe, Traité. des dessins et modèles, 9.éd., Litec, 2014, no231, p.89. 意 匠. として保護されるためには「創作(création) 」である必 要もあるが、その判断に著作権法の創作性と同様の判断. 基準が用いられ、新規性要件に創作性要件が付加され. 述べている。すなわち、美術の一体性理論は、著作権法内において美術を区 別することはできず、著作権法で応用美術を保護することは避けられないと いう理論である。よって、美術の一体性理論によって応用美術が著作権法で 保護されることで、結果的に応用美術について意匠法との重複保護が生じる に過ぎない。 こうした前提に基づいて、フランスでは意匠法と著作権法との関係はどの ように捉えられていたのか。簡単にその状況を明らかにしておこう37)。 ⑴ 意匠法と著作権法の完全重複 1909年7月14日の法(意匠法)は、その1条において「意匠権者等が他 の法規定から導かれる諸権利を害することなく」意匠権を享受すると規定 しており、意匠権者等が著作権を有していたとしても意匠権の保護は排除 されないことを明確にしている38)。当時の意匠法は、著作権法にはない「新 規性(nouvauté)」要件を課しており、著作権法は意匠法にはない創作性. (originalité)要件を課していた。しかし、裁判所では、意匠法の新規性要件. と著作権法の創作性要件が、同一の意味内容を持つものとして理解されてい た。伝統的に著作権法で要求される創作性は、著作物における著作者の個性 の痕跡(empreinte de la personalité)の表明の問題とされている39)。しかし、 ここでいう創作性は非常に主観的(subjectif)な要件であり、その判断は曖. 昧なものにならざるを得ない。かかる状況の下、著作物の創作性の有無は既. る形で意匠法の保護の可否が判断されてきたと評価する. に存在する他のモチーフと比較して判断するしかなく、本来、主観的な要件. ものもある(A.Chavanne et J.-J.Burst, Droit de la propriété. であるはずの創作性の判断が徐々に客観的な要件である新規性の判断に近接. n 65, p.55.)。. し、事実上混同するに至ってしまったのである40)。実際の裁判例においても、. industrielle, Dalloz, 4.éd., 1993, no745, p.394, S.Chatry, o. 41)CA Paris, 22 novembre 1988, PIBD 1989, Ⅲ, p.243.. 創作性は先行性の欠如のみから導かれるとする判決41)などが存在し、創作. 43)P.Greffe et A.Casalonga, Traité des dessins et modèles, Dalloz,. 性と新規性は混同して理解されていた42)。. 42)その他、Trib. Com. 29 octobre 1986, PIBD 1987, Ⅲ, p.40。 1937, n 14, p.9 et 10, n 22, p.21, P.Roubier, Le droit de la. ではこうした美術の一体性理論を採用し、結果的に完全重複を認めるシス. Pérot-Morel, Les principes de protection des dessins et modèles. テムにはどのようなメリットがあるのか。フランスで指摘されているメリッ. o. o. propriété industrielle, T.2, Sirey, 1954, no220, p.409, M.-A.. dans les pays du Marché Commun, Mouton, 1968, p.33以下. の記述に負う。なお、駒田・前掲注 (34)別冊 NBL225. 頁以下も参照。. 44)とはいえ、1909年法では意匠出願から最長で50年の保 護が認められていた。 45)P.-Y.Gautier, Propriété littéraire et artistique, PUF, 4.éd., 2001 no68, p.112 et s.初版ではそのような表現すらな. かった(P.-Y.Gautier, Propriété littéraire et artistique, PUF, 1.éd., 1991, n 59, p.93)。 o. 46)P.-Y.Gautier, op.cit.(no39) , no100, p.116. 「10版」には、保. 護期間と形式性が意匠の魅力を減じているという記述 は見られる。. 47)Directive 98/71/CE du Parlement européen et du Conseil. du 13 octobre 1998 sur la protection juridique des dessins. ou modèles.. 48) Ordonnance n 2001 - 670 du 25 juillet 2001 portant o. adaptation au droit communautaire du code de la propriété intellectuelle et du code des postes et télécommunications.. トは下記の点である43)。 意匠権の発生には出願や登録といった厳格な形式が要求されるが、著作権 の発生には何らの方式も必要としない。また、それぞれの存続(保護)期間 も異なり、著作権の方が長期である44)。 一方、完全重複を認めることの「デメリット」はフランスではほとんど指 摘されない。保護のあり方として「おそらく余分な」保護であると述べられ ることはあるものの45)、我が国のように両法の重複保護による不都合性は指 摘されていない46)。 ⑵ 部分重複への転換 先に述べたように、1998年発効の欧州意匠指令47) が2001年のオルドナ ンスにより国内法化 48) され、意匠法の保護対象(L.511-1) 、相互連結意匠. (L.511-8)や公序良俗に反する意匠の保護除外(L.511-7)などが明記され. 11.

(7) 12. 特集:各国におけるデザイン保護法制. た。その結果、著作権法と意匠法の保護範囲が見かけ上異なることとなった が、ここでいう両法による保護の部分重複とは、かかる見かけ上の相違を示 すものではなく、著作権法と意匠法の実体的要件の相違から解釈されるもの である。すなわち、欧州共同体意匠指令の国内法化により、新規性(L.511-3). は非常に明確な客観的な要件として捉えられるようになり、「固有の特徴」 要件(L.511-4)が新たに導入されたことで、これまでのように著作権の創. 作性要件を意匠法の実体的要件と同一視できないという立場49)から、部分. 重複という考えが意識されるようになった。 実際、判例においてもその旨が判示されている50)。例えば、最近の破毀院 (最高裁)判決では「1998年10月13日の指令17条[筆者注:欧州共同体意匠 指令]と知的財産法典 L.513-2は、幾つかの保護(著作権、意匠権)につい. て、正当にも完全な重複は課しておらず、それぞれの保護要件が満たされる 場合に、そのような重複を可能とするだけである」51)として、各法の実体. 的要件を重視する立場が明らかにされている。 49) V.L.Benabou, ‘ Les nouveaux critères de protection des. このような理解の下では、著作権法では保護されず意匠法のみで保護され. et patrimoine 2002 , n 100 , p. 45 , M.-A.Pérot-Morel, ‘ A. るものが存在し得る52)。現に下級審ではそのような判示も見られ、創作性要. dessins et modèles : une protection《sur mesure》? ’, Dr. o. propos du maintien de l’unité de l’art dans le nouveau droit. 件を満たさないとして著作権法による保護を否定しつつ、新規性要件及び固. J.Schmidt-Szalewski et J.-J.Pierre, Droit de la propriété. 有の特徴要件を満たすとして意匠法による保護を肯定する裁判例が見られる. des dessins et modèles’, Propr. ind. avril 2005, étude.8, p.9. industrielle, Litec, 4.éd., 2007, no366, p.148, J.Passa, Droit. のである53)。. L.Marino, Droit de la propriété intellectuelle, PUF, 2013,. ⑶ 美術の一体性理論の維持. de la propriété industrielle, T.1, L.G.D.J., 2009, no675, p.905,. no200, p.387. J.C.Prorpiété littéraire et artistique, no31.. 50)その傾向は2001年のオルドナンス後すぐに見られ始めた (TGI Paris, 15 février 2002, PIBD 2002, n 748, Ⅲ, p.377) 。 o. 51) Cass. crim., 13 décembre 2011 , PIBD 2012 , n o957 , Ⅲ ,. p.180[184].同様の判示としてCass. com., 20 février. 2007, PIBD 2007, n 851, Ⅲ, p.315, Cass.civ., 5 avril 2012, o. 部分重複であっても、美術の一体性理論が放棄されたわけではない。すで に明らかなように、美術の一体性理論は様々な著作物において美術性を区別 してはならないという理論であって、意匠法による保護領域には何ら影響を 与えないものである。. PIBD 2012, no966, Ⅲ, p.523, Cass. crim., 26  nov. 2013, PIBD 2014 , n o999 , Ⅲ, p. 122、下級審判決としてParis,. pôle 5, 2ech., 19 avr. 2013, no12/17382, D. 2014, pan. p.. 2212, obs. Galloux。学説でもそのような評価が一般的. である(M. Antoine-Lalance, ‘Les acquis de la pratique.. Les conditions de protection : du cumul à la distributivité’,. RLDA 2011 , n o 3618 , p. 64 , P de Cande, ‘ Critère de. l’originalité et critères de protection du modèles déposé -. La dérive des continents s’accélère’, Propr. intell. octobre. 2011, no41, p.426, A.-E.Kahn, un an de droit de la mode,. Comm. com. électr. 2012, chron.8, p.20 et s.)。. 52)J.C. Prorpiété littéraire et artistique, n 31. o. 53)CA Paris, 7 avril 2006, PIBD 2006, no832, Ⅲ, p.446, TGI. Paris, 11 janvier 2011, no10/10701, TGI Paris, 29 mars. 2011, PIBD 2011, n 942, Ⅲ, p.447, CA Paris, 8 juin 2011, o. 3.2. 著作物の要件54). 著作物として著作権法で保護されるための要件は、精神的著作物であるこ. とと、創作性を有することである。 ⑴ 精神的著作物(œuvre de l’esprit). フランス知的財産法典 L.112-1は「この法典の諸規定は、その種類、表現. 形式、価値又は用途がいかなるものであっても、全ての精神的著作物につい て著作者の権利を保護する」と規定している。 このように、著作権法は精神的著作物を保護すると規定しているが、その 具体的定義については我が国のような明文規定(日著作権法2条1項1号). PIBD 2011 , n o948 , Ⅲ, p. 625 , TGI Paris, 10 juin 2011 ,. が存在するわけではなく、解釈に委ねられている。一般的な見解に従えば、. されて意匠法による保護のみを認めた裁判例は従来か. 精神的著作物は形式の創造(création de forme)であることが必要である55)。. PIBD 2011, no951, Ⅲ, p.709. もちろん、著作物性が否定 ら見られるが、それらは創作性要件が問題とされてい たのではなく、美術的性格(caractère artistique)が認. められないとして著作権法による保護が否定されて. いる(P. Greffe et A. Casalonga, op.cit.(no43), no23, p.22. 以下の裁判例参照。また駒田・前掲注(34)別冊 NBL 224頁も参照)。. 54)拙稿「香気の著作物性」『著作権・著作隣接権論文集. 第7回』(著作権情報センター・2010年)3頁以下の記 述に負う。. それは公衆に伝達されうる形式であり、コミュニケーションの媒体である56)。 それゆえ、形式を有しないアイデアや情報等は保護対象とはならない。 条文解釈として、まず著作物の種類は制限されない。つまり、特定の種類 の著作物は保護されないということにはならない。また、表現形式も問われ ない。表現形式とは「精神的創造が公衆に伝達される方法」であり57)、文書 表現でも口頭表現でも構わない。そして、著作物の価値も問われない。そも. 55)例えば、C. Colombet, Propriété littéraire et artistique et. そも法律は著作物の価値を判断する必要はなく、裁判官もその価値を判断し. 56)J.Lesueur, Gaz. Pal. 2006, no214 à no215, p.7 et s.. てはならない。さらに、その用途も問われない。これは著作物が工業的に応. droits voisins, 9.éd., 1999, no25, p.19 et s.. 57)Henri Desbois, Le droit d’auteur en France, 2.éd., Dalloz, 1966, no1, p.3.. 用されるものであっても著作権法の保護対象となりうることを意味する。 また、フランスでも、我が国著作権法(日著作権法10条)と同じように著.

(8) デザイン学研究特集号  Vol.25-2 No.98. 作物を列挙している(L.112-2) 。ここに応用美術(les œuvres des arts appliqués) が例示されていることが特徴的である。なお、知的財産法典 L.112-2の柱書. きに「以下のものは、特に(notamment)、この法典において精神的著作物. とみなされる」と規定されており、「特に」という文言から明らかなように、 フランス知的財産法典 L.112-2の各号の著作物はあくまで例示であって、著 作物はこれらに限定されるわけではない。 ⑵ 創作性(originalité). 精神的著作物が著作権法で保護されるためには、創作性を有していなけれ. ばならない。この創作性は、先にも述べたように、フランスでは伝統的に 「著作者の個性の痕跡」であると理解されている。とはいえこれにより創作 性に定義が与えられるわけではなく、「著作者の個性の痕跡」がいかなる場 合に存在するのかは一義的に定まるわけではない。例えば音楽、美術、文学 の著作物について、各々の創作性を同一の基準で判断するのは困難であり、 個別具体的な判断が必要となる。ただし、技術的機能に基づく形態について は、創作性を有しないと解されている58)。 ⑶ 応用美術の具体例 フランスでは応用美術が広く著作権法で保護されていることから、その具 体例を示しておくことが重要であろう。裁判例では、まさに工業デザイン (意匠)と言えるようなものも含めて広く著作権による保護が認められてい る。例えば、車のボディ59)、自動車60)、散髪用ハサミ61)、織物の生地62)、ラ ンプ63)、パリのポン = ヌフ橋の包装材64)、スカーフ65)、撹拌機66)、イヤリン グ67)、指輪68)、織物の装飾69)、裸女のランプの柄70)、古代エジプト人を表し. た小立像71)、オートクチュール72)、海賊の小像73)、収納つき木型収納キャビ ネット74)、包装の装飾75)、船76)、船舶の設計図と見取り図77)、現代的家屋78) などである79)。 フランスの判例集では係争物の形態等が明らかになることは少ないが、撹 拌機だけは意匠権が取得されており、意匠公報に係争物が掲載されていたの 58)F.Pollaud-Dulian op.cit.(no10), no1013, p.545.. 59)CA Lyon, 27 mai 1987, PIBD 1987, n 421, Ⅲ, p.431. o. 60)CA Montpellier, 15 mai 2003, RIPIA 2003, p.51.. で引用しておこう80)。この撹拌機が著作物として保護されることについては、 各国の立場からみればやはり議論があるところであろう。. 61)CA Aix, 11 juin 1987, RDPI, 1987. n 13, p.151. o. 62)CA Paris, 5 mars 1987, RDPI, 1987. no13, p.155.. 63)CA Paris, 5 février, 1987, PIBD 1987, no420, Ⅲ, p.401. 64)CA Paris, 13 mars 1986, Ann.propre.ind. 1987, p.223. 65)CA Paris, 11 mai 1987, Ann.propre.ind. 1988, p.311.. 66)TGI Paris, 23 janvier 2002, PIBD 2002, no748, Ⅲ, p.380.. 67)CA Paris, 7 décembre 1988, Cah.dr.aut., 1989, no12, p.16. 68)CA Paris, 30 juin 1986, Ann.propre.ind. 1987, p.221.. 69)Trib.com.Paris, 23 février 1987, Cah.dr.aut., 1988, no3, p.22. 70)CA Paris, 2 mai 1988, PIBD 1988, no443, Ⅲ, p.499.. 71)CA Paris, 12 septembre, 2003, PIBD 2003, no776, Ⅲ, p.622. 72)CA Paris, 13 octobre 1999, PIBD 2000, no704, Ⅲ, p.424.. 73)CA Paris pôle 5-2, 11 mars 2011, PIBD 2011, no942, Ⅲ,. p.444.. 74)CA Paris, 25 octobre 1984, D.1987. somm. com. p.39, obs.. J.-J.Burst.. 75)CA Paris, 22 janvier, 1985, Ann.propre.ind. 1986, p.97. 76)CA Paris, 24 janvier, 1985, Ann.propre.ind. 1986, p.98.. 77)CA Rennes, 22 février 2011, PIBD 2011, no939, Ⅲ, p.334.. 78)TGI Strasbourg, 23 octobre 2002, RDPI 2003, no145, p.27.. 79) Jacques Azéma, Jean-Christoph Galloux, Droit de la. propriété industrielle, Dalloz, 7.éd., 2012, no1282, p.723の例 による。. 80)Dessins et modèles français, Numéro d’enregistrement: 996017.. 3.3. 著作権の効力. 著作権には著作者人格権と著作財産権が含まれるが、ここでは著作財産. 権にだけ言及する。著作財産権には演奏・上演権および複製権が含まれる (L.122-1)。よって、例えば著作物を複製することは複製権の侵害となる。 複製は、「著作物を間接的に公衆に伝達することができるいずれかの方法に. よって著作物を有形的に固定すること」と定義されている(L.122-3)。複. 製か否かは対象著作物に類似(ressemblance)するか否かによって判断され、. 13.

(9) 14. 特集:各国におけるデザイン保護法制. 経験豊かな識者に全体として異なる視覚的印象を与えないあらゆる意匠に効 力が及ぶとする意匠権の侵害判断基準とは基準が異なる81)。類似か否かの判 断は、著作物の創作的な特徴(caractéristique originale)が感得できるかが問 題となる82)。なお、著作権の効力は他者の独自創作にはおよばない83)。. 4.フランス知的財産法典 L.711-1以下(商標法部分)による 保護 デザインは商標法によっても排他権による保護を受けることが可能であ る。ただし、商標はあくまで他人の商品・サービスと自己の商品等を識別す るために利用するものであることから、そのデザインは間接的に保護される にすぎない。 商標としての保護を受けるためには、一定の標識(signe)であること. (L.711-1) 、 本来的または二次的な識別力を有することが必要である(L.711-2) 。 特に、製品形態そのものも商標として保護を受けることも可能であるが、製 品の内容または機能から生じる形態は商標として保護を受けることができな い(L.711-2(c))。なお、製品の包装も商標としての保護を受けることが可. 能であるが、包装が製品それ自体の性質によって課せられるものであって. も、技術的効果を得るために必要なものであってもならず、さらに、識別性 も有しなければならない84)。例えば、コワントローの瓶の形状などが具体例 として挙げられる85)。. 5.不正競争訴権による保護 フランスでは不正競争防止法は存在しないが、行為が不正競争性を帯びる 場合には、不法行為として不正競争訴訟を提起することが可能である(民法 典1240条、1241条)。 不正競争訴訟を提起するためには、知的財産権侵害を基礎づける事実とは 区別される事実に基づく必要がある86)。例えば、混同惹起行為や、混同を生 じないとしても他人の商品の著名性を利用する寄生行為などがその例であ る。こうした区別される事実が存在すれば、不正競争訴訟と知的財産権侵害 81)F.Pollaud-Dulian op.cit.(n 10), n 1145, p.623. o. o. 82)ibid.. 83)AIPPI Q231, 20 avril 2012, p.9.. 護の有無にかかわらず、意匠のデッドコピー品の販売等の場合には、混同の. 84)F.Pollaud-Dulian op.cit.(n 10), n 1371, p.774. o. 訴訟の両訴訟を同時に提起することも可能である。よって、意匠権による保. o. 85)TGI Paris, 2 janvier 2009, PIBD 2009, n 901, Ⅲ, p.1284. o. 86)Cass. com., 19 janvier 2010, PIBD 2010, no915, Ⅲ, p.220.. 87)CA Paris 7 novembre 2007, PIBD 2008, n 866, Ⅲ, p.53. o. おそれや他人の経済的価値の投資への寄生があれば不正競争となる87)。 一方で、侵害製品の極端な低額販売行為は不正競争性を有するのか。この 点については、下級審では不正競争であるとの裁判例もみられるが88)、破毀. Cass.com., 16 juin 1992 , PIBD 1992 , n 532 , Ⅲ, p. 597 ,. 院(最高裁)では、単に低額の販売だけではなく、他人の投資や努力に対す. Cass. com., 12 juin 2007, Bull. civ. Ⅳ , n 159, p.177, RIDA. る寄生や顧客に対する混同のおそれが必要であるとしている89)。言い換えれ. o. Cass.com., 6 novembre 1990, Bull.civ. Ⅳ, no263, p.184, o. juillet 2007, p.353. Cass.com., 12 décembre 2006, PIBD. ば、廉価販売それのみでは知的財産権侵害を基礎づける事実と区別される事. 2007, p.335. なお、フランスにおける知的財産権侵害. 実ではない。. 2007, no846, Ⅲ, p.126, Cass. civ. 20 mars 2007, RIDA juillet 訴訟と不正競争訴訟との関係については、別稿でより 詳しく明らかにしている(近刊:拙稿「フランスにお ける寄生概念」瀬川信久先生・吉田克己先生古稀記念 論文集(成文堂))。 88)CA Paris, 21 mars 1990 , D. 1991 , som.com. p. 92 . obs.. C. Colombet, Paris, 21 juin 1994, PIBD 1994, no577, Ⅲ,. 6.おわりに 以上のように、フランスにおいてデザインは意匠法と著作権法を中心に保 護されている。また、不正競争防止法は存在しないが、民法の不法行為の枠. p.583.. 内で不正競争訴訟を提起することができ、さらには欧州共同体意匠規則にお. だし、低額販売については、低額販売が売り上げを低. ける非登録共同体意匠制度も存在することから、わが国とデザインの保護に. 89)Cass. com., 19 novembre 1991, RDPI 1992, no39, p.31.た 下させる原因となるデッドコピーの低額販売は不正競 争となるとする破毀院判決もある(Cass. com., 20 mars 2007, Bull.civ. Ⅳ, n 91, p.104.)。 o. 関してはそれほど大きな相違はないように思われる。 わが国と大きく異なるのは、著作権法によっても応用美術として意匠が広.

(10) デザイン学研究特集号  Vol.25-2 No.98. く保護されている。また、フランスにおいては意匠出願の実体審査はなされ ない。さらに、簡易出願制度によって、流行性ある製品については意匠権の 取得を熟慮する機会が保たれているという点である。 フランスにおいては欧州の制度と相まってデザイン保護方策が取られてい るが、各国の法制度と比較した上で、こうした制度がデザインの本来的保護 にふさわしいかという問題の検討が今後必要となろう。 [附記]本研究は、JSPS 科研費17H01942の助成を受けたものであり、九州大学基 金長期海外派遣支援、末延財団在外研究支援奨学金の研究成果の一部である。. 15.

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